TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#483/31-May-99

Apple は 2000 年の早期にリリースされることになっている Mac OS X で 大忙し。しかし、Mac OS X は最良の NeXT とともに最良の Macintosh も 提供するのだろうか?あるいは、Macintosh を NeXT ライクなシステムと して役割を変えるのだろうか?多くの気になることをお伝えし、マウスの 機能を向上させるユーティリティを概観する。ニュースでは、Netopia 社 の Timbuktu 5.0 と HouseCall のリリースと Fog City 社の LetterRip Pro 3.0.5、Bare Bones Software 社の BBEdit 5.1 のリリースをお伝えする。

目次:

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MailBITS/31-May-99

(翻訳:西村 尚 <hisashin@hotsync.co.jp>)

Timbuktu Pro 5.0 と HouseCall -- Netopia 社は、同社の高く注目され る遠隔コントロールソフトウェアの最新版である Mac OS 用の Timbuktu Pro 5.0 と、技術的サポートに適応した遠隔コントロールの新製品である HouseCall をリリースした。Timbuktu Pro 5.0 は、モデムを介して離れた コンピュータをコントロールする改良された性能、ローカルネットワーク 用の TCP/IP ブラウザ、改良されたインターコムと IP 利用の音声通信機 能、さらに、ユーザーが再ダイアルすることなくアナログ電話回線音声と 遠隔コントロール機能を切り替えられる電話/モデム切り替えの新機能を提 供する。Timbuktu Pro 5.0 は、PowerPC ベースのマシンと Mac OS 8.1 以 降を必要とする。シングルユーザーのライセンスは 99 ドルから始まり、 マルチユーザー用パックで利用できる割引がある。Timbuktu の以前のバー ジョンからのアップグレードは 30 ドルから始まり、同様のマルチユーザー のアップグレード割引がある。

<http://www.netopia.com/software/tb2/mac/5x/>

Netopia 社の新製品 HouseCall は、Macintosh 専門家が他の Mac ユーザー にオンラインで技術サポートを提供できるように考案されている。専門家 は無料の Doctor 版の HouseCall を走らせて、遠隔システム上のライセン スされた HouseCall Patient コントロールパネルと通信するのだ。同時 に、Doctor と Patient ソフトウェアは、Timbuktu とまったく同じよう に、専門家が遠隔 Macintosh の画面を監視、コントロールし、ファイルを 交換できるようにする。また、HouseCall は同じく電話/モデム切り替え機 能も提供する。加えて、Netopia は HouseCall Internet Locator サービス を運営するので、HouseCall の Patient は、オンラインにいるときはいつ でも、動的なダイアルアップ接続をしているときでさえも、自分の Doctor が位置を見つけてくれる。HouseCall は、Mac OS 8.1 以上と 68040 また は PowerPC プロセッサつきの Mac を必要とする。クライアントのライセ ンスはシングルユーザー用の 30 ドルから始まり、10 ユーザーパック用の 200 ドルまである。HouseCall Doctor アプリケーションは無料だ。 HouseCall(および Timbuktu Pro 5.0)の評価版は、Netopia の Web サイ トから入手できる。 [GD]

<http://www.netopia.com/software/tb2/mac/housecall/>

LetterRip Pro 3.0.5 に POP 機能とサーバ調整が追加 -- Fog City Software 社は、LetterRip Pro 3.0.5 をリリースした。同社の 395 ドル の Mac OS 用メーリングリストのソフトウェアのメインテナンスリリース である。(LetterRip Pro 3 のレビューは TidBITS-473 の“LetterRip Pro を使えばあなたもプロに”を参照)。LetterRip Pro 3.0.5 は、一つ の POP アドレスで LetterRip を使う場合も -on、-off、-digest 購読ア カウントを処理する能力を追加し、次期 SMTP ポートを変更する方法を提 供し、電子メールクライアントが quoted-printable エンコーディングを よりうまく処理できるように非 MIME ダイジェストにヘッダを追加し、い くつかの初期化の問題を修正する。LetterRip Pro 3.0.5 は LetterRip Pro 3.x の所有者に対して無料のアップデートである(ダウンロード容量は、 完全なインストーラが必要かまたはサーバアプリケーションのみが必要か によって 550K から 2.9 MB までの幅がある)。LetterRip Pro のそれよ り前のバージョンの所有者は無料でアップデートできるかもしれないが、 そうでなければアップデートは 145 ドルである。Fog City の Web サイト から完全機能の 30 日のデモ版を入手できる。 [GD]

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05328>
<http://www.fogcity.com/lr_upgrade.html>
<http://www.fogcity.com/lr_try_it.html>

Apple の新技術のすき間 -- Apple Computer 社は同社の取締役会に Millard“Mickey”Drexler 氏を任命した。Drexler 氏はコンピュータ業界 の出身ではなく、世界的な衣料品とアパレル小売業の Gap 社の会長兼 CEO である。同社は有名な Banana Republic と Old Navy 衣料品ブランドの会 社でもある。Apple は明らかに、Drexler 氏の消費者市場と小売市場のマー ケティング経験を活かして Apple のユーザーベースと製品アピールを拡張 したいと考えているようだ。カーキ色の iMac なんてどうだい? [GD]

<http://www.apple.com/pr/library/1999/may/26bod.html>

BBEdit 5.1 が MacPerl をサポート -- Bare Bones Software 社は、プ ログラマーと Web 作成者に使われるハイエンドのテキストエディタの最新 版である BBEdit 5.1 をリリースした。BBEdit 5.1 は、MacPerl の統合化 されたサポートを提供する。MacPerl は、テキスト処理と Web サーバ上の CGI アプリケーションによく使われるプログラミング言語の Mac OS 移植 版である。BBEdit 5.1 は MacPerl スクリプト用の特別なメニューを提供 し、ユーザーが BBEdit 文書ウインドウの中身を操作するカスタムの“Perl フィルタ”を作れるようにする。他の変更点の中では、BBEdit 5.1 は、 Apple の(現在無料の)Macintosh Programmer's Workshop(MPW)に使わ れる Projector ソースコントロールシステムをさらに完全に統合し、改良 された複合的なレイアウトの Web Color パレットを提供し、付属の各種 HTML 検証ユーティリティの改良を統合し、ビジュアル HTML エディタ処理 後の洗浄用にデザインされたツールを強化する。BBEdit 5.1 アップデート は 2.4 MB のダウンロード容量で、5.x の所有者全員に無料で提供されて いる。旧バージョンの BBEdit の所有者は 39 ドルでアップグレードでき、 競合プログラムまたはフリーウェアの BBEdit Lite のオーナーには 79 ド ルのアップグレードが用意されている。 [GD]

<http://web.barebones.com/products/bbedit/bbedit.html>
<http://www.macperl.com/>
<http://developer.apple.com/tools/mpw-tools/>
<http://web.barebones.com/support/update.html>


マウスを最大限に活かす

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:尾高 里華子 <rikako@pobox.com>)

誤解のないように。これはディズニー株で儲ける術を書いた記事ではない。 すべての Mac は気さくなマウス使って、クリックし、ドラッグし、そして 文字通りネズミのように走り回ることができる。Macintosh ユーザーの中 には _マウス科Macintosh属 からもっと進化した種類へ移行した人がい るだろう。私もその口で、4 つボタンの Kensington TurboMouse トラック ボールを使っている。これには 4 つのボタンに機能を割り当てたり、コン トロールを強化するなどが可能なフレキシブルな Kensington MouseWorks ソフトが付属している。その他のポインティングディバイスにも似たよう なソフトが付いているはずだ。

しかし、最近 2 〜 3 の広告を目にし、未だにごく普通の Macintosh マウ スを使っている人が大勢いることや彼らがスーパーマウスを使ったら一日 あたりどれだけの楽ができるようになるかなどを考えてみた。自分でこの 類いのユーティリティすべてを試してみることはできないということを考 慮いただきたい。ハードウェアがすべて手に入るわけでもないし、似たよ うな機能を持っているユーティリティを混在させるのは危険な行為なのだ。

そこで、今回はマウスハードウェアに直接係わるプログラムの中から選ん だものをいくつかとマウスでできることなどに焦点を当てたいと思う。マ ウスユーティリティという非常にややこしいものを網羅しようとするのは 横車を押すような行為である。したがって、ここで取りあげたものに刺激 されてマウス関連インターフェースを向上させる情報がもっと欲しいたい と思ったら、最近 TidBITS Talk で取りあげられたその他の数々のユーティ リティをチェックしていただきたい。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=639>

USB Overdrive -- あの有名な KeyQuencer を含め数々のプログラムを生 みだしている Alessandro Levi Montalcini 氏が、USB Overdrive をリリー スした。これは、製造元を問わずすべての USB マウス、トラックボール、 ジョイスティック、ゲームパッドを扱うと謳っているオールマイティーな USB ドライバーである。USB ポートのついた(または Keyspan USB カード を差した)Mac があれば、PC 用に設計された多様な USB ディバイスを使 用できるようになる。

<http://www.binarysoft.com/kqmac/kqmac.html>
<http://www.keyspan.com/products/usb/card/>

USB Overdrive により、そういったディバイスが 使用 できるようにな るのはもちろんのこと、搭載されているすべてのボタン、スイッチ、ホイー ル、コントロールにアクセスできるようになる。スクロールホイールをド キュメントのスクロールに、Control + クリックを第 2 のマウスボタン に、複雑なマクロを別のコントロールにリンクすることができるのだ (KeyQuencer を送りだした Alessandro の経歴を考えると驚くことではな い。 TidBITS-351 の「KeyQuencer - QuicKeys キラーになるか ?」を参 照)。機能の割当は普遍的なものにもアプリケーション特定のものにもで きるし、一度に複数の USB ディバイスで USB Overdrive を利用すること もできる。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=00838>

リリースしたての USB Overdrive 1.1 は、マウスを動かさなくてもよい自 動スクロール機能やアプリケーション特定のマウススピード設定を備え、 サポートする USB ディバイスが増えた。だがそれだけではない、USB Overdrive は USB を使用できる Mac を持っている人に全 PC USB ハード ウェアへの道を開いてくれるので、金銭的にもありがたい。USB Overdrive 1.1 は 20 ドルのシェアウェアでダウンロードサイズは 250K である。

<http://www.usboverdrive.com/>

TheMouse2B -- USB Overdrive では手に余る方や USB を持っていない方 は、Matthew Dolan 氏の TheMouse2B を検討していただきたい。これは、 マウスの第 2 のボタンの設定を行うコントロールパネルで、多重ボタンが 付いたマウスは持っているがそれをカスタマイズするソフトを持っていな い人用である。第 2 のマウスボタンがシングルクリック、ダブルクリッ ク、(ドラッグ用の)クリックロック、コンテキストメニューにアクセス する Control + クリックとして動作するように設定することができる(実 際、すべてのモディファイアクリックが可能なので、Option + クリックを してアプリケーションを切り替えたり隠したりすることもできる)。 TheMouse2B は System 7.0 以降(推奨は Mac OS 8 以降)下で様々な ADB および USB の 2 つボタンマウスで利用できるとのことだ。ダウンロード サイズ 97K の TheMouse2B は 10 ドルのシェアウェアである。

<http://www.tribar.dabsol.co.uk/themouse2b.html>

Snap-To と Scrollability -- Kensington MouseWorks 社は、ダイアロ グボックスが現れたらカーソルが直ちにデフォルトボタンへと移動する定 評のあるソフトを出している。使用した感じはなかなか良いのだが、次か ら次へとダイアログボックスを処理している時など間違ったボタンをクリッ クしてしまったりする。Kensington 製のマウス関連ディバイスを使用して いない方には、同様のことができる Eden Sherry 氏の 5 ドルのシェアウェ ア Snap-To コントロールパネルがある。さらに Snap-To は Kensington MouseWorks の基本的なものよりも上を行く機能を少々備えている。「開 く」や「保存」のダイアログボックスで Snap-Top をオフにし、通常通り デフォルトの「開く」や「保存」ボタンをクリックする前にハードディス クをナビゲートしたりファイル名を入力するといった操作を行うようにで きる。また、カーソルが突然デフォルトのボタン上に飛んでしまうと元い た位置が分からなくなってしまったりするが、Snap-To はカーソルが軌跡 を描きながらボタンに移動するようにも設定できる。Snap-To のダウンロー ドサイズは 81K で、System 7.0 以降を搭載しているすべての Mac で動作 する。

<http://www.edenware.com/snap-to/>

Eden はウインドウのスクロール方法を新たに 2 つ追加するすぐれたユー ティリティ Scrollability も出している。QuarkXPress、PageMaker、 Photoshop などの一部のグラフィックやレイアウトアプリケーションで採 用しているスクロール用の手“grabber”をご存知の方も多いと思う。Mac OS 8.5 からは Finder にこの機能も加わったが(Finder ウインドウで Command + ドラッグを試していただきたい)、Scrollability を利用すれ ば大抵のアプリケーションでウインドウをつかんでスクロールすることが できるようになる(Scrollability とコンフリクトを起こすアプリケーショ ンでは無効にすることもできる)。このスクロール用にどんなモディファ イアキーの組み合わせも指定できるし、このスクロールができる位置を制 限できる。モディファイアキーを押したままにしておくのが嫌だ(またマ ウスやトラックボールにボタンが一つしかついていないので、モディファ イアキーとの組み合わせを定義できない)という方のために、 Scrollability にはウインドウの上下部にあるエリアを設定し(デフォル トはウインドウの高さの 10 % になっている)、カーソルをそのエリアに 持っていくとカーソルが上下の矢印になりウインドウをスクロールできる という機能が付いている。これは誰もが使うような機能ではないだろうが、 お定まりのスクロールバーに不満であれば試してみる価値はあるだろう。 Scrollability は 10 ドルのシェアウェアでダウンロードサイズは 134K である。

<http://www.edenware.com/scrollability/>

SmartScroll -- Mac OS 8.5 Finder でもスクロール革命を目にすること ができる。ウインドウのコンテンツの長さに比例してサイズの変わるつま みと新しいスクロール方法としてウインドウのコンテンツを動かすライブ スクロールも加わった。ところがこういった機能は Finder とアップデー トされた一部のアプリケーションでしか利用できない。では、古いアプリ ケーションでこういったものを利用したい場合はどうするか? ここで出番 となるのが、すべてのアプリケーションで上記の機能を実現してくれる Marc Moini 氏の SmartScroll だ。SmartScroll は System 7.0 以降を走 らせている 1990 年以降にリリースされたすべての Mac で動作する 12 ド ルのシェアウェアでダウンロードサイズは 208K である。

<http://www.marcmoini.com/SmartScroll.html>

Prestissimo -- その昔スクロールバーの両端に両方向の矢印が現れる DoubleScroll というユーティリティを使っていた。DoubleScroll は今も なお存在するのだが、Mac OS 8 では動作しない。Mac OS 8.5 アピアレン ス・コントロールパネルにある Smart Scrolling 機能でスクロールバーに 一対になった矢印を置くことができるが、これはバーの下と右にしか現れ ない。幸い Prestissimo というフリーウェアのコントロールパネルが DoubleScroll と同様の機能を実現してくれる。Prestissimo を使うとアプ リケーション切り替えるためのキー操作の向上や Mac OS 8.5 にある Application Palette に加え、スクロールバーの両端に一対になった矢印 をおくことができる。不思議なことに Prestissimo の持つ機能は Mac OS 8.5 に入っているが Apple が隠しておくことにしたものばかりだ。私のよ うにスクロールバーの両端に両方向の矢印が欲しいという方は一度この Prestissimo を試していただきたい。

<http://www.amargosa.com/doublescroll.html>
<http://www.polymorph.net/prestissimo.html>

マウスに満足 -- 機能増強マウスが欲しいと思ったり必要になったこと がないという方がいるだろう。マウスの機能が長い間進歩していないとこ ろを見ると、Apple もそういう方の意見に賛成なのだろう。しかし、ちょっ としたユーティリティが一つ二つ加わるだけで Macintosh の使用を向上す ることができるというのはうれしい驚きになるだろう。


Mac OS X それとも Mac OS NeXT?

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:松岡 文昭 <mtokfmak@mxa.mesh.ne.jp>)
(  :尾高 修一 <shu@pobox.com>)

Apple が 1996 年後半に NeXT 社を買収した際、その表面上の目的は Mac OS を置き換えることの出来る次世代オペレーティングシステムを獲得する ことであった。Mac OS がきしみ独自の力でほとんど道路をわたることがで きないと Apple は信じ込んでいたのだ。過去二年半が立証したように、実 際に NeXT 社買収の最も重要な部分は舵取りとしての Steve Jobs 氏の Apple への復帰であった。Jobs 氏が暫定 CEO になってから、Apple はい くつもの斬新な動きを巧みに実行してきた。最も顕著なのが iMac のリリー スだ。

NeXT 社買収の他の効果がやっと認められ始めたことを無視するのは簡単 だ。確かに Apple は Mac OS の将来バージョンへのロードマップを語って きたし、Mac OS X Server さえリリースした。だがほとんど我々が見たも のは単に我々が既に良く知っている Mac OS の改良であった。しかし、一 年前の Worldwide Developer's Conference (WWDC) で Jobs 氏が設定した スケジュールを振り返れば、Apple は自ら課したそれらの締め切り期限を 良く守ってきたことがわかって頂けるだろう。Mac OS 8.5 は 1998 年の第 三四半期に出荷され、Mac OS X Server は 1999 年第一四半期に僅か遅れ ただけで、Mac OS 8.6 は出荷予定の 1999 年第一四半期直後には姿を現し ている。次のメジャーリリースは 1999 年第三四半期であり、Apple はコー ドネーム Sonata と呼ばれる Mac OS 8 の次期バージョンの出荷を計画し ている。Mac OS X の最初のフルリリースは 2000 年の始めの予定だ。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=04899>

今年の WWDC に出席した友人によれば「きちんとして退屈」だったそうだ。 スケジュールもさることながら、Apple は昨年の WWDC で語った同じ話を 繰り返していたからだ。興奮するものはない。だがそれは聞くに値する大 きなニュースだ。なぜなら過去において、デベロッパー達はすぐ後でギロ チンの露となる Apple が福音する技術を聞きに行くために沢山の金を支払 い、不平たらたらだったからだ。一貫性は良いことだ。そして Apple に とって一貫性とは Mac OS 8.x に水面下の改良を施し続け Mac OS X のリ リースに集中することを意味しているようだ。

Mac OS X の詳細 -- 現在の Macintosh ユーザーにとって多分 Mac OS X の最も興味ある側面は、それがほとんどの既存の Mac OS 8.x アプリケー ションをサポートするようになっている、ということだろう。それらのい くつかは Mac OS X の高度な機能を利用できないだろうが、その他は Mac OS X が直接サポートする Carbon と呼ばれる現行の Mac OS アプリケー ション・プログラミング・インターフェース(API)のセットを順守するこ とで完全な市民となることができるのだ。もし Apple と Macintosh のデ ベロッパー達が Carbon 戦略を見事にやってのけることができれば、既存 のアプリケーションが一から書き直すことなく Mac OS X の機能を利用で き、真にベストな状況となるだろう。Mac OS X の基本階層は:

Macintosh と NeXT オペレーティングシステム技術の最良の部分を組み合 わせる、というと聞こえは実に良い。だが、Mac OS X のリリースが近づく につれて不安もつのってくる。このところの Apple は Mac OS の改良と Macintosh ハードウェアのリリースに焦点を合わせてきていた。ところが NeXT から大挙してやってきた社員たちもその間手をこまねいていたわけで はない。今でこそ Apple の社員章を身に着けてはいるものの、こういった 人たちが NeXT 技術を基にした Macintosh システムを作ることよりも、 Macintosh を NeXT ライクなシステムにすることを多少なりとも目指して いる可能性はある。私はまだ Apple と NeXT 技術の境界がもっとはっきり していた 1997 年にこのことを取り上げたことがあった。その頃と比べる と境界はぼやけてきたが、NeXT/Unix のメンタリティが Mac OS X に押 し込まれているという感覚は今でもぬぐえない。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=00694>

この落ち着かない気分が目に見える形で浮上したのは今月の WWDC だった。 Apple は Macintosh の最良の部分を維持する約束はしているものの、 Macintosh デベロッパーと話をすると、現実にどんなことになるかは少々 不安だ。以下の点を考えてみよう。

Carbon Finder -- WWDC で、Jobs 氏と Apple 副社長の Phil Schiller 氏は、Finder を一から書き直した“Carbon Finder”を披露した。残念な ことにこれは見たところ何千万という Macintosh ユーザーが毎日見て使っ ている Finder とはあまりにも似ていなかったため、聴衆には野次まじり の沈黙で迎えられた(基調講演後に聞いたコメントはもっと手厳しかっ た)。“Carbon Finder”は、最盛期でも多めに見積もって数万人程度の NeXT ユーザーにしか使われなかったファイルブラウザ、NeXT Workspace Manager をアップデートしたようなものに見えた(以下の Macworld Online の画像を参照されたい)。

<http://macworld.zdnet.com/1999/05/02/wwdc/photogallery/wwdc5.html>

正しく設定さえすれば Carbon Finder も現行の Finder のように見えるよ うにすることもできるようだし、ネットワークをブラウズするものとして は Finder とは別になっている Chooser や Network Browser さえよりも 良いインターフェースを提供するはずだ。Apple はとっくの昔にデスクトッ プアイコンからネットワークサーバへのアクセスを提供する PowerTalk Catalog のようなものを再生しておくべきだったのだ。( TidBITS-195 の「PowerTalk Arrives」を参照されたい。)

複数のフレームから成るファイルブラウザが悪いというわけでは決してな いが、今の Finder ほどの柔軟性はないことが多い。Apple がファイルブ ラウザをオプションとして提供するのは、仮にそれが View オプションで あっても誰も文句は言わないが、Apple が Finder をより劣ったファイル ブラウザで置き換えようとしたら、今の Mac ユーザーは反乱を起こすだろ う。ファイルブラウザがどんなものかを体験するには、Greg Landweber 氏 のシェアウェアユーティリティ、Greg's Browser を試していただきたい。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=02403>
<http://kaleidoscope.net/greg/browser.html>

希望のパス -- Mac OS X は Unix をベースとしており、Unix の基本的 特徴の一つである /bin、/etc、/usr などといったわかりにくい名前のつ いた特別なディレクトリに依存している。これ自体は Mac OS が Extensions、Control Panels、Preferences といった特別なフォルダに依 存しているのとさして変わらない。主な違いは、Unix ファイルシステムが 特定のディレクトリだけに限らず、すべてのディレクトリについてパス名 に依存していることにある。一方、Mac の HFS とHFS Plus ファイルシス テムの場合、すべてのファイルとフォルダに固有の ID が与えられている。 このファイル ID の美しいところは、名前やパスと切り離すことができ、 Unix では不可能な抽象化が可能なところにある。たとえば、アプリケー ションが入ったフォルダの名前を変更しても、ファイル ID が変わらない ためにすべてがそれまでと同じように機能する。Unix では、こんなことを したらパス名が変わってしまうため、アプリケーションが関連ファイルを 見失ってしまうことになる。

さらに、Mac は複数のボリュームが同じ名前を持っていても構わないが、 Unix(ルートレベルは常に /)や Windows(あらゆるボリュームが固有の アルファベットを持っている)ではそうはいかない。複数のボリュームが 同じ名前を持っていても良いということではなくなると、結果は単に苛立 たしいだけから大惨事に至るまで様々だ。

Mac OS X はデフォルトで HFS Plus をサポートすることになっているの で、HFS Plus を使っているディスクではファイル ID は機能し続けるはず だ。だが、通常の NeXT プログラミングではパス名の使用が奨励されてい るため、ファイル ID が使用されないようになる可能性はある。パワーユー ザーが Mac OS X でサポートされた複数のファイルシステムを行ったり来 たりするとどういうことになるかもはっきりしない。ほとんどの Mac ユー ザーには複数のファイルシステムなどということは口にしないほうが賢明 だろうから、Apple が普通のユーザーからはこんなことは全く見えなくし てくれることを期待したい。

お好みのタイプは? Mac OS X は Unix であるから、Windows のように ファイル名の拡張子に依存してファイルタイプを指定するようになるかも しれない。GIF ファイルには .gif という拡張子が付いていなければなら ず、テキストファイルなら .txt という具合だ。Mac OS は一方ファイルタ イプとクリエータというデータ構造を用いてファイルタイプを指定するの で、ユーザーが GIF ファイルに .gif という拡張子を付けるのはもちろん 自由だが、オペレーティングシステムはファイルタイプコードを元にこの ファイルが GIF ファイルであると判断するのであって、ファイル名を見て 判断しているのではない。

Macintosh ユーザーが期待するもう一つの機能に、同じタイプのファイル でもダブルクリックした際に異なったアプリケーションで開くことができ るというものがある。あるテキストファイルは SimpleText で開き、別な ものは BBEdit あるいは Nisus Writer で開く、という具合だ。Unix では Windows と同様に、同じタイプのファイルは一つのアプリケーションとし かリンクできない。機能の低下は明らかだが、それとは別にユーザーから のコントロールができなくなるのだ。ファイルに正しい名前を付けないと、 期待通りに機能してくれなくなる。たとえば私の祖母に、作ったファイル の名前すべてに特定の文字を付け加えなければならないことを説明して理 解してもらえるとは思えない。Windows プログラムのようにアプリケーショ ンが自動的に拡張子を加えてくれるということも可能だが、これはこれで 混乱の元になる。

Mac OS X は HFS Plus をサポートするので、少なくとも HFS Plus ファイ ルシステムを使用している間はここでもタイプとクリエータコードが使え ることになるだろう。専門家たちは Mac OS X の Unix ユーティリティが どのように HFS Plus ボリュームと付き合うことになるか興味を持って眺 めている。たとえば Unix のコピーコマンドcp が HFS Plus ファイルシス テムでファイルをコピーした際にタイプとクリエータコードを保持すると は考えにくいからだ。

テキストの是非 -- 最後に、ごく普通の初期設定ファイルについて考え てみよう。Macintosh の世界では、アプリケーションが初期設定ファイル とのインターフェースを提供しなければいけないことが常識なので、普通 の Macintosh ユーザーが直接初期設定ファイルをいじることはほとんどな い。だが Unix の世界ではテキストベースの初期設定ファイルが主流なのだ。

ある友人が気が付いたことだが、現行の Mac OS X Server で Apache の本 格的な設定をしようとしたら vi(Unix 古来のテキストエディタ)と出会 うことになる。設定を変えようと思ったら、このテキストファイルを一行 書き換えればいいのだ。これは Unix パワーユーザーには結構だが、 Macintosh の世界では悲惨な事態を招きかねない。テキストベースの初期 設定ファイルはデリケートで、文字を一つ書き間違えただけでアプリケー ションの動作がおかしくなる。

もちろん、アプリケーションが初期設定ファイル用にグラフィカルインター フェースを用意して、結果をテキスト形式で保存するということはできる。 だが Unix から移植されたプログラムを見てきたところ、テキストベース の初期設定ファイルが使用されている場合にはグラフィカルインターフェー スの優先順位が低くなり最終的に用意されないことが多いのだ。

行方を占う -- 上記のような懸念は今のところまさに懸念でしかない。 Mac OS X は少なくともあと 7 ヶ月の間は出荷されないし、Mac OS X Server が 1998 年第三四半期から 1999 年第一四半期にずれ込んだよう に、Mac OS X も遅れることは十分に考えられる。

この間、Mac OS X が真に Mac OS のベストの部分(ユーザーインター フェース)と NeXT のベストの部分(モダンなオペレーティングシステム) を組み合わせるための時間が Apple に与えられることになる。Steve Jobs 氏は Mac OS を Apple の“至宝”と述べ、Mac OS こそが同社の顧客を引 き付けているのだから Mac OS に専念することが大切なのだと述べた。 Apple が瀕死の状態の頃に Mac を買った人たちは、ある日 Apple が全く 別のオペレーティングシステムをリリースするから買ったのではない。こ うした人たちは、今と同様に Mac OS が当時ベストのコンピューティング 体験を提供してくれたからだ。

私は Jobs 氏が単に当時危機に瀕していた Apple を救うために既存の Macintosh ユーザーにおべっかを使ってこうした発言をしたのではなかっ たと信じたい。というのもこの発言は的を得ているからだ。NeXT に優れた 面があったのは確かだが、商業的には成功しなかった。一方 Macintosh は コンピューティングの顔を変えた。Apple には Macintosh の顔をそのまま にし、NeXT テクノロジーはユーザーを惑わせることなくその威力を発揮で きる舞台裏で存分に活用していただこうではないか。


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