TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#540/24-Jul-00

Macworld Expo のショーは、Apple のメジャーなハードウェアのリリース の話題に乗っ取られた。我々は、まず、その技術的および価格的な詳細に 焦点を当て、次に Mac 産業の残りの市場に対して Apple のアナウンスが 意味しているのは何かを分析する。他にニュースとして、Netscape 社が Communicator 4.74 をリリース、Apple が 2 億ドルの利益を計上、 TidBITS 発行者の Adam Engst が Mac 業界に影響を与える 2 番目の人物 として名前があがったこと、そして、IncWell 社が SuperCard Personal Edition をリリースしたことを取り上げている。

目次:

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MailBITS/10-Jul-00

(翻訳:三好 泰子 <yokomo@vm01.vaio.ne.jp>)
(  :冨田 将英 <atimot18@sa2.so-net.ne.jp>)
(  :亀岡 孝仁 <tkameoka@fujikura.co.jp>)
(  :蒲生 竜哉 <gamo@lib.bekkoame.ne.jp>

Netscape Comunicator 4.74 -- Netscape Communication 社は、 Macintosh 版 Netscape Communicator 4.74 をリリースした。Communicator 4.74 には、プログラムを終了するときに、POP、あるいは、IMAP サーバか らすべてのメールを削除するという新しいオプションが含まれている。そ れ以外にも、このリリースには Macintosh に特化した修正や機能強化がな されている。たとえば、インターネットコントロールパネルやインターネッ トコンフィグによって指定されているアプリケーションに“Command + ~” でウインドウから URL を渡すことができる、とか、StuffIt Expander 5.5 がパッケージに含まれている(RealPlayer のような他のバンドルされてる ユーティリティは未だ最新のものではないが)等である。また、バージョ ン 4.47 では、フレームに集中して無限に再発する Mac でしか起こらない Java Script のバグの修正、Fineder からの(および、標準メニューには ないがスクリプトで作成されたウインドウからの)印刷機能、自動でアド レスを入力する時にクラッシュするバグに修正が加えられている。そして、 ブックマークや個人用のツールバーで長い URL を正しく扱えるようにな り、Mac OS 9 のマルチユーザー機能を使用するときにプラグインを正しく ロードするようにもなっている。さらに、このリリースでは、イタリック 体に関する修飾上の問題と、テキストとプラグインがブラウザのウインド ウに正しく描かれないケースに関する問題が修正されている。そして、ロー ミングアクセスのプロファイルがメールのコンフィグレーションを正しく 読みとるようになり、組み込みの Java VM が Mac OS のローカル版のもと でも Temporary Item フォルダを正しく識別するように変更されている。 Netscape Communicator は、ダウンロードサイズが 13.6 MB で、Mac OS 7.61 以降が稼働する Power-PC 搭載のシステムが必要である。Netscape は、オープンソース Mozilla プロジェクトの技術に基づいた Netscape 6 の公開されているプレビューを正しく導入してるが、バージョン 4.74 は、 Mac 版の最新の正式リリースである。 [GD]

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05927>
<http://www.netscape.com/download/>
<http://www.netscape.com/download/previewrelease.html>
<http://www.mozilla.org/>

Apple 社は 2 億ドルの利益を計上、Circuit City に復活 -- Apple Computer 社は、2000 年度の第 3 四半期において総収入は 17 % 増の 18 億ドルとなり、2 億ドルの利益を計上したと発表した。Apple 社は同四半 期の間に 450,000 台以上の iMac、350,000 台以上の Power Mac G4 シス テムを含む百万台以上のマシンを売り、これは昨年の当該四半期の販売か らすると 12 % の増加である。Apple 社の利益は ARM Holdings plc. 社の 償還株式売却による 3,700 万ドルを含んでおり、この株式売却益を除いた 同社の利益は 1 億 6,300 万ドルであり、前年比 43 % 増となった。(昨 年、Apple 社は 2 億 300 万ドルの利益を計上したが、8,900 万ドルが ARM Holdings 公社の販売からのものであった。)Apple 社の利ざやは 29.8 % に上り、海外での売上は同四半期総売上の 46 % を占めている。

<http://www.apple.com/pr/library/2000/jul/18q3results.html>

Apple 社はまた、アメリカ全土にある約 600 の Circuit City 社の小売店 舗で再び Apple 社の製品を販売することを発表した。Circuit City 社は、 Apple 社の消費者向け iMac、iBook、そして AirPort の製品ラインナップ を販売し、さらに Apple 社の FireWire および iMovie テクノロジーにス ポットを当て、iMac DV システムに接続したデジタルビデオカメラも展示 する。これは Apple 社の Circuit City 社への回帰を示している。1998 年、Apple 社は“store within a store”コンセプトに基づいて CompUSA 社に集中するため、ほとんどの大型小売店舗から手を引いた。これはまた、 巨大チェーンによる Apple 社製品の劣悪な売り込み体制、サポート、そし て展示方法に対するものでもあった。Circuit City 社が今回はうまくやれ るかどうかが見物である。 [GD]

<http://www.apple.com/pr/library/2000/jul/18circuitcity.html>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=04711>

我らがナンバー 2! -- おめでとう!TidBITS 発行人の Adam Engst は Macintosh コミュニティで最も影響力の強い人物ベスト 25 のランキング 調査、MDJ Power 25 において第 2 位を獲得した!Adam の順位は、大差を 付けて首位についた Apple 社の iCEO である Steve Jobs 氏についで 2 位になったのであり、Apple 社の他の重役たちや、影響の強そうな開発者 たちや技術者たち、さらには Adobe 社の John Warnock 氏や Microsoft 社の Bill Gates 氏のような業界の有名人たちを大きくリードしたのであ る。この調査は大きく注目されている MDJ (The Daily Journal for Serious Macintosh Users) の再開を示すものでもあり、膨大な数の Macintosh 事情通、開発重役、プログラマー、ジャーナリスト、そして企 業監視役たちに個人的に問い合わせた、最も強力で影響力のある 5 人の Macintosh 関連の人物名を集計したものである。MDJ は返答を集計し、上 位 25 人の得票者、等外賞をリストアップし、不思議にも漏れてしまった 人々を発表した。Adam(Macworld Expo の後もまだ New York にいる)に この調査の結果について話すと、Macintosh コミュニティ内の高名な人物 たちからこの様に認められるのは光栄なことだ、と語っていた。過去 10 年間にわたって我々 TidBITS は敵を作るよりも同朋を作ろうと努めてきた し、がむしゃらに技術のための技術を追求するよりもパーソナルコンピュー タの向こう側にいる人々に焦点を当ててきた。Macintosh コミュニティの どの部分にいる人からも我々の努力が有益で価値があると認められること は、非常に大きなやりがいである。

<http://www.tidbits.com/adam/>
<http://www.macjournals.com/pages/gcsf/mdj_power_25.html>
<http://www.macjournals.com/pages/mdj/>

再開された MDJ の購読は月額 30 ドル、MacJournals サイトから期間限定 の無料お試し版の購読を申し込みできる。[GD]

<http://www.macjournals.com/pages/mdj/mdj_free_trial.epl>

SuperCard Personal Edition -- IncWell DMG and Solutions Etcetera 社が SuperCard Personal Edition をリリースした。これは評価の高いマ ルチメディア編集スクリプティング環境の個人ユーザーと Apple 社の事実 上見捨てられた HyperCard を使っている人々向けのバージョンである。 SuperCard は HyperCard のカードアンドスタック方式に似た構造を使い、 デモ、プロジェクトプロトタイプ、プレゼンテーション、ユーティリティ、 マルチメディアソフトウェア、等々に適したフルカラーの編集機能を提供 する。SuperCard Personal Edition は SuperCard のフルバージョンとは 次の点で異なっている:興味津々の眼からスクリプトを守るための暗号化 ができない、またユーザーに商用アプリケーションを作らせない、それに SuperCard アプリケーションを配布するロイヤリティフリーのライセンス もない(ただし他の仲間は無償の SuperCard Player を使うことでプロジェ クトを走らせることはできる)。SuperCard Personal Edition は SuperCard のその他の機能は全部含んでおり(たとえば、音声認識、高度 な QuickTime 編集、それに多くの HyperCard スタックを SuperCard プロ ジェクトに変換する機能)、値段も魅力的である:MacNN の特別プロモー ションを使えば、SuperCard Personal Edition は 50 ドルで入手できる。 SuperCard のフルバージョンは 150 ドルである。

<http://www.solutionsetcetera.com/SCPE/>
<http://www.apple.com/hypercard/>
<http://www.macnn.com/>

SuperCard の背景についてもっと知りたい向きは、 TidBITS-369 の Matt Neuburg の SuperCard 3.0 のレビュー、それに TidBITS のテクニカル編 集者 Geoff Duncan による Macworld's May 1999 号の SuperCard 3.5.2 の記事を参照されたい。SuperCard の現行版はバージョン 3.6 である。 HyperCard の現状に関する詳細については TidBITS-453TidBITS-454 の“HyperCard よ、おまえもか”と“儲かる HyperCard”を参照されたい。 HyperCard に関する状況は基本的には変わっていないが、これらの記事が 書かれたときよりももう一年半以上も古さを増している。[GD]

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=00716>
<http://macworld.zdnet.com/1999/05/reviews/supercard.html>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05155>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05169>

アンケート結果: 買い物、掘り出し物 -- 先週のアンケートでは、読者 はどこが Macintosh 関連のハードウェアを購入するお気に入りの場か訊ね たところ、オンライン販売店が(時代の流れを反映して) 60% 以上の得票 を集めて明らかなお気に入りであった。そして健闘したのはもっと伝統的 なメールオーダーカタログ(41%)と地元の Apple ディーラー(32%)で、 製造元から直接買いたいとしたのは回答者の 20% 、オフィス品やコン ピュータの安売り量販店としたのは 15% であった。さかのぼれるなら、 キャンパス内のディーラーやその他の教育専門のチャネルも別にリストし ておくべきだったと思うが、回答者の多くにとっての混乱は少なかったよ うで“その他 ”のカテゴリーはたったの 3% を集めたにすぎない。[GD]

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbpoll=49>

アンケートのお知らせ: 新型 Mac 襲来! -- 先週の Macworld Expo で Apple はデスクトップコンピュータラインナップの見直しを行った(下の 記事を参照)。という訳で今週はこの新しいラインナップについてのアン ケートを実施したい。もし仮にこれら発表されたばかりの Mac のどれかひ とつを 今日 買うとしたらあなたはどの Macを買うだろう? 機種を選定 するにあたって、あなたはどこに重点を置く? 値段(799 ドルの iMac)? デザイン(G4 Cube)? 圧倒的パワー(500 MHz のデュアルプロセッサシス テム)?あるいは他を買う予定? ぜひ我々のホームページで投票して欲しい ! [GD]

<http://www.tidbits.com/>


新 iMacs、マルチプロセッサ G4、G4 Cube

by Geoff Duncan <geoff@tidbits.com>
(翻訳:尾高 里華子 <rikako@pobox.com>)

Apple 社の iCEO、Steve Jobs 氏は、ニューヨークで開催された Macworld Expo の基調講演で一新された同社のデスクトップコンピュータのライン ナップを披露した。さらに、ディスプレイ、キーボード、光学式マウスの 新製品も発表された。

マウス & キーボード -- 初代 iMac から装備されるようになった“ホッ ケーのパック”のような USB マウスはさんざんたたかれ、Apple に対する 好意的な意見は出なかったし、縮小タイプの USB キーボードがプロ向けの マシンに標準で装備されるようになると多くの人が頭を抱えた。この状況 を打開すべく、Apple は光学式の Apple Pro Mouse および Apple Pro Keyboard を出してきた。Pro Mouse は石鹸のような形で、光学式センサー を採用しており、動作をとらえるための可動部がなくなっているので、い ろいろな表面のところで操作できるはずだ。また、マウスの上部分全てが ボタンになっており、前に押し下げるとクリックになる。クリックする強 さは調整できるようになっているので、このマウスは幅広いユーザー層に 対応するに違いない。可動部がないということは掃除をする必要もないと いうことになる(が、つやのあるプラスチックの表面はつねに汚れた感じ になってしまうだろう)。108 個のキーを配した Pro Keyboard は、15 個 のフルサイズのプログラムファンクションキーと、標準配列のナビゲーショ ンキー(矢印、Home、End、Page Up、Page Down など)に加えて CD や DVD ディスクのイジェクトキーが付いていることが売りである。ただし、パワー キーは付いていない。今回新たにリリースされた Mac で使用する場合は、 キーボード上のどのキーを押しても、パワーがオンになったり、スリープ から覚めたりするようになっているが、従来の USB 搭載 Mac では、マシ ン前面にあるパワーボタンを押さなければならない。(Apple のデバッガ MacsBug を使用する場合は、今までのパワーキーに代わって、新しく付い たイジェクトキーを押すことになるらしい。)この新しいマウスとキーボー ドは Apple のデスクトップシステムに標準で装備されるほか、Apple スト アから単体で購入することもできる(どちらも 60 ドル)。

<http://www.apple.com/mouse/>
<http://www.apple.com/keyboard/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbser=1057>

新 iMac -- Apple の最新 iMac には、Indigo(インディゴ)、Ruby (ルビー)Sage(セージ)、そして真っ白な Snow (スノー)という新色 が加わった。外形は今までの iMac と変わらず、モニタサイズは 15 イン チで、冷却にはうるさいファンを使用しない対流方式が採用されているが、 性能が向上し、価格もなかなか魅力的なものになっている。ローエンドモ デルは、インディゴ色で 799 ドルという魅力的な価格が付いている。仕様 は、350 MHz の PowerPC G3 プロセッサ、64 MB の RAM、7.5 GB のハード ディスク、56 Kbps モデム、USB ポート 2 基、10/100Base-T Ethernet、 スロットローディング方式の CD-ROM ドライブとなっており、FireWire と AirPort は装備されていない。そして、AirPort 対応の iMac DV は 999 ドルで、インディゴとルビーの 2 色が用意されている。400 MHz G3 プロ セッサ、10 GB ハードディスク、VGA ビデオミラーリング、FireWire ポー ト 2 基、iMovie を装備しているものの、DVD- ROM ドライブではなく 24 倍速の CD-ROM ドライブになっている。さらに上位の iMac DV+ は、1,299 ドルという価格で、インディゴ、ルビー、セージの 3 色がある。450 MHz の G3 プロセッサ、DVD-ROM ドライブ、20 GB のハードディスクを搭載し ている。そして、ハイエンドの iMac DV Special Edition は、現段階でス ノーとわずかな変更があったグラファイトの 2 色が用意されており、500 MHz の G3 プロセッサ、128 MB の RAM、30 GB のハードディスクという仕 様を誇っている。799 ドルのインディゴモデルは 9 月に出荷予定になって いるが、その他の新型 iMac はすぐに購入できるようになる。

<http://www.apple.com/imac/>

デュアルプロセッサの Power Mac G4 -- Apple はプロフェッショナル向 けハイエンドマシンのラインナップを変更した。その中には 450 または 500 MHz で動作するデュアルプロセッサの Power Macintosh G4 の 2 モデ ルもある。Jobs 氏は基調講演のなかで、Apple の Worldwide Product Marketing 担当副社長である Phil Schiller 氏とともにデモを行った。実 際に Photoshop ファイルをレンダリングした場合、(単一)500 MHz の G4 プロセッサは 1 GHz の Pentium よりずっと勝っていた。つづいて、 Photoshop を 500 MHz のデュアルプロセッサの Power Mac G4 で使用する と、架空の 2 GHz の Pentium チップとほぼ同等の性能だということを披 露した。今どきのソフトウェアはとりわけマルチプロセッサのシステムを 利用するようにように設計されているのだろうが、Apple の次期 Mac OS X では、対称型マルチプロセッシング機能が、すべての Mac OS X 用アプ リケーションおよび現在の Mac OS 用に開発された“carbon”アプリケー ションで利用できるようになる。したがって、時間が経つにつれマルチプ ロセッサであることがパフォーマンス面でプラスになるだろう。同社の Power Mac G4 ラインのハイエンドではデュアルプロセッサの G4 が標準と なっている。450 MHz および 500 MHz のデュアルプロセッサのものは、そ れぞれ 2,500 ドルおよび 3,500 ドルからあるが、シングルプロセッサの 400 MHz G4 は今でも 1,600 ドルからある。すべての Power Mac G4 にギ ガバイト(1000Base-T)Ethernet が装備されているのが特長である。

<http://www.apple.com/powermac/>

真打ち登場 G4 Cube -- 今回の Jobs 氏の基調講演での最大の目玉は、 Power Macintosh G4 Cube の発表だった。透明なプラスチックで身を包ん だ 8 インチという驚くほど小振りな立方体は、450 または 500 MHz G4 プ ロセッサ、64 MB または 128 MB の RAM、20 GB または 30 GB のハード ディスク、FireWire、USB、56 Kbps モデム、Ethernet に加えて RAM およ びストーレジはそれぞれ最大 1.5 GB、40 GB まで拡張可能である。この小 さな筐体は、空気清浄機か、机に置くと変な形のスピーカか何かに間違わ れてしまうかもしれない。ところが、AirPort 対応で、上部にスロットロー ディング方式の DVD ドライブを配し、内部へのアクセスも簡単で(逆さに してハンドルを出して引っ張るだけ)、対流式冷却を採用しているのでファ ンがなく実に静かである。(あまりの静かさが気になる方のために、20 ワットの Harman/Kardon 社特製のスピーカが用意されている。)G4 Cube は、6.4 キロの筐体にプロ向け G4 ラインの中ほどのレベルのものすべて (PCI 拡張を除く)を詰め込んでいるが、大きさは標準のタワー型 G4 の 4 分の 1 となっている。価格は、1,800 ドル(500 MHz モデルは 2,300 ドル)で、8 月早々には購入できるようになるはずだ。ディスプレイに関 しては、VGA モニタなら何でも利用できるし、以下に紹介する Apple の新 製品 3 種類の中から選ぶこともできる。

<http://www.apple.com/powermaccube/>

新ディスプレイ -- Apple はディスプレイも新たに 3 種類出してきた。 いずれも電源とビデオと USB が一本のケーブルにまとめられている。500 ドルの 17 インチ Apple Studio Display は、透明な枠にフラットダイア モンドトロンブラウン管を採用した CRT 画面をはめ込んだもので、超明瞭 なシアターモードが特長である。1,000 ドルの 15 インチのフラットパネ ル液晶画面の Apple Studio Display は完全デジタルで、1024 x 768 の解 像度まで表示できる。4,000 ドルする最高級の 1600 x 1024 液晶 Cinema Display にも USB、電源、ビデオのケーブルが一本になったものを採用す るという改良が加えられた。

<http://www.apple.com/displays/>


平常通り革新

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:尾高 修一 <shu@pobox.com>)
(  :松岡 文昭 <mtokfmak@mxa.mesh.ne.jp>)
(  :吉田 節 <benjamin.takashi@nifty.ne.jp>)

先週の Macworld の基調講演で、壇上に上がった Steve Jobs 氏は Apple の経営方針に軽く触れた後、すぐに新ハードウェアずくしの講演へ突入し た。製品発表の先頭を切ったのは Apple Pro Mouse と Apple Pro Keyboard で、続いて iMac、マルチプロセッサ Power Mac G4、最後に Power Mac G4 Cube と新モニタ 3 点で締めくくった。合間には Adobe の社長からの一 言、Microsoft の Kevin Browne 氏による Office 2001(10 月 に登場予 定)の Mac オンリー機能のデモ、Microsoft に最近買収された Bungie Division が Halo for Macintosh をリリースするという Alex Seropian 氏の宣言、また Apple と Microsoft が Microsoft のゲームをすべて Mac に移植しようとしているという手短な発表がちりばめられていた。Jobs 氏 は iMovie 2 のデモも行い、なかなかの使い手であることを示したほか、 iTools の HomePage 機能にもちょっとだけ言及した。(だが、大幅に改善 ・拡充された iReview には触れなかった− TidBITS のレビューも新たに 登場しているので、お手数だが読者の方からレビューを寄せていただける とありがたい。)

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05986>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05763>
<http://ireview.mac.com/WebObjects/iReview.woa/wa/GoReview?site=379>

邁進する Apple -- Apple の新製品発表の洪水が Macworld Expo 全体の 雰囲気を決定したといっていいだろう。一言で表現すると「ビジネスライ ク」ということにつきる。Jobs 氏が Apple の実権を握って以来、iMac の 発表を皮切りに、4 つの製品からなるマトリックス、11 四半期連続の黒字 というカムバックをリードしてきた。Apple が再び元気になったのは明ら かだが、Apple Computer 社にとって、企業として健康であることは常に新 地平を切り拓いていくこと意味する。Apple の新製品には見掛け倒しの革 新性こそないものの、ちょっと掘り下げてみると良さがわかるというもの になっている。たとえば、すべての Mac に新型の光学マウスが付属するこ とや、Power Mac G4 のマザーボードに標準でギガビット Ethernet が装備 されていること、それにハイエンド Power Mac G4 のマザーボードに 2 基 目の PowerPC G4 プロセッサが加えられたこと(しかも価格据え置きで) は、いずれも標準的と考えられるスぺックの水準を押し上げる結果となっ ている。Apple は PC メーカー群との無益な価格戦争には興味を示さず、 その代わりに標準的な Macintosh をスペックアップすることで同レベルの PC との差をつめることができるのだ。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=04880>

エレガントな革新 -- Power Mac G4 Cube と、新モニタ群も注目に値す る。モニタに加わった新要素は新しいケーブルで、ビデオ、USB と電源を 一本にまとめてケーブルの散乱を防止している。このケーブルを Apple お 得意のへんてこな独自規格として退けるのは簡単だが、このケーブルはす べてのデスクトップ Mac 標準仕様として残ると私は考えている。理由はた だ一つ、エレガントだからだ。ぐちゃぐちゃしたケーブルはコンピュータ で最も不細工な要素で、Jobs 氏のもと Apple では AirPort ワイヤレス ネットワーキングでケーブルを不要にし、USB や FireWire といった異種 デバイスをデイジーチェーン接続することのできる柔軟なテクノロジーに 切り替え、ケーブルを減らす努力を重ねてきた。そして今回はモニタケー ブルなのだ。ハードウェアで工業デザインの新地平を拓こうとするなら、 同時にケーブルの問題に立ち向かうのは理に適ったことだろう。

スぺックと価格という点では、Power Mac G4 Cube は決して革命的ではな いし、たいして興味深いものでもない。同等の Power Mac G4 よりも高価 なうえ、拡張スロットを欠いているからだ(マルチモニタを必要とする方 は、代わりに 4,000 ドルの 22 インチ Cinema Display を導入する覚悟を しなければならない)。だが、Jobs 氏が二年前に発揮した天才的手腕は、 コンピュータ購入をスぺックや価格からデザインや色の選択で置き換えた ことにある。G4 Cube はデザインの美を新たな水準まで押し上げ、楽に机 に置けるまでサイズを小さくし、ファンを取り除いて稼働音を下げた。そ れに粋な機能も取り入れている。たとえば会場にいた Apple 社員によれ ば、上部にある電源スイッチは近接センサーとなっており、通常コンピュー タの電源スイッチに使われているリレーではない。

一方、Apple は見てくれのために機能を犠牲にしたわけでもない。G4 Cube で拡張できる部分は、単に対流冷却ケースから引き出すだけで簡単にアク セスすることができる。また、Apple は明らかに G4 Cube をそのまま置い て使うことを想定しているのだが、Mac 主体の Web ホスティングプロバイ ダ、digital forest(TidBITS のスポンサーでもある)の Chris Kilbourn 氏は、G4 Cube が強力なパワーをわずかなスペースに詰め込んでいるため、 サーバ用ラックマウントにするのはどうかと考えていた。複数の G4 Cube を冷却ファン付きのボード上に並べ、USB とモニタを切替えて共用キーボー ド、マウスとモニタでをつなぐ、ということも想像できる。

Jobs 氏が新たな製品マトリックスを見せた時、G4 Cube が iMac と PowerMac G4 の中間に置かれた。色々な意味でこの位置づけは正しい。と いうのも、本当はもっと大きな画面や小さなユニットが欲しかった iMac 購入者というのもいたし、Power Mac G4 を買ったものの本当は大きすぎて PCI スロットは不要だと考えている人は多い。G4 Cube は小型化努力が必 要だったために今でこそ価格は高いが、そのうち Apple が G4 Cube の価 格をちょうど iMac と Power Mac G4 の中間にくるように調整してきても 不思議ではない。G4 Cube は成功すると思う。

将来製品の憶測 -- G4 Cube を製品マトリックスに追加するにあたり、 Jobs は巧妙にもポータブル側で iBook と PowerBook G3 の間に空きスロッ トをこしらえた。基調講演では軽く流していたが、単にデスクトップ側だ けを拡張しなかったのは、この空いた空間に収まるべきマシンの憶測と期 待感をあおる憎い方法だった。欲求と理性を明確に分けるのは難しいが、 ここにはなんらかのサブノートが入るものと私は推測している。Apple は 明らかに小型化を指向しており、iBook も PowerBook G3 も Sony Vaio に 代表される同世代の PC サブノートと比べると重くて扱いにくい。この空 きスロットには Palm OS ベースの PDA が入るという推測もあるが、Apple が Palm OS にどれだけの付加価値を与えることができるかは疑問なので、 この確率は低いだろう。

iBook の流れを汲む新 PowerBook(おそらくは Power PC G4 を採用)とと もに、近い将来サブノートが登場するのではないかと私は読んでいる。時 期は 1 月のサンフランシスコの Macworld Expo が濃厚だ。Apple は派手 な発表を行いたいものの、Mac OS X は公開ベータが 9 月まで延期になり、 正式リリースが 2001 年初頭へ延ばされているという状況で、Mac OS X が この時点で出荷されることはまずないからだ。

芸術を模倣する技術 -- Steve Jobs 氏は基調講演で、“我々は Apple には芸術と技術の交差点にいて欲しいと思っている”と言った。Jobs 氏の 交差点は、旅をすると出くわすそれと考えがちだが、十字路ではなく、む しろ二つの道が分岐点で出会い、そこから共に進む場所と理解することが 重要なのだ。Apple は一般大衆にとって唯一の選択とは決してならないか もしれないが、技術をヒューマニスティックな様式で生活に統合させるこ とが重要と考える我々みんなにとっては、Steve Jobs 氏率いる Apple が 芸術と技術の交差点にいるだけでなく、統合の道へと我々を連れて行くこ とを我々が注視し続けるべきなのだ。

機能より形を重視した簡略版キーボードや評判の悪かったパック・マウス 等、失策はあるだろうが、Apple 以外に芸術を通して技術を人間味あふれ たものにしようと努力を行うテクノロジー・カンパニーはない。ショーの 前日、Cooper-Hewitt National Design Museum の Triennial Design Exposition を訪れ、Intel 特注のアズテックのピラミッドのような “Simple PC” を見た(iMac と iBook も展示されている)。Apple は偉 大なるデザインを寡占しているわけではない - このマシンは視覚面で人目 を引き機能的にも完璧と思えるものだ。しかし Intel にはそれを出荷する だけのガッツがあったか?ノーだ。確かに、製作するには高価すぎたかも しれないし、自明ではない問題に悩まされたのかもしれない。だが、Intel はその徹底してデザインされた PCを純粋な学問的行為に留めたのに対し、 Apple は彼らのデザインが誰にでも入手可能となるよう押し進めてきたの だ。

<http://www.si.edu/ndm/>

挑戦される産業 -- 私はショーに出ていた他のものについて、わざと何 も触れなかった。なぜなら、その意気込みの割には、今年はショーを代表 するような際立ったテーマが見当たらなかったからである。(だが私たち は、ショーで目立った一部の製品やイベントを紹介するおなじみの記事 “Macworld Expo 最高のもの”を発行する予定だ。)私は 3 日間が終わる 前に、実はテーマの欠如が、起きていたこと(息を吹き返した Macintosh 産業が発展し成熟しつつある)を象徴していたのだと悟った。色付きのプ ラスチックはもはや人目を引くものではない。それは当たり前のものになっ ている(Apple は iMac の色を変更したけれども、私は他のメーカーに対 して、色を合わせようとするのではなくもっと別のアプローチを目指せと 言いたい)。FireWire はショーの至る所にあったが、それ自身と同じほど クールだったのは、FireWire が記憶装置やビデオカメラ、時にはスキャナ やプリンタの、まさに主要な接続テクノロジーとして使われていたことで ある。多くのブースは Macintosh 専用のものをほとんど(またはまった く)持たず、代わりに Macintosh ユーザーにとって興味深いサービスやテ クノロジーを展示していた。Mac の市場が大きくなり重要性が高まったお かげで、Epson、Hewlett-Packard、Brother、Canon などの企業はプリンタ やカメラ、それから他の(Mac 互換になっただけの)周辺機器を幅広く展 示していた。

簡単に言えば、私はショーから、今や多くの企業が Mac 産業は本物で、取 り組む値打ちがあり、居るべき場所だと信じているという印象を受けた。 それは素晴らしいことで、大切な一歩でもあるが、それで充分という訳で はない。Apple が、機能に対する私たちみんなの期待に応える一方、デザ イン面でどのように革新を行ってきたかを忘れないでいただきたい。革新 は容易ではないが、それは Apple が自社を他のコンピュータメーカーから 差別化するために選んだやり方である。昔、Macintosh を買う理由は Apple そのものとその他とに同じ程度にあった。だが Apple のハードウェアに比 べれば、Macintosh 産業内の他の企業が提供するソリューションの重要性 は少し小さくなってきている。

さてここで、Macintosh 用のハードウェアやソフトウェアを製造する人す べてへ、私からの要望を言おう。私を感動させて欲しい! 私を驚かせ、騙 されないように固くなった私のガードをかいくぐって、Macintosh ユーザー であるべきという独自の理由を見せていただきたい。私に、そして世界中 に対して、私たちの考え方を変えさせずにおかない製品を出せるのが Apple だけではないことを見せて欲しい。私たちはみな生きるのに精一杯で、タ フな問題に対して平凡なソリューションを受け入れることはできないから、 それは容易なことではないだろう。しかし、もしあなたが革新を起こし実 現できたなら、私は個人的にあなたの努力を価値あるものだと評価すると 約束する。


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