TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#521/13-Mar-00

まだ Palm の携帯をお持ちでないなら、Travis Butler 氏による Handspring Visor のレビューを読んで頂きたい。Palm OS ベースの機器 で、PalmPilot を製作したオリジナルメンバーの手によるものだ。古参の ソフトウェアは今週も我々の関心を捉え続けている。先週の投票結果が示 唆する事柄について考え、年老いた DiskTop とその若きライバル DiskTracker を見てみよう。ニュースでは、eMerge 1.6.2 を取り上げに表 れた結果から、iBook や PowerBook (FireWire) の所有者には重要な警告 をお伝えしたい。

目次:

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MailBITS/13-Mar-00

(翻訳:松岡 文昭 <mtokfmak@mxa.mesh.ne.jp>)

iBook と PowerBook でデータ損失問題が発生 -- Apple が Tech Info Library アーティクルを発行し、iBook と PowerBook (FireWire) の所有 者にこれらポータブル Mac でのデータ損失の危険性を警告している。一定 のメモリ不足状況下で、“スリープ時にメモリの内容を保持”のオプショ ンがオンの状態でマシンをスリープさせると、重要なファイルシステムデー タが上書きされ得るのだ。再起動させると、クェッションマークが点滅し、 CD-ROM からの起動後もハードディスクが認識されず、Disk First Aid は 修復不能のエラーメッセージを出してしまう。Apple はソフトウェアでの 解決を 3 月末にリリースすべく作業を進めている。その間、“スリープ時 にメモリの内容を保持”のオプション機能はオフにするよう Apple は勧め ている。 [JLC]

<http://til.info.apple.com/techinfo.nsf/artnum/n25130>

eMerge アップデートでダイレクト電子メールの処理を高速化 -- Galleon Software 社は eMerge 1.6.2 をリリースした。小さな数字の改訂ではある がダイレクト電子メールプログラムの機能を大幅に向上するものだ ( TidBITS-465 の“正当電子ダイレクトメールの出現”を参照)。まず、 メールアドレスの取り込みが 3 倍早くなり、情報の書き出しは 11 倍の早 さだ。さらに重複メールアドレスやフィルタリングの管理が一層強化され た。もう一つの喜ばしい改良点は eMerge のメインメッセージウィンドウ で数個のマイナーな(だが苛つく)テキスト編集バグが一掃されているこ とだ。eMerge 1.6.2 は登録ユーザーには無償のアップデートであり、ダウ ンロードは 1.3 MB。新規ユーザーは 2.2 MB のデモ版がダウンロードで き、ライセンス料は 99 ドルとなっている。 [JLC]

<http://www.galleon.com/emerge/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05254>
<http://www.galleon.com/emerge/support/upgrades/>
<http://www.galleon.com/emerge/demo/>

アンケート予告:嵐の前の Palm -- 携帯コンピュータは過剰な程の整理 好きか、過剰な程のマニア(または両者の一風変わったコンビネーション) だけのものであった。今では展示会場でみんながあなたと名刺をビーム交 換しようとする。Palm OS ベースの機器の人気はうなぎ登りで、我々は、 あなたが Palm OS ベースの携帯機器の購入を検討しているのか、どのモデ ルに一番魅力を感じているのかを知りたいのだ。モノクロの Palm III ファ ミリー(Palm IIIx、IIIxe、または IIIe)、カラーの Palm IIIc、スリム な Palm V または Vx、ワイヤレスの Palm VII、Handspring 社の Visor または Visor Deluxe、もしくは Technology Resource Group 社の TRGPro の何れかを選んで欲しい。新しい Handspring Visor についてさらに詳細 を読み、我々のホームページで投票をしよう! [JLC]

<http://www.tidbits.com/>


アンケート結果:年輪を重ねて

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:尾高 修一 <shu@pobox.com>)

最も古い常用プログラムを挙げてもらうという先週のアンケートは色々な 意味で実におもしろかった。TidBITS Talk に熱意あふれる投稿が寄せられ たほか、Macintosh の世界で今でも使用されている 旧型プログラムについ て聞くことができたからだ。TidBITS Talk への投稿にほとんど重複がな かったというのも驚きだった。誰しもそれぞれのお気に入りがあるらしい。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbpoll=32>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=969>

集計結果 -- TidBITS 読者に最近のプログラムしか使わない人が少ない のは予想通りだった。最も古い常用ソフトが 5 年未満前のものだという人 は 9 % しかいなかった。5 年から 10 年と回答した人の数(68 %)にも驚 きはなかった。例を挙げると、私が常用している最古プログラムは Peter Lewis 氏作の Finger クライアントで、これは 1994 年に最後のアップデー トがあったものだが、いまだにドメイン名を whois で検索する際に愛用し ている。ところが、なんと 23 % にものぼる人たちが 11 年以上前のソフ トウェアを使っているのだ。Macintosh が存在するようになったのさえ 1984 年になってからだから、これほど古いプログラムが今でも使用されて いるという事実には仰天した。

とはいえ、この 11 年という歳月に回答を並べてみたら 7 年目あたりを頂 点とした釣鐘型曲線を描くだろうから、驚くほどのことではないかもしれ ない。だが、1984 年からのプログラムが今日の G4 Power Mac と Mac OS 9 で動作するということは、Apple がいかに上手に下位互換性を保ってき たかということと、初期の Macintosh デベロッパーのコードがいかに優秀 だったかを物語っている。

その理由 -- こうした古いプログラムを使い続ける理由は人によってま ちまちだ。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05519>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=971>

教訓 -- ここには何かソフトウェアデベロッパーや Macintosh コミュニ ティにとって大切な教訓があるような気がするが、それが何であるかをはっ きり言葉にするのは簡単ではない。デベロッパーはアップグレードを売り やすくするように慎重に選んだ機能を外しておいたりすべきだろうか? 多 分そうすべきだろう。それに開発に要する時間と機能の充実とのトレード オフという要素もある。アップグレード料が高すぎるのだろうか? これは 間違いない。ソフトウェア会社はアップグレード収入で生き延びているの だろうか? これも間違いない。競争のためにアップグレードで人目を引い たりはしないだろうか? もちろん。ユーザーはニーズを満たすバージョン を使いつづけるべきだろうか? そうだ。Macintosh コミュニティはソフト ウェア会社を支えていく何らかの義務があるだろうか、それとも一定以上 のユーザー数を確保できる大企業だけが生き延びるべきなのだろうか? 難 しい問題だ。

こういった問題はこれまでにも TidBITS Talk で議論されてきたが、つま るところ Macintosh コミュニティはユーザーの Macintosh 体験を充実さ せるための高品質なプログラムを必要とする一方、こうした企業は私たち の経済的支援を必要としているという関係にある。この関係がうまくいっ ている間は良いが、どちらかが取り決めを守らないと関係は崩壊してしま う。ソフトウェア会社がバグだらけの製品をリリースしたり、満足なサポー トを提供しなかったり、有料アップグレードをリリースしすぎたりすると そういうことになる。MORE であれ Emailer であれ、Macintosh コミュニ ティはお気に入りのプログラムがサポート終了になったらすぐに文句を言 う。だが結局こうしたプログラムも、困難を乗り越えて開発を続けるほど の売上に結びつかなかったに違いない。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=122>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=816>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=857>

これに代わるビジネスモデルの実験もあったものの、どれも既存の企業の 方針を転換させるだけの効果は上げていない。この分野で改善の余地はあ るだろうが、成功をおさめる方式が現れるまで、Macintosh コミュニティ とデベロッパーはお互いの将来のために取り決めを守っていくしかないだ ろう。


不死身のツール:DiskTop と DiskTracker

by Matt Neuburg <matt@tidbits.com>
(翻訳:吉田 節 <benjamin.takashi@nifty.ne.jp>)

昔むかし System 6 の頃、Finder は助けをひどく必要としており、DiskTop は私のお気に入りのヘルパーのひとつだった。何年か後、私は DiskTop の 行方を見失った。CE Software 社が DiskTop を Prairie Group 社に譲り 渡したことにかすかに気付いてはいたのだが。それに TidBITS は Stephen Camidge 氏が DiskTop 4.5 を取り上げた 1994 年以降、それをレビューし ていなかった。私は優れたソフトウェアのよくある早すぎた死を嘆いてい たが、DiskTop がまだ入手できる(そのうえバージョン番号が 4.5.3 に上 がっただけなのに今でも動く)と聞いて唖然とし、そして大いに喜んだ。

<http://www.prgrsoft.com/pages/disktop.html>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=02001>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=02464>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05519>

DiskTop は単独のウインドウでひとつのフォルダの内容を表示する。 Finder のリスト形式表示を非階層化した感じだが、不可視のファイルも表 示する上に、タイプとクリエータのコードや、データおよびリソースフォー クの正確なサイズも教えてくれる。フォルダ間を(この単独のウインドウ を常に使って)マウスかキーボードで非常に素早く移動できる。また、ポッ プアップメニューを使ってお気に入りのフォルダを指定して直接アクセス できる。別のモーダルダイアログを使って、アイテムを削除またはリネー ムしたり、フォルダを選んでアイテムをコピーまたは移動したり、アイテ ムを作ったり、フォルダのサイズを調べたり、パス名をコピーできる。Get Info ダイアログを使うと、普通は ResEdit や Snitch が必要となるよう なテクニカルなものを見る(そしてセットする)ことができる。さらに、 複数の条件による検索も素早く簡単にできる。

<http://asu.info.apple.com/swupdates.nsf/artnum/n10964>
<http://www.niftyneato.com/Snitch.html>

正直なところ、DiskTop には欠点がある。たとえば不可視のファイルを表 示できるが、それが不可視かどうかを教えてくれないし、不可視のファイ ルだけを検索することもできない。エイリアスを作ることはできるが、そ の名前を指定することはできない、などなど。だが、これらが問題になる ことはおそらくないだろうから、あら探しは簡単だが無意味だ。過去 6 年 間、DiskTop は Apple Menu Options と Y2K に対応するよう少し変更され たが、機能は変わっていない。実際、次のような DiskTop の特徴のほとん どは、もはや陳腐なものになってしまったと認めざるを得ない。それは小 さい(220 K の大きさで、RAM を 80 K しか使わない)。デスクアクセサ リである(覚えているだろうか?)。フロッピー一枚に入る! PowerPC ネ イティブではない。ドラッグ & ドロップを使わない。スクリプタブルな Finder や他の現代的な方法を使わずに、古風な CE Toolbox extension (これは少しシステムの邪魔になったので、最終的に私はこの機能を使わ ないことにした)を介してファイルとフォルダを開く。良くない点の大き なものは 50 ドルという価格で、これはアップデートされていないソフト ウェアにしては少々厚かましいと思う。Prairie Group はソフトウェアを 寝かせておけば、ワインのように質が上がるとでも思っているのだろうか?

DiskTracker -- 定期的にアップデートされているまったく現代的な代替 品として、Mark Pirri 氏(Portents LLC 社)の 30 ドルのシェアウェア である DiskTracker を試すのもよいだろう。これもまた陳腐なものになっ てしまったが、それはちょっと違う意味でだ。DiskTracker はほんの数年 前、1996 年に作られたものだが、そのコンセプト上の祖先は 1980 年代に までさかのぼる。それは私のもうひとつのお気に入りだった、Bill Patterson 氏の FileList+(それ自身、Erny Tontlinger 氏の FileList をベースにしていた)である。

<http://www.disktracker.com/>

DiskTracker は元来、ファイルカタログ作成ソフトウェアだった。好きな だけのディスクからファイル情報を素早く読み出して、ひとつのファイル に書き込むものだ。カタログファイルの大きさは、おおよそファイル数に 比例する。私のハードディスクにある 27,000 のファイルをリストしたカ タログは 1.5 MB のディスク領域を占めた。

だが最近リリースされた DiskTracker 2.0 では、表示中のカタログに対応 するディスクがマウントされていて書き込み可能なら、あなたはカタログ を介してディスクに変更を加えることができる。DiskTop と同じようにファ イルは単一のウインドウにリストされ、そのウインドウのままで別のフォ ルダへ移ることができるが、フォルダを Finder のリスト形式のように階 層的に表示することもできる。アイテムをリネームしたり、削除したり、 ゴミ箱へ移動したり、アイテムのパス名をコピーしたり、新しいフォルダを 作ることができる。さらにアイテムのタイプやクリエータ、作成日と修正 日、ロック属性と不可視属性を見たり変更したりできる。ファイルのコピー はドラッグ ドロップで行うことができるが、DiskTop のダイアログ方式 よりも使いにくい。これは単一ウインドウのアプローチが原因だが(私が 本当に好きなのは Windows 的なカット ペーストのメタファだ)、これ だと DiskTracker 内だけでなく Finder とでもコピー可能で、スムーズに 使える。Finder での本当のアイテムを開いたり表示できる。エイリアスを 作ることはできない。リソースおよびデータフォークのサイズは分けて表 示されない。不可視のアイテムは表示することもできるし隠したままにも できるが、それが不可視かどうかは直接には表示されない。全体的には、 これは現代的な DiskTop だ。

さらに、DiskTracker にはディスクカタログ化機能がある。特徴的な使い 方としては、非常に複雑な検索(設定を保存可能)を行うことができ、条 件に合ったアイテムをフラットでソート可能なリストとして得られる。た とえば、あなたの全ファイルをフラットに表示させ、それをサイズ順に並 べかえてハードディスクのスペースがどこへ行ったのか知ることができる。 自分が指定した条件の下で重複するファイルを検索してみよう(私は 14 MB もの不要なファイルを簡単に見つけることができた)。加えて、マウン トされていないディスクを検索できることもお忘れなく。奇妙なのは、通 常の表示形式と異なり、フラットなリスト形式での表示はカスタマイズで きない。すなわちタイプやクリエータ、作成および修正の時刻と日付をリ ストに新たな列として表示できないし、列の幅の変更や列の移動もできない。

DiskTracker は 1.3 MB のダウンロード。動作条件は DiskTop のように最 小ではないが、68020 以降の Mac、System 7 以降、そして 2,000 K の RAM が必要だ。

<http://www.disktracker.com/download.shtml>


嬉しい不意討ち:Handspring のハンドヘルド機 Visor

by Travis Butler <tbutler@tfs.net>
(翻訳:尾高 里華子 <rikako@pobox.com>)
(  :湯本 敬 <ymo@big.or.jp>)
(  :亀岡 孝仁 <tkameoka@fujikura.co.jp>)

自分がハンドヘルドコンピュータ狂いであるのは自覚している。私のハン ドヘルド歴は、初代 Newton MessagePad 100、Newton 120、Palm Professional にアップグレードした初代 PalmPilot 1000、と続き Palm III に満足していた。

<http://www.palm.com/>

それなのに、1 月の Macworld Expo で Handspring 社の Visor Deluxe を 買ってしまった。

<http://www.handspring.com/>

Visor は Handspring 社が開発した Palm OS 搭載のハンドヘルド機であ る。Handspring 社というのは初代 PalmPilot の設計者と Palm Computing 社の元エンジニア数人が設立した会社だ。同社は、Palm 社から Palm OS のライセンスを受け、1999 年終わりごろに Visor と Visor Deluxe を発 表した。Visor は Palm 機と同じくカレンダー、住所録、To-Do、メモを統 合したアプリケーションがソフトウェアの中核をなしているが、その他ソ フトがいくつか付いてくるし、拡張スロットというハード面も備えている。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05561>

Visor は最初 Handspring 社の Web サイトからしか購入できず、受注数は 同社の処理能力を超えていた。つまり、しばらくの間はなかなか入手でき ず、商品の受け取りまでの遅さに不満を言った人の中には最高で 6 週間も 待たされたという人もいた。Macworld Expo の会場で、ClubMac が行った Visor の即売は大盛況だった(Expo の 5 日間で 2,000 台以上を販売し た)。それ以降、劇的に入手しやくすくなり、Handspring 社公表の引き渡 し期間が 7 日になったし、それよりも早く手元に届いたユーザーもいた。 さらに、Visor は小売り店でも販売されるようになるらしい。

<http://www.zdnet.com/zdnn/stories/news/0,4586,2436411,00.html>

Visor のハードウェア面 -- Visor の外形は Palm III よりもわずかに 長めかつ厚めで、そして横幅がとても狭くなっている。持ちやすさ使いや すさの点では、私にはどちらも同じに思えるが、手の小さな人には両側面 が波打ち、しっかり握ることのできる Visor のほうが向いているかもしれ ない。カバーが扉のように開く Palm III シリーズとは違い、Visor はプ ラスチックのカバーが外れるようになっている。このカバーは、Visor の 人間工学にそぐわない一番大きな部分だと思う。Visor を使っている最中 はカバーを本体の裏にかけておくことができるのだが、Palm III の開くタ イプのカバーの方が勝手がよいし、この方がなくなる心配もない。Visor Deluxe には革製のケースもついており(私はいまだに使っていない)、 Visor 基本モデルであるグラファイトにプラスして半透明のプラスチック 4 色(ブルー、グリーン、オレンジ、白っぽい“アイス”)を揃えて今ど きの流行を追っている。iMac ぐらいの大きさのものが半透明を採用してい るのは好きなのだが、ハンドヘルド機のようなサイズのもので見栄えがす るとは思えない。

<http://www.handspring.com/products/vgallery.asp>

Visor のプラスチックケースとアプリケーションボタンは安っぽいと一部 のレビューで書かれていたが、私は気に入っている。心地よい重量感があ り、私の手にしっかり収まる。実のところ、Palm III (と友人の Palm Vx)のボタンよりも Visor のボタンのほうが好きだ。Visor のボタンは押 したことを指で実感できる構造になっているし、上下のスクロールボタン は平らな半円形で、Palm III シリーズの小さなこぶのでたロッカースイッ チよりも感じが良い。(Palm III で長い文書を読んでいるとこのスクロー ル用のこぶを押し続けなければならず、親指の裏が痛くなってしまうの だ。)というわけで、私は人間工学の面では Visor の方に一票投じる。

スクリーンはハイコントラスト表示で、IIIe/IIIx/IIIxe とだいたい同じ で、標準の Palm III よりもずっと良くなっている。旧タイプの Palm III よりも暗いところで読むことができるし、新しいタイプの Palm とおなじ リバースパックライトを使用している。Palm V のほとんどはダイヤルでコ ントラストを調整するようになっているが、Visor はソフトウェアのスラ イダを利用するようになっている。

標準タイプの Visor には 2 MB のメモリが搭載されているが、これだけあ れば、普通のプログラムや、住所録、メモ、予定表には十分だ(Palm III、 Palm IIIe、Palm V の搭載メモリも同量である)。Visor Deluxe の方は 8 MB のストレージを誇っており、これは、Palm IIIxe、Palm Vx と同量、 IIIx の 2 倍に相当する。メモリがたくさんあると、多数のアプリケーショ ンや巨大なサイズの情報(電子ブック、データベース、画像など)を入れ ておくのに便利だ。しかし、膨大な情報などが必要ない方には 2 MB で事 足りるであろう。

最後に、Visor で一番話題を集めていたのは Springboard 拡張カートリッ ジスロットだろう。Palm IIIx にも内蔵の拡張スロットがついており、メ モリや同様のハードを差すことができるようになっているが、Visor の Springboard スロットは任天堂のゲームボーイにゲームカートリッジを差 すのと同じ感覚で、簡単にハードウェアを差したり交換したりでき、そこ に差すことのできるディバイスの種類は GPS や MP3 プレイヤーなど幅広 い。Macworld の Handspring 社のブースで Springboard モジュールを展 示していたところが何社もあった。関心のある方は私が TidBITS Talk に ポストした“Macworld Expo SF 2000 Notes”を読んでいただきたい。

<http://www.handspring.com/products/modules.asp>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=899>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkmsg=5542>

Palm OS -- Visor は Palm OS 上で動作するのだが、ひとつ重要な欠 点がある。それは OS が、標準の ROM に物理的に書かれていることだ。

対照的に、Palm IIIe を除く現行のすべてのモデルは、フラッシュロムに OS が書き込まれている。フラッシュロムも読み出し専用ではあるが“フ ラッシング”プログラムを使うことによってオーバーライトすることがで きる。これは Palm 社が OS のバージョンアップを公表した際には、OS を アップデートすることができることを意味する。Palm OS 3.3 では、ラッ プトップ機と赤外線同期するための重要な改善を行った。当然、私の Palm III は、フラッシュメモリーに OS を書き込んでいるので、新しい OS を オーバーライトすることができたのだ。(Palm 社の人によれば、Palm IIIc と Palm IIIxe が搭載している Palm OS 3.5 は、近いうちにダウンロード によってアップグレードできるとの話である。)

Visor 標準の ROM はアップデートできない。物理的にハードウェアを交換 することなく OS を修正する唯一の方法は、Visor の RAM にロードされる ソフトウェアにパッチ(通常徐々にバグ修正して増えていく)あてる方法 である。しかし、完全にバッテリーがなくなったりして、仮にデータが消 えてしまえば、それらのパッチも残りのデータと一緒に消えてしまう。私 の Palm III にはバージョン 3.3 がインストールされているにも関らず、 Visor には Palm OS 3.1h が搭載される。(“h”というのは、Palm OS 3.1 の Handspring 社用改造バージョンであるということを示している。)こ のバージョン遅れは、たとえ、純正の赤外線同期に必要なファイルをダウ ンロードしてきたとしても、オリジナルの iMac や PowerBook G3 のよう な赤外線受光部を装備したマックと赤外線同期を行なうことができないと いうことである。この点については、サードパーティーから IrLink とい うソフトが出ており、赤外線同期を行うことが可能となっている。しかし ながら、赤外線同期が重要でない人にとっては、IrLink は 20 ドルも出さ なければならないし、手間も掛かるものだ。

<http://clhuang.iscomplete.com/IrLink/>

Macworld で Handspring 社の人と話すことができた。それによると、OS のアップグレードは主に、新しいハードウエアのリリースによってサポー トする方針のようである。したがって、Visor ユーザーには OS のアップ グレードは重要なことではないだろう。その点について、私は少なからず 疑問を感じるのだが。これについては、Handspring 社が今後の Palm OS のアップグレードをどのようにサポートするかを見ていく必要がある。た とえば、新しい Palm OS 3.5 についてはどのような対応をしていくのか。 私は最近、Handspring 社のプロダクトマネージャーの Frank Romero 氏 に、今後のアップグレードについての質問をする機会に恵まれた。彼によ れば、

「Handspring 社の Visor は、Palm OS の Visor 専用バージョンを組み込 むことによって、多くの機能を実現するように設計されている。赤外線ポー トのような Visor の鍵となる機能や USB との接続性、ユーロの通貨記号 に対応し、強力な機能拡張性を実現するスプリングボード Modules もつい ている。」とのことである。

改善されたソフトウェア -- ユーザーの観点から言えば、Palm OS に対 して Handspring 社が付け加えた改良は大体、Date Book アプリケーショ ンと電卓の改良版と City Time と呼ばれる新プログラムであると要約でき る。大方の人にとって City Time が役立つとは言い難い;それは単に世界 地図に夜の部分と昼の部分を表示し、その他に 4 つの都市の現在時間を示 すだけである。改良電卓は有用で ある 、より多くの科学、経理、論理 計算式を備えており単位変換機能を内蔵している。改良カレンダープログ ラムである Date Book+ はもっと有用である。追加されたのは新しいカレ ンダービュー、イベントの区別、目覚ましのスヌーズ機能、およびその他 である。しかしながら、Date Book+ はシェアウェアプログラムである DateBk3 の変形版であるから、Visor に含まれているということを除けば、 これを非常に大きな長所であると呼ぶわけにはいかない。

<http://www.handspring.com/products/visorfaq.asp#q13>
<http://www.gorilla-haven.org/pimlico/>

Mac との相性 -- Visor の Macintosh サポートは玉石混淆である。ま ず、USB 付きの Macintosh をもっている人には、Visor も Visor Deluxe も必要なものはすべてそろっている - USB クレードルはアダプタなしで直 接 Macintosh につながるし、Macintosh デスクトップソフトウェアも付属 の Visor CD-ROM に含まれている。USB 機上で Palm ハンドヘルドを使お うと思うと、USB-シリアルのアダプタを買わなければならない(Keyspan 社と Palm 社から約 40 ドルで売られている);Palm ハンドヘルドには Macintosh ソフトウェアは同梱されていないから、Palm 社の Web サイト からダウンロードするか 10 ドル出して Palm MacPac を買わねばならな い。(注意して欲しいのは、多くの最新の Macintosh モデルには Palm Desktop ソフトウェアはインストールされているし、Mac OS 9 CD-ROM に も含まれていることである)

<http://www.keyspan.com/products/usb/PDAadapter/>
<http://www.palm.com/products/accessories/usb.html>

一方で、シリアルポート付きの旧型 Macintosh の所有者は Visor シリア ルクレードルを 30 ドルで買わなければならない。Palm の場合も Macintosh DIN-8 シリアルポート用のアダプタケーブルも買わねばならな いが、値段は 10 ドルで済む。

Visor は Mac ソフトウェアの最新バージョンである、Palm Desktop 2.5 では動かず Handspring CD に含まれているバージョン 2.1 を必要とする。 これは Palm のバージョン 2.5 にはない USB サポートが組み込まれてい るからである。Frank Romero 氏によれば、Handspring 社は“ここ数カ月 の間に”ネイティブ USB をサポートする Palm Desktop 2.5 のバージョン が出されることを待ち望んでいる。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05596>

さらにもう一つ注意して欲しいのは、Visor についてくるユーザーマニュ アルはほとんど役に立たないことである。それが Palm Desktop CD に入っ ている PDF ファイルの形でしか提供されないだけでなく、そのマニュアル は Palm Desktop の Windows 版についてしか触れていず、Mac 版とはかな り違うからである。

結論 -- Macworld での衝動買いを私は後悔しているかって?Palm 社が Palm IIIxe (Visor Deluxe と同じ値段で OS アップグレードができるモ デル)を出してきたことでカチンと来るところはあったが、全体としては 私は Visor に満足している。まず小さくはあるが人間工学的改良があり、 私にとっては毎日毎日のこととしては大きな違いをもたらしている、それ に Springboard モジュールが広く行き渡るようになった時にそれで遊べる のを楽しみにしている。そして、いつの日か Handspring 社も私の Visor への OS アップグレードを出してくることを切望する。

もしまだ Visor を買うべきかどうか決めかねているならば、近々予定して いる私の記事を期待して欲しい。そこでは Palm 社と Handspring 社の携 帯機器を比較する予定である。


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