TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#517/14-Feb-00

今週は、Eudora 4.3 のリリースのニュースを取り上げた。これに加えて、 Eudora の主たる著作者である Steve Dorner 氏の独占インタビューも行っ た。また、有料で提供されていた機能を無料で得る代わりに広告を見ると いう考え方についてのあなたの意見をお尋ねする。さらに、Matt Neuburg 氏がお得意の Deneba 社製 グラフィック界の Swiss Army ナイフである Canvas 7 についてレビューを行う。そして、MailBITS では、最適化され た JPEG ファイルを保存するための BoxTop Software 社製の ProJPEG Photoshop プラグインソフトのアナウンスと、先週のアンケートのまとめ を行っている。

目次:

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MailBITS/14-Feb-00

(翻訳:三好 泰子 <yokomo@mio.to>)
(  :亀岡 孝仁 <tkameoka@fujikura.co.jp>)

ProJPEG 4.0 圧縮コントロール機能を追加 -- BoxTop Software 社が ProJPEG 4.0 をリリースした。これは、最適化された JPEG 画像を保存す るための Photoshop プラグインソフトである。BoxTop 社の PhotoGIF (「PhotoGIF で手早く GIF 作成」 TidBITS-479 参照) と同様に、ProJPEG のイメージ圧縮は、Photoshop に組み込まれているフィルタよりも優れた 性能を持ち、Web のための小さいファイルをつくる。バージョン 4.0 で は、Target 機能が追加されており、これは、ユーザーが選択したファイル の大きさに合わせて ProJPEG が圧縮の量を計算する機能である。また、前 面とか背面と指定されたイメージのエリアに対して、様々な設定を適用さ せることができる。(たとえば、写真の背景に対してより圧縮をかけたり、 前面のオブジェクトには、あまり圧縮をかけないようにする事が可能であ る)ProJPEG 4.0 は、ダウンロード容量が 580 K で、価格は 50 ドル。 ProJPEG の前バージョンを持っていれば、アップグレード価格は、20 ド ル。[JLC]

<http://www.boxtopsoft.com/pj.html>
<http://www.boxtopsoft.com/pg.html>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05381>

アンケート結果: Macintosh の持ち主 -- Steve Jobs 氏の Macworld Expo 2000 での基調講演では Apple の持ち主に関する印象的な数字が高ら かに発表された:およそ iBook 購入者の 4 分の 1、iMac 購入者の半分は Mac を初めて選んだ人達であった。しかし Apple の繰り返し顧客は伝統的 に、Apple 社の将来が覚束ない時でさえ Mac を買い続け同社の屋台骨を支 えてきた。そこで我々は尋ねた:“これまでに個人的に、職場でまたは家 庭で、自分自身の用途のために何台の Mac を購入したか?” 2,300 を超 える回答者の中でほぼ 3 分の 2 が 2 から 5 台の Mac をこれまでに購入 している。他の回答もほとんどベル型分布にそっているが、目につく例外 としては約 8 パーセントの人がこれまでに個人用として 10 台以上の Mac を買ったとしている。これらの結果は Apple 顧客の忠節度を示すだけでな く、Apple の売上数字を裏付け過半数の Macintosh の売上は既存の Apple 顧客から来ていることを示している。Apple 社は間違いなくこのプラット フォームへの転換者を惹きつけて Macintosh 市場を大きくして行かねばな らないが、転換者を惹きつける政策がもっと価値のある長年の顧客の犠牲 の上に成り立つような事のない様しっかり注意すべきである。[JLC]

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=935>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05780>

アンケート予告:広告入り -- 今週の Eudora 4.3 のリリースは第一級 のプログラムが、広告を見る事と引き換えに有料で提供していた機能を基 本的に無料で使えるようにした最初のものとなる。読者は次の記事で、 Steve Dorner 氏と Qualcomm 社は、なぜ Eudora 4.3 の Paid と Light 使用モードに加えて Sponsored モードを持たなければならないと感じる様 になったかについて読んで欲しい、ところで皆さんはどう思いますか?ス クリーンの一部を広告に取られる事になっても、そうでなければ有料とな る機能を使えるオプションがあるのは良い考えだと思いますか?ここで気 をつけてほしいのは、我々はソフトウェアの中に広告を入れるのが本質的 に良い事か悪い事か聞いているのではなく、ソフトウェアに対し自分自身 で払う代わりに広告を見ることができる オプション が好きかどうかを 聞いているのである。さらに、今のところ 50 ドルの Eudora しか例がな いが、質問はアプリケーション全般についてであることに気をとめてほし い、そしてさらに発展させて、10 ドルあるいは 200 ドルだったらどうか、 たまにしか使わない場合あるいは毎日使うものの場合はどうかまでひろげ て考えて見て欲しい。あなたの意見を我々のホームページで投票して欲し い(アンケートの部分がウィンドウに見えていない場合は下までスクロー ルダウンするのを忘れないで)! [ACE]

<http://www.tidbits.com/>


InterviewBITS:Steve Dorner 氏を迎えて

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:尾高 里華子 <rikako@pobox.com>)
(  :尾高 修一 <shu@pobox.com>)

この記事が出るころには、アプリケーションソフトの新たなビジネスモデ ルを取り入れた Eudora 4.3 が Qualcomm 社からリリースされているだろ う。広告を目にする代わりに商用版に搭載されている全機能を無償で利用 できるという選択肢が追加されているのだ。Eudora Pro 4.2 のユーザー (詳しくは“Eudora Pro 4.2”の一連記事を参照のこと)にとってはマイ ナーアップデートとなるので、Eudora Pro 4.2 の登録ユーザーは、Eudora 4.3 の“Paid モード”に無償でアップグレードできることになっている。 一方、現在 Eudora Light 3.x を利用している人にとっては、このアップ グレードが持つ意味は大きくなる。Eudora Light は 2 年間アップデート されていなかったのだが、Eudora 4.3 の “Light モード”はその間に向 上した分の数多くの恩恵にあずかるようになる。また“Sponsored モード” を利用すれば無償で Eudora の商品版の全機能を利用できる。詳しくは TidBITS-509 の“無料利用モードが加わった Eudora 4.3 パブリックベー タ”を参照いただきたい。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbser=1147>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05711>

50 ドルの Eudora 4.3 の使用必要条件は、PowerPC ベースの Mac、1,800K の RAM、System 7.1.2 以降のシステム、Text Encoding Converterとなっ ている。ダウンロードサイズは約 6 MB である。Qualcomm 社が火曜日にリ リースするのはフルバージョンの Eudora 4.3 であることにご留意いただ きたい。すでに Eudora 4.x のユーザーだという方は、今週末に出る予定 のアップデータを待って、Eudora 4.3 にアップデートし“Paid モード” に登録することになる。

<http://www.eudora.com/>

X-Eudora-Settings List をメールで入手 -- 私の著書『Eudora Visual QuickStart』の読者および Mac 版の Eudora Pro 4.2 または Eudora 4.3 を利用する方の便宜を図るべく、x-eudora-setting URL を網羅した自動応 答メールを作成した。これを利用すると Eudora の目に付かない数多くの 設定ができるようになる( TidBITS-489 の“ますます達者な Eudora Pro 4.2”を参照のこと)。同様の情報が Qualcomm 社の Web サイトにも置か れているが、x-eudora-setting URL は Eudora にいるときだけしか利用で きないので、メールで 80K のリストを受け取ったほうが便利だと思う。ま た、私がこのような形でこのリストをお届けすることに関しては、Qualcomm 社から許可をいただいている。また、このファイルの冒頭で URL の使い方 を説明し、特に役に立ちそうな設定を少々紹介してある。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05477>

このリストをリクエストする際に、題目の欄に ADD という語を入れておく と、ドキュメントのバージョンが新しくなったときにアップデートを受け 取れるようにメーリングリストに加えられる(リストから自分を削除する のも同様に簡単であるし、アドレスは我々の個人情報に対するポリシーに 従い極秘扱いとなる)。<x-eudora-settings@tidbits.com> 宛にメールを 送ると、x-eudora-settings のリストを受け取ることができる。(ヒント :この記事を Eudora で読んでいる方は、上記のメールアドレスを Command + クリックすると、To の欄にそのアドレスが入ったメッセージができ る。)リストに加えてアップデートも受け取りたい方は、題目のところに ADD と入れて、<x- eudora-settings@tidbits.com> 宛にメールを送る。こ の情報が役に立ちそうな Eudora ユーザーがほかにいれば伝えていただき たい。

<http://www.tidbits.com/eudora/>
<http://www.tidbits.com/about/privacy.html>
<x-eudora-settings@tidbits.com>
<x-eudora-settings@tidbits.com?Subject=ADD>

では、インタビューを -- 今週は 1988 年に Eudora を生みだした Steve Dorner 氏の独占インタビューをお届けする。彼は現在もこのプログラムの 向上に力を注いでおり、最近は Qualcomm 社の社員のすばらしいバックアッ プも受けている。Steve はどんなソフトウェアにもつきもののリリース間 際の多忙を極める時期に自分の時間を捻出してメールで話をしてくれた。

[Steve] ある意味では、現実に即するという見方ができます。この現実と いうのは、お金を払って買うよりも広告付きで無料のものがよいという人 が多いということです。見本市のようなところで「広告付きの T シャツな んていらないよ。自分で 10 ドルだして買ったほうがましさ」と言う人を どのくらい目にするでしょうか。

もう一方で何事にもなびいていないという見方もできます。Eudora には今 まで通り購入するか、お金を払わずに限られた機能だけを利用するという 選択肢も残っているのです。違うことは、選択肢がもう一つ増えて、すべ ての機能は使うけれどお金は払わない、その代わり広告を見るというも選 べるようになったことです。

[Steve] ただのものがたくさんある中で生き延びなければならない。Eudora はほかに引けをとらない製品だと思いますが、お金を払うということをネッ クに感じる人がいるのです。これは購入してもらわずに、製品を作り続け るためのひとつの手段なのです。

[Steve] それは対象となる人次第でしょう。Eudora Pro 4.2 ユーザーに とっては、機能的にはさほど違いはありません。Link History ウインドウ や、入力したり返信したアドレスを覚えておく機能、あとちょっとした機 能などが新に加わりましたが。

Eudora Light のユーザーが Sponsored モードにアップグレードした場合 の違いは大きい。Sponsored モードでは Eudora Pro の全機能が使えるよ うになるのですから。つまり、スペルチェック、スタイル付き文章の作成、 インラインのイメージやムービーやサウンド、HTML の表示、ツールバー、 パワフルなフィルタリング機能等々めじろ押しです。広告は見たくないと いう人が、Light モードで利用していただく方にとっても、以前の Lignt 版よりもずっとパワフルになっています。

[Steve] この 2 つのプラットフォームの違いをそれぞれが反映しており、 開発チームはそれぞれを担当するように別れています。Macintosh のプロ グラムは Macintosh のプログラムらしくあるべきだし、同様に Windows のプログラムは Windows ユーザーの期待に応えるようにあるべきだと考え います。郷に入っては郷に従えと言われるように、それぞれに合わせなけ ればいけないのです。

皆さんからメールをいただいて面白いと思うのは、「Windows 版にかける のと同じぐらい Mac 版にも時間をかけてもらいたい」というメールと呼応 するかのように、「Mac 版にかけるのと同じぐらい Windows 版にも時間を かけてもらいたい」というメールが送られてくるのです。

[Steve] ええ、スケジュールやコンタクトなどをもっと取り入れる方法は 積極的に検討しています。特にワイヤレス機器のニューウェーブとも言え る状況で、かなり面白いことができる位置にいると考えています。

[Steve] Now Software の製品が Power On Software 社に引き継がれたこ とは良いことだったと思っています。これ以上申し上げることはありませ ん。

[Steve] Qualcomm が Eudora を買った理由は、実は同社が Eudora を使っ ていて、この製品が改良されつづけることを望んでいたからだと思います。 その昔には企業が自社用のソフトウェアを作るということも行われていた のです。

もちろん当時頭の隅に何らかの考えを持っていた人もいたかもしれません が、あの時点では極めて実用重視的な判断だったと思います。

ここで認識しておくべきなのは、あなたや私のような普通の人々は携帯電 話の 本当の 顧客ではないということです。本当の顧客とは地域の電話 会社で、こういった会社が人々がどんな電話を買っていいかを決めること ができるのです。そこで契約数を増やすためには大量消費型の電話機が必 要で、本当にスマートなデバイスをサポートするような“時間の無駄”は 避けたいのです。

というわけでスマートフォンが普及するまでにはまだしばらくかかるでしょ う。したがって電話で使う Eudora にもしばらく時間がかかることになり ます。

[Steve] TidBITS 読者の方々はご存じないかもしれませんが、PureVoice は Qualcomm の CDMA デジタル携帯電話と同じ技術を用いています。 PureVoice が真に効率的な電話とコンピュータ間の通信を簡単に行えるよ うにしてくれる日が来ることを願っています。たとえば電話でメッセージ を録音し、それをメールで送信するということを考えてください。あるい は留守電メッセージをメールプログラムで受け取ることを。

[Steve] 量はまさにその一つです。人々が受け取るメールの良は増大の一 途をたどっていて、それに対応せざるをえなくなっています。でもメール における問題を云々するより、メールを使って問題を解決するためのツー ルを提供するほうがエキサイティングなことだと考えています。Eudora 5.0 にはこうした方向性を持った楽しいものも含まれることになります。

[Steve] ええ、そういうプラグインの検討はしています :-) 隠しコマンド としては、Eudora でメールをチェックした後にアラートを表示するように 設定してある場合、「メールはありません」の封筒に実は文字が書いてあ るのです。ちょっと努力がいりますけど。これが加えられたのはほとんど のおちゃめが取り除かれたのと同時期だということは特筆しておいてくだ さい。

[Steve] それは Apple 次第ですね。Cocoa は Macintosh アプリケーショ ンにとっては完全な書き直しになるので、今のところそこまでやることに はならないでしょう。

Carbon 環境下での Eudora はしばらくの間作業をしてきましたが、率直な ところ Carbon はまだ私たちにとってはまだ未熟です。Eudora でできるこ とで Carbon では全くできないか、うまくできないことがたくさんあるの です。たとえば、Eudora はバッテリ使用時にどんなことをするかを賢く判 断することができますが、今のところ Carbon では Power Manager へのア クセスができません。こういうことを Apple に質問すると「アプリケー ションはそんなことをしなくてもよろしい」という回答を受け取っていた 時期がしばらく続きましたが、最近では事態は少し良い方に向かっている ようです。

XML(eXtensible Markup Language)、マークアップ言語を記述するための マークアップ言語で、データに関するメタ情報を定義することのできる話 題の言語。

[Steve] 『響きと怒り』...

HTML メール、HTML スタイルつきメールを送るもの。

[Steve] やむなし。

LDAP(Lightweight Directory Access Protocol)、ディレクトリ検索サー ビス。

[Steve] おえ。このアホな OSI プロトコルが流布する前に XML が流行ら なかったのは誠に残念。

IMAP(Internet Message Access Protocol)。これはバージョン 4 での名 称で、かつては Interactive Mail Access Protocol でしたが、POP のよ うにメールをクライアントにダウンロードするのではなく、メールをすべ てサーバに置いておくという発想。

[Steve] MIS

POP(Post Office Protocol)、シンプルかつ効率的なメール取得方式で、 今日でもインターネットで支配的なもの。

[Steve] ママと xx

APOP(Authenticated POP)、POP アカウントにログインする際に通常はた だのテキストとして送られるパスワードを暗号化するもの。

[Steve] 絶望的。認証データベースを APOP や cram-md5 などに変えるサ イトは少ないでしょう。当面プレーンテキストのままにしておき、9 月に RSA の特許が切れたところで全部 SSL を通すということになるでしょう。

SMTP(Simple Mail Transport Protocol)、あらゆるインターネットメー ルの基礎となるプロトコル。

[Steve] 制御不能。

SMTP AUTH、SMTP の拡張版で、スパマーによるサーバハイジャック防止の ため、ちゃんとアクセス権を持っている人だけが SMTP サーバを使ってメー ルを送信できるようにするもの。

[Steve] 不可避。

[Steve] どういたしまして。さ、新バージョンをアップロードしなきゃ。


まだ極楽とは言えない Canvas 7

by Matt Neuburg <matt@tidbits.com>
(翻訳:吉田 節 <benjamin.takashi@nifty.ne.jp>)

この 5 年間、私と Deneba 社、そして同社のドロー/ペイント統合プログ ラムである Canvas の関係は、さながらジェットコースターに乗っている ようなものだった。Canvas 3.5 には満足していた。私は好んで使っていた 古い SuperPaint の、優れた後継ぎとして使い始めた。Canvas は見事なイ ンポート/エクスポート機能を持ち、多くの困難な状況に対応できた。し かし Canvas 5 になって私は愛想をつかしてしまった。それは遅く、移植 もののようで、不安定で、判りにくいインターフェースだった。Canvas 6 に私は驚いたが、もう一度満足した。プログラムは徹底的に見直され、バー ジョン 3.5 の後継者にふさわしくなった。CorelDRAW や Corel PHOTO-PAINT(少し前にレビュー済み)ほどの強力さには欠けるが、Canvas 6 はシンプルで使いやすく、一般的な用途には充分で快適だった。私はた びたび Canvas 6 を使うようになった。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbser=1158>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05193>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=03174>

さて Canvas 7 だが、私は今度も満足しているが同時に戸惑ってもいる。 前のバージョンから進歩したのは確かだ。しかし進歩が雑多すぎるので、 このプログラムは完成品と思われる反面、方向性を見失っているようだ。 新機能は Deneba 社の Web サイトにリストがあるので、ここで単に列挙す るのは止めておこう。代わりに、それらを一般的に分類し、変更点がこの プログラムを正しい方向へ向かわせているか否かを評価してみる。(私の これまでの経験を知っておくには、ここで、以前のレビューと Deneba 社 の機能リストを見ておくとよいかもしれない。)

<http://www.deneba.com/dazroot/prodinfo/canvas7/features.html>

Workspace の整理 -- Canvas 7 を起動しても特に変わった点は見られな い。Canvas 3.5 から 5 へ、また 5 から 6 へのバージョンアップで行わ れたような、workspace の劇的な変更はない。しかし、すぐにインター フェースの数多くの細かな変更に気付くだろう。view のズーム率を数値で 変更するには、パレットを呼び出す代わりに、ウインドウのズーム値ボッ クスに値を直接入れればよい。見やすいようにウインドウを回転できる。 オブジェクトの整列と“smart mouse”はコンテクストメニューでアクセス できるようになった。Guideline の位置を数値で指定できるようになった。

ベジェ描画はいくつかの点で改善された。色付けされたノードとアンチエ イリアス処理によって、曲線は非常に見やすくなった。ノードを選ぶと、 そのノードのハンドルだけでなく、両隣のノードのハンドルも同様に明示 される。ノード数は自動的に最少化される。曲線の全部や一部を、複数の 点を通るように描くことさえできる。

障壁の除去 -- Canvas の最大の長所のひとつは、今までもそうだったよ うに、ひとつのページにベクトル(ドロー)、テキスト、ビットマップ (ペイント)の 3 種類のオブジェクトを共存させるやり方だ。前のバー ジョンはこれらのオブジェクト間の概念的な障壁を大きく減らした。そし て Canvas 7 はそれをさらに押し進めている。

たとえば、以前のバージョンでベジェ曲線をフリーハンドで描こうとする と、あなたはベジェの考え方に従わされ、曲線を変型するにはノードとハ ンドルを使うことを強制された。今では新しいツールがあり、フリーハン ドで描き続けながら変型させることができる。また他のツールを使って、 それがロープであるかのように曲線上の点を引っ張ることができる。

同様にビットマップオブジェクトでは、以前は形状を 描く のにベクト ルツールを使えた。しかし非幾何形状の領域を 選択 するには(色を扱 うツールがそれを操作できないなら)フリーハンドで形状を描かなければ ならなかった。今ではベジェ形状を選択形状に変換できる(逆も可能だ)。

Deneba 社は Canvas 6 で導入された透明モードの主要な制限を無くした。 たとえば、オブジェクトにベクトル透明効果を与えた場合、一方の端のノー ドが 0 % で他方が 100 % となる単純な変化が得られていた。端のノード を動かすことはできたが、できるのはそれだけだった。今では自由に途中 にノードを追加でき、その透明度を指定できる。

以前はベクトルやテキストオブジェクトをビットマップに変換できた。し かし今では、それらのオブジェクトをビットマップに変換 せず に、以 前はビットマップだけに許されていたフィルタや調整(ぼかし、ポスタラ イズ、カラーシフトなど)を与えることができる。そうした後も、ベクト ルやテキストオブジェクトとして引き続き編集できる。本質的には、オブ ジェクトはそれ専用のペイント方式フィルタを通して見えるということだ。 そのため Canvas 7 がレンズ機能を持ったことは驚くに値しない。

Web 作成 -- 不満の多かった Java ベースの Colada はなくなり、今や Canvas は HTML ドキュメントを直接生成する。しかし、この HTML は CSS レベル 2 の絶対位置指定を利用するので、(テーブルとは違って)古いブ ラウザでは正しく表示できない。また最新の Netscape Communicator で あっても、テキストをイメージとしてレンダリングしなければ表示できない。

さらに今の Canvas は、新しいパレットによって 3 つの状態を持つボタン を簡単に生成できる。そしてボタンは、良くできた JavaScript と一緒に レンダリングされる。

GIF や JPEG としてエクスポートする時、どちらかを選んでややこしい ダイアログをいくつもたどる必要はなくなった。代わりに、単一のエクス ポートダイアログの中ですべてを選ぶことができる。このエクスポート ダイアログは理解しやすいものではないが、確かに便利だ。その理由は特 に、新しい最適化機能とともに、4 つまでの異なったエクスポート設定を 同時にプレビューできるからだ。また、ビットマップを回転させ、エクス ポートする時にその回転を保持しておける。このため、不適切に圧縮され たり、逆向きにスキャンして作られた JPEG を別のプログラムで後処理す る必要はなくなった。

新しいドキュメントタイプが導入されたことで、“ページ”で表されるフ レームを使って、アニメーション GIF を作ったり編集したりできる。複数 の連続するフレームを同時に見ることができるが、驚くべきことにアニメー ションを再生するにはエクスポートして Web ブラウザで見なければならな い。その上、そのために QuickTime が使えるとは言うものの、組み込みの 画面切り替え効果(ワイプやタイルなど)がない。

将来を考える -- Canvas 7 のマニュアルは完璧でコンパクトだが、冗長 で判りにくいところが多い。添付の CD には画面イメージを使ったアニメー ション(ナレーション付き)が入っており、とても参考になる。オンライ ンヘルプは良い出来だが、バルーンヘルプやもっと充実した使い方のヒン トがあればさらに良いだろう。パレットには重要なオプションがたくさん あるが、それらは判りにくいアイコンでしか表示されていない。

明らかに Canvas 7 は、大変判りやすい汎用のドロー/ペイントプログラ ムだった Canvas 6 を改良したものであり、ほとんどのユーザーの要求を 充分に満たす。そういう訳で私は Canvas 7 を楽しみ、たびたび使ってお り、そしてお勧めする。

その一方、Canvas 7 は Canvas 6 を見直して合理化したものの、新機能は それほど盛り込まれていないと思う。Canvas 6 が使いにくい、不便だと感 じられた面があったからこそ、Canvas 7 はおおよそ良いと感じられる。そ のため、Canvas 7 がメジャーバージョンアップで、100 ドルのアップグ レード費に見合うものかというと、反論の余地がある。その大きな理由は、 Deneba 社が Canvas の最も基本的な機能のいくつかを今回も改善しなかっ たからだ。ツールボックスのアイコンをクリックしてからサブパレットが 現れるまでの遅れが長過ぎる。ベジェ曲線のひとつから他へ移るためのキー ボード操作が未だにない。プログラムはスクリプト操作に対応していない。 モディファイアキーでしか呼び出せない機能が多すぎる(Option キーを押 しながらメニューを選んだり、タブキーを押しながらノードをクリックし たり)ため、プログラムを学ぶのは大変だ。そのうえ、ペイントツールは まだ成熟していない。Corel PHOTO-PAINT であれば一筆で得られる絵画的 な効果(ブラシ、edge texture、にじみ、sustain、dab spacing、stoke smoothing、カラーシフトなど)を完成させるには、丸一日かかって精魂尽 き果ててしまうかもしれない。

このことから、オールインワンプログラムはどうあるべきか、大きな疑問 が湧いてくる。Canvas は広範囲をカバーしているが、今にもパンクしそう だ。加わろうとしたすべての分野(ペイント、ページレイアウト、Web イ メージ、Web ページ、GIF アニメーション、それにドローの一部でも)に おいて、他の専用アプリケーションとの個別の競争で(ある面では大きく) 遅れをとっている。今や Canvas 7 は物まねをしているように、そしてす べての分野で一度に追い付こうとしているように思われる。その結果、不 充分(GIF アニメーションなど)だったり不適切(新しい FTP 機能など) だったりするのだ。Canvas を多くの分野で平凡にしてしまうのではなく、 うまく選んだ少数の分野で傑出させることに集中するほうが、Deneba 社に とってためになるのではないだろうか。Canvas は QuarkXPress でも GoLive でも WebPainter でも Anarchie でもないのに、なぜそのふりをす るのだろう? 私は、優れたドロー機能を優れたやり方で優れたペイント機 能と統合するという、Canvas の基本的な使命を達成することに Deneba 社 は立ち戻るべきだと思う。

Deneba 社がそうしなくて大丈夫かどうかは、実は次のような問題でもあ る。それは、複数の専用アプリケーションを組み合わせれば完璧にできる ことが汎用アプリケーションではできないとしても、ひとつの汎用アプリ ケーションで済ませられるほうが便利だと、今後もユーザーが思い続ける かどうかという問題だ。これは“スイスアーミーナイフ”アプリケーショ ンに共通するジレンマである。もしユーザーが、Canvas で作った GIF ア ニメーションを自身では再生できないことや、テキストオブジェクトをブ ラウザが正しく表示できる HTML テキストとしてエクスポートできないこ とに大きな不満を持ったり、Canvas ではできない微妙な調整を行うために 他のペイントプログラムへ何度も切り替えていることに気付いたとしたら、 ユーザーは Canvas の本当の利点は何なのかと疑問に思うだろう。そして また、価格も明らかに問題だ。Deneba 社が Canvas のダウンロード販売に 130 ドルという攻撃的な値段を付けたことは評価できる。だが、これは逆 効果でもある。アップグレードにほぼ同額(100 ドル)を払わなければな らないので、古くからの Canvas ユーザーは怒っても当然だろう。それに Corel 社は CorelDRAW と Corel PHOTO-PAINT のパッケージで対抗してい る。これらには少し機能制限があるが、使用期限がなく完全に無料だ。

<http://www.corel.com/draw8mac_le/product_info.htm>

Canva 7 は PowerPC ベースの Mac と Mac OS 8.5 以降、32 MB の RAM、 800 x 600 以上の解像度を必要とする。標準インストールには 80 MB の ディスク空き領域が必要。CD-ROM と印刷されたマニュアル付きの Canvas 7 は 375 ドルで、それ無しだと 130 ドル。Deneba 社は 15 日間有効の試 用版を無料で用意している。

<http://www.deneba.com/dazroot/evaluate/default.html>
<http://www.deneba.com/dazroot/prodinfo/canvas7/pricing_availability.html>


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