TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#441/03-Aug-98

PC をコントロールしたい? 無償のリモートコントロールプログラムであ る VNC についての Kevin Savetz 氏のレビューを読んで欲しい。クレジッ トカード番号やパスワードを保護したい? 個人情報をストアするための 保護プログラムである Web Confidential を Adam が一見する。更に、 James Wilson 氏がインターネットから普通の電話への国際電話をどうやっ てかけるかについて述べ、そして Geoff Duncan が電子メール添付書類に からむセキュリティホールについての喧騒について解説する。

目次:

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今回の TidBITS のスポンサーは:


MailBITS/03-Aug-98

(翻訳:亀岡 孝仁 <tkameoka@fujikura.co.jp>)

Tilery 4.0.1 リリースされる -- Semicolon Software 社の Rick Holzgrafe 氏が 15 ドルのシェアウェアであるデスクトップランチャーユー ティリティである ( TidBITS-437 の“The Tilery 4.0 攻勢に出る”参照) Tilery 4.0.1 をメンテナンスリリースとして発表した。Desktop Printing を使用する時や、ダメージを受けたフォルダタイトルのために新たなター ゲットを選ぶ時などに起こるクラッシュを解決するためのバグフィックス と、それに加えて、ユーザは Always Hide Others 機能が生きている時で も一つ以上のアプリケーションが見えているように出来る。Tilery 4.0.1 は 4.0 の登録ユーザには無償で 427K のダウンロードである。 [ACE]

<http://www2.Semicolon.com/Rick/Tilery.html>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=04969>

本来の開発者 -- 先週の TidBITS-440 “TidBITS Talk と TidBITS Talk アーカイブ”で Acorn Software 社で開発された Frontier-Talk メーリン グリストの今はなきディスカッションアーカイブへの Web インターフェー スから、フレームベースのインターフェースのアイディアを“借用”した 話をしたが、実は、フレームベースのインターフェースはもともとは Blue World Communications 社の Kyle Jessup 氏によるものであることが判明 した。なお同社は、我々が FileMaker をベースにした方法と Web を結び つける製品として使っている Lasso のメーカでもある。[GD]

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05012>
<http://www.tidbits.com/search/talk.html>
<http://www.blueworld.com/lasso/>

Conflict Catcher リベート最新情報 -- 前に TidBITS-438 の “Macworld Expo NYC 最上のもの”のなかで Casady Greene 社の Conflict Catcher 8.0 が 79.95 ドルで 9 月の初めに出荷され、30 ドル のリベートも含まれるであろうと書いた。それで間違いではないのだが、 リベートは Conflict Catcher を既に所有している人にのみ 01-Jan-99 ま で適用される - つまりアップグレードする人に対する値引きを提供してい るにすぎない。もし誤解を招いたとしたら申し訳ない。 [ACE]

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=04981>
<http://www.casadyg.com/>


電子メール添付のセキュリティ問題

by Geoff Duncan <geoff@tidbits.com>
(翻訳:西村 尚 <hisashin@axes.co.jp>)

最近の CIAC セキュリティ報告によると、電子メールクライアントが異常 に長いファイル名(200 文字以上)を持つ MIME 添付を処理する時に危険 にさらされる可能性があることを明らかにしたそうだ。この問題は、基本 的に Windows 版の Microsoft Outlook、Outlook Express、Netscape Messenger に影響を及ぼし、電子メールクライアントをクラッシュさせる バファーオーバーフローの原因となる可能性と、クライアントのシステム 上で実行するようなコードになりうる可能性がある。これは、ユーザーが メッセージまたは添付ファイルを開こうとしなくても起こる。Microsoft 社と Netscape 社は自社製品のために、Windows 版の自社ソフトウェア用 のパッチを添えて、セキュリティ報告を発布した。

<http://www.ciac.org/ciac/bulletins/i-077a.shtml>
<http://www.microsoft.com/ie/security/oelong.htm>
<http://home.netscape.com/products/security/resources/bugs/longfile.html>

歴史的に、バッファオーバーフローを利用する方法は、目標のプログラム の限界チェックにかからずにすむように正確なバイナリデータを巧妙に作 り、その後そのデータがなんらかの方法でコードであるかのように実行さ れるようにすることである。もし、電子メールプログラムがこの問題を許 し、これを利用するように設計されたメッセージに出くわせば、クラッシュ する結果となる可能性が最も高いだろう。(フォーマットが不良のメッセー ジを処理するときに電子メールプログラムがクラッシュすることについて は特に新しいものではない。)悪意のあるコードを実行するためには、外 部データが特定のオペレーティングシステム上で稼働する特定の電子メー ルプログラムを標的にするように設計されるに違いない。したがって、 Eudora の走る Mac は、Windows 98 と Outlook Express の走るPentium ベースのシステム上のコードを実行するように設計されたメッセージを受 け取っても、影響から免れるだろう。

現在までのところ、このコード実行により被害を被った例は知られていな い。この問題に関する一般的な警鐘は、可能性として被害をうける Microsoft 製と Netscape 製の Windows ベースのクライアントが広く流布 していることに由来する。さらにコード実行による被害が純粋に理論上だ けのものであると判明しても、頻繁に使用される大量の電子メールプログ ラムをクラッシュさせる方法の発見は気がかりである。これらのプログラ ム用のパッチが現在は入手可能ではあるが、大部分のユーザーがアップグ レードし、市販製品が修正版を出荷するには数ヵ月かかるだろう。

Mac 版 Microsoft Outlook Express 4.0 と製造番号が 297 以下(Apple メニューから About Outlook Express を選択し、自分のコピーの製造番号 を参照のこと)の 4.0.1 のユーザーは、Microsoft から被害の可能性を修 正するために 2.2 MB のアップデートをダウンロードすることができる。 Qualcomm 社は、Macintosh と Windows 版の Eudora Pro と Light の現行 バージョンはこの問題の影響を受けないと確認している。Netscape によれ ば、Macintosh 版の Netscape メールソフトウェアには危険がないという ことだ。Bare Bones Software の Mailsmith も、この問題によるセキュリ ティの危険性はない。Emailer に関する情報はなにもないが、これも被害 の可能性は極めて低い。

<http://www.microsoft.com/msdownload/iebuild/oebuff_mac/en/oebuff_mac.htm>
<http://www.eudora.com/>
<http://www.barebones.com/>


Internet テレフォニー: あなたの Mac から国際電話

by James Wilson <james@mail.tropical.co.mz>
(翻訳:松岡 文昭 <mtokfmak@mxa.meshnet.or.jp>)

私は、数十年前に私の両親の最初の電話が家に来たときのことを、今でも 覚えている。それはイギリス産の茶色いベークライトを鋳込んだ重々しい 物体で、鳴ると言うよりいななきのようにしばしば思えたものだ。しかし その機能たるや、突然、国が小さくなり私の家族も近くにいると感じさせ るものであった。幸い技術と私自身も進歩した。現在、私は、家では物事 がどうなっているだろうかと思いながら、世界の果てで人生の大半を過ご しており、その結果、請求書を受け取っては財布を空っぽにするような電 話代と向き合っているのだ。世界中の通常の電話へ Internet を使用して 電話をかけることができることを最近発見した私は、一気に行動へと移っ た。若干の労力の後、私はリーズナブルなコストで実用に耐えうるシステ ムを遂に構築した。

Internet 電話について記さなければならない重要なことの一番目は、一台 のコンピュータからもう一台のコンピュータに話しかけない限り、ただで は ない ということだ。それでも、特に私のように世界の遠く片隅にい る者には 安い ものである。ここまで読んで、あなたの中で質問が沸々 とわき上がっていることであろう。どのようにしてそれは動くのか?何を する必要があるか?その費用は?どれほど上手くいくのか?

ソフトウェアとサービス -- VocalTec 社は Internet から通常の電話回 線網に電話をかける機能を持った Mac 用 Internet Phone バージョン 3.5 を最近リリースした。そのプログラムを使用すれば同じオンライン上にい る VocalTec 社のソフトウェアの他ユーザーとも、使用しているコンピュー タの種類に関係なく、直接話をすることができる。

<http://www.vocaltec.com/>

Internet Phone 3.5 を使用するには、PowerPC 搭載の Macintosh(最低で も 80 MHz の PowerPC 601 CPU もしくは 120 MHz の PowerPC 603 か 604)、Mac OS 7.6.1 以上、RAM 16 MB 以上、外付け PlainTalk マイクロ フォン(あなたの Mac が内蔵タイプであってもだ)、そしてできればヘッ ドフォン、が必要だ。(68040 搭載 Macでは Internet Phone 3.1 が使用 可能だが、私の知る限りではそれはコンピュータ間での通話のみとなって いる。)Internet Phone 3.5 は VocalTec 社より使用期間限定版が無償で ダウンロードできる。50 ドルでフルライセンスを購入しないと、14 日で 一部の機能が使用できなくなるようになっている。

電話をするには Internet Phone の他にも必要なものがある。VocalTec 社 はソフトウェアのみを作成し、Internet からあなたの電話を受けたり、要 求のあった電話番号に接続したり、請求書(人生はそんなものだよ)を発 送したりするテレフォニーサービスは専門の ITSP 各社(Internet Telephone Service Providers)が行っているのだ。VocalTec 社は Delta Three 社のような一部の ITSP 会社とパートナー契約を結んでおり、 VocalTec 社の Web ページよりそれらの会社に容易にコンタクトができる ようになっている。ITSP 会社に口座を開く前に、あなたの電話相手先地域 で最も安いところはどこであるかの調査は怠らないように。ITSP 各社間の 値段は 10 から 15 パーセントの差があり、何社かは限定された地域にの みアクセスを提供している。Delta Three 社は全世界を対象としているの で、世界中に如何なる電話をすることも可能だ。ITSP 会社に口座を開く (クレジットカードで前払いすることが必要)とあなたの Internet Phone 用の承認コードが発効される。

<http://www.deltathree.com/>

辛抱は三文の得 -- Internet Phone はどれだけ上手くいくのだろう? VocalTec 社は Internet Phone が仮想メモリ対応と主張しているが、「対 応」という言葉はルーズに定義されているに違いない。私の経験では、あ なたが仮想メモリを使用した場合、あなたの受け手側ではほとんど人間の 声と思えるものが聞こえないのだ。Mac のモデムポートを監視する全ての 機能拡張とコントロールパネルも外しておいた方が良いだろう。例えば、 Global Village 社の GlobalFax や TelePort ソフトウェアだ。また、コ ンピュータがマイクロフォンから音声を受け取っていることを必ず確認す るように。Mac OS 8.1 は機会ある度に外部マイクロフォンを切り離すよう に思えるのだ。

その後は電話をかけるのは PPP 接続と同じように簡単だ。Internet Phone を起動し、受け手の電話番号を入力し、接続ボタンをクリックし、辛抱強 くなることだ。辛抱強さは特に重要だ。音質は全く許容できるものだが、 1960 年代の国際電話を思い起こさせるようなシステム内での大きなタイム ラグがあるからだ(多分、1 秒かそこらであろうが、とても長く感じる)。 このラグは私が電話をかけている場所(東アフリカのモザンビーク)が原 因に違いない。もっとローカルの電話では遙かに良いかもしれない(例え ばアメリカとイギリス間)。一度こつをのみ込めば、このシステムは連絡 を取り合うには確かに十分なものだが、頻繁なビジネス用途には向かない。 電話としての性能は、予想通り、Internet のトラフィックや相手先国に よって変わってくる。私の場合、アメリカやイギリスへの接続は良好で、 日本はリーズナブル、ケニアは難しく、インドに至っては火星と同じかと 思われる。

通信費 -- さて重要な部分だ。実際の費用はどれくらいか?Internet 電 話の費用は相手先国や ITSP 各社で異なるが、一分あたりの料金は大体、 アメリカが 0.13 ドル、イギリスが 0.16 ドル、日本が 0.27 ドル、オー ストラリアが 0.20 ドル、そしてロシア(モスクワ)が 0.27 ドルだ。電 話料金は、全ての通話が Internet を起点とすることから、どこから電話 をかけているかは関係 ない

私はアメリカの標準的な国際通話料金に詳しくないが、これらのレートは アメリカに居住している人には通常料金よりも大幅に安いものではないか もしれない。しかしもっと遠くに住んでいる人々には大幅な節約を意味す るはずである。モザンビークの私の場所からは、イギリスまたはアメリカ への通常料金は一分間約 4 ドルである。私は最近、Internet を使用し Apple のアメリカのテクニカル・アシスタンスが応答するまでの長い 21 分間を、それほどの金銭的な痛みもなく堪え忍ぶことができたのだ... しかしそれはまた別の機会にしよう。

[James Wilson 氏は派遣水産エコノミストである。彼は特にパルスダイア ルのできる G3 PowerBook モデムの入手が可能な方よりの情報を待ってい る。]


Web Confidential:あらゆる秘密に安全を

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:尾高 修一 <shu@pobox.com>)

1995 年 5 月の TidBITS-279 で、私は“PowerTalk to the Rescue?”と いう記事を書き、PowerTalk 鍵束が認証を必要とする Web サイトにどれだ け威力を発揮しえるかを説いた。幸い、将来の Mac OS のバージョンでは AppleShare とインターネットのパスワード用に鍵束が復活する。だが、そ れまで待ちたくはない、あるいは機密度の高い情報を格納でき、鍵束と統 合することのできるソリューションが欲しいという方には、Alco Blom 氏 による 25 ドルのシェアウエア、Web Confidential 1.0.1 をお薦めしよ う。名前とは裏腹に、Web Confidential は Web 関連だけでなく、ユーザー ID やパスワードなどあらゆる秘密の情報を格納することができる。Alco は強力なブックマークユーティリティ、URL Manager Pro も手がけている ので、Web Confidential があらゆる場面で URL Manager Pro と連動する のもうなずける。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=01469>
<http://www.web-confidential.com/>

秘密のカード -- Web Confidential のインターフェースは、4 つの フィールドがあるカードという HyperCard スタックのようなシンプルなも ので、ここに様々なカテゴリの情報を収める。フィールドはカテゴリによっ て変わるので、Web ページなら名前、ホームページ、ユーザー ID、それに パスワードのフィールドがある一方、クレジットカードなら氏名、有効期 限、番号、それに暗証番号のフィールドがある。三角形をクリックすると 5 つ目のフィールドが表示され、メモを書き込むことができる。

最初のフィールドの隣には三角形のポップアップするナビゲーションメ ニューがあり、同じカテゴリに属するカードにアクセスすることができる。 チェックマークのポップアップメニューからはカードの属性をコントロー ルすることができ、パスワードフィールドの隣にある眼鏡アイコンにマウ スポインタを持っていくとパスワードがバルーンヘルプで表示される。パ スワードはパスワードフィールド内では黒ポチで表示される(他の人に覗 かれることを防止する)ため、この眼鏡アイコンは便利なメモ代わりに重 宝するうえ、入力ミス防止にも役立つ。ただ、ファイルを開いたままコン ピュータの前から離れてしまうと問題になりかねないため、使用していな い時には忘れずにファイルを閉じるようにしなければならない。次期バー ジョンでは一定時間が経過したらファイルがロックされるようなオプショ ンが追加される予定だ。

カテゴリ間の移動はポップアップメニューで行う。各カテゴリには複数の カードを作ることが可能だ。各カテゴリ内のカード間の移動には矢印ボタ ンを用いる。カテゴリには以下のものがある。

ウインドウ上部のツールバーには、他のインターネットアプリケーション への切替え、URL への接続、現在のパスワードのコピー、カードの検索、 暗号化キーの変更、保存、それにカードの追加・削除を行うボタンが並ん でいる。メニューにも同じ機能が持たせてあるほか、ソート、カテゴリ内 の最初・最後のカードへの移動、それに初期設定へのアクセスができるよ うになっている。

強力メニュー -- Web Confidential アプリケーションが動いている間、 Internet Explorer、Netscape Navigator、Eudora、Fetch、それに Anarchie など、メニュー共有をサポートしたアプリケーションからは 3 つのメニュー経由で Web Confidential の機能を利用することができる。

究極の暗号化 -- これまでの説明からは、使いやすさの向上を図ったシ ンプルなフラットファイルデータベースという像が浮かび上がる。実は Web Confidential とはそれだけのもので、よくできてはいるが HyperCard ス タックや FileMaker データベース、あるいは単なるテキストファイルに ユーザー ID やパスワードを格納したら、Web Confidential の基本機能は 実現できることになる。Web Confidential がこうした普通の人が自作でき る方法と大きく異なるのは、極めて強力な Blowfish アルゴリズム(また はオプションで PGP)を用いてファイルを暗号化することにある。毎秒 100 万のキーをテストすることのできるコンピュータが、10 文字からなるキー を力ずくで解読しようとした場合、最高 7,000 年が必要になるとされてい る。

<http://www.counterpane.com/blowfish.html>

文書公開 -- Web Confidential の使用法は簡単だが、Alco がライター の Colin Brace 氏と共同ですばらしいマニュアルを作り上げたことは称賛 に値する。マニュアルは PDF フォーマットで、印刷を前提として作られて はいるものの画面上でも十分に使える。検索機能と主な見出しに設定され たブックマークのおかげだ。マニュアルには背景、チュートリアル、コマ ンドキーショートカットがすべて記載されたリファレンスから構成されて いる。これは私が今までに見たシェアウェアのマニュアルではベストの部 類に入る。欲を言えば各カテゴリの違いの説明があった方が良いのと、や や漠然としたカテゴリをどのように使うかの例があると良いだろう。たと えば時々 Tonya の社会保障番号が必要になることがあるが、これなどは個 人情報カードに入れるには最適だ。

Web Confidential のインターフェースエレメントのほとんどでバルーンヘ ルプが使用できる。一部のダイアログボックス内ではやや見にくいことは あるが。鍵メニューと眼鏡メニューには短いオンラインヘルプもある。

極秘指定解除 -- というわけで、あらゆる極秘情報を秘蔵しておきたい という方は、ぜひ Web Confidential を試してみるべきだろう。最初の 30 日間は普通に使用できるが、25 ドルのシェアウェアフィーを支払わないで いると、新規にカードを追加することができなくなり、暗号化もできなく なる(ただし、以前に暗号化されたファイルはそのまま残る)。これは試 用という目的には十分だろう。全般的に Web Confidential は使いやすく、 安全で、インターネットアプリケーションとは良く統合されている。来週 号では、なぜ私が今後真面目に Web Confidential を使うかという教訓談 をお届けしよう。


コントロールフリークのための無償プログラム

by Kevin Savetz <savetz@northcoast.com>
(翻訳:尾高 里華子 <rikako@pobox.com>)

ある日のこと、自分のオフィスに入った途端唖然とした。友人の Mitch が 遠くから訪ねてきていて、私の Mac でちょっと仕事をやっていたのだ。ス クリーンを覗いた時、自分の目を疑った。私の Mac のスクリーンには、お 馴染みの Mac のアイコンのではなく Windows NT のデスクトップが表示さ れていたのだ。実際そのデスクトップは 350 マイル離れたところにある Mitch のマシンのものだった。Mitch は私の Mac 経由で自分のマシンを操 作(プログラムを動かしたり、プログラム間を行き来したり、マウス操作 やコマンドのタイプといったこと)していたのだ。私の驚き具合に満足し なかった Mitch は Linux を走らしている別のマシンにアクセスした。今 度は X のデスクトップがスクリーンに現れた。

この魔法の種は、Olivetti and Oracle Research Lab(ORL)社の Virtual Network Computing(VNC)という新しいツールだった。VNC はインターネッ ト上であればどこからでもインターネットに繋がったマシンの操作を可能 にしてくれる無償のプログラムだ。

<http://www.orl.co.uk/vnc/>

リモートコントロールを行うソフトは目新しいものではない。Mac ユーザー の間では大分前から標準になっている Netopia 社製の Timbuktu Pro があ るし、別のプラットフォーム用のリモートコントロールプログラムも存在 する。一番大きな違いは VNC が全くの無償であるのに対し、Timbuktu の 方はマシン一台につきおよそ 50 ドルかかるということである。

<http://www.netopia.com/software/tb2/>

VNC は、リモートでアクセスしたいマシンで動作するサーバと、そのマシ ンのウインドウをリモコン操作するマシンに出すためのクライアントの 2 つの部分から構成されている。サーバとクライアントのマシンは、双方が インターネット接続されているのであれば隣の部屋にあろうと海の向こう にあろうと構わない。

サーバマシンとクライアントマシンは同一 OS を走らせている必要はない。 Windows 95/98、Windows NT、Linux、Solaris、DEC Alphas 用にはサーバ とクライアント両方のソフトがある。また Macintosh、Java、Windows CE、 PalmPilot(!) などほかのプラットフォーム用のクライアントソフトも用意 されている。その一部はほかのプログラマーが貢献しているものだ。Mac サーバは無いので(計画にはあるのだが VNC メーカー側はリリースの日付 を明言していない)、外から自分の Mac にアクセスできない。Mac クライ アントは Mac OS 7.0 以上、Thread Manager、そして Open Transport 1.1.1 以降または MacTCP のどちらかが使用必要条件となるファットバイ ナリである。

<http://www.orl.co.uk/vnc/contribs.html>
<http://www.orl.co.uk/vnc/macvncviewer.html>

VNC サーバはパスワードでプロテクトされるので、そのマシンへの完全な アクセスと勝手に侵入しようとする者のアクセスをチェックする関所札と なるパスワードは良いものにしなければならない。一般論として良いパス ワードというものは、長めで、大文字、小文字、数字、句読点を混ぜてあ るものだ。覚えやすい文の各語の最初の文字をパスワードにするのも一案 だろう。たとえば“Frosty the snowman was a jolly happy soul”をもと にパスワードを作ると“FTSwajhs”になる。

VNC サーバに接続するには、まず(127.0.0.1:0 のように)IP 番号、コロ ン、セッション番号を入力する。次にパスワードが要求されるので入力す る。すると、別のマシンをコントロールできるようになる。VNC は神出鬼 没でインターネットで接続されていれば簡単にどんなマシンからでも作業 を行うことができるようになる。オフィスのマシンで文章を書きかけのま まリオに行ったとしても、PowerBook からログインして残りを書き続ける ことも可能だ。もっともこれは、オフィスのマシンに VNC サーバがインス トールしてあり、そのマシンの電源が入っており、かつ既知の IP 番号で インターネット接続してある場合に限るのだが。

スピードへの足かせ - VNC 経由でのマシン操作はその場での操作と全く 同じというわけにはいかない。その最たる違いは画面を書き換える速度で あろう。リモート側マシンのスクリーンに出ているものに変更があるたび に、VNC サーバはクライアント側にその情報を送らなければならないのだ。 スクリーンの変更情報が多くしかも低速で接続している場合は、インター フェースが緩慢になってしまう。VNC は変更の激しくないウインドを表示 するプログラム(ワープロ、コマンドラインウインドウ、そして Web ブラ ウザさえ)はちゃんと扱うことはできる。だが、VNC に限らずほかのリモー トコントロールソフトも、ゲームやスクリーンセーバーの速い画面の書き 換えにはついていくことができない。

両マシンのインターネット接続速度は VNC の有用性に最も大きく関る。 Mitch はここ数か月電話回線を通して VNC を使っていた。自宅にある Linux マシンから職場の Windows NT マシンに繋いでいたのだ。モデムは 28.8 Kbps で遅いが使用には足ると言っていた。「これを常時使って作業 をするのはたまらないけれど、自宅のマシンではできないが職場のではで きることをやる場合には有効だ。1 〜 2 時間かけて職場まで足を運ぶより も断然ましだ。」

ISDN や私の愛用のケーブルモデムのような広域幅のものを利用している時 は、VNC は遅いながらも許容範囲である。両方のマシンが同一 Ethernet LAN 上にあるならば、アクセスはスピーディーであるが、画面の書き換え に関しては通常よりも大分遅いと感じるであろう。私は自宅には PC と Mac の 2 台のマシンがあるがモニタは一台を共有している。VNC を使って Mac から PC にアクセスするようになった今では、ケーブルをつなぎ変えたり ややこしいモニタのスイッチ類にいらいらすることもなくなった。

[編集者註:PC を Windows 98 にアップグレードしたところ、Timbuktu Pro for Windows 95 1.5 と Timbuktu Pro for Mac OS 4.0 と併用することが できなくなってしまった。Netopia 社によると、この唯一の解決策は Timbuktu Pro 32 for Windows NT and Windows 95/98 にアップグレードす ることだそうだが、かつてと同等レベルの互換性を取り戻すためだけに最 低でも 70 ドル出費することになる。以前にもアップグレードをするより ほかには道はないという Timbuktu 絡みのこの問題にぶつかったし、また してもと思った時、絶妙のタイミングで Kevin の記事が現れたのだ。PC をコントロールするのに現在は VNC をありがたく使用しており、Timbuktu Pro はこの任務から外されたもののリモート Mac サーバをコントロールす る用としては今でも役に立っている。-Adam]

VNC で少しでも速い画面の書き換えを行うためには、VNC が可能なかぎり 小さな情報を送るように設定することだ。つまり、サーバのデスクトップ を単色にし、表示の色数を 1,677 万色でなく 256 色にし、スクリーンセー バーも画面を真っ黒にするだけのものにするとかだ。

完ぺきな解決にはあらず - VNC がエレガントではあるものの融通の利か ないヤツだということは否定できない。VNC 内で印刷をしようとすると、 印刷はリモートマシンのプリンタで実行される。VNC ウインドウ内でクリッ プボードにコピーすると、使われるのはクライアントマシンのクリップボー ドである。だが Macintosh クライアントのベータバージョンでは必ずしも こうはならないようである。VNC にはファイル転送機能がついておらず Timbuktu のように簡単にコンピュータ間で情報を動かすことはできない。 この解決策として思いついた一番良い方法は、リモートマシンからローカ ルの自分にファイルをメールすることだ。FTP サーバでファイルをやり取 りするのも上手くいくし、FTP サーバやクライアントを VNC に統合するプ ルグラムを書こうという人がいるかもしれない。

Mac 用のリモートコントロールのソフトでは、ほかの OS にある複数のマ ウスボタンをどう処理するかが問題となる。Windows では基本操作で右ボ タンをクリックすることが多い。VNC はボタンが 2、3 個あるようなマウ スをエミュレートするのに Option + クリックや Command + クリックを割 り当てて処理している。Timbuktu Pro でも Windows のマウスの右ボタン 用に Command キーを使用するが、VNC は右クリックとドラッグアクション をさらに上手にこなしてくれる。[また、複数のボタンのついたマウスかト ラックボールをお持ちならば、二つ目のボタンを Command + クリックとし て割り当てると、VNC は完璧に動作してくれる。-Adam]

最後に、VNC にはちょっと洗練されていない部分がある。Mac でのウイン ドウの位置を覚えてくれないし、操作するマシンの IP 番号も覚えてくれ ない。またコントロールする特定のマシンのアドレスなどをブックマーク として保存することもできない。画面を書く際にトラブルが起きることも あるし、稀であるがマウスクリックのようなイベントに一回で反応しない こともある。それでも、VNC は普通ならアクセスできないマシンにアクセ スできるようになるのだから実に便利なツールである。それに加えて無償 なのだ。Timbuktu Pro のような市販品にある付加機能が必要でないならば 最高のものであろう。

[Kevin Savetz は Computer Shopper、MacAddict を始めとする雑誌に Mac やインターネット関連の記事を書いている。ビンテージマシンに取りつか れたコレクターでもあり、Mac だけでなく Atari 800 や Timex-Sinclair といったものいじっているらしい。]


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