TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#491/02-Aug-99

なんだか皆目見当もつかないような製品のプレスリリースにうんざりして いないだろうか。自社製品を業界紙にもっとうまく取りあげてもらいたい と思っているデベロッパーはいないだろうか。今週は Matt Deatherage 氏 をゲストに迎え製品をリリースする際の 7 つの大罪を語ってもらう。また ニューヨーク市で開催された Macworld Expo の出展の中で目を引いたとこ ろを幾つかお伝えする。そのほか、Apple 社製 Font Manager Update 1.0 for Mac OS 8.6、Eudora Pro の販売情報、Alsoft 社製 DiskWarrior の アップデートのお知らせがある。

目次:

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MailBITS/02-Aug-99

(翻訳:尾高 里華子 <rikako@pobox.com>)

Font Manager Update 1.0 -- Apple 社は Mac OS 8.6 ユーザーすべてが Font Manager Update 1.0 をダウンロードしインストールするよう推奨し ている。これは壊れたフォントリソースをフィックスし、今後の損傷を防 ぐものである。Font Manager Update 機能拡張は一部のアプリケーション やフォント内で FOND リソースが壊れるのを防ぎ、Apple の日本語フォン トおよび繁体フォントの文字の高さに関する問題をフィックスする。同梱 されている Font First Aid ユーティリティはすでにダメージを受けたリ ソースを修復してくれる。ただし、リソースが変更されるとちゃんと動か ないプログラムもあるので、事前に修復しなければならないファイルのバッ クアップを取っておかなければならない。アップデートのダウンロードサ イズは 312K である。 [JLC]

<http://asu.info.apple.com/swupdates.nsf/artnum/n11489>

DiskWarrior 1.0.4 Update レポート機能を向上 -- Alsoft 社はディレ クトリ破損の修復に重点を置いた同社のディスク修復ツールのアップデー ト DiskWarrior 1.0.4 をリリースした。( TidBITS-486 の「Alsoft 社 の DiskWarrior で崩壊と闘う」を参照)このバージョン 1.0.4 はあるボ リュームから修復されたすべてのファイルの一覧を作り、その他の書き込 み可能なディスクがない場合にはその修復されたボリュームにレポートを 保存することができる。DiskWarrior はまず修復されたアイテムをテスト および確認用の Rescued Items フォルダに入れてくれる。アイテムが大丈 夫であると確認してから、Finder の Put Away コマンドを実行すると本来 の場所に戻される。DiskWarrior ユーザーは 561K の無償のアップデータ をダウンロードすることができる。また Alsoft から 最新の起動用 DiskWarrior CD-ROM を 13 ドル(および送料 5 ドル)で購入することも できる。 [GD]

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05443>
<http://www.alsoft.com/DiskWarrior/>

Qualcomm 社より Eudora Pro 4.2.1 の商品版とデモ版登場 -- Eudora Pro 4.2.1 のことをお伝えした時点では( TidBITS-488 および TidBITS- 489_ 「ますます達者な Eudora Pro 4.2」を参照)、すでに Eudora Pro 4.0 を所有している人のためのアップデータしかなかった。ついに Eudora Pro 4.2.1 のパッケージと 30 日間の期間限定デモ版(ダウンロード 7.7 MB)が登場した。この商用パッケージには Eudora の Macintosh 版と Windows 版の両方が入っており、価格は 50 ドル(今なら 10 ドルの払い 戻しあり)である。さらに 20 ドル出せば、Eudora オンラインドキュメン テーションを印刷したものが手に入る。古いバージョンの Eudora を使用 していてデモ版を試してみようという方に対し、Qualcomm 社はまず自分の Eudora Folder のバックアップを取るように薦めている。Eudora Pro 4.2 はファイルやフォルダの場所を一部変更するので、その後のバージョン変 更が複雑になってしまうからだ。Eudora Pro 4.2.1 の使用最低条件は、 68020 Macintosh、System 7.1、空き RAM 900K である。 [ACE]

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbser=1147>
<http://eudora.qualcomm.com/pro_email/demos/>
<http://store.qualcomm.com/product.asp?product%5Fno=EPRO&discount>


Macworld NY 1999 最高のもの

by TidBITS Staff <editors@tidbits.com>
(翻訳:尾高 修一 <shu@pobox.com>)
(  :亀岡 孝仁 <tkameoka@fujikura.co.jp>)

1992 年のこと、永年 contributing editor を勤めてきた Mark Anbinder が、Macworld 開催後に製品や会社、ブース、イベントの“すぐれもの” や、何らかの理由で重要だと思えたものをまとめた記事を提案した。その 時から Macworld Expo があるとほとんど毎回のようにすぐれものの記事を 書いてきた。こうした記事を今眺めてみると、私たちが何を取り上げてき たかが実に興味深い。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbser=1148>

だが、今年はすぐれもの記事をやめようかと思った。というのも、Apple の iBook コンシューマーポータブルと AirPort ワイヤレスネットワーキ ングが話題を独占してしまったからだ。会場で出会った数人の TidBITS 読 者も同じ感想を抱いていた。出品されていた製品はどれもよくできていた が、Apple が注目を一身に集めてしまったがためにぶっとびというものは ほとんどなかったからだ。それでも Macworld には目に留まる出展者もい たので、ここで紹介しようと思う。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05487>

驚異のグラフィックアプリケーション -- 私はグラフィックスのプロで はないのだが、Synthetik Software 社の 295 ドルの新製品、Studio Artist は驚異的だった。言葉で説明するのは難しい製品で、「自然の素 材をシミュレート」したり、「インテリジェントな視覚認識モジュールに よって自動的にペイント/ドロー」したり、「QuickTime ビデオをフレー ムごとに自動的にペイントしたりロトスコープ」するなどといったことが できるのだ。「画像をリアルタイムに変形、伸縮、切断」するという機能 も気になる。Macworld Town Meeting での Studio Artist のデモでは誰も が口をあんぐりと開けたままになっていた。でも私の言葉など信用しない でいただきたい。Synthetik 社の Web サイトから無料のデモ版(8.2 MB) をダウンロードすべし。 [ACE]

<http://www.synthetik.com/>

ベスト T シャツ -- 記念品の類がほとんど見当たらなかった会場で、 IMAP メールソフト Mulberry のメーカー、Cyrusoft International 社は 「人生はメールだ!」という T シャツで私たち多くのライフスタイルを見 事に要約してくれた。Apple も T シャツ部門が好評で、定番の「I(ハー ト) New York」をもじってハートを赤い Apple ロゴで置き換えていた。 [ACE]

<http://www.cyrusoft.com/>

最優秀お買得賞 -- 999software.com はオンラインのソフトウェア専門 ディスカウント屋だ。ショー会場での出血サービスは珍しくないが、この 会社は年間を通じてオンラインでやっている。ソフトウェアはすべて 9.99 ドル(送料別)で売っている。品揃えは子供向けのソフトウェアとちょっ と古くなったゲームがほとんどだが、比較的新しいものも少しはあり、 StuffIt Deluxe 4.5 のような掘り出し物もある。こうした場合はアップグ レードサービスがちょっと心配だが、Aladdin 社に確認したところこの StuffIt Deluxe も立派にアップグレードできるそうだ。 [MHA]

<http://www.999software.com/>

最優秀 USB 製品 -- USB 関連グッズはいたるところで展示されていた が、Entrega 社が 150 ドルで販売していた Mac USB Dock には脱帽した。 これは USB オンリーの Mac を使っていて、SCSI やシリアルポートが無い ことを嘆いているユーザーの願いを一気にかなえてくれるものだ。Entrega Mac USB Dock は同社の USB から SCSI とシリアルのコンバータを元に、 USB ポート 2 基、8 ピンシリアルポート、Mac 標準の DB-25 SCSI ポート を備えている。Mac USB Dock は今月中に出荷になる見通しだ。 [MHA]

<http://www.entrega.com/>

CD 再考 -- オフィス環境で CD-ROM を共有するため、ネットワーク上の CD-ROM ジュークボックスにいらいらした経験をお持ちの方は、LaCie 社の NetBox をチェックしていただこう。これは単体の 10/100Base-T 装置で、 最高 54 枚の 650 MB CD-ROM(もっと容量が少ない場合はこれ以上)を内 蔵の 36 GB ハードディスクに格納するものだ。CD を NetBox に差し込む と、CD のイメージがハードディスクに移されネットワークからアクセスで きるようになる。NetBox は 2,000 ドル程度で、アクセスタイムはジュー クボックスより 15 倍高速で、CD の容量も大きく、脆弱な可動部もない。 CD-ROM ドライブ、DVD ドライブ、それにハードディスクを追加することも 可能だ。唯一の欠点は、コピープロテクトがかかった CD-ROM のイメージ を作ることができないかもしれないということだ。

<http://www.lacie.com/scripts/cddvd/netBox.cfm>

LaCie は 1.040 ドルの Dupli-121 CD 複製機も展示していた。CD-ROM ド ライブに CD-ROM を、CD-R ドライブにまっさらの CD を入れると Dupli-121 が完全なコピーを作ってくれる。Dupli-121 は SCSI デバイス で CD-ROM ドライブとしても CD-R ドライブとしても使うことができるが、 単体で高速複製を行うこともできる。CD 一枚の複製には 9 分しかかから ない。CD を大量にかつ短時間で複製しなければならず、その間 Mac が使 えなくなるもの困るという場合には Dupli-121 は検討に値するだろう。 [ACE]

<http://www.lacie.com/scripts/cddvd/dupli121.cfm>

みなしごに救いを -- PowerPC 革命が起きてからもう数年になり、旧型 のマシンを持っている人は最新のソフトウェアが使えなくなってきている。 Sonnet Technologies 社の 300 ドルの Presto PPC が救いの手を差し伸べ てくれる。これは多くの 68040 ベースのデスクトップ Mac に対応したプ ロセッサアップグレードカードで、Quadra と Centris シリーズに加え、 一部の Performa 400、500、それに 600 シリーズにも対応している。感心 なことにこうして高速化されたマシンは Mac OS 8.5.1 にも対応しており、 もっと新しいシステムもサポートするかもしれない。Presto PPC は 100 MHz の 601 プロセッサを採用しており、旧型のマシンを辛うじて PowerPC の仲間入りをさせてくれる。 [MHA]

<http://www.sonnettech.com/product/presto_ppc.html>

最も目立たないメールサーバ -- 遅いインターネット経由で会社のメー ルを、あるいは過負荷の ISP メールサーバからのメールの取込みにいらい らしている? RockFord Systems MailProxy は断続的な接続に対応できる よう設計されたメールサーバである。MailProxy を用いる事で、あなたの メールクライアントとの間はインターネット接続のスピードではなくロー カルネットワークのスピードでやり取りできる、これであなたの一次的な Macintosh を使う時間を節約できる。MailProxy は固定 IP アドレスを持っ た Mac を必要とし、これは通常のダイヤルアップのインターネット接続に は当てはまらないが、多くの ISDN、DSL、そしてケープルモデム接続に使 用できる。MailProxy は今月発売されるときには 300 ドルの値段となるで あろう;そして 1.0 MB のデモが現在ダウンロードできる。 [ACE]

<http://www.mailproxy.com/>

最小のファイアウォール -- インターネットに対する高速の常時接続が DSL やケーブルモデム経由で可能になってきた事で、個人のネットワーク セキュリティについてもこれまで以上に考えなければいけない時代となっ てきた。しかしファイアウォールは一般的に言えば高価でセットアップも 難しい( TidBITS-468 の “ファイアウォールとは何か、なぜ気にしなけ ればならないか?”参照)。そこで NetBarrier の登場である、これは Intego 社から出された個人用ファイアウォールで高価でなく (99 年 9 月 30 日までは 75 ドルでそれ以降は 150 ドル) かつセットアップも易しい。 もしあなたがインターネットに常時接続された単独の Mac の所有者なら ば、多種多様にわたるインターネット攻撃から身を守るために NetBarrier を検討すべきである。 [ACE]

<http://www.intego.com/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05291>

注目すべき次の PIM -- 我々は長年にわたって Now Up-to-Date や Now Contact を使ってきた;これらの製品は最近 Power On Software 社によっ て拾われはしたが、Now 社でも、かっての Qualcomm 社でも力を注いでは 貰えなかったし、そのエクステンションも Mac OS 現在のバージョンに対 してとりわけ相性が良いわけでもない。そこで、替わりになるものとして 60 ドルの Chronos Consultant に目を向けてみる事とした。唯一の欲しい のに欠けている機能はクライアント/サーバ機能である(現状では、ネット ワークからあなたの PowerBook を外して携帯する時は、Consultant ファ イルのコピーを一緒に持って行き帰った時にはそれを捨てるという作業を 行わなければならない)。次に予定されている Office Consultant では ネットワークからただ外して行き再接続する時には加えられた変更は同期 されるようになるであろう。これは一見に値する、とりわけあなたが多ユー ザネットワークアクセスと PalmPilot の同期が必要であるならば。 [ACE]

<http://www.chronosnet.com/>

時来る -- グラフィックデザイナ達の不満に、なぞる指の下に表れてく る形を見ながら、画面上に描くことが出来ないというのがある。グラフィッ クタブレットはマウスよりもより繊細なコントロールが出来る中間的解と して意味があったが、タッチスクリーンは携帯情報端末でしか成功してい ない。ここに Wacom 社から PL-300 と PL-400 Display Tablets が出され た、これはグラフィックタブレットと平画面 LCD パネルとを一緒にしたも のである。こんな事なら誰かがもっと早くやれただろうにと思うかもしれ ないが、実用サイズの平画面ディスプレイが手の届く価格帯に落ちてきた のはごく最近の事なのである。Wacom 社の Display Tablets は約 1,800 ドルからあり、それでも大変な金額ではあるが、同等の平画面ディスプレ イ(例えば Apple 社の Studio Display 15)と既存の高品位グラフィック タブレットの値段を合わせて考えれば納得のいくものであろう。水平に (あるいは傾いて)置かれたモニタ上に描くというのは奇妙に見えるかも 知れないが、シャープで明るいディスプレイと優れたペンドロー技術のお 陰でこれらの製品は勝者となるであろう。 [MHA]

<http://www.wacom.com/productinfo/pl300.html>


製品リリースにおける 7 つの大罪

by Matt Deatherage <mattd@gcsf.com>
(翻訳:尾高 里華子 <rikako@pobox.com>)
(  :尾高 修一 <shu@pobox.com>)

Macworld Expo では Apple 製のハードウェアやソフトウェアに注目が集ま りがちだが、このイベントは Macintosh デベロッパーが新製品やアップ デートを発表する場でもある。しかし製品リリースのニュースを流す時点で 驚くほど多くの企業が失策をやらかしてしまっている。こういったベンダー は本人なりには一生懸命やっているのだが TidBITS の様な情報誌に製品の リリースを取りあげてもらえず、結局買ってくれるかもしれない人にニュー スが届かず仕舞いになっている。

今なぜこの話題かというと、本格的 Macintosh ユーザー用の日刊誌 MDJ を再起させるべく準備を進めているからだ。MDJ は 1996 年にスタートし 1997 年 7 月に休刊となった。今は再開できる日までの暫定措置として MWJ という週刊誌を出している。MDJ を再刊させるにあたり刷新を考えている が、毎日入ってくる Macintosh 製品のアナウンスを網羅するという点は過 去を踏襲したいと思っている。MDJ が他の雑誌と異なるところは、その創 刊以来新製品やアップデートのリリース一つ一つに最低一パラグラフを割 いていたことだ。

<http://www.gcsf.com/>

しかし今では前のような取り上げ方はとてもできないだろう。これは一部 には成功の代償だと言えよう。Apple の盛り返しによりデベロッパーは Mac に群れをなして参入してきた。現在一日あたり 40 〜 60 件もの製品のア ナウンスを受け取っている。MWJ の最新号 Macworld Expo では 300 以上 の新製品やアップデートを取りあげた。多少の漏れはあるかもしれない。 簡単とは言え全製品を伝えるのにはすべてのアナウンスについて下記の基 本的な部分はカバーしなければならない。

これらはプレスリリースに記されているべき基本的な情報だ。だが、実際 のところこれらすべてが記されているのは我々が取りあげるアナウンスの 半分以下だし、ひどいところになるとそのうちの一つとして書かれていな い場合もある。ちゃんとした ReadMe ファイルを付けることができない人 たちがいるように、自分の製品を知らせたり説明したりするのがてんで下 手なデベロッパーもいるのだ。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbser=1039>

そこで、Macintosh 関連製品のデベロッパーのために、製品リリースの際 の 7 つの大罪を作成した。いずれも消費者の注意を惹きたかったらやって はいけない事柄である。オンラインには Macintosh ニュースを流している ところが山とあり、なかには放っておいても取りあげてくれるところがあ るだろうが、一般の人たちに正確な情報を伝えるチャンスを一つといえど もふいにしてはいけない。紙の月刊誌はスペースの制約があり、製品の ニュースが判りづらいという理由で掲載してもらえないこともあり得る。 この業界の人はニュースの山から隠された宝を見つけだすのに時間を割く 余裕などないのだ。

一、何も報じない -- たいていのデベロッパーは世の中に製品のことを 報じるのが顧客獲得の第一歩だと判っている。ところがこの第一歩さえも 踏み出せずにいる製品の多さには驚くものがある。Business Wire を通し た完全完備のプレスリリースは 500 ドルもかかるが、第一歩はもっと廉価 なやり方で踏み出すことができる。MDJ はアナウンス専用のメールアドレ ス < pr@gcsf.com> を用意している。TidBITS には <releases@tidbits.com> があるし、そのほか電子出版を行っているほとん どのところが同様のものを用意している。お知らせメールを送ることほど 安上がりなものはないだろう。

<http://www.businesswire.com/>

つまり、顧客は製品について知りたく、業界紙は製品について伝えるのが 使命なのだから、デベロッパーは知らせるべきである。報ずるに及ばざる ものリリースすることなかれが鉄則だ。

二、Web サイトに情報がない -- 製品を発表して自社の Web サイトを伝 えておきながら、そこに報道関係者や買ってくれるかもしれない人が欲し がるような製品情報がないということがある。驚くことに、これは大きな デベロッパーほど当てはまることが多い。そういったところのサイトは大 きく、手を入れるのに部門ごとに面倒な手続きだの調整だのが必要だった りするのがその理由かもしれない。しかし Web サイトを確実にアップデー トするのは大切なことだ。プレスリリースや広告で製品のことを知った人 がもっと知りたいと思って Web サイトを訪れても何も情報がなかったら買 うのをやめてしまうだろう。

Web ページを作っている人なら誰でも、良いページを作るのには 20 分以 上かかると知っている。そこで Web サイトのアップデートを製品リリース のプロセスの一環に組み込んで、アップデートを後回しにしないようにし よう。最新でなくなった製品について、最初の情報に漏れがあったからと いって二度も記事にしてくれる所なんてないのだから。情報の出し惜しみ なんてやり方はもう古く、今や記者から嫌がられるだけで何の得にもなら ない。

Web サイトには過去のプレスリリースすべてをアーカイブにしたものを置 き随時更新すべきだろう。出版社にはそれぞれの作業予定があるので、最 良の取材をしてもらうためには直ぐにでも使えかつ紙の雑誌や踏み込んだ レビュー記事用に一週間先や一ヶ月先でも利用できる情報を用意しておか なければならない。

三、製品のことが書かれていない -- 新製品のことを知ろうと Web サイ トを訪れてはみたが、いったい何のための製品なのか判らなかったという 経験はないだろうか。あなたのサイトを訪れて同じような感想を持った人 がいるかもしれない。

製品についての記述を怠る罪には次の 2 種類があると気がついた。一つ目 は一見すごそうな言葉だけで飾り立て、製品がどういうものかを分かりや すく簡潔に説明せずにジャーゴンをまき散らす会社が犯すものだ。アナウ ンスの目的は知らせるということが第一で、印象を与えるのは二の次であ る。感動させる役は製品が引き受けてくれる。

第二の怠慢の罪は一種の甘えである。世の中の人すべてが製品が何を行う ものか知っていると思い込まないように。製品のことを何一つ知らない人 でも理解できるようにその目的と機能をわかりやすく説明すること。どん なに歴史のある製品についてもだ。

技術度の高い製品や専門的な製品の製作者は、対象のとなる市場で通じる 言葉を使うべきだと反論するかもしれない。これにも一理ある。 Mathematica のような製品の発表では上級の数学的新機能の詳細を語らず に済ますべきではない。しかし、Mathematica が「コンピュータで数学計 算を扱うシステム」であるということを誰もが知っているとみなしたアナ ウンスを行ってはいけない。つまるところ、名の通ったブランドが必ずし もその体を表しているわけではない。Q-Tips、Coca-Cola、Macintosh など がそのよい例だ。もし一度も聞いたことないものだったとしたら、綿棒や ソフトドリンクやコンピュータだということが判るだろうか。変更事項の 説明と製品自体の説明をバランスよく行わなければならない。

つまるところ、名の通ったブランドが必ずしもその体を表しているわけで はない。Q-Tips、Coca-Cola、Macintosh などがそのよい例だ。もし一度も 聞いたことないものだったとしたら、綿棒やソフトドリンクやコンピュー タだということが判るだろうか。変更事項の説明と製品自体の説明をバラ ンスよく行わなければならない。

四、変更事項の記載がない -- 製品の説明をうまく包括的に行っている デベロッパーでも、「リリースノート」に関しては訳の判らない呪いの言 葉と思っているようだ。リリースがどんなにマイナーなものでも、それこ そバグを一つ潰しただけであったとしても、製品のアップデートにはリリー スノートを付けなければならない。

リリースノートには読む人が頭痛を起こすような細かいことは書かなくて よい。ユーザー向けのドキュメンテーションには記載できないようなマイ ナーなバグやあまり知られていないバグはリリースには付き物だ。しかし、 ほんの 2 〜 3 人のユーザーにしか影響がないというバグでなければ、アッ プデート および Web ページにそのバグについて記載すべきである。何 がフィックスされたのを知るために巨大なアップデートをダウンロードし なければならないようになっているのは、人の時間および帯域幅を盗んで いるようなものだ。きちんとしたリリースノートを出すことによりアップ デートをすべき理由を報道してもらえるようになるし、自分がアップデー トするべき対象かどうかを判断できるようになるし、さらには以前その製 品の利用をあきらめた人が再度使ってみようと思うかもしれない。

私にとってハードウェアのデベロッパーは謎に包まれた解せない人種であ る。USB や FireWire のディバイス(さらには今や標準となった PCI カー ド)の急増にともない、新しいドライバが文字通り毎日リリースされてい る。そしてそのほとんどすべてにリリースノートがついていない。情報の 不足はアップグレードを行おうという決定を鈍らせるし、どんな問題が フィックスされたのか判らなければ 2 MB のものをダウンロードするのも ためらう。さらに、リリースノートにアップデートについての説明がなけ れば、テクニカルサポートの連中が電話でそれを行うことになり、金銭的 な付けも回ってくる。

五、価格を出さない -- お笑いになるかもしれないが、これは蔓延して いる罪であり、とりわけ記事に価格情報を入れなければならない記者にとっ て嫌なものだ。価格の表示を怠ってぼたもちが舞い込んでくることなどは 決してない。不当な価格付けをしていないならば、製品がその価格に値す るものだとどうどうと説明できるはずだ。納得できるところまで価格を下 げるように。さもなくば価格に追いつくところまで製品を向上させるか、 利用者に納得してもらうかだ。ソフトウェアにしろハードウェアにしろユー ザーにとっての価値よりも自分が稼ぎたい金額をもとに価格付けをすると かならず厄介なことになる。

小売り店を通じて製品を販売する営利目的のデベロッパーは価格を記載す るのをためらうかもしれない。なぜなら、価格は店によって様々で、デベ ロッパーとしては値下げ競争をされたくないとか、推奨価格で販売しても らいたいという気持ちがあるからだ。これを解決するのは、昔ながらの 「小売り価格」であろう。小売り価格をはっきりと提示することにより、 消費者や記事を書く側は製品がその価格よりもまず下回るものだと察する ことができる。デベロッパーは「市場販売価格」という言葉を用いてもよ い。これで記載しておけば大抵の小売り店に行けばだいたいそのあたりの 価格で手に入るのだと理解してもらえる。

Web サイトの製品に関するメインのページには、価格をはっきりと記載す るなり、価格のあるページへリンクを張るなりしておかなければならない。 価格を隠すべからず。価格を探させるべからず。

六、再三再四のリリース -- インターネットが現れる前の時代を思い出 していただきたい。当時メジャーなリリースのニュースは紙の雑誌で広告 なり記事なりの形で伝えられていた。ダイレクトメールという方法が使わ れることもあった。企業は新製品を最大限に売り出すために入念な計画を 立てていた。

Web によってすべてが変わった。バグを見つけてフィックスしたら、いつ でも Web サイトに新バージョンをポストできるようになった。毎日出てい る様々な情報誌に一言伝えて、数日で何万人もがアップデートを利用でき るような時代になった。アップデートを頻繁にリリースするのが簡単になっ たという意味では進歩である。

しかし、それが可能だからといってやらなければならないということには ならない。上記の 5 の罪を全く犯していない素晴らしいプログラムでも、 毎週やたらと新リリースを行っていたりする。あるネットワークゲームが 一ヶ月と一日でバージョンが 1.5.2 から 1.8.4 になったのを目にした。 32 日で 16 リリースだった。これは世間に対する一種の冒涜行為である。 献身的なユーザーでも週に 3 度も新バージョンをダウンロードしたくな い。それにここまでくるともうニュースの域を超えている。新バージョン がありまりにも直ぐに出すぎると、その変更を伝えてくれるほうが追いつ かない。

七、空言だけで製品なし -- デベロッパーは時として製品が入手可能で あるかのような派手な発表をする。ところがユーザー(とプレス)が製品 の Web ページに行くと、製品は「今秋」など未来のある時点に実際に入手 可能になるということが小さく書かれている。これであなたの発表のため に盛り上がった善意と純粋な関心は一瞬にして苛立ちと不信感にすり変わっ てしまった。

発表と同時に製品が入手可能になることが間違いない場合には、リリース にその旨明記し、どこで入手できるかを詳しく述べておこう。製品が未来 のある時点で入手可能になるという発表をする場合には、その旨はっきり 述べておき、いつになったらユーザーがダウンロードまたは購入すること ができるようになるかを明記しておく。「今秋」など四季を使った表現は 地球の半分にしか該当しないので使用しないように。製品のリリースと発 表を区別しないと結果は悲惨なことになりかねない。潜在的購買者の不信 を買い、以後の発表は業界のプレスから不信の目で見られることになる。

より良い世界へ、一つ一つの製品から -- Ralph Waldo Emerson はソフ トウェアのリリースについて知っていた。彼は「愚かものの悪ふざけは馬 鹿一徹に通じる」と述べた。実際には、ここで述べてきたことは必ずしも 常に真理であるとは限らない。たとえば、製品の特殊な性格のため、頻繁 にアップデートを公開しなければならない場合もある。どこかのライター が頻繁なアップデートは悪であると述べているというだけの理由で、ユー ザーが必要とするレベルのサービスを提供しないのは得策とはいえない。 ここで私が述べた意見のどれかに賛成できないという場合、確固とした理 由で自分の意見の筋を通せるのなら、それは正しいということなのだ。自 分のことは自分が一番よく判っているはずだ。ビジネスやユーザーが柔軟 性を要求するのなら、ドグマに固執すべきではない。

こうした罪を犯さないようにするのは大変なことのように思えるかもしれ ない。悲観しないでいただきたい。最初に時間と労力を割いておけば、ユー ザーとプレスは楽ができ、プレスはあなたとユーザーの橋渡しをしてくれ るのだ。意外と難しいことではない。忘れないでいただきたいのは、人は あなたの製品を使いたいと思っていることなのだ。だからこそあなたはこ れほどの時間をかけて製品の作っているのではないか。利用者が必要とす る情報を隠して、その結果最後の最後になって遠ざけてしまうことはしな いように。製品が何をするもであるか、価格はいくらか、どこに行けばもっ と情報があるか、それに新しくなった点は何か。利用者が必要とする情報 は最初にまとめて伝えておこう。同じ質問に何度も答えなければならない ことがなくなるし、潜在ユーザーはあなたの製品の評価ができるため、製 品が自分のニーズに合っているかがわからなかったがために他の選択肢を 探すということにならない。これだけでもリリースにおける悪い癖を排除 する十分な理由になるだろう。

[Matt Deatherage は元 Apple Developer Technical Support のエンジニ アで、develop 誌や MacAddict 誌に寄稿している。GCSF 社の CEO である と同時に MWJ(Weekly Journal for Serious Macintosh Users)の出版者 でもある。今彼は日刊の MDJ の復活などの極秘計画も練っているところ だ。MWJ については以下の URL で詳しく知ることができるうえ、3 週間の お試し購読もできる。]

<http://www.gcsf.com/>


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