TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#525/03-Apr-00

有罪! Microsoft 社は Macintosh インターネットソフトウェアをリリース 直後に、連邦裁判所から合衆国の独占禁止法にいちじるしく違反している と判断された。今週は、Matt Neuburg が Mac をカスタマイズしたり自動 化したりするためのパワフルなマクロユーティリティ OneClick 2.0 を紹 介する。また、我々の新たなスポンサー digital.forest 社のお知らせや、 先週の Web ブラウザアンケートの結果考察をお伝えする。そして、エープ リルフールには多くの読者を引っかけてしまったことをここにお侘びする。

目次:

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今回の TidBITS のスポンサーは:


MailBITS/03-Apr-00

(翻訳:尾高 里華子 <rikako@pobox.com>)
(  :亀岡 孝仁 <tkameoka@fujikura.co.jp>)
(  :吉田 節 <benjamin.takashi@nifty.ne.jp>)

エープリルフール号について -- この週末は我々の伝統のエープリルフー ル号( TidBITS-524 )についてのメールで大にぎわいであった。この件 は「このあたりでお開きにしよう」と思うが、この号の記事にひっかかっ てしまった人には心よりお詫び申し上げる。この中で Microsoft 社の内部 メモ情報として、司法省との和解の結果、同社の Macintosh 事業部を Apple 社に売り渡すと報じた部分について信じてしまった人に対してはと りわけの謝意を表する(この記事に信憑性を与えることに一役買って名前 を貸してくれた Microsoft Outlook Express のプログラムマネージャーで ある Omar Shahine 氏には、特別の感謝の意を表したい)。一方では、我々 の MRML 標準提案 (Mind Reading Markup Language)に関する論議にはあ まりのってくれなかったようであるが、ソフトウェア会社がより多くのユー ザーにアップグレードさせるための、使うに応じてすり減ってしまうドキュ メントという Geoff Duncan の皮肉たっぷりの提案は不幸にして大手の Macintosh ソフトウェア開発者達に受けてしまった、むろん名を明かして くれることはないであろうが。 [ACE]

<http://www.tidbits.com/tb-issues/TidBITS-524.html>
<http://www.oxy.edu/~ashes/mrml.html>

Microsoft 社は反トラスト法に違反した -- 米国連邦地裁の Thomas PenfieldJackson 判事は Microsoft Corporation 社は Web ブラウザ市場 での地位を利用して「競合製品が公平な競争をできない」ようにし、シャー マン反トラスト法に違反したと判決した。同判事は更に、Microsoft 社は 州の反競争法にも触れている可能性があると判断した。Jackson 判事は今 年の後半には Microsoft 社の行為に対する是正措置を考慮するヒアリング を計画しなければならない。この是正措置には、会社に対する構造改革、 事業規制、あるいは実際の会社分割も可能性としては含まれる。Jackson 判事が政府の重要な争点に対して唯一同意しなかったのは、Microsoft 社 がとった他社に対するマーケティング契約で世界のブラウザ市場から Netscape 社のブラウザソフトウェアが究極的に排除されたとする点だけで ある。Microsoft 社は繰り返し、同社に対するいかなる有罪判決に対して も控訴すると言明してきている。その筋からはこの事件は長引いてまず 2002 年までかかるだろうとみられている。Microsoft 社の株は Jackson 判事の判決を見越しておおよそ 15 % も値を下げ、結果的に NASDAQ 指標 が一日としての史上最大下げ率 7.63 % を記録した。 [GD]

<http://usvms.gpo.gov/ms-conclusions.html>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbser=1152>

digital.forest が TidBITS のスポンサーに -- 我々は Macintosh 対応 のインターネットホスティング企業である digital.forest 社を、最も新 しい長期スポンサーに迎えることができて喜んでいる。シアトルにある digital.forest は 1994 年創業で、Mac ベースの Web ホスティング、 FileMaker Pro によるデータベースホスティング、そして世界中の企業に 対してサーバ co-location サービス(訳注: 場所とネットワークのみ提供 してサーバを預かるサービス)を提供している。我々は digital.forest の人々を何年も前から知っており、我々のサーバを POPCO 社から移動した 時には digital.forest が最初の選択肢だった。なぜなら我々は、Unix や Windows だけでなく Mac を使い、そして理解している人々と働きたかった からだ。それに digital.forest のデータセンターは力作だ。地震対策さ れたラックにしっかりと組み込まれて増え続けるあらゆる種類の Mac、レー ルにきちんと留められたイーサネットケーブル、Retrospect によって毎日 バックアップが行われるテープチェンジャ、そして安定した環境条件が用 意されている。組織の見えない面も同じように重要だ。複数の高速インター ネット接続、ネットワークの常時監視(クラッシュしたサーバの自動リブー ト機能付き)、バックアップ電源、24 時間のテクニカルサポートなどであ る。自分のサーバを監視するのに疲れたり、Web 対応の FileMaker Pro データベースを預ける高帯域の場所が必要なら、digital.forest のサービ スを調べてみることをお勧めする。 [ACE]

<http://www.forest.net/>

アンケートのお知らせ: システムはシフト中 -- Apple 社が Mac OS 9.0 のマイナーアップデートをもうじきリリースするだろうと多くの人々が予 想している。これは我々が Macintosh オーナー全員にとって基本的な、簡 単な質問をしなければならない理由として充分だ。その問いは: あなたは 自分の主要な Macintosh でどのバージョンの Mac OS を使っているか? も しあなたがメインの Mac で Mac OS を動かしていないなら、今回はパスし ていただかなければならない。また、“主要”だと思う Mac を複数(例え ばデスクトップ Mac と PowerBook を一台ずつ)持っているなら、もっと も“主要”なものをひとつ選ぶ必要がある。さあ、あなたもみんなも、我々 のホームページで投票して、どのバージョンの Mac OS を使っているかを 聞かせてほしい。[ACE]

<http://www.tidbits.com/>

Outlook Express 5.0.2 について訂正 -- 先週、我々は Internet Explorer 5.0 のレビューと共に、Outlook Express 5.0.2 の変更点に簡単 に触れた。不運にも我々の情報は出所は、progress ウインドウについて (後でわかったのだが)明らかな誤りのあった Microsoft 社の Web サイ トだった。正しい内容は以下のとおり。多数のバグ修正、性能強化と安定 性の改善に加えて、Outlook Express 5.0.2 は SMTP AUTH をサポートする ようになった。これはメール送信時にあなたが本人であることを SMTP サー バに証明する方法である。SMTP AUTH が使えれば、SMTP サーバは証明のな い人からのメール送信要求を拒否できるし、同様にスパマーによる SMTP サーバの利用を防げるので有用だ。困惑されたことをお詫びする。 [ACE]

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05872>


アンケート結果:ブラウザ大騒動

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:尾高 里華子 <rikako@pobox.com>)

我々の行っているアンケートは、Web や世間一般で行われているものと同 じく、厳密なものではない。なぜなら、調査の対象を特定していないし、 調査対象から一部を無作為に取りだして行う調査としても十分な数ではな いし、また、結果に偏りが出ないように考慮されたアンケート方法を採用 してもいないのだから。しかし、先週のアンケートでは、回答と回答する 際の実態を比較するというまれな機会に恵まれた。質問は「日頃使用して いる Macintosh Web ブラウザはなんですか」という簡単なものだった。

<http://db.tidbits.com/poll/AboutPolls.html#whyNotScientific>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbpoll=31>

結果は以下のとおり 4 バージョンのブラウザに分かれた。複数のブラウザ を常用している場合には、複数の答えを入れることができるようになって いたので、以下に出ているパーセンテージの母数は質問に答えてくれた人 の数であり、回答の数ではないことにご留意を。

> Netscape 4.x:              67 %(回答数 955)
> Internet Explorer 5.0:     28 %(回答数 400)
> Internet Explorer 4.x:     25 %(回答数 357)
> iCab:                      21 %(回答数 304)

今回の質問に対し 1,419 人から 2,196 の回答があったので、複数のブラ ウザを使っていると答えた人が約半数いると考えることができる。しかし、 1,200 人強が一つのブラウザしか使っておらず、200 人近くが 4 種類以 上を使用していると考えることもできるのだ。真実を知る術はない。

上記の結果と、実際に先週 TidBITS のメインの Web サイトに来るのに使 われたブラウザとを比較してみよう。ただし、こちらも統計的な観点から すると正確ではないのだが。数少ない Macintosh のログ分析プログラムの 一つ Active Concepts 社の FunnelWeb にログファイルをかけてみた。こ れにより、我々のページに来た人が利用していた Macintosh Web ブラウザ 別の統計を簡単にとることができるのだ。そして、ページごとやファイル 全体のヒットではなく来た人別の結果をだした。

<http://www.activeconcepts.com/>

FunnelWeb から得られた結果は、先週私たちのメインの Web サイトを覗い てくれた人のうち、確実に Macintosh Web ブラウザを使用していると断定 できるのは 11,203 人だった。その内訳は以下のとおりである。

> Netscape 4.x:            41 %(訪問者数 4,639)
> Internet Explorer 5.0:   26 %(訪問者数 2,950)
> Internet Explorer 4.x:   22 %(訪問者数 2,500)
> iCab:                     2 %(訪問者数 238)

ざっと見たところ、Internet Explorer の結果はアンケートとログでだい たい一致しているが、Netscape や iCab の場合、常用していると答えた人 の数の方が私たちのサイトを訪れるときに実際に使用されていた数よりも 多いようだ。これは、先週我々の Web サイトを Macintosh ブラウザをつ かってリクエストした数をもとにパーセンテージを出すとはっきりする。 Internet Explorer 全体で 53 %、Netscape はわずか 39 % となるのだ。

この結果から、iCab が唯一のブラウザとして使われているよりも、複数の ブラウザを使用する場合に含まれているということもうかがえる。iCab が まだプレリリースの段階にあることを考えると、驚くには当たらないだろ う。意外なのは程度の差こそあれ同様のことが Netscape にも当てはまる ととれることだ。アンケートに回答してくれた人は、Netscape を常用して いるんだと言う確率が高いようであるが、サイトを見に来るのに Netscape を使う人は、それほどはいないみたいだ。

別の見方としては、“疑似公共放送派”というのが考えられるであろう。 よく見るテレビ番組を尋ねられたときに、民放のコメディドラマではなく 公共放送の教育番組を見ると答える人がいるのと同じようなことだ。それ とも単に今回のアンケートを人気投票から Microsoft を蹴落とすために利 用した人が多少いると考えるのも妥当かもしれない。何と言ってもInternet Explorer 5 がリリースされたばかりで、かつ独禁法のニュースが真っ盛り の時だったのだから。

以上のような食い違いがおきた理由はともかくとして、アンケートの結果 と(厳正とは言えないにしろ)自分たちの統計を比較する機会を得たのは 楽しかった。


TidBITS Talk でのホットな話題:Internet Explorer 5.0

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:三好 泰子 <yokomo@mio.to>)

先号の Internet Explorer に関する記事は、TidBITS Talk の中で多くの 論議を生み出した。この中では、今回のリリースの様々な側面と Web ブラ ウザの一般的な市場の将来について検討がなされていた。

Internet Explorer 5.0 での自らの体験について書き込む人が多かった。 そして、インターフェースが新しい外観になったことに関して様々な意見 が述べられていたり、変更点の好きな点や気に入らなかった点がコメント されいた。長くなってしまうが、Internet Explorer に関して我々がレ ビューしきれなかった部分や Microsoft の関係者から得た回答などについ て、このディスカッションで特に取り上げてみた。

<http://db.tidbits.com/ getbits.acgi?tlkthrd=982>

もう 1 つのホットな話題といえば、Tasman のレンダリングエンジンを採 用したことを Microsoft 社は強調していたが、Internet Explore 5.0 で はきちんと表示されないページがあった、ということだ。Microsoft 社を すぐさま非難した者もいるが、少なくとも数例にすぎず、これらは壊れた HTML のあおりを受けたページであることが判明した。今度は、このディス カッションが TidBITS Talk のメンバーの何人かに、自分自身のページの パスをきれいにする事を促すことになった。これは、この機会に我々が皆 すべきことでもある。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=983>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=993>

ついには、Internet Explorer 5.0 は、XML をサポートしているととはいっ ても、完全な XML 1.0 ブラウザではないということも明らかになった。こ のことが、XML のドキュメントで起こっている問題の原因なのである。そ れでも、ともかくXML がサポートされたという事実は、多くのユーザにとっ て一歩前進である。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=985>

その他、数多くの細かいディスカッションがなされている。テキストサイ ズの問題、ウィンドウ管理、テキストクリッピングに対する Internet Explore のアプローチ、そして、Mozilla のオープンソースプロジェクト 等。もしも、Web ブラウザの世界に興味があるのなら、TidBITS Talk の ホットな話題 をちょっとのぞいて見て欲しい。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=active>


ボタンを押す自由 - OneClick 2.0

by Matt Neuburg <matt@tidbits.com>
(翻訳:吉田 節 <benjamin.takashi@nifty.ne.jp>)
(  :石崎 圭 <ishizaki@mail7.dddd.ne.jp>)
(  :尾高 修一 <shu@pobox.com>)

コンピュータの制御をユーザーの手に取り戻す戦いに、マクロユーティリ ティは欠かせないものだ。そのユーティリティは、メニューを選び、キー をタイプし、マウスをクリックする、そんな生きているユーザーの霊的な 幻影として動作する。こうした動作を集めると、(頻繁に行う作業や繰り 返し行う作業を、カスタマイズしたり自動化するために)非スクリプタブ ルな多用する任意のアプリケーション用にスクリプトを書いたのと本質的 に同じことができる。私が Macintosh を使い始めたころは QuicKeys が私 の忠実な友だったし、KeyQuencer を試してみたこともある。しかしマクロ ユーティリティをひとつだけ、他をすべて捨てて使わなければならないと したら、私は(その短所にもかかわらず)WestCode Software 社の OneClick を選ぶだろう。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbser=1044>
<http://www.westcodesoft.com/>

洗練されたパレット -- OneClick はフローティングウインドウ(パレッ ト)を作る。各パレットは特定のアプリケーションに対応させたり、全体 で共通にすることができる。パレットはボタンを持ち、ボタンはどれもス クリプトを持つ。スクリプトはアクションの並びで、EasyScript という適 切な名前のやさしいプログラミング言語のテキストとして作ったり編集し たりできる。スクリプトはさまざまなサブルーチン(ハンドラと呼ばれる) を持つことができる。ハンドラは実際にトリガされるコードで、OneClick を理解するには各ハンドラがいつ実行されるかを知ることが大切だ。(ア プリケーション専用のパレットは、そのアプリケーションが最前面にある ときに限って、表示されたりそのスクリプトが実行される、ということを 覚えておこう。)次のようなトリガがある:

これほど多くの違った方法でトリガできるボタンスクリプトの能力には、 明らかに卓越したパワーと柔軟性がある。そして OneClick のボタンはカ スタマイズ可能でもある。テキストやアイコンを含むことができる、いろ いろなやり方、自由な大きさや色で描画することができる、などのように だ。だから OneClick のパレットをアプリケーションのすぐ右に現れるよ うに設定できる。それでもなお、OneClick はボタンとパレットから成る システム(これは私が OneClick でマクロスクリプトを書きたい理由だ) ではない。OneClick はスクリプトそのものなのだ。

おかしいまでの、スクリプト機能 -- OneClick のスクリプトは真のプロ グラミング言語で書かれたテキストである。これは、変数やループや分岐 構造、算術演算や文字列の操作、先進のオブジェクト指向の文法といった 真のプログラミング機能をもつ。さらに OneClick はこの言語をよりパワ フルにするためのたくさんの組み込み関数をもつ。

もちろん、あなたがマクロユーティリティに求めるすべてのユーザーライ クな動作を実行することもできる。たとえば、あなたがマクロユーティリ ティに求めるあらゆるユーザーライクな動作を実行すること。任意の座標 をマウスでクリックすること(モディファイキーやドラッグの併用も可 能)。タイプ入力。メニュー項目を参照してその中から一つを選択するこ と。ボタンの状態を調べ、可能ならば押すこと。ウインドウの選択、スク ロール、リサイズ、位置の変更、ズーム、そして畳むこと。ウインドウ自 身のテキストを読むことも可能だ。

ほかに、システムや Finder レベルの多種類の動作を実行することもでき る。その動作とは、次のようなものだ。クリップボードを操作すること。 実行中のプロセスを表示し、隠し、並び替えること。スクリーンの解像度、 サイズ、位置の取得。ファイルやフォルダの新規作成、コピー、開く、削 除といった操作。ファイル内のテキストや Finder 情報の読み取り、また は変更。ボリュームのマウントや、情報の取得。

ユーザーの入力を受け取り、それに応答することもできる。ダイアログを 表示し、カスタマイズしたボタンを配置すること。そのダイアログにテキ ストを入力させたり、リストから項目を選択させたり、標準的な Open/Save ダイアログやカラーピッカーを表示したりといった動作。テキストによる ヘルプを提供し、ユーザーがボタンにカーソルを合わせて Shift と Option キーを押したときにだけ表示させるといったこと。カーソルの変更。サウ ンドを鳴らし、Speech Manager でのテキストの読み上げ。マウスボタンや キーボードの状態を調査して、ユーザーが押しているモディファイキーを 判定し、一つのボタンを多機能化すること。ほかに、ボタンをドラッグ& ドロップ対応にすること。テキストをボタン から ドラッグするような 設定。ユーザーが選択するためのいろいろなポップアップメニューを作る こともできる。たとえば、あなたがゼロから作ったメニュー。ディスク上 のファイルやフォルダをあらわす階層メニュー。任意のフォントのすべて の文字を表示するメニュー。ポップアップメニューのように振る舞う完全 なパレット。

あなたは(OneClick のスクリプトを使って)AppleScript で書かれたスク リプトを実行できる。従って非スクリプタブルなアプリケーションばかり でなく、もともとスクリプタブルなアプリケーションについて(そのアプ リケーションはもともと AppleScript を理解するから)スクリプトを書く ことができる。Apple 社の Script Editor でコンパイルしたスクリプト ファイルを使うこともできるが、たいていの場合はボタンスクリプト内に インラインで現すことができる。

結局、OneClick のボタンやパレットに関することすべては、スクリプトか らコントロールできる。ボタンの文字やアピアランスを変え、ボタン上で フィードバックとして温度計や円グラフを表示し、ユーザーがドラッグに よってボタンやパレットを移動したならその状態を把握し、“on the fly” でパレットを作成してボタンを配置することさえできる。つまり、パレッ ト自身が強力なインターフェースツールになり、ボタンの組み合わせによっ て、何らかの複雑な生きた機能(例えばカレンダー)を形作ることができ るのだ。

このようなパワーと柔軟性からして、OneClick はすばらしく独創的な用途 に富んでいる。この事実は、WestCode 社のページにある、ユーザーに寄贈 されたパレットの例を見ると感じられるだろう。実際に WestCode 社は同 社の OneClick のフルパッケージ版からいくつかのパレットを抜粋して単 独でも販売しており、これには OneClick エンジンのランタイムバージョ ンが付属する。

<http://www.westcodesoft.com/FTP-Buttons.html>

これにくらべれば私の OneClick の使用法などはむしろ控えめなくらいだ。 なぜなら私は、他人の作ったスクリプトをあまり積極的に利用しないから だ。しかし、私の独自な使用法も、OneClick の可能性を十分に引出してい る。私のコンピュータでは、パレットやボタン、そしてキーボードショー トカットを、以下の用途にむけて用意している。

くわえて、私は WestCode 社によって提供されているボタンを、次のこと に使っている。すなわち、テキストクリッピングを管理し、音量を変え、 様々なシステムフォルダを開き、ウインドウやプロセスを操作し、さらに は Finder の階層を行き来するのである。これらの多くは私が以前から別 の手段を講じて実現していた機能である。だが、OneClick さえあれば、ほ かの多くのユーティリティや機能拡張は不要のものとなるだろう。

私は OneClick が大変気に入っているし、手放したいなどとは思わないの だが、OneClick の使用はときに不快感やリスクを伴ったりする。つぎのト ピックでは、OneClick の好ましくないを考えてみよう。

冷や水 -- ナイスなオンラインヘルプやコンパイル時のエラーチェック にもかかわらず、スクリプティング環境は粗削りだ。OneClick には検索コ マンド、内蔵デバッガ、ランタイムエラー告知がないため、OneClick は私 が「あてずっぽウェア」と呼んでいるものの部類に入ってしまう。スクリ プトの構築やデバッグはもとより、単にスクリプトを理解しようとするだ けでも苦しみを伴うか全く不可能ということになる。こうした問題を回避 する方法やツールを考案することはできるものの、そもそもこんなことが 必要なのが間違いだし、第一初心者には無理だ。その上 EasyScript 言語 には隠れた落とし穴があるため、さらに厄介なことになる。たとえば「for x = 1 to n」とすると、n がゼロでもループが実行されるし、複雑な入れ 子になった関数はうまく動かないことが多いため、まずすべての部分を個々 の変数として求めなければならない。

時折クラッシュしたり、原因不明のトラブルに遭遇するのが嫌だったら OneClick には近寄らない方がいいだろう。時々、たとえば私の最初の本を 書いていた時、OneClick を使うことを完全に止めければならないことが あった。度重なるクラッシュとデータの破損と付き合うわけにはいかなかっ たからだ。このレビューを書いていた数日間でさえ、スクリプトを開いて 編集しようとして、スクリプトを保存しようとして、それに保存してあっ たボタンをインポートしようとしてクラッシュした。保存してあるパレッ トを何度ロードしようとしても静かに失敗した。ユーザーからはスクリプ トがいつの間にかぐちゃぐちゃに書き換わっていたり、突然コンピュータ が勝手な動作をしたことが報告されている。ここ数日の間、私も画面上に 正体不明のウインドウが開いて閉じたり、Finder でアイテムが複製されて いたりといった原因不明の現象が起きている。パレット破損の危険は常に ある。こうした問題の一部は時間指定のハンドラによるものかもしれない。 こうしたハンドラがトリガされる際、何が起きているか全く知らせてくれ ないほか、お互いに干渉しあうこともあるし、どんなアクションが実行さ れることになっているかを知るすべもない。私が自分で作ったボタン以外 を避ける理由の一つはこれだ。

ユーザーのマウスクリックを受け止めたり、ボタンを押したりメニューを 選ぶためにマウスクリックを実行するといった OneClick の最も基本的な 機能でさえ、完全に信頼できるものにはなっていない。OneClick は時とし て論外に遅い。Acrobat Reader のウインドウを前面に持ってくるのに 1 秒以上もかかることがある。REALbasic では、ボタンは使い物にならない ほど反応が鈍い。 DiskTop ではもっとひどい。Eudora では、OneClick で ウインドウをアクティブにすると、時折間違ったウインドウがアクティブ になってしまう。計算をさせると結果がプラスの数値になるはずのところ、 マイナスになることがある。スクリプトエディタウインドウに入力すると、 時として入力した文字が背後のアプリケーションに「抜け落ちる」ことも 報告されている。

WestCode Software 社の OneClick 生き残りとサポートに対する熱意も、 これまでの実績からするとあまり頼るになるとはいえない。1996 年末、 WestCode 社は私に OneClick 1.5 がもうすぐ出るから 1.03 のレビューは 控えた方がいいというアドバイスをくれた。それから実際にアップグレー ドが現れたのは 3 年後の 2.0 だった。 2.0 のベータ版開発は歓迎すべき ものではあったが進捗は極めて遅く、バグをフィックスするよりもバグレ ポートに対して言い訳をする方に力を入れていた印象を受ける。多くの不 具合は今回のリリースに持ち越されている。シンタックスエラーがあった 際にスクリプトウインドウが壊れること、「a」を使ったキーボードショー トカットが機能しないこと、それに Mac OS 9 対応を謳ってはいるものの、 Appearance Manager や Navigation Services ダイアログの一部に不具合 がある。これから OneClick を使ってみようという方は、こうしたずさん さが目くじらを立てるほどのものではないか、それとももっと深刻な問題 の現れなのかを各自で判断しなければならない。

マニュアルはなかなか良くできているが、OneClick の実際の動作とのずれ が散見される。たとえば、インストールはマニュアルで説明されているよ うには行われないし、一部のスクリーンショットは現実のものとは異なる し、明記されている機能(たとえばコントロールバーボタンを OneClick ボタンとして使う機能)で実際には動かないものもある。重要だがともす るとわかりにくい機能、たとえばボタンのロック(スクリプトの編集中に ボタンを押すことができるようにするもの)については全く触れられてい ない。また、マニュアルは EasyScript 用とその他すべて用の二冊がある。 これは OneClick は自分では全くスクリプトを書かなくても有用なものだ という WestCode 社の主張を反映している。このうち 70 ページほどは内 容が重複しており、扱いが厄介なうえにわかりにくい。

結び -- 私にとって、OneClick のスクリプティング能力、パワフルさ、 柔軟性、それに圧倒的な有用性はこれまでに述べた欠点を補って余りある。 しかも価格も安い。ただ、OneClick がもう少しクリーンな動作をしてくれ ればとは思うし、将来性についてももう少し希望を持たせてほしい。そう はいっても、オンラインで入手可能な多数の強力なパレットを利用したり、 コンピュータのインターフェースをよりクリーンで合理的なものにしたり、 あるいはコードをいじったり、カスタマイズしたり、新たに書きたいとい うのなら、OneClick はすばらしいインターフェースを備えた優秀なマクロ プログラムであり、真剣に検討するに値する。

OneClick は通常 500 K 以下の RAM しか使用せず、インストールには 7 MB を要する。価格は 2 種類の PDF マニュアルが付属するダウンロード版 で 60 ドル、CD と1 種類の印刷マニュアル付きで 80 ドルとなっている。 スクリプティングマニュアルの印刷版は 20 ドルの追加となる。OneClick は System 7 以降と 68020 以降のプロセッサを必要とする。


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