TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#542/07-Aug-00

機密保持契約をして聞いたおいしいニュースを誰かに教えようとお考えだ ろうか?考え直した方がいいだろう! Apple は法的戦場で、誰が最近の製 品発表のニュースを漏らしたか探すつもりだ。これについて、噂の価値に 関する我々のアンケートに投票することができる。また今週は、Matt Neuburg による天文学ソフト Starry Night Backyard のレビュー、Palm 社の新しいハンドヘルドの発表、先週のクイズの解答に必要な、ほとんど 知られていない Finder の TIPS の説明をお伝えする。

目次:

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MailBITS/07-Aug-00

(翻訳:斎藤 美礼 <mirei@x.age.ne.jp>)

カラフルなハンドヘルドが Palm 社の新しいラインナップの先頭に -- Palm 社は今日新しい 3 モデルを発表し、ハンドヘルドの製品群に再び活 気を与えた。発表されたのは、コンシューマー向けの新しい Palm m100、 ワイアレスモデルの最新型 Palm VIIx、そしてカラフルなメタルケースの 2 つの Limited Edition Palm Vx だ。新しい 150 ドルの Palm m100 は新 しいスタイルのケース、従来のものより小さいスクリーン、手書きのメモ やスケッチを保存する新しいアプリケーション Note Pad、すぐに見ること のできる時計が取り入れられている。Handspring 社の色とりどりの Visor シリーズと張り合うため、m100 は、カラフルな、とはいっても控えめな、 フルーツカラーではない色で、取りはずしのできるフェースプレートを追 加した。ワイアレスの Palm VIIx は、Palm VII の最新型で、2 MB のメモ リの代わりに、8 MB のメモリを搭載し、450 ドルで手に入れることができ る。Palm Vx のLimited Edition モデルは、Palm 社のオンラインストアで のみ 400 ドルで販売され、Millennium Blue と Champagne の 2 色のアル ミニウムケースの製品が購入できる。

これらの 3 モデルはすべて Palm OS 3.5 を搭載している。Macintosh 用 の Palm Desktop ソフトウェアが m100 と Limited Edition Palm Vx に初 めて同梱されており、別売のものを買ったりオンラインでダウンロードし なくてもよい。(Palm 社の Webサイトによると Palm VIIx には同ソフト が付属しない)。しかし、Mac ユーザーは依然として USB ケーブルかシリ アルケーブルのアダプターを購入しなければならない。Palm はまた現行の ハンドヘルド機であるカラーモデルの Palm IIIc とワイアレスモデルの Palm VII の推定末端価格を 400 ドルに値下げした。 [MHA]

<http://www.palm.com/products/palmm100/>
<http://www.palm.com/products/palmviix/>
<http://www.palm.com/products/palmvx/>

アンケートのお知らせ: 眺めのいい噂 -- 下で読まれるだろうが、先週 Apple 社は将来秘密の情報がリークするのを防ぐため、未確認の個人に対 する訴訟を起こした。この動きは Adobe 社の MacNN に対する訴訟のすぐ 後に続くものだが、Apple はリークの出所を追及しようとしたもので、噂 を公表したサイトを狙ったものではない。消費者や業界ウォッチャーはど んな製品が出てくるのだろうかと知りたがっているが、情報のリークは消 費者が現在の製品の購入を延ばすとなると Apple や他の企業に経済的な打 撃を与えることになってしまう。そしてこのような企業の経済状態は、ユー ザーが望み、必要としている製品を作る能力に直接的に影響を与える。こ こで我々の質問だが、「消費者にとって、噂のサイトで発表された情報は、 その会社に与えるであろうダメージよりも価値が大きいと思うか?」とい うものだ。これは真剣な質問で、消費者の主張や Macintosh コミュニティ を取り囲む問題を直接的に反映するものだ。だからどうかあなたがこの議 論でどういう意見になるか我々のホームページで投票して教えてほしい。 [ACE]

<http://www.tidbits.com/>


クイズの結果:Finder でのクリック回数

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:蒲生 竜哉 <gamo@lib.bekkoame.ne.jp>)

先週のクイズの結果をお知らせするまえに、少しだけ私たちがこのクイズ で何をしたかったのかを説明させて欲しい。このクイズを実施した第一の、 そしてもっとも大きな理由は私たちがこのささやかな知識をみなさんと共 有したいと思ったからだ。これを分け隔てなくやるためにはクイズとその 答え合わせがもっとも良いと判断したのだ。第二の理由としては、皆さん と少し楽しみたかったという事がある。でも、答えが明白な簡単なクイズ は面白くないだろう。もし、このクイズが少しばかり複雑に見えたとした ら、それは私たちが楽しいクイズを作ろうとしたからだと思って欲しい。

先週のクイズは起動項目フォルダの中身をいかに少ないマウスクリックで 見るか、同様にいかに少ないマウスクリックで起動項目フォルダのエイリ アスを作るか、その合計クリック数を競うというものだった。よりフェア なクイズにするため、私たちはいくつかの基本的なルール(操作は開いた ウインドウが一つもないデスクトップから始める事、また特には触れなかっ たがアップルメニューにハードディスクのエイリアスを入れておく等の事 前のカスタマイズに依存しない事)を設定した。また操作は全てマウスク リックから始まるものに限定した。だってそうだろう? 私たちは Finder とマウスクリックに関連した操作に関するクイズを出題しているのだ。そ ういう訳でキーボードオペレーションだけに頼った答えをくれた一部の読 者は最初からちょっとズレていた事になる。それから最後に私たちはマウ スクリックに関しては一般的な定義に従う事にした。つまり、マウスクリッ クとはマウスボタンを押して放すまでの一連の動作を指す。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbpoll=50>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06061>

それから異論のある人のために“〜によって開始される”という言葉の定 義について触れておこう。これは“〜の動作で始まる”と言う意味であっ て、キーボードをまったく使ってはいけないという意味ではない。その動 作がマウスクリックと一緒に始まるのであればキーボードを使うのは構わ ない。これについてはすでに TidBITS Talk で触れているし、解答例とし ていくつか特別な状況を要する方法も挙げた。これらの方法はクイズの答 えとしては“ずる”の部類に入るだろうが、でも Finder であっちこっち ナビゲートする時重宝だという事はすぐに判ってもらえるだろう。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=1111>

“正しい”答え -- 正解は 3 クリック、全回答者のうちの約 45 %、ほ ぼ 1500 人の人が正解だった。もしあなたがこのクイズの答えに驚く様な ら、Finder のあまり知られていない機能のいくつかをおさらいするとよい だろう。

(フォルダナビゲーション機能は 1997 年の中盤に Mac OS 8 が発表され た時に新しく搭載された機能だ。Finder の設定でこの機能のオン/オフを 選択する事ができる。また、マウスカーソルがフォルダの上に乗ってから フォルダを開くまでのタイミングの設定をすることもできる。フォルダナ ビゲーション機能は初期状態ではオンになっている。)

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=02698>

(プロクシーアイコンとコマンド + オプション + ドラッグでエイリアス を作る機能はどちらも Mac OS 8.5 で新しく加わった。)

<http://til.info.apple.com/techinfo.nsf/artnum/n58087>
<http://til.info.apple.com/techinfo.nsf/artnum/n58068>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05142>

“より良い”答え -- 私たちですら 2 回のクリック回数で課題をクリア できるとは思っていなかったのだが、一部の人たちはテクニックを駆使し てなんとこれをクリアしてしまった。その方法は以下の通りだ。

(このテクニックも Finder のフォルダナビゲーション機能に依存してい るが、後の事は気にせず何かを起動項目フォルダに入れる事によって私た ちが考えた方法では必要だったマウスクリックのうちの一つを減らしてい る。現在 Apple はデスクトップにいくつかアイコンを置いた状態で Mac を出荷しているので、特別なカスタマイズも必要ない。)


Starry Night Backyard とともに天高く

by Matt Neuburg <matt@tidbits.com>
(翻訳:吉田 節 <benjamin.takashi@nifty.ne.jp>)
(  :西村 尚 <hisashin@hotsync.co.jp>)
(  :亀岡 孝仁 <kameotak@iea.att.ne.jp>)

時の始まり以来、人びとは夜に外で座り、星々を見上げてこう言っている。 “あの上のほうでは、いったい何が 起こっている の?”こうも言って いる。“ぼうや、私は喉が調子悪い。寒いし、退屈だし、よく見えない。 それに、あれを Leo と呼ぶのは止めておくれ、ライオンにはちっとも見え ないよ。”

だが、ひとたび Sienna Software 社の Starry Night Backyard をコン ピュータにインストールすれば、あなたはそんなことを言わなくなるだろ う(Starry Night の最初のバージョンを手短にレビューした記事“手頃な お星様”が TidBITS-306 にある)。あなたの好奇心をこんな風に瞬時に 満足させてくれるのを楽しめるはずだ。火星が逆行したり月が満ち欠けし たりする理由を知りたければ、太陽系の上へ飛び出してそれがどうして起 きるか見ればよい。自分の頭を回さずに好きな方向を見ることができる。 最も晴れ渡った夜に肉眼で見えるより、もっとたくさんの星を見ることが できる。いくつかの方法で描いた星座を見られる。そして、自分の家の中 で暖かく快適なままで。

<http://www.siennasoft.com/english/backyard.shtml>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=01221>

星の明かり、星の輝き -- Starry Night Backyard は Sienna 社の Starry Night Pro の“ライト”版であり、初心者、特に若者を対象にして いる。このために実学主義と使いやすさを強調し、実際、ほんのわずかな 時間があればこのプログラムを理解して探求し始められる。起動すると画 面いっぱいのウインドウが開き、あなたの家から南方の現在の眺めを表示 する。草木が下半分を埋め、上方には、日中であれば青空が広がる。この 青空は Sky メニューから Daylight のチェックをはずすことで取り除くこ とができる。また、あなたの実際の夜景を正確にシミュレートするために、 どのオブジェクトをフィルターするか暗さのレベルを調整できる。これを 除けば、このメニューの必要はまったくない。すべては手もとに用意され ているからだ。仮想の頭を回すには、カーソルをドラッグして“つかんで” 景色を移す。ウインドウの最上部に渡って、一連の小さな入力欄とボタン がある。これを使って時間、日付、位置を変更したり、高さを変えたり、 シーンを拡大したり、時間経過によるアニメーションをコントロールした りできる。アニメーションは、通常は“ライブ”だが、様々な段階のサイ ズに設定可能で、アニメーションの早送りや巻き戻し、連続再生、コマ送 りができる。また、各アニメーションの 1 画面を 1 コマとする QuickTime ムービーも作成できる。

メニューを使って、天体オブジェクトの様々なクラスの名前の表示/非表 示を切り替えられる。また、星座名、境界線、さまざま棒線描画を見るこ とができる。しかし、こういったことをどれかやらなければ、いま見えて いるものを学ぶことができないわけではない。カーソルをオブジェクトの 上に持っていけば、その名前と基本的な情報がポップアップする。そのオ ブジェクトをダブルクリックすれば、座標と出没時間を含むそれに関する 詳細情報のある別のダイアログが表示される。オブジェクトを探すには、 ダイアログボックスに名前を入力すればよい。オブジェクトの上でカーソ ルを押しつづければ、コンテクストメニューが現れ、そこから(惑星の) 軌道を表示したり、ウインドウがアニメーションしてもそのまま残るよう にオブジェクトを“ロック”したりできる。たとえば、火星の逆行を観測 する簡単な方法はこうだ。火星を見つけロックする。一度に 1 日をアニ メーションさせて背景の星々を観測してポーズし、次に数日をバックアッ プする。そこで近くの星をロックして背景に静止させて、一度に 1 恒星日 をアニメーションさせる。

異なる眺望を得る方法はいろいろある。Go メニューから選ぶ(たとえば、 内太陽系を見おろす位置をとることができる)か、またはオブジェクトを 選択してコンテクストメニューあら Go There を選ぶことができる。複数 回のアンドゥで探索から簡単に帰還できる。Go There の機能に仰角を変更 する機能とアニメーションさせる機能とを結び付ければ、いくつかのすて きな効果を作ることもできる。たとえば、ハレー彗星に乗って太陽系内を めぐるようなことは簡単なことだ。まず、Go There し、彗星面の上に仰角 を合わせる。そこで太陽を見つけてロックする。そして、次の飛行目的地 を見つけ、1 ヶ月単位でアニメーションさせる。何度か出現してきらっと 光が見えれば、それがそうだ!2、3 コマ戻って惑星軌道を表示させれば、 あなた自身のオリエンテーションとなる。1 日単位に切り替えて、飛行を 楽しもう。どんなジェットコースターよりすばらしいはず。

天国からの眺め -- Starry Night Backyard のリアリズムで特にすてき なところは、二次的なアニメーションと私が呼んでいるものの使用だ。オ ブジェクトを見つけようとしても、魔法のようにはすぐに現れない。まる で頭を回すようにして、ビューはぐるっと見回しながらそれを見つけるの だ。ビューの範囲や仰角を変えたり、Go There したりするとき、画像はす ぐには変わらない。連続した動きで飛行し、これがものの相対的なサイズ の意味をなす。たとえば、地球からハレー彗星に Go There すると、内太 陽系からゆっくりと上昇するときに一呼吸あり、太陽系の外側の範囲に及 んでなにごとも起きなくなる間長いポーズがあり、最後にハレー彗星に近 づく。そこで、彗星が球体としてぼんやりと現れはじめたとき、着地のた めに飛び下りた自分の足がいきなり見える(もちろん宇宙服にすっぽりと 包まれて)。

また、様々なオブジェクトの概念画像や写真画像が含まれる。たとえば、 火星に行く場合や、オリオン大星雲を拡大する場合に、現実になにかを見 せてくれる。さらに、天文学はインターネット上に極めてよく文書化され たテーマの一つであるが、Starry Night Backyard は Sienna 社の livesky.com サイトのリンクを介してオンライン状態にでき、そしてお好 みのどの URL もオブジェクトのコンテクストメニューの一部にできる。こ のようにインターネット上の画像と情報は実質的に Starry Night の内部 に統合化されることになる。

<http://www.livesky.com/>

地球に戻る -- Starry Night Backyard は天体の神秘への素晴らしい誘 いである。しかしそのインターフェースには不十分な点が見られ、当然対 象として狙っていると思われる子供達への適性を大きくそこなわせるもの となっている。Go メニューから選択をすると日付と時間は現在にリセット されてしまうので、折角ある興味あるイベントを見ようと注意深く地球上 からセットアップして、いざ太陽圏から外に出てみるとそのイベントはも うそこにはないのである。これでは混乱してしまう。ある天体を選んでそ の名前あるいはコンテキストメニューあるいは説明ダイアログを表示させ るのは物理的に至難のワザである、というのもカーソルには十分な誤差許 容度が与えられていないので、目的の物体にどんぴしゃり合わせられなけ ればならない。

このプログラムは天文学の数量的側面を軽視しすぎている:自分が飛んだ りズームするにつれてある種の数値は表示されるし、それにドラッグする ことで分離角度も知ることができる、しかし緯度経度を入力することで空 間のその場所を指し示すことはできないし、カーソルの下の点の緯度経度 を表示させることすらできない。同様に、空に天球グリッドを標示させる ことはできるが、ローカル(水平線基準の)グリッドはできない。これは 大変残念なことである。なぜならば天文学の初心者がまず最初に理解しな ければならないことがこの 2 つの関係だからである。アニメーションの時 間刻みも粗い整数単位でしかセットできない、そして日の出、日没の時間 も近似の分単位でしか与えられず昼の長さのような現象の理解をするのを 難しくしている。“軌跡”機能もすぐに使えるようなものではない;逆行 運動の軌道を辿ることはできるが、とても一筋縄ではいかない(私の場合 はたまたま偶然にできただけである)。

メニューの項目がインターネットとつながっているかもしれないというの はどこにも表示されていないが、じつは多くの項目が連携しているので、 あるコマンドを選んだときブラウザが開いたりすればびっくりするであろ う(そしてそのコマンドは失敗に終わる、なぜならインターネットには接 続されていないからである)。紙のマニュアルはやや不完全である;メ ニューとヘルプボタンはオンラインマニュアルが存在するとの感触を与え るが、それは嘘である。最後に、私自身 Starry Night Backyard を何回も やってみたが、その内 80 % はプログラムのフリーズかクラッシュとなっ てしまい再起動を余儀なくさせられたことに言及しておくべきであろう; ただし、これは何らかの機能拡張のコンフリクトによるものかも知れない。

宇宙再発見のよろこび -- 他にはもっと数学的要素の強い天体プログラ ムがある - 私はとりわけ Southern Stars 社の SkyChart が好きであり、 それがシェアウェアであるためもあって使い続けている - そしてもしあな たが求めているものが単に数字だけであれば、自分のコンピュータに計算 させるのはもはや難しいことではない。しかしながら、あまり高価でなく て現実的なビジュアルと使い易さと魅力的な色々な特長を兼ね備えたプロ グラムとしては、Starry Night Backyard は間違いなく逸品である。カバー している天体もきわめて広範囲で、11 から 12 等星(肉眼や双眼鏡で見え るものより暗い)の物体の一部まで含んでいる。その機能群は教育や探検 に向けて見事に組み立てられている。この製品は魅力的で、魅惑的で、そ して楽しい。

<http://www.southernstars.com/skychart/>

Starry Night Backyard は System 7.5、QuickTime、そして PowerPC ベー スのシステムを必要とする。インストール状態で 85 MB を占める。値段は 65 ドルであるが、オンライン版は 50 ドルである。有効期限のついたデモ 版がダウンロードで入手できる。


Apple、真剣に漏れを塞ぐ

by Matt Deatherage <mattd@macjournals.com>
(翻訳:吉田 節 <benjamin.takashi@nifty.ne.jp>)
(  :亀岡 孝仁 <kameotak@iea.att.ne.jp>)
(  :三好 泰子 <yokomo@vm01.vaio.ne.jp>)

Apple Computer 社は先週、Apple が独占する企業秘密であると同社が考え ている情報をインターネットに流したとして、25 人もの匿名の被告を訴え たことを発表した。California 州裁判所(Apple 本社がある Santa Clara 郡の高等裁判所)に提出された告訴状は、“Apple の企業秘密のさらなる 漏洩と、同社へ金銭的損害を与えることの差し止め”を求めている。

<http://www.apple.com/pr/library/2000/aug/2lawsuit.html>

私はこれを書いている時点で本物の告訴状のコピーをまだ入手していない が、公開されているレポートや情報源は次のようなことを示している。 Apple は“John Doe 1”が一人で、または最大 24 人の匿名の被告と共謀 して、Power Macintosh G4(ギガビットイーサネット)と Apple Pro Mouse に関する機密を、それらの発表前に公にしたとして訴えている[訳注:John Doe は本名がわからない場合に用いる仮名]。これに関して高等裁判所の Gregory H. Ward 判事は、Yahoo 社に対して召喚命令を出した。その命令 は、Apple の企業秘密が公にされた(と申し立てられている)2 つの GeoCities Web サイトの ID 情報を提供するよう求めている。(GeoCities は Yahoo 社の一部門である。)

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06049>

真実が明らかでないうちに未知の個人を訴えるという考え方は判りにくい だろう。そこで何が本当に起きているのか、簡単に見てみよう。

Apple が心配するわけ -- 控訴に関する MacNN のレポートには、Apple が提出した告訴状が引用されている。(他に CNET、TechWeb、ZDNN のレ ポートがある。)申し立ての中には次のような一節がある。“Apple の経 験によれば、将来の製品が公に知れ渡ると現行の Apple 製品の売上が減る ことが多い。そのため Apple は将来の製品に関する情報を企業秘密として 扱い、保護している。”少しは真剣な Macintosh ウォッチャーであれば誰 でも、Apple が未発表の製品の詳細を可能な限り秘密にすることを知って いるが、人々はそれは単に Steve Jobs 氏が新製品発表で観衆を驚かせる ためだと考えることがある。けれどもそれは想像よりもっと複雑な話であ る。

<http://www.macnn.com/feature.php?id=101>
<http://news.cnet.com/news/0-1006-200-2416345.html>
<http://www.techweb.com/wire/story/TWB20000802S0022>
<http://news.excite.com/news/zd/000802/15/apple-says-trade>

パーソナルコンピュータ産業はその昔、将来の計画について開けっ広げに なり過ぎると現在に影響があり得ることを学んだ。コンピュータ企業だっ た Kaypro 社は 1980 年代初めの古典的な例である。ホットなニューマシ ンの詳細をあまりに早く明らかにしたため、同社の既存(そして唯一の) モデルの売上は枯れ果てた。そして新モデルの遅れのせいで、同社の売上 は事実上ゼロの状態が一年間以上続いた。さらに、Kaypro が新モデルを出 荷できた時には、競合他社(何が予想できるかを充分に知らされていた) は新モデルの優位性をほとんどなくしてしまっていた。Kaypro が消滅する までには、あと 1、2 年しかかからなかった。

Apple も同様にこうした影響を経験しており、それは単なる昔話ではない。 終わったばかりの 2000 会計年度の第 3 四半期において、Apple は売上と 販売台数が予想を下回ったことを発表した。その大きな理由は、iMac の売 上が予定に達しなかったことだった。Apple は iMac の売上が減速してい たことに同四半期の早いうちに気づいていた。Apple の CFO である Fred Anderson 氏はアナリストの問いに、iMac の顧客が新モデルを待っていた ことがその原因だと Apple は信じていると答えた。同四半期の末には最後 のモデルチェンジから 9 ヵ月が経過しており、それまでのモデルチェンジ は 6 ヶ月を待たずに行われていたからである。同四半期の Apple は他の すべての面では好調だったが、iMac の売上が減速したことは“Apple の復 調は不完全では?”という噂の連鎖を生むに充分だった。それは、1996 年 と 1997 年に Apple を表舞台から退かせたのと似た、自己実現的な予言サ イクルの始まりとなった可能性があった。(こんなことを覚えているだろ うか。Apple は修繕が必要なほどの深刻なビジネス遂行上の課題を抱えて いたが、世間に“Apple はおしまいだ”という噂が広まるまでは、売上は 下がらなかった。)

Power Macintosh G4 Cube のような製品のユニークさと、マシンの発表よ りずっと早くにリークされる噂が多すぎる(そして情報の先取りは Apple のビジネスに明らかに継続的な影響を与える)という状況を考えれば、こ の会社はどうやら本気になったようである。すでに Apple は、リークされ た情報を持つと思われる従業員に対して厳格になっている。だが最近のい くつかのケースでは、Apple は情報漏洩の責任を負う者を見つけ出せてい ない。それが控訴に至った理由である。

姿なき被告人 -- 誰を訴えているのかわからずに裁判をおこすというの はピンとこないかもしれない。でも、 開示手続き と呼ばれる司法手続 があり、双方の弁護人は真実を見出すために、裁判所の司法権のもと、関 係する証人を尋問し召喚することができる。開示手続きが取られると証人 は宣誓のもとに質問に答え、裁判所の関りなしには第三者が決して明らか にする必要のない情報を引渡すことを要求される。

誰ともわからない人を訴えることで、Apple 社は裁判所に対して、開示手 続が十分に機能すれば誰が被告人かそれ相当の早さで特定でき、したがっ てその訴状をその人物を明確に名指すよう修正できると申立てているので ある。これはやってもやらなくてもいい手続ではない - 一方でその訴えら れた人は訴えられたこと自体を通知されることなく、Apple 社に多くの証 人に対する開示手続きを取らせることを許すのは公平でないし、一方では 名前が明らかにならなければ書面で送達することもできない。(これとは 対照的に、刑事事件では被告人不明のまま訴追されることはまれである - これは裁判所が被告人不明の訴追を出訴期限に対する制約から逃れるため の手立てとみなして、警察が全精力をあげても被告人を特定できないこと をよしとしないからである。)

これを Apple 社の観点から見てみよう。Apple 社の正確な機密の情報がイ ンターネット上に掲載された、そしてこの情報にアクセスできたのは機密 を漏洩しないという契約上の義務を負っている人々だけである - それは Apple Computer 社の従業員か、機密保持契約にサインした第三者の開発者 かまたはビジネスパートナーかである。そして誰かが、あるいは会社のよ うな法人かが、その情報を掲載したかあるいはその情報を第三者に流して その第三者が掲載したかのどちらかである(もっとも訴えの中で、Apple 社は、その情報を実際に掲載したとされる主格の被告 John Doe 1 は個人 であるという情報を得ているしそう信じているとしている)。Apple 社は この個人に対抗する正当な法的理由を保持しているが、しかしながらその 人物の名前を特定するためには開示手続きをとらねばならない。

これがなぜ Apple 社がただちに Yahoo 社に対して召喚状を送付し、 AppleInsider 掲示板に機密情報を掲載するために使われたとされる 2 つ のアカウントの ID 情報を提供するよう要求した理由である。Yahoo 社は これらの Web サイトあるいはメールアカウントに関する正しい氏名と住所 の情報は持っていないかもしれないが、少なくともそのオーナーがそこに アクセスするために使った IP アドレスのログは持っているはずである。 Apple 社はこれらのアドレスが自社のクラス A アドレス空間(17.x.x.x) のなかの固定 IP アドレスであることを願っている;そうすればそのアド レスからある特定の接続にまで辿っていくことで、その特定の期間に誰が 所有者であったかがわかり、ビンゴ!犯人を突き止められるはずである。

<http://forums.appleinsider.com/cgi-bin/Ultimate.cgi?action=intro>

もしその IP アドレスがケーブルモデム、DSL、あるいはダイヤルアップモ デムプールに属していたとしても、Apple 社はその ISP 業者をしてそのサ イトがつくられたときの IP アドレスに対応する顧客レコードを召喚する 事ができる。これでやはり被告人の名前に辿りつける。

Apple 社の真の意図 -- いったん Apple 社が誰がその情報を漏らしたの か見当をつければ、この訴訟はそこで終わりになると私は思う。Apple 社 は裁判に持っていって、その漏洩者が持っていそうもないお金を取り返そ うなどという不毛な試みをするよりも、むしろその人を切り捨てるために それが誰であるかさえわかればよいと思っている。その人はもし Apple 社 で働いているのであれば、規約違反のかどで解雇されるであろう。もし第 三者の開発会社かビジネスパートナーの従業員であれば、Apple 社はその 相手会社に対してその漏洩者を解雇するよう圧力をかけるであろう。その 脅しとは、Apple 社からは今後一切情報は得られなくなるか、あるいは機 密保持契約を犯したとして契約違反で訴えられるかであろう。

もし Apple 社がその情報を掲載したサイトを狙っているとしたならば、同 社は California 州での訴訟にはしなかったであろう。California 州に は、民事訴訟では法廷侮辱に問われることをあまり心配せずに、報道者が その情報源を明らかにすることを拒否できる保護州法がある。その法は Web 出版を特定して包含してはいないが、特定して除外もしていない。どちら にしても、この保護法は Apple 社の開示手続きの邪魔になって、告訴の真 の狙いを打ち砕くことになってしまうであろう。さらに言えば、この噂の 2 つのサイトは両方とも合衆国の東海岸 - MacNN 社の AppleInsider は Washington, DC に、Mac OS Rumors は Portland, ME にある。California 州法廷はその聴聞が開かれる場所から 50 マイル以上離れた人々を召喚す る力を持っていない、したがって定義上からもこの両方のサイト共訴訟の 裁判権の範囲外にあるのである。

<http://www.gulker.com/ppagla/mediaguide/04shield.html>

かの合衆国憲法修正第一条、再び -- この 5 月末に Photoshop 6 の取 引上の機密を不正に入手したとして Adobe 社が MacNN を訴えた件で、 Adobe 社は、怒れる Macintosh ユーザーから大きく攻撃された。Adobe 社 は自らの情報の機密保持能力がないから、逆に Web サイト側を訴えたのだ という人もいれば、出版の自由を認める合衆国憲法修正第一条の悪用だと いう人もいた。いかにして MacNN が情報を得ようと、その時点では、おそ らくサイト側には情報を公開する合衆国憲法修正第一条上の権利があった のだ、ということを我々は MWJ において指摘している。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05977>

Apple 社は、この騒動から学んで、Web 上で誰がその情報を公開したかで はなく、最初に誰がその情報をリークしたかを追跡している。このような 戦術は、1 つの例外の可能性を除いて、面倒な問題全体を避けている。つ まり、一旦、犯人と分かったら、その被告は、自分自身の GeoCities の Web サイトに情報を投稿したから、自分自身が出版者であると主張するで あろう。そして、次に、自分が他の誰かから情報を得たと主張し、個人を 識別する機密を守るための保護法のようなものに訴えようとする。しかし ながら、もしも、ウェブマスターが Apple の社員か Apple のビジネスパー トナーの社員であるとしたら、たとえ、事態を引き起こしたのではなかっ たとしても、それが Apple の商取引上の機密情報だということを確かに 知っていたはずだということを主張して、Apple は、引き続き、その人を 解雇するか、あるいは、解雇するよう圧力をかけるであろう。Apple 社は、 いずれにしても目標に達する。

また、この戦略によって、噂のサイト自体は、情報源を明らかにするとか、 もしかすると屈辱的な生活をすることになるといった、連邦裁判所での不 本意な判決に直面しないですむ。2000 年 8 月 3 日版の Wall Street Journal において、Piu-Wing Tam 氏は、匿名の情報源に対して Apple 社 のとった行動はすばらしい、と言った Ric Ford 社の MacInTouch 担当の 弁護士である Sydelle Pittas 氏の言葉を引用している。彼女は、“Apple 社は、機密情報保持に関する契約を破ったと思われる者を追跡する完全な 権利を持っているのだ。”と言っている。Pittas 氏のコメントは、おそら く、情報源への法的対応に向けた MacInTouch のポリシーとして解釈され るべきではない。しかし、カリフォルニアの保護法のような法律の防衛な しでは、匿名の情報源を守るために、出版者は投獄の危険を冒すことにな るのだ。苦渋の選択である。

皮肉なことに、California 州においては、誰かが従来のメディア(新聞、 テレビ、雑誌)のレポーターへ情報をリークしても、Apple Computer の ケースのような法の適用範囲からはずれてしまい、犯人を識別することが できないだろう。しかし、識別可能なアカウントで公のフォーラムへ投稿 したことによって、リークした者自身がこの Web サイトを従来のメディア と同じ扱いからはずしてしまったのは明らかである。召喚状を通じて Apple が犯人を突きとめるのに十分な糸口を犯人が残していったので、Web サイ ト側で犯人が誰なのか暴露しろと依頼されることさえないのである。はか ない Web の名声に一撃を与えるために、あなたが自分の良心と自分の契約 を安売りする気になっているなら、このことを心に留めておいてほしい。

[Matt Deatherage 氏は、熱心な Macintosh ユーザーのための日刊、週刊、 月刊の予約購読制のニューズレターである MDJ、MWJ、および、MMJ の発行 者である。3 誌すべては、無料試読できる。MMJ の試読版には、 TidBITS 発行者の Adam C. Engst が Steve Jobs に次ぐ 2 位にランクされた記事 など MDJ Power 25 の記事すべてが掲載されている。]


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