TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#451/19-Oct-98

Steve Jobs 氏は 1 億 600 万ドルの四半期利益と年間黒字、待望の Mac OS 8.5 を発表することで週末を飾った。好調の財務状態は喜ばしいが、誰 もが Mac OS 8.5 について知りたがっている。そこで技術編集長の Geoff Duncan が重要な新機能と主要なコンフリクトを徹底調査する。また、Adam が古いソフトウェアを復活させるアイデアを披露し、Keep It Up 2.0.1 の リリースと Norton Utilities 4.0 に関する多数の問題報告もお伝えする。

目次:

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MailBITS/19-Oct-98

(翻訳:西村 尚 <hisashin@axes.co.jp>)

iMac が Apple に 1 億 600 万ドルの利益を呼ぶ -- 経営の合理化と好 調な売れ行きを引き合いに出し、Apple Computer 社は 98 年 9 月 25 日 を期末とする第 4 会計四半期の 1 億 600 万ドルの利益を発表した。本会 計年度での Apple の収益は合計 59 億ドル、純利益は 3 億 900 万ドル で、1995 年以来初めての黒字年度を記録した。総収益は前年同期より若干 落ちているが、Apple のキャッシュフローは現金と短期投資で合計 23 億 ドルと 3 億ドル以上増加した。Apple の期末在庫は 7,800 万ドルとほと んどなく、ほぼ 6 日間の在庫に相当した。

<http://www.apple.com/pr/library/1998/oct/14fy98q4rel.html>

Apple の財務状態の回復は、一部は iMac の人気によるものだ。Apple に よれば、iMac 発売後最初の 6 週間で 278,000 台以上を出荷したという。 これは Mac 史上最速の販売記録となる。この強烈な売れ行きは、iMac が Apple の市場専有率拡大を助長しうることを示しているのかもしれない。 Apple は前四半期でコンピュータ業界全体よりも速く成長した。さらに、 約 2,000 人の早期 iMac 購入者への電話調査は購入者の大多数(58 %)が 前 Macintosh 所有者であることを明らかにしているが、驚くべきことに 29 % が新規のコンピュータ購入者であり、12.5 % は Intel ベースの PC を所有していた。 [GD]

<http://www.apple.com/pr/library/1998/oct/14imacresults.html>

Keep It Up 2.0.1 が遠隔管理機能を追加 -- Karl Pottie 氏が Keep It Up 2.0.1 を出荷した。彼の 22 ドルのシェアウェアのサーバアプリケー ション監視ツールのメジャーアップグレードである。前 1.4.1 バージョン からのいくつかの付加機能に加え、Keep It Up 2.0.1 では Web ブラウザ を通じて Macintosh を遠隔管理する機能が追加された。これに埋め込まれ た Web サーバ(ユーザー定義のポートで動き、パスワードで保護される) を通して、Keep It Up 2.0.1 はあなたのサーバに関する一般情報(稼働時 間、システム負荷、未使用メモリ、未使用ディスク容量など)を取得し、 マシンを再起動またはシステム終了し、稼働中のアプリケーションを終了 し、ユーザー定義のアプリケーションを起動できるようにする。Keep It Up 2.0.1 は Timbuktu Pro のような遠隔制御ツールと置き替わるものでは ないが、この新機能は極めてありがたい。Keep It Up 2.0.1 は 235K の ダウンロード容量である。 [ACE]

<http://www.vl-brabant.be/mac/kiu.html>

Norton Utilities 4.0 の問題報告が相次ぐ -- 待望の Norton Utilities 4.0 の出荷は早すぎたのかもしれない。TidBITS スタッフも含めた多数の 人々が Norton Disk Doctor 4.0 を使用した後に問題を経験し、中には結 果として重大なデータ損失を招いた人もいる。問題はさまざまだ(TidBITS Talk と MacFixIt を参照)が、Norton Utilities 4.0 のシステムレベル のコンポーネントをアンインストールして Norton Disk Doctor の使用を 避けるようにお薦めする。サードパーティ製のディスクフォーマッタを使 用している場合は特にそうだ。あなたのできる最も重要なことは、現在の バックアップを必ず複数作ることだ。Norton Utilities 4.0 をどうしても 使い続けたければ、4.0.1 アップデータと、フロッピー一枚に収まり Norton Utilities CD-ROM から起動した場合にのみ稼働する Norton Disk Doctor Special Edition を併せてダウンロードしてほしい。(CD-ROM 上 の Norton Disk Doctor のバージョンをアップデートすることはできない ので、これは必須だ。)また、Norton AntiVirus for Macintosh 5.0 を使 用している場合は Norton AntiVirus 5.0.2 アップデートを手に入れよう。 これは Norton Utilities 4.0 に伴う潜在的に重大な問題に対処するもの だ。 [ACE]

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=407>
<http://www.macfixit.com/extras/nortonutil40.shtml>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbser=1041>
<http://www.symantec.com/techsupp/files/num/ norton_utilities_version_4x_for_macintosh.html>
<http://www.symantec.com/techsupp/files/navm/ norton_antivirus_for_macintosh.html>


Electronic Phoenix Project

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:尾高 里華子 <rikako@pobox.com>)

先週 TidBITS-450 で消滅しそうな Emailer についてと、Apple の選択肢 とその問題について述べた。つまり、Emailer の開発継続にはお金がかか り、商品としてマーケティングしても元が取れなさそうだし、ただで配っ てしまうとデベロッパー達の怒りを買う。どこかの会社に売ってしまうと いうこともできるのだが、買い受けた会社は激戦市場で通用するようにす るために人もお金も相当つぎ込まなければならなくなる。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05129>

ちょっとでしゃばりな提案 -- Apple にとって上記のどれもが可能性の ないものだとしたら、Emailer に 残された道 がどんなものかが問題に なる。そこでインターネットベースの非営利団体の創設を提案したい。そ してこの団体を Electronic Phoenix Project(略称 EPP)と名付けたい。 この団体の使命は、製作者から寄付を受けたプログラムの基地となり、イ ンターネットプログラミングチームをコーディネートし、アップデートバー ジョンを配布するということだ。

作者がプログラムの寄付を申し出るのには様々な理由が考えられる。たと えば、コードが古く大幅な書き換えの必要があるとか。(Emailer は Think Class Libraries を使用していて、今どきの開発環境に移行する必要があ るらしい。)手放したいのだが愛用者を困らしたくないという作者もいる だろう。または Emailer にも当てはまるかもしれないが、熱心なユーザー が声を上げることで、コードを手放すように企業を説得できることもある だろう。Apple が Emailer のアップデートを求める声に応じるとは思えな いが、コードを手放す可能性はあるように思う。特にもしそれによってか なりの税金免除を受けることができるとしたら。

プログラマー達がインターネットを介した共同作業で複雑な商用並のプロ グラムを作成できることは Linux が実証している。Linux の関係者達は複 雑なシステム開発に通じているらしく、展開としては最上のものである。 (Linux に関しては、 TidBITS-407 の“Mac で Linux を走らせる”を参 照頂きたい。)しかし、インターネットプログラマーのグループが作成し た Macintosh ソフトウェアの例として FreePPP があるし、この手法がほ かのプログラムで使うことができないわけがない。有能なデベロッパーが 付くかどうかは、プログラムの実力次第であろう。その後援者が真剣な後 ろ盾であるか、一時のファンクラブに過ぎないかによるのだ。

<http://www.linux.org/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=04533>
<http://www.rockstar.com/ppp.shtml>

ソフトウェアの流通に関しては可能性は山とある。Electronic Phoenix Project が開発を継続しているソフトウェアは無償になることもあるだろ うが、絶対必要条件ではない。だが、一部をシェアウェアにして、EPP の 維持費に充てることもできる。EPP へ協力する個人はすべての EPP ソフト ウェアに無償登録できるようにする。企業としても参加でき、同様に無償 登録ができるが、ソースコードライブラリへのアクセスの独占は許されな い。すべての修正コードを EPP に渡すという条件を付けることになるだろ う。(これは私がライセンスを扱っている FreePPP Group が取り入れてい るソースのライセンス処理に類似したものだ。)

問題 -- この Electronic Phoenix Project 設立と運営は容易であると うそぶくつもりはないし、現にありもしない私の余っている時間を捧げる こともない。だが、この考えに強く共感を覚えた人にとっては、すでに Linux が得たのと同じような効果を出すことができるだろう。

EPP 自体は開発を行わないほうが良い。EPP は啓蒙活動もすべきでないし、 放置されてしまっているソフトのインフラを整えたりといったコーディネー タとしての役目を逸脱したことはすべきではないと思う。この手の団体は 内部抗争や方針をめぐる食い違いを生じやすい。それよりも EPP は限定さ れた職務のみを遂行すべきである。つまり、(メーリングリスト、FTP や Web 用の場所のような)技術的インフラの提供、(インターネットソフト プロジェクトの管理方法への助言のような)後方支援、(契約書、配布条 項などの)法的なアシスタント、配布の手伝いといった仕事を行うのだ。

Electronic Phoenix Project はまず地道なところから始めるべきだ。 Emailer のような大掛かりで複雑なものに手を出そうとするのは後で、ま ず古いシェアウェアやフリーウェアのプログラムから着手するのだ。イン フラと後方支援のほかに、EPP は本来のオーナーに法的な保証もしなけれ ばならないかもしれない。実績を積んだ後は、コードを所有している大企 業を説得するための交渉を行えるかもしれないし、入っているコード (Emailer では StuffIt Engine や America Online へのアクセスコード) を含めた必要なライセンス契約も取れるだろう。(Mailsmith FAQ には、 America Online はサードパーティの開発プログラムを停止しており、 Mailsmith を AOL に対応させるために必要な情報がもはや手に入らなく なったと書かれている。Emailer のユーザーが AOL にアクセスできなくな るような変更を将来 AOL が行うことも十分にあると思う。)

候補ソフト -- 以上のアイデアは苦境に陥っている Emailer から浮かん だものであるが、質や有用性に関係なくソフトが消えていくのは今に始まっ たことではない。救いの手を差し伸べてあげたいとの声のある製品を以下 にあげておく。復活のチャンスの可能性があるものもあるが、可能性ゼロ という製品もある。

実現へ向けて -- では現実論へと移ろう。Electronic Phoenix Project は何とかしようという声がある程度以上集まった時に だけ すたれてし まったソフトの灰から不死鳥のように生まれるのだ。この議論の続きは TidBITS Talk でおこなおうと思う。それなりの反応があれば、Electronic Phoenix Project の巣立ちのために、喜んで専用のメーリングリストを始 めたり、FTP や Web のスペースを提供したいと考えている。

<http://www.tidbits.com/search/talk.html>


Mac OS 8.5 入門

by Geoff Duncan <geoff@tidbits.com>
(翻訳:尾高 修一 <shu@pobox.com>)
(  :亀岡 孝仁 <tkameoka@fujikura.co.jp>)
(  :松岡 文昭 <mtokfmak@mxa.meshnet.or.jp>)

もう待つ必要はない。Apple 社は先週、より賢く、より高速で、インター ネット統合を強化し、多数の新機能を搭載した Mac OS の新バージョン、 Mac OS 8.5 を大々的にリリースした。嬉しいのは Apple のうたい文句が 嘘ではないことだ。Mac OS 8.5 は必ずしもすべての Macintosh ユーザー にとって理想のアップグレードでもなければ Mac ユーザーが夢見てきたこ とをすべて実現しているわけでもないが、着実な前進で新機能と目に見え ない改良を加えたものとなっている。

<http://www.apple.com/macos/>

まずは基本 -- Mac OS 8.5 は PowerPC ベースの Macintosh と、最低 16 MB の RAM(Apple は 24 MB を推奨しており、私はそれ以上をお薦めす る)を必要とする。これまでのリリースとは異なり、Mac OS 8.5 は 68040 Mac や PowerPC プロセッサにアップグレードされた 68K マシンは サポートしていない 。必要最小限のインストールが 50 MB のディスク スペースを必要とし、必須ではないがインストールが推奨されているコン ポーネントやオプションもインストールすると 150 MB 以上に達する。

Mac OS 8.5 は CD-ROM で配布され、Apple Store から 99 ドルで購入する ことができるが、他のディーラー、たとえば TidBITS スポンサーの Cyberian Outpost や Small Dog Electronics からならもっと安く購入で きる。1998 年 9 月 14 日以降に Mac OS 8.1 を購入した方は、PDF フォー マットのアップグレードクーポンで 20 ドルでアップグレードすることが できる。最近 Mac を買ったが Mac OS 8.5 が同梱されていなかったという 場合には、Apple の Mac OS Up-to-Date プログラムを利用して 20 ドルで アップグレードすることが可能だ。

<http://store.apple.com/>
<http://www.apple.com/macos/files/macos85coupon_us.pdf>
<http://www.apple.com/macos/up-to-date/>

Mac OS 8.5 のインストール -- ほとんどのユーザーにとって、Mac OS 8.5 のインストールは簡単だ。インストーラは明快で、私がテストした限 りではクリーンインストールでも上書きインストールでも問題には遭遇し なかった。サードパーティ製のハードディスクドライバを使用している場 合には、インストールを行う前に Mac OS 8.5 に対応しているかを確認し、 かつ Mac OS 8.5 のインストーラが Apple 製のディスクドライバをイン ストールしないように注意が必要だ。一方、Apple のディスクドライバを 使用しているハードディスクの場合は、インストーラにドライバのアップ デートをしてもらおう。Mac OS 8.5 をインストールする前に TCP/IP と ダイアルアップの設定を書き留めておく。Open Transport を使っている場 合には、設定をエクスポートしてインストールが終わってからインポート することもできる。

Mac OS 8.5 インストーラは、インストールを開始する前にパッケージのカ スタマイズができるようになっているとともに、Mac OS 8.5 をインストー ルした後にコンポーネントを追加したり削除することもできるようになっ ている。

いつものことだが、新しいシステムソフトウェアをインストールする前に は必ず Mac のバックアップを取るように。もし日頃信頼性の高いバック アップをとっていないのであれば、バックアップは絶対必要だ。これは Mac OS 8.5 の能力とは何の関係もない。単なる常識だ。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbser=1041>

パフォーマンス -- Mac OS 8.5 ユーザーの多くが最初に感じることは、 従来のバージョンよりも高速、しかも時には大幅に高速だということだ。 Mac OS 8.5 を PowerPC 専用に開発したことの利点として、Apple がオペ レーティングシステムの中心部を PowerPC ネイティブのコードで大幅に書 き換えることができたということがある。中でも最も恩恵を受けた部分は QuickDraw と QuickDraw Text(Mac OS の最も基本的なグラフィックとテ キストのレンダリングを受け持つツール)のほか、メニュー、コントロー ル、アイコン、リスト、ウインドウとダイアログを扱うルーチン、それに 内部でのイベント管理に関するものだ。

Mac OS 8.5 には新たに PowerPC ネイティブになった AppleScript も含ま れている。Apple はこの AppleScript はこれまでのバージョンよりも最高 5 倍も高速になっていると主張している。私がテストしたところ、Mac OS 8.1 より平均 2 倍のスピードでスクリプトが実行された。Apple はネット ワーク性能の向上も謳っており、これは概して正しいのではあるが、最も 顕著に性能向上が見られるのは Mac OS 8.5 を動作されているマシン同士 が高速な 100Base-T Ethernet ネットワークで接続されている場合だ。

アプリケーション切替ウィンドウ -- Mac OS 8.5 をインストールした 後、メニューバーの一番右側にあるアプリケーションメニューがカレント なアプリケーションのアイコンとともに名前をも表示していることに気が つくだろう。古くからの Mac ユーザーには余計なお世話と感じられるかも しれないが、それほど熟練していない Mac ユーザーは、特に開いているウ インドウがない場合にはどのアプリケーションが前面にあるかを判別する ことはなかなか難しいことなのだ。アプリケーション名に割り当てるスペー スの量は小さなつまみを動かして少なくしたりなくすこともできる。アプ リケーションメニューをメニューバーから完全に切り離して別ウインドウ として表示することも可能だ。ポインタがメニューの一番下に達したら、 さらにメニューのアウトラインが表示されるまで下方向にドラッグし、そ こでマウスボタンを離す。こうすると起動しているアプリケーションがボ タン状に表示されるフローティングウインドウであるアプリケーション切 替ウィンドウが現れる。アプリケーションはボタンをクリックして切り替 えることができるとともに、Command + タブで切り替えることも可能だ。

アプリケーション切替ウィンドウはなかなか優秀でカスタマイズも可能だ。 動作中のアプリケーションにアイテムをドラッグ & ドロップすることもで きれば、アプリケーションを Option キーを押しながらクリックし、カレ ントなものを隠しながら切り替えることもできる。同様に、パレットのズー ムボックスをクリックすればアプリケーション名の表示をオン・オフする ことができ、パレットのズームボックスを Option キーを押しながらクリッ クすればアイコンの大・小を切り替えることもでき、パレットのズームボッ クスを Option + Shift + クリックすればパレット表示の縦・横を切り替 えることができる。

プログラム間の移動を行うショートカットを Command + タブ以外のものに 変えることも可能だ(HyperCard や FileMaker Pro などのアプリケーショ ンで不都合が起きることがあるため)。新たに HTML ベースとなった Mac OS ヘルプからショートカットを変更するスクリプトにアクセスすることが できる。“ファイルとアプリケーションプログラム”の項を参照していた だきたい。また、Chris Gervais 氏作の Switcher Setter などのサード パーティユーティリティや、Mac OS 8.5 CD-ROM の HyperCard Update フォ ルダにあるスタックでショートカットなどのオプションを変更することが できる。一部アプリケーション切替ウィンドウの目立たない機能はこういっ たユーティリティや AppleScript を使用しないとアクセスできない。

<http://www.channel1.com/users/cg601/aso/>

Finder 機能 -- Mac OS 8.5 の Finder は多数の新機能を搭載している。 このうち一部は目立たないものだ。ようやく Finder のリスト表示でカラ ムの幅を変えたり順番を入れ替えることができるようになったほか、 Finder の設定ですべての Finder ビューで利用するデフォルトの設定を作 成し、“表示”ダイアログでどんな Finder ウインドウもデフォルトの設 定に変更することができる。

フォルダのウインドウでは、フォルダのアイコンがタイトルバーに表示さ れるようになった。このため、このアイコンをドラッグして移動すること ができるようになった。そのウインドウの親フォルダを開き、移動したい アイテムを探し、続いて移動するという動作をしなくても済むのだ。Finder ウインドウをスクロールするのも、スクロールバーを使用せずにウインド ウの内部で Command + ドラッグすればできるようになった。

Finder の“情報を見る”ウインドウは、一般情報、アクセス権、メモリ (アプリケーションのみ)、プリンタ機能(デスクトッププリンタのみ) の複数のパネルを擁するようになった。各アイテムは“情報を見る”ウイ ンドウに加え、コンテクストメニューで直接アクセスすることもできる。

Finder はメールアドレスや URL をより賢く判定できるようになった。 Eudora や BBEdit などのアプリケーションからデスクトップに URL やメー ルアドレスをドラッグすると、テキストクリッピングのかわりにインター ネット・ロケーション・ファイルを作成してくれる。インターネット・ロ ケーション・ファイルをダブルクリックすると、Finder はインターネット 設定を利用して適切な処置をする。残念ながら、以前のバージョンの Finder はインターネット・ロケーション・ファイルを認識することができ ず、テキストクリッピングとしても扱ってくれないので、以前のバージョ ンの Mac OS とファイルのやりとりをするのは面倒だ。

Finder には“よく使う項目に追加”コマンドが追加されており、選択され たアイテムのエイリアスを Apple メニューの“よく使う項目”フォルダに 加えるというものだ。“よく使う項目”は一見したところ Finder に中途 半端なブックマーク機能を加えようとしたもののように見える。しかし、 “よく使う項目”はあのおぞましいモーダルな Open・Save ダイアログに 代わって Mac OS 8.5 で導入された Navigation Services と連携するた め、目をつけておく価値はある。現在 Navigation Services をサポートし ているアプリケーションは Anarchie Pro などほんの一握りだ。Navigation Services については改めて述べることにする。

有名人ルック -- Mac OS 8.5 で出るだろうと思われていた機能の一つに テーマのサポートがある、これは元々は死に体になって久しい Copland OS プロジェクトのために用意されていたものである。テーマを使うことでユー ザーは Mac のルック・アンド・フィールを大幅に変えられる、たとえば、 ウィンドウスタイル、システムフォント、メニュー項目、スクロールバー、 背景図柄、ボタン、それにその他のインタフェース要素の選択などである。 これまでもいろいろのテーマが取りざたされてきたが、Apple 社がこれま でのバージョンの Mac OS にこのテーマをのせ得なかったため、 Kaleidoscope の様に同様の機能を提供してきた製品が日の目を見てきた。 (Kaleidoscope は Mac OS 8.5 でも動作するようアップデートされている)

<http://www.kaleidoscope.net/>

Mac OS でのテーマのサポートという Apple 社の約束を Mac OS 8.5 では、 多くの Mac ファンが期待した程にではないが、実現している。新しい“ア ピアランス”コントロールパネルはこれまでの“カラー”、WindowShade、 と“デスクトップピクチャ”を踏襲しており、同時に様々なインタフェー ス要素のコントロールのためのマルチタブのインタフェースを提供してい る。(Mac OS 8.5 では新しい 5 つのシステムフォントが含まれているが、 他のフォント変更も加えられていて、たとえば Monaco は新たな半ひげ飾 り的な外観となっており多少慣れるには時間が必要と言う感じである) “アピアランス”コントロールパネルはまた、任意のポイントサイズ以上 の TrueType フォントをなめらか文字(アンチエリアス)表示する事がで きる。でも全ての Macintosh アプリケーションがアピアランス対応と言う わけではない:あるメニューは正しいフォントやカラーで表示されないだ ろうし、ウィンドウ要素の配置がおかしいのも出てくるであろう。とは言っ ても、これらの問題はたいていの場合、単に外観上のものである。

Apple 社の開発者達は Mac OS 8.5 が開発段階にあった時に Gizmo や Hi-Tech といったテーマに触れる機会はあったのだが、結局はたった一つ のテーマにおちついた:“プラチナ”である。これは思うに、名声の高い Macintosh ルック・アンド・フィールを守るための Apple 社の慎重な取り 組みであったのだろう。率直に言って、Gizmo テーマは標準のインタフェー スを不調和なカラー、雑然、そして大混乱にしてしまう代物で、初めてコ ンピュータを買おうとする人を iMac から遠ざけてしまうものがあるとし たら、これ以上のものはそうたくさんないであろう。もしもっとカスタマ イズをお望みなら、Kaleidoscope を試された方がいい。さらに、Apple 社 からはテーマファイルを作製する事に関する詳細は発表されていないが、 熱狂的な Mac プログラマ達はすでに Apple 社のテーマを逆エンジニアリ ングして新規のテーマを作製するツールを開発しつつある。Apple 社や他 の会社が将来新規なテーマを配布する事になるであろうと思わせる情報も ある。

それはさておき、Mac OS 8.5 のテーマのなかではサウンドトラックは好き 嫌いの分かれる機能であろう。かって人気のあったしかし絶えて久しい SoundMaster コントローパネルの様に、テーマにはウィンドウ、メニュー、 ウィンドウコントロール、そして種々の Finder アクションに付随するサ ウンドトラックを含むことができる。たとえば、Apple 社の“プラチナ” サウンドトラックを使ってドキュメントを画面横断的にドラッグするとか すかな断続音を発する、しかも画面の端から端へドキュメントを動かそう とするとその動きにつれて断続音も左から右へ移動するのである。音が鳴 るのは、ウィンドウを開いたり閉じたりした時、メニューやメニュー項目 を選んだ時、ウィンドウをスクロールした時、その外にも色々なイベント に反応して音を出す。私はこの“プラチナ”サウンドは最初は煩わしいと 思ったが、音そのものはびっくりするほど良く考え抜かれていて、今では 音無しの Macintosh は奇妙で何とは無しに無味乾燥に思えるから不思議で ある。サウンドトラックは万人向きではないが、一度はチャンスを与えて みる価値はある。

ゲームは進行中 -- Mac OS 8.5 で最も注目を浴びた新機能が Sherlock で、これは Mac OS の “検索”に取って代わるものである。ローカルの ディスクやサーバ上のファイルの検索には Sherlock を使うが - その機能 は“検索”とそう変わらない - Sherlock は索引化されたボリューム上の ドキュメントの内容検索や、インターネットの検索エンジンにクエリーを 送ることもできる。“検索”と違って、複数の結果ウィンドウを開いてお くことができる。

<http://www.apple.com/sherlock/>

Sherlock の“内容で検索”機能は Apple 社が長いこと暖めてきた V-Twin テクノロジーによるものであり、それが今 Mac OS に組み込まれたもので あるから Sherlock 以外のアプリケーションでもその機能を使えるように なった。(もう一つ例を示すと、Finder 上でテキストファイルを Control + クリックで“要約をクリップボードに表示”)内容検索をするためには 最初に検索対象であるディスクの Sherlock による索引化が必要である。 この作業には何時間もかかることがあり、結果として一つの索引が大きな 見えないファイルとして残される。(幸いにして、Sherlock にこの作業を 夜中にやるようスケジュールする事もできるし、特定の Finder ラベルを 持った項目を無視するようにすることもできる)一旦索引が作られれば、 Sherlock はすばやくディスクを検索して関連性の順の結果を表示し、この 結果はいくつかの基準でソートする事ができる。“内容で検索”を最も有 効に利用するためには、ただ単にキーワードをいくつか並べるのではなく、 自分の探している内容を表すフレーズを使うのがよい;また同様に“内容 が似ているファイルを探す”ボタンも活用して欲しい。Sherlock は特定の ディレクトリではなくディスク全体を索引化するので、こちらの方が他の ものより有用であるとする人もいるであろう。たとえば、私の場合は TidBITS バックナンバー、自分の書いた記事、そしてあと少々のフォル ダだけを Sherlock に索引化して欲しいが、これらの項目はばらばらのディ スクに分散しているので、このために全部やらなければいけないのは手が かかりすぎるかも知れない。

Sherlock の最大の売りは AltaVista や Apple の Tech Info Library の ようなインターネットの検索エンジンにクエリーを送れることだ。Sherlock はこれをシステムフォルダ内の独自フォルダに収められたインターネット 検索サイトファイルを用いて行う。検索サイトファイルは Sherlock に、 特定の検索エンジンにどのようにしてクエリーを送るか、そこでの結果を どのように解釈するか、検索サイトファイルのアップデートをどれだけの 頻度でチェックするか、を伝えるのだ。これは Sherlock が軽量級の Web クライアントであることも意味している。一つもしくはそれ以上の検索エ ンジンにクエリーを送り、サイトより返された HTML を検索結果ウインド ウに表示するための解析を行うのだ。検索結果をクリックすると検索結果 ウインドウには要約されたプレビューがたいてい表示され、それをダブル クリックすればあなたのお好みの Web ブラウザで表示できるのだ。 Sherlock のプレビューは検索サイトからのバナー広告を GIF アニメ付き で表示できる。これらのバナーは悪しき先例となるものだが、その存在は、 広告を見ることなしに Sherlock ユーザーがそのサイトの検索能力の恩恵 には与れないことを、広告料で稼いでいるサイトに保証するものなのだ。 さもなければ、Sherlock はこれ等サイトからまったく見捨てられてしまう かもしれない。

Mac OS 8.5 には 6 つの検索サイトファイルが同梱されている。さらにた くさんのものが Macintosh 関連のサイトよりすでに入手可能であり、Apple も一般目的サイト用の追加ファイルのページを出している。我々は TidBITS の記事を検索する検索サイトファイルを作成したので、ダウンロードしシ ステムフォルダにドラッグして試して欲しい。

<http://www.apple.com/sherlock/plugins.html>
<http://www.tidbits.com/search/>

Sherlock は、ファイル検索、インターネット検索に関わらず、検索条件を 別ファイルで保存でき、頻繁なクエリーのリピートが容易となっている。

互換性 -- Mac OS 8.5 の互換性は非常に高い。たいていの機能拡張とア プリケーションは問題なく動作し、驚くべきことに、アピアランス関連の 外見的問題に悩むような現行アプリケーションがほとんどない。それでも なお、いくつかの広く使われているアプリケーションとユーティリティは Mac OS 8.5 と問題があり、ここに一般的な問題とフィックスを簡単にリス トしよう。

<http://www.microsoft.com/macoffice/85update.htm>

<http://eudora.qualcomm.com/techsupport/now/os85.html>

<http://www.kensington.com/support/mwsmac1.html>

<http://www.westcodesoft.com/os85.html>

次回 -- この記事の次のパートでは、AppleScript、Navigation Services、インターネットとネットワークの変更、その他のソフトウェア コンポーネント、新しい OS 機能等、いくつかの Mac OS 8.5 機能を詳細 に紹介する予定だ。それまでの間、これらやその他の Mac OS 8.5 機能に ついてさらに多くのディスカッションが行われている TidBITS Talk を訪 れて欲しい。

<http://www.tidbits.com/search/talk.html>


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