TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#440/27-Jul-98

Adam Engst は多才な人物で、人がいやがる仕事でも他人をその気にさせる なんてこともできる! 技術担当編集員である Geoff Duncan をして、如何 に TidBITS Talk のすばらしい Web アーカイブを作成するよう仕向けたか をご覧あれ。今週号ではまた、Adam が引き続きクラッシュ検知デバイスの レビューを行い、Adobe 社の Mac 用 PageMill 3.0 に関る真実のプランに ついて取り上げる。さらに、HyperCard 2.4.1 のニュース、Default Folder の新バージョン、Dartmouth 大学が学生たちに iMac を推奨する記事をお 届けしよう。

目次:

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今回の TidBITS のスポンサーは:


MailBITS/27-Jul-98

(翻訳:高島 均 <hitak@kk.iij4u.or.jp>)

Dartmouth が iMac を選ぶ -- ほとんどを Mac で構成する最大規模の 学術系ネットワークの一つの拠点である Dartmouth 大学では、新入学予定 の学生に対して、大学におけるコンピュータ所有の必要条件を満たすため に、Apple 社の新しい iMac を購入するよう奨める手紙を最近送ったとこ ろである。Dartmouth では Windows 95 や 98 をサポートしている(そし て学生に対しさまざまな Mac とともに Dell 社のシステムを割引価格で提 供している)が、キャンパスネットワーク用には Mac システムを強く推奨 している。著名な Fetch FTP クライアントの生まれ故郷でもある Dartmouth は、10/100Base-T Ethernet を装備する iMac ならキャンパス における学生の使用には最適であると考えている。[MHA]

<http://www.dartmouth.edu/comp/new-info/>

HyperCard 2.4.1 アップデート -- Apple 社は HyperCard 2.4.1 をリ リースしたところで、これはこの長寿を誇るオーサリングツールへの小さ なアップデートだ。HyperCard 2.4.1 では、2 GB より大きなディスクで HyperCard を使用したときの問題が修正され、また HyperCard 2.4 を QuickTime 3.0 で使用したときにしつこく表示される Get QuickTime Pro ムービーを取り除いてくれる。(HyperCard 2.4 は Apple 社の当初の不評 を買った QuickTime 3.0 ライセンス条件に従ってリリースされたものだ。 TidBITS-427 の“Apple 社が HyperCard 2.4 を出荷”と TidBITS-430 の“Apple が QuickTime 3 のライセンスを改訂”を参照。)HyperCard 2.4.1 は Apple Store から 99 ドルで購入でき、HyperCard 2.3、2.3.5、 2.4 のオーナーなら無料の 5.2 MB のアップデータがダウンロードできる。 無料の HyperCard Player 2.4.1(1.6 MB)も入手可能だ。[GD]

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=04844>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=04897>
<ftp://ftp.info.apple.com/Apple_Support_Area/Apple_SW_Updates/US/ Macintosh/Utilities/HyperCard/>

Default でらくらくファイル管理 -- St. Clair Software 社は Default Folder 2.9 をリリースしたところで、これは Open や Save のダイアログ ボックス内部からファイルやフォルダをナビゲートし管理するユーティリ ティである。Default Folder を使うと、Type や Creator などのファイル 属性の編集はもちろん、ユーザー定義可能な頻繁に使うフォルダリストへ のジャンプ、ファイルやフォルダの名称変更や削除が可能になる。 (Default Folder には Now Super Boomerang や ACTION Files に共通す る機能がある。 TidBITS-434 の“ACTION Files の使命”を参照。)バー ジョン 2.9 には、アップルメニュー上に最近使ったフォルダやお好みの フォルダを記録させて Finder から即座にジャンプできる機能が追加され た。コントロールバーのモジュールにも同様の機能がある。Default Folder は 25 ドルのシェアウェアで、475K のダウンロードである。 [JLC]

<http://www.stclairsoft.com/DefaultFolder/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=04931>


生き長らえる Macintosh 版 PageMill

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:松岡 文昭 <mtokfmak@mxa.meshnet.or.jp>)

TidBITS-439「Visual Page の最期」 で、私は Adobe 社が Mac 版 PageMill を無視しているようだとコメントした。同社の Windows 用プレ スマテリアルでは今後の Mac 版 PageMill 3.0 の開発については何の言及 もなかったからだ。しかし Adobe 社は Mac 版 PageMill 3.0 の開発に着 手して いた のだ。同社の Rick Brown 氏によると、それは年末前には 出荷となるはずだ。PageMill のユーザーはその出荷一月程前に公開ベータ 版を見つけることができるであろう。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05001>

私は Adobe 社が Mac 版 PageMill の開発を継続していることを嬉しく思っ ている。たとえそれが Windows 版に遅れるとしてもだ。Mac が、GoLive CyberStudio、Terry Morse Myrmidon そして Bare Bones Software 社の BBEdit 等の優秀な HTML オーサリングツールを有している理由の一つは、 競争が改良のためのインセンティブとなっているからだ。競争がなくなれ ば、改良のためのインセンティブはユーザーのために正しいことをしたい と望む会社に頼るしかない。会社はユーザーに役立つことを望んでいると 私は信じたいが、私の経験ではこの種の行動は少数の献身的かつ過小評価 された個人の努力によってのみ成されているのだ。要するに、ほとんどの 大企業は貸借対照表ばかりを眺めることで近視眼的となっており、忠実な 顧客ベースを維持するという大きな視点を欠いてしまっているのだ。

我々は独立した筋から、Adobe 社が GoLive Systems 社を買収するかもと の噂も聞いた。Adobe 社の Rick Brown 氏は、Adobe 社は大会社であり、 キャッシュも潤沢で、沢山の事柄について沢山の会社と協議していると、 だけコメントするであろう。GoLive 社の代表者は、GoLive 社が沢山の事 柄について沢山の会社と話をしているという Rick 氏のコメントを繰り返 していたが、Adobe 社との噂に関しては、「何の事実もない。」と述べて いた。

Adobe 社の観点からは買収は意味のあることかもしれない。PageMill と CyberStudio というコンシューマ用製品とプロ用製品を手にすることがで きるからだ。加えて、Adobe 社の販売力、マーケティング力、そして流通 力は疑いもなく CyberStudio の売上げ向上に寄与するであろう。だが、 Macintosh ソフトウェア業界の観点からは、私は合併は損失となるであろ うと思う。一人の業界内部者が次のように上手く纏めてくれている。 「GoLive 社のようなダイナミックで前向きな Mac ディベロッパーを、 Adobe 社のような恐竜に失なえば残念なこととなろう。」我々はあまりに も沢山の小さな会社を既に失っているのだ。


用心棒対決、パート 2

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:尾高 里華子 <rikako@pobox.com>)
(  :亀岡 孝仁 <tkameoka@fujikura.co.jp>)

先週の TidBITS-439に掲載したこの記事のパート 1 で、PowerKey Pro、 Rebound、Lazarus の 3 つのクラッシュ検知デバイスをハードウェアの面、 再起動の方法、クラッシュ検知の性能で比較した。今週はドキュメンテー ション、インターフェース、ログ機能、価格につて触れようと思う。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05002>
<http://www.sophisticated.com/products/powerkey.html>
<http://www.sophisticated.com/products/rebound.html>
<http://www.kernel.com/kernel/lazarus.html>

先週号を発行後、Neuron Data Systems 社から MacCoach を受け取った (同社はベルギーではなく、オランダにある)。パート 2 では MacCoach の情報をさらに加えることができるだろうが、試してみる時間はなかった ので MacCoach の評価についてはいずれ正式に行いたい。

<http://www.neuronsys.com/Products/>

インターフェース -- PowerKey Pro は PowerKey Editor というアプリ ケーションから操作を行うようになっている。今回の比較対象の中でダン トツに複雑ではあるが、それはクラッシュしたサーバを再起動させること が PowerKey Pro の数ある機能の一つに過ぎないからだ。PowerKey Pro は そのほかにコンセントの電源を別々にオン・オフしたり、Mac を起動・終 了・再起動させたり、AppleScript を実行したり、キーストロークをタイ プしたり、ファイルを開いたり、アプリケーションを終了したり、SCSI ド ライブをマウントしたり、アクションのログを取ったりできる。イベント ごとに、一つのトリガと複数のアクションを設定できる。トリガは一度だ けとか、曜日や日にちを指定し定期的に、Power key を押した時、ホット キーを押した時、電話が鳴った時、システムがアイドル状態になった時、 電源が復旧した時、システムを終了した時にかかるようにできる。さらに Server Restart Option を利用すると、システムがクラッシュした時や設 定した時間になった時にトリガをかけることができるようになる。トリガ は制限指定もできるようにもなっており、特定の時間や日付を除外したり、 システムの起動方法はどうだったかやシステムがアイドルだったかどうか などによってトリガがかかるようにも設定できる。できることを並べると きりがない。サーバを再起動させるためには、When System Crashes のト リガと Restart アクションを使ったイベントが一つあればこと足りる(私 は Add to Log アクションも併用している)。停電後に電気が回復した際 にコンピュータを再起動するイベントを作っておくのも良いだろう。

私は PowerKey Editor が使いにくいものだと言いたいのではなく、どんな ことをしたいかよく考えなければならないと言いたいのだ。Sophisticated Circuits 社がクラッシュや停電後の再起動のような一般的なイベントが並 んだメニューを加えてくれればありがたい。そうすれば、最初はその中か ら選択して、後々にカスタマイズするということも可能になる。

Rebound のシンプルなコントロールパネルからは、システムやアプリケー ションのクラッシュ検知をオン・オフにしたり、再起動するまでの時間、 再起動のための時間、再起動を試みる回数の 3 つの設定を行ったりでき る。大抵の場合は再起動のイベントを一回行う設定にするように。また再 起動までの時間を短く設定しておく誘惑に屈しないことだ。一度 Norton Disk Doctor を動かしている時にファイルチェックに 5 分以上かかり、 Rebound がチェック中にシステムを再起動させてしまうということがあっ た。さらに、機能拡張をオフにして立ち上げるために Shift キーを押して いたので、Rebound のタイマーがリセットされないまま Mac が再起動して しまうという結果につながり、5 分後に Mac はまたもや再起動する羽目に なった。この問題の解決策として、再起動までの時間を 10 分に延ばし、 再起動を行おうとする回数を一回にしたところ、同様の状況で Rebound が 何度も Mac を再起動を試みることがなくなった。

Lazarus には小さなステータスウインドウがあり、オン・オフの表示や次 に再起動することになっているのならその時間や日付のリストが出る。こ のステータスウインドウはなかなか良いのだが、前回のクラッシュの日時 や詳細も表示してくれればと思う。

Lazarus にも設定がいくつか付いており、Mac を何日おきとか特定の時間 に再起動させるための指定ができる(だだし、日付を特定することはでき ない)。Lazarus モニタアプリケーションが付属しており、Choose ボタン でリストに開いているアプリケーションすべてを加えたり、特定のアプリ ケーションを加えたり、リストからアプリケーションを削除したりできる。 全体的に Lazarus のソフトは機能的で使いやすいのだが、Sophisticated Circuits 社製品のインターフェースに見られるような洗練されたプロ的な 部分を欠いている。

ログ -- この手のデバイスにとってその動作のログをとることは重要で ある。ログはともすると問題を示してくれる唯一の手掛りになったりする のだから。ログがければ、サーバが数時間おきに再起動しても気がつかな いということになりかねない。

PowerKey Pro のログは、(初期設定フォルダの PowerKey Folder 内にあ る PowerKey Log と呼ばれる)テキストファイルにユーザーが指定したメッ セージが日時とともに書き込む Add to Log アクションが実行する。この ログは SimpleText のようなほかのプログラムを使わないと見ることがで きず、即座にアクセスするためにはエイリアスを作っておく必要がある (PowerKey Pro のログは 32K までしか入らない)。クラッシュ後に自動 的にログが開くようなアクションを作ることもできるる。これはトラフィッ クの少ないローカルサーバには適しているが、トラフィックの激しいリモー トサーバには向かないだろう。

Rebound のログ機能は最低限のものである。コントロールパネルのアバウ トボックスに、システムやアプリケーションのクラッシュした回数と最後 に再起動した日時が表示される。このログ情報がもっと充実したものになっ てもらいたい。私の欲しい情報は、この 3 時間で Mac が 10 回クラッシュ したのようなことなのだ。

Lazarus のログ機能は最高位に位置するものの、まだ不十分である。アプ リケーションからログを表示させることができるが、その小さなウインド ウはサイズ変更ができないしスクロールバーも付いていない。ログを HTML ファイルとして保存することもできる。Lazarus のログには、各種イベン ト(クラッシュやスケジュール通りの再起動)のあった日時が出ており、 クラッシュがグローバルなものか特定のアプリケーションによるものかを 割り出してもくれる。

Neuron Data Systems 社の Web サイトには、MacCoach 2.0 は Mac が起動 や終了した時、アプリケーションが立ち上がったり終了した時、システム やアプリケーションがクラッシュした時のレポートも含めた包括的なログ を記録するとある。MacCoach はコントロールパネルにログを表示するほ か、自動的に HTML ファイルとして保存するようになっている。

ドキュメンテーション -- PowerKey Pro には、トリガ、条件付け、動作 と言ったものを説明してくれる広範囲なマニュアルがついており、更にこ れらの機能をどう使っていくのかと言う例まで載せてある。もし更に望め るとしたら、もっと沢山の例が欲しい、と言うのもこれら機能を使うにあ たって一番難しいところはこれで何ができるのか見当をつける事だからで ある。

例えば、有用な一例としてはサーバのモニタをこのコントロールのきくコ ンセントにつなぐというものがある。もしそのモニタがスリープモードを 持っていないものであったら(私のお気に入りの 12 インチのモノクロモ ニタはこれができない)、システムがアイドル状態の時モニタの電源を落 とすことができる。しかしながら、モニタがオフのままシステムを再起動 したとすると、Timbuktu Pro はそのシミュレートしなければならないモニ タのサイズがわからないので、つないでくれない状況になってしまう。こ んな時 PowerKey Pro はクラッシュした後でモニタをオンにし、Mac が立 ち上がるときにモニタが見えるようにしておき、後でアイドルになったと きに節電のためにモニタをオフにする事ができる。

Rebound には 11 頁の PDF フォーマットのマニュアルがついており基本的 なところは良くカバーしている。内容的にはインストールとセットアップ のヘルプ、それに Rebound の AppleScript サポートの詳細等である。 Rebound には更に Apple Guide ベースのヘルプが含まれているが、“どう やって”型の質問には答えるが“なぜ”型の質問のほとんどは無視されて しまう。

Lazarus はたった一枚の紙でインストールの詳細(それもかなり易しい) と基礎的な使い方を簡単に説明している。Kernel Productions 社は最低で も、Lazarus はどの様に動くのかの説明と、現実的なトラブルシューティ ングをカバーするオンラインドキュメントを用意すべきだと思う。

MacCoach のドキュメントは一枚の紙で基礎的な情報は書いてあるが、複雑 な項目について掘り下げる余地はほとんどない。更なる情報は Neuron Data System 社の Web サイトにある。

価格 -- PowerKey Pro 200 は必要な Server Restart Option 付きで 140 ドル、PowerKey 600 は現在のところ SRO 込みで 200 ドルである。 PowerKey Pro は Sophisticated Circuits 社から直で入手できるほか、 種々のベンダー、TidBITS のスポンサーである Cyberian Outpost 社でも 販売している。

Rebound は Sophisticated Circuits 社から直で 99 ドルだが、もうすぐ もっと手広く入手でできる様になるはずである。また StarNine Technologies 社から直で WebSTAR 3.0 を買った人を対象に 50 ドルで売 り出されたが、これは在庫がある限りこのまま適用される。

<http://store2.starnine.com/store/starnine.tmpl>

Lazarus は Kernel Productions 社から直で 100 ドルである。

MacCoach は 100 ドルで TidBITS のスポンサーである Cyberian Outpost 社から入手できる。期間限定ではあるが、Tenon Intersystems 社からは同 社の WebTen Web サーバを持っているかあるいは購入する人に対して 55 ドルで提供されている。

<http://www.tenon.com/products/webten/Funnel.MacCoach.shtml#MacCoach>

どれを選ぶか -- 私のテストしたデバイスすべてが基本機能である必要 な時に(そんなに頻繁な訳ではないが)Mac を再起動する点では同様であ る。PowerKey Pro の 2 モデルは最も高価であるがより柔軟ですべてのデ スクトップ Mac をサポートしている。もし自動化したいことが、私が PowerKey Pro の機能について詳細に解説した項目の様にあれこれ頭を離れ ない様であれば、これは一推しである。Rebound と Lazarus は価格的には 似ているが技術的には異なっている。Lazarus はすべてのデスクトップ Mac に使え、ディスプレイとより優れたログ機能を持ち、あらゆるアプリケー ションを監視でき、更にスケジュールによる Mac の再起動もできる。一 方、Rebound のソフトウェアはより洗練されておりユーザエラーも起こし 難い、更に Rebound は物理的にもよりよくできておりキーボード再起動方 式を採用しているのでハードウェアにも優しいと思われる。MacCoach はお そらく Rebound と似たり寄ったりであろうが、まだテストしたことが無い ので、良いとも悪いとも言えない。

このカテゴリーで製品推奨するのは難しい。私の感じを言えば、もしイン ストールが簡単で後は忘れてしまいたいと言う向きには Rebound が最適だ と思う。Sophisticated Circuits 社はこの分野では経験も豊富であり、そ のハードウェア、ソフトウェアは信頼できると思う。Lazarus は新規参入 であり、テストされる機会も少ないし洗練度も落ちるが、Rebound とは違 うアプローチを取っており機能もより豊富である。最後に、PowerKey Pro だが、コントロールの度合いと柔軟性については比較にならない程進んで いる、とりわけあなたのニーズが、単にクラッシュしたサーバの再起動以 上の物理的デバイスの自動化にあるならなおさらである。


TidBITS Talk と TidBITS Talk アーカイブ

by Geoff Duncan <geoff@tidbits.com>
(翻訳:西村 尚 <hisashin@axes.co.jp>)
(  :尾高 修一 <shu@pobox.com>)

このことは本当の話だ。彼の見かけでは決してわからないだろうが、Adam Engst という人は人使いにもなれる。

実験 -- 今年の 4 月、Adam は TidBITS Talk メーリングリストの開始 で実験を始めた。TidBITS Talk は TidBITS の記事に登場した、もしくは 関連した話題の公開ディスカッション用のフォーラムを提供することを意 図したものだった。彼は、TidBITS Talk が TidBITS スタッフと興味を持 つ読者が TidBITS 自体、つまり記事の話題を議論し、または Macintosh とインターネットコミュニティ内の今の出来事に応答するための有益な公 開チャンネルになってほしいと願った。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=04834>

はっきりしているとはいえないが、TidBITS Talk リストは本質的に Adam 一人の努力の結果である。彼は残りの我々とこのアイデアを話し合い、我々 はそれを素晴らしいといったが、我々が最後に必要としたのは さらに多くの 作業だった。しかし、Adam は、その名にふさわしく不屈 (adamant)だった。彼は自ら仕事を引き受け、仕事が増えるにまかせた。

Adam の小さなプロジェクトには知られざることが多かった。全般的なリー ダーシップ、一日のメッセージ容量、維持管理のための時間などだ。さら に、彼は話題がそれないようにと TidBITS Talk の司会進行役を買って出 て、不達と参加申込みのトラブルを処理することに同意した。私が TidBITS メーリングリストのデータベースを運営管理し、こういった参加申込みと メールのトラブルに対処しているので、Adam の計画は私には素晴らしいと 思えた。だから、私は喜んで彼に TidBITS Talk に対する全権を任せたの だ。私は操られているとはまったく思わなかった。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=04761>

結果 -- 幸いにも、Adam の努力は成果を上げた。TidBITS Talk は 800 メッセージ、つまりちょうど一日 8 通強を運んだ。瞬く間に参加者は 1000 人ほどに急増し、その約半数は日刊のダイジェストとしてメッセージを受 け取る方を選んだ。司会進行役として、Adam は議論がはずれず、個々のス レッド内に収まるように保ち、一方では数百の冗長な、話題からはずれた メッセージをリストからはずしている。このリストは、特に知的でものの わかった人々を魅了した。メッセージは、驚くほど有益で、完結しており、 道理をわきまえたものとなったのだ。また、これは抜群の反響板をなした。 我々に TidBITS に関連した考えや特定の話題に関する質問があれば、 TidBITS Talk 参加者は意見や反論を寄せてきた。リストに参加するには、 下記のページに詳細がある。

<http://www.tidbits.com/about/tidbits-talk.html>

技術的にもうまくいっている。Adam のほぼ 10 年来の SE/30 と Fog City 社の LetterRip 3.0 は、平然と負荷を処理している。そして、TidBITS Talk の最初の 100 日間で、たった一つの参加申し込みのトラブルを処理 しただけですんだのだ。このトラブルは Adam が Macworld に行っていた 間に起こった。私はまだ操られているとは思わなかった。

<http://www.fogcity.com/>

鈎、線、重り -- TidBITS Talk がデビューしてまもなく、Adam と私は 電話で話し合っていた。なにも企んでいる様子もない声で彼はいった。 「ねぇ、どこかの時点で TidBITS Talk のアーカイブのことを考えなきゃ いけないだろうね。Web ベースで TidBITS 記事のデータベースに結びつい たなにか。」「そう、 あんた が考えるなにかさ。」結局、Adam が TidBITS Talk の責任者だった。

一週間後、我々は再び電話に向かい合った。(いつものように)同時に Web をサーフィンしながら。二枚舌の気配すらなく Adam がいった。「ねぇ、 いい Web のメーリングリストのアーカイブをなにか知らないかい?」 「まったく知らないねぇ」と返す。「ほとんどはかなりひどいものさ。」 恐らく私の知っている最良のものは、Acorn Software 社による今はなき Frontier-Talk アーカイブだろう。依然、電話を続けながら、Adam は Web ベースのメーリングリストのアーカイブを探し始めた。何に関するメーリ ングリストかは問わなかった。アーカイブがどのように動くかを知りたかっ ただけなのだ。それがわかる前に、私もサーフィンをしていたが、対象は テクニカルなメーリングリストだった。技術好きの方がいいメーリングリ ストのアーカイブを作っていることが多そうだと見当をつけたので。

一時間後、我々はさじをなげ、落胆した。ほとんどのメーリングリストの アーカイブはひどいもので、単純なメッセージのリストがあるだけで、検 索機能がないのが普通。使えそうなものは 2 つ 3 つだけしか見つからな かった。皮肉なことに、自社製品を宣伝する会社がホストを勤めるアーカ イブさえ、ひどいものか無反応だった。きわめて簡潔にいうと、メーリン グリストのアーカイブの状態は底知れぬ深海のようだった。「これよりい いもの作るのは難しくないね。」Adam が宣言した。「なんてこった!」

その通り。私は Adam の都合のよいように真っ正直に行動していたわけだ。

ツール -- ずっと以前から、私はメーリングリストのアーカイブをサー ビスするために FileMaker Pro データベースを設計してきた。ちょうど 我々の記事データベースと同じように、Blue World Communications 社の Lasso を使ってそれを Web に接続することを意図してのことだ。データ ベースを作成することは易しい。骨の折れる作業は、Web ブラウザ内に表 示するためにメッセージを変換するかしこい方法を見つける中にある。ほ とんどの他のメーリングリストのアーカイブはこの領域で失敗する。特殊 文字は HTML エンティティに変換されねばならず、URL と電子メールアド レスはリンクに変換されねばならず、奇妙な文字や障害原因は取り除かれ ねばならず、長い行は再折り返しされねばらなず、日付スタンプはグリニッ チ標準時に変換されねばならず...、すべて、一方では、引用符、署名やそ の他特別にフォーマットされたテキストは明瞭なまま維持されるように、 オリジナルの ASCII フォーマッティングの多くはできるだけ保護される。

<http://www.filemaker.com/>
<http://www.blueworld.com/lasso/>

このことすべては FileMaker の範囲をずいぶん越えているので、私は忠良 なる役馬 HyperCard に切り替えた。一部の理由は ASCII を HTML に変換 してリンクを作るコードと、Chuck Shotton 氏のスクリプト対応の TCP ア プリケーションである NetEvents を使って HyperCard スタックに POP メールクライアントとしてサービスさせる他のコードもあったからだ。POP 機能が重要なのは、この HyperCard スタックが自動的に新規メッセージを 取って来て FileMaker データベース内に取り込むからだ。

<http://www.apple.com/hypercard/>
<http://www.biap.com/downloads/netevents.html>

Adam はこのことすべてを軽い無関心で眺めていた。「このことで死ぬこと はないんだよ。自分のできることをすればいい。あんたが作り出すものは いいに決まっているんだから。」なんという技巧!なんという術策!私は いっそう深く没頭したのだ。

HTML -- メッセージのインポートと加工を行う基本的な機能が整ったら、 今度は本当に骨の折れる作業に入った。Acorn 社の Frontier-Talk アーカ イブで私が気に入っていた点はフレームの使い方にあった。多くの Web サ イトはフレームをよく考えられたサイトナビゲーションの代用にするとい う誤った使い方をしている。だが、フレームは大量の情報への非直線的な アクセスを可能にするには良い方法でもあるのだ。メーリングリストは一 見直線的なものに見えるが、Frontier-Talk アーカイブはこの固定観念に 正面から立ち向かい、検索フォームを常に上部のフレームに、検索結果と 個々のメッセージを下部のフレームに表示するという方法を採った。検索 を実行して、後は欲しい情報を求めてアーカイブを直線的に探し回るので も、検索フォームと検索結果ページの間を何度も往復するのでもなく、 Frontier-Talk は必要な情報が見つかるまで検索条件を調整することを奨 励したのだ。メッセージをアーカイブの主要資源とするのではなく、そこ に収められた 情報 を重視した結果だ。これは素晴らしい思想だと思っ たので、盗むことにした。

それに、メーリングリストアーカイブのメッセージは“賢く”なければな らないとも思った。メッセージがどのスレッドに属しているかがわかり、 検索結果にかかわらずそのスレッド全体へのアクセスができなければなら ない。メッセージから同じ発言者による発言や、同じ日付の発言を呼び出 すこともできなければならない。また、TidBITS Talk が TidBITS で取り 上げられた題材に関連しているので、メッセージの中で参照されている TidBITS の記事へも直接リンクが張ってなければならない。

TidBITS Talk アーカイブ用の HTML をデザインすることは私のパブリッシ ング人生で最もイライラする体験の一つだった。この HTML は私が作り出 したものの中では最も複雑怪奇なものだった。しかも、最も苦労したのは 一般的な Web ブラウザの欠点や不具合を補うことだったのだ。どの Web ブラウザも(同じブラウザでわずかにバージョンが異なるものでも)HTML の解釈が異なるのだ。フォームエレメントの周囲のスペースの量が(もし ある場合には)異なり、正しくフォーマットされたテーブルがあるブラウ ザでは正常に機能し、別のブラウザでは機能しない。整列やサイズの指定 などはきまぐれもいいところだ。フレームやテーブルのサイズは各種ブラ ウザで大幅に異なり、同じブラウザでもリロード後には変わっていたりす る! しかもプラットフォームの違うブラウザではまた様子が変わる。

苦労した末に妥協して、6 月に TidBITS Talk リストの Web アーカイブを 披露したところ、好評を博した。Web アーカイブは便利ではあったが、HTML デザインは頭痛の種だった。どのブラウザでも同様に動作するものでもな かったし、長年のコンピューティング、マルチメディア、オンライン出版 で学んできたオンスクリーンインターフェースの法則をことごとく無視し ていたからだ。

ここで Adam が驚くべきしたたかさを見せた。このアーカイブが「史上最 高の検索可能なディスカッションアーカイブ」だと喧伝し、誰彼かまわず 見せびらかしたのだ。慌てた私はこれはなんとかしなければならないと考 えた。HTML に再び取り組み、無駄を取り去り、ルック & フィールを改良 し、どのエレメントにも可能な限り賢さを持たせることにした。

TidBITS Talk アーカイブ -- というわけで本日、TidBITS Talk アーカ イブをお目にかけよう。

<http://www.tidbits.com/search/talk.html>

このアーカイブは TidBITS Talk メーリングリストに配信されたすべての メッセージを検索することができ、スレッド表示することもできる。新し いメッセージは一日一回自動的に追加され、その都度適切なスレッドに加 えられる。このアーカイブの機能には以下のものがある。

TidBITS Talk アーカイブでの最近のディスカッションを少し覗いていただ きたい。リストを購読しなくても話題をフォローするには良い方法だ。 TidBITS に載らない話題を話すこともあるし、Adam は通常の TidBITS に 入りきらない記事をおまけとして TidBITS Talk にポストしたこともある。 MIME エンコーディングされたメッセージなど、まだ手を入れなければなら ない点もあるが、今では私も TidBITS Talk が Web ベースのディスカッ ションリストアーカイブの非常に良い例だと考えるようになった。

Engst さん、あなたはずるいやつだ。


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