TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#449/05-Oct-98

大学の“詩人のためのプログラミングコース”を覚えている? 今週は我ら のテクニカルエディター Geoff Duncan が Apple 社の低レベルデバッガで ある MacsBug について、プログラマーでない一介の Mac 狂でも扱えるよ うにやさしい言葉で機能を説明してくれる。また今週は新しいスポンサー を 2 社、Maxum 社と Dantz 社を迎え、Conflict Catcher 8.0.2 と話題の Eudora Pro 4.1 の公開ベータ版についてのお知らせと、無料 Nisus Writer をダウンロードできるというニュースもお届けする。

目次:

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今回の TidBITS のスポンサーは:


MailBITS/05-Oct-98

(翻訳:秋山 晃子 <nobineko@club.udn.ne.jp>)

Conflict Catcher が Mac OS 8.5 互換になる -- 今日 Casady Greene 社が Conflict Catcher 8.0 の無料アップデートをリリースし、Conflict Catcher は完全に Mac OS 8.5 互換になった。前バージョン 8.0.1 では Clean-Install System Merge 機能の情報が一部加えられていただけだった が、新しい Conflict Catcher 8.0.2 では今月末に出る Apple 社の新オペ レーティングシステムをにらんでこの機能を完成させている。またこの 8.0.2 アップデートはより多くのモニタタイプと共に起動ファイルの追加 記述もサポートしている。Conflict Catcher 8 の詳しい情報は“Conflict Catcher、ナイスキャッチ” TidBITS-446 を参照してほしい。8.0.2 の アップデータは 1.8 MB のダウンロードになる。 [JLC]

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05086>
<http://www.casadyg.com/downloads/>

Eudora Pro 4.1 パブリックベータ版 -- TidBITS はパブリックベータ版 に関しては真に印象的なリリースの場合だけレポートしているのだが、 Qualcomm 社の Eudora Pro 4.1 ベータ版は正にその印象的なリリースと言 える。バージョンナンバーを見るかぎり小さな改訂にすぎないが、ずっと Eudora を使ってきたユーザーには垂涎ものの機能が列なっている。Eudora Pro 4.1 は今や IMAP をサポートし、Microsoft Word 98 にあるようなイ ンラインスペルチェックを備え、全く新しい Search コマンドを提供し、 メールボックスウインドウでプレビュー用のウインドウを表示することが できるようになり、引用文に色を付け、フィルターに Speak アクションを 追加している。さほど重要ではないが素晴らしい機能として x-eudora-setting URL タイプがある。この機能によりユーザーは、受信 メールのメッセージ中にある x-eudora-setting URL をクリックし、グラ フィックなインターフェースからセッティングの編集をすることができる。 この機能を利用すれば ResEdit や AppleScript を使わなくても数多くの Eudora のちょっとしたセッティングにアクセスできる。この使用期限つき のベータ版は我々のテストでは確かな動作を見せているのだが、すでにい くつかのバグが報告されている。したがってベータ版を試用する前にメー ルフォルダのバックアップを取っておくことをお勧めする。現ベータ版 4.1b26 は 3 MB のダウンロードである。ひとつ言及すると、残念なことに README ファイルの中で Eudora が FreePPP では動作しないと書かれてい るが、これは正しくない。Eudora は FreePPP で立派に動作する。しかし OT/PPP と MacSLIP 設定パネルは FreePPP に対応していない。 [ACE]

<http://www.eudora.com/betas/>

Nisus Writer 4.1 がフリーウェアに! -- Nisus Software 社が同社の強 力なワードプロセッサである Nisus Writer の旧バージョン Nisus Writer 4.1 を無料で配布するという異例の措置を始めた。Nisus Writer 4.1 が提 供する機能には未だに他のワープロでは実現されてない、無限回数の取り 消し、不連続な選択、複数キー指定のキーボードショートカットのカスタ マイズ、GREP 検索、強力なマクロ機能、グラフィック作成、WorldScript のサポートなどが含まれている。1996 年には多くのうれしい機能が追加さ れた Nisus Writer 5 が市場に出たが(“Nisus Writer バージョン 5 へ” TidBITS-352 を参照)、なお Nisus Writer 4.1 はこの数年間立派に役目 をこなしていた。Nisus についての詳しい情報は、3 回にわたってお送り した Nisus 3.0 のレビューが TidBITS-116 TidBITS-117 TidBITS-118 に、また Nisus 4.0 についての 3 回シリーズ“Text Processing”“Word and Document Processing ”“Multimedia Features”がそれぞれ TidBITS-263 TidBITS-264 TidBITS-265 にある。 [ACE]

<http://www.nisus.com/nisusdl/login.asp?new=yes>
<http://www.nisus-soft.com/5.0_features.html>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbser=1055>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbser=1054>

無料の Nisus Writer 4.1 には印刷されたマニュアルとかテクニカルサポー トなどが付いていない。しかしこれらは別途購入でき、Joe Kissell 氏の 本 The Nisus Way は有用な本だと思われる( TidBITS-319 の“私は Joe の本です”を参照)。また現バージョン Nisus Writer 5.1 へ 50 ドル (マニュアルなしの場合は 40 ドル)でアップグレードもできる。Nisus Software 社のこの大胆な措置は称賛に値する。Microsoft Word のような 怪物ソフトが優勢を誇る中、小企業はできるだけ数多くの人に自社製品を 紹介することにより生き残りの道を探らなくてはならない。刺激策として 始めた旧バージョンの無料配布はゲリラ的マーケティングとして成功だっ たかもしれない。最初の 3 日間で Nisus Writer 4.1 をダウンロードした 人は 6000 人を越えた。 [ACE]

<http://www.amazon.com/exec/obidos/ISBN=1558284559/tidbitselectro00A/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=01089>


TidBITS の新しいスポンサー: Maxum Dantz

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:尾高 里華子 <rikako@pobox.com>)

Mac が元気を盛り返してきた。一年ほど前 Macintosh 雑誌が薄くなってき たの(と Macworld/MacUser の合併)は Apple が窮地に立たされているか らだと多くの人が指摘していた。これは事実で、メジャーな雑誌への広告 の大幅減はすなわち業界自体が縮小している現れである。これは我々にとっ ても痛手で、実際 TidBITS の新規スポンサーと契約を交わすのは至難の業 だった。だが、今 Apple は主力なメディアに広告費を相当つぎ込んでお り、Mac 雑誌にもその効果が現れ始めているし、その上昇気流は私たちに も恵みの雨をもたらしてくれた。先週オンラインソフトウェア販売の大手 である Digital River 社をスポンサーに迎えたが、今週新たに Maxum Development 社と Dantz Development 社を迎えることになった。Macintosh の復活は嬉しいことであると同時に仕事面でもありがたい。長年多くの者 が Macintosh 業界に力を注ぎ、どん底からはい上がってきた今喜びを噛み しめているのだ。

Maxum Development 社 -- Maxum Development 社が TidBITS のスポン サーに加わってくれたことを大変嬉しく思っている。その昔 Macintosh イ ンターネットデペロッパーなどたいしておらず、業界のショーは毎回同じ 顔触れだった。そして年を重ねるごとに新たな会社が加わったり、また去っ て行った。だが最初から変わらない顔が 2 つだけある。Maxum 社の John O'Fallon 社長と Clearway Technologies 社の Mark Kriegsman 社長の二 人だ。両社とも定評のある StarNine 社製 Macintosh Web サーバ、WebSTAR 用の革新的なアドオンで名を揚げた(NetCloak と NetForms が Maxum 製 で、FireSite と Nitro が Clearway 製である)。

この 2 社は現在 WebDoubler という機能満載のキャッシュを行うプロキシ サーバを共同作成している。これは学校、図書館、職場など Web サーバの 性能を向上させたいし、それぞれの状況にふさわしくない情報にフィルタ をかけたいという組織に適している。WebDoubler は情報の選別や使用状況 の追跡だけでなく Web のキャッシングもできるようになり今まで Mac で はできなかった部分を埋めてくれるのだ。こういった機能自体は新しいも のではないのだが、インターネットクライアントやインターネットサーバ を完全に Mac でまかなっている者にとっては、これらの機能を網羅したも のを探すのは難しかったのだ。インターネットに繋がっている Macintosh ネットワークに関っている人は、WebDoubler の 30 日間限定デモを試して みるとよいであろう。今抱えている問題が解決できるかもしれない。また、 上記のスポンサー欄のリンクから WebDoubler を購入すると 20 % の割引 が受けられる。

<http://www.maxum.com/WebDoubler/>

Dantz Development 社 -- そしてもう一社、かつて我々のスポンサーだっ た Dantz Development 社 がまた復帰してくれることになった。Dantz Development 社は Macintosh デベロッパーの中でも年配格で、Macintosh のバックアップソフトとしては最もパワフルで最もフレキシブルで知られ ている Retrospect の製作元でもある。PC Week 誌でも PC のネットワー クのバックアップ用に Macintosh と Retrospect を購入するように薦めて いたほどだ。

Retrospect の最新のバージョンは 4.1 で、ほとんどの Macintosh を起動 できる緊急用の CD-ROM が付属している(ハードディスク全部をバックアッ プからレストアしたい時に便利だ)。さらに重要なことは Retrospect 4.1 にインターネットのバックアップセットを使って標準的な FTP サーバに バックアップする機能が加わったということだ(偶然にも Maxum 社の John O'Fallon 氏は同社の Macintosh FTP サーバ Rumpus が Retrospect 4.1 をさらに上手く処理できるように作業を行っているところだと話してい た)。特に Retrospect に付属されている圧縮と暗号化の機能との併用し て FTP でバックアップするのは、バックアップ用のデバイスを購入したり 管理したりしたくない個人や組織(インターネットバックアップサービス のオファーも含まれている)、重要なファイルのバックアップをオフサイ トに置いてさらなる安堵を得たい向きに理想的だろう。私は紛れもなく後 者の部類に属する。もっともその補助のバックアップを使うことにならな いことを常に願ってはいるのだが。

<http://www.dantz.com/dantz_products/prod_intros/retro4_1_intro.html>


MacsBug、パワーユーザーのために:第 1 部

by Geoff Duncan <geoff@tidbits.com>
(翻訳:西村 尚 <hisashin@axes.co.jp>)
(  :松岡 文昭 <mtokfmak@mxa.meshnet.or.jp>)
(  :尾高 修一 <shu@pobox.com>)

面白いゲームがある。Macintosh のソフトウェアをそれがどれほど Mac ラ イクかを基準に地球儀の上に点を置いていこう。

最も簡単で直観的な Mac OS 用ソフトウェアを表わす点をカリフォルニア 州 Cupertino の Apple 本社に置くのは自然だろう。たくさん点を置いて いくにしたがって、サンフランシスコ周辺が、それぞれ Macintosh のプロ グラムを表わす何千という点に覆われていくことがわかる。実際、ほとん どの Macintosh ソフトウェアは、パワーユーザー向けの習得の難しいプロ グラムやぱっとしない謎めいたユーリティでさえ、Cupertino から、だい たい 2、3 千マイル以内に置くことになろう。それは、歯ブラシと洗いた ての下着数枚を荷造りすることなしに出かけられるほど気軽な旅ではない が、多くの人々にとって、そこへ行くことは現代では少なくとも夢ではな い。

しかし、地球儀の反対側、インド洋のモーリシャスのかなり南で、MacsBug を表わす点を見つけることになろう。

MacsBug は Apple の下層アセンブリ言語の Macintosh デバッガである。 私の記憶が正しければ、MacsBug は“Motorola Advanced Computer System Debugger”の略であり、Macintosh 登場以前の 1981 年に現われた。 MacsBug に関して Mac ライクなところはどこにもない。メニューバー、メ ニュー、ウインドウ、アイコン、ダイアログ、ボタンはなにもないのだ。 ディスプレイには、ごちゃっとした数字と文字といくつかの謎めいた単語 が表示されるだけだ。MacsBug とはコマンドラインを使ってコミュニケー トするが、これは多くの人が Mac を使うことで逃れたいと思ったまさにそ のものである。要するに、MacsBug は Macintosh の理想のあらゆる面を冒 涜するのである。

MacsBug がこれらのルールを破るのは、プログラマーたちが隠れた細部で 何が起こっているか確かめられるように、MacsBug が Macintosh のシステ ムソフトウェアの下層で動くよう設計されたからだ。MacsBug はユーザー が見るつもりもなかったものに直接アクセスさせてくれる。システム空間、 アプリケーションヒープ領域、CPU レジスタ、タスクキュー、実行コード などだ。

ぞっとするとお思いではないか?その通りだ。しかし、MacsBug はパワフ ルであり、そしてパワーは魅力である。MacsBug を習得するために、ほと んどの Macintosh ユーザーはパスポートとビザを申請し、免疫処置と予防 接種を受け、高額の旅行手配を済ませ、過激なカルチャーショックに耐え、 日常を後にしなければならず、エラを生やして環境に適応することさえ必 要かもしれない。しかし、地球の裏側に旅する(つまりアセンブリ言語を 学ぶ)ことなく MacsBug の恩恵を受けることができる。MacsBug は万人の ためのものではないが、Cupertino から(DeBabelizer や ResEdit のよう な)他の Macintosh プログラムの置かれたたとえばオハイオ州まで旅する 気になれば、MacsBug を利用することができるはずだ。MacsBug はあなた のコンピュータの詳細情報と抱えていると思われる問題点を教えてくれ、 そして、これが最も重要なことだろうが、さもなければ致命的なシステム エラーになった際に他のアプリケーションで行っていた作業を保存できる。

MacsBug のインストール -- MacsBug は Apple から無償でダウンロード できる。たとえ最終リリースでなくても、入手可能な最新バージョンをお 薦めする。最新版の Mac OS で動作する見込みがあるからだ。また、Apple の PowerPC 以前の MacsBug ドキュメンテーションの PDF 版をダウンロー ドすることもできる。MacsBug のさらに深い機能に興味があれば面白い読 み物となる。この記事の執筆時点で、MacsBug の最新バージョンは 6.5.4.a6 である。

<http://developer.apple.com/dev/tools/debuggers/MacsBug/>

MacsBug のインストールは、システムフォルダにドラッグし、Mac を再起 動することで行う(付属する他のファイルは無視すればよい)。Mac OS の 起動画面には“Debugger installed”と表示され、MacsBug がそこにいる ことを教えてくれる。MacsBug は Mac Plus より新しい Mac と System 6.0 以上で動作する。それ以前のシステムソフトウェアでも動くかもしれない。 何年間も MacsBug は 2、3 百キロバイトの RAM しか占めなかったが、こ こ 2、3 年の Macintosh アーキテクチャに対する数度の変更により、 MacsBug は現代の Mac で 1 MB から 1.5 MB の RAM を必要とするように なった。

最近のバージョンの MacsBug には MacsBugApp というプログラムがついて くる。これは、制限があるものの、MacsBug 自体にかなり似た動作をする スタンドアロンのアプリケーションである。時に落ちることもあるが、こ れを使って MacsBug そのものをインストールすることなく下記の例のいく つかを試していくことができる。

MacsBug の呼び出し方 -- MacsBug をインストールすると、それがどこ にいるんだろうかと思うかもしれない。画面上に何も変化はない。MacsBug に落ちるには 2 つの方法がある。恣意的なものと劇的なものだ。

恣意的に MacsBug に落ちるには、Command + パワーキーを押す。パワー キーはキーボードから Mac を起動するために使うキーだ。この組み合わせ はほとんどの Mac で機能するが、古めの Macintosh モデル(恐らく NuBus Power Mac まで)には、マシンの前面、側面または背面に物理的な割り込 みスイッチが付いている場合もある。スイッチを押して大なり記号 (“>”)だけを含む謎めいたダイアログが現われたことがあれば、それが 割り込みスイッチだ。(ところで、このダイアログは MicroBug またはプ ログラマーズウインドウと呼ばれる。脱出するためには、G 文字をタイプ し Return を押すのが最良の策だ。MacsBug をインストールしていれば MicroBug を見ることはないが、興味があれば Apple はこれに関する短い TechNote を用意している。)

<http://developer.apple.com/technotes/tn/tn1136.html>

また、Mac の起動時に Control キーを押し続けることで MacsBug を呼び 出すこともできる。一般的にプログラマーしかこれを使う必要はないが、 私は戻りの悪いモディファイアキーの付いた古いキーボードで一度驚かさ れたことがある。

MacsBug に落ちる劇的な方法は、システムエラーが起こることだ。通常、 システムエラーは爆弾ダイアログを出すか、またはプログラムを終了させ てその後“An error of type -1 occurred.”あるいはそれと同じくらい役 立たずのダイアログを出す。ここでは、MacsBug が即座に現われて起動モ ニタを完全に占有する。システムエラーに応じてどのように MacsBug を脱 出するかは注意を要する。選択枝は後述する。

まず、MacsBug の画面を説明しよう。画面は 4 つの領域に分割されてい る。下部がコマンド行で、ここで MacsBug コマンドをタイプする。コマン ド行のすぐ上に PC 領域がある。PC は“プログラムセンター”の略で、CPU が実行する次の命令を表示し、CPU はその命令の逆アセンブリ記述にした がって実行する。この情報はプログラマーのためのものなので、どこでシ ステムエラーが起こったかという示唆を得ることができるが、命令のパイ プライン処理(CPU が同時に複数の命令を実行したときに起こる)のよう なものは、PC が実際のエラーを指し示していない可能性があることを意味 するときもある。その問題を見つけるために、プログラマーは時に現在の PC から前方や後方に逆アセンブルする必要がある。

MacsBug の画面で最も大きな部分はアウトプット領域と呼ばれ、そこは MacsBug があなたのコマンドの結果を表示する場所である。スクロールバー はないが、Page Up、Page Down、Home、そして End キーで、アウトプット 領域の履歴をスクロールすることができる。最初に MacsBug に落ちると、 バージョン番号と著作権情報が、MacsBug に落ちた理由と一緒に、アウト プット領域に表示される。

最後は MacsBug 画面の左側全面に沿ったステータス領域であり、表示され るもののほとんどは CPU レジスタ(PowerPC コードは R0 から R31、68K コードは D0 から D7 と A0 から A7)、現在のスタックポインター、そし て、68K コードの場合は、スタック自身である。スタックと CPU レジスタ は気しなくてもかまわない。だが、これらの中程にはいくつかの重要な情 報が収められている。CurAppName というラベルの下には、現在実行されて いるアプリケーションの名前が表示されている。もしシステムエラーのた めに MacsBug に落ちた場合は、これが、あなたが使っていたプログラムで は ない かもしれないが、エラーの発生に関与したプログラムなのだ。 プログラムは前面になくても実行し続けており、我々が機能拡張と考える 多くのもの、例えば Web 共有や File 共有、は実際はバックグラウンドで 実行される顔のないアプリケーションなのだ。さらに、CurAppName は問題 が発生した際にどのプログラムが関与していたかを常に表示はするが、真 の原因はアプリケーションの下で動いていた機能拡張、ドライバ、または 他ソフトウェアにあり得るのだ。

CurAppName の近くには、仮想メモリが使用されていると VM、搭載メモリ が使用されていると RM が表示される。vM は Memory Manager が搭載メモ リと仮想メモリ間でスワッピングを行っていた際に MacsBug が呼び出され た事を示している。さらに MacsBug は MacsBug が呼び出される前の割り 込みレベルを示す 0 から 7 までの間の数字を表示する。割り込みは CPU に対し、実行中のものが何であれ中断し、もっと重要な作業を至急行うよ う指示する - 割り込みは、マウスの動き、スクリーンの再描画、ネット ワーク活動、シリアルポート操作、および沢山の他の機能を処理するため に用いられる。MacsBug自体は、レベル 7 の割り込み、もしくは Non-Maskable Interrupt や NMI(恣意的に MacsBug に落ちると、MacsBug は原因がシステムエラーではなく NMI によるものと告げる)としても知ら れる割り込みにてシステムを支配する。NMI は全てに優先し、他の作業に て中断されることはない。通常、これは問題ない。あなたが実行していた アプリケーションは中断が起こったことさえ認識できないのだ。しかし、 ネットワーク上の他のコンピュータはあなたの Mac が応答を止めているこ とに気付きうるのだ。数分後には、AppleShare サーバはあなたの Mac が いなくなっていると思い込み、接続を断つであろう。同様に、Internet サーバも接続を断つかもしれず、ISP は回線を切るかもしれない。

これを止めてくれ! MacsBug に落ちたとき、ほとんどの良識ある人々が 最初にしたいと思うのはそこから出ることだ。恣意的に MacsBug を呼び出 したのなら、これは簡単だ。たんに G を入力し Return を押すか、または Command + G を押すのだ。これは Go を意味し、中断したところから作業 を再開するよう Mac に伝えるものだ。すると MacsBug は消え、あなたの Mac の通常の画面が再び現れ、あなたの Macintosh 環境はその通常の調和 のとれた状態へ戻るのだ。

もしシステムエラーの結果として MacsBug に落ちたなら、次のオプション を試みる。先ず、ステータス領域の CurAppName の下に出るエラー発生時 のプログラム名を見つける。さらに、アウトプット領域の下にある MacsBug 起動理由を探す。それは“bus error”や“illegal instruction”かもし れない。エラー発生時にあなたが何を行っていたかをスクリーンで見る必 要がある場合は、Escape キーを押すことで通常の Macintosh ディスプレ イと MacsBug の間を行き来できる。混乱しないように。Escape キーを押 しても MacsBug から出ることは なく 、単に MacsBug が起動された時 点のあなたのスクリーンを 見る ためのものなのだ。これは、さもない と再現困難となる博学な段落を書き留めるのに便利である。MacsBug に戻 るには再度エスケープキーを押せばよい。

MacsBug で救えないクラッシュや、Mac をフリーズさせ MacsBug の呼び出 しもできないクラッシュがあることを忘れてはならない。(後者は、プロ グラムがメモリが不足となっている時、不十分もしくは存在しないエラー チェックによりしばしば引き起こされる。)これらの場合は、MacsBug は 助けとならないが、MacsBugをインストールしておいても害にはならない。

師匠への道 -- MacsBug への出入りができるようになったところで、グ ルとしての地位を確固とするための簡単な技をご紹介しよう。

MacsBug は下層のプログラマー用ツールであるため、デフォルトの数字の 単位は 16 進数となっている。16 進数はゼロから 15 までの数からなって おり、10 から 15 までは A から F で表される。したがって、16 進数だ と 200 は C8 となる。つまり、“12 かける 16、プラス 8”というわけ だ。16 進数はバイナリの値を表現するのにも便利で、HTML オーサリング の経験がある方なら、色を指定するのに 3366CC といった 6 桁の 16 進数 が使われているのを見たことがあるだろう。これは MacsBug からすればす ばらしいのだが、私のように小銭の勘定もできないような人間には 16 進 数はちょっときつい。幸い、普通の 10 進数も先頭に # を付けることに よって MacsBug に教えることができる。そこで、単に 42 と入力すると MacsBug は16 進数と理解して 66 のことだと思ってしまう(4 かける 16、 プラス 2)が、#42 と入力すれば MacsBug は 42 のことだと理解してくれる。

この奥義が便利になるのは、MacsBug の error コマンドとの組み合わせで だ。このコマンドは意味不明の Mac OS のエラーコードと短い説明を返し てくれる。たとえばあるプログラムが“-43 のエラーが起きました”と言っ てきたら、MacsBug に入って“error #-43”と入力してリターンを押せば エラーが何であるかを見ることができる。

 $FFD5     #-43  fnfErr - File not found

ここでアプリケーションが言っているのは、ファイルを開こうとしたがそ れが見つからなかったということだ。原因は必要な機能拡張やプラグイン が存在していないか、あるいはファイルが存在していないか、プログラム によって異なるが、少なくとも一応の目安にはなるだろう。エラーコマン ドは時として大いに役に立つことがある。ある日、私はある小企業の経営 者から半狂乱状態の電話を受けた。その会社では AppleScript でデータ ベースのレコードを抽出し、各種のラベルを印刷するというスクリプトを 使っていたのだ。「どうもスクリプトのせいでハードディスクが壊れたみ たい! マシンを使おうとすると、毎回 -1711 のエラーが出るんだ。数字が 大きいのは深刻なんだろ?」そこで数字の大きさとエラーの深刻さは無関係 であると諭し、MacsBug に入ってエラーコードを調べた。

 $F951   #-1711  errAEWaitCanceled - in AESend, the user cancelled
  out of wait loop for reply or receipt

調べたところ、問題のスクリプトは深夜運転向けに作られており、他のア プリケーションの動きを待って過ごす時間が長いということがわかった。 ところがこのスクリプトは昼休みなどに実行されていた。そこで誰かがマ シンを使おうとして Command + ピリオドを押してスクリプトの実行を中断 すると、ただちにこのエラーが出たというわけだ。この場合実害は全く無 いのだが、MacsBug をインストールしていたおかげでクライアントの血圧 上昇を未然に防ぐことができ、同時に私にはスクリプトを手直しするとい う比較的楽な仕事が回ってきたのだ。

MacsBug を使って 10 進数と 16 進数を変換するということも可能で、他 の MacsBug コマンドを使う際に役に立つ。MacsBug はあらゆる数字は 16 進数だと仮定しているので、MacsBug のコマンドラインで“3366CC”と入 力すると以下の結果が得られる。

 3366cc = $003366CC   #3368652   #3368652   '*3fA' (between #3M and #4M)

これは 3366CC という数字を 16 進数として表示し、次に符号なしの 10 進数、符号つきの 10 進数、ASCII 値、それに多少は人間にも理解できる ような形でメモリ空間として(この場合 3 〜 4 メガバイト)表示する。 16 進数から 10 進数へ変換する際には、3 番目の signed ASCII 値に注目 する(先頭に # が付いていることに注意)。16 進数の 3366CC は 10 進 数の 3,368,652 に相当するということがわかる。2 番目の 10 進数は正の 値の場合は全く同じになるが、負の値では大きく異なったものになる。#-43 を変換して試してみていただきたい。この方法で約 21 億までの数値を変 換することが可能だ。

最近のバージョンの MacsBug は出力エリアでのベーシックなマウス操作も サポートしているので、単語や数字をクリックしてコマンドラインに入れ ることができる。このマウスサポートのせいで半狂乱になるプログラマー もいるが(たとえば、ポップアップメニューで起きる問題をデバッグして いる場合)、数字をクリックしてリターンを押せば 16 進数と 10 進数を 素早く切り替えることができるのだ。

最後に、MacsBug に計算をさせることも可能だ。32 + 32、または #32 + #32 と入力してみていただきたい。アプリケーションがクラッシュした後 には 16 進数をいじらなければならないことが多いので、この機能を絶賛 するプログラマーもいる。一般の方はデスクアクセサリの“計算機”を使っ たほうが無難だろうが。

ブレイクポイント -- 次回は、コンピュータやアプリケーションに関す る重要な情報を提供してくれる MacsBug コマンド、それにサーバの無人運 転などに威力を発揮する、アプリケーションがクラッシュした際に MacsBug にコンピュータを自動的にリスタートさせる方法などを紹介しよう。


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