TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#545/28-Aug-00

先週行った未来のテクノロジーに関するアンケートでは、音声認識機能が 第一位となった。そこで今週、Matt Neuburg は Apple 社の音声認識技術 とともに、QuicKeys と ListenDo が提供する他の音声インターフェースに ついて検証してみる。音声から印刷へと話は変わって、Kirk McElhearn 氏 が David Pogue 氏著の“Mac OS 9: The Missing Manual”のレビューとと もに帰ってきた。さらにアンケートでは、コンピュータ本の購入の決め手 となる要因が何であるかを尋ねる。

目次:

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MailBITS/07-Aug-00

(翻訳:佐藤 公子 <umi@cf.mbn.or.jp>)

Quicken 2001 出荷 -- Intuit 社は、市場を席捲する個人向け財務パッ ケージの最新バージョン、Macintosh 版 Quicken 2001 の出荷を開始した。 Quicken 2001 では、アカウントを越えて行う一括検索や置換機能が提供さ れ、何度も行う支払に対する通知機能や支払い期日を前もって知らせてく れる機能、およびアップデートやバグフィックスが発表されると自動的に 通知するソフトウェアアップデート機能も提供されている。さらに、 Intuit 社は Mac 版の Quicken において、500 を超える金融機関がオンラ インバンキング機能をサポートすると発表しているが、現時点でダイレク ト接続をサポートするのは 70 社を下回る - その他の金融機関は Quicken へダウンロードできるデータを提供するだけである。また、Windows 版 Quicken 2001 は、Mac 側で欠けている機能を提供し、これには一般的な記 帳エラーの発見および訂正を行う Smart Reconcile 機能や、改良された ポートフォリオ管理機能が含まれる。Quicken 2001 には、32 MB 以上の RAM および CD-ROM ドライブを搭載し Mac OS 8.6 以上が稼働する PowerPC ベースの Mac が必要となる。価格は 60 ドルだが、購入者は Quicken 2001 の送り状のコピーを提供すれば、郵送で 20 ドルの払い戻しを受けられる。 [GD]

<http://www.shopintuit.com/q2001/q2001mlps/index.asp>
<http://www.intuit.com/banking/filist.html>

アンケートのお知らせ: 本、本、本 -- 文字通り、毎年何百もの新しい コンピュータ本が登場しており、最新版のソフトを解説し、Web サイトか らデジタルビデオまであらゆるものの作成に関するヒントやテクニックを 伝え、テクノロジーや業界の状態に関して意見を述べている。率直に言っ て、圧倒されてしまう(信じられないというなら、大きな書店のコンピュー タコーナーの規模をちょと見て欲しい)。しかし、木のままで置いておけ ばよかったのにという本がある一方で、まさに素晴らしいものもあり、他 では簡単に見つけることのできない助けを提供してくれる本、雑誌や Web サイトよりはるかに詳しい形で独自の見解を提供してくれる本が存在する。 今週のアンケートの質問は、“コンピュータ本の購入を決めるにあたって、 あなたに最も影響を与える要因はどれか?”である。おそらく、これは批 評や特別な価格体制、または最初にコピーをパラパラめくって、などの点 を組み合わせたものだろうが、詳細はともあれ、我々のホームページであ なたの意見を登録して欲しい(コンピュータ本を買ったことがない場合、 そんなあなたへの答えも用意している) [ACE]

<http://www.tidbits.com/>


アンケート結果: 空飛ぶ(Apple)パイ

by Geoff Duncan <geoff@tidbits.com>
(翻訳:吉田 節 <benjamin.takashi@nifty.ne.jp>)
(  :篠原 慎一 <sshino@mbd.sphere.ne.jp>)
(  :尾高 修一 <shu@pobox.com>)

私たちは 2001 年に近づいているが、空飛ぶ車も、大衆向け宇宙旅行も、 それから(ありがたいことに)宇宙船のエアロックから出た乗組員を撃ち たがる赤い目の人工知能も、未だにない。しかし私たちは、すばらしい技 術革新の中を生きている。先週のアンケートではこんな問いかけをした。 “自分の Mac や未来の Mac で、一番使ってみたいテクノロジーは何か?” こうした既存テクノロジーのいくつかは、未来の Mac を強化するために用 いられるかもしれないし、いくつかはまだ未完成な形ではあるが、すでに 入手可能である。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbpoll=54>

音声認識と書き取り -- 音声認識は回答の 58 % を集めて、各種無線デ バイスをかろうじて押さえた、一番求められたテクノロジーだった。コン ピュータに話しかけるための機能は、次のような形で現在入手可能である。 ひとつは Apple 社独自の、あまり充分ではない PlainTalk 音声認識(Mac OS 9 に含まれている)だ。他には IBM 社の ViaVoice のように、Mac で 連続音声認識を可能にする製品がある。(PlainTalk に関する今週の Matt Neuburg の記事と、先週号の ViaVoice のレビューを参照。)コンピュー タに話しかけることができるというのは、昔からサイエンスフィクション で用いられてきた状況設定だ。しかし現在の製品はまだ特殊で制限があり、 テクノロジーが発展する余地は充分にある。それから、もし小説や手紙や メールを音声認識で書き取らせるなんて天国のようだと考えているなら、 効果的に書き取らせるのはタイプ入力を覚えるよりも難しいことが多い、 という点をお忘れなく。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06085>

各種無線デバイス -- 回答の 52 % を得て次点となったのは、Macintosh のまわりからネズミの巣状態のケーブルを無くすことである。Apple 社は 最近、AirPort 無線ネットワークと、USB、電源、ビデオを一本にまとめた 新しいディスプレイケーブルを出し、この分野で少し進歩した。無線式の キーボードとマウスは何年も前から存在している。無線式の周辺機器(ス キャナ、ハードディスク、プリンタのような)や、無線式のディスプレイ でさえも、間違いなく実現可能である。(実際、赤外線を使って印刷ジョ ブを受け取れるプリンタは、しばらくの間存在していた。)

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=1124>

ホログラフィック、あるいはヘッドマウントディスプレイ -- 映画やテ レビの中では長いこと使われているこれらのオプションは、モニタや伝統 的なコンピュータスクリーンの置き換えになるかもしれないということで、 回答の 31 % を集めた。ホログラフィックディスプレイはユーザーの目の 前の空間に 3-D のコンピュータインタフェースを表示することができる が、多くの業務や屋外での使用には十分な明るさを持っていない。ヘッド マウントディスプレイは実装の方法によって異なるが、ユーザーを取り囲 む光景の目の前に画像を重ね合わせたり描画したりするものだ。ヘッドマ ウントディスプレイの外見はゴーグルやヘッドセットに似ており、画像を 網膜に直接投影する- これは PowerBook 所有者には理想的かもしれない! - あるいはバイザーや眼鏡、風防のようなものの表面に投影する。

手書き文字認識 -- 回答の 28 % を獲得し、“最先端の可搬性”と関係 の深い手書き文字認識は、一般的にはタブレットやデバイスの感圧領域上 に手書きされた入力をコンピュータが受け付ける能力だ。Apple 社の今は 亡き Newton PDA - 特に Newton 2.0 - はそのスクリーン全体において良 好な手書き文字認識能力を提供していた。現在好評を博している Palm デ バイスは、スクリーン下部の小さな領域において、決められた書き順の手 書き文字(グラフィティ)を認識する。手書き文字認識は比較的現実的な 技術だが、パーソナルコンピュータ製品の主流にはなっていない。これは おそらく、書き込み面を提供するためにコスト増となり、現在のコンピュー タのキーボードから置き換えるのが困難(あるいは不可能)なためだろう。

究極の携帯性 -- “ウエアラブル(着用可能)”ともいうが、究極の携 帯性とはコンピュータシステムを高度にポータブルに、あるいは着用する ようなものになるまで小型化することを意味する。今日、ウエアラブル・ コンピュータに関する研究は非常に盛んだ。ここまでくると紹介した他の 技術、たとえば音声認識、ヘッドマウントディスプレイ、無線コンポーネ ントなどが取り入れられる可能性が高い。

生体測定セキュリティ -- 回答者の約 20 % に相当するセキュリティに 敏感な読者たちは、生体測定を応用したセキュリティを待ち望んでいる。 これはユーザーに固有の属性に基づいて本人の確認をするもので、特定の 個人に直接結びいていないパスワードなどとは性格が異なる。Mac OS 9 の 声紋認証機能は生体測定セキュリティの一例だ。ユーザーが Macintosh に 向かってパスフレーズを言うと、コンピュータがこれと同じ人によるパス フレーズ発声データと照合する。生体測定セキュリティの他の応用例とし て、指紋認証や掌紋認証、網膜スキャンなどがありえるだろう。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05625>

VR または没入型インターフェース -- 19 % はユーザーを架空の環境に 浸し、場合によっては現実世界からユーザーを遮断するインターフェース を支持していた。ユーザーはジェスチャーによってデータを操作したりコ ンピュータとやりとりし(触覚インターフェース)、時には avatar(化 身)というコンピュータが生成したオブジェクトとして表現される。バー チャルリアリティの概念が一般化したのは William Gibson 氏の 1984 年 の著作、『ニューロマンサー』からで、大ヒットしたハリウッド映画、 『マトリックス』にみられるようにその後はおなじみのものとなっている。 現行のテクノロジーはまだポップカルチャーに追いついていないが、初期 のコンシューマー向けバーチャルリアリティ商品はすでに姿を現している し、エンジニアリングや医療といった特化した分野ではバーチャルリアリ ティ・アプリケーションの利用は広まりつつある。エンターテイメントや ゲームといった一般向けの分野で応用されることも間違いない。

<http://www.amazon.com/exec/obidos/ISBN%3D0441569595/tidbitselectro00A/>

脳波認識 -- 回答の 15 % は脳波認識に寄せられた。これは実際に脳の 電気信号を解析し、コンピュータやその他のデバイスへの入力に変換する というものだ。IBVA Technologies が脳波を利用した製品をすでに市販し ている。テレパシーにはまだほど遠いが、ユーザーインターフェースや障 害者のコンピュータアクセス用に新地平を切り拓くだろう。

<http://www.ibva.com/>

カップホルダー等 -- もちろん、今や巨大 SUV の時代なのだから、カッ プホルダーの一つや二つのない未来の Macintosh なんて考えられるだろう か? この人気の飲料ストレージデバイス(CD を載せるトレーと同じもので は 決してない )は 13 % の支持を集め、ミステリアスな“その他”に は 9 % の票が寄せられた。この“その他”が果たしてどういうテクノロ ジーを想定しているかは、いずれ明らかになる時が来るだろう。あるいは TidBITS Talk での発言を読まれたい。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=1138>


BookBITS: Mac OS 9: The Missing Manual

by Kirk McElhearn <kirk@mcelhearn.com>
(翻訳:尾高 里華子 <rikako@pobox.com>)

1990 年に購入した PowerBook 100 が、私にとって最初の Macintosh だっ た。どっさりと 2 MB もある RAM と 20 MB のハードディスク、System 7 を搭載していた。新米コンピュータユーザーの私は、あまりにも簡単に使 えること、とりわけ、システムソフトウェアの管理がシンプルでわかりや すいことに驚嘆した。

時は流れて、現在の私の最新 Mac は iMac DV SE になった。このマシン は、メモリ 128 MB、ハードディスク 13 GB、そして Mac OS 9 (これが何 よりも変わったこと)を装備している。かつて所有していた PowerBook は もう手元にないのでちゃんと比較することはできないが、システムフォル ダが占めていたハードディスクはほんの数メガバイトだったと記憶してい る。私の iMac のシステムフォルダはデフォルト状態(サードパーティの ものが一切はいっていない状態)で、2,179 個のアイテムが入り 175 MB になっている。もちろん、Mac OS がやってくれることは以前よりも増えた が、かなり複雑で分かりづらいものになってしまった。

新しい OS の手引きとして、派手に宣伝されていた David Pogue 氏著の “Mac OS 9: The Missing Manual”(Pogue Press/O'Reilly 社発行、2000 年、19.95 ドル)に手を伸ばしてみた。(著者は TidBITS の発行人である Adam Engst と共同で“Crossing Platforms: A Macintosh/Windows Phrasebook”も執筆している。 TidBITS-509 の“Macintosh-Windows 対 訳辞書”を参照のこと。)

<http://www.amazon.com/exec/obidos/ISBN=1565928571/tidbitselectro00A/>
<http://www.amazon.com/exec/obidos/ISBN=1565925394/tidbitselectro00A/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05712>

同梱されず -- 大抵のプログラムが紙のマニュアルなしで販売されるの が、2、3 年前に始まったソフトウェア業界の傾向であり、今や標準になっ てきている。これに関しては TidBITS でも 1998 年の中ごろに TidBITS-428 の“ドキュメンテーションの死”で取りあげられた。よくま とまった PDF ファイルのマニュアルが用意されていれば上々で、(Mac OS 9 に付いているヘルプのように)HTML ファイルになっていることもある が、最悪なのはインターネットベースのヘルプのようなものしかない場合 で、これは使う立場からすると現実的でないし使いづらい。こういったヘ ルプの類いは、複雑なアプリケーションやシステムソフトウェアにはまず 向かない。さらに、マシンに入っているヘルプへアクセスすると、大抵の 場合そのヘルプで必要なプログラムが隠れてしまうし(重なり合っている ウインドウをいったり来たりしなければならない)、マシンの状態を変え てしまうというさらに困った事態になったりする。紙のマニュアルが優れ ている点の一つとして、画面に表示されているもや、マシンがやっている ことをそのままに、机やひざの上において簡単に参照できるということが ある。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=04865>

Mac のパワーユーザーであると自負する私は、今まで自分の Macintosh が 動作の仕組みを知るのに市販の本の必要性など感じたことがなかった。ユー ザーグループや雑誌、または TidBITS のような電子出版物から必要な情報 を見つけることができていたのだ。だが、Mac OS 9 にはかつてのバージョ ンではなかったほどしりごみしてしまった。

これが知りたいというものがあったわけではないが、あっけにとられたこ とだけは間違いない。Mac OS 9 の新機能の中には私が予備知識を持ってい なかったものが多数あったのだ。少し前の OS に搭載されていたものの私 が一度も実際に試したことがなかった機能や、思いもよらなかった単純な トリックのことも書かれていた。

なんと、私はこの本を始めから終わりまで読み、自分が知らなかったこと を把握したのだ(なにしろ私はコンピュータマニュアルを 好んで 読む タイプなのだ)。Mac OS 9 について知らなかった多数の事柄を発見してか らも、さらに詳しく知るために再三この本に手を伸ばしている。たとえば、 マルチユーザーや暗号化のオプションのような新機能を紹介しているとこ ろを読んで、それら機能の仕組みを飲み込むことができた。メモリ管理の 章は、私にとってさほど新鮮な情報は出ていなかったが、よくまとまって おり、Mac OS がメモリをどのように利用するかや、性能を最大限に活かす ための術を理解するための集中講座の役割を果たしてくれた。

この本は、新たに Mac ユーザーになった人が Macintosh のことを学んで いく過程を反映した構成になっている。まず最初に Mac のデスクトップの ことが、続いてアプリケーションを使う上での知恵が書かれており、シス テムの構成についてや、オンライン環境を実現するため説明のあと、最後 にネットワーキングの話題になっている。Mac OS 9 のデスクトップに関す る説明では、この OS の基本インターフェースの機能が見事にかつ詳細に 紹介されている。デスクトップ、ウインドウ、フォルダを自分のニーズに 合うように構成・調整する方法を学ぶことができる。

次は、アプリケーションの話に移り、仕組みやメモリ管理の仕方、 AppleScript の紹介が書かれている。AppleScript の部分はほんの触りに しかすぎず、AppleScript を書くことにはほとんど触れられていないのが 少々残念である。AppleScript は Mac OS の中にあっては重要ではあるが 日の当たらない機能で、もっとちゃんと紹介すれば、どれほど便利なもの かがを示すことができるのに。

第三部では Mac OS 9 の構成について考察しており、私にとって最も有用 な部分であった。機能拡張やコントロールパネルが何をするものなのかを 正確に知りたいとよく思うのだが、今回オフにしてもいいものがかなりあ ることがわかり、メモリを節約できるようになった。たとえば、ネットワー クを利用していないときは、AppleTalk やファイル共有のコントロールパ ネルをオフにしておいても大丈夫だ。マルチユーザーを利用するつもりが ない方は、“マルチユーザー”を外してもよい。メモリを他で利用できる ように回すなどの Tips は、RAM が比較的少ない環境(32 MB しか搭載さ れていない初期型の iMac や iBook など)の方にはありがたいものだ。 (システムフォルダの中味について詳しく知りたい方は、シェアウェアの InformINIT や Extensions Overload を利用するという手もあるし、レファ レンススライブラリの充実した Casady & Greene 社製の Conflict Catcher も参考になる。)

<http://www.informinit.com/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=04879>
<http://www.extensionoverload.com/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=04960>
<http://www.conflictcatcher.com/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05086>

2 つの短い章には、Mac でのインターネット利用の概論が書かれており、 次の項目では、ネットワークの設定が出ている。そして、印刷、サウンド やビデオ、音声認識などのを少々取りあげてある。巻末には様々なメニュー コマンド、Mac OS のインストール、トラブルシューティングの 3 つの付 録がついている。

Macintosh 百科事典 -- この本で気に入らないところはほとんどないの だが、著者が“あらゆるレベルの読者にも役に立つように書かれた”本だ と言っているのが一番好ましくない点で、まったくの初心者は手を出さな いほうがよいだろう。Macintosh を使い始めたばかりの方は、初心者のた めに書いた本を求めるほうがよい。ここでポイントとなるのは、この本は 百科事典やその他の参考図書のようなものにより近いものだということで ある。先ほど私は Mac と関わる順番で章構成されていると書いたが、これ は手引き書ではないのだ。とはいえ、Mac のことが分かるようになってし まえば、この本は、よくできた索引も味方して参照用マニュアルとして理 想的なものになるだろう。

David Pogue 氏の文章の上手さがよく出ている本だし、視覚の面からも今 まで読んだことのあるコンピュータ書籍の中でも抜群のレイアウトである。 デザイナーの Phil Simpson 氏およびその他この本の作成に関わった人達 に賞賛を与えたい。読みやすい活字が使われており、短い解説と図は出色 のできでかつ有益だ。また、ページの端の黒の四角に白抜きで印刷された 項目のタイトルのおかげで、探しているものが見つけやすい。さらに、そ の他の O'Reilly の書籍と同様、この本は平らな状態に開くことのできる 製本なので、机の上で開いているときに勝手にページがめくれたりしない。

この本は、初心者向けの手引き書としての部分がかけているが、初心者で なくなったユーザーで、探求心のある方または Mac OS 9 について何でも 書かれている参照用マニュアルをお求めの方には、もってこいのものにな るだろう。

[Kirk McElhearn 氏はフランス・アルプスに住むフリーの翻訳家・テクニ カルライターである。]


PlainTalk で Mac に指図する

by Matt Neuburg <matt@tidbits.com>
(翻訳:斎藤 美礼 <mirei@x.age.ne.jp>)
(  :尾高 修一 <shu@pobox.com>)

TidBITS-544 で、私は IBM 社の ViaVoice を使って、Mac 上での連続音 声認識の記事を書いた。ViaVoice を使うと文章を書き取ってコンピュー ターにタイプさせることができる。また、ViaVoice は孤立音声認識もす る。つまり、次の単語を選べ、や、マイクのスイッチを切れ、など、あら かじめ定義された命令を言うことができる。しかし、もし御自分のコン ピュータに命令を言いたい だけ なら、今すぐ、無料でできるかもしれ ない。Apple 社製のシステムレベルの連続していない文の音声認識機能、 PlainTalk がある。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06085>

今日の日付は? PlainTalk の最初の気配が感じられたのは、1990 年に、 音声認識の研究所が急な“頭脳流出”に不平を言い出した時だった。当時、 Apple は、金を惜しまず、見つけられる限りの研究員をすべて雇っていた。 一年間にわたる徹底した研究の後、Apple は努力の成果を披露しはじめた。 コードネームはキャスパー、一般に入手できるようになったのは PlainTalk として 1993年製の AV Mac シリーズに付属したときだった。その後、1994 年に PowerPC ベースの Mac の出現とともに System 7.1.2 の一部として 標準搭載された。それ以来、PowerPC Mac は全て、いくつかの 68K 機種も が、ユーザーの声による命令を待ち続けている。しかし、多くのユーザー は存在に気付いていない。なぜなら音声認識は標準の設定ではインストー ルされないからだ。システムをインストールする時に、はっきり指定して やらなければいけない。インストールするには、Mac OS の CD- ROM を挿 入し、Mac OS Install を起動し、Install Software 画面まで来たら、 Customize ボタンを押し、English Speech Recognition を選択し、他は選 択のチェックをすべてはずし、インストール作業を続ける [訳注:Mac OS 9 日本語版では Mac OS 特別付録の English Speech Recognition 中のイ ンストーラーを起動する] 。

<http://www.apple.com/macos/speech/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=03790>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=03193>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=02448>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=04032>

Speech ヘルプを開けて -- 音声認識機能 PlainTalk は 4 つのソフト ウェア・コンポーネントとして現れる。Speech コントロールパネルがなく てはならない。Speech Recognition 機能拡張により、どんなアプリケー ションでも音声認識が可能になる。しかしそれ自身ではなにもしないので、 Apple は Speakable Items 機能拡張というインターフェースを用意してい る。これは Speakable Items フォルダ(アップルメニューフォルダの中に ある)の中のアイテムならなんでも名前を言えば開けてくれるものだ。

また、ハードウェアのコンポーネントもある。マイクロフォンである。 Apple は音声認識用の特別なマイクロフォンをデザインした。これは PlainTalk マイクロフォンと呼ばれ、長いジャックと普通でない形でそれ と分かる。これのせいで Mac における音声認識はあやうくだめになるとこ ろだった。というのも、ユーザーはマイクロフォンの使い方が分からず (そして、Apple はいつものように説明書をつけなかった)、壊れている と思ったのだ。このマイクロフォンは、“正面”に向かって話してはいけ ない。“正面”を上に向けてモニタの上に置き、ユーザー側に向けられた “上部”に向かって話しかけるのだ。最近のマシンの中には内蔵マイクロ フォンがついており、この外部マイクがいらないものがある。しかし、iMac は内蔵マイクロフォンが あるのに マイクが 必要 で、この状況は他 のマシンでも同様に混乱している。もしお疑いなら、Apple Tech Info Library を“plaintalk and microphone”で検索し、はっきり教えてくだ さい、とお祈りしてみればよい。また、人目を引くデザインの雑音防止機 能のついた音声認識用ヘッドセットも同様に動く。

<http://til.info.apple.com/techinfo.nsf/artnum/n15884>

音声認識 をインストールしたら、Speech コントロールパネルに向かって Listening オプションを設定しよう。命令中は Escape などのキーを押さ なければならないようにするか、常に認識させ、(“コンピューター”や “おい”などの)言葉を決めて、命令の前にいわなければならないように するかを設定する。次に、Speakable Items を作動する。“ helper”フ ローティングウインドウが現れ、Speakable Items が作動中であることを 示すと、命令をいうことができる。“show me what to say ”(命令を見 せて)が、最初の命令にふさわしいだろう。選んだアニメーションのアイ コンごとに、音声認識が眠っている、聞いている、命令を実行中、または 分からない、といった意味のいろいろな画像を見ることができる。

これを命令にして -- PlainTalk はユーザーの声を覚えさせなくてもよ いが、命令できるようになる前に、システムに言ってよい言葉のリストが 全部なければならない。命令にもっとも合うものをリストから探すことに より認識できるようになっているのだ。Speakable Items のインターフェー スでは、Speakable Items フォルダの中身がそのままリストになる。残念 ながら、リストの数が増えると、PlainTalk は頼り無くなり、不適当な命 令を実行したり、命令がない、と言ったりする。Speakable Items フォル ダから使いそうにない命令は全部取り除くべきだ。また、Mac OS 9 で新し くなった重要な機能を利用すべきである。アプリケーションの名前をつけ たフォルダに命令をいれ、そのフォルダを Application Speakable Items フォルダの中に入れて、命令と特定のアプリケーションを結び付けること ができるのだ。

どのようなものが命令になるのだろうか。基本的に、Finder から開くこと ができるものはすべて命令になる。命令がエイリアスなら、ファイルやフォ ルダを開けたり、アプリケーションを起ち上げたりする。命令がスタンド アロンの AppleScript なら、スクリプトを走らせる。そういったスクリプ トの多くが収録されているし(巧妙に隠された More Speakable Items フォ ルダの中を見るのをお忘れなく)、自分で書くことももちろんできる。だ から、AppleScript ができることは何でもできるのだ。Mac OS 9 で特に クールな点は、音声認識機能 自体が AppleScript 対応になったことだ。 だから AppleScript のスクリプトを書いて、ユーザーが言うことができる 独自の命令リストを作って、それぞれ注文通りに反応させることもできる。 詳しく知りたければ、Scripting Speech help module をダウンロードしよ う。

<http://www.apple.com/applescript/help_mods.html>

マクロを語る -- とはいえ、AppleScript で駆動できるのはスクリプタ ブルなアプリケーションだけだという制約がある。これでは飽き足らない という方には、少し前に登場した QuicKeys 5 をチェックすることをお薦 めしよう。私はこれまでに TidBITS で QuicKeys をかなり詳しく 紹介し てきたが、バージョン 5 の音声認識サポートは特筆に値するものだ。ご存 じのように QuicKeys はマクロプログラムで、キーボードからの入力、メ ニューアイテムの選択、マウスのクリックといったことを実行することが できる。それに加え、今回の音声認識対応により、声で QuicKeys アクショ ンをトリガできるようになったのだ。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbser=1044>
<http://www.cesoft.com/products/qkmac5-fb.html>

QuicKeys の音声インターフェースはシンプルだがよくできている。アク ションをトリガするコマンドフレーズはユーザーが好きなように指定する ことができる。アクションの名前と同じにすることもできるが、別なもの でもいいのだ。また、QuicKeys は Speakable Items とは別個の存在だが (いずれも Speech Recognition のインターフェースとなる)、両者は共 存することができ、個別にオン・オフすることも可能だ。どちらかがオン になっていれば“helper”フローティングウインドウが表示されているこ とになる。Speakable Items と同様に、コマンドフレーズの先頭部分で発 する言葉により、正しいリスナーにコマンドが取り次がれる。例を挙げる と、私の Speech コントロールパネルの設定は、エスケープキーが押され ていなければならず、先頭文句はなし、となっている。一方の QuicKeys では、コマンドフレーズは“QuicKeys”という先頭文句が必要であるとい う設定になっている。これで“What time is it?”も、“QuicKeys press Home”もちゃんと使えることになる。

Speakable Items をオフ -- MacSpeech 社の ListenDo も目立たない音 声認識ユーティリティで、Speakable Items に代わる機能を持っている。 両者に互換性はないが、ListenDo の方が勝れているのでこれは問題ではな い。そもそも Apple が最初からこういうものを作っているべきだったの だ。Speakable Items は扱いがややこしい。コントロールパネルでオン・ オフを行い、コマンドは Finder アイテムとして閲覧し、スクリプトの編 集はまた別なところ(たとえば Apple の Script Editor)で行う。だが ListenDo は集中管理インターフェースを持っていて、アプリケーションで もあるので ListenDo が走っている時は音声認識がオンになっており、終 了するとオフになる。それに ListenDo のウインドウではコマンドの閲覧 ・管理とスクリプトの編集がすべてできる。また、Speakable Items では すべてのアイテムがアプリケーションなので、コマンドを実行するたびに Apple メニューの“最近使ったアプリケーション”のリストに足されてい くことになる。これは気が狂いそうになるが、ListenDo ではそんなことは ない。

<http://www.macspeech.com/products/ListenDo.html>

また、QuicKeys と同様に、ListenDo はマクロプログラムでもあるので、 キーボードからの入力、ボタンのクリック、メニューアイテムの選択、マ ウスボタンのクリックといった動作のためのコマンドを備えている。とは いえ、ListenDo は 2 つの点において QuicKeys より優れている。まず、 無料だ。次に、メニューアイテム選択のインターフェースが完全にダイナ ミックなものとなっている。メニュー名を発声するとそのメニューがプル ダウンされた状態になり、そこでメニューアイテム名を読み上げるとその アイテムが選択される。AppleScript とListenDo のマクロ機能では物足り ないという場面では、他のスクリプタブルなマクロプログラムで補うこと が可能だ。たとえば、私が“Close all but the front window”というと、 ListenDo が OneClick にこのアクションを実行させる。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05881>

ほんの冗談 -- コンピュータをあごで使う方法はこれだけ色々あるのだ が、日頃私が使っているのは? ListenDo は好きだが、本当のことをいうと どれも使っていない。PlainTalk 音声認識技術が不安定で信頼性に欠ける からだ。コマンドが正しく認識されるかどうかは運任せだし、さらに悪い ことに PlainTalk には時々なぜか聴覚障害になってしまうのだ。これは私 の 2 台のコンピュータ両方で起きるので、原因は機能拡張のコンフリクト やハードウェアがらみの欠陥ではなく、システムレベルのものであると考 えている(この考えが間違いであれば、それは歓迎すべきことだが)。問 題がシステムレベルのものであれば、どのインターフェースもが Speech Recognition に依存している以上、その肝心の Speech Recognition がちゃ んと動かない限りどれを使っても同じことになる。唯一の解決策は Speakable Items、QuicKeys の音声機能、ListenDo をオフにしてからオン にして PlainTalk を初期化するだけだ。だがこれは面倒過ぎる。

とはいえ、Mac における音声認識を待ちわびているという方で、まだ Apple 純正の音声認識技術を試したことがないのなら、すぐに入手できる PlainTalk と QuicKeys 5 と ListenDo による機能強化に耳を傾けてみる のもいいだろう。


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