TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#550/09-Oct-00

Microsoft Office は、好き嫌いに関わらず、Macintosh ソフトウェアの シーンでは 3,000 ポンド級のゴリラだ。今週は、Office 2001 と Word、 Excel、PowerPoint の最新版、それに新しい Entourage のリリースをが ある。Entourage については客員編集者の Matt Neuburg が今週号で詳し く考察する。また今週は、Apple 株の下落の背景にある理由を眺め、合衆 国最高裁が Microsoft 独禁訴訟の迅速な審問を拒否したことをお知らせ する。

目次:

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MailBITS/09-Oct-00

(翻訳:西村 尚 <hisashin@hotsync.co.jp>)
(  :佐藤 陽子 <cac25210@pop11.odn.ne.jp>)
(  :尾高 里華子 <rikako@pobox.com>)

最高裁、Microsoft 裁判の迅速化要請を棄却 -- 2000 年 9 月 26 日合 衆国最高裁は、Microsoft 裁判の迅速化要請を棄却して、この訴訟を控訴 裁に委ねた。控訴裁判所は、今までのさまざまな訴訟で Microsoft に対し 歴史的に有利な判決を下してきているため、長く続いているこの裁判の中 でも、この決定は、一般的には Microsoft の手続き上の勝利だととらえら れている。結局、最高裁の決定により独禁法裁判の最終判決がでるまで、 1 年かそれ以上期間がのびた。控訴裁判所は、2001 年初めまで判決を下し そうもないので、2001年初めの時点で、裁判は、最高裁にいくか、Thomas Penfield Jackson 判事の元に差し戻されるか、いずれにしろ 2002 年まで 最終決定が下されそうもない。

今年 4 月 Jackson 判事は、Microsoft を独禁法違反とし、会社を分割す るよう命じた。Microsoft は、即座にこの決定を控訴し、6 月、Jackson 判事は、この裁判が米国経済にとって重要で緊急性のある案件だという理 由から、最高裁に控訴裁を通さずに Microsoft の訴訟を直接審理するよ う要請した。この決定の全文は、San Jose Mercury News 紙に記載されて いる。また、なお、TidBITS の Microsoft 独禁法関連記事でもみること ができる。 [GD]

<http://www.mercurycenter.com/business/microsoft/trial/filings/sc092600.htm>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbser=1152>

アンケート結果:生涯 1 アドレス? TidBITS-549 で、新テクノロジー XNS の概要とその運営団体 XNSORG のことをお伝えし、XNS が成功するか どうかについてみなさんの意見をお尋ねした。今回のアンケートに答えて くれた人の数は通常より少なかったものの(耳にしたばかりのことについ て判定を下すのが難しいということが一部起因していただろう)、回答者 の 61 % が成功するだろうと考えていた。TidBITS の読者の方が Zdnet の AnchorDesk の読者よりも慎重であるというおもしろい結果が出た。あ ちらでは、XNS のコンセプトは“当たる”ということに賛成した人が 83 % に及んだ。もちろんそれは我々の望んでいることでもある。XNS がもた らす利点のせめて半分でも実現できれば、そしてユーザーのオンライン上 のプライバシーが守られれば、すばらしいことである。TidBITS Talk で の議論を読むと、XNS の広大無辺の機能の一部(見込みのあるものも含む) が、だいたい理解できるだろう。その後、議論の場は XNSORG がホストし ている XNS Talk へと移っている。 [GD]

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbpoll=59>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06133>
<http://www.xns.org/>
<http://cgi.zdnet.com/zdpoll/question.html?pollid=19294&action=a>
<http://www.zdnet.com/anchordesk/stories/story/0,10738,2631773,00.html>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=1172>

アンケートのお知らせ:Office を使いますか? Microsoft 社が Office 2001 の販売を開始した。同社の看板ビジネスアプリケーションの Macintosh 版 Word、Excel、PowerPoint の最新版が入っている。今週号 では TidBITS Contributing Editor の Matt Neuburg が、新たに Office 2001 に搭載されたメールおよびパーソナルな情報を管理する Entourage をレビューしているが、我々は以下のことをお聞きしたいと思う。 Microsoft Office 2001 を購入またはアップグレードするつもりはあるだ ろうか? 予定している方は、その理由は? 新機能、フィックス、改良点に 惹かれるか? Microsoft Office が職場などで標準になっているからアッ プグレードせざるをえないのか? アップグレードする気はまったくないの か? 早速、TidBITS のホームページに行って、一票を投じよう! [GD]

<http://www.tidbits.com/>


Apple 株の下落と騒ぎ立てるやから

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:尾高 里華子 <rikako@pobox.com>)

休暇の度に、大きなニュースが起きていつも以上に働くことになるのでは と冷や冷やする。それにしても先週は、とりわけマスコミが大わらわの週 になった。これは 2000 年 9 月 28 日に行われた Apple 社の四半期の売 上がアナリストの予想よりも 6 〜 9 % 下回り、(投資利益を算入する前 の)利益が 33 % ほど減るという同社の決算予測発表を受けてのことだっ た。(正確な数字は 2000 年 10 月 18 日の決算報告で発表される。)株 式市場は激しく反応し、Apple 株はすぐさま 53 ドルから 25 ドルへと急 落、先週はそのあたりで落着いていた(今日の終値は 21.75 ドルで、こ こ一年での最安値となった。)

<http://www.apple.com/pr/library/2000/sep/28q4.html>

Apple の株価が半値以下に暴落した原因は何であろうか。Apple の CFO、 Fred Anderson 氏は、世界規模での販売の鈍化を予想していなかったこと、 教育市場での 9 月の売上が予想を下回ったこと、Power Mac G4 Cube の 出足が予想より鈍かったことなどを挙げている。

販売が世界的に鈍っていることについては、Apple と同じように株価にマ イナスになるような決算見込みを出した Intel 社や Dell 社も口にして いたが、Apple ほどは下がっていない。これがあまねく当てはまるのであ れば、業界全体に問題が出ているだろう。しかも、Apple はこの四半期に ほぼ全製品のラインを入れ替えた。この入れ替えのために、不確定な事柄 や、入手できるかどうかといった問題を避けることができなかった。デュ アルプロセッサの Power Mac G4 が購入に待ったをかけた場合もあっただ ろう。なぜなら、Mac OS X が デュアルになった G4 プロセッサをどれほ ど活かすことができるかを確認するまでは買い控える人もいるだろうから。

Apple の教育市場での売上が予想を下回った理由は、さらに分かりやすい。 学校がコンピュータを購入するのは、新学期前の 8 月か 9 月というのが 一般的である。ところが、Apple は新 iMac のリリース時期として 7 月 半ばの Macworld Expo を選んだ。これにより発表の前や直後の iMac 全 般の在庫状況に悪影響を与えた。そして、799 ドルの iMac はそれから数 週間後の 9 月まで出荷されなかったことが拍車をかけた。さらに、それ とほぼ同時期に、教育市場も対象の一つにしている新 iBook モデルが発 表されたのだ。学生は今の時期に購入するかもしれないが、購入および新 システムの導入を 12 月の休暇まで待つと言う学校側を責めることはでき ないだろう。

我々が 7 月に指摘した通り( TidBITS-540 の“平常通り革新”を参照 のこと)、G4 Cube は同等の性能の Power Mac G4 と比べ、現状ではとに かく少しばかり高いのだ。G4 Cube のデザインと動作時の静かさにお金を 出してもらえるだろうとApple は考えているが、思惑通りにはいっていな いようだ。クリスマスの買物シーズンに合わせて価格ダウンをすればこの 問題は解決できるだろう。G4 Cube を発表する以前の Apple は申し分な かったということを思い出すべきであろう。同社のほかの製品が好調に売 れ続けるかぎり、G4 Cube の販売が鈍くてもさしたることではない。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06050>

Apple の決算見通しは決して良いニュースとは言えないが、ウォール街の 反応は度を越している。Apple がこの四半期で赤字を出したわけでもない し(実際 1 億 1 千万ドルの 黒字 が見込まれている)、過去 6 連続 四半期に売却してきたように ARM Holdings 株からの収入があるかもしれ ないが、それも加味していない数字なのだ。むしろ、アナリストの予想し た利益や売上高と、さまざまな要素がからむ現実との間にずれがあったた めに今回の過剰な反応になったにすぎない。Apple には 40 億ドルの現金 と確固とした製品がある。したがって、暗い影がさし始めたと声を張上げ るメディアは、注意を引きたい客引のようなものだ。


Entourage:グランドツアー

by Matt Neuburg <matt@tidbits.com>
(翻訳:三好 泰子<yokomo@vm01.vaio.ne.jp>)
(  :松岡 文昭 <fumiaki@kamakuranet.ne.jp>)
(  :斎藤 美礼 <mirei@x.age.ne.jp>)
(  :尾高 修一 <shu@pobox.com>)
(  :亀岡 孝仁 <kameotak@iea.att.ne.jp>)

この名前が示すように、あなたはこびへつらう家来に囲まれて旅をする大 金持ちである。家来たちは、あなたの行く手をはばむ障害をなくし、細か いことを処理し、何から何まであなたの身の回りの世話をし、賞賛のため に群がる群衆を遠ざけて置いてくれる。だからといって、Microsoft 社の Entourage は、どんな飛行機予約もできるものではないし、どんなマティー ニでもつくってくれるわけでもないし、かわいいファンたちをホテルに誘 い入れてくれるわけでもない。しかし、この Microsoft 社のビジネスの生 産性を上げるためのアプリケーションへの最新の付加機能は、たしかに、 奴隷の群れであり、電子メールやニュースリーダ、予定表、To-Do リスト、 リマインダ、そしてその他のノートなどが 1 つの統合された傘の下でいっ しょになっているのものである。それぞれのアプリケーションどうしはす べて相互にうまくやっており、Office 2001 のほかのアプリケーションと も相性がよい。

<http://www.microsoft.com/mac/products/office/2001/preview/ entourage_preview1.asp>

フィジカルにいこう -- Entourage のメインのウィンドウは、デフォル トで 3 部構成になっている。メールフォルダのリストは、左側を下へス クロールするようになっている。それをクリックすると、上方の右枠にリ ストされたものが表示される。そして、メッセージのリストをクリックす ると、メッセージのテキストが下方右のプレビュー枠に表示されるように なっている。わたしはこれを、できが悪くてフラストレーションがたまる “シングルクリック”アプローチと呼んでいる。バレエを観ているとき、 ステージがちょっとでも見えるように端から端までを動き続けなければな らないような、柱の後ろの席に座った観客のような気分になるのだ。

しかしながら、これだけが Entourage の唯一の操作方法ではない。まず、 テキストのプレビュー枠は消すことができる。(フォルダリストも消すこ とができるが、消してしまうとまったくナビゲーションができなくなって しまうので、これを消すことはばかげている。Entourage では、フォルダリ ストのウィンドウやメニューが分離していないのである。)次に、フォル ダリストを除くすべてのものを、分離したウィンドウとして開くことがで きる。わたしは“ダブルクリック”アプローチと呼んでいる。フォルダリ ストを広げると、フルサイズでとても見やすい。わたしは、この Eudora ライクなアプローチが気に入っている。最初のアプローチの方が気に入っ ている人もいるだろうし、両方を織り交ぜて使うのが好きな人もいるだろ う。どちらにしても柔軟に使えるということはうれしいものだ、というこ とにわたしは気づいた。

メールフォルダというのは、ただ単にメールフォルダ枠にリストされてい るものだけではない。Usenet のニュースサーバや定期購読しているニュー スグループがそこに表示される。さらにそこには、アドレス帳、予定表、 To-Do リスト(タスクと呼ばれている)、ノート、カスタムビュー(サー チの検索条件が保存されている)のためのアイテムも置かれている。繰り 返しになるが、以上挙げたものそれぞれは、メインウィンドウの右側か、 あるいは、分離したウィンドウとして表示される。

雨でも雪でもない -- 私の日々の活動でメールほど重要でかつ常に使用 しているものは他にない。ワードプロセッサさえそれには及ばない。恐怖 におののきながら、私は Eudora から Entourage に完全に移行するとい うこの上ない犠牲を払い、このレビューの準備を開始したのだ。しかし私 の恐れは事実無根のものであった。移行はほとんど苦痛を伴わないもので、 Entourage がどのプログラムからインポートするのか尋ね、1 時間かけて 私の Eudora メッセージ、署名、アドレスブックの中身をその中に完全に コピーしてくれた。個人情報のインポートにはやや難があり、いくつかの 付随情報が移動されていなかった。フィルターの基本的なものは移動され ていたが、さまざまな変則的なものはクリーンアップが必要であった(そ れでも手動で再設定するのに比べればはるかに簡単であった)。どのよう にして後で Eudora に戻るのかはまだ少し不安に思っている。署名のよう ないくつかのものはある程度のスクリプトを必要とするかもしれない。し かし、メールフォルダを移動するのは簡単だ。デスクトップにドラッグし て、そのタイプを TEXT に変更し、簡単な検索と置換を行って、各メッセー ジに適切な序文とプレストを加えれば、Eudora はそれをメールボックスと して認識する。

一旦 Entourage を使ってみると、そのプログラムが私がメール作業をす る方法と驚くほど相性が良いことを発見した。新しい受信メッセージは Inbox フォルダに入り、ルール(フィルター)で自動的にそれらを望むフォ ルダに納めることができる。差出人への返信、全員への返信、転送、そし て、再送もできる。アドレスの修正は簡単で、引用は美しく柔軟に処理さ れる。送信メッセージは今送ることも、Outbox フォルダに入れて後で送 ることもできるし、引き続き修正するために Drafts フォルダに保存する ことも可能だ。送信済みメッセージは Sent Items フォルダに入るが、明 快なマークをつけることも、ルールを使って他の場所にコピーすることも できる。削除メッセージは、実際に完全に削除するまでは、Deleted Items フォルダに入る。既読メッセージを未読にすることも、フォルダ間 でメッセージを移動することも可能だ。異なったデフォルト署名と送信ヘッ ダを用いてマルチアカウントを設定することもできる。必要なら全ヘッダや HTML ソースも表示できる。そして、Entourage は、プレーンなテキストや HTML テキストの両方をフォーマットしたりクリーンアップするための、複 数のツールを自慢としている。つまり、Entourage は、エラーや障害もな く、日常のコミュニケーションを見失わないようにするのに私が必要とす るすべてのツールを提供しているのだ。

Entourage のメール処理には私が Eudora より気に入っているものさえあ る。メッセージはそれ自身の履歴を表示する。たとえば、返信へのハイパー リンク付きで「何時いつに返信しました。」と表示するのだ。どのメッセー ジリストも、リスト右上のフィールドを使用してすばやくフィルタできる ので、たとえば、Adam Engst からのメッセージだけを私の Inbox に簡単 に表示させることができるのだ。署名は送信メッセージ内に表示され、受 信者が見るものを確認できるのだ。ルールには、OR または AND を組み合 わせ、好きなだけ条件やアクションを持たせることができる。そして、ア クションは AppleScript でも可能で、これが私にとって一番良いニュース なのだ。Eudora のスクリプト対応は、独特の風変わりさと不器用さ、そし て、限定的な方法によるものであり、何年もそのために償ってきた者のみ が気に入るのものだが、それに対する Entourage のスクリプト対応は見事 だ。スクリプトは Scripts メニューにもメッセージのコンテキストメ ニューにも表示が可能で、それらにキーボードショートカットを割り付け ることもできる。

その一方で、Entourage もいくつかのほぼ致命的な欠点を有している。メッ セージリストのソートは幼稚で、一度に一つのコラムでのみソートできる だけであり、似通ったメッセージを纏める Eudora の Option + クリック の技に比べられるものはなく、スレッドによるソート(階層的に関連した 件名を纏める)も完璧に間違っている。スレッドは、日付順ではなく、件 名のアルファベットによる並び替えであり、Entourage はメーリングリス トにはまったく不向きだ。入れ子となったメールフォルダの扱いは貧弱で、 たとえば、メッセージを移動するためのメニューでは、フォルダは階層を 無視した名前のみを表示し、入れ子となったメールフォルダがメニューに 表れるのは、一旦、Move to Folder を選択して特定のフォルダを選んだ後 のみであり、そして、もっと最近に使った順に基づく予測不能な順番で表 示される。Searching はバグの集まりだ。Entourage では Eudora のよう に任意のメールボックスのセットから検索するということはできないが、 非常に柔軟性に富んでおり、検索条件を簡単に再使用できるよう“カスタ ムビュー”として保存できる(そして個々にアーカイブ化するには、カス タムビューをデスクトップにドラッグし、テキストファイルとして保存す るのだ)。しかし、“宛先”が "adam" を含むといったようないくつかの 検索では、あきれてしまうほど遅い(私のマシンでは 1 分以上かかる)。 最後に、Entourage は単一のデータベース構造を採っているので、バック アップの必要性を大幅に増やし(一つのメッセージの追加で全データベー スが変わってしまうからだ)、ディスクやファイルの破損の際には、たっ た一つのエラーですべてが駄目になってしまう。

ニュース用には -- ニュースリーダとしての Entourage の機能とニュー スリーダ専用アプリのそれとの関係は、軍楽と音楽の関係のようなものだ。 ニュースを読むことは確かにできるが、それだけだ。既に述べたように、 Entourage はスレッドを日付順に表示することさえできないので、そこか ら下り坂となるのだ。最も直近のポストの一定数をダウンロードするオプ ションがないとか、現在のポストが参照するポストを開く能力が備わって いな等々だ。Usenet ニュースの購読者ならば、NewsWatcher の何れかの バージョンのような本来のニュースリーダを使い続けるべきだろう。だが もしUsenet にたまにしか足を踏み入れないようならば、Entourage でも、 多分、十分だろう。

人名録 -- Entourage のアドレス帳には 2 つのビューがある。概要 ビューとデータ入力用のビューだ。データ入力ビューは複数のタブで構成 されており、それぞれにさらにおびただしい量のフィールドがある。別名、 自宅住所、会社住所、会社名、役職、必要な数のメールアドレス(それぞ れに 3 つの中からラベルを選べる)、自宅や会社の電話番号もよりどり みどり(いくつかはカスタムでラベルを選べる)、誕生日、年齢(誕生日 から自動的に計算される)、星座(左に同じ)、記念日、配偶者や子供の 名前、写真、メモ、さらに使いそうならば 8 個のテキストフィールドと 2 つの日付フィールドも追加できる。もちろん、これらのフィールドの条 件を複数組み合わせて検索することもでき、友達にアドレス帳に入力した 自分に関する項目を全部 vCard(.vcf)にしてメールに添付して送り、嫌 がらせすることもできる。メールソフトで vCard をサポートしているも のは少ない(Netscape Communicator と Windows 版の Microsoft Outlook しかない)ので、使うのは控えめにしよう。Entourage には住所 に対する地図や道路情報を要求させることもできる。

Entourage の他の部分との統合はうまくできている。たとえば、新しいメー ルを作成していて、そのメールの宛先をタイプしはじめると、Entourage はアドレス帳から(または、Eudora の History リストそっくりだが、最 近メールを送ったか受け取った人の一覧から)一致している項目をすべて 取ってきて、その一覧から選択できる。また、アドレス帳の入力項目は自 動的にその人に出したメール、受け取ったメールはすべてリンクする。だ から、誰かに出したり受け取ったりしたメールをすべて見るのに、アドレ スブックの項目を選び、ウインドウの Links ボタンを押すだけで済む。

Office の他の部分との統合もいい。たとえば、Entourage のアドレス帳 を Microsoft の Word で開くことができる。さらに、Word で誰かの名前 をタイプしているとき、Entourage のアドレス帳を調べにいって名前を自 動入力してくれる。名前は Contact フィールドからのもので、Control + クリックするとコンテクストメニューを表示し、その人のメール、住所、 電話番号の情報をアドレス帳から Word 書類に転送することができる。ま た、Word の Letter ウィザード や Envelope ウィザードを使っていると き、アドレス帳の項目を選択し、受取人の名前や住所として新規書類の適 切な場所に挿入することもできる。アドレス帳には Me 項目があり、自動 的に返信用の住所として使うこともできる。

しかしその一方で、Entourage のアドレス帳は PIM 専用ソフトやデータ ベースソフトに匹敵するものではない。受取人の名前が入ったメールを大 量に作成するためにデータを結合する機能がない。Word で住所をアドレ ス帳から結合することはできるが、これをアドレス帳の下位区分に限定す るといった賢いことはできない。たとえば、友達の中でクリスマスカード を送る人宛ての封筒を印刷する、といったことはできない。アドレス帳は Web 用に書き出すこともできない。下位区分の書き出しもまったくできな い。唯一の選択肢はアドレス帳をすべてタブ区切りテキストファイルに書 き出すことだ。電話をかけることすらできない。また、vCards を送る、 タブ区切りテキスト書き出す、Palm 機とシンクロする、といったことが 可能でも、もしアドレス帳をネットワーク越しで他の人と共有することに 慣れていたら、そういったネットワーク機能はない。

現場監督 -- Entourage は To-Do リストのアイテムを“タスク”と呼 んでいる。タスクには完了日時、また場合によっては、予定日、アラーム の日時を表示するためのチェックボックスがある。予定日を繰り返して表 示されるのに、“平日”や“一ヶ月ごとの第三木曜日”などいろいろな方 法がある。タスクは完了のマークをつけたあとしばらくしたら自動的に再 び作成するよう設定することも可能である。

タスクはメールのメッセージリストに似ている縦に並べたリストで見るこ とができる。このリストは当然並べ替えも検索もでき、“予定日が未来に ある完了していないタスク”を検索すれば見やすくなるだろう。それでも、 私が今までに使った本格的な To-Do リストは、階層構造やアウトライン 構造の機能を持っていて、それらを Microsoft はもっとうまく真似でき ただろう。もっとも Palm 機とシンクロするとなると難しいだろうが。

リマインダウインドウはどの Office アプリケーションでも飛び出し(し かし、Office のアプリケーションが動いていないときはまったくあらわれ ない)、リマインダの設定日時になったタスクをすべてリストアップする。 この状態からタスクを開くことができ、リマインダを“一時停止”して次 にいつ表示するかを設定したり、リマインダを“停止”して完全に終了す ることもできる。理屈ではうまくいきそうなのだが、タスクとリマインダの 連携が確実でないことに気がついた。リマインダを停止すると、タスクに 完了のマークがつかず、リマインダが現れない完了していないタスクとし て残すことになる。リマインダのウインドウは、タスクのリマインダのス テータスを設定しなくても閉じることができる。リマインダのステータス を Word 内で変えると、終了してもう一度立ち上げるまで Entourage のタ スクは変わらないようにみえる。これはまったくややこしく、完了してい ないタスクを毎日わざわざ検索するのでなければ、タスクは知らないうち に見えなくなってしまう。これはいただけない。To-Do アイテムが役に立 つには、作成から完了までの間は、目に見えるところに目立った状態であ るべきだ。

大切な日 -- カレンダーイベントはタスクと似たようなもので、日付と、 場合によってはリマインダーや繰り返しの指定がある。主な違いは、カレ ンダーイベントには完了を示すチェックボックスがなく、開始・終了の日 付・時刻があることだ(タスクの場合は期限を示す日付だけ)。複数日に またがる終日イベントを指定することも可能だ。

Entourage はイベントを三部構成のカレンダーウインドウに表示する。ウ インドウの左上には今日のタスクやイベントのリストがあり、右上には 1 〜 6 日 から 1 〜 7 週間に及ぶ期間を示す小さなカレンダーが、そして 下にはこのカレンダーで指定した期間のタスクとイベントが表示される。 ここでの表示には、一週間までの期間なら日誌型(一時間単位で区切られ ている)、数週間に及ぶならカレンダー型(区切りは一日単位)、そして リスト型の 3 種類がある。リスト型では、選択された期間につき、ウイ ンドウ左上にあるリストと同様のものが一日ずつ並ぶことになる。カレン ダーウインドウは驚くほどよくできており、ドラッグ & ドロップにも対 応し、特に複数日にまたがる終日イベントの“バナー”の扱いは秀逸で、 カレンダーをかわいい Web ページにエクスポートする機能もある。

とはいえ、Entourage のカレンダー機能は専用のカレンダープログラムに かなうものではない。数週間使った後でも気になったり不可解に思う小さ な不満は数多い。たとえば、2 日間にまたがるイベントが 2 日目には表示 されない。複数日にまたがるイベントのリマインダーが最初の日にしか現 れない。リストビューを例外とし、カレンダーウインドウではタスクが期 日より前には表示されない。Microsoft は、未来に期限がくるタスクはそ の前に着手しなければならず、よって今から表示されていなければならな いということを理解できなかったようだ。ダイアログでの日付入力は面倒 でわかりにくく、どういうわけかタスクとカレンダーのエントリがそれぞ れまったく異なるフォーマットで日付を要求する。“繰り返し”チェック ボックスは、タスクやイベントが繰返されないものでもチェックされてい る。カレンダーのエントリは検索可能だが、検索結果だけをカレンダーに 表示したり、Web にエクスポートすることはできない。それにアドレスブッ クと同様に、ネットワーク上の他の Entourage ユーザーとカレンダーを共 有するネットワーク機能はない(会議開催の連絡をメールしたり、Palm 機 とシンクロすることは可能だ)。

メモの用意を -- Entourage でのノートはテキストの断片だ。ノートは Notes ウインドウに表示され、検索、ソート、それに他の Entourage ア イテムと同じようにフィルタをかけることが可能だ。Entourage アイテム の多くには独自のノートフィールドがあるが、メールにリンクしたノート にコメントを書き込んでおくといった便利な使い方ができる。ただアウト ラインや階層構造にはなっていないので、整理分類するノートというより は、メモの断片を書き溜めておくという方が向いているだろう。

大統一理論 -- Entourage のパーツについて語ったところで、全体とし ての印象について述べよう。ここでの最大のポイントはどの種類のデータ (メール、アドレスブックのエントリ、タスク、ノート)も対等の一級市 民であるということにある。たとえば、検索やカスタムビューではどのタ イプのエントリも対象とすることができ、検索結果はタイプを問わずヒッ トしたエントリが検索結果リストに表示される。

さらに、アイテムには無制限のカテゴリ(ラベル)をつけることができる。 これは自動化することも可能だ。たとえばメールを受信した際に、送信元 がアドレスブックのエントリとして存在していて、かつなんらかのカテゴ リがついていた場合には、メールにも同じカテゴリが適用される。ルール で自動的にカテゴリを適用するということもできる。手動でカテゴリを適 用することも可能だ。カテゴリごとのフィルタ、ソート、検索もできる。

最後に、リンクがある。どの種類のアイテムからも別の種類のアイテムへ リンクを張ることが可能だ。これもまた自動化することができる。たとえ ば、送受信したメールは発信元や送信先アドレスがアドレスブックにあれ ばリンクされるし、メッセージとそれに対する返信がリンクされる。また、 メッセージとその元になったタスクがリンクされる、という具合だ。もち ろん好きな時に手動でリンクを張ることもできる。この結果は強力なナビ ゲーション機能で、というのもリンクのあるアイテムから、ポップアップ メニューやリストウインドウでリンク先を見ることができ、ただちに開く こともできるからだ(リンク先がファイルなら Finder で開く)。したがっ て、相手のある情報は素早く簡単に管理することができるのだ。

ここでの私の最大の不満は、上の階層への移動がまったくできないため、 自分がどこにいるのかわからなくなることにある。たとえば、リンクをた どったらメッセージが開いたとしよう。ここはどこなのだろう? メッセー ジはどこかのメールフォルダにあるのだが、上の階層に移動することがで きないため、メッセージをリストの中の一つとして全体の中で捉えること ができないのだ。メッセージのタイトルバーを Command + クリックすると 階層構造のどこにあるのかがわかり、かつ移動することができるでという Finder ライクな機能をもった Eudora とは対照的だ。

結論 -- Entourage を使うために Office 2001 を買うかというふうに 問われれば、私の答は "ノー" であろう。Entourage のメール操作性は非 常にいいが、Eudora や Microsoft 社の無償の Outlook Express と比べ て格段にいいわけではない。他の機能については、用途に特化した他のプ ログラム、思いつくままにあげれば、NewsWatcher、Now Up-To-Date & Contact、IN Control、それに Idea Keeper といったものと比べると、単 にそこそこからどうしようもないまでいろいろである。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbser=1035>
<http://cae.ese.ogi.edu/pub/network/newswatcher/>
<http://www.poweronsoftware.com/site2/html/products/nutdcwtour.html>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=01826>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05931>

したがって、Office 2001 のその他のアプリケーションは間違いなく使う が、メール、アドレス帳、予定表、メモといった機能についてはすでに専 用の個別プログラムを使っている人にとっては、Entourage はほとんど笑 い話である。もちろんそのメール機能はほとんど妥協のあとが見られず連 携機能も疑いなく素晴らしいものではあるが、他の機能については個別専 用プログラムから乗換えられるまでに洗練されてはいない。そうなるとこ こから先は下り坂となってしまう。というのも、Entourage の統合連携機 能も、使う機能が少なくなればそれだけ魅力を失うからである。

しかし立場がかわって、どっちみち Office 2001 は使うのだし、 Entourage も何とか使いものになるのではないかと思う人達に対しては、 ぜひ試してみることをお勧めする。あるいはまた、コンピュータの世界に 入り込んだばかりで、まだメール、ニュースリーダ、そしてカレンダープ ログラムも何も持っていない人にとっては、Entourage は今後長期に渡っ て使えるぴったりのものとなる可能性はある。

その優れたスクリプト機能、クリーンで柔軟なインタフェース、豊富な機 能群、そしてカテゴリとリンクによる多彩な連携機能を有した Entourage は、コミュニケーション、連絡先、そして時間の管理をするにはよくでき た統合システムであるといえる。部分部分を取って Microsoft の連中は 自分の宿題をきちんとこなしていないと批判するのはたやすいが、 Entourage をここまで有用でかつ価値のあるプログラムとするために費や された知恵と汗があったことを忘れるべきではないと思う。この開発チー ムが一息つけるようになった時、この Entourage のいろいろな部分に本 格的な改良の手が加えられることを願うものである;その時には、現バー ジョンはその基礎として十分な力を発揮するであろう。

現在でも Office 2001 は限られた販売店で入手可能であるが、公式な発 売日は 2000 年 10 月 11 日である。Microsoft Office 2001 全スイート は、新規購入で 500 ドル、アップグレードが 300 ドルである(TidBITS のスポンサーである Outpost.com は新バージョンを 440 ドルそしてアッ プグレードを 270 ドルで注文を受付けている - リンク先はこの記事の始 めのところのスポンサー部分にある)。それから新しい iMac か iBook を購入してから 60 日以内に完全バージョンを購入した人には 100 ドル のリベートがつく。Entourage は、PowerPC ベースの Macintosh で最低 Mac OS 8.1(Mac OS 8.5 で 120 MHz かそれ以上の速度のプロセサ推奨) かつ 32 MB の RAM(Mac OS 9 の場合 48 MB)を必要とする。

<http://www.microsoft.com/mac/products/office/2001/rebate/>


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