TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#457/30-Nov-98

強力なグラフィックプログラムを探している? 寄稿記者の Matt Neuburg が巨大ソフト CorelDRAW 8 のレビューをお送りする。また今週は Adam が 新コラム“TidBITS ご用達ツール:GURU”でフリーウェアの GURU につい て、そして Mac での MP3 オーディオファイルの使用に関連した追加情報 もお届けする。ニュースでは、AOL 社による 42 億ドル Netscape 社の買 収、Alsoft 社の新ディスク修復プログラム DiskWarrior のリリース、ホ リデープレゼントのアイディア募集などについてお知らせする。

目次:

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今回の TidBITS のスポンサーは:


MailBITS/30-Nov-98

(翻訳:秋山 晃子 <nobineko@club.udn.ne.jp>)

MacAcademy 社が TidBITS のスポンサーに -- 一番新しいスポンサー、 MacAcademy 社を歓迎する。文書作成、グラフィックデザイン、計算、デー タベース作成などに使用するソフトウェアがどんどん複雑になってきてい る今、トレーニングの重要性も次第に増している。この求めに応えるべく、 MacAcademy 社は、ビデオ、CD-ROM、セミナー、そして現場での個人指導 など 4 種類の方法でコンピュータトレーニングを提供している。英語、日 本語、スペイン語、ドイツ語のプログラムから選べる。これまで MacAcademy 社は 100 万人を越える人をビデオと CD-ROM プログラムによ り、50 万人以上をセミナーを通してトレーニングしてきた。MacAcademy 社が指導する専門技術には最も主要な Macintosh プログラムが含まれてい る。仕事上止むを得ず Windows を使うことになった Mac ユーザーには、 Windows ソフトウェアのトレーニングも提供している。同社のオンライン カタログでプログラムの詳しいリストと実地セミナーの予定など一見して ほしい。 [ACE]

<http://www.macacademy.com/>

募集中。どしどしプレゼントのアイディアを! -- TidBITS はホリデー恒 例の企画で、読者から Mac 関連の手ごろな価格のプレゼント案を集めてい る。これまでは集まったアイディアをまとめ、その中のいくつかの詳細を 追跡調査し、私たちの意見を加え、その結果を一つの記事にまとめたり、 あるいは特別号を組んで発表してきた。今年は、この過程を TidBITS Talk メーリングリストで公開することになった。よって読者の皆さんはプレゼ ントに何がいいか他の人の意見を参考にできる。

参加しようと思う方は、プレゼントのアイディアを <tidbits-talk@tidbits.com> に送っていただきたい。あなた自身が欲しい ものでも誰かにプレゼントしようと考えている物でも結構だ。それぞれの アイディアに URL か、製品の連絡先などの情報を付加するようお願いす る。ユニークなアイディアを歓迎しているが、自分の製品を推薦するのは 遠慮していただきたい。自己宣伝は他の投稿者を含め私たちの努力を傷つ けることになる。下記の URL から(TidBITS Talk アーカイブには一日一 回新しいメッセージが追加されれる)、あるいは購読申し込みをして直接 TidBITS Talk メーリングリストからこれまでの議論を読むことができる。 さあ推薦開始だ! [ACE]

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=487>
<http://www.tidbits.com/about/tidbits-talk.html>

AOL 社が Netscape 社を 42 億ドルで買収 -- America Online 社が 42 億 1 千万ドルの株式譲渡の方法で Netscape Communications 社を買収す ると発表した。合意によれば、AOL 社は Netscape 社を独立部門として経 営し、一方で AOL 社が Netscape 社の Web 閲覧ソフトウェアと多くの人 によって広く使われている NetCenter Web サイトのてこ入れをすることに なっている。この買収によって AOL 社は Web への“ポータル”サイトで 最もアクセスの多いの 4 つのうち 2 つを手中に納めることになる。これ に関してアナリストの中には、すべてのオンライン広告収入の 3 分の 1 が AOL 社に集まる可能性がある、と分析する者もいる。加えて AOL 社と Sun Microsystems 社は 3 年間のパートナーシップ契約に合意した。これ によって Sun 社は Netscape 社のサーバソフトウェアを販売し、AOL 社に 3 億 5000 万ドルのライセンス料とマーケティング費用を支払うのと引き 換えに、AOL 社が Sun 社の Java 技術を採用し、Sun 社のハイエンドコン ピュータを 5 億ドルで購入することになっている。Microsoft 社は早く も、AOL 社と Netscape 社の合併によって現在係争中の Microsoft 社に対 する政府の反トラスト訴訟が根拠のないものになったと主張し始めた。し かし他の人たちは、この合併は Microsoft と競争することが如何に困難か を証明するものだと反論している。AOL 社は Windows にバンドルされてい る AOL 社のクライアントソフトウェアが取り外されないよう、当面の間 Microsoft 社の Internet Explorer の配布を続ける予定だと述べている。 [GD]

<http://www.news.com/News/Item/0,4,29146,00.html>

Alsoft 社の DiskWarrior、ディレクトリ損傷の修復に挑む -- Alsoft 社の人たちが(Alsoft 社は DiskExpress Pro や PlusOptimizer のメー カー)ユニークな方法でデータを回復する新しいディスク修復ユーティリ ティ、DiskWarrior をリリースした。DiskWarrior は焦点をもっぱらディ レクトリデータに絞り込み、できる限り多くの情報を取りだし、新しく最 適化したディレクトリを作り出す。ユーザーは変更を保存する前にその新 しいディレクトリを下見できる。DiskWarrior は壊れたり傷ついたりした ファイルの修復はできず(また“取り消し”オプションなどの旧来のファ イルベース機能は提供してないようだ)、ディスクのディレクトリがひど く損傷している場合も修復できない。それでもなお消えたフォルダやファ イルを取り戻したり、ディレクトリに関連する問題が大災難に発展する前 に問題の芽を摘み取るのに役立つだろう。DiskWarrior は 70 ドルで、 IDE、SCSI、USB ディバイスに接続した標準フォーマットと拡張フォーマッ トボリュームをサポートする。DiskWarrior は 68020 プロセッサ以上 (PowerPC を含む)、少なくとも 16 MB の RAM、そして System 7.1 以 上が必要だ。 [GD]

<http://www.alsoft.com/DWinfo.html>


TidBITS ご用達ツール:GURU

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:高島 均 <hitak@kk.iij4u.or.jp>)

メジャーな生産的アプリケーションや著名なユーティリティのにぎやかさ に紛れ、Mac の使い勝手をさらに易しくしさらに向上させてくれる賢いプ ログラムたちを見失いがちである。こうしたツールは、毎週 Info-Mac アー カイブに送られてくる 80 MB(90 ファイル)のかなりの割合を占めてい る。それら全てはフリーウェアもしくはシェアウェアであり、そのほとん どはいらだたしい問題を解決しようと個人プログラマーたちが書いたもの である。この記事では一芸に秀でた古典的な小品を取り上げよう。これら のプログラムは万人を魅了するものではないかも知れないが、その一芸を 必要とする時、あなたは幸せなユーザーとなれることだろう。

この不定期コラムで書こうと思っているプログラムとそうでないプログラ ムとを分かつ大きな点は、TidBITS のスタッフメンバーが実際に使ってい るツールであるという点だ。使っていないものをこのコラムで書くわけに はいかない。いたってシンプルなことだ。

GURU -- 以前はあらゆる Mac の基本的なスペックを知っていることをよ く自慢したものだった。Performa のせいでほとんどの人にとってそれも叶 わないこととなってしまい、Macintosh の製品ラインがより首尾一貫した のは最近のことに過ぎない。何年もの間、Macintosh モデルに関する情報 を提供する多くのリソースが登場したし、Apple 社も同社の Web サイトに たくさんのこうした情報を掲載している。

<http://www.info.apple.com/applespec/applespec.taf>

しかしながら、私が特定の Mac について知りたいことがあるときにいつも 向かうツールは、フリーウェアの GURU(GUide to RAM Upgrades)なのだ。 これは、NewerRAM 社(以前は Newer Technologies 社の一部門であったが 現在では Peripheral Enhancements 社に買収されている)の Craig Marciniak 氏と Steve Jackman 氏の手によるものだ。GURU は特製のフロ ントエンドといくつかのいかした機能を持つ小さなデータベースである。 他のものより際立っているのはその集めた情報内容だ。その Mac にはどん な種類の RAM を買えば良いか、Mac がどんなタイプの内蔵バッテリを使っ ているか、どのビデオ解像度が可能か、などを知るには GURU が威力を発 揮する。

GURU の主要なインターフェースは、Macintosh や Macintosh クローンの 分類ごとにポップアップメニューを持つフローティングパレットである。 フローティングパレットが気に入らないのであれば、Windows メニューに ある階層メニューを使うこともできる。メニューの一つからモデルを選択 すると、GURU は 2 つもしくは 3 つのタブを持つウインドウを表示し、そ こにはそのシステムに関する情報が満載だ。

General Information タブでは、基本的なスペック、プロセッサの種類、 拡張スロットの数などなどがわかる。Mac が年を重ね内蔵バッテリが消耗 したときは、どの内蔵バッテリを購入すべきかという情報が役に立つこと だろう。消耗した内蔵バッテリは、不正確な計時から起動不良に至るまで、 さまざまな問題を引き起こす。バッテリを購入し自分で取り付ければ、Mac をサービスに持ち込むよりお金を節約できることだろう。

Memory タブには RAM の詳細が詰まっていて、Mac が必要とする SIMM や DIMM やその他の RAM モジュールの種類に加え、マシンにあるソケットの 数も教えてくれる。GURU はまた、必要最小限のスピード、最大 RAM 搭載 量、どのサイズのメモリモジュールが使えるかなどの有益な情報も伝えて くれる。ポップアップメニューからセットするメモリ量を選択して、その 搭載量とするために必要な RAM モジュールの組み合わせを知ることができ る。Mac によっては、RAM ソケットの模式図を用いてポップアップメニュー からモジュールのサイズを選択し配置してみることもできる。可能であれ ば GURU はメモリのインターリーブ(これで若干パフォーマンスが向上す る)をサポートするにはどのようにモジュールを取り付ければよいかも示 してくれる。

そして、Video タブでは、その Mac のデフォルトの VRAM 搭載量を教えて くれ、どこまで追加できるかやいろいろな解像度でどのビット深度が使え るかを知らせてくれる。

GURU を気に入っている理由の一つに、それが何年もずっと存在し続け、新 しい Mac の説明を加えながら定期的に更新されてきたということがある。 古いバージョンとなったことに気付く度ごとに何度となくインターネット から最新コピーを拾ってきた。About ダイアログには Web Site ボタンが あって、ここから NewerRAM 社の Web サイトに行くことができるのだが、 ユーザーにアップデートを知らせるのに Anarchie Pro や他のプログラム が使っている Simple Internet Version Control(SIVC)プロトコルをサ ポートしてくれたらよいのに、とも思う。

最新バージョンである GURU 2.7.1 は 475K のダウンロードだ。もしさま ざまな Macintosh モデルについてもっと知りたいのなら、早速 GURU を入 手してはいかがだろう。

<http://www.newerram.com/guru.html>


MP3 の話題

by Jeff Carlson <jeffc@tidbits.com>
(翻訳:高島 均 <hitak@kk.iij4u.or.jp>)

MP3 オーディオフォーマットに関する Kevin Savetz 氏の最近の記事 ( TidBITS-455 の“MTV よ、後進 MP3 に道を譲る時だ”を参照)は、 TidBITS Talk のオーディオマニア達に多大な関心を呼び起こしたようだ。 Web から曲をダウンロードすることに焦点を当てた議論もあったが、すぐ にスレッドはオーディオ CD の MP3 フォーマット変換や MP3 オーディオ の品質全般に的が絞られていった。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05174>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlktxt=MP3>

朝食にもっと便利なツール -- 読者達は MP3 ファイルを含んだ CD を焼 くためのいくつかのユーティリティについて述べていたが、Alastair Sweeny 氏 <infonauts@sumpatico.ca> は Adaptec 社の Toast と Jam を 薦め、また同社の関連メーリングリストを薦めていた。

「CD オーディオのエキスパートを目指すなら、Adaptec 社のメーリングリ ストに参加するのが一番の近道です。本文に“SUBSCRIBE ADAPTEC_CDR あ なたのフルネーム”というコマンドを書いたメッセージを <LISTSERV@LISTSERV.ADAPTEC.COM> に送ってください。このリストは Tips や問題解決の優れた情報センターとなることでしょう。CD-R を持っている のでしたら、このリストをチェックすることで、コースターを焼いてしま う事態を避けられるでしょう。」

<http://www.adaptec.com/products/overview/toast.html>
<http://www.adaptec.com/products/overview/jam.html>

CD を焼く前に曲の編集ができるツールをお探しなら、Travis Butler 氏 <tbutler@tfs.net> が Peak LE を薦めている。

「BIAS 社の Peak LE もあります。数か月前に私が購入したときはたった の 99 ドルでした。作りが雑なところがあり、私の 7500/120 では時々反 応が鈍かったりしますが、この値段にしては極めてよく仕事をこなしてく れます。ヒスノイズやポップノイズなどありがちなオーディオトラブルを 全く自動的にフィルターする Peak LE 用のプラグインなどもあります。プ ラグインのデモがプログラムに同梱されてきますし、BIAS 社のサイトにプ ログラム本体のデモバージョンがあります。」

<http://www.bias-inc.com/>

なぜ MP3 なのか? -- 読者の何人かは、すでに CD で十分なのに MP3 フォーマットの実益はどこにあるのかと尋ねてきた。Dan Frakes 氏 <dan@informinit.com> は次のように答えてくれた。

「一つの例ですが、私は PowerBook 2400 をいつも使っています。旅行は できるだけ身軽にしたいので、ポータブル CD プレーヤーや MiniDisk プ レーヤーを携行したくはありません。そこで、CD 一枚だったり何枚かの CD だったりあるいは単に何曲かだけだったりしますが、それらを MP3 フォーマットに変換して 2400 のハードディスクに保存します。MacAmp の ようなアプリケーションを使って、ヘッドフォンを挿し込んで保存した分 の曲を聴くことができます。MP3 をバックグラウンドで再生すれば、それ ほどバッテリを消耗することもありません。」

<http://www.macamp.com/>

Chris Gibson 氏 <chris.gibson@gibsons.org> は、コンピュータを基盤と した音楽システムを構想している。

「Mac の世界では(まだ!)見掛けないでしょうが、Windows ですと、CD からオーディオデータを抜き出すユーティリティーの多くはインターネッ ト上の CDDB データベースとリンクが可能で、CD の ID ナンバーを使い、 アーティスト名、タイトル名、トラック情報をダウンロードすることがで きます。ジャンルを付け加えたり、CD を取り扱う上でのその他の詳細情報 を加えたりもできます。将来への展望が私を虜にしています。我が家のコ ンピュータの一台には膨大な MP3(すべて私や私の妻が持っている CD コ レクションから rip したものです)を収めたボリュームがあります。家庭 内ネットワーク上でそのボリュームを共有しているので、家中のどんなコ ンピュータからでも曲を再生することができます。すべてのマシン上で同 時にできるのです! 家庭内ネットワークを流れる既存のあるいは来るべき プロトコルなら事実上どんなものをも通じ同一の集中管理コレクションに アクセスできるような機器を構想するのは、それほど困難なことではあり ません。だから、たぶん、家の台所に、電源ケーブルを基盤とした家庭内 ネットワークを通じ音楽データにアクセスできるような小さな機器が置か れることもあり得るでしょう。そして、ちょっと知恵を絞れば、再生リス トを記憶させたりなんてこともできるに違いありません。まだまだアイデ アはありますが、ポイントは MP3 は CD の代替ではなく、フレキシビリ ティやスケーラビリティのこれまでにない展望を提供する全く新しい音楽 アクセス方法なのだということです。」

最後に、トラック情報をカスタマイズすることへのフォローアップとして、 Martin Gleeson 氏 <gleeson@unimelb.edu.au> は次のように述べている。

「私は InCDius、Track Thief、Mpecker の組み合わせがベストだと思いま す。InCDius で CDDB からタイトルやトラック情報を取得し、Track Thief でトラック名をファイル名にすれば、あとは Mpecker にファイル名の後ろ に .mp3 という拡張子をつけさせるだけです。タイピングの手間が大幅に 省けます。Mpecker の将来バージョンでは、CD からのダイレクトエンコー ドをサポートするそうです。そう、そして、これら 3 つはすべてフリー ウェアなのです。」

<http://www.xnet.com/~grhowes/html/Software/InCDius.html>
<http://www.student.nada.kth.se/~d88-bli/misc/TrackThief1.11.sit.hqx>
<http://www.anime.net/~go/mpeckers.html>


CorelDRAW 8:Hedy な体験

by Matt Neuburg <matt@tidbits.com>
(翻訳:尾高 修一 <shu@pobox.com>)
(  :西村 尚 <hisashin@axes.co.jp>)

8 月の CorelDRAW 8 の鳴り物入りデビューに気が付かなかったのは、木星 で休暇でもとっていた人ぐらいしかいないだろう。何ヶ月も前から、冷た い調子にレンダリングされた女優 Hedy Lamarr が雑誌の全面広告や Macworld Expo での巨大なポスターから私たちを睨み、その後史上最長と しか思えない長期にわたるプロモーションセールが続いた。400 ドルから 695 ドルとされていた推奨小売価格はあってないようなものだった。小売 店や通販カタログのいたるところで目についた Hedy は、150 ドル、100 ドル、50 ドル、それに時には無料でさえ手にすることができたのだ。一番 安い買い物ができたのは iMac や他の CPU を購入した人だが、クレヨンよ り高度なお絵かきソフトを持っているとさえ主張すれば“乗り換えアップ グレード”価格の恩恵にあずかることができた。一部の小売店では“アッ プグレード”の口実も有名無実化していた。

<http://www.corel.com/draw8mac/>

大袈裟な宣伝はともかく、多機能でプロ仕様のグラフィックプログラムを 安価に入手できて私はご満悦だ。言語機能が圧倒的に脳を支配しているよ うな人間でも、たまにはポスター、名刺、ロゴ、家の見取り図、それに Web 用の写真といったものを作らなければならないことはある。忠実に尽くし てくれた SuperPaint はいつでも私の心の中にあるが、もう古くなってし まったし応用範囲にも制限がある。少し前には Deneba 社の Canvas 5 を 試してみたこともあったが、その結果なんとかして後釜を探さなくてはと いう思いを抱くようになったのだ。CorelDRAW は後任として最適に見えた。 (Illustrator や Freehand は持っていないので、ここでは比較の対象に しない。)

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=03174>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=00734>

大物かつわがまま -- CorelDRAW のパッケージは 2 枚の CD に収められ ている。ベクターベースの CorelDRAW 本体のほかに、Corel PHOTO-PAINT 8 でビットマップを操作し、CorelTRACE 8 でベクターに変換することがで きる。多数の Photoshop プラグイン(PHOTO-PAINT で利用可能)のほか、 たくさんのサンプルファイル、それに山ほどのクリップアート、Web アー ト、写真、フォント、それにシンプルな画像ファイル管理ソフトの Canto Cumulus とフォント管理ユーティリティ、FontReserve の OEM 版がそれぞ れ付属する。(多くのユーザーはさらに AutoStart ワームも付属してくる ことに気が付き、そのため初期のロットはリコールの対象となった。Corel の Web サイトに問題があるロットのシリアルナンバーが記載してある。) 残念ながら Hedy の顔もふんだんに付属してくるので依然としていたると ころで見ることになる。3 冊のマニュアルの表紙、2 枚の CD、1 枚の CD ジャケット、それに起動時に毎回現れるスプラッシュスクリーンだ。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=04180>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=04864>
<http://www.corel.com/draw8mac/virusinfo.htm>

ほかにも色々な努力が必要だ。RAM はふんだんに、いや 大量 に必要だ。 Corel DRAW は自分用に 35 MB を欲しがり、それに加えてシステムヒープ も最高 30 MB ほど肥大化させてくれる。高速な PowerPC Mac も必要だ。 CorelDRAW は私の 604e/180 でもそこそこに動いてくれるが、Corel は正 しくも G3 マシンでの使用を推奨している。フローティングウインドウも 沢山あるので、画面も相当広くなければならない。ディスクスペースもたっ ぷり用意したい。通常のインストールが 130 MB を消費する。インストー ル作業は楽々で、ほとんどのファイルは同じフォルダに入ってくれるし、 どこに何を入れたかを教えてくれるログファイルも作成してくれる。ただ、 CorelDRAW はドキュメントでは触れられていない多数のライブラリや初期 設定ファイルに依存している。

そうはいっても、CorelDRAW がわけもなく巨大なのではない。まず、プロ 仕様の機能が満載されている。標準的なスポットカラーやコンポジットカ ラー集(Pantone、Focoltone など)が多数含まれている。ColorSync にも 対応。最適化可能な 3 レベルでの Postscript 印刷(しかも私の StyleWriter でも抜群の出力だ)。ネガ、裁ち切り、色分解、ハーフトー ン、トンボの出力も可能。テキストのレイアウトにはスタイル、精密なカー ニング、段組み、それにリンクされたフレームを使うことができる。 PICT、Illustrator、Photoshop、AutoCAD、GIF、JPEG、TIFF、それに聞い たこともないようなフォーマットのファイルを開いたり保存することがで きる。HTML を生成することすらできるのだ。オブジェクトの位置決めには テーブル、レイヤー、あるいはスタイルのいずれかを選ぶことができる。

CorelDRAW は Microsoft Word 並みの大幅なカスタマイズも可能だ。メ ニュー、パレット、ツールバー、キーボードショートカット、それに個々 のワークスペースといったものを変更することができる。それに加えて完 全にスクリプタブルなので、便利であるとともに悦楽でもある。

最後に、CorelDRAW は多機能だ。おきまりの幾何学シェイプ、ベジェ曲線、 テキストに加え、筆跡効果や寸法を扱えるほか、グラデーション、パター ン、ビットマップ、テキスチャーを使った塗りつぶし、シェイプの内側・ 外側やパスに沿わせたテキスト、それにオブジェクトのブレンド、ゆがみ、 押し出し、エンベロープ、透明度、ドロップシャドウ、レンズといった特 殊効果もある。(ビットマップ用のフィルターやエフェクトも多少は用意 されているが、本格的にビットマップを編集するには PHOTO-PAINT に切り 替える必要がある。

簡単かつ強力 -- 機能一覧だけでプログラムを判断するわけにはいかな い。比較対照表に丸がついているというだけでその機能が便利だとか、安 定しているとか、良く考えられているとか、あるいは上手く統合されてい るということには必ずしもならないからだ。ところが CorelDRAW の機能は 上記にぴったり当てはまる。意外なことに、巨大なわりには CorelDRAW は スリムで明快に感じられる。

ここで Corel が成功した理由は、インターフェースについて真剣に考えて いることによることが大きいだろう。基本的なツールはユーザーがすぐに 目にして手にする位置に配置してあり、メニューを探し回ったりパレット やダイアログを呼び出したりする必要がない。もちろん、パレットやダイ アログを呼び出すこともできる。CorelDRAW は多くの場合、タスクを実行 する方法を複数用意している。それでも重複しているという感じはしない のだ。それぞれの方法にそれなりの意味があるようになっている。基本的 に、作業は以下の 5 種類のきちんと定義されたエリアで行うようになって いる。

このうち、最悪なのはツールボックスだ。奇怪なアイコンが並んだパレッ トで、しかもアイコンの多くは別のアイコンをクリックするまで隠されて いる。これはグラフィックソフトでは一般的になっているが、私は依然と して大嫌いだ。幸い、CorelDRAW はカスタマイズができるので、もっと便 利なツールボックスを作り上げることもできる。隠されたアイテムをなく すこともできるし、どのアイコンが何かを示すツール tips もある。

プロパティバーは多数のパレットを一つにまとめたようものだ。カレント なオブジェクトやツールに応じてオプション、設定、それに情報を表示す るように適宜変化するフローティングウインドウなのだ。あるオブジェク トを選択して、それに対して何ができるかを知りたい場合には、プロパティ バーを覗けば良い。

インターフェースの最良の部分は、オブジェクトに対して直接、インタラ クティブに、マウスを使って、その文書内だけで行える操作の多様さだ。 コンテクストメニューは、メニューバーに移動することなく、同等なコマ ンドにアクセスさせてくれる。ハンドルとカーソルは、明瞭で首尾一貫し、 直感的な物理環境を提供する。一度のクリックでハンドルが現れ、オブジェ クトを移動したり、拡大したり、反転したりできる。また、テキストに対 しては、リーディングやカーニングを変更できる。二度目のクリックで別 のハンドルが現れ、回転、傾斜、回転の支点の設定ができる。ダブルクリッ クすれば、パスのベジェポイントを編集する状態になる。カラーは、ある オブジェクトにドラッグすることでその色を割り当てられる。あるいは既 存の色にその色を混ぜ合わせることができる。あるオブジェクトにグラデー ションの塗りがついていたら、終止色、中間色、方向、位置、中間点を調 整できる。ここでのインターフェースは極めて巧妙だ。同様のことは、ブ レンド、歪曲、エンベロープ、押し出し、透明度のような特殊効果でも行 える。

もう一つ、CorelDRAW の最強のツールは、カラーとオブジェクト操作に対 するアプローチだ。カラーモデルとパレットの幅広い選択は、カラー空間 を航海することを容易にしている。賢い検索/置換機能で、「すべての赤 い四角形を見つける」または「すべてのホットピンク塗りをコーラルグリー ンに変更」といった具合の命令を行える。オブジェクトを言葉で一覧し叙 述するダイアログを通じて丹念に調べることができる。最も顕著なことに、 オブジェクト間の均一性と類似性を保持することをプログラムがアクティ ブに手助けしてくれる。アウトラインとテキスト、カラープロパティを別々 にコピーし、ペーストできる。オブジェクトに便利な、首尾一貫した適用 を行うために、名前付きのスタイル内に属性を組み込むことができる。中 でも、カラーの関係性を叙述するカラースタイルは目覚ましい(“親”カ ラーを変更すると“子”カラー付きのオブジェクトがすべて正しく変更さ れる)。自動的に、または必要に応じて、オリジナルに与えられたプロパ ティから採った複写を作ることで、オブジェクトを“複製”することさえ できる。

最後に、複数回のアンドゥを忘れないようにしよう。ペナルティなしでこ ういった創造的な刺激を存分に味わってみることができるということは知 るほどのことではない。

むら気で扱いにくい -- 悪いニュースはといえば、CorelDRAW 8 は移植 ものの感じを持たないものの、Macintosh 環境で完全には快適とはいかな いことだ。文書ウインドウのサイズと位置は起動する度に忘れる。文書ウ インドウのサイズを変えると中身も一緒に拡大縮小する。分離した太字や 斜体字のファミリーメンバーを欠いたフォント(Geneva など)は太字や斜 体字にできない。プログラムは、私が 2 つのモニタを別々のビット深度で 使っていることがわからない。

実際、CorelDRAW はベータ版のような感じがする。絶えず続く小さな障害 が、ユーザーの信頼をむしばみ、やる気を損なわせる。ダイアログボック ス内では、時々わけのわからないことが起こったり、情報が可読領域から 外に出たり、スクロールバーが正しくスクロールしなかったり。時に謎め いたエラーメッセージが出現する。文書ウインドウがアクティブにされる ことを拒否したり、すべての作業が停止する状況に陥ることはたやすい。 ステータスバーはドラッグして完全に画面の外に消すことを許してしまい、 元に戻すためには多量の初期設定ファイルを捨てざるを得ない。早いうち に始終保存を強要されている気分になるが、これでも十分ではないかもし れない。一夜にしてテキストが不思議にもエンベロープの設定を失うとい う目に会い、テキスチャーが損傷するという報告も一つではない。

マニュアルは、巨大なプログラムのリファレンスマニュアルの典型的なも のだ。仰々しく、簡便すぎ、さえないもので、くどく、お決まりで、時に わかりにくい。これはたぶん避けられないのだろうが、印刷された実体験 できるチュートリアルや、即習案内書、ショートカット表カードが埋め合 わせてくれたらありがたかっただろう。このプログラムには結局なんらか の修得曲線がある。つまりユーザーが使い始める必要のある重要なヒント があるのだ。たとえば、Option + クリックで塗りではなく輪郭線のカラー を変更する。マニュアルに記された機能で完全に抜け落ちているものも多 い。最も顕著なものはテキストの検索/置換がないことで、スペルチェッ カーを含むほどのプログラムにしては愚かな手抜かりだ。

オンラインヘルプは奇妙な混成物だ。一部は(FileMaker Pro のような) Altura QuickHelp で、これはとてもいい。しかし、他の部分はチュート リアルも含めて Apple Guide で、使うのが苦痛だ。Apple Guide は私のマ シンをクラッシュさせる。

また、Corel からのサポートがないのもひどい話だ。電子メールででも、 Corel 自身のニューズグループででも、このレビューの準備中の質問への 回答を得ることができなかった。これのせいで CorelDRAW は単なるベータ 版ではなく孤児のように思えてくる。できれば、Corel はユーザーに耳を 傾け、バグを修正するためのリソースを配備することなくこのバージョン を作ったのだと思いたい。

結論 -- 長年、私は 1986 年型 BMW K100RT バイクに乗ってきた。人々 はよく私にこれをどれほど気に入っているか尋ねるのだが、私はこう答え る。「すばらしいよ。バネとシートとバッテリと送水ポンプとブレーキ液 槽とスロットルケーブルとウインドスクリーンを取り替えた後は、見たこ ともないすごいバイクの一つに生まれ変わるんだ。」

CorelDRAW 8 はむしろこれに近い。本当のプレミアムつきの価値があるが、 それが理由で、人は細部に小さな多くの欠陥があるのを知って驚く。依然、 埃を被ったバニー人形のように、これらはベッドの下に、薄暗い部屋の隅 にほとんど潜んでいる。時折あなたの心を捕らえるが、総じて部屋はかな りきれいに、完ぺきに実用的になっている。

CorelDRAW の最も目だった欠点は、そのテキスト処理能力だ。実用上悪い ところはないのだが、このプログラムには現実ではないものを装う雰囲気 がある。結局、検索/置換、自動ページ番号つけ、複数のマスターページ などがなくてはどんなカタログもレイアウトする気にならない。したがっ て、段割りやフレームリンク、自動ハイフネーション機能は実用的という よりはお飾りに思える。

Corel が実際に希望小売価格通りの値段で CorelDRAW を売っていたら、私 はもっと強く批判したに違いない。しかし、現行価格なら評価は肯定的だ。 華麗なインターフェースとプロレベルの出力を備えるすてきな機能を満載 した気前のよいパッケージである。私のように、高性能のグラフィックプ ログラムを一つだけ所有したいなら、CorelDRAW は大いにお勧めだ。一言 でいえば、強力で楽しい。いわばベータ版であるにしても。そして、あち こち欠点だらけだとしても。

映画『Blazing Saddles』の中で Harvey Korman がいうように、「それが Hedley なのさ。」


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