TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#551/16-Oct-00

新型 iBook とかれた PowerBook G3 の間の違いが小さくなったことで当 惑している?客員編集者の Mark Anbinder が購入決定のためにその違い を探るので、いっしょに見ていこう。Kirk McElhearn 氏は、言語の翻訳 がどう行われるか、いつ機械翻訳サービスが理想的になるか、なぜこれら のサービスがすぐには人間に置き換わらないかについて説明する。ニュー スでは、Apple 社が QuickTime 5 のプレビュー版をリリースし、 PowerBook と G4 Cube のリベートを提供する。

目次:

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MailBITS/16-Oct-00

(翻訳:西村 尚 <hisashin@hotsync.co.jp>)
(  :敦賀 康子 <hiroki-tsuruga.soul75@nifty.com>)
(  :三好 泰子<yokomo@vm01.vaio.ne.jp>)

Apple が PowerBook と G4 Cube にリベートを提供 -- 予測よりも低かっ た第 4 四半期の収益への警鐘と株価の激しい下落から 2 週間足らずで、 Apple Computer 社は、ディーラーまたはオンラインの Apple Store から 購入した新型 PowerBook と G4 Cube に対するリベートプログラムをひっ ぱり出した。00 年 10 月 13 日から 00 年 12 月 31 日まで、新型 PowerBook(iBook ではない)の購入者は 200 ドルのリベート、G4 Cube の購入者は 300 ドルのリベートが返送される有資格者となる。しかし、 これは 15 インチまたは 17 インチの Studio Display か、ハイエンドの 22 インチ Apple Cinema Display を併せて購入した場合のみである。リ ベートは、重要な年末商戦で Apple の売上総額を助けるのは明白で、そ の結果、投資家とアナリストの信用を回復(または少なくとも維持)する ことになろう。このリベートは 00 年 10 月 13 日以前になされた購入に までは拡張されず、Apple の教育市場チャンネルには適用されない。 [GD]

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06138>
<http://www.apple.com/promo/>
<http://www.apple.com/displays/>

QuickTime 5 のプレビュー版がリリースされた -- Apple はロサンゼル スで開催された QuickTime Live において Macintosh 用の QuickTime 5 パブリックプレビュー版のリリースを明らかにした。しかし、このプレ ビュー版は QuickTime Pro へアップグレードしたユーザーのみに有用で ある。QuickTime 5 は改善されたインターフェースを持つプレーヤーを特 徴としている。QuickTime 4 と同時に発表されたいまいちの評判だった QuickTime Player と比べて取り立てて良い所があるわけではないが、 QuickTime 5 Player は代わりのユーザーインターフェース“スキン”を デベロッパーが提供できるので、ユーザーにとっては便利であり、先に見 込みのないものでもないであろう。QuickTime 5 は新しいオーディオコン トロールに加え、QuickTime TV チャンネルオーガナイザー、および一定 のオンライン上の QuickTime コンテンツをアピールする“Hot Picks”を 備えている。現在、QuickTime 5 は Flash 4 と Shoutcast および新たに Apple が開発した“スキッププロテクション”をサポートしている。これ らは、Apple の Streaming Media Server と組み合わすことにより、スト リーミングメディアで発生しがちな音の途切れやこもりを縮小、除去する ように作られているが、実際に使ってみてから信用することにしよう。ま た、QuickTime 5 には DLS ファイルと SoundFonts をサポートする高品 質なビルトイン式シンセサイザーが搭載されてしており、Cubic VR を経 由することにより Sorensen Video 3 と 360 度の仮想世界の体験をもサ ポートする。また、iMovie や Final Cut Pro のようなアプリケーション のための最新のビデオ編集や再生録画機能も搭載しており、その他にも新 しいコンポーネントのダウンロード機能を特色にしているため、デベロッ パーは個々のカスタムコンテンツの再生録画に必要なプラグインをいつで も追加できる。QuickTime 5 パブリックプレビュー版は 10 MB のダウン ロードファイルサイズで少なくとも RAM 32 MB と System 7.5.5 の PowerPC ベースのシステムを必要とする。現在、このプレビュー版は米国 版システムのみへの対応であり、正式な QuickTime Pro の登録が必要で ある。Apple によると、Windows 用プレビュー版のリリースは今年度末ま でに可能になる予定で、現段階では QuickTime 5 は 2001 年始めに出荷 が期待されている。いつも同様、リリース前のソフトを使用するのはかな り危険なこともあるので、早め早めに頻繁にバックアップを取るようにし よう。

<http://www.apple.com/quicktime/preview/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbpoll=14>
<http://www.shoutcast.com/>

Apple は Mac OS X パブリックベータ版で稼動する QuickTime Streaming Server 3 のパブリックプレビュー版も発表した。オープンソース Darwin Streaming Server 3 は Linux、Solaris、FreeBSD と Windows NT/2000 で稼動する。 [GD]

<http://www.apple.com/quicktime/preview/qtss.html>

アンケート結果:Office を使いますか? Microsoft 社の Office 2001 へアップグレードを計画している人はいるのか(もしアップグレードする のなら、その理由)、という先週のアンケートに対する回答が何か暗示し ているとしたら、Microsoft 社のマーケティング活動はひとりよがりだっ たようだ。回答者のうち 51 % もの人がアップグレードの計画はないと回 答したのである。アップグレードの計画があると回答した人の理由は、比 較的さまざまで、単にこの分野を主導権を握っている商品の「最新バージョ ンが欲しい」という理由が最も多かった。さらに、「Office 2001 の新機 能に魅力を感じている」という人、続いて、「よりよいインターフェー ス」、「より充実したドキュメントの共有機能」、「バグフィックス」の 順で、これらを望んでアップグレードをという人が多かった。大変面白い のは、企業方針というのはあまり重要ではなかったことと、これと同数の 人が理由を明記しない「その他」に票を投じていたことだ。 [ACE]

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbpoll=60>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06133>

クイズのお知らせ:アイ・ニックス、ウィ・ニックス、ユゥ・ニックス Mac OS X は、Unix を基に作られている部分が多い。しかし、Unix は、 Apple にとって本当にまったく初めてのものなのだろうか?今週のクイズ は、ここ何年かで Unix ベースのオペレーティングシステムを Apple が 何回リリースしてきたか?という質問だけで、Apple と Unix とのからみ についてのあなたの知識をテストする。我々のホームページにてあなたの 今の知識をテストしてみよう! [ACE]

<http://www.tidbits.com/>


iBook ? それとも PowerBook ?

by Mark H. Anbinder <mha@tidbits.com>
(翻訳:尾高 里華子 <rikako@pobox.com>)
(  :松岡 文昭 <fumiaki@kamakuranet.ne.jp>)

Apple が 9 月に出してきた新 iBook は、高価な PowerBook G3 の性能に かなり近づいていたので、私の古くなった PowerBook 1400 の後継を決め にくくなってしまた。私の 1400 は Newer Technologies 社製の NuPowr G3 アクセラレータのおかげもあって、本来よりも長持ちしていた。 (Newer 社はこのアクセラレータの販売を打ち切っているが、類似製品が Sonnet Technologies 社から出ている。)

<http://www.newertech.com/>
<http://www.sonnettech.com/product/crescendo_g3_pb1400.html>

ところが、4 月に新しいバッテリを購入したにもかかわらず、1400 はバッ テリではたいして駆動できなくなったうえに、スリープから覚める際にト ラブルが起きるようになってしまった。(スリープのトラブルの方は、古 くなった 1400 ではよくある劣化で、Newer のアクセラレータのためにさ らに悪化してしまった。ただし、これは劣化の原因ではない。)次世代 PowerBook が登場するまで是非とも待ちたかったのだが、Apple が PowerBook G4 か薄型軽量になったノートブックを出してくるという期待 よりも、机に縛られてラップトップ機を使用する不便さの方が、ついに強 くなってしまった。もう少し待てばラップトップの G4 が出てくるとは思っ たが、新製品に胸を膨らませながら待って暮らすより、欲しいときに、欲 しいものを買うべきだと思っている。

私のパワーアップした 1400 はごみ箱行きの心配もない。古い PowerBook をインターネットサーバにしてしまうという Ron Risley 氏のやり方にな らい、私の 1400 は、地元のとある小さな会社の Web 兼メールサーバと いう次の任務に就く予定になっている。現在は、5 年ものの古い Performa 6115 がサーバとして使われている。( TidBITS-536 の “PowerBook 5300 でインターネットを提供する”を参照のこと。)

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05995>

iBook を検討する -- Apple のポータブルマシンのラインナップに変更 がありそうだったし、Apple は新しいマシンを大きなイベントで発表する という傾向があるので、Seybold Seminars または Apple Expo Paris で 登場するものを見てから決めることにした。Apple Expo では、大幅な変 更のあった iBook の登場と、PowerBook のハードディスク容量が大きく なったことの 2 つのニュースが伝えられた。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06122>

iBook ラインには、私のパーソナルマシンとするには至らない要因がいく つかあった。(人には、ニーズ次第で、大いに薦めていた。)まず DVD-ROM ドライブがないということが、大きな問題だった。ムービーを見 るためだけではなく、最近は DVD にもなっているソフトウェアが増えて おり便利である。たとえば、Nova Development 社の Art Explosion のよ うなアートコレクションや、なぜだか Windows 版しかない Complete National Geographic のようなマルチメディア・タイトルの DVD などだ。 同じクリップアートがCD-ROM 48 枚と DVD-ROM 5 枚に入っている場合、 どちらが欲しいだろうか。

<http://www.novadevelopment.com/products/art750/>
<http://www.nationalgeographic.org/cdrom/complete/>

iBook は最新 PowerBook G3 と比べて、厚くかつ重い。かつて、 PowerBook 100 や Duo 230 を使っていた私は、薄くて軽いものが好きだ。 iBook は、その大きさと重さのために候補から外れてしまうほどではない が、マイナス点がついてしまう。また、外見もマイナス点になる。センス がないと思っていただいても結構。フルーツカラー(および最近の淡い色 使い)を擁してつかんだ Apple の成功は喜んでいるものの、白と鮮やか な色を組み合わせたラップトップを持っている自分の姿は想像できないの だ。グラファイトの iBook は候補に入れてもいいかもしれないが、白色 の部分が大きく、明るいところでは反射の問題があるのではと思ってしま い、やはり気がそがれてしまう。

いずれにしても、私はテクノロジーと使いやすさを優先させて決断を下す ようにしている。DVD-ROM ドライブが装備された iBook Special Edition には心が動き、候補に入った。さらに、iBook と PowerBook の双方とも に AirPort ワイヤレスネットワークというすばらしい機能を利用できる ようになっている。このあたりを踏まえたうえで、別の点から検討するこ とにした。

iBook に欠けているビデオ出力が問題だったという方も多いだろう。ラッ プトップ機をモニタに繋いでデスクトップ的に使いたい人もいるだろうし、 学校や職場などで、プレゼンテーションの際にプロジェクタに出力したい ということがたまにあるという人もいるだろう。たが、新 iBook には新 AV ポートが装備されており、“候補”にあがるのだ。(テレビ、ビデオ、 プロジェクタに接続することができる)コンポジットビデオ出力は、大切 なソフトウェアのデモを行ったり、デスクトップ的に利用したい場合には、 解像度に不満を抱くかもしれないが、ちょっとしたプレゼンテーションに は十分である。

iBook には、内蔵モノラルスピーカーが搭載されているものの、内蔵の (マイクのような)サウンド入力がまったくない。しかしながら、外付け USB マイクがサポートされており、また AV ポートにスピーカーやヘッド フォンを繋ぐこともできる。

一方、PowerBook は VGA 方式のビデオポートを装備しており、外部モニ タや高解像度ビデオプロジェクタを繋ぐことができる。また、DVD ムービー にふさわしい高解像度の信号をサポートする S ビデオ出力ポートも装備 している。さらに、マイクとステレオスピーカーを内蔵し、ヘッドフォン や外部スピーカに繋ぐステレオ出力ジャックを搭載している。

iBook と PowerBook のそれぞれの LCD 画面は、比較を行いやすい部分の 一つである。どちらもアクティブマトリックス方式の TFT ディスプレイ であるが、iBook が 12.1 インチ(解像度 800 x 600 まで)でほぼ PowerBook 1400 と同サイズ、PowerBook が 14.1 インチ(解像度 1024 x 768 まで)となっており、ほかの 2 つが小さく見えてしまう。PowerBook の方が画面が広い分、かなり有利であるが、私は 800 x 600 でも快適に 作業できる。さらに、(言いがかりのようだが)PowerBook は 14.1 イン チのディスプレイのせいで、大きくなりすぎていると感じる。14.1 イン チのスクリーンではなく 12.1 インチのスクリーンを備えた、今より平面 積の狭い PowerBook G3 があれば、それに決めてしまうだろう。

とはいえ、実際、日頃仕事場では 17 インチのディスプレイを利用してい るし、PowerBook 1400 で Virtual PC を使っていて Windows と Mac OS 間を行ったり来たりするときなどは 800 x 600 のディスプレが狭いと感 じるときがある。だから、PowerBook の 14.1 インチ・ディスプレイは決 定打にはならない。ただし、有効打ではある。

新 iBook は一基しかない USB ポートを補うために FireWire ポートを一 基備えたことを誇っている。FireWire のおかげで、iBook は DV ビデオ カメラからデジタルビデオを直接利用できるようになったほか、まったく 新しい(そして急速に発展している)周辺機器の世界への扉が開かれた。 デージーチェーンで接続した FireWire 機器の動作具合のことは分からな いが、USB 機器はマシンに直接繋いだときのほうが、キーボードやその他 外部デバイスに繋いだときよりも具合が良い。PowerBook に USB ポート が 2 基備わっているのは良いことだと思う。通常その一つにキーボード やマウスを繋ぐ必要がないにしてもだ。

どっちのブック -- 今のところ、私の必要性においては両方のマシン共 に五分五分であり、今度は一方が他方に対して有しているいくつかのキー となるアドバンテージを見てみよう。

iBook は値段でアドバンテージを取っている。Apple はコンシューマー用 ラップトップを手ごろな価格とするという素晴らしい仕事をした。エント リーレベル用モデルでは 1,500 ドル、そして、私が必要とするすべてが できる 1,800 ドルの Special Edition だ。PowerBookは 2,500 ドルと 3,500 ドルの二つのモデルであり、値段はずっと高い。安い価格を無視す るのは困難だが、私の本能は買えるだけのコンピュータを買えと言ってい る。何故なら、当面はそれを置き換えるようなことを、私はしないことが 分かっているからだ。

PowerBook のアドバンテージにはわずかに速い CPU が入っている。400 MHz と 500 MHz の PowerPC G3 モデルで、iBook では 366 か 466 MHz のオプションとなる。だが実際には、2 つの要因が PowerBook を iBook よりはるかに高速にしているのだ。第一に PowerBook の 1 MB の Level 2 キャッシュメモリで、対する iBook は 256K だ。コンピュータのメモ リのほんの少しをディスクキャッシュとして割くことでハードディスクの パフォーマンスは向上する。非常に高速なメモリのわずかな部分をプロセッ サキャッシュとして割くことで、プロセッサとコンピュータのより低速な メインメモリ間ではデータの行き来がより少なくてすむようになる。 Level 2 キャッシュを多く積むことでコンピュータのパフォーマンスが大 幅に異なってくるのだ。さらに、PowerBook は 100 MHz のシステムバス と 100 MHz のメモリバスを備え、対する iBook はのシステムバスとメモ リバスは 66 MHz だ。

バッテリの柔軟性は PowerBook のアドバンテージで重要な箇所の一つで あり、同時に 2 個のバッテリを装着でき(2 個目は多目的の拡張ベイに 入り、そこにはホットスワップ可能な DVD-ROM ドライブ、またはサード パーティの Zip やフロッピードライブが格納もできるのだ)、最高 10 時間までの連続使用ができるのだ(2 個のバッテリがインストールされて いる場合)。それに対し、iBook に組み込まれたバッテリは 6 時間となっ ており、マシンは一個のバッテリしかサポートしないのだ。iBook のバッ テリはスペアの充電が完了したものとスワップできるが、これにはスリー プではなく完全なシャットダウンが要求され、何年にもわたって PowerBook シリーズでは簡単な作業であったことが、そうではないのだ。

今の時点では何のために必要とするのか分からないが、PowerBook の PC Card(PCMCIA)拡張スロットは持っていた方が良さそうだ。(iBook には 欠けているものだ。)今まで、私は 1400 の PC Card スロットを Ethernet かモデムカード用に使用してきたが、この二つは iBook と PowerBook に組み込まれた機能により不要となってしまった。Lucent 社 のワイヤレスネットワークカード用にも PC Card スロットを使用してい たが、iBook と PowerBook 共に AirPort 機能を有しており、その必要性 もなくなった。

結論は -- PowerBook でのバッテリ追加によるパフォーマンスの向上、 そして、拡張性の良さが、私に選択すべきものと確信させた。そう決めた 後での次なる困難な選択は、400 MHz か 500 MHz PowerBook かであった。 1,000 ドルというのは、25 パーセントのプロセッサ速度の向上にしては かなりのプレミアムだ(エントリーレベルの PowerBook の約半分の値段 であるのだから)。だが、RAM は 64 MB が 128 MB となり、ドライブは 10 GB が 20 GB となる。(PowerBook は、iBook では 320 MB で天井う ちとなるのに対し、最大 512 MB の RAM をサポートし、Apple の BTO プ ログラムにて 30 GB のドライブを搭載することもできる。昨今は 64 MB のメモリでは明らかに不十分で、メモリの追加にさらに出費をすることと なる。そして、10 GB は、今の私の PowerBook 1400 と同じであり、多分 十分な大きさだろうが、1988 年には 30 MB のハードディスクが大きく感 じられたように、十分すぎるディスクスペースなどあり得ないということ を経験済みだ。

結果、500 MHz PowerBook に決め、Apple の驚くべきバック・ツゥ・スクー ル特価のおかげで、有意義な投資となったオプションの AirPort ワイヤ レスネットワークカードも装着した。私はこの春から学校に戻っているの で、その恩恵に与ることができるのだ。iBook は、ラップトップをたまに 使うかまたは頻繁なプレゼン用としてではなく、セカンドマシンとして主 に旅行中に使用する人向きのように思える。私はラップトップを日々活発 に使うので、私には PowerBook の方が合っているようだ。


バベルの塔を突き通す:一般大衆のためのオンライン翻訳

by Kirk McElhearn <kirk@mcelhearn.com>
(翻訳:亀岡 孝仁 <kameotak@iea.att.ne.jp>)
(  :斎藤 美礼 <mirei@x.age.ne.jp>)
(  :尾高 修一 <shu@pobox.com>)

インターネットは地球規模での広がりがあるが、ほとんどの Web サイト は英語である。これも他の国々が英語国と同じような情熱でインターネッ トを採用するにつれて変化しつつあるが、追いつくには時間がかかるであ ろう。この事は、ある人にとっては不幸なことであり、ある人にとっては 幸運なことであるが、Web を最大限利用するには英語を理解できる必要が あることを意味する。そうですよね?

企業が、とりわけ米企業が、地球規模で活動を始めるとき、製品やドキュ メントの翻訳と現地化という身の毛のよだつような仕事に立ちすくんでし まう。米国人にとっての最大のハンデは外国語に対するなじみのなさであ る - 大抵の米国人が外国語を学校で学ぶのはたったの数年だし、それら を使う機会も限られている。というのも、こと国際的な事柄やコミュニケー ションのことになると、米国はきわめて島国的になってしまうからである。

世界的にコミュニケートするために必要な努力をしている企業は非常に限 られている。英語を使う企業は英語で商売する方が、テキストを顧客の言 語に翻訳するよりもずーっと楽である。しかしながら、古い諺にあるよう に、自分の言葉で買いお客様の言葉で売れである。

(私から一言つけ加えるなら、TidBITS は例外である。TidBITS はずーっ と前から献身的なボランティア達がいろいろな言葉への翻訳をし続けてき ている。現在では、オランダ語、フランス語、ドイツ語、日本語、ロシア 語、そしてスペイン語に広がっている。ボランティアおよび翻訳言語の追 加は常に歓迎である。)

<http://www.tidbits.com/about/translations.html>

English デキマスカ? -- 最近は多くのプログラムや Web サイトで、 文書や Web ページを外国語から英語に、英語から別の言語に、または他 の言語間での翻訳をしてくれる。そういったサービスの有名なもののひと つが AltaVista の Babel Fish で、12 組の言語の組み合わせがあり、もっ と多くの言語の翻訳をしているところもある。

<http://babelfish.altavista.com/>

しかし、こういった翻訳の真の価値はどれくらいだろう?人間の翻訳に変 わることができるだろうか?商用として使うことができるのか?“なんで も翻訳”と謳っているが、本当に問題なのは“翻訳”という言葉の定義だ。

私はフリーの翻訳者として働いているので、私のここでの目的は、こういっ た機械翻訳サービスを侮辱し、かわりに人間による翻訳にお金を払う気に させることだ、と思われるかもしれない。いやちがう。話はそんなに単純 ではない。ここではできる限り偏りがなく現実的であるよう努めるつもり なので、翻訳の過程と Web サイトやソフトウェアによる翻訳の価値が正 しく理解できることと思う。

機械翻訳はコンピュータ界で探し求められる聖杯の中でも高い位にあり、 コンピュータの歴史の初期、1950 年代に起源を発している。効率的で正 確な機械翻訳のプログラムの出現の予測はそれ以来何度も耳にしている。 しかし、演算能力が増し、自然言語処理のアルゴリズムも新しくなり、何 十年も経験を積み重ねた後にもかかわらず、この目標を達成するには依然 として遠いところにあることがはっきりしている。(Wired 誌での最近の 特集記事でこの問題について徹底的に検証している。)

<http://www.wired.com/wired/archive/8.05/translation.html>

なぜこのような状況なのだろうか?それは、翻訳は、ある単語を別の単語 にただ置き換えるだけでは納まらない複雑な過程であるからだ。つまり、 翻訳とは文章をある思考様式から別の思考様式へと変えることをめぐる事 柄なのだ。最もよい翻訳プログラム(一般用に市販されているものではな く、欧州連合などの国際機関で使用されているもの)は巨大なデータベー スと、単語より先に句を調べて正確な連語関係を探し出す複雑なアルゴリ ズムを持っている。連語関係とは、“big shrimp”(大きなエビ)ではな く、“jumbo shrimp”(ブラックタイガー、和名はウシエビ)といったひ とまとまりで意味をなす単語のことである。このようなプログラムは非常 に限られた語彙のときに最もうまく作動し、場合によっては極めて効果的 なこともある。私は欧州連合の翻訳ソフトからの出力結果を見たことがあ る。とてもよくできてはいるが、語彙は限られたものに管理されていなけ ればならず、出力結果を編集する翻訳者も必要とされる。

文の文法的関係を説明し、“標準的”な構造を見つけることは比較的簡単 だが、言語の数多い例外や、その言葉を母国語とする人なら即座に判断で きるような、多くの単語の複数の意味をなんとか文法的に説明しようとし て、コンピュータのプログラマーは必死になっている。残念ながら、簡単 に説明できるような言語は(エスペラント語のような人工的な言語は除外 してもいいだろうが)存在せず、どのような言語の語彙も、意味が微妙な 単語で溢れている。人間の言語は、コンピュータ言語や XML のようなマー クアップ言語のように、構造的に矛盾がないように設計されているのでは なく、言語が進化する間にいろいろな影響を受けており、その複雑さは克 服しがたいものとなっている。

さらに、翻訳したいと思う文章の種類によって結果がかなり左右される。 簡単な文を 3 つ取りあげてみよう。

1)Apple introduced its new Power Mac G4 minitower computers, complete with built-in gigabit Ethernet.(Apple 社は、ギガビットイー サネット内蔵の、新しいミニタワー型コンピュータ Power Mac G4 を売り 出した。)

最初の文をみて、比較的簡単な構造を考えつかれたことと思う。

    [主語 / 名詞] [動詞] [目的語 / 名詞句]
    (Apple 社は / 売り出した / 新しいミニタワー型コンピュータ Power
    Mac G4 / ギガビットイーサネット内蔵の) 

目的語の役割を果たす名詞句は説明しにくいかもしれないが、不可能では ない。ここで大切なのは、情報はすべて文の中に含まれている、というこ とだ。

2)The group giving away the free tanks only stays alive because it is staffed by volunteers, who are lined up at the edge of the street with bullhorns, trying to draw customers' attention to this incredible situation.(Neal Stephenson,“In the Beginning was the Command Line”)(参考訳:タンクをただで配っているグループだけが生 き残ることができるのは、ボランティアの人を配置できるからで、その人 たちは道の終わりに拡声器を持って並ばせられ、この信じられないような 状況に対して客の注意をひこうとしていた。)

しかし、2 つめの文はもっとずっと複雑になっている(もうわざわざ構造 は示さないでおこう)。長くなり、いくつか節を含んでおり、それに、こ のせいでよけい翻訳するのが難しくなるのだが、前の文の内容を受けてい る間テキスト性の要素を含んでいる。タンクとはなんだろう?ボランティ アの人たちとはどういった人なのか?なぜ拡声器を持っているのか?

翻訳ソフトウェアは、文全体の中で、知っている単語だけを翻訳すること ができるが、言葉の中に文脈がぎっしりつまっていても、ひとかけらも読 み取ることができない。ではもっとひどい例を考えてみよう。

3)The Deliverator belongs to an elite order, a hallowed category. He's got esprit up to here.(Neal Stephenson, Snow Crash) (参考訳:デリバレーターは神聖な領域であるエリート階級に属する。彼 はエスプリをここまで持ってきた。)

この 3 番目の文で難易度がぐっとあがる。ここには“Deliverator”とい う造語がある。“hallowed category”とはどういう意味なのか?加えて、 この“He's got esprit up to here”という表現が意味するものは一体な んなのか?翻訳ソフトウェアは通常その国の言葉をつぎはぎするだけだ。 俗語や創造的に使われた言葉はそういったプログラムの限界を超えていて、 この種の文を翻訳すると関連のない単語の山を吐き出すにすぎない。

最終的な結論は、翻訳ソフトウェアは単純で実用的な文ではうまく作動す る、というものだ。AltaVista の Babel Fish でさえ FAQ でこう注意し ている。「機械翻訳は多くの場合妥当な結果を生み出します。しかし、信 用してはいけません。」また、「原文のおおまかな意味はつかめますが、 洗練された翻訳を生み出すことはできません。」とも強調している。

<http://tools.altavista.com/s?spage=help/babel_faq.htm>

行ったり来たり -- すでに多くの人が翻訳 Web サイトを論じているが、 ほとんどの場合は文章を機械翻訳にかけ、その結果をまた逆方向に翻訳し て原文と比較するという方法を採っている。これだと実に笑える結果が出 るのだが、あまり役に立つ方法とはいえない。

<http://www.oreilly.com/news/babel_0300.html>
<http://www.tidbits.com/resources/538/translations.html>

例を挙げてその理由を示そう。ある言語から別の言語へ翻訳する場合、ま ずは単語を置き換えるわけだが、ある単語によって表現される文化的概念 が単語そのものよりも重要な場合には、別の単語を使って置き換えなけれ ばならない。たとえば、諺は普通の文よりも文化的背景が濃厚だ。英語な ら「卵が孵る前に鶏を数える」べきではないとされるが、仏語なら「熊を 仕留める前に皮を売る」べきではないと言われる。これは確かに極端な例 だが、文化が翻訳に及ぼす影響を示すには十分だろう。こうした諺を再翻 訳するのは笑いの種にはなっても、機械翻訳プログラムの価値を判断する 基準にはならない。

明るい一面 -- かといって機械翻訳が役に立たないというわけではない。 現実はまったく逆で、たとえば有用かもしれないが理解できない言語で書 かれている Web ページに遭遇した場合にはまさに最適だ。あるいは、知 らない言語のメールを受け取り、本当にあなたに宛てられてきたものか、 それとも外国語のスパムなのかを判断したい場合。こういったインフォー マルな用向きにプロの翻訳家を雇う人はいないわけで、こういった場合に は Web ベースの翻訳サービスがぴったりなのだ。

だが、多くの企業や団体ではこうした微々たるニーズとは比較にならない ほどの需要がある。用語辞書が用途に合ったもので、文章がよく書かれて いれば、翻訳したい文を一通り機械翻訳にかけることによって翻訳に要す る時間を大幅に短縮することができるのだ。最も重要なこととして、こう した組織では原文の内容を可能な限り正確に伝えるには、人間による手作 業の後編集が不可欠だということが認識されているということがある。

この結果、機械翻訳業界は繁盛している。大企業は大規模な機械翻訳シス テムに投資し、研究開発予算は急上昇し、機械翻訳に関与している企業や 研究所の数はおびただしい。昔から詩人よりは少し使える程度だと考えら れていた言語学の専門家は今や職に困らない。

<http://www.wired.com/wired/archive/8.05/tpmap.html>

もう一面 -- 高品質な機械翻訳システムはインフォーマルな用途や極め て限定された用途では良い結果を出すことができるものの、残念ながら機 械翻訳ソフトやサイトの宣伝文句は、あたかも機械翻訳が人間による翻訳 に代わることができるかのような誤解を植えつけている。こうしたコン シューマー向けのプログラムは特定の語句を置き換えることができ、一応 原文に似た意味の翻訳結果を吐き出すことができる。だがこれは翻訳とい えるものではなく、検索・置換に毛がはえた程度のものだ。色々な意味で、 こういったコンシューマー向け機械翻訳ソフトが、良い翻訳が想像を絶す るほど難しい作業であることを見えにくくしているのだ。

機械翻訳で美文を出力することはできないし、文章の文化的な意味を真に 勘案した翻訳をすることはできない。比喩と文体を最重視する文学作品を 機械で翻訳しようとしてもまず役に立たない。一般的に考えられているこ ととは裏腹に、こうしたことは人間の翻訳家だけができることなのだ。

世界経済のグローバル化に伴い、翻訳業の重要性は急速に増しているのだ が、同時に職業としての翻訳家の価値は疑問視されている。私個人は仕事 を失う心配はまったくしていない。顧客の多くが、翻訳が大量に必要なだ けでなく、上質の翻訳と経験豊富な翻訳家が不可欠であることに気付いて きているからだ。だが、特に一部の言語や限定された分野では、機械翻訳 のために被害を受けている翻訳家も多い。私はそう思っているのだが、 『Translation Journal』誌ではこれと異なる意見も展開されている。

<http://www.accurapid.com/journal/13mt.htm>

こうした潮流は翻訳家に限ったことではなく、テクニカルライター、編集 者、索引作製者や司書といった、主として言葉を扱う職業の人たちにもあ てはまる。彼らは自分の職業が矮小化されることを防ぐために、コンピュー タが CPU パワー向上に伴い、経験豊富かつ高度に熟練した人間と同じぐ らい柔軟かつ流暢になるという幻想と戦わなければならない。コンピュー タが人間と同等になるというのは大間違いだ。そう信じることは、言語と いう人類が達成した最も高度な事業を不当に低く評価し、ひいては人類を 見下げることになる。

[Kirk McElhearn 氏はフランス・アルプスに住むフリーの翻訳家・テクニ カルライターである。]


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