TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#490/26-Jul-99

先週のニューヨーク市での Macworld Expo で、Steve Jobs 氏は Apple の 新しいコンシューマー用ラップトップ iBook と同社の低価格ワイヤレス・ ネットワーク技術である AirPort を発表した。これらの製品がいかに今後 の情勢となっていくか、そしてどうのように Apple のコンシューマー市場 へのフォーカスが Macintosh の世界を永遠に変えうるかを、Adam が誇張 法を用いながら考察する。また今週は FileMaker Pro 4.x の Y2K アップ デート、音声認識に関するいくつかの発表、そして新しい eFax Microviewer についてお知らせする。

目次:

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MailBITS/26-Jul-99

(翻訳:松岡 文昭 <mtokfmak@mxa.mesh.ne.jp>)

相次ぐ連続音声認識の発表 -- 5月に発表された Dragon Systems 社の Macintosh 版 NaturallySpeaking の開発計画にぴったり続く形で、IBM 社 と MacSpeech 社の両社は連続音製認識技術を Mac に賭けだした。Steve Jobs 氏の Macworld での基調演説の際に IBM 社の“Ozzie”こと W. S. Osborne 氏は、連続音声入力と Mac OS の text-to-speech 技術を用いた テキスト読み上げの両方を扱う IBM 社の Mac OS 版 ViaVoice システムを 披露した。IBM 社によれば、ViaVoice の米国およびイギリス英語版は 1999 年末までに入手可能で、他言語のサポートもそれらに続く予定だ。価格と 必要なシステムについての情報は一切リリースされていない。Articulate Systems 社の PowerSecretary 開発チームを引き連れた Andrew Taylor 氏 の新興企業 MacSpeech 社も負けてはいない。同社は Mac 専用の連続音声 認識製品を制作するために Philips Speech Processing 社と連続音声認識 技術のライセンス契約を締結したと発表した。MacSpeech 社も製品価格や 必要なシステムの詳細をリリースしていないが、同社も英語版製品は 1999 年末までに入手可能と発表している。 [GD]

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05392> <http://www.software.ibm.com/speech/> <http://www.macspeech.com/>

FileMaker Pro 4.0 と 4.1 用 Y2K アップデート -- 数週間前に 4.1v2 アップデータを引っ込めた FileMaker Inc. 社は FileMaker Pro 4.0 と 4.1 両方用の無償アップデータをリリースした。これはデータベースアプ リが日付を取り扱う方法において Y2K に関連した非一貫性を修正するもの だ。アップデータは 2 〜 3 のバグも潰しており、数値、時間、そして日 付のデータを厳密に確認する新しい能力を追加する。アップデータは世界 共通英語版 FileMaker Pro 4.0v2 をバージョン 4.0v3 に、そして世界共 通英語版 FileMaker Pro 4.1v1 をバージョン 4.1v3 に変更する。 FileMaker 社はローカライズ版 FileMaker Pro のアップデータも近々入手 可能になると言っている。短命であった FileMaker Pro 4.1v2 アップデー トをもしインストールしているなら、4.1v3 にアップデートする前に FileMaker Pro 4.1v1 に戻す必要がある。我々は FileMaker 社がFileMaker Pro 4.0 のオーナーに対してもこれらデータ関連のフィックスを提供して いるのを喜ばしく思っている。彼らの多くは ODBC 関連機能のためにバー ジョン 4.1 にアップグレードするための出費は行わなかったのだ。いずれ の 1.2 MB アップデータも FileMaker 社の Web のサポートページより入 手可能だ。 [GD]

<http://www.filemaker.com/support/uninstall.html> <http://www.filemaker.com/support/newfiles.html>

eFax 社が Mac Microviewer をリリース -- eFax オンラインファックス 配信サービスの Mac 利用者は同社の Macintosh 用 eFax Microviewer が ダウンロード可能だ。(Internet ファックスサービスに関しては TidBITS-484 の「インターネットファックスの実態」を参照。)eFax Microviewer は受信ファックスの受け取りやビュー、そしてパスワード保 護を可能とするものだ。ソフトウェアは 370K のダウンロードであり Mac OS 7.0.1 もしくはそれ以降が必要だ。 [JLC]

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05428> <http://www.efax.com/mac/download.html>


iBook: iMac to go

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:尾高 里華子 <rikako@pobox.com>)

先週のニューヨークで開催された Macworld Expo で一番多く受けた質問 は、Tristan と一緒に留守番組だった Tonya の様子を尋ねるありがたい声 は別とすると、「今回は何が一番おもしろかった」というものだった。今 年は Steve Jobs 氏の基調講演で明かされた iBook に勝るものなどあるま い。

iBook って? Steve Jobs 氏が Apple に返り咲いた時、デスクトップと ポータブルを横軸にコンシューマーとプロフェッショナルを縦軸にし 4 つ のマス目の製品マトリックス構想を打ち出した。青と白の Power Macintosh G3 と PowerBook G3 がプロフェッショナルの行を埋め、コンシューマー行 のデスクトップ欄には iMac が入った。先週まで埋められずにお預けになっ ていたのが、コンシューマー用のポータブル欄だった。メディアで大々的 に取りあげられているのを見逃した方へ、最後のマスに入ったのは iBook である。もっとも出荷は 9 月を予定されているのだが。

<http://www.apple.com/ibook/>

Apple は iMac と同様 1,599 ドルの iBook に搭載する機能をけちったり していない。iBook は 300 MHz PowerPC G3、800 x 600 の解像度でフルカ ラーを表示できる 12.1 インチの TFT アクティブマトリックスカラーディ スプレイ、32 MB の RAM (160 MB まで拡張可能)3.2 GB のハードディス ク、24 倍速の CD-ROM ドライブ、56K 内蔵モデム、10/100Base-T Ethernet ジャック、USB ポート一個、“フルサイズ”キーボード、6 時間稼働する とされているバッテリを自負している。いずれもすごいスペックで、Jobs は現時点で PowerBook G3 に続き 2 番目に高速のラップトップ機になるで あろうと訴えていた。

iBook はデザインの細々したところまで注意が行き届いており、色はブルー ベリーとタンジェリンが用意されることになっている。さらに関心を引く のは、二枚貝のようなボディーの繋ぎ目のところに付けられたハンドルで ある。このハンドルで持てば 6.6 ポンドの iBook が 5.9 ポンドあるブロ ンズキーボードの PowerBook G3 より軽く感じられる。引っ込んでいるモ デム、Ethernet、USB ポートから壊れやすい蓋が取り外されている。ラッ チ(掛け金)が無くなっているのも目新しい部分だ。スクリーンを閉じて おく蝶番の部分は携帯電話のデザインからヒントを得て作られている。 (PowerBook G3、PowerBook G3 シリーズ、ブロンズキーボードの PowerBook G3 といった今までの 3 種類の PowerBook はそれぞれ異なる設 計のラッチになっていた。)そして、Apple は iBook をポリカーボネート で包み、耐久用に縁には硬質ゴムを施した。

ワイヤレスネットワーキング -- でも iBook の一番すごいところは Apple の新製品 AirPort ワイヤレスネットワーキングのサポートだろう。 これは、Lucent 社のテクノロジーと 802.11 DSSS(Direct-Sequence Spread Spectrum の略で互換性のない通称 FHSS の Frequency Hopping Spread Spectrum とは全く異なる)を元に開発されたものである。キーボー ドの下に 99 ドルのカードを装着した iBook と 299 ドルの AirPort Base Station があればケーブル一本繋ぐことなく、ファイルの共有、ネットワー クゲームなど通常のネットワークでできることが可能になる。AirPort カー ドと iBook のスクリーンの両側にある内蔵アンテナでこの目に見えない ネットワークが実現している。

<http://www.apple.com/airport/>

AirPort Base Station は空飛ぶ円盤とも Hershey の Kiss チョコを太め にしたものとも言える形状で裏側にコネクタが 3 つ付いている。一つ目が 10/100Base-T Ethernet ジャック。ワイヤレスネットワークのできないデ スクトップ Mac やプリンタ、インターネットの専用回線といったものを AirPort Base Station に繋ぐためのものだ。2 つ目は 56 Kbps のモデム に繋がったごく普通の電話ジャック。これで Base Station とインターネッ トプロバイダーをダイレクトに結ぶことができる。3 つ目は精彩を欠いて しまうが、電源用の AC コネクタである。もっとも、これは 12 ボルトを 採用しているので車や船のアダプタを使って動かすのも簡単だという話を 耳にした。

AirPort は理論上 11 Mbps が可能であるが、AirPort ネットワークの置か れている状況によってその数字は変わってくる。その他 150 フィート以内 (分厚い壁や床があるとこの数字も下がる)で、AirPort Base Station 一 台につきユーザー 10 人までを推奨という制限もある。この 10 人という 数字は絶対的なものではない。聞くところによると、一台の AirPort Base Station を利用し 30 台以上の iBook でテストしてみたところ成功したそ うだ。もっとも、ネットワークは超込み状態になりパフォーマンスは落ち るのだろうが。AirPort には Mac OS 8.6 以降が必要である。

AirPort についての細かなところはまだ判っていないが、その筋の人の話 によると、NAT(Network Address Translation)と DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)を採用しているようだ。この 2 つと 56 Kbps モデムと ISP にダイアルアップしている AirPort Base Station に接続し ている iBook を組み合わせることにより、一つのインターネット接続を共 有することができる。これだけでもものすごく便利だが、さらに AirPort Base Station の Ethernet ジャックに物理的なケーブルで繋がっている Ethernet ネットワークがあれば、ネットワークはモデムベースのインター ネット接続を共有することもできるようになる。Apple によれば Airport Base Station Access Point ソフトウェアを使って iBook をベースステー ションにすることもできるそうだ。つまり、ネットワークはその iBook の 内蔵モデムを利用してインターネットに接続することもできるようになる。

<http://til.info.apple.com/techinfo.nsf/artnum/n60430>

ソフトウェアで AirPort ネットワークを保護するようにもできるだろう。 そうでなければ、iBook を抱えて人の家の玄関先にやって来れば、許可を とらずにネットワークを使い放題ということになってしまう。また接続に は 40 ビットの暗号化が施され、ネットワークのトラフィックを人に盗み 取りされないようにもなっているらしい。さらに、AirPort ネットワーク に入る時はパスワードを要求されるようになっている。

AirPort はワイヤレスネットワーク市場の価格設定を大きく変える。以前 は PC カードに最低でも 300 ドル、ベースステーションに 700 〜 1,100 ドルで合計 1,000 〜1,400 の見積りになっていた。ところが AirPort ソ リューション一式を 400 ドルで手に入れることができるようになるのだか ら、Apple がワイヤレスネットワークを大勢にしようとしていることが判 るだろう。一年以内に Apple の全ラインで AirPort アンテナが利用でき るようになり、Apple 製にとどまらない各種の AirPort カードが出るだろ うというのが私の予想だ。

AirPort は大いに有望であるが現実のものとなっていないのでまだ何とも 言えない。使っているところを想像してみよう。ケーブル一本ひくことな く家中でネットワークができるようになる。教室でのネットワーキングが 以前よりも断然現実味を増す。AirPort Base Stations をそれなりのとこ ろに設置すれば、iBook 携帯の学生は寮や図書館でインターネットにアク セスできるようになる。(もちろん、規模の問題などが浮上してくるだろ うが、今はお話の世界にいるのだ。)

旧タイプの PowerBook でワイヤレスネットワークをしたい場合は、Lucent 社製の WaveLAN PC Card か発表されたばかりの Farallon 社製 SkyLINE PC がいる。なお Farallon 社は AirPort との互換性を同社のテストで確 認済みであり、両製品とも 2 Mbps で動作する。Lucent 社の出している AirPort のプレスリリースには、Apple が PowerBook G3 用ワイヤレスカー ドを出すとも書かれている。

<http://www.wavelan.com/> <http://www.farallon.com/products/wireless/skylinespec.html> <http://www.lucent.com/press/0799/990721.cob.html>

あらさがし -- iBook と AirPort には感服してはいるが、少々気になる 部分もある。

対象 -- iBook は TidBITS Talk でも話題になった。がっかりしたと言 う者もいれば、自分の控えめなニーズにぴったりだと書き立てる者もいた。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=723>

iBook はプロフェッショナル向けに設計されたものではない。TidBITS の 読者層は機能や性能に要求が多い人が大部分だろう。我々のほとんどはター ゲット外にいるのだ。Apple はコンシューマー市場をターゲットに iBook を出した。デザイナー達は PowerBook G3 と iBook の違いを出すと同時に 経費を節約するために削るべき機能は何かを時間をかけしっかりと考えた ことは明らかである。今後不測の問題が現れないかぎり、iMac のような ヒットを飛ばすのは間違いないだろう。


Macworld New York 1999: コンシューマーへの回帰

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:高島 均 <hitak@kk.iij4u.or.jp>)
(  :尾高 修一 <shu@pobox.com>)
(  :亀岡 孝仁 <tkameoka@fujikura.co.jp>)

ニューヨークにおける今年の Macworld Expo は、俳優の Noah Wyle 氏が ちょっとの間 Steve Jobs 氏になりすましたり、Apple 社の副社長 Phil Schiller 氏がワイヤレスネットワーキングのデモのために iBook を抱え て 9 メートル程の棚から飛び降りるなど、妙技満載の基調講演で幕を開け た。1 月のサンフランシスコにおける Macworld Expo よりはずいぶんと小 粒であったけれど、ショーの残りは間違いなく活発であり、昨年のニュー ヨーク Macworld Expo よりいくぶん大規模であった。

ビッグニュースと言えば Apple が iBook を発表したことで、これは待望 のそして噂の絶えなかったコンシューマーポータブルである。でも、ベー ルを脱いだ iBook は、単に最も注目を浴びた発表であったにとどまらず、 ショー全体の基調を演出し、Macintosh 業界におけるどこかしら厄介な過 渡期の瞬間を際だたせていたのだった。

ほとんどまったく、Apple は今のところビジネス界に対してはっきりとし た手を打っていない。どうしてかって? ビジネス界は概して、Macintosh を軽蔑し、Apple を誹謗し、Microsoft-and-Intel の謳い文句を信じ切っ ている。Apple とて、ビジネス市場に割って入りたいのだろうが、1996 年 および 1997 年というまだ記憶に新しい死の悪循環時代があって、すぐに そうなるチャンスはほとんどないのだ。

Apple が見出した光明は、手にクレジットカードを握りしめたそこかしこ のコンシューマーへのスポットライトであった。ビジネスユーザーに比べ、 コンシューマーは、産業デザインに高い価値を置き、スペックをそれほど 気にもせず、そして将来馘首になったりしないよう余念のないスーツ族に は効を奏する FUD(懸念、不確実、そして疑念)作戦にしても、コンシュー マーはさほど敏感ではないのだ。

緊張 -- ここに問題が存在している。もし Apple がコンシューマー市場 へ傾注するのであれば、Macintosh 業界はそれに従うだろう。有り体に言っ てしまえば、そこに金があるからだ。しかし、よりコンシューマーに根ざ した業界というものの意味するものをちょっと考えてみてほしい。私たち のように、Macintosh の世界に少なからず関わってきた者は初心者ではな いし、すでにある周辺機器を USB やら FireWire やらの新しいインター フェースに取り換えなければならないなんてうれしくもない。そして、忠 実に仕事をこなす古い Mac をたくさん所有している。

つまり、私たちは別の支持者なのであり、確かに重なる部分はあってもそ れでも異なる支持者なのだ。iBook に対する反発がそれを物語っていて、 つまりは iBook が本当は Macworld Expo の参加者に照準を定めたもので はないからだ。人々は iBook について、FireWire やビデオ出力やマイク ロフォンや PC カードスロットやメディアベイがないと不満を口にし、さ らにそのヘビー級のサイズと重量に文句を言う。これらの不平不満は、も しそれが PowerBook の話ならば全て正当であることだろう。だがしかし、 そうではないのだ。これは、Apple が説明するとおり、持ち運びできる iMac の話なのだ。さあ復唱しよう、iBook はコンシューマーのためのもの だと。コンシューマーは外部モニタを接続したりしないし、PC カードを挿 すこともなければ 3.2 GB 以上のハードディスクスペースを必要としたり しないのだ。コンシューマーは低価格を望んでおり、軽量パーツはコスト を引き上げるに違いない。

洗練された Mac ユーザーは、もっと違うものを欲しがる。私たちは、2 kg より軽く、PowerBook 2400 や PowerBook Duo により近い形状を持ち、USB と FireWire と PC カードスロットを備え、56 Kbps モデムと有線および 無線 Ethernet 経由の接続を提供する PowerBook が欲しいのだ。そして、 ビジネス界の多くの人々は、けばけばしい配色ではないものを好むことだ ろう。このような PowerBook はいつの日か現れるかもしれない(私は強く これを奨励する!)ものの、今日の iBook からは程遠い。

そんなわけで私たちは、iBook に例示されるものと、今私が述べた仮定の PowerBook という、これら 2 つの地点に立っている。この 2 つの地点は 互いに排他的なものではなく、これらを繋ぐものは、経験豊富な Macintosh ユーザーほど、よく初心者にアドバイスしサポートを行うものだ、という 点である。私たちは自ら iBook を買うことがなくても、iMac のときと同 様、子どもたちに買い与え、友人に勧めることだろう。

それでは Macintosh 業界はいったい誰をターゲットとすべきなのか? もち ろん両方の市場とすべきだが、しかし、それを成功させるのは言うほど簡 単なことではない。製品戦略の衝突が引き起こす緊張は、ショーの間私に 多くのことを気付かせたのだ。

Microsoft の動向 -- Microsoft の動向には示唆深いものがある。とい うのは、Microsoft には他社とは比較にならないほどの財力があり、調査 と開発に資源を投入することができるからだ。会場で Microsoft が発表し たのは Word 98 Special Edition と開発の初期段階にある Internet Explorer 5.0 と Outlook Express 5.0 だった。このことは、190 万人の iMac ユーザーの主な活動は Web ブラウジング、ワープロ、それにメール だという事実を反映している。Internet Explorer 5.0にはたいして見るべ きものはなかったが(そもそも Web ブラウザとは初心者と上級者のニーズ をあまり区別しようとしない奥の深くないものなのだが)、99 ドルの Word 98 Special Edition ははっきりとコンシューマー市場をターゲットにして おり、テンプレートやクリップアート、それに各種文書を作成するための ウイザードをふんだんに用意してある。Outlook Express 5.0 には多数の 新機能やインターフェース改良が盛り込まれており、初心者がメールで遭 遇しがちな問題に対処しようとしている。

<http://www.microsoft.com/mac/000word98info.htm>
<http://www.microsoft.com/mac/000oe5info.htm>

Word 98 Special Edition と Outlook Express 5.0 をもう少し詳しく見て みると、コンシューマーとプロフェッショナルの微妙なバランスが見えて くる。Word 98 Special Edition の場合、Microsoft は Word をもっとコ ンシューマーが魅力を感じるようなものにしようとしているのだが、Word は強力で時としてはとっつきにくいワープロで、初心者のコンシューマー はもちろん、ほとんどのユーザーにとっても手に余るものなのだ。バンド ルされている AppleWorks から乗り換えさせようとして Word 98 Special Edition はコンシューマー向けにはテンプレートとクリップアートで、プ ロフェッショナル向けにはクロスプラットフォームなファイル互換性を売 りにしている。無償の Outlook Express 5.0 はすでにバンドルされている という特権的地位にあるので、多くのコンシューマーにとっては最初で最 後のメールソフトになることも多いだろう。したがって、Microsoft がこ のプログラムを使いやすくしようとしているのは理に適っており歓迎され るだろう。だが、Outlook Express 開発チームは単に使いやすさだけを追 求したのではなく、あるメッセージについてどんなことをしたかをすべて 記録するメッセージヒストリなどの便利な機能を追加している。コンシュー マーはこんな機能を必要としないが、プロフェッショナルは必要とするか もしれない。この新機能をはじめとするいくつかの追加機能から、Outlook Express 5.0 がどちらの市場をも視野に入れていることがうかがえる。

パーソナルパブリッシング -- パーソナルパブリッシングという分野を にらんだ製品をいくつか目にしたが、それぞれが異なるコンシューマー/ プロフェッショナルの比率を持ったアプローチをしていた。前述したよう に、Word 98 Special Edition は iMac と iBook ユーザーをターゲットに しており、強力なプログラムに機能が継ぎ足されたものだ。次のレベルに は Corel 社の Print House 2000 と Print Office 2000 がある。これは 2 つのプログラムでカレンダー、カード、パンフレット、名刺といったも のを作る作業を容易にしてくれるものだ(2 つの製品の違いは作成する文 書の種類により、それぞれ個人向けと法人向けという具合だ)。Corel は これまでハイエンドのドローソフト、CorelDRAW やワープロの WordPerfect 3.5 で知られてきたが、ここで Corel がコンシューマー分野に再度注目し ている様子がうかがえる。この移行がスムーズに行えてかつ成功するかど うかは不明だが、新製品の投入には Macintosh への新たな関心が芽生えて いることがあるだろう。最後に、Nova Development 社の Print Explosion はコンシューマー市場を正面から狙い撃ちしたもので、簡単なインター フェースと、Apple のヘルプ技術を総動員した充実したヘルプ機能が売り だ。インターフェースの簡単な説明はバルーンヘルプで、チュートリアル には Apple Guide を、レファレンスには HTML Help という具合だ。

<http://www.corel.com/corelprinthouse/printhouse2000_formac.htm>
<http://www.novadevelopment.com/products/printexpl/>

MP3 主流を行く -- オンライン音楽や MP3 フォーマットに関する幅広い 反響は、Macworld における一般消費者指向の流れの一側面をよくあらわす ものであった ( TidBITS-455 の“MTV よ、後進 MP3 に道を譲る時だ”参 照) 。Mac からダウンロードされた MP3 オーディオファイルを演奏する小 さな装置をたくさん見かけた。たとえば、I-Jam, jazPiper, そして Diamond Rio 500 などである。全部が発売されているわけではないが、複 数の会社がこれらの装置を出展していたことは、かってはそれなりのハー ドウェアとたっぷりの時間とを持ち合わせたギークだけのものであった MP3 が、今や企業が消費者が欲しいと思うものの一つと見なすようになったこ とを示している。関係者の一人は来年の今頃までには MP3 プレーヤの数は 50 に達するだろうと言っていた。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05174>
<http://www.ijamworld.com/>
<http://www.mcpiper.com/jppmain.htm>
<http://www.rioport.com/>

この流行りの火に大方の油を注いでいるのが Casady Greene 社の SoundJam で、これは MP3 を作りそしてプレーバックする初のソリューショ ンを提供している。いくつかの機能を見ると、いかに SoundJam がギーク と一般消費者の間の壁を乗り越えようとしているかがうかがえる:種々の “スキンズ”(と呼ばれるユーザインターフェースで、シェアウェアであ る MacAmp MP3 プレーヤのためのモジュラーインターフェースに応じて変 化する)と音楽に合わせて目を奪うパターンを写し出すいくつかのビジュ アルプラグインである。この様な目慰みは MP3 を作って再生すると言うプ ログラムの使命からははずれている様に思えるが、この様な仕掛けはギー クにも一般消費者にも同時に訴えるものがあると思った。

<http://www.soundjam.com/>
<http://www.macamp.net/>

色の選択 -- 最後に、ビジネスユーザや我々の生活を明るくしてやろう という Apple 社のお節介に嫌気のさしている人たちが気にしている色につ いて触れたい。多くの周辺機器が、iMac の全色ラインナップでないとして も、少なくともブルーベリー色で来ている。最も大きいものは多分、ブルー ベリー色の巨大なカラープリンタ Tektronix Phaser 840 であろうが、 Radius 社のちっぽけな色較正装置 iBug ですら iMac の 5 色で登場して いる。

<http://www.tek.com/Color_Printers/products/840/840fe.htm>
<http://www.miro.de/news/e/press/displays/ibug.html>

個人的にはこの Apple 社のファッション先取性にただ盲目的に追随する傾 向を危惧している。従前のプラチナム、ダークグレー、そして光沢アルミ ナムの外観は(そしてこれはデジタルカメラ市場では厳然として踏襲され ている)、青と白の Power Macintosh G3、iMac、そして新製品の iBook と は調和しない、しかしながら最近の一連の色もの周辺機器はあまりにも今 日の色に結びつきすぎている。私は Apple 社が新たな色を導入しないと か、既存の色を全部やめてしまいはしないとか、全く違った外観に変更し てしまわないとかいった事については一切信用していない。もちろん賢明 に注意深くやっている会社もある:少なくとも一社は混じりけのない白い アイス色でどんな iMac にも合うようなキーボードを展示していたし、 Apple 社自身も AirPort Base Station を嗜好に偏らない外観で展開して いた。私は周辺機器メーカーに対して、Apple 社のデザイン革命に参加す るのであれば、大幅なデザイン変更で一人取り残されてしまうような事の ない様、創造的に考えて欲しいと願う。私は Apple 社のデザイン思想が好 きであるだけに、今日の iMac や iBook のデザインが 5 年後には相当時 代遅れに見えるだろうと思っている。周辺機器は一般的にコンピュータよ りも寿命が長いので、時代の流行を乗り越えることの出来るデザインあれ ば、長寿製品となりそれに色は邪魔者と見るプロのユーザと事業との間の 緊張緩和にもつながるであろう。

結論 -- Macintosh 業界が新規ユーザをそのニーズに合った製品をもっ て歓迎するというのは大変大事な事である、しかしながらもう一方で経験 豊かなプロのユーザに対しても強力なツールを提供し続ける事も同様に大 事な事である。Macintosh 市場は、縮小と再フォーカスの時を経て再び拡 大している。しかしこの拡大も混乱を生み出している。もし運がよければ、 来年の Macworld Expo では引き続き拡大した、健全な、そして幅広い Macintosh 市場にお目にかかれるであろう。


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