TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#514/24-Jan-00

今週、Steve Jobs 氏が基調講演の最中に取り上げた市場調査の数字の背後 にある理論的解釈を Adam が突っ込んで取り上げ、これで我々の Macworld Expo 関連の記事は終了となる。他、寄稿編集者 Matt Neuburg 氏が学術関 係のあらゆる分野向けに多数の機能を提供する引用文献管理プログラムで ある Papyrus のレビュー記事で参加している。ニュースとしては、Apple 社の 1 億 8,300 万ドルにのぼる第一四半期の利益についての話題や Connectix 社の RAM Doubler 9 の無償アップグレードについて取り上げる。

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MailBITS/24-Jan-00

(翻訳:石川 篤利 <atsu@omame3.com>)

Connectix 社が RAM Doubler 9 の無償アップグレードを配付 -- 恐らく Mac OS 9 の出荷に伴う互換性の問題の餌食になった最も基本的なユーティ リティは Connectix 社の RAM Doubler 8 であった。同ソフトは Apple の 純正仮想メモリ機能をアプリケーションへのメモリ割り当て量を増やす別 の方法によって置き換えるユーティリティである。その方法は、まず最初 に他のアプリケーションが使用していないメモリを再利用し、次に使用中 のメモリを圧縮することによって使用メモリを少なくし、最後にはメモリ の内容をディスク上に掃き出す。(詳しくは TidBITS-439 の“RAM Doubler 8 無償アップデート”および TidBITS-351 の“RAM Doubler 2” を参照のこと)Connectix 社は新しい機能の追加ではなく RAM Doubler を Mac OS 9 へ対応させる RAM Doubler 9 への無償アップグレードの配付を ようやく開始した。もしあなたが Mac OS 9 にアップグレードしてからと いうもの RAM Doubler が使えずに寂しい思いをしているのだったら、これ は十分にダウンロードする価値がある。非常に残念なことには、Connectix 社は SpeedDoubler 8 と Surf Express Deluxe については Mac OS 9 への アップグレードの予定がないことも発表した。 [ACE]

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=04992>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=00837>
<http://www.connectix.com/products/rd9.html>
<http://www.connectix.com/support/macos9.html>

Apple 社が 1 億 8,300 万ドルの利益を計上 -- Apple Computer 社は同 社の 2000 年度の第一四半期において 1 億 8,300 万ドルの利益を計上し た。Apple 社の出荷台数は昨年同時期に比べて 46 パーセント増であった が、Apple 社はこの四半期で(700,000 台の iMac と 235,000 台の iBook を含む)140 万台近くを売り上げ、その内の 51 パーセントは海外での販 売であった。Apple 社は 36 億ドルのキャッシュおよび短期投資を有して おり、在庫保有期間を一日未満で四半期を終えた。これらの数字は大変健 全であるのだが、いくつかの巨大な一時的費用を除いた利益は 1 億 7,800 万ドルとなる。Apple 社は ARM Holdings 社の株式 500 万株を総額 1 億 100 万ドルで売却し、600 万ドルのリストラクチャリング費用を計上し、 帰って来たリーダー、Steve Jobs 氏のために 900 万ドルの“役員報酬” を割り当てた。同氏には Gulfstream V ジェット機と Apple 社の株式 1,000 万株のストックオプションが贈られた。これはパートタイムジョブ としては悪い報酬ではない。 [GD]

<http://www.apple.com/pr/library/2000/jan/19q1results.html>

アンケート結果:Aqua に向かって泳ぐ -- たった一度のライブでのプレ ビューの後、Mac OS X 用の Apple の新しい Aqua インターフェースは “Jolly Rancher インターフェース”から New Coke という的外れに等し いものまで、あらゆる烙印を押された。さて、TidBITS の読者は先週我々 が尋ねた“Apple の新しいインターフェースをどう思うか”というアンケー トに様々な意見を投票してくれた。合計 1,005 件もの反応の内、40 パー セントが新しいルックスが気に入ったと答え、34 パーセントはかなり水っ ぽくて OK だと答え、22 パーセントが“あまり気に入らない”と答え、そ して 4 パーセントだけが露骨な嫌悪を示した。Mac OS X は次の 6 ヶ月程 の間は出荷の予定がないのだが、多くのユーザはこの流れに喜んで乗ろう としているようである。 [JLC]

クイズのお知らせ:Windows に 電子メールの添付書類を送るには -- ク イズを再度出題しよう。さて、今週の質問は多くの初心者ユーザを(そし て多くのベテランユーザを)困らせるものである。Mac ユーザ向けにファ イルを E メールに添付することは、特に現代の電子メールプログラムを使 用している人々にとっては、通常何でもないことである。しかし Windows ユーザに電子メールでファイルを送るには、何が最も適したエンコード方 法だろうか。これはトリッキーな質問であるが、もし我々のホームページ であなたの知識をテストすれば結果のページでたちどころに正解が分るよ うになっている。 [JLC]

<http://www.tidbits.com/>


Jobs の数字を探る

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:尾高 里華子 <rikako@pobox.com>)
(  :亀岡 孝仁 <tkameoka@fujikura.co.jp>)

Steve Jobs 氏はサンフランシスコで開催された Macworld Expo の基調講 演の冒頭の 5 分ほどを、Apple 社に関する数字の話に割いた。これらのほ とんどが市場調査の統計から慎重に選ばれたもので、無味乾燥な財政報告 ではけっしてなく、むしろ同社の現在の戦略と方向性をどのように正当化 しているかを現すものだった。Mac コミュニティにとって重要な数字はど れであるかと、Jobs 氏がそれを取りあげで紹介した理由を見ていこう。

その前に、Macworld での数字の話にこれほど注目するのを不審に思ってい る方がいるかも知れないので少し説明をしておこう。基調講演は大衆メディ アが特に注目しているものであり、Jobs は聴衆者である彼らへ向けたス ピーチの重要性を理解しているのだ。はっきり言うと、数字は書き留めや すいし覚えやすいものなので、大衆メディアの記者がそれをもとに記事を 簡単に書くことができる。Jobs が講演で真っ先にポジティブな結果を慎重 に紹介したのは、プレス受けすることを狙ってのことにちがいない。Apple が市場で叩かれ続けていたのはほんの数年前のことであり、Jobs はプレス トとしっかりとした関係を保ちたいと願っているだろうし、記者達が質問 さえもできないフォーラムで受けの良い数字を餌代わりにまくのは最善の 手である。

ポータブルおよびコンシューマー人口 -- Jobs はまず 11 月の米国内小 売り市場のシェアの 11 % を占めた iBook と PowerBook から話を始めた。 iBook の数字に関しては特には触れなかったが、Jobs は PC Data による と iBook は 10 月および 11 月の合衆国小売り市場において販売トップの ポータブルだったことを付け加えた。このようなやり方で数字を挙げるの には 2 つの目的がある。(iBook が丸みを帯びた形と新しくなったスペッ クのために最近批判の的になっているのに対抗すべく)iBook 人気を強調 し、8 ヶ月早く登場した PowerBook ラインの相変わらずの強さに賛同を得 ることだ。新 PowerBook がこの Expo で発表されると噂されていたことへ のジャブになったかもしれない。

iBook 購入者の 56 % が最初の個人用ポータブルマシンとして購入したと いう Apple の調査も iBook への批判に対する答えだった。この数字はコ ンシューマ向けラップトップを作るという Apple のアプローチの支持にも なる。このマーケットの需要には Apple も含めたコンピュータメーカーは 今まで目を向けていなかったのだ。

先週 Apple の四半期報告の中で発表された数字では、Apple のビジネスの 方向性がさらに窺える。同社は 2000 会計年度の第 1 四半期に約 1,377,000 台の Mac を出荷した。内 iMac は 700,000 台、iBook は 235,000 台であり、合計するとキャンディカラーの Mac が 935,000 台と なり、これは全体の約 68 % に及ぶ。つまり、Apple はコンシューマー向 けシステムから一番儲けているということになる。もちろん、同社のプロ 向け Power Macintosh G4 ラインは供給問題を抱えており(Jobs は G4 に 関する調査の数字を出さなかった)、現行の PowerBook G3 は Mac ライン の一番の老兵であり、間もなく交代要員に取って代わられるという噂に対 抗しなければならなかった。次回の四半期報告ではプロ向けのラインが伸 びるであろう。それでも、Apple が収益をもたらし力を与えてくれている コンシューマー市場に力を入れ続けるのに異議を唱えることはできない。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05615>

新 Mac ユーザー -- 次に、Jobs は iBook や iMac の購入者について取 りあげた。iBook 購入者の 11 % が初めてコンピュータを買った人であり、 PC ペースの Windows からの乗り換え組みが 17 % であった。iMac の方の 数字はさらに高く、初めてコンピュータを購入した人が 30 %、Windows マ シンからの乗り換え組みが 14 %となった。言い換えれば、iBook 購入者の 四分の一以上と iMac 購入者の約半数が新に Mac プラットフォームにやっ て来たわけで、ここが Apple が強調したい点でもある。さらに、同社は iMac 購入者の 67 % がほかのコンピュータをまったく考慮しなかったと 言っている。

多くのメディアが Apple の復活を Macintosh に肩入れしている人達から の需要が高まっておこったものとして報道していた。だが、Apple はそう いった支持者でない層の人達が占める iBook と iMac 購入のパーセンテー ジを見せて、既存の Macintosh 所有者は依然としてプラットフォームに対 する忠誠を持っているが、何十万人という新規の Macintosh ユーザーを獲 得したのは iMac と iBook だと言うことができる。顧客層が広がったこと はいろいろな点で意義深い。株式評価に良いほうに働き、マスメディアに 良い記事を書いてもらえる(また、新に Macintosh 特集を組もうという気 になってくれる)。デベロッパーが Macintosh をサポートしようという気 になってくれる。さらには、既存の Macintosh ユーザーが寂しい思いをし なくてすむ。

利用の仕方 -- Jobs は次に AirPort ワイヤレスネットワーキング、 iMac DV のデジタルビデオ機能などで Apple がハードウェア機能に明確な 立場をとっていることを取りあげた。iBook オーナーの 16 % は AirPort カードをインストールしている。AirPort カードは iBook が複数台ある か、AirPort Base Station と組み合わせないと利用できないのだから、こ のパーセンテージの高さは驚きである。かつて Macintosh のネットワーキ ングが簡単であるにも関わらず、Apple は LocalTalk や Personal File Sharing のような機能の宣伝にほとんど力を入れていなかったのだが、今 回 AirPort に力を入れていることは見ていて嬉しい。Tonya と私はここ数 週間 iBook と AirPort Base Station を利用しいるのだが、完全にワイヤ レスネットワーキングにはまってしまっているこを白状しなければなるま い。もっとも現在の AirPort ソフトウェアにはうっとうしい問題があるの だが。

一方で、Jobs 氏は iMac DV ユーザーの 10 パーセントはデジタルムービー を作ったことがあり、22 パーセントはするつもりだと述べた。明らかに彼 はこれらの数字は言及するに値すると思ってのことであろう。私自身は少々 驚いた、というのも、Apple 社のデジタルビデオに対して示した入れ込み の度合いと iMac DV の値段からいえばこれらの数字は低いと思うからであ る。もし他意はないとすれば、Jobs 氏が iMovie を使う つもり の iMac DV オーナーのことについて触れなければならなかったという事実は、Apple 社自身が実際に iMovie を使ってくれたのはたったの 10 パーセントであっ たことに驚いていることを物語っているのではないだろうか。

デジタルビデオに関する TidBITS のアンケートでの圧倒的な興味の強さと (回答者の 75 パーセントがまあまあ興味がある、あるいは非常に興味が あると答えている)、TidBITS Talk での関連する論議からして、実際に ムービーを作ったことのある iMac DV オーナーの数はもっと多いだろうと 想像していた。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05622>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=814>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05601>

どうしてこんなに数字が低いのか?iMovie は使い易いけれども、高価なデ ジタルカムコーダを必要とするし、すでに従来型のカムコーダを持ってい る人は、iMac DV に加えて新たなカムコーダを買う決心をするのは容易な ことではないであろう。この壁を乗り越えられたとしても、デジタルビデ オを使いこなすには最も貴重な生活必需品である時間を必要とする。例え ば、我々は結構年季の入った VHS-C テープを使う JVC のカムコーダを持っ ている。初めて親になった者として、Tonya と私はこの旧式の機械のほう がデジタルビデオよりもいくつかの点でより役に立つと思った、それは単 純に Tristan をビデオに撮りそのテープを親戚に送ってやれば皆に見ても らえるからである。そのやり方は簡単で早い、もちろん iMovie を使えば より高品質のムービーにすることもできるが、Tristan のデジタルスチル を Web にアップロードするのが精一杯で、彼のデジタルムービーの編集を するまでとても手が回らない。

iける iンターネット -- Jobs 氏は次に、iBook や iMac のインターネッ トを焦点にすえたことを擁護するべくいくつかの数字をならべて、その中 で iBooks の所有者の 90 パーセントはインターネットに接続しており実 に 70 パーセントはオンラインで商品やサービスを購入したことがあると 言った。これらの数字も iMac に関しては多少違ったものとなった、イン ターネット接続は 93 パーセント - 62 パーセントは手にした最初の日に 接続した - そして 57 パーセントがインターネット上で買い物をした。思 うに、iMac の所有者のオンラインショッピングの数字が低いのは、iMac がより財布の状況の厳しいそしてインターネット経験の少ないユーザーを 惹きつけていることと関係しているのではないだろうか。結局のところ、 11 パーセントの iBook 購入者にとっては初めてのコンピュータであった、 一方で 30 パーセントの iMac 購入者が最初のコンピュータとして購入し た。

要するに、これらインターネット利用やショッピングに関する統計は、 iBook や iMac の所有者は確かにインターネットを覗くだけではなくイン ターネット上でお金も使うことを示している。このことは Wall Street の アナリストに対して Apple 社がいわゆる ”ドットコム” カンパニーであ ることを印象づけるのに役立つであろうし、また大手の Web サイトに Windows ユーザーに対してだけではなく Mac ユーザーに対するデザインに も力を入れるよう仕向けてくれるかも知れない。私は今でも時々、人々か ら彼らの Web デザイナーに対してもっと Mac ユーザーにアクセスしやす くするよう要請するために使うからと言うことで Macintosh とインター ネット利用に関する統計データはないかというメールを貰うことがある - これらの数字が役に立つことを切望する。

最後に、Jobs 氏はこの四半期だけでオンラインの Apple Store は 300 百 万ドル、年率では 1000 百万ドルの売上げをあげたことについて語った。 この四半期の総売上げが 2340 百万ドルであったから、Apple 社の商売の 13 パーセントはインターネットから来ていることを物語っている。私は、 iMac や iBook の初めての購入者のどのくらいが Apple Store から購入し たか、そして PC からの乗換組はどうだったのか知りたいと思う。

メッセージはメッセージである -- 次は舞台裏の番である。多くの会社 が、とりわけそれ相当の資源をマーケティングに費やしている大企業は、 新製品の発売時やその他のマーケティングイベント時に合わせて、”マー ケティングメッセージ”を創り出す。記者会見やそれに続く顧客に対する 公開プレゼンテーションでの真の目的はその製品を見せること以上に、こ のマーケティングメッセージをついにはメディアの中でもユーザーの中で もその製品の ”言葉”となるまでじわじわと深く浸透させることである。 私のこれまでに出席したなかで、大変熱心なプレゼンテーションを中断し て次の様に叫びたいと思った記者発表が数多くある、”ええ、あなたのゴー ルは今日のユーザーのニーズを満たしかつ Apple 社の最新の技術のすべて をサポートする業界で一番の製品を各種のキャンディコート色で出すこと であることはわかりました。それは誰にでも当てはまることなので、ここ では、あなたのプログラムの新機能について話できませんか?” と。

この方法での問題点は、優秀なジャーナリストや思慮深いユーザーは自分 で自分の考えを決めたがり外から操られているという感覚を嫌うことであ る。しかしながらいつもそうならなければならないわけではない。戦略的 なマーケティングのプロならば - この表現が当てはまる人がいるとするな らばそれは Steve Jobs 氏のことである - もっといい方法は注意深く選択 された生の材料を提供し人々にはそれを元に自分の意見を形成して貰う様 にすることであることを理解している。通常よりもより詳細な結果を提供 することで、Jobs 氏は一方でできの悪いマーケティングメッセージのアプ ローチを避けながら、片方で意見を建設的な方向へと導こうとしていた。 結果的には効をそうした様である - Jobs 氏の基調講演以来 Apple 社は 好意的な報道と口コミをふんだんに受けている。


最良の脚注の友:Papyrus 8.0.7

by Matt Neuburg <matt@tidbits.com>
(翻訳:西村 尚 <hisashin@hotsync.co.jp>)
(  :松岡 文昭 <mtokfmak@mxa.meshnet.ne.jp>)

古典文学の仕事を通じて、学術論文著述のもっともやっかいな部分は引用 文献の管理であった。私の論題は特に悪夢のようだった。多くの人文科学 の博士号論文と同じく、既存の学問の広範な批評を含んでいた。何百もの 論議を呼んだ問題に関する主張と反論の完全な歴史である。私は外側に穴 のついた特大のメモカードの分厚いコレクションを維持管理していた。V 字型のパンチと編み針が所与の問題を支える参考文献を集める助けとなっ た。Dreaded Thesis Secretary が形式を理由に全体をはねつけてしまわな いように、タイプ原稿は脚注と引用についての公式な書式に正確に従わな ければならなかったのだ。

Research Software Design 社の Papyrus のようなプログラムを使えれば よかったと心から思う。

<http://www.rsd.com/>

私は引用文献管理の商用ソフトウェアを使ったことがなかったので、 Papyrus を学ぶ前に私の論題と他の著述で私を助けてくれる理想的なシス テム思い描いていた。それは次のようなものであった。

Papyrus はこれらをすべて行い、5 番目の機能を追加する。このコンピュー タ時代には明らかに有用だが、私のころにはなかったものだ。

次に、これらの各見出しにしたがって Papyrus を吟味しよう。

データベース -- Papyrus のデータベースは文句なくすばらしい。イン ターフェースは公正かつ直感的で、2 種類の主ウインドウ周りに置かれて いる。Reference は、ここで個々の参考文献を編集し、Group は、格納済 みの参考文献の部分集合を一覧表示する。ドラッグ ドロップ、関連ウイ ンドウを開くウインドウ内のダブルクリック、キーボード操作など挙げれ ばきりのないきちんと実装された便利な機能といった仕掛けをふんだんに 使っている。

Papyrus はどのフィールドがそれぞれ適切な資料タイプ(書、記事、日誌、 書中の記事など)かを知っていて、必須フィールドやオプションのフィー ルド、あまり必要でないのでユーザーが表示させるまで隠されているフィー ルドとしてかしこく提示方法を使い分ける。テキストフィールドは文字飾 りと WorldScript に対応している。フィールドと資料タイプは追加できる が、おそらくその必要はないだろう。

編集するときには、Papyrus の“知性”がミスと不要な作業からあなたを 救う。たとえば、フィールドが反復するかどうか(たとえば著者は複数の 可能性がある)を知っていて、一つに入力すると自動的に新たなフィール ドができる。著者フィールドでカンマを省略した場合は(Papyrus が姓、 カンマ、名を想定していることを忘れたことになるので)、注意をうなが すダイアログが現れる。名と第一イニシャルの間を自動的に判別し、もう 一つのカンマが姓の後の付帯語(“Dumas, Alexandre, Jr.”)だと判断 し、名前の最初を大文字にしてくれる、等々。

Papyrus のデータベースは真にリレーショナルであり、透過的で自動的な 方法をとる。したがって、たとえば、参考文献全部を入力している際、 Papyrus は著者の名前を内部的に分離された構造の中に集めている。その ため、追加した情報はある著者に連結させられる。さらに、名前を変更し てその変更をこの名前を使うあらゆる参考文献に伝播させることができる。 また、これは知的な自動照合を可能にする。一つの参考文献に著者を入力 しておけば、著者に名前の最初の数文字をタイプするだけでよい。

グループを手動でまたは照会を通して整理することができる。グループと 照会はどちらも保存可能だ。もっと重要なことに、 一つの プロジェク トの参考文献を一覧表示するグループを簡単に保存し開けるので、 すべての プロジェクト用の参考文献を含むたった一つのデータベースを 持つこともありそうだ。つまり、一度に参考文献すべてに渡って Papyrus のリレーショナル機能を利用できるわけだ。

引用の作成 -- Papyrus は Format を通してフィールドから引用を作成 する。Format は、一部は一連のダイアログとサブダイアログを通して、一 部は希望の出力を記述する grep に似た式を通して入力する一組のインス トラクションである。したがって、たとえば、姓とカンマとイニシャルが それぞれの後に終始スペースつきで表示されなければならないとしたら、 ダイアログをたどって希望のオプションをチェックする。しかし、記事が 作者、ピリオド、スペース、斜体字の日誌名、カンマ、連載の場合は連載、 太字の巻番号などとして表示されなければならないとしたら、Nisus の PowerFind の語法のような式を作成する。Papyrus には American Medical Association、Forestry Chronicle、Chicago Manual、Turabian などのさ まざまな引用スタイルに相当する多数の形式がついてくる。これらの一つ を使ったり変更したり、または一から自分固有のものを作成することがで きる。

これは原則的によいのだが、希望の出力を記述する方法に十分な一般性が 欠けていることが気になる。Papyrus はあなたがしたいと思うことをすべ て知っている、つまり、これらの制限内に留まればそれでよいと主張して いるかのようなのだ。個人的には、権限をユーザーの手に置くプログラム の方が好きだ。この問題は次のような原因に由来する:

ワードプロセッサとの統合 -- 基本的に、Papyrus はほぼすべてのワー プロと連携が取れるようになっている。Papyrus の参考文献をワープロ文 書にコピー・アンド・ペースト(またはドラッグ・アンド・ドロップ)で き、結果は所定のフォーマットでの引用となる。そして、参考文献の全グ ループを引用文として、MacWrite や RTF といった、ほとんどのワープロ が取り込みできる所定のフォーマットで書き出すことができるのだ。

だが、もしあなたのワープロがスクリプト可能な Nisus Writer や Microsoft Word なら Papyrus はもっと賢く動作する。文書中に参考文献 用のコード化された略字を入れることもできる。例えば、ID 番号が 6 で ある参考文献を指す [[6]] といった具合だ。文書を書き終えると、Papyrus は自動的にあなたの文書を調べ、これ等略字をもとに引用と引用文献表を 作成するのだ。例えば、もし [[6]] が私の Lysistrata の翻訳なら、 Papyrus はそれを "(Neuburg 1992)" で置き換え、添えるべき引用文献の 中のすべての引用を取り込んでくれるのだ。私が試したところ、これは Nisus Writer より、むしろ Word の方が上手くいくようであった。

これは便利だ。しかし、十分ではない。もし Papyrus の置き換えアルゴリ ズムやワープロをスクリプト操作していて、バグに遭遇するとどうなるだ ろう?(私にはこの経験がある。)また、AppleWorks のような違ったワー プロを使っていたらどうだろう?そのような問題は手動でももちろん回避 可能だが、単純にすべての参考文献を必要なフォーマットで書き出し、文 書中に再配置することもできるのだ。だが、もっと良い方法は Papyrus 自 体がスクリプト対応となることだ。それなら、例えば、現在の選択範囲の 中の番号を調べ、Papyrus からその参考文献の引用を指定のフォーマット で取り出し、文書中にそれをペーストするような AppleScript や OneClick スクリプトを書けば良いとあなたは言うかもしれないが、これは本質的に は Papyrus ができない箇所をあなた独自の自動処理で補強するものである。

しかし Papyrus はスクリプト対応ではない。AppleWorks はスクリプト制 御が できない と、Papyrus のドキュメンテーションが不評を述べてい ることを考えると、これは皮肉なことだ。もう一度言うが、Papyrus はユー ザーのコマンドを受け入れるより、すべての力を自分が保持し、ユーザー が見たり、修正したり、または迂回したりすることができないスクリプト を通して他のプログラムを操作したいのだ。

ノートを取る -- 一方で Papyrus は、そのクエリーのパワー故に、ノー ト取りプログラムとして前途多望だ。すべての参考文献に複数のキーワー ドを持たせることができ、参考文献やキーワード間でリレーションが定義 ができるのだ。そして、それらをクエリーに使用することができる。例え ば、「矛盾」という照合リレーションを定義すると、(例えば)キーワー ド「決定論」を持つ参考文献のみではなく、その見つかったセットの中の 参考文献と矛盾するすべての参考文献を探し出すクエリーが実行できるの だ。この論争的に関連する構図を呼び出す驚くべき能力は、私に MacEuclid を思い起こさせた。私はその類には再びお目にかかることはないだろうと 思っていたのだ。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=02832>

だが、手短な照合フィールドの入力にとても適した当該ウィンドウは、一 つか二つの文章より長いコメント用には扱いづらく、一つの句がもう一つ の参考文献へのリンクになるような、本来のハイパーテキスト機能も持ち 合わせていない。故、Palimpsest といった専用ツールや、アウトライン用 アプリケーションと比べても、私にとって Papyrus はノート取りに適して いないのだ。Papyrus は完全に改訂された「ノートカード型」インター フェースが必要だし、さらに、フィールドを異なったアプリケーションか らノートファイルを開くためのエイリアスとすることで、MORE、Helix、ま たは In Control といったプログラムからキューを得ることも可能となる だろう。Papyrus は、もう一度言うが、他のプログラムとのそのような連 携の欠如故に、あなたが何をしたいか、そしてどのようにしたいかを、あ なたよりもより良く知っていると断言しているように思える。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=00752>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=02381>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=02443>

取り込み -- Papyrus はテキスト形式の参考文献を自動的に照合フィー ルドに取り込むが、これはまた Formats によるもので、同じ欠点に悩むこ ととなる。例えば、入力式言語(出力式言語と同じであり、非常に奇妙な デザイン判断だ)は "either/or" や "shortest match" の構文を欠いてい る。本来の grep がここでは本当に役立ったであろう。Nisus Writer の grep の方が Papyrus よりも遙かに上手くテキスト形式の参考文献を所定 の形式に再アレンジしてくれるのだ。

細心の注意は怠らずに -- Papyrus はすばらしいプログラムだ。信頼で き、よく考えられ、オリジナルで、巧妙、且つ明快なものだ。また学習も 容易で、印刷されたマニュアルは私が見たものの中でもベストなもので、 すばらしいオンラインヘルプとバルーンヘルプを有している。ここで述べ るには十分でないほど素晴らしいタッチも施されている。私個人のライブ ラリには Papyrus が真似できないような引用文献スタイルを持った本があ るが、それは比較的重要でなく、最後に手で調整することはまったく受容 できるものだ。もしたくさんの参考文献を管理し、特定の標準フォーマッ トで引用を作成し、Microsoft Word を使っているならば、ぜひ Papyrus を試してみるべきだ。

しかし、そのような優秀な機能を持ちながらも、Papyrus は私の夢の引用 文献マネージャとはなり得ない。Papyrus を調べるにつれ、私の作業にとっ て重要な一般的性格、つまり私が主要な作業ツールに求めるオープンさと プログラムの可能性、を欠くことが分かったからだ。引用文献システムは 基本的には単なるデータベースであり、すでに私はいくつかのデータベー スアプリケーションやその他のスクリプト可能なユーティリティを持って いる。故、私はこれらを使用して私が望むように動作する引用文献管理シ ステムを構築できるのだ。今の時点では、そうしなくても良いだけの理由 が Papyrus にあるのか分からない。しかし Papyrus がさらに洗練された フォーマッティング言語や、もっと良いノート取り用インターフェースを 備え、そしてスクリプト対応となり、押しつけがましさが減少されれば、 私は夢中になるだろう。

Papyrus は 90 ドルで、印刷されたマニュアル込みの場合は 140 ドルと なっている。参考文献数が 200 に限定された無償デモ版はダウンロードが 可能だ。Papyrus は System 7.0 かそれ以降、そしてインストールには約 11 MB(すべてのオンラインヘルプを入れると約 20 MB)が必要だ。

<http://www.rsd.com/Mac.html>


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