TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#489/19-Jul-99

メールアプリケーションに関しては誰でも独自の機能を一つか二つ欲しい と思うものである;Adam の Eudora Pro 4.2 に関する第二段、この強力な プログラムに含まれる数多くの特長を明らかにしてくれるので是非注目し て欲しい。さらに今週は、Matt Neuburg が Deneba 社のアプリケーション Canvas 6 をレビューしている。ニュースの部では、Apple 社の 203 百万 円にのぼる四半期利益、SETI@home クライアント 1.06 と BBEdit 5.1.1 を扱っている。来週は New York での Macworld Expo である!

目次:

Copyright 1999 TidBITS Electronic Publishing. All rights reserved. 問い合わせは <info@tidbits.com> へ、感想は <editors@tidbits.com> へ。

Copyright 1997 TidBITS Electronic Publishing. All rights reserved.
問い合わせは <info@tidbits.com> へ、感想は <editors@tidbits.com> へ。

TidBITS 日本語版は TidBITS 日本語版翻訳チーム メン バーのボランティアによって翻訳・発行されています。


今回の TidBITS のスポンサーは:


MailBITS/19-Jul-99

(翻訳:亀岡 孝仁 <tkameoka@fujikura.co.jp>)

Apple 社 203 百万ドルの利益 -- Apple Computer 社は 1999 年第 3 会 計四半期の利益は 203 百万ドルであったと発表した。この結果には今期も 行われた Arm Holdings plc 社の株売却益 89 百万ドルが含まれており、 これを除けば Apple 社の利益は 114 百万ドルであった。同社によれば、 販売数量は前年同期比 40% 増で、一般消費者および教育市場での iMac の 好調な売れ行きに支えられたものだ;さらに Apple 社の売上げの 45% は 国際市場向けであった。Apple 社の在庫水準は一日を切っておりキャッシュ 残高も 31 億ドルを超え、同社の利益マージン率も向上し続け今期は 27.4% に達した。これで Apple 社は 7 四半期連続で利益を計上した。同時に Apple 社は市場から 500 百万ドルに上る自社株の買い戻し計画を発表し た。[GD]

<http://www.apple.com/pr/library/1999/jul/14q3.html>
<http://www.apple.com/pr/library/1999/jul/14stock.html>

アップデートで SETI@home クライアント団結を強める -- SETI@home プ ロジェクトは SETI によって収集された無線望遠鏡データの解析をするた めの Macintosh SETI@home クライアントのバージョン 1.06 を公開した (the Search for Extraterrestrial Intelligence [大気圏外知的活動探索 運動] - TidBITS-482 の "SETI が家庭の Mac に情報空間の探索をもたら す " を参照)。新バージョンは 300K のダウンロードで、短命であった 1.05 のデータを全く解析せずに送受してしまうというバグを修正してい る。バージョン 1.05 そのものは歓迎すべきアップデートで、大幅な能力 アップといくつかの不具合を取り去っていた。SETI@home ソフトウェア設 計には未だ批判が集まっているが、バージョン 1.06 ではファイアウォー ルとプロキシサーバ対応も改善されており、Mac OS の旧バージョンで問題 になっていた AppearanceLib ファイルが無い問題も解決されている。新ソ フトウェアをインストールした後は、TidBITS Team に参加するのを忘れな いで![JLC]

<http://setiathome.ssl.berkeley.edu/mac.html>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05401>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=711+705>
<http://setiathome.ssl.berkeley.edu/cgi-bin/cgi?cmd=team_join_form&id=3308>

BBEdit 5.1.1 アップデート入手可能 -- Bare Bones Software 社は 2.4 MB BBEdit 5.1.1 アップデートをリリースした。このアップデートでは BBEdit の ToolServer サポートが強化され、スクリプトによる複数ファイ ルの検索置換作業が可能になり、画面操作が改善され、さらに多くのバグ の解消とと見た目の改善がなされている。BBEdit 5.1.1 ではさらに、テキ ストのソフトラッピングや文書のスペルチェックに関する誤動作が修正さ れ、前バージョンの BBEdit でユーザ定義されたキーコマンドも正しく移 行されるようになった。Bare Bones 社は BBEdit 5.1.1 に関する変更点の 全リストを同社の Web サイトに掲載している。 [GD]

<http://web.barebones.com/support/update.html>
<http://web.barebones.com/products/bbedit/rnotes.html>


ますます達者な Eudora Pro 4.2(第二部)

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:尾高 里華子 <rikako@pobox.com>)
(  :尾高 修一 <shu@pobox.com>)

先週は Eudora Pro 4.2 の 2 大機能を紹介した( TidBITS-488 「ますま す達者な Eudora Pro 4.2(第一部)」を参照のこと)。今週はそれ以外の 機能を見ていこうと思うが、その前に 2 つほどコメントを。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05469>

まず、私のユーザー辞書をみなさんにも利用していただきたいと考えた。 この辞書を使えば多数の Macintosh 製品名を始めとする語が Eudora のス ペルチェッカーに加わる。私は 10 年以上に渡り Nisus Writer を使いな がら、または TidBITS を書きながらこの辞書を作り上げてきた。そして Eudora の作者 Steve Dorner 氏が単なるテキストの辞書から Eudora がよ り有効に使用できる「細断した」フォーマットに変換してくれた。この BinHex ファイルをダウンロードして、バイナリーに戻し、Eudora Stuff フォルダ内にある Spelling Dictionaries フォルダに入れて、Eudora を 起動すれば利用できるようになる。

<http://www.tidbits.com/resources/489/ace-tech-dict.hqx>

次に、一部の 68K Mac ユーザーが Eudora 4.2.1 を使用するとクラッシュ すると訴えている。Qualcomm 社の見解は、ユーザーが Open Transport 1.1.2 を使用しているのに Extensions 内に OpenTransportLib.68K があ ることがこの問題を引き起こしているというものだ。OpenTransportLib.68K は Open Transport 1.1.2 とぶつかってしまうので消去しなければならな い。Open Transport のバージョンは、TCP/IP コントロールパネルを開き、 Edit メニューから User Mode を選択し、Advanced ユーザーモードにして から、このコントロールパネル内に現れる Info ボタンをクリックすると 確認することができる。

プレビューを -- Eudora Pro 4.2 ではメールボックスウインドウの左下 隅にある三角をクリックして、メッセージプレビューペインを表示したり 隠したりできる。このプレビューペインを出す出さないの指定がメールボッ クスごとになっているのはなかなよい。保存用のメッセージが入っている メールボックスでは便利だが、消去したりファイルしてしまったメッセー ジの入っているメールボックスではいらない機能だと思うからだ。

プレビューペインが出ているメールボックスのナビゲートは少々うっとう しかったりする。タブキーで表になったメッセージサマリとメッセージプ レビューペインのどちらをフォーカスするか変更できる。クリックしても 切り替わる。たとえば、サマリがフォーカスされている時に上矢印キーを 押すと、メッセージ間の移動になる。しかし、プレビューの方がフォーカ スされている時であれば、上矢印キーはメッセージテキスト内での移動に なる。その他のナビゲーションキーでも似たようなことが起きる。メッセー ジをスクロールするスペースバーのショートカットはペインに関係なく動 作する。

便りを耳にする -- Eudora Pro 4.2 は Speech コントロールパネルのデ フォルトの音声でメールを読み上げてもくれる。メールボックスにあるメッ セージを一つまたは数通選択し、Edit メニューから Speak を選ぶと、 Eudora はメッセージを読み上げ始める。何通もある時は「Next Message」 と言ってから次のメッセージに入る。メッセージに引用符が使われている 場合は、引用の始まりのところで「quote」と、引用の終わりのところで 「unquote」と(高い声で)言う。Command + ピリオドキーを押すと Eudora をだまらすことができる。メールを読み上げてもらう機能を自分で利用す る術はまだ見つけていないが、いろいろと使い方はあるだろう。通勤中に PowerBook にメールを読んでもらうという人もいるだろうし、目が不自由 な人にとっては嬉しい機能だろう。

Speak フィルタアクションも新たに搭載された機能の一つである。これは、 フィルタにマッチする受信メッセージがあると Eudora が口頭で知らせて くれるというものだ。Eudora は差し出し人名とメッセージの標題、または どちらか片方を読み上げてくれる。フィルタごとに声を指定することもで きる。

IMAP 使ってみる -- 目立たないがもっとも要望の多かった機能の一つ、 IMAP(Internet Message Access Protocol)のサポートが Eudora Pro 4.2 で実現した。大抵の人は POP(Post Office Protocol)を使ってメールを 受け取っており、IMAP は学校や職場でよく使われているモノである。POP と IMAP の基本的な違いは、POP はメールを自分のマシンの中に置いてお きたい場合に使われ、IMAP はメールサーバに置いておきたい場合に使われ るということだろう。どちらのプロトコルももう一方の機能をサポートし ているので、POP を利用していてもサーバにメールを残しておくこともで きるし、IMAP を利用していても自分のマシンにメールをストアすることも できる。どちらのやり方にも利点と欠点があるが、どちらか片方しかサポー トしていない機関が多い。IMAP をサポートしたことで IMAP だけの環境の 人にも Eudora を利用する道が開かれた。Eudora Pro ではユーザーが POP と IMAP 両方のメールを管理できるようになり、パーソナリティごとに好 きなほうを利用することができる。

残念ながら私は Eudora の IMAP 機能をテストするための IMAP サーバを まだ用意しておらず、IMAP で Eudora を使うということに関してあまり知 らない。Eudora Pro 4.2 は IMAP のサポートなど新機能を説明した Acrobat PDF 付きで出荷される。Qualcomm 社の IMAP FAQ には更なる情報 がある。

<http://eudora.qualcomm.com/techsupport/mac/imapfaq.html>

よどみなく流れて -- メールに物理的な改行を入れるのにうんざりして いたり、返信の際の引用マークのせいで変な改行になったりするのにいら ついたりしていないだろうか。Eudora Pro 4.2 が対応できるようになった 新しく提案されたインターネット標準が救いの手を差し伸べてくれるかも しれない。“format=flowed”と呼ばれるこのアイデアは、メールクライア ントがどんなパラグラフでもウインドウのサイズに合わせてテキストを送 ることができるようになるもので、“>”が入ったパラグラフでも大丈夫 だ。返信の際にテキスト中に“>”がばらまかれて厄介なことになったりし がちだが、Eudora は引用テキストの左端に縦方向の引用バーを引くように することで、ウインドウサイズにしたがった処理ができるようになってい る。この引用バーはあくまでも見掛け上のもので、メッセージを送りだす 時には引用テキストとの前にちゃんとした“>”が付けられる。引用バーに 関しては最初は半信半疑であったが、引用バーのおかげで引用テキストの 編集が実に簡単になるということが判った。さらに、引用符付きテキスト を Eudora からコピーして他のプログラムにペーストする時、いちいち “>”を外さなくてよくなる。

<http://eudora.qualcomm.com/techsupport/mac/>
<http://www.ietf.org/internet-drafts/draft-gellens-format-06.txt>

前のバージョンの Eudora はスタイル付きテキストを引用するのに引用バー を使っており、その編集は簡単ではなかった。しかし、Qualcomm 社はこの 編集周りに著しい改良を加えてくれたので、今では通常の引用マークより も引用バーの方が気に入っているぐらいだ。たとえば、引用されたパラグ ラフとパラグラフの間に何か書きたい時は、正しい位置に挿入ポイントを 置き改行キーを押すだけでよい。Eudora のほうで空行を適切な数だけ挿 入してくれ正しい位置にポイントを置いてくれる。テキストを引用すると き、引用を外すときはそれぞれ Command キー、Command + Option キーで 簡単に行えるようになった。引用テキストをペーストするショートカット は Command + Option + V になったので注意していただきたい。

深みに分け入る -- Eudora はもともと奥が深いプログラムだったが、 Eudora Pro 4.2 もその例に漏れず、目立たないが一部の人にはあるとない では大違いの機能や特徴が追加されている。これまでこうした機能や特徴 をいじるには ResEdit や AppleScript を使わなければならなかったが、 Qualcomm は Eudora Pro 4.2 に <x-eudora-setting> という URL を使う 方式を導入し、上級者向けオプションをいじりやすくしている。<x-eudora- setting> は設定ナンバーと場合によっては値を取るもで、Eudora から <x- eudora-setting> をダブルクリック(あるいは Command + クリック)す ると、Eudora がその設定についてのダイアログボックスを表示し、カレン トな値を変更させてくれる。もし値が URL に含まれていればダイアログ ボックスにそのまま表示されるが、そうでない場合には自分で入力しなけ ればならない。

この方式は一見面倒くさそうだが、これがあくまでも上級者向けであるこ とを忘れないでいただきたい。普通のユーザーはこうして設定を目にした り変更する必要はほとんどないのだ。<x-eudora-setting> の意義は、誰か にメールで送ってあげれば相手は単に URL をダブルクリックして変更を確 認すれば良いというところにある。実のところ <x-eudora-setting> は Eudora の設定すべてに有効で、通常 Settings ダイアログボックスにある ものにさえも使うことができる。Qualcomm はこの URL のリストを提供し ており、テキストファイルとしてダウンロードすることが可能だ (<x-eudora-setting> URL は通常 Web ブラウザでダブルクリックするこ とはできない)。これを Eudora で開けば簡単な説明が書いてある。ブラ ウザによってはこのファイルを上手に扱えないものがあるので、デスクトッ プにダウンロードするか、HTML ソースとして保存しなければ Eudora で正 しく表示できないこともある。

<http://www.eudora.com/techsupport/mac/download/X-Eudora- Settings.txt>

ここで一つ忠告しておくと、「Eudora で xxx はできませんか?」という質 問をする前に、Find コマンドで <x-eudora-setting> のリストを探してみ よう。問題を解決してくれるエントリが見つかるかもしれない。今まで私 が耳にした不平には URL 一つで解決できるものが少なくなかった。

<x-eudora-setting> URL の働きを例を挙げて解説しよう。先週、スペルミ スを犯している単語の色やスタイルを変えることが可能なことを紹介した。 仮に赤で下線付きではなくピンクで斜体にしたいとしよう。この記事を Eudora Pro 4.2 で読んでいる方は、以下の URL を両方ダブルクリックし てみていただきたい。スタイルの変更が有効になるまでには Eudora をいっ たん終了して再度起動しなければならない(下線の色をテキストとは個別 に指定することはできない)。

<x-eudora-setting:11701=65535,20000,65535>
<x-eudora-setting:11702=2>

Eudora Pro 4.2 に備わっているこの他の気の利いた機能も <x-eudora- setting> を使ってアクセスすることができる。私のお気に入りを少し紹介 しよう。

<x-eudora-setting:258=y>

<x-eudora-setting:11520=120>

<x-eudora-setting:11508>
<x-eudora-setting:11509>

<x-eudora-setting:6713>

<x-eudora-setting:260=1>

話題沸騰 -- TidBITS Talk での Eudora に関するディスカッションは幅 広く、多数の人が Eudora で気に入っている点や気に入らない点について の意見を述べている。Eudora というプログラムの性質上、Eudora の何か が気に入らないというポストには、どうすれば Eudora が気に入るような 振る舞いをしてくれるかの tips が寄せられることが多い。Eudora に関す るスレッドをチェックして、この奥の深いプログラムについてさらに知識 を深めてはいかがだろう。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=712+713+714+715+716+717>


自分を描こう: Canvas 6

by Matt Neuburg <matt@tidbits.com> (翻訳:松岡 文昭 <mtokfmak@mxa.mesh.ne.jp>)
(  :亀岡 孝仁 <tkameoka@fujikura.co.jp>)
(  :尾高 里華子 <rikako@pobox.com>)

1995年当時、Deneba 社のCanvas 3.5 は私のお気に入りのプログラムの一 つであった。未だ使えたが時代遅れとなり始めていた SuperPaint のよう に、Canvas は直感的なインターフェースを持つドローとペイント用プログ ラムだった。しかし 1996 年に Canvas 5 が出荷された時、私はそれが動 作が重く、バグの多い、混乱した、ずうずうしい移植版であることを発見 したのだ( TidBITS-366 の「Deneba 社のマイクロソフト化: Canvas 5.0.1」を参照)。私は Deneba 社に絶望し、代わりに最近は CorelDRAW と Corel PHOTO-PAINT を使い始めていた( TidBITS-457 の「CorelDRAW 8:Hedy な体験」で紹介した通り)。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=00734>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05193>

にもかかわらず、先週、CorelDRAW は私を仮想の煉瓦塀に打ち付けたのだ。 私は家のダイアグラムを描きたかったのだが、CorelDRAW にはラインツール がなく、正確に 2.25 インチの長さの線を容易に作成させることができな い。そしてその後、Web ページの背景を作成するのに PHOTO-PAINT を使用 していて、なぜ、希望するオブジェクトの選択や、希望する面のマスクが できないのかを、計りかねている自分を見つけてしまった。

それが、私が Canvas 6 をインストールし、嬉しさに驚いた時であった。

何を見つけたか話そう -- Canvas 5 は私には広大でぎこちなく、Canvas 6 は直接的で、スムーズで、そして分かり易いと感じる。必要もなくオブ ジェクトがしばしば再描画されるという私の当初からの苦情、ならびにペ イントツールを使用している際にカーソルがブラシシェープとならないと いう私の批判に、大きな改善が払われている。そしてインターフェースは 多くの賞賛に値する改善を見せている。

スクリーンの上部の細いバーが新しい「ドッキング・バー」だ。その中に フローティングパレットをドラッグすると、パレット名が現れ、それをク リックすればパレットが表示される(Finder のポップアップウインドウの ようだ)。ゆえ、細いピクセルバーと交換に、必要とするフローティング パレットが占拠している画面領域の大きなブロックが節約できるのだ。同 じように、色、ツール、スタイル、そしてコマンドをツールバー(画面上 のもう一つのバー)に格納し、それらにショートカットキーを割り付ける ことができる。

Canvas 6 はドラッグ ドロップを上手く使用している。ベクターオブジェ クトをパレットにドラッグでき、矢尻、塗りつぶしパターン、またはブラ シシェープとして使用できる。クローンソースとしてオブジェクトを保存 するには、それをマクロパレットにドラッグするだけだ。そのアピアラン ス(およびそのすべてのクローン)を変更するには、その上に他のオブジェ クトをドラッグすればよい。オブジェクトを彩色するにはその上に色をド ラッグすればよく、オブジェクトをカラーパレットにドラッグすると Canvas はとても上手い具合にオブジェクトの色をそこに保存してくれるの だ。

その他多くの細かな事柄が Canvas 6 を作業のための快適な場としている。 パレットとダイアログはそれらの効果をプレビュー表示できる。複数の取 り消し、良くできたコンテキストメニュー、卓越したオブジェクト検索、 そしてオブジェクト属性のコピーとペーストが備わっている。円と弧は三 点を基に描画できる(私はなぜドロープログラムがこの機能を欠いている のか何年も不思議に思っていた)。印刷は、回転と結合文字も含め、良好だ。

それでもいくつかのインターフェース上の弱点が残っている。Canvas オブ ジェクトとのインターアクションは未だに難しい。ハンドルは小さくて見 づらく、マウスがその上を移動しても反応しない。クリック可能となる距 離を設定できないし、キーボードを用いてそれらを選択することもできな い。パレットは選択されたオブジェクトの特性を反映するよう期待された 変化をせず、未だに私は、オブジェクトの塗りつぶしとストローク設定が 正確に何であるかや、全般的な事だがなぜそのような外観なのかを学ぶの に苦労している。そしてツールのヒントやポップアップツールバーが表れ るまでの間が長すぎる。

透き通って見える -- Canvas は常にベクター、ビットマップ、そして テキストオブジェクトの統一を特徴としてきた。それはそれらが同一レイ ヤー内に共存するというだけではなく、それらの境目が容易に崩せるとい うことだ。ビットマップをトレースするとベクターオブジェクトが作成で きるし、テキストとベクターオブジェクトはビットマップにラスタライズ できる。テキストにはベクターオブジェクトの塗りとアウトラインを持た せたり、ベクターパスとしての編集や、ベクターパスに沿わせたりその内 側や外側に回り込ませることもできる。テキストやベクターパスは「クリッ ピングパス」として使用可能で、その背面にあるすべてのオブジェクトは、 いかなる種類であれ、その内部の塗りとなるのだ。

Canvas 6 は透明度の使用によりオブジェクトのインターアクションを新し いレベルにまで持ち上げている。これが謳い文句の "SpriteLayers" 技術 だ - 妖精もレイヤーもどちらも関係がないので、奇妙な名前だ。そのアイ デアはオブジェクトは次の二通りの方法で透かすことができるというものだ。

だからどうした、と思われるかもしれない。沢山の窓ガラスや切り取り図 を描いたりしないなら、透明度は何の役に立つだろう?だが Canvas は、 不慣れなコンテキストで、困難かつ回りくどい方法でないと得られないか もしれないような結果を出すのに、透明度を使用することを推奨している。 オブジェクトは、(たとえばグラデーションやビットマップで)描き始め るには複雑な独自の色を持っている。前面のオブジェクトに一定の透明度 を与え、転換モードを決定して背後の色とどのように混じり合うかを決め、 効果的にはもう一つの透明度の詳細イメージとなるマスクを加えるのだ。 つまり、微妙さと劇的効果を与える一手段として、透明度をつけてペイン トとドローを行うのだ。

もしあなたが私のようであれば、突然開花したおのれの芸術才能に惚れ惚 れしながら、何時間もあれこれと試してみるに違いない。対象物の周りに 多色の輝きを与えるためには、それを階調化されたオブジェクトの前に配 置し、次にそれにチャンネルマスクを与えエッジの周りをソフトブラシで ペイントすればよい。対象物に精妙なつやを与えるには、その上にオブジェ クトを置き階調化フィル、部分透明化、ソフト光転換モードモードで設定 してやる。もしオブジェクトから太陽光線を放射させたいなら、それに楕 円ベクター透明度を与え、そして背後に鮮やかな色で放射階調されたオブ ジェクトを置けばよい。

私は直ちにこれらの機能を使って私のホームページの不死鳥を描きなおし てみた。私は芸術家とは言えないが、結果には満足しているし、それにと ても楽しかった。旧バージョンは、SuperPaint でマウスを使ってほとんど 手書きしたものだが、新バージョンでは、鳥自体(写真である)を除けば、 ほとんどがベクターオブジェクトで、影付けや放射効果を出す透明化を使 用している。

<http://www.tidbits.com/matt/>
<http://www.tidbits.com/matt/lingua.gif>

子豚達の仕事ぶり -- Corel のプログラムと Canvas を比較しようとい うつもりなど毛頭なかったが、Corel のを使っていて Canvas に乗り換え ることになった。この移行に際しいろいろと感じるところがあった。

自分の家のダイアグラムを描き始めるにあたり、まずやらなければならな いことはドキュメントの縮尺の設定である。Canvas では数字ダイアログ ボックスに数式を入れてもよいので、Rulers ダイアログを出して 2 つの フィールドを埋め“1 inch = 100/8 feet”とする。一方 CorelDRAW では 一つのダイアログ内でドキュメント単位の“フィート”を設定しなければ ならず、“8 inches = 100 feet”と入力することになる。この違いはそれ ぞれの特質をよく物語っている。Corel のインターフェースのほうが複雑 ではあるが、13 個の単位を扱い(Canvas は 4 個)ルーラーとしては奥が 深く、ズームするとそれに合わせてルーラーの目盛り幅が広がる。Canvas の方は目盛りが別になっていて見ることができない。

次に、22.5 フィートの垂直線を引こうとした。Canvas では Object Specs ダイアログを出し、オブジェクトを線にし、角度「90」長さ「22.5」と入 力し Create を押すだけでよい。Corel にはラインオブジェクトというも のがなく、ガイドラインを 3 つ出さなければならない。Snap To Guides をオンにし、曲線を描くと直線ができあがる。繰り返すが、Corel は奥が 深く、優れた Guidelines Setup ダイアログがあり、このガイドラインを 使えばどんな角度の線でも引くことができる。もっとも Corel で線を一本 引く間に Canvas でお定まりの線を 3 〜 4 本引くことができるだろうが。

ビットマップのドローにも同様のことが言える。Corel PHOTO-PAINT とき たらあらゆる山のようなツールへの転換モードにテクスチャーやストロー ク用の数々の設定等々めまいがしそうなほどである。Canvas では自分が何 をやっているかを容易に把握できる。

Canvas は Corel の半分以下のスマートさだ。比較するとインストールが 40 MB 対 135 MB、RAM は 60 MB 対 20 MB となる。機能の方も小振りに なっている。転換モードは少なく、カラーも出るもシンプルになっている し、レンズはないなどだ。だが Canvas を使っていてあまり制約を感じる ことはないだろう。単に簡単なのだ。Corel はプロ仕様の機能がどっさり 揃っていることが誇りであり、実際インターフェースの一部には到底太刀 打ちできない部分がある。また、繊細で感動的な結果を得ることができる。 しかし、そういった結果を出すまでには時間がかかるし、やる気を無くし たり、いらいらしたり、出だしでつまずいたり、マニュアルに何度も手を 伸ばさなければならなかったりする。Canvas ではすぐさま簡単にそして直 感的に描き上げることができる。つまり、たいていの人にとっては Canvas のほうが気分よく扱える。必要なことを行うだけの機能もほとんど揃って いる。

注意事項 -- Canvas のマニュアルはよくできているし、QuickHelp 形式 のオンラインヘルプや学習用ビデオもある。

Canvas は CPU 食いで、バックグラウンドでアップデートしないようにし ていてもどうしようもなく遅い。おおむね安定しているようだが、使用中 に数回クラッシュしたりフリーズした。私の問い合わせに答えてくれた Deneba 社の人が全く知らないようなバグにもいくつかぶつかった。ダイア ログボックス内の矢印は、マニュアルにはドラッグできると書いてあるが 実際はできない。オブジェクトコンテナー内のテキストが正しく送られな い。コンテクストメニューを出そうと Control キーを押しながらクリック すると、マシンが一時的にフリーズするとかだ。一度改訂版(6.0.1)が出 た高級プログラムにしてはお粗末である。

お値段は競合製品の類いに漏れず高い。要りもしない機能にお金を払うの は遺憾である。たとえば、Canvas のテキスト処理能力の素晴らしさは誰も がうなずくところだろうが、QuarkXPress や Microsoft Word と肩を並べ ようとするのはばかげた話で、(入力中に自動修正してくれる)リアルタ イムのスペルチェッカーや自動ハイフネーション、行処理などはやり過ぎ だ。正直なところ、ドローを Java ベースの Web ページに変換できるとい う部分はむかつくほどである。Deneba 社は Canvas のプラグインベースの アーキテクチャがご自慢のようだが、この機能を上手に利用しておらずもっ と魅力ある価格の製品を作れずにいる。使わないものはロードしなければ よいのだが、だからといって要らない機能を買わなければならないという 理由にはならない。Deneba は今の半分の価格で入門用のちゃんとしたド ロー・ペイントプログラムを出すことができるだろう。

いろいろと問題はあるものの Canvas 6 は Canvas 3.5 の後継者として不 足なく、私は採用している。Canvas 3.5 は個々のツールの寄せ集めで、そ の多くは旧式でインターフェースは判りづらく性能にも限りがあった。 Canvas 6 ではそういった機能が更新されかつ一つの最新のドロー・ペイン トプログラムにまとめあげられており、便利で、満足がいきしかも楽しい 製品になっている。

Canvas 6 はだいたい 380 ドルぐらいで販売されている(競合アップグレー ドは価格は 200 ドル)。使用条件は Power PC プロセッサ、System 7.5 以降、32 MB RAM で、ハードディスクの空きスペースが 40 MB が推奨され ている。CD-ROM 3 枚組みになっており、クリップアート画像やフォントが 山と付いている。またデモ版をダウンロードすることができる。

<http://www.deneba.com/dazroot/softlibs/>


非営利、非商用の出版物およびウェブサイトは、フルクレジットを明記すれば記事を転載またはウェブページにリンクすることが できます。それ以外の場合はお問い合わせ下さい。記事が正確であることの保証はありませ ん。書名、製品名および会社名は、それぞれ該当する権利者の登録商標または権利です。TidBITS ISSN 1090-7017

tb_badge_trans-jp2Valid HTML 4.01!Another HTML-lint gateway