TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#477/19-Apr-99

TidBITS もこの号をもって 9 周年を迎え、定期的に発行されるインター ネット出版物の中で最も古いものの一つとなった。この記念すべき折をと らえて Adam は TidBITS 出版の動機と哲学について探り、Geoff Duncan は TidBITS の記事データベースの意義あるアップグレードについて裏話を 公開する。ニュースの中では、Apple 社の iMac の 333 MHz への格上げと 1.35 億ドルの利益計上、Virtual PC 2.1.3 の登場、さらには REALbasic 2.0 の出荷をとりあげる。

目次:

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今回の TidBITS のスポンサーは:


MailBITS/19-Apr-99

(翻訳:亀岡 孝仁 <tkameoka@fujikura.co.jp>)

iMac 333 MHz に -- Apple Computer 社は 333 MHz PowerPC G3 プロセ サを搭載した新 iMac を発表した。新システムはこの 1 月に発表された 266 MHz のモデルと基本的には同じで、512K のバックサイドキャッシュ, 32 MB の RAM、6 GB ハードディスク、24x CD-ROM ドライブ、10/100Base-T Ethernet、ATI Rage Pro Turbo グラフィックコントローラと 6 MB のビデ オメモリ、それに 56 Kbps のモデム付きで 1,199 ドルの希望価格も変え ていない。Apple 社はこの 333 MHz iMac を“Pentium も焼き付く”性能 の高性能ゲームマシーンとして売り込んでおり、このより高速のクロック スピードで消費者の iMac イメージを保持し、もっと速いクロックスピー ドを持つ PC に対抗できることを期待している。新システムはディーラー およびオンライン Apple ストアを通して直ちに入手可能である。[GD]

<http://www.apple.com/imac/>

Apple 社 1.35 億ドルの利益計上 -- Apple Computer 社は 1999 年第 2 四半期は 15.3 億ドルの売上げに対して 1.35 億ドルの利益をあげたと 発表した、これで Apple 社は 6 四半期連続して利益を計上した。Apple 社は前四半期に対して 3 億ドル増加の 29 億ドルの現金および預金を持つ こととなった。Apple 社の利益は ARM Ltd. 社の株売却の継続からの 5 千 万ドルでふくらんでいるが、Macintosh の売上げも堅調で前年同四半期に 対して数量で 27 パーセント増を記録している。在庫問題は引き続き iMac の入手を悩ませているが(どういう訳かブルーベリー iMac が他の色より 人気がある)、Apple 社は 8 百万ドルをかけて生産事業を改善しこの四半 期をたった一日分の在庫で締めくくった。Apple 社の売上げのおおよそ半 分は合衆国以外であり、この四半期で 400,000 台の Power Macintosh G3 を出荷したと Apple 社は言っている、もっとも PowerBook の売上げは落 ちておりこれは消費者が将来のモデルを待って買い控えしているのであろ う。 [GD]

<http://www.apple.com/pr/library/1999/apr/14results.html>

Virtual PC 2.1.3 フロッピー問題を解決 -- Connectix 社は PowerBook G3 ユーザが Virtual PC のバージョン 2.1.2 で左の拡張ベイからではフ ロッピードライブにアクセスできない問題を解決する小規模のアップデー トをリリースした( TidBITS-433 の“Virtual PC 2.0: ただのマイナー アップグレードではない”を参照)。もしバージョン 2.0 から一度もアッ プグレードしていないならば、2.1.3 のパッチをあてる前に、Read Me ファ イルや Connectix 社の Web ページで何を事前にやっておかなければなら ないかをよくチェックするようにして欲しい。アップデータは無償で 1.5 MB のダウンロードとなっている。 [JLC]

<http://www.connectix.com/html/vpc_updates.html>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=04923>

REALbasic 2.0 出荷 -- Real Software Inc. 社は 99 年 4 月 19 日に これまでデベリリースとなっていたアプリケーション開発ツールである REALbasic をバージョン 2.0 としてリリースした。REALbasic 2.0 の特長 はコアのプログラム言語の改善、開発環境インターフェースの改良、速度 アップ、それにカラー、ムービー、グラフィックス、ファイル、現地化、 Apple イベントの扱いの改善があげられる。Professional Edition では内 蔵されたデータベース機能、ODBC 接続機能、それに Windows エグゼ生成 機能が含まれる。( TidBITS-443 の REALbasic 1.0 のレビュー“そうさ Virginia、REALbasic があるさ”を参照)

<http://www.realsoftware.com/NewInRB2.html>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05043>

値段は Standard Edition が 100 ドル、Professional Edition が 300 ド ルとなっているが、学術系の顧客(フリーウェアのアプリケーションのみ を作成できるライセンスに限定)と REALbasic 1.0 からのアップグレード には割引が適用される。海外の顧客は国によってはその国の代理店に紹介 される;その他の人は Real Software 社から直接 REALbasic を購入でき る。プログラムは 2.5 MB のダウンロードでライセンスを購入するまでの 間 30 日間のデモ用として使える。印刷されたドキュメントおよびさらな る例がついた CD-ROM も間もなく別売として入手可能となる予定である。 Real Software Inc. 社はこれまで頻繁に現れているバグについても REALbasic 2.0 に対するバグ修正版を全力で次々とリリースしていく意向 を明らかにしている。慎重に対処したい顧客は既知のバグがより多く潰さ れるまであと数週間待ってからアップグレードした方がいいかも知れない。 [GD]


TidBITS 創刊 9 周年を達成

(翻訳:尾高 里華子 <rikako@pobox.com>)
(  :西村 尚 <hisashin@hotsync.co.jp>)

今週号は TidBITS の 9 周年記念号にあたる。今なお TidBITS を発行し続 けていることは、自分のことながら驚嘆に値する。コンピュータ業界の激 流の中、数多くの Mac 関連出版物が登場しては去っていった。TidBITS は インターネットの黎明期にデビューし、最新のテクノロジーやトレンドに 合うよう変化はしているが、心髄は昔のままである。この機会に 1990 年 以来 TidBITS を毎週発行し続けている動機について、そしてその手段およ び内容に影響を与えている哲学について話そうと思う。

動機 -- 「どのように収入を得ているのですか」という質問をよく受け る。一言で答えるならもちろん「スポンサーからだ」ということになる。 ところが「なぜ TidBITS を作っているのですか」という質問はめったに受 けない。ひとえに作りたいという情熱から作っているというのがその答え だ。この情熱は形は少し変わってきているものの、だいたいは最初に抱い た当時のままである。

1990 年に Tonya と私が TidBITS を始めたのは、コーネル大学の彼女の同 僚にコンピュータ業界の最新情報を提供したかったからだ。Tonya は PageMaker の技術に磨きをかけたかったということもあり、私は HyperCard とインターネットを利用した電子出版物を即座に思いついた。私たちの総 括的な目的はおもしろい情報や意見を伝達するということだった。話を人 に伝えたいという気持ちが、ほとんどの物書きの第一目的であるというの が私の意見だ。

最初は金銭的なことは目標に入っていなかった。TidBITS にスポンサーを 付けるという発想がいつ生まれたかは思い出せないのだが、私たちが初代 スポンサーの目にとまったのは 1992 年のことである。当時 Web はまだ芽 を出しておらず、グラフィックバナー広告は想像以前のものだったし、イ ンターネットは広告とは無縁の存在だった。Web 前の時代に手に入りにく い情報をメールで提供しながら、私たちのスポンサーが単なる広告を出す だけの人ではないということを保証するのは大変なことだった。

長年何か決断をする際にビジネス的な現実を、特に今は TidBITS が小所帯 を維持することを考慮するのを強いられている。つまり収入の確保は大切 な目標になっている。とは言え、TidBITS は金の生る木にはなりえないの で収入を得る必要はあるものの、情報を共有するという本来の動機の方が 負けることはない。

さらに私たちはもう一つの本来の動機にも忠実である。今役立つものと過 去の記録としての両面で質の高い情報を誰もが利用できる形で、蓄積拡大 するアーカイブを作ることだ。だから、初代 TidBITS として自動にアーカ イブを作ることのできる HyperCard スタックを利用したし、テキスト閲覧 用プログラム Easy View の作者 Akif Eyler 氏に協力もした。そして今な お役に立つ古い情報を利用できるようにオンラインデータベースにするべ く努力しているのだ(以下の Geoff Duncan の記事を参照)。

この関連情報のアーカイブを作成したいという念願が、昨年 TidBITS Talk を作った理由の一つだった。TidBITS は自分たちのやりたいものをすべて 取り上げたり、あらゆる分野で専門的な意見を述べるにはあまりにも組織 が小さすぎる。多くの読者から知識を得るために開設した TidBITS Talk のおかげで、私たちの知識は広がり、それをまたほかの人に伝えることが できるようになった。

TidBITS Talk は、創刊以来感じていた TidBITS の醍醐味、すなわちオン ラインコミュニティを形にしたものでもある。わいせつという言葉を定義 した時の合衆国最高裁判所判事 Potter Stewart 氏の有名な言葉をあて直 すと、オンラインコミュニティを言葉で説明するのは難しいが、目の当た りにすると理解できる。TidBITS Talk を始める以前も TidBITS コミュニ ティらしきものは感じていた。だが、読者が自分たちも一員なんだと感じ ているかどうかは分からなかった。TidBITS Talk ができ、仲間同士で情報 を交換しあい、連帯感を高める真のオンラインコミュニティに織り上がっ たのだ。

哲学 -- 1990 年に TidBITS を始めた時、私たちのジャーナリスト畑で の経験は微々たるものだったこともあり、TidBITS で何を取り上げるかに 関する哲学として一般的でないものを考え出した。

第一に、これはもっとも重要なことでもあるのだが、TidBITS で取り上げ る情報を慎重に選択している。自分たちが特に関心がある題材にフォーカ スを当てることにより、私たちの気持ちを伝えることができればと思って いる。これも裏を返すと TidBITS の読者全体の関心と私たちの関心が必ず しも重ならないという残念な面がある。もっとも私たちが取り上げない話 題に関する情報はよそでいくらでも読むことができる。また、「すべての ニュースを、こまめにアップデートして」方式の Web 報道をするつもりは ないし、正直なところ私たちにはそれを実行するためのとてつもない重労 働は不可能だし、惹かれない話題を無理やり記事にしようとも思わないか らだ。

スケジュール通りにプロとして恥じない内容の仕事をすることに関して私 たちは頑固であるが、「楽しくなければ Macintosh ではない」を信条にも している。TidBITS を作ることが楽しくなくなったら、それは TidBITS の 終わりを意味する。1997 年の後半から 1998 年の前半にかけて Apple が 終焉かと思われていた時期に元気にしているのは並大抵のことではなかっ たが、今は続けていてよかったと思っている。

もう一つの我々の主要な哲学は、情報はできるだけ正確にということだ。 通常、入手のできないソフトウェアについて書かないようにしている。ほ とんどの普遍的なバグやコンフリクト以外のすべてを報告することを避け るし、噂話は基本的に掲載しない。確かな情報という名目のものであって もだ。この態度は人々が噂話や、プレスリリース・ニュース、トラブル シューティング情報を扱う他の刊行物を読まざるをえないということにな るとわかっているが、我々がすべてをまかなえるわけではないのだ。遠い 昔、我々の週刊電子出版スケジュールが MacWEEK の印刷版を出し抜くこと もできると思ったころは、噂話や新製品ニュース、有名な機能拡張ファイ ル同士のコンフリクトを掲載するようなことももっと現実的だった。現在 では、確実に噂話の裏がとれるか、リリース前のソフトウェアをテストで きるか、またはコンフリクトを再現し開発元に確認できるまでは、この種 の情報を掲載することを避けている。これは、衝撃的なスクープとあなた が好感を持っている何かが正しいことを掲載する満足感とのトレードオフ なのだ。

なぜその種の人気のある情報を遠ざけるのか?2 つの理由がある。第一に、 業界に長くいるほど、どんな話にも複数の面があることがわかってくる。 出版するものはなんでも、企業やその企業内の個人、広く Macintosh ユー ザーに影響を与える。したがって、ある噂を聴けば、その情報の信頼性だ けでなくその噂を掲載したときの影響のことも判断する。ここ何年もの間、 TidBITS に使えず、または友人に話さえもできない夥しい情報に内々に関 与しているが、このことは今でも業界の盛衰を理解することに極めて役立っ ている。人々が我々に話をしてくれるのは、可能性として特別許可された 情報さえ我々が決して人に伝えないことを彼らが知っているからなのだ。

第二に、噂話やバグ報告を出版し終えるといつも我々のもとにはさらなる 情報を求める読者からの電子メールが押し寄せる。今でさえ、我々の元に 送られたあらゆるメッセージに返事を書こうとしている(首尾の程度はい ろいろだが)ので、ある記事を出版後に数百通のメッセージを受け取れば 圧倒されるだろう。圧倒されるのはいやなので、もっと詳しくという要望 を刺激しそうな不完全な情報を出版することを避けるのだ。

第三に、我々は、出版したものを振り返ったとき、他のどんな出版物でも お目にかかれないような記事で溢れていることがもっとも幸せだ。ある製 品が出荷されたというニュースは、広く行きわたった本質的にパブリック ドメインなので、限られたスペースは珍しい題材や深い評価記事、ある話 題の他面的な概観に当てる方がいい。世界のほんの小さな普遍的真実を明 らかにし、それをするに十分な長さと十分な深さで語りたい。経験や考え、 研究、必要に応じて歴史的背景までも述べることだ。

個人と Macintosh 生態系 -- このことすべてに関連しているのは、個 人の重要性への信念だ。“パーソナルコンピュータの背後の人”はかつて 我々がよくいった言葉だ。我々にとって、Macintosh 業界は、金儲けのた めの顔のない非個人的な企業の集合体ではなく、デベロッパー、製品管理 者、マーケッター、宣伝担当者、その他の報道関係者、そして最も重要な ユーザーを含む個人の文明化した生態系である。我々の理想の信念は、こ の生態系内のあらゆる人が生態系の他の構成員に対して責任を負うという ものだ。このシステムは資本主義の構造に依存するので、競争が生態系の ためになりうるし、なるべきだ。2 つの競合製品がユーザーに対して最良 のソリューションを提供することを求めて絶え間なく互いに抜きつ抜かれ つして進めば、あらゆる人の利益になる。

しかし、この生態系内のすべての人は自分たちの行動の影響を理解しなけ ればならない。企業というマクロレベルでだけでなく、影響を受ける特定 の人々というミクロレベルでも。あらゆる生態系には支配的な生物形態が あるが、持続できる生態系には別種の生物形態との間の均衡がある。 Macintosh 生態系も別ではない。高価なプログラムを違法コピーするので はなく購入すれば、ある会社が一社員のプログラマーに自分の店を開業さ せるだけの損益を改善させるのに一役買うにもなる。次には、Apple が Mac OS に含めるためにそのコードをライセンスすることを決めるような、ユー ザーの経験を促進する独自のシェアウェア製品を彼女が造るかもしれない。 同じように、フリーウェアとして配布された一人のプログラマーの優れた アイデアが人気を得てソフトウェアというものの業界の常識を変えてしま うこともありうるだろう。

ハイパーテキストの生みの親である Ted Nelson 氏の言葉を引用すれば、 “すべては絡み合っている”のだ。我々は自分たちのことだけを考えがち だが、実際、周りを見て我々の行動が生態系に与える衝撃を考えれば、我々 すべての生活を改善するようなことも今よりもっと起こりそうだ。

他人のことを考えることこそ、Macintosh コミュニティーを創り出したも のだ。同じ水準のコミュニティーは他のほとんどの業界には存在しない。 そしてこれが何年にも渡って Macintosh の成功の直接の原因となってい る。Dantz Development 社の Craig Isaacs 氏が最近こう話してくれた。 人々がわが社のバックアッププログラムである Retrospect のことをどう やって知るのかを明らかにするためのある調査で、37 % の回答者が口コ ミによってその評判を聞かされたことを知って驚いたという。つまり、 Macintosh ユーザーはお互いに語り合い、助け合い、ユーザーと企業の自 己持続的なネットワーク、すなわち生態系を創っているというわけだ。

PC に TidBITS と同等のものがないかとよく質問される。探してみたが、 我々が TidBITS でやっているようなことに類似の刊行物を見つけたこと はない。大部分で、PC には、共有されたコミュニティーという概念がな いのだろうと確信している。それは恐らく PC ユーザーの数の多さと多様 性のせいか、そこら中から結集する単一の企業がないためか、あるいは PC を使うことは意識的な選択というよりは決められた行為という方が多 いという事実のせいだろう。

1990 年に TidBITS は Macintosh オンラインコミュニティへの贈りものと して生涯を開始した。そして長年に渡り、Macintosh 生態系の重要な部分 になったと感じている。しかし、翻せば我々には成功を感謝すべき大勢の 人々がいるのだ。わがスタッフ、著者たち、スポンサー各社、ボランティ アの翻訳者たち、そして最も重要な、読者のみなさん。TidBITS が受け入 れられなければ、我々は煩わしく思われることをしなかっただろう。だか ら我々に好きなことをする理由を与えてくれことに心から感謝したい。


TidBITS 検索にコンテクスト

by Geoff Duncan <geoff@tidbits.com>
(翻訳:尾高 修一 <shu@pobox.com>)
(  :高島 均 <hitak@kk.iij4u.or.jp>)

9 年もの間 TidBITS を発行し続けてきた副作用として、アーカイブし、整 理し、読者の益になるような形で利用可能にしなければならない 9 年分の バックナンバーがある。TidBITS は第一号からこうしたことを念頭におい て努力してきた。TidBITS は自動的に将来の号を取り込むことができる HyperCard スタックとして配布されたのだ。そしてこの考えは今日の Web 記事データベースまで変わっていない。

<http://www.tidbits.com/search/>

Web へ 1996 年末、Web が爆発的な普及を遂げていた頃、Matt Neuburg がバックナンバーを HTML に変換し、本格的 Web アーカイブへの第一歩を 踏み出した。数ヶ月後、読者が Web 経由で TidBITS のすべてのコンテン ツを検索できるようにするコンテストの開始を Adam が宣言した。読者は これで TidBITS をローカルなアーカイブに保存しておく必要がなくなった のだ(連載記事“TidBITS 杯検索エンジン決定戦”を参照)。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=00826>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbser=1045>

Adam のサーチエンジン決闘は実に秀逸なアイデアだった。TidBITS で各種 の Macintosh ベースの検索エンジン技術をカバーすることができる一方、 自分たちがそのすべてに熟練する必要がなく、しかも最後には TidBITS 専 用検索エンジンが手元に残るというしかけだ。コンテストを発表し、エン トリー作を審査し、(大いに迷ったあげく)Apple e.g. をベースにした優 勝作を選んだ。Apple e.g. は Apple の検索エンジン技術で、後には AppleShare IP、WebSTAR、それに Mac OS 8.5 の Sherlock といった製品 の一部にもなったものだ。

検索エンジン公開の数ヶ月前、私は TidBITS のオンライン記事データベー スの実験を始めていた。これは FileMaker Pro と Blue World 社の Lasso をベースにしたものだった。本格的というよりは実験的な試みとして始め たものの、この検索は全文検索エンジンに付随する“著者名/題名”検索 に発展した。全文検索はできなかったものの、特定の著者や一定の期間で 記事を探すには手頃だった。

もっと重要なこととして、FileMaker ベースのシステムでは TidBITS 一号 全文ではなく個々の記事を参照することができたことがある。この機能は 何年も前から欲しかったものだった(が、Apple e.g. ベースの検索エンジ ンでは実現できなかった)。そこで 1997 年 10 月に行った Web サイト大 改造でこの機能を実現し、 TidBITS-400 で披露した。この時点から、 GetBITS URL は TidBITS のいたるところに散見されるようになり、過去に 出版した関連記事に読者を案内することになった。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=04179>

密かな陰謀 -- 当時は誰にも言わなかったが、この GetBITS URL には私 の密かな陰謀が隠されていた。読者を正しい所(記事、MailBITS、アップ デート、連載、それに最近では TidBITS Talk のスレッド)へ連れていく という明らかな利点のほかに、GetBITS URL は長期的にも有用だと考えた のだ。それはというのも、毎週データベースに追加される新しい記事には GetBITS URL が含まれており、 同じ データベースにある関連リソース にリンクしている。こうしたアイテム間のリンクがいずれ役に立つだろう と考えたのだ。

多くの読者の方には目新しいことではないだろうが、データベースの力と は情報の検索にあるのではなく、情報を役に立つ形で整理することにある。 基本的に検索とは単にものを探すだけで、一方データベースはこうしたオ ブジェクトを賢いものにすることができる。その賢さの度合はデータベー スの設計とユーザーの視点に左右される。特定の記事に対し、他のどんな アイテムが関連しているかという情報を捉えることによって、最終的に記 事をより賢いものにすることができると考えた。

挫折 残念ながら、どんな周到な計画もうまく運ぶとは限らない。優勝作 Apple e.g. ベースの検索エンジンに対する私たちの不満がついに爆発した のがいつだったかは正確には憶えていないが、私個人は Adam と Tonya が オーストラリアに行っていた 1998 年の初めに、何時間もかけて Apple e.g. の絶えざるクラッシュを何とかしようとした時に限界に達した。なん としてでも自力で TidBITS 検索エンジンを用意せざるをえないようだっ た。そこで著者名/題名検索が急遽登板となったのだ。

FileMaker Pro データベースを Web で公開することにまつわる数多い問題 やパフォーマンスの限界はさておき、移行は楽な作業ではなかったとだけ 言っておこう。これまでのデータベースプロジェクトで最大の野心作であ る TidBITS Talk アーカイブのデビューと、Mac OS 8.5 のインターネット ツール、Sherlock の登場でさらにことは複雑になった。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05012>
<http://www.tidbits.com/search/talk.html>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05274>

Sherlock がどのように私たちのデータベースに影響を与えたのだろう? Sherlock が有益なことは間違いないが、インターネット検索エンジンへ多 くの不適切(かつ無意識)な照会が送られる原因にもなっている。ユーザー が検索リソースを選択的にオン・オフすることが Sherlock では簡単にで きないため、ユーザーがすべてのプラグインをオンにしておく傾向がある のだ。したがって、TidBITS 記事データベースは常に TidBITS と無関係な 検索を受けることになる。今朝だけでも Sherlock から渡された検索文字 列には“ビートルズの歌詞”“台本の書き方”“MIDI バイオリン”といっ たもののほか、活字にはできないようなアダルト系のものがあった。こう した検索はデータベースを占有し、負荷を軽減するために検索条件を厳し くしてあるものの、不適切な検索は問題となっている。いずれにせよ、 Sherlock が原因のデータベースに対する負荷を軽減する方法を探すのは時 間がかかり、より賢い記事という懸案に取り組む時間が奪われることになっ た。少なくともこれまでは。

もっとスマートな記事を目指して -- TidBITS データベースから得られ る記事は、現在、以前よりもそのコンテクストに沿う情報をたくさん提供 するようになっていて、このことが TidBITS 読者のお役に立てばと願って いる。Web ブラウザに従ったほうがわかりやすいだろうから、このことを TidBITS-446「Conflict Catcher、ナイスキャッチ」 における Matt Neuburg の Conflict Catcher 8 レビューを 例にして見ていくことにしよう。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05086>

もし、これまでに私たちのデータベース項目にアクセスしたことがあるの なら、まず最初に気付くのは、記事テキストの右側に、数個の色付きボッ クスに集められた一連のリンクがあることだろう。これらのボックスは、 その記事に関連する項目をグループ化したもので、それは、TidBITS の同 一号に掲載された記事であったり、その記事が含まれている連載であった り、その記事で参照している特定の TidBITS 項目であったりするが、最も 重要なのは、 その後 その記事を参照することになった記事を含むこと だ。

Matt の Conflict Catcher レビューを見ると、これが後に、Conflict Catcher のその後のアップデートを取り上げた 2 つの記事から参照されて いることがわかるだろう。(この記事を読んでいる頃には、そのレビュー がこの記事からも参照されているはずだ。)また、印刷マニュアルの品質 が地に落ちたとする記事や InformINIT レビュー記事のみならず、Matt が 過去の TidBITS に現れた 3 つの Conflict Catcher レビューに言及して いることもわかる。そして、 TidBITS-446 に掲載された他の記事のリス トともに、このレビューが連載の一部であることもわかるのだ。

GetBITS URL を使い始めてまだ 18 ヶ月にしかならないことから、GetBITS URL は古い記事には現れず、それゆえ、古い記事はそれを参照する記事も しくはそれが参照する記事の存在を知るには至っていない。それでも、1994 年後半までさかのぼる約 550 の記事に関する相互リンクを完了したところ だが、まだ残っている約 200 記事を完全に統合させる必要がある。

昨年に TidBITS Talk を開始して以来、私たちは幾度となく、そのリスト を飛び交う議論や情報の質の高さに驚いてきた。そして、TidBITS の記事 から、関連する TidBITS Talk 資料が得られるようにするのがふさわしい と思えた。そこで、TidBITS 記事が TidBITS Talk の議論に言及したり、 あるいは、その記事が TidBITS Talk に寄せられたメッセージによって参 照されているときには、その記事のトップにリンクを表示するようにし、 ブラウザの新規ウインドウを使って、TidBITS Talk アーカイブの適切な項 目に直接たどりつけるようにしたのだ。(この TidBITS Talk リンクはま た、私たちが一つの Web ページ上で複数のグラフィックを用いている数少 ない例の一つだ。転送負担は合計 367 バイトなので、反対のしようもな かった。)

もっとスマートな表現を目指して -- TidBITS の記事を、もっと有益に そしてコンテクストを意識したものにするとともに、私たちはまた、人々 がデータベースとやりとりするときの他の方法についても向上させたとこ ろである。GetBITS URL は今や、ブラウザの URL フィールドにも履歴リス トにも登場するので、簡単に特定の記事をブックマークしたり、以前訪れ た項目を確認したりできる。データベースで最も人気がある記事をリスト するだけでなく、検索結果のページについても向上を図り、また、メイン の検索フォームも今では、特定のカテゴリに関して TidBITS が発行した最 近の記事を表示するという既製の問い合わせが使える。概して、データベー スによって供給される HTML はさらに洗練され、Windows ユーザーがアク セスしやすいようアーカイブにいくつかの個別変更を行い、そしてよくア クセスされる項目はさらに Lynx との相性がよくなった。検索問い合わせ は今や、TidBITS と NetBITS の両方の内容を検索するのだ。

今日は検索、明日は世界へ! TidBITS 9 周年を記念するこれらのデータ ベース改変を、読者が喜んでくれること、そしてこれら改変により、さら にコンテンツが利用しやすくなり読者に有益となることを願う。例によっ て、将来実を結ぶことを期待している素晴らしい計画や構想や拡張がまだ ほかにもあるのだが、それらを今明かすことはできない。スリルと興奮を 台無しにしてはいけないからね!


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