TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#531/08-May-00

詐欺、欺瞞、窃盗。これが今週お届けする Gadget Software 社の卑劣なお 話の核である。Mac シェアウェアデベロッパーである同社がプログラムの 無断借用をしたのは歴然だ。そして、今週は Mac が起動しているときに安 全に抜き差しできるデバイス、できないデバイスのお話のほかに、Mac OS 9.0.4 下での同期関連の修正をした Palm の HotSync 2.6.1 のリリース、 Palm に対応した Web Confidential 2.0、FileMaker のセキュリティホー ルを修正した Web Companion 5.0v4 のお知らせがある。

目次:

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今回の TidBITS のスポンサーは:


MailBITS/15-May-00

(翻訳:尾高 里華子 <rikako@pobox.com>)
(  :湯本 敬 <ymo@big.or.jp>)
(  :三好 泰子 <yokomo@mio.to>)

HotSync 2.6.1 は Palm との同期に関する問題を解決する -- Palm 社は HotSync バージョン 2.6.1 をリリースした。これは、Apple の最近の Mac 0S 9.0.4 へのアップデートによって引き起こされる Palm ハンドヘルド機 の同期に関する問題を解決するもの。この問題は Mac の USB ソフトウェ アの変更によって引き起こされたもので、特に AvantGo や Outlook Express のために HotSync コンジットを使う時に、HotSync 操作がタイム アウトしてしまう。既存の Palm Desktop 2.5 のユーザーは、HotSync 2.6.1 のソフトウエア(1.8 MB)だけをインストールすることができるが、 新規のユーザーや、Palm Desktop 2.5 より古いバージョンのユーザーは、 無料の 6.6 MB の Palm Desktop 2.6.1 パッケージをダウンロードする必 要がある。このリリースは、Handspring 社の Palm Desktop 2.6 のすぐ後 に続いてリリースされている。表面上は同じソフトウエアであるように見 えるが、Handspring 社のリリースは、恐らく Visor ハンドヘルド機の USB 専用の HotSync クレードルを使うための追加のソフトウエアを含んでいる はずである。[JLC]

<http://www.palm.com/support/macintosh/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05917>
<http://www.handspring.com/products/vindex.asp>

Web Confidential 2.0、Palm 機と同期接続 -- Alco Blom 氏が Web Confidential のメジャーアップデート、バージョン 2.0 をリリース。Web Confidential は、取り扱いに注意を要する情報の保管と管理を行う Macintosh 用のシェアウェアユーティリティ(20 ドル)である。 ( TidBITS-441 “Web Confidential:あらゆる秘密に安全を”を参照)。 Web Confidential の新しい機能の中で主要なものは、Rene Laterveer 氏 の Palm 1.0 用の Web Confidential のデータとの同期がとれるようになっ たことである。この Rene Laterveer 氏の Palm 用 Web Confidential と いうのは、別の 20 ドルのシェアウェアで、Palm OS ベースのハンドヘル ド機で稼働、そして、Palm 上の自分の取り扱いに注意を要する情報に対し て 、同様に強力な暗号化を行う。この Palm バージョンは、ダウンロード して、30 日間限定で試すことができる。ただし、Web Confidential の同 期コンジットは、登録ユーザのみに送られる。Web Confidential 2.0 に は、他にも、いくつかの新しい機能として、Netscape Communicator の Web フォームへの書き込み、最後に修正を加えたカードの属性の表示、 Macintosh と Windows にまたがったファイルのフォーマット(今のとこ ろ、暗号化されていないファイルがまたがった時のみであるが)のサポー ト等が追加されており、また、プログラム上のマイナーな変更がなされて いる。登録ユーザは、Web Confidential 2.0 に、無償でアップグレードで きる。そして、ダウンロードサイズは 540K 、Palm バージョンは 105K で ある。 [ACE]

<http://www.web-confidential.com/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05020>
<http://www.web-confidential.com/notes20.html>

Web Companion 5.0v4、FileMaker の落とし穴を埋める -- FileMaker 社 は、Web Companion 5.0v4 をリリース。これは、FileMaker Pro 5 と FileMaker Pro 5 Unlimited における重大なインターネット上のセキュリ ティホールに的を絞って取り組んだものである。( TidBITS-529 “FileMaker 5 インターネットのセキュリティに落とし穴”を参照)Web Companion 5.04v では、フィールド・レベルでセキュリティの設定を施し てある。これは、Web 公開データベースのすべてのフィールド内容を、電 子メール経由で、あるいは、FileMaker 5 の XML 公開機能を使って、悪者 が取って行けないようにするためである。さらに、このアップデートでは、 FileMaker Pro 5 の新しい電子メールの機能のうち、いくつか使用できな くすることによって、正体不明の電子メールを送るのに利用されないよう にしている。このアップデートは、573K。FileMaker Pro 5、また、 FileMaker Pro 5 Unlimited で Web Companion を使っているすべてのユー ザにアップデートするよう推奨している。 [GD]

<http://www.filemaker.com/support/webcompanion.html>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05915>

アンケートのお知らせ:正当な代価の支払い -- 今週号の Matt Deatherage 氏の記事は、他所のデベロッパーが作成したシェアウェアユー ティリティを不正利用した Gadget Software 社の話で、これは代価を支払 わないソフトウェアの使用の特殊な例である。しかし、シェアウェア料金 を払わずにプログラムを利用するということは巷でよくあることではない だろうか。シェアウェア作成というのは経済的な点でビジネスとして成り 立つものだろうか、それとも、作業に見合うだけのシェアウェア料を払っ てくれる人の数など高が知れているのだろうか。そこで今週は、 「Macintosh で常用しているシェアウェアプログラムのうち、代金を支払っ たものの割合はどのくらいあるだろうか」というアンケートをとりたいと 思う。我々のアンケートは匿名制なので、どうか正直に答えていただきた い。[ACE]

<http://www.tidbits.com/>
<http://db.tidbits.com/poll/AboutPolls.html#privacy>


オンのままの接続

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:尾高 里華子 <rikako@pobox.com>)
(  :吉田 節 <benjamin.takashi@nifty.ne.jp>)
(  :冨田 将英 <atimot18@sa2.so-net.ne.jp>)

先週のクイズの問題は、「Macintosh に電源が入っている状態で、デバイ スを接続するために絶対挿してはいけないポートはどれか」というものだっ た。2,200 を超える回答のうち、64 % の方が正解の SCSI を選んだ。そし て、29 % が紛らわしいが正解ではない選択肢 ADB にだまされてしまった。 シリアルポートや Ethernet と答えた人が一部いたものの、USB や FireWire が正解ではないかと思った人がほとんどいなかったのにはほっと した。では、選択肢に挙げていたものに加え、回答者を変に迷わせないよ うに選択肢に入れなかったものについても見ていこう。細かい部分はそれ ぞれの Macintosh の仕様によって異なってくるので、各マシンに同梱され ていたユーザーの手引きに出ているお墨付の取り扱い方を確認していただ きたい(Apple 社は古いマニュアルもすべてオンラインに置いてあるので、 なくしてしまった方はこちらを利用いただきたい)。TidBITS Talk ではさ らに細々とした面白そうな話が出ていた。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbpoll=40>
<http://www.info.apple.com/info.apple.com/manuals/manuals.taf>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=1025>

余談ではあるが、PowerBook がスリープしている状態は、「オフ」という かどうかという質問をいただいた。スリープ状態にある PowerBook はほと んどの場合においてオフになっていると見なしてよいというのが Apple の 見解ではあるが、SCSI デバイスは(とりわけ旧型の PowerBook では)、 要注意の例外である。

SCSI -- Mac にはいろいろなものを繋ぐことができるが、Mac が起動し ている状態で安全に繋いだり外したりできない SCSI が今回のクイズの唯 一の正解だった。もちろん、「安全に」と「可能である」は同じことでは なく、電源を切らずに SCSI デバイスを挿したり抜いたりすることが「可 能である」ことは否定しない。Apple は、「いかなるケーブルや機器も繋 いだり外したり、または、SCSI の ID 番号を変更する前に必ず Macintosh およびすべての周辺機器を必ずオフにする」ことを推奨している。

<http://til.info.apple.com/techinfo.nsf/artnum/n9387>

これが問題なのだ。この件の委細は、ディスク復旧プログラムの開発を行っ ている Sentient Software 社の David Shayer 氏から寄せていただいたも のである。SCSI のコネクタは適切なピン同士以外のものが触れることがな いようには設計されなかった。このため、適切でないデータラインとの接 触やショートが起こりやすい。SCSI チェーンに機器を追加する場合は、 チェーンの一番最後の部分に付けるのが普通だろう。そのため、新しく最 後尾になった機器にターミネータを付けるまでは、その SCSI チェーンは ターミネータなしの状態になってしまう。つぎに、SCSI 機器のひとつひと つが、0 〜 7 までの個々の ID 番号を割り当てられていなければならな い。2 つのディバイスに同一 ID 番号がアサインされていたら、SCSI ID コンフリクトが起こり、Mac が起動できなかったり、他の問題があるよう な表示がでたりする。ところが、Mac が立ち上がり、そこに SCSI コンフ リクトを起こしているハードディスクが繋がっていたとしたら、Mac OS が 正しくない機器にマスターディレクトリのブロックを書き、正しいものを 捨ててしまい、データが無くなってしまうということになりかねないのだ。 つまるところ、SCSI は USB や FireWire とは異なり、新しいデバイスの ドライバを自動的にロードしてはくれない。もっとも、Robert Polic 氏作 の無償の SCSIProbe のようなユーティリティを利用するという手はあるの だが。

<http://hyperarchive.lcs.mit.edu/cgi-bin/NewSearch?key=scsi-probe>

SCSI 機器をより安全に付け外ししたいと切実に考えるなら、TidBITS のス ポンサーである APS Technologies が販売している APS SCSI PowerPlug というまさにうってつけの製品がある。これは、SCSI バスに接続または取 り外ししようとしている機器を電子的に絶縁させ、線をこの PowerPlug 内 で切断し、ターミネータが常にアクティブであるようするためのスイッチ である。SCSI PowerPlug には、SCSI チェーンの最後の部分に付けるアク ティブターミネータ付きの SCSI PowerPlug II と、最後以外ならどこにで も取り付けることのできるターミネータのない SCSI PowerPlug NT の 2 種類がある。どちらも価格は 50 ドルで同社のカタログにでているが(電 話: 800/374-5688 または 816/483-6100)、Web サイトには載っていない。

<http://www.apstech.com/>

なお、Apple は SCSI チェーン上に稼働している機器がある場合はその チェーン上にある SCSI 機器をオン・オフしないように薦めているし、SCSI 機器によっては Mac をオンにする前に電源を入れておかなければならない ものもある。それにもかかわらず、SCSI ベースのスキャナなどは電球をも たせたり省エネの目的で利用するときだけしか電源を入れてもらえなかっ たりする。Mac が起動しているときに SCSI 機器の電源を入れたり切った りすることでダメージを受けるというのはまゆつばものに聞こえるかもし れないが、Mac を混乱させたり、場合によっては再起動をしなければなら なくなったりする。Mac が起動しているときに外付けハードディスクの電 源を切りたい場合は、電源を切る前にディスクをごみ箱へドラッグしてア ンマウントをするのは特に重要である。そうしなければ、まずデータがだ めになってしまうだろう。

ADB -- 申し訳ない。これは引っかけ用の選択肢だった。Macintosh がオ ンになっているときに ADB 機器を接続したり外したりすると、電源を送っ ているピンがぶつかって ADB コントローラがお釈迦になってしまう危険が あるのでやってはいけないことなのは Macintosh を長年使っている方の多 くがご存知のことである(これをもとに戻す唯一の公式な手段は、新しい マザーボードを入れるというお高く付くものである)。しかし、これはお おむね事実であり、確かに気をつけるべきことではあるが、 必ずしも 正しいとは限らない。ADB が付属する最後のモデルの一つである PowerBook G3 Series は ADB 機器をすぐに抜き差しできるものであると、下記のリン クの開発資料にでている。(このマシンに同梱されているマニュアルにも ADB 機器の抜き差しは問題ないと書かれている。)さらに、PowerBook 5300 をはじめとする一部のマシンは、ADB 機器が過剰な電流を受け取った場合 は、ADB を切って PowerBook に影響が出ないようにするための回路を搭載 している。

<http://til.info.apple.com/techinfo.nsf/artnum/n30935>
<http://developer.apple.com/techpubs/hardware/Developer_Notes/ Macintosh_CPUs-G3/PowerBookG3Series.pdf>
<http://til.info.apple.com/techinfo.nsf/artnum/n21042>

ADB を抜き差ししてはいけないという推奨に逆らい、多くの人が少なくと もたまに断行している。これに当てはまる方は、別のピンにぶつからない ように十分に注意していただきたい。

シリアル -- シリアル機器は(LocalTalk ネットワークも含め)いつ でも抜き差ししてよい。しかし、Mac に物理的な問題が発生しなくても、 特定のデバイスが常に利用できるようになっているよう要求するソフトウェ アがある(たとえば、自動受信をするように設定されているファックスモ デムや、ローカルネットワークで共有しているシリアルプリンタなど)。 さらに、LocalTalk を抜いてしまうと、ネットワーク上のサービスは利用 できなくなるので、何をやっていたか次第で、Mac や立ち上がっているア プリケーションからクレームが付いたり、クラッシュしたりということも あるだろう。

一部 Mac の GeoPort シリアルインターフェースは電源供給用の 9 本目の ピンがあり、そこへの抜き差しは Mac や機器にダメージを与えるのではな いかという疑問があった。しかし、Apple は GeoPort Telecom Adapter が カチッカチッという音を出し始めたら、数秒アダプタを抜いて対処するよ うにと言っている。これはつまり、GeoPort が抜き差しを許容するデバイ スであるということだ。

<http://til.info.apple.com/techinfo.nsf/artnum/n18904>

Ethernet -- Ethernet のあらゆるバリエーション、すなわち 10Base-T や 100Base-T、少し昔の細い Ethernet(10Base-2)や太い Ethernet (10Base-5)、さらに Apple 社独自の AAUI 内蔵 Ethernet は、いつでも 安全に抜き差しできる。しかし、そうすると当然、Ethernet を使っている サービスを中断することになる。また、デージーチェーン形態につながれ た古いスタイルの Ethernet ネットワークは、マシンをそこから突然抜き 取ると、一時的に動作が停止したり、ノイズが流れたり、他の問題を示す ことがある。だが Mac にもネットワークにも物理的な危険はない。 Ethernet ネットワーク上のサービスが損なわれると、LocalTalk ネット ワークと同様に、Mac で動いているアプリケーションは混乱したり、クラッ シュすることさえあるかもしれない。

USB -- USB デバイスはホットスワップ可能なように設計されている。そ のためにコネクタと、USB ドライバの自動ロード方式の両方が考慮されて いる。これが、Apple がマウスやキーボードのようなデバイスを ADB から USB へ変えたことのひとつの理由であり、同社はそれを自慢してさえいる。 SCSI と同様に、Mac から USB ハードディスクを抜くときには先にマウン トを解除しておこう。さもなければデータが壊れる危険性がある。

<http://www.apple.com/usb/>

FireWire -- USB のように、FireWire デバイスはいつ Mac に抜き差し しても安全である。これは Apple が積極的に売り込んでいる、FireWire テクノロジの特徴のひとつであり、コネクタの設計と FireWire ドライバ の自動ロード方式がそれをサポートしている。しかし、痛んだレコードの ように聞こえることを承知で言うと、FireWire ハードディスクを抜くとき には先にマウントを解除しておこう。(余談だがレコードという単語には、 もうじき世の中から消え去るもの、という比喩がある。)

<http://www.apple.com/firewire/>

オーディオ入出力 -- Apple は、オーディオ入出力デバイスを接続する 時にはすべての装置の電源を切るよう推奨している。しかし、Mac のマイ クロホンジャック、オーディオ入力、スピーカジャックにオーディオデバ イスを抜き差しするのはそれほど危険なことではない。いちばん覚えてお くべきことは、接続する前にすべての装置の音量を下げておくことである。 そうすれば、不注意でスピーカを大音量で鳴らしたり、壊したりすること はない。不適当な装置を接続すると、これらのポートを壊す可能性が あ る 。私たちは、Power Mac 8500 のオーディオ入力に自分の 300 W アン プの出力をつないで壊してしまったあるベーシストを知っている。しかし、 これらの実例は Macintosh の欠陥ではない。ほとんどのポートは、一般家 庭電源レベルの電流に接続できるものではないのは確実だ。

ビデオ -- ビデオはややこしい問題だ。だから、この問題はクイズには 入れなかったのだ。Apple のドキュメントでは常にビデオ機器を接続する 際には電源を切ることを勧めているにも関わらず、マニュアルでは一切の ダメージの警告はされていない(たとえば SCSI では警告がある)。いく つかの Mac はモニタもしくはビデオアダプタを接続しないと起動しない。 また、Timbuktu Pro (通常はモニタのない Mac を制御するのに使われる) は最低でも Mac が解像度を決定するためのビデオアダプタが必要である。 さらに、こんなことはしたくないが、もし異なるリフレッシュレートまた は解像度で動作する二台のモニタの一台を引き抜き、もう一台を接続する ようなことをすれば、問題を起こすだろう。キーボードから Mac を終了す るには、パワーキーを、そしてリターンキーを押すのが簡単である。我々 のようにモニタレスの Mac をサーバーとして動作させている人間は、この 方法に慣れてしまっている。

PowerBook に外部モニタを接続する場合、まず PowerBook を終了するかス リープさせてから接続しなければ、外部モニタの存在を認識してくれない。

PC カード -- 通常 PowerBook で使用されるクレジットカードサイズの 拡張カード、PC カードは、Mac の電源が入っているときでも抜き差しでき る。しかし、必要なドライバーが起動時に読み込まれていなければ Mac は カードを認識できないだろう?カードを取り出すには、カードのデスクトッ プアイコンをゴミ箱にドラッグするか、優雅に取り出すには特別メニュー から「取り出し」を選択する(いくつかのモデルではさらにイジェクトボ タンを押さなければならない場合もある)。

<http://til.info.apple.com/techinfo.nsf/artnum/n16167>

バックアップ、バックアップ、バックアップ -- 我々は、推奨されるア プローチをお伝えしようと試みたのだが、「安全に」と「可能である」の 違いのところで述べたように、時に我々ですら自らのアドバイスを守らな いこともある。TidBITS Talk においてAlex Hoffman 氏は、デバイスをホッ トスワップしないように勧ている私のことを、冗談まじりに臆病者とつる し上げているが、実際の私はしょっちゅう ADB 機器をホットスワップする し、Mac の電源が入っている時に SCSI 機器の電源を入れたり切ったりも する。自分のアドバイスを無視しているのだ。なぜなら私の所有する古い ハードウェアの多くは基本的に価値はないし、定期的にバックアップをとっ ている。確かに、SE/30 のマザーボードを ADB コネクタのつまらないこと でダメにしてしまったらそれは悲しいことだが、前日のバックアップをも とにしてすべてのサービスを他のマシン上に、15 分以内で復旧することが できるのだ。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbser=1041>

したがって、もしも何かのハードウェアを焦がすような危険を冒したいな らば、最低でも現状のバックアップだけは確実にとっておくように。それ でもマザーボードを失えば後悔はするだろうが、少なくともデータを犠牲 にすることはない。


Gadget 審判

by Matt Deatherage <mattd@macjournals.com>
(翻訳:尾高 修一 <shu@pobox.com>)
(  :吉田 節 <benjamin.takashi@nifty.ne.jp>)
(  :亀岡 孝仁 <tkameoka@fujikura.co.jp>)

ソフトウェア開発が簡単であることはまずない。プログラマーは技術的困 難、バグ、それに迫る締切と戦わなければならないし、それ以前に役に立 つ製品を思いつき、適切な価格で素早く市場に送り出し、競合製品に差を 付けなければならない。コンピュータのユーザーはこの困難な道を乗り越 えたプログラマーに惜しみない賞賛を送り、Macintosh の世界に足跡を遺 そうとするデベロッパーは毎日のように姿を現す。

だが、栄光をわがものとするにはそれだけの努力が必要だ。今年現れたシェ アウェアデベロッパー、Gadget Software は盗作と詐欺だけに力を注ぎ、 既存のユーティリティをわずかに見た目を変えただけで自社名を付け、配 布するという行いに走った。二週間前に MWJ が初めてその盗作行為を表沙 汰にして以来、同社の旗色は悪くなったのだが、今日に至って Gadget Software は消滅してしまったように見受けられる。いずれにせよ、これは Macintosh 世界には珍しい盗作、詐欺と厚顔無恥のストーリーなのだ。

Faster のはったり -- 問題が明るみに出たきっかけは Gadget Software が数ヶ月前にリリースした Faster というユーティリティだった。このユー ティリティは Macintosh を最高 3 倍高速にするというものだ。ベテラン Macintosh ユーザーならこの謳い文句だけですぐに怪しいと感じるだろう。 単純なソフトウェアだけでコンピュータが 3 倍も速くなるのなら、Apple がそれを Mac OS に組み込むか大手のソフトウェア会社が買い取っていた はずだ。

ソフトウェアでハードウェアを高速にすることは不可能だ。266 MHz の PowerPC G3 プロセッサを搭載した iMac をソフトウェアで 400 MHz にす ることはできない。これに最も近い効果があるのはクロックアップで、プ ロセッサをハード的に公称値よりも高速に動作させる技だ。

現実には、Faster は情けない代物だった。このソフトウェアはアクセラ レーション技術をまったく用いておらず、単に旧型 Mac でも十分に高速に 処理できるタスク(たとえばスクロール)を現行の超高速 Mac で遅くする ための Mac OS ルーチンを無効にするだけのものだった。Faster 1.x はこ の遅延ルーチンにパッチを当て、これでウインドウのズーム、スクロール、 アニメーションなどが高速になったように 見える のだが、大切なタス クはまったく速くはならない。

敬意を失敬 -- ソフトウェアがハードウェアをできるだけ高速に動かす 方法は(より 高速に する、ということとは違って、より 効率よく するということだ)、プロセッサによるサイクルの割り当てを変えること だ。理想を言えば、大切なタスクを実行している際に、コンピュータがさ ほど大切でもないタスクにサイクルをムダ遣いしてほしくない。Orchard Software の CPU Doubler や Clarkwood Software の Peek-A-Boo といっ たユーティリティがこの方法を用いており、Mac OS がプログラムに割り当 てるプロセッサタイムをオーバーライドするのだ。

<http://ourworld.compuserve.com/homepages/orchardsw/CPUDoubler.html>
<http://www.kagi.com/bobc/>

4 月に、Gadget Software は Faster 2.0 をリリースし、もともと利用価 値ゼロの製品にこういった機能を追加した。このリリースが MWJ の私たち の目に止まった。というのは、Gadget が“採用した”インターフェースが 79 ドルの CPU Doubler に酷似していたからだ。いずれの製品もアプリケー ションに 1 から 64 までの優先順位を指定し、デフォルトは 32 となって いる。Faster 2.0 はアプリケーション除外、システム機能拡張をロードし ないようにするキー設定、オン・オフの仕方などが CPU Doubler と同じ インターフェースとなっていた。

そこでもう少し詳しく調べてみて、私たちは唖然とした。Faster 2.0 は CPU Doubler を完全にコピーしたものだったのだ。Gadget Software は単 にインターフェースを変えてコピーライトを書き換えただけで、コードそ のものはまったく変わっていなかった。cdev リソースには、たとえば InitCPUDoubler や CloseCPUDoubler という具合に CPU Doubler のルー チン名がそのまま残っていた。そうして、Gadget には CPU Doubler のコー ドを使用する法的権利はなかったのだ。Orchard Software の社長、Mike Jonas 氏は、「私たちは Gadget Software に、弊社の製品のコードをいか なる形態でも使用する権利を認めていません」と MWJ に語った。

盗作もいいところだ。

Orchard Software が Gadget Software に抗議したところ、Gadget は Web サイトに近々“CPU Doubler の技術を使用していない” Faster 2.0 をリ リースすると発表した。また、「すべてを明かそう。笑っていただこう。 我々の悪ふざけを発表することを作者が認めてくれることを祈ろう。」と いう記述もあった。間もなく Gadget は Faster 2.1 を発表したが、これ は単に CPU Doubler のコードをいくらか上手に隠しただけのものだった。 Faster 2.1 の違いは、メインのインターフェースが REALbasic アプリケー ションとなっており、ユーザーにシェアウェア料を支払わせるようになっ ているということだ。そう、他人の製品を使って自分に金を払わせようと いうわけだ。Gadget は盗作を“冗談”と称していたかもしれないが、後述 する同社の行いから盗作がそもそもの目的だったことは明らかだ。

MWJ で Faster 2.0 が CPU Doubler のコードを使用していることが暴露さ れた後、Gadget Software は 2 つの製品をリリースした。さらに詳しく調 査したところ、一方は既存のソフトウェアを 1 バイト残らず完全にコピー したもので、もう一方はほとんど完全コピーであることが判明した。

WindowApp 1.0 -- 5 月初めに Gadget 社は WindowApp 1.0 をリリース した。このフリーウェアユーティリティは、アプリケーションメニューを 次のように階層化する。WindowApp の働きによって、アプリケーションご とに項目がひとつだけ表示されるのではなく、各アプリケーションのエン トリがサブメニュー(そのアプリケーションが開いているウインドウのリ スト)を持つようになる。

聞き慣れた話ではないだろうか? Hiro Yamamoto 氏は同じことを行うフリー ウェアの ApplWindows を 1993 年にリリースした。その後の 4 年間、 ApplWindows は変更可能な設定項目を持つコントロールパネルへ進化した。 だがバージョン 1.0 はシンプルな機能拡張だった。これは WindowApp 1.0 とそっくりだ。(ApplWindows はもはや活発にメンテナンスされておらず、 Mac OS 8.5 以降では信頼できないものとなっている。)

<http://hyperarchive.lcs.mit.edu/cgi-bin/NewSearch?key=appl+windows>

これは偶然の一致ではない。MWJ への手紙の中で Hiro Yamamoto 氏は、 WindowApp 1.0 が ApplWindows 1.0 の完全なコピーであることを確認した と言っている。Gadget Software 社はアイコンとバージョンリソースを自 社のものに変えたに過ぎない。INIT リソース内の Yamamoto 氏のコード、 それから Finder のバルーンヘルプリソースと FREF リソースは、 ApplWindows のオリジナルとまったく同じである。

Yamamoto 氏は Gadget Software に手紙を書き、WindowApp の配付と、彼 の作品に著作権を主張することを中止するように求めた。彼は Gadget 社 の回答を披露してくれたので、以下に全文をお見せする。“こんにちは、 それは私たちが作りました。私たちが作ったんですよ! はははは... とも かく、WindowApp は削除しました。それに、これは無料だったんです。さ ようなら、GS より。” 同社は他人の作品を公然と盗んだことについて弁 解しておらず、彼らが“それを作った”と主張している。この話は確かに 真実かもしれないが、彼らは ApplWindows から WindowApp を作ったので あり、それはまったく容認できないことだ。

Magnet Menu 2.3 -- つい先週、Gadget Software 社は Magnet Menu 2.3 をリリースした。これは 20 ドルのユーティリティで、クリックしなくて もメニューを開くことができる。この新リリースは互換性の改善と多数の バグ修正を約束していた。不幸なことに、これは AutoMenus Pro 3.5.1 と いう(消滅したように見える Night Light Software 社が最後の改訂を 1997 年に行った)15 ドルのシェアウェアが約束していたことでもあった。 Magnet Menu 2.3 の変更点リストは AutoMenus 3.5.1 のリリースノートに とても似ており、もっとバグ修正があるかと思わせる言葉が加えられている。

<ftp://ftp.amug.org/pub/amug/amug-files/system/a/automenus-pro-3.5.1.sit.hqx>
<http://www.nlsoftware.com/>

私たちがちょっと見ただけで、Gadget 社のごまかしは再び見破られてし まった。2 つのプログラムのユーザーインターフェース要素(アイコン、 画像、テキストが少し、カーソルが少し、ダイアログボックス)はすべて 違っている。しかし 残りのリソースはすべて 同一である。ほとんどの バイトが同じだ。

とりわけ罪を逃れないのは、オンラインヘルプとなる TEXT リソースであ る。それらは AutoMenus Pro から変更されておらず、AutoMenus Pro に言 及したままで、AutoMenus Pro の登録用電話番号とメールアドレスさえも 含んでいるのだ! Gadget Software 社は自分たちが思っているほどには、 リソースの編集もソフトウェアを盗むのも上手ではなかった。

その他の製品 -- ある特定のソフトウェアが盗作であることを証明する ためには、それをオリジナル版と較べてみなければならない。これが Gadget Software 社の残りの製品については困難なのである - 我々がこれ は“借用された”ものであろうと疑っていても、それがどこから借用され たのか見つけられないので、結局のところ疑わしいというところで止まっ てしまう。

恥知らずのソフトウェア海賊は消滅したのかそれとも隠れているのか? 00 年 5 月 12 日現在、Gadget Software Web サイトには会社はもはや存 在しない旨の貼り紙を残してほとんど消え去ったと言って良い。“当社は そのドメイン名を Ready Software という名前の会社に売却した”という のがいまだにこちらのカーソルを跳ね返りボールが追いかけるという大変 煩わしい JavaScript を残したままの最小限のホームページでの説明であ る。“本会社がわが社のソフトウェアのサポート及び販売を担当する - Faster と Loaded は彼らの発明である! これをもって Gadget Software は消滅する。皆さんお元気で・・・”

<http://www.gadgetsw.com/>

過去 2 週間における我々の発見の後では、Gadget Software 社の言うこと すべて が疑わしいしこれとて例外ではない。Ready Software 社とて Faster 2.x を所有できないことはすでに見てきたとおりである、なぜなら ばそれは Orchard Software 社のコードを含んでいるからである;Orchard Software 社の社長 Mike Jonas 氏は MWJ に対して 00 年 5 月 12 日に Gadget Software 社との補償交渉は、伝えられる Ready Software 社によ る Gadget 社の買収によってストップしてしまったと語ってくれた。Ready Software 社は Faster 1.x や Loaded の所有者かも知れないが、これらの 商品はとてもその値段に値するものではないことを見てきたし、Faster の 1.x バージョンも Loaded も広告通りに動けるはずがない。

MacFixIt 社の Ted Landau 氏が 00 年 5 月 12 日にこの新会社から受け 取ったという手紙を MWJ にも見せてくれたが、問題に対する答えにはほと んどなっていない。この手紙の中で Ready Software 社の“John”氏は (姓の記述はなかったが、その後の MacFixIt 社とのやりとりで送り手は Seillans, France の John Vollet 氏と名乗っている)、彼の会社が Loaded(本当は FormulaOne と呼ばれている)と Faster(本当は Hare と 呼ばれている)を所有していると言っている。John 氏は、Gadget Software 社はこれらの製品のベータテストをする事になっていたのにもかかわらず、 かわりにそれを盗んで Web 上で Gadget 社の名前で出版したのだと言って いる。John 氏はさらに、Gadget 社は盗用されたAutoMenus Pro コードが 含まれる以前に Magnet Menu 2.1 を盗んだと言っている。

<http://www.macfixit.com/>

もし Ready Software 社が本当に Faster と Loaded を書いたとしても、 このプログラムは役に立つとは思えない。Ready 社は Orchard Software 社や Night Light Software 社と同じように自分達も Gadget Software 社 の被害者なのだと言っている。しかしながら Ready 社の製品群は Gadget 社が大胆に振る舞いだす前の Gadget 社の製品群とほとんど同じように見 える;Ready Software 社は Gadget Software 社があったと同じフランス の小さな町にあり、また Ready Software 社は自分の web サイトすら持ち 合わせていない(彼らは MWJ に対して Hotmail のアドレスからメールし てきた)。更に言えば、Gadget Software 社が 3 月に Faster を盗んだと したら、Ready Software 社は Gadget 社の他の製品の明らかな盗作が明る みになってからはじめて行動をとったのであろうか?すべてはまだ闇の中 である。

我々としては Gadget Software 社の最後が、版権告知文を取り除き、あた かも新作のオリジナルであるかのように装う様プログラムに手を加えた盗 作ソフトウェアの終焉であることを衷心より祈るのみである。もし Ready Software 社が汚れてしまった Gadget 社の名前を葬り去りながら同じト リックを引き続き継承する試みであるとするならば、Macintosh の世界か らの厳しい監視のもとにおかれるであろう。もし Ready Software 社が盗 作の真の被害者ならば;彼らにも第二のチャンスが与えられるべきである - 望むらくは彼らの宣伝文句に値するだけのユーティリティを市場にだす ことで。いずれにしろ、Gadget 社の悪霊は永久に消滅したことを祈りたい。

[Matt Deatherage 氏は MWJ, the Weekly Journal for Serious Macintosh Users, の出版者であり、現在はその日刊版である MDJ と月刊版の MMJ を 復活させるための準備に多忙な毎日を送っている。来週の MWJ では WWDC 2000 をライブで徹底カバーの予定。下記の URL でもっと MWJ のことを学 びそして無償の 3 週の試し購読についても見て欲しい]

<http://www.macjournals.com/>


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