TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#504/01-Nov-99

Mac OS 9 の新しいネットワーク機能は興味をそそられるかもしれないが、 Geoff Duncan の徹底的な検証によって明らかになった、残忍な詳細を読む と、あなたは思いとどまるかもしれない。また、Jerry Kindall 氏による MP3 のエンコーディングについて 2 部構成の記事を開始し、来週は 5 つ の Macintosh MP3 エンコーダの比較についてお届けする。ニュースとして Aladdin Systems 社の株式公開、AppleCare の改訂、DiskWarrior 1.1 と MasterJuggler Pro 2.0.3 と 2.1 のリリースについてお伝えする。

目次:

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MailBITS/01-Nov-99

(翻訳:辺見 光 <hikaru@popsvr.tokai.jaeri.go.jp>)
(  :石川 篤利 <ishia@hk.ntt.net>)

MasterJuggler Pro でより多くのフォントを -- Alsoft 社は、Mac OS 9 と互換性があり、一度に開けるフォントの数を増やすことができるフォ ント管理ユーティリティ MasterJuggler Pro の 2 つの新しいバージョン をリリースした。MasterJugger Pro 2.0.3 は 426K のダウンロード容量で Mac OS 9 との互換性のみを与える無料アップデートである。 MasterJuggler Pro 2.1 は、1200 までのフォントスーツケースを開くのを サポートすることで 348 以上のファイルを開くことができる Mac OS 9 の 能力を利用している。MasterJuggler Pro 2.0 以降の所有者は 18 ドル (実際には 13 ドル + 5 ドルの手数料)で 2.1 にアップグレードできる。 しかしながら、アップグレードはフロッピーディスクのみで利用でき、現 行の Macintosh がフロッピードライブを持たないで出荷されていることを 考えると、疑問が残る。 [JLC]

<http://www.alsoft.com/MasterJuggler/>
<http://www.alsoft.com/download.html>

Mac OS 9 をサポートした DiskWarrior のアップデート -- Alsoft 社の 修復ユーティリティソフトである DiskWarrior がバージョン 1.1 にアッ プデートされ、それはMac OS 9 に導入されたファイルシステムの改良点を 利用している( TidBITS-486 の“Alsoft 社の DiskWarrior で崩壊と闘 う”を参照)。DiskWarrior 1.1 は、(以前は、修復はできたが検証がで きなかった) 32,000 項目より多く含むフォルダを持つディスクも同様に、 現在は 2 GB 以上の重複ファイルを修復できる。DiskWarrior の AppleScript のスクリプトもまた、非英語のシステムでも以前よりもきち んと動作するようになっている。無料の DiskWarrior 1.1 のアップデータ は 588K のダウンロード容量である。 [JLC]

<http://www.alsoft.com/DiskWarrior/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05443>

Apple 社が AppleCare を改訂 -- Apple 社は、意義深いことに、我々が TidBITS-478 の“AppleCare 賛否”で AppleCare について執筆して以来 (以前は AppleCare Extended Service として知られていた)、AppleCare Protection Plan を改訂した。全体的に、Apple 社は、4 つの製品群に価 格を付け、Macintosh と一緒に買った特定の周辺機器をカバーし、そして、 あなたのシステムを診断する MicroMat 社の TechTool Deluxe ( TechTool Deluxe はたぶん MicroMat 社の TechTool Pro とよく似ている)を付属さ せ、非常に首尾一貫した AppleCare を作り上げた。現在、AppleCare は標 準である 1 年間ハードウェア保証を 2 年間延長し、そして 90 日間の電 話サポートを 3 年間に延長することで、全部で 3 年間保証している(し かし、それ以降更新することはできない)。その新しい AppleCare の方針 のために、料金は以前より若干高くなっている。iMac は 150 ドル、iBook は 230 ドル、PowerBook は 300 ドル、Power Macintosh または Macintosh Server (ディスプレイを含む)は 250 ドルで、そして単独で購入した Apple display は 100 ドルで加入できる。Apple 社は AppleCare Extended Service に加入している顧客にアップグレードを提供すると言っているが、 詳細はまだ得られていない。AppleCare は Apple 社または Apple 社が認 定した小売店を通して利用でき、米国とカナダのみ有効である。 [ACE]

<http://www.info.apple.com/support/applecare_products/protectionplan/ features.shtml>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05370>
<http://www.micromat.com/>

Aladdin Systems が株式公開 -- Macintosh 関連企業としては珍しい動 きであるが、圧縮ソフトの StuffIt ファミリーや数々の Mac 用ユーティ リティの製造元である Aladdin Systems 社が“逆さ合併”という、非公開 企業と活動していない公開済み企業との合併によって同社の株式を株式取 引所で取り引きさせるという手続きを経て株式公開した。一般的に逆さ合 併は容易で、費用も少なくすみ、IPO(初期株式公開)における取り引きよ りも株価が値下がりせずにすむ。今回完全な子会社となる Aladdin Systems 社の親会社である Aladdin Holdings 社は“ALHI”という略号で取引所で 公示されており、同社の株は現在一株当たり約 5 ドルで取り引きされてい る。株式公開する事によって Aladdin 社は自社の評価を高め、より高額な 資金を入手する道を開き、ほかの商品や企業を手に入れる為に株式を利用 する事が可能になるだろう - この戦略は近年の Aladdin 社の同社の商品 ラインアップ拡張に一役買う事になる。 [ACE]

<http://web.wt.net/~bellco/shell2.htm>
<http://www.aladdinsys.com/company/news/releases/aladdin/ 102599-aladdinholdings.html>

アンケート結果:Mac OS 9 へのアップグレード予定 -- 先週の Mac OS 9 へのスケジュールに関するアンケートによって、投票してくれた TidBITS の読者層は我々が予想した以上に慎重派に属している事が明らかになった。 結果は、すぐにでもアップグレードを予定しているという回答(26 パーセ ント)と 1 〜 2 ヶ月以内に予定している(27 パーセント)という回答が ほぼ拮抗しており、3 ヶ月以上に、という回答が 37 パーセントで一番多 い回答だった。アップグレードする予定が無いという回答は 10 パーセン トにしかならなかった。率直に言って私は、もっとたくさんの人が早い時 期でのアップグレードを検討しているだろうと考えていた。おそらくこれ は、先鋒隊が隠れた不具合を明らかにし、RAM Doubler や StuffIt Deluxe といったポピュラーなユーティリティの対応バージョンが出揃うまでは、 Mac OS 9 の新機能もアップグレードさせるのに十分な希求力を持っていな いという事なのだろう。 [ACE]

アンケートのお知らせ:QuickTime と Sherlock のインターフェース -- Apple 社は QuickTime 4.0 付属の QuickTime Player と Sherlock 2 に施 されたインターフェースを最新の“スタイリッシュ”なものだともてはや している。しかしながら、それらのインターフェースは Apple 自身のユー ザーインターフェースの慣習をぶち壊すものであり(試しに QuickTime Player のウインドウを広げてみて、両方のアプリケーションでリサイズボ タンが欠けている事に注目して欲しい)それらが Macintosh のコミュニ ティーの間で議論の余地がある事は証明済みである。QuickTime Player は 変則的でもいいかもしれない、だがしかし、Sherlock 2 の同様のインター フェースは Apple がこのデザイン傾向を今後も続けるつもりである事を物 語っている。そして Apple が先に行けば、他も追随しそうな気配である。 さてそこで、今週の質問はこうである:Apple と他のデベロッパーは、自 社のユーザーインターフェースを QuickTime Player や Sherlock 2 のよ うなものにするべきだと思うか?我々のホームページであなたの意見を表 明して欲しい! [ACE]

<http://www.tidbits.com/>


MP3 の作成 Part 1

by Jerry Kindall <kindall@manual.com>
(翻訳:冨田 将英 <atimot18@sa2.so-net.ne.jp>)

MP3 は、ミシガンのローカルバンド Troll for Trout のニューシングル“ Icicle”や、Alan Parsons のアルバムのタイトル曲“Dr. Evil Trance Remix”などのような、新しい音楽の世界に飛び出すためのサイコーの方法 になりつつあるが、お楽しみの半分は、自分で作れるというところだ。幸 いなことに、自作の MP3 を作成するためのマッキントッシュ用アプリケー ションの数は 5 つを下らない。一つの例外を除いては、オーディオ CD か ら直接 MP3 を作成でき、それなりのスピードの CD-ROM ドライブと CPU があれば実時間よりも早くエンコードできる。

<http://www.mp3.com/artists/16/michigan_rocks_99.html>
<http://www.amazon.com/exec/obidos/subst/music/download/alan-parsons/ ap-main.html>

あなたが持っている CD から MP3 ファイルを作成すること、そして自分の 機器で再生することは、完全に合法である。自分で作った音楽の MP3 ファ イルを作成し、他人に配るのもまた合法である。しかし、“海賊版” MP3 (アーティストとレコードレーベルに許可なく商用アルバムからエンコー ドされたもの)をアップロード、ダウンロードする事は違法である。言っ ておくが、MP3 プレーヤとエンコーダを使ってフォースのダークサイドに 落ちるかどうかはあなた次第なのだ。

我々はヘッドフォンをつけ、いろいろなスタイルの音楽の入った 4 分ほど の AIFF ファイルを試してみた。5 つの MP3 選手たちががどれくらい早く ファイルをエンコードしたか、そしてこれらのファイルはどんな具合だっ たかは来週お知らせする。しかし、まずはサウンドの世界へ旅立とつとし よう。

なぜエンコーダが問題なのか -- オーディオ CD から 128 Kbps の MP3 ファイルを作成すると、エンコードされたファイルはオリジナルの 10 % 以下の大きさになる。ということは、エンコーダは 90 % 以上のデータを 切り捨てているのだ。我々の聴覚は音の可聴範囲でのみ働くことが知られ ている。人間が音を受容する仕組みを利用すると(聴覚心理科学)、オー ディオ信号の最も重要な部分を抽出し、気がつかないような部分の忠実度 を落としたり完全に切り捨てることにより、重要な部分を忠実にエンコー ドできるのである。これが MP3 や、QuickTime に組み込まれた QDesign Music Codec などの不可逆なオーディオ圧縮技術の基本原理だ。

MPEG 規格(MP3 はこのほんの一部である)の面白いところは、仕様では MPEG エンコーダがどのように動作すべきかについて一切触ておらず、デ コーダが必要とするフォーマットのみが定義されている点である。これは、 出力されるファイルのフォーマットが正しくて、どんな MP3 プレーヤでも デコードできさえすれば、開発者たちはエンコーディングシステムを自由 に発明できるということだ。ここで競争原理が成り立ち、MP3 デコーダソ フトウェアの開発者たちはより優れた聴覚心理シミュレーションの開発を 迫られるのである。より優れたエンコーダとは、より音質の優れた MP3 ファイルを出力するものであり、最も重要なのは改良点を享受するために は新しい再生ソフトウェアを必要とするのではなく、ファイルのバージョ ンをあげればよいというところである。

以上のことから、MP3 ファイルの音質はそれを再生するソフトウェアより も作成するソフトウェアの方に依存することがわかる。いくつかの MP3 再 生用プログラムには音をあなたの好みに合わせて調整できるイイコライザ やその他の調整機能が組み込まれているが、この機能を使わなければどれ もほとんど同じような音だ。

我々が試したエンコーダがどれも、音楽のスタイルに関係なく、128 Kbps 以上のビットレートでは聞くに耐えるものを出力してくれたのはうれしい 結果だ。ビットレートとは、音楽をエンコードするのに一秒あたり何ビッ ト必要かを表すおまじないである。ビットをたくさん使えば切り捨てる情 報量は少なくなる、したがって音質も良くなる、というわけだ。もし、MP3 か QuickTime のファイルのビットレートがモデムのビットレート(通常は 56 Kbps)よりも低く、しかも全てが理想状態であれば、ファイルをダウン ロードしながら再生することができる。インターネット上で見られるほと んどのステレオ MP3 は 128 Kbps 以上でエンコードされており、これらを リアルタイムで聞くには ISDN かそれ以上の性能が必要と言うことになる。

ふつうに耳で聞くだけでは、我々が選んだビット圧縮オーディオでエンコー ドされたファイルの違いを聞き分けるのは相当に難しいはずだ。ヘッドフォ ンを使えば細かい違いが分かるかも知れないが、ステレオファイルをビッ トレート 64 Kbps 以下でエンコードするという拷問のようなテストを行う までは大地を震撼せるような不具合は何もでてこなかった。ここまで来て、 音の最も重要でない切り捨てる部分を決めるのにエンコーダがもがき苦し んだため、エンコードの際のいくつかの不正確さ(“遺物”とも呼ばれる) が明らかになった。そして、どれが最も優れた聴覚心理モデルを備えてい るかは明白だった。次週、AudioCatalyst、SoundJam MP、N2MP3、MVP、そ して無償の MP3 エンコーダといったいろいろなエンコーダのテストの行方 をお楽しみに。

[Jerry Kindall 氏は Macintosh に特化したテクニカルライティングおよ びウェブデザイン事務所である Manual Labor の創始者。彼の音楽コレク ショには、少なくとも 900 枚の CD がある。]

<http://www.manual.com/>


Mac OS 9 は Net とともに

by Geoff Duncan <geoff@tidbits.com>
(翻訳:篠原 慎一 <sshino@mbd.sphere.ne.jp>)
(  :尾高 里華子 <rikako@pobox.com>)
(  :尾高 修一 <shu@pobox.com>)
(  :松岡 文昭 <mtokfmak@mxa.meshnet.or.jp>)

前回は、Mac OS 9 における大きな新機能である Sherlock 2、マルチユー ザー、音声認証、キーチェーン、Apple File Security とともに、いくつ かのインストールや互換性の問題について見てきた。今回は Mac OS 9 の ネットワークやファイル共有機能について検証する。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05624>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05625>

インターネット・ファイル共有 -- Mac OS 9 における重要な“パワー ユーザー”機能は、インターネット経由の個人ファイル共有とプログラム リンクの双方を使用できる能力だ。個人ファイル共有は利用者が AppleTalk 経由でリモート Macintosh 上のファイルにアクセスすることを可能とする もので、1991 年に System 7 とともに登場した。同時利用は 10 ユーザー までに制限されていたにもかかわらず、この機能が Mac OS が持つ最も愛 され最も使われている機能の一つであることは明らかだ。

そして今、Apple 社が Mac OS 9 に Open Door Networks 社の ShareWay IP “background-only”バージョンを組み込み、「ファイル共有」コント ロールパネル内にたった一つのチェックボックスを追加したことで、イン ターネットを介して同じ機能が使えるようになった。これまで“個人ファ イル共有”で普通に行ってきたように、利用者やグループ、アクセス権を 設定することができる。これまでと異なるのは、利用者は「セレクタ」か ら あなたの Macintosh のIP アドレスを入力(DNS名か IP 番号を使用す る)したり、ネットワークブラウザ・アプリケーション内であなたの Macintosh を特定することによって接続することができる点だ。TCP/IP ファイル共有はダイヤルアップでインターネットアクセス(つまりアクセ スのたびに IP アドレスが変わってしまう)をしている利用者にはあまり 有益ではないだろうが、固定 IP アドレスを持ったマシンが、あなたのロー カルな AppleTalk ネットワーク外の場所からアクセスしてくる際には便利 な機能だ。ただし、“AppleTalk”コントロールパネルで AppleTalk をア クティブにし、TCP/IP ファイル共有が機能するようにしておかねばならな い。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=04961>

Program-to-Program Communications (PPC) Toolbox としても知られてい るプログラムリンクもまた、System 7 とともに出現したもう一つの機能だ が、ファイル共有ほどには広く人気を博してはいなかった。プログラムリ ンクとはネットワークを介して、別個のマシン間にあるアプリケーション がコミュニケートできるようにする機能で、「ファイル共有」コントロー ルパネル内の「利用者 & グループアクセス権」設定によってコントロール される。しかし、ほとんどのプログラムがデフォルトでは相互にやりとり しないので、ほとんどの利用者はこの能力を使うことができず、またこの ポテンシャルをフルに使うためにはスクリプティングが必要となる場合が ある。私は宇宙で独りぼっちかもしれないが、プログラムリンクをきちん と使って、私のネットワーク上のサーバの状態を監視したり、日々の業務 を行ったりしている。事実、TidBITS はプログラムリンクなしでは Web サ イトにアップすることも、電子メールで配信することもできない。多くの 利用者にとって、インターネットを介したプログラムリンクのユーティリ ティは、インターネット越しにあるリモートマシン上のアプリケーション 同士がやりとりすることができるような AppleScript を走らせる可能性を 持っている。

TCP/IP ファイル共有とプログラムリンクは、多くのユーザに対してセキュ リティに関する問題を引き起こしている。インターネット共有機能はデフォ ルトでは使用不可能になっているが(そしてゲストアクセスは TCP/IP 経 由でのプログラムリンクで不可能だが)、いったん使用可能になると、Mac のセキュリティはあなたが定義したユーザ名やパスワードの質、そしても ちろんゲストアクセスを可能にしたかどうか、によって制約を受けるよう になる。理論的には、あなたの Mac はその AppleTalk ネットワークにい る比較的少数の人々ではなく、インターネット上の誰からもアクセスが可 能になるのだ。推測困難なユーザ名やパスワードを用い、あらゆるゲスト アクセスを不可能に設定して Mac を十分に守ることはできるが、もともと この機能を開発した Open Door Networks 社は、セキュリティの改善と監 視機能を持つ強化版のユーティリティを発売している。ShareWay IP 3.0 は、利用者単位のロギングや IP ベースでの接続をオンオフできる機能を 付加する。さらに TCP/IP ファイル共有のポート番号を標準の 548 から変 更することも可能だ。Mac OS 9 所有者には特別価格で提供される。Open Door 社は Mac OS 8.1 以降が動作している Macintosh 上でのインターネッ トサービスにおいて、高度なアクセス許可不許可の選択機能を提供するス タンドアロンのファイアウォールソフトである DoorStop も発売している。

<http://www2.opendoor.com/shareway/MacOS9upgrade.html>

AppleScript 1.4 -- TCP/IP 経由のプログラムリンクによりインター ネットで利用できるスクリプトに新しい可能性が生まれた。そもそも AppleScript というスクリプトはローカルのマシンで、ユーザーが指示を 出して一度だけ実行するタスクや、自分の代わりに自動的に実行させるフォ ルダアクションにしか使われないのが普通だ。AppleTalk 経由でスクリプ トを走らせていたのは、PPC Toolbox を利用してスクリプトを書いた物好 きだけだったが、これにより Web サーバ上のデータベースを開いたり閉じ たり、リモートのアプリケーションからデータを転送したり、リモートの Macintosh にあるファイルをいじったり、他のマシンのアプリケーション を立ち上げたり終了したりなどができるなどの大きな成果を手に入れるこ とができた。つまり、ローカルの Mac でスクリプトを使ってできることの すべてが、リモートでもできるようになるのだ。複雑なシンタックスやス クリプトのトリックとの格闘を厭わなければ。

AppleScript 1.4 では上記の段階から 2 つの進歩がある(もうじき日の目 を見ることになっている Carbon と Mac OS X のへの備えもしてあるが)。 一つは、tell ステートメントで“eppc”スキームの入った URL が利用で きるようになったことだ。Mac OS 9 を走らせ、TCP/IP プログラムリンク がオンになっているているリモートのマシンにスクリプトを渡すことがで きるのだ。

 tell application "Finder" of machine "eppc://pointless.quibble.com/"
   beep
 end tell

もう一つは、AppleScript が新たに“using terms from”フレーズを扱う ことができるようになったことである。これで悪評高い“double-tell”を 用いたスクリプトを書かなくても、リモートマシンにあるアプリケーショ ンを扱うことができる。つまり、リモートシステムで実行されるスクリプ トをローカルのアプリケーションでコンパイルできるのだ。

 using terms from application "FileMaker Pro"
   tell application "FileMaker Pro" of machine "eppc://pointless.quibble.com/"
     open database "Contacts" with password "LaVidaPoca"
   end tell
 end using terms from

残念ながら、これらの機能に関してはオンラインにも Mac OS 9 に付属さ れる資料にも記載がない。Apple には早急に AppleScript Web サイトを アップデートして、これらについての説明を行ってもらいたい。とりあえ ずのところ、AppleScript 1.4 の情報探しには Bill Cheeseman 氏の AppleScript SourceBook が良いだろう。

<http://www.apple.com/applescript/>
<http://www.applescriptsourcebook.com/applescript/applescript140.html>

Network Services Location -- AppleTalk は(特に Mac ユーザーでは ない)ネットワーク管理者には継子扱いされることが多いが、この Apple 古来のネットワーキングプロトコルは常に使いやすく、小規模なグループ なら管理もシンプルで、モダンなネットワーキング環境にもあまり見られ ない優れた機能、たとえばネットワークリソースが現れたり消えたりする のを感知する能力などを持っている。とはいえ、AppleTalk には 2 つの根 本的な問題がある。AppleTalk はインターネットテクノロジーに則ってお らず、ネットワーク管理者は(おおむね間違いではあるが)AppleTalk が 他の AppleTalk サービスを探る際に帯域幅をムダ遣いするというのだ。

そこで Apple は Network Services Location(NSL)を開発した。NSL と はプログラムがローカルイントラネットに存在しているサービスについて 知ることができるプロトコル非依存の方法だ。「インターネット」ではな く「イントラネット」であることに注目していただきたい。こうしたサー ビス自体はプロトコルに依存しないので、インターネット経由でも利用す ることができるが、インターネット全体を対象にすることは想定されてい ない。狙いは AppleTalk の最良の部分、つまりネットワークリソースの感 知と使いやすさを他のプロトコルやネットワークサービスにももたらすこ となのだ。

Apple は NSL を Mac OS 8.5 と8.6 で静かに導入した。目につく変化は全 くなかった。Apple は Mac OS 9 で NSL をさらに堅固にしたが、アプリ ケーションやサーバの方が NSL の機能を賢く利用できるようになるまでは ユーザーにはややこしく使いにくいものとなるかもしれない。

Mac OS 9 では、NSL には DNS、LDAP、Service Location Protocol、それ に AppleTalk の 4 つのサービスのためのプラグインが用意されている。 理論上はこれでネットワークブラウザなどの NSL 対応アプリケーションが 上記のどのプロトコルを使ってもネットワークサービスを探して接続する ことができることになる。こうしたサービスに関係したアイテムはネット ワーク上のアイテムを階層表示した“neighborhoods”に現れる。ここには 利用可能なネットワークサービスに関係したすべてのアイテムのほか、 “sub-neighborhoods”も表示される。LAN の構成によっては、ローカル FTP サーバや個人ファイル共有や個人 Web 共有を動かしている Mac、イン トラネット上にある Web サーバ、LDAP ディレクトリサーバに格納された 情報、それに AppleTalk ネットワークで通常目にするゾーンやファイル サーバ(ただしプリンタは例外)も見ることができる。Apple の個人ファ イル共有と個人 Web 共有は Service Location Protocol(SLP)を利用し ている。SLP はクライアントが利用可能なネットワークサーバについての 情報を得る新しい方法で、このおかげで Mac OS 9 ではこういったサービ スがネットワークブラウザでローカルサービスとして自動的に現れるの だ。

NSL と SLP には少なからず弱点がある。まず、Apple は Mac OS 8.5 と 8.6 で SLP 1.0 を出荷し、Mac OS 9 では SLP 2.0 を出荷した。両者は 互換なので、Mac OS 9 システムからは Mac OS 8.5 や 8.6 システム にあるサービス(またはこの逆)を見つけることができないためユーザー は混乱に陥る。幸いにして、SLP 2.0 を搭載した Mac OS 9の SLP プラグ インバージョン 1.1(機能拡張フォルダの“SLPPlugin”というファイル) は Mac OS 8.5 と 8.6 のシステムに対応している。だが Apple はこの技 を公開しておらず、管理者にとっては頭痛の種となりそうだ。次に、SLP 対応クライアントはローカルネットワークにあるサービスを探し出すこと はできるが、整理・管理する方法はない。中・大規模ネットワークでは、 SLP はネットワークサービスを登録・管理する“ディレクトリエージェン ト”というサーバを利用するしくみになっている。ディレクトリエージェ ントのおかげでネットワークサービスがスケーラブルなものとなり、何が ネットワークサービスと自称することができるかを集中管理し、各サービ スがどのように整理されるかを定義することができる。だが、今のところ 利用できる SLP ディレクトリエージェントはない。Apple は 5 月の WWDC で SLP 用ディレクトリエージェントを提供するとは言っていたのだが。し たがって、今現在は SLP サービスを簡単に整理する方法がなく、その結果 有用性が限定されてしまう。

以上述べたこと全ても、LAN のルータ(または通信したい相手)が IP マ ルチキャスティングをサポートしていない場合には無意味となる。IP マル チキャスティングとは IP ベースのオーディオ・ビデオ送信のための技術 で、各クライアントに個別のデータストリームを必要とするのではなく、 すべてのクライアントが同一のデータストリームを受けることができ、そ の結果ネットワークをより効率的に使用することができるというものだ。 最新のルータは IP マルチキャスティングをサポートしているものが多い が、旧型のものには対応していないものがある。ネットワークサービスの 調整役を果たすディレクトリエージェントがないという状況では、SLP 対 応クライアントはネットワーク上で希望するサービスを照会する際 IP マ ルチキャスティングに頼ることになる。照会がそもそもどこにも届かなけ れば LAN 上にあるサービスは発見されず、ネットワークブラウザに登場し ない。

(Open Door Networks 社は SLP と Mac に関する優れた資料を公開してい る。SLP の歴史と開発に興味のある方は一読されたい。)

<http://www2.opendoor.com/shareway/SLP.html>

さて、SLP をめぐる状況が一筋縄ではいかないということがわかった。で は NSL を実生活で使うのはどうなのだろう? 小規模なネットワークでは、 NSL は AppleTalk に匹敵する使い易さを誇る。特にネットワーク環境を Mac OS 9 、あるいは最低でも SLPPlugin バージョン 1.1 で統一した場合 には。それ以外の状況では、NSL の有用性を一概には論じにくい。

ネットワークブラウザに DNS マシン名や IP アドレスを入力して neighborhoods を追加することができる。だが、neighborhoods は Finderからしか削除することができない。neighborhood によってはアップ ルメニューの「よく使う項目」フォルダに現れ、ものによっては初期設定 フォルダの奥深くに埋もれる。もう一つの方法はコントロールパネルの設 定によるものだ(後述)。このコンフィグレーションにまつわるややこし さは、必要以上の苛立ちをユーザーに強いることになる。ほとんどの neighborhood はユーザーの期待通りには振る舞ってくれないからだ。

ネットワークブラウザは起動時に neighborhoods を作成してくれる。 AppleTalk ネットワーク上にいる場合、ネットワークブラウザは AppleTalk neighborhoodを表示し、これまでとほぼ変わらない動作をす る。NSL には LDAP プラグインもあるので、Internet コントロールパネル の Advanced タブにあるHosts 設定で指定した LDAP サーバに基づいた neighborhood も作ろうとする(Advanced タブが見えない場合には、 Internet コントロールパネルのEdit メニューにある User Mode コマンド で Advanced モードに切り替える必要がある)。指定した LDAP サーバに 接続できたとしても、ネットワークブラウザの LDAP リソースリストは役 に立たないに等しい可能性がある。メールアドレスはインターネットリ ソースファイルとしてではなく全く新しい neighborhood として現れ、こ の中にはまた LDAP ディレクトリ情報が丸ごと収められており、そのまた 中に ... という具合に延々と続く。LDAPアイテムと関連のある URL は別 途リストアップされるのでさらに混乱が深まる。

ネットワークブラウザは、TCP/IP コントロールパネルに入力した検索パス 情報に基づいても neighborhood を作ろうとする。ここには SLP を利用し て見つけたサービスのすべて(今のところは TCP 経由の個人ファイル共有 と個人 Web 共有だけということになる)と DNS が表示される。残念なが ら DNS を使って“発見”できるサービスは、サーバの管理者がドメイン認 識サービスに TXT レコードを作ってあるものに限られる。こレコードの フォーマットは Apple の NSL マニュアルにひっそりと書かれている。 AppleTalk を嫌うネットワーク管理者なら、DNS ゾーンにサービスへのポ インタをわざわざ書き込むなどということはしてくれないだろう。

<ftp://manuals.info.apple.com/Apple_Support_Area/Manuals/software/ NSLAdminGuide.pdf>

要するに、Apple は Mac OS 9 とともに一定の条件下にある一部のユーザー には役に立つだろう抜本的なネットワーキング技術を導入した。だが、サー バとアプリケーション側での対応が進まぬ限り、こうした新機能の多くは ネットワークサービスへのアクセスにおける混乱を悪化させることになり かねない。

リモートアクセス -- また Apple は Apple Remote Access Personal Server の機能を Mac OS 9 に組み込んでおり、Macintosh が PPP や ARAP (Apple Remote Access Protocol) を使用したクライアントからのモデム コールに応答し、ローカルコンピュータまたはローカルネットワーク全体 へのアクセスを可能とした。これによって Mac OS 9 は Windows 98 に搭 載されたダイアルアップアクセス機能と肩を並べることとなった。「リモー トアクセス」はデスクトップ Mac にオフィスの外から PowerBook でアク セスしなけらばならない場合に便利であり、かつオフィス全体のネットワー クにも同時にアクセスすることを実現可能としている。

<http://www.apple.com/networking/applepersonalserver.html>

呼び出しへの応答は「リモートアクセス」コントロールパネルにて設定で きる(「リモートアクセス」メニューから「応答」を選択する)。「リモー トアクセス」は PPP サーバとして機能し、呼び出し主に、TCP/IP を用い て IP アドレスを割り当てることも、事前に設定した IP アドレスを使用 させることもできる。「ファイル共有」コントロールパネルの「利用者 & グループ」タブで、どのユーザーが「リモートアクセス」を使用して Macintosh にダイアルアップできるかを設定するのだ。ダイアルインの権 限はユーザー毎に与える必要があり、また、すぐさまアクセスを許す代わ りに、予め登録された電話番号にかけ直してユーザーを呼び出すよう設定 することもできる。Mac OS 9 の「リモートアクセス」の能力は、大勢のリ モートユーザーをサポートするには十分ではない - モデム一台をサポート するのみだ - が、最も直近の Apple やサードパーティのモデムスクリプ ト、DNS ネゴシエーションの改善、MS-CHAP のサポート、そして AppleTalk/PPP との互換性の改善を提供するものである。また「リモート アクセス」はログを保存するので、悪用している者がいないか、システム に潜り込もうとしている者がいないか、チェックできる。私個人は 2 年ほ ど試していないが、Windows や Unix マシンで PPP を使用し「リモートア クセス」に接続できない理由は何一つない。但し、AppleTalk サービスに アクセスするには AppleTalk ソフトウェアが必要だ。

今後の予定 -- 今回の詳細レポートでも Mac OS 9 での変化を十分網羅 できるものではない。将来の号で、さらにいくつかの機能を、Apple が Mac OS 9 の土台に敷いた Mac OS X の基礎と一緒に見ることにしよう。


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