TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#566/05-Feb-01

インターネットがちいさな子どもに与える影響は肯定的か否定的か疑問に 思っているだろうか。今週は子どもの発育の専門家 John Laurence Miller 博士がこの話題を考察し、Jeff Carlson が新しい名刺をオンライ ン上の会社で印刷してもらったよい経験について述べる。ニュースでは、 Apple 社の Mac OS X の割引の提供、PowerBook G4 Titanium の予定通り の出荷、それと Chuck Shotton 氏の由緒ある Macintosh 用 Web サーバ MacHTTP の復活をとりあげる。

目次:

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MailBITS/05-Feb-01

(翻訳:斎藤 美礼 <mirei@x.age.ne.jp>)

Apple、ベータテスターに Mac OS X を割引 -- 驚くことではなく、喜 ぶべき動きだが、Apple 社は Mac OS X Public Beta の購入者にメールを 送り、Mac OS X の(パブリックベータ版の価格である)30 ドルの割引を 知らせた。Mac OS X は 2001 年 3 月 24 日に発送され、130 ドルから 100 ドルに割り引かれる。割引価格が適用されるには、Apple Store でメー ルのメッセージ中にあった自分用のリンクを使って予約しなければならな い。このリンクは顧客 1 人のみ、Mac OS X を 1 ライセンスのみ、2001 年 3 月 14 日まで購入する場合に有効である。残念ながら、我々が受け 取った HTML フォーマットのメッセージは Eudora では表示できなかった。 ほかのプログラムでも似た問題があるようだ。受け取ったメッセージで画 像が見えなければ、ソースを見て store.apple.com へのリンクを手動で 追う必要がある。Eudora では、Blah ボタンでソースを見るか、File メ ニューから Open in Browser を選べばよい。このような問題は、HTML フォーマットでメールのメッセージを送る人なら誰でも遭遇する可能性が あるので、あらゆるプラットフォームのあらゆるメールプログラムで、す べての人に読んでもらうのが目標なら、ふつうのテキストを使い続けた方 がよい。[ACE]

PowerBook G4、ぽつぽつと顧客のもとへ -- Apple 社は PowerBook G4 Titanium 機を待ち望む顧客へ出荷しはじめたが、出荷日時を確定するの はまだ困難である。2001 年 1 月 22 日に、Apple は PowerBook を注文 した日から 45 日後に出荷すると顧客に言っていた。以前は、21 から 30 日の出荷と言っていた。しかし、先週多くの顧客が注文日時順で PowerBook を受け取っている。Apple は明らかに PowerBook を直接台湾 の製造業者から顧客の手元に出荷しており、このコンピュータは 1 月の 終わりに出荷されはじめるだろう、という Steve Jobs 氏の約束を守ろう としているようだ。これは明るいニュースである。なぜなら Apple の近 年の弱点のひとつは、新しく発表された製品の最初の需要に追い付くこと ができないことだったからだ( TidBITS-563 の「PowerBook G4 Titanium は明々と燃える」を参照)。[JLC]

<http://www.apple.com/powerbook/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06269>

Chuck Shotton 氏が MacHTTP を復活 -- Chuck Shotton 氏は、初の Macintosh 用 Web サーバを作り上げた人物だが、初期のプログラムであ る MacHTTP を復活中で、Macintosh コミュニティが再び利用できるよう にしている。インターネットの人気が増したとき、Chuck 氏は自身の経験 に基づき MacHTTP を築き上げ、 StarNine 社の WebSTAR(現在 4D 社が 所有)の多くも担当した。彼は StarNine 社をしばらく前に去り、自身の 会社である BIAP Systems 社に力を入れている。同社の主要製品は自動化 された情報検索のプログラムの GOtrieve である。しかし、このたび彼は MacHTTP のマイナーアップデート版を発表し、パフォーマンスの問題にい くつか取り組み、ライセンスを書き直して非商用の場合無料で使うことが できるようにした。MacHTTP は高性能の Web サーバではなく、WebSTAR や Tenon 社の WebTen のような製品が持つハイエンド向けの機能は持っ ていない。しかし、まあ、無料であるし、ほとんどの人はすごい性能など 必要ないし、それに、かつて Apple 社の Cool Tools 賞を受賞した旧友 とまた一緒になるのはすばらしいではないか。Chuck 氏は MacHTTP をオー プンソースにすることさえ考えている。MacHTTP 2.3 (498 K)で MacHTTP.Org の Web サイトからダウンロードできる。[ACE]

<http://www.machttp.org/>
<http://www.webstar.com/>
<http://www.biap.com/>
<http://www.tenon.com/products/webten/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=01799>


名刺作りをオンラインで

by Jeff Carlson <jeffc@tidbits.com>
(翻訳:尾高 里華子 <rikako@pobox.com>)
(  :三好 泰子 <yokomo@mio.to>)

ついに名刺を新しくすることになった。1999 年半ばに仕事場の引っ越を したものの、TidBITS の名刺に記載されている住所と電話番号の部分を線 で消して済ませていた。名刺にでているメールアドレスと Web URL が重 要なのだと考えていたので、わざわざ刷り直したりしなかったのだ。くわ えて、私の場合オンライや電話を通じての人づきあいがほとんどなので、 トレードショウぐらいしか印刷した名刺を渡す機会がない。それに、渡し た相手が私のような人間だったら、その名刺も持ち帰った途端に名刺の束 の中に紛れ込んでしまう。とはいえ、私は TidBITS だけを仕事にしてい るわけではなく、別の仕事の際に TidBITS の名刺を使うわけにはいかな いのだ。

私は名刺のデザインに、つまり、同じような内容をみんながどのように違っ たものに仕立てているのかについて前々から関心を持っている。また、私 は(もしかしたらお得意様になってもらえるかもしれない人から)ほかの つまらない名刺の束に放り込まれてしまわないだけの特徴がある名刺を作 れるだろうか、(さらに大事なことに)まっとうな値段で作れるだろうか、 そのうえで、できる限り悩まずにオンラインで作れないだろうか、と考え ていたのだ。自分のデザインの質について客観的に語ることはできない (多少のお世辞はもらっているが)。しかし、名刺作成が、思っていたよ り簡単だったし、安価でしかも早くできたという話はできる。

大構想 -- どこで印刷したとか、費用がどれだけかかったかなどの詳細 に入る前に、私がどんなデザインの名刺を作ったかを簡単に説明しておか なければなるまい。自分の Web サイトのデザインを変更しているときに、 私の仕事、Never Enough Coffee Creations 用の名刺の構想が大体まとまっ た。それは、黒とからし色の 2 色を基調としたもので、“二重断ち”し て、カードの端から端までがその 2 色で塗りつぶされるようにしてある。 そこに、多色刷りとなる影付きコーヒーカップの図である私のロゴがはめ 込まれている。このロゴはぜひとも入れたかったのだが、あまりにも暗い 図であるために、これにいちばん苦労することになった。そして、Adobe Minion フォントと Adobe Myriad フォントを使用した私の連絡先などの テキストが入っている。

<http://www.necoffee.com/tidbits/necc_bizcard.html>

名刺作りは今回が初挑戦だったわけではない。数年前に初めて作ったもの は、一色刷りで、かなり高くつき、しかもあまり好きになれなかった。今 回は、必要とあればもう少しお金を出してでも、多色刷にして満足がいく ものを作りたいと思っていた。結果は、価格と質の両面で前回よりもよい ものができた。

適切なやり方 -- 印刷であろうと配管であろうと、とにかく何らかの作 業をやってくれるところを探すときは、人が薦めてくれているところが一 番よい結果につながる。同じようなことをしてくれる会社が多数あるとき はなおさらである。今回は同僚のイラストレーター Jeff Tolbert 氏が、 自分が少し前に名刺を刷ってもらった、テキサスをベースにした印刷屋 Copy Craft 社を教えてくれた。

<http://dir.yahoo.com/Business_and_Economy/Business_to_Business/ Printing/Business_Cards/>
<http://www.copycraft.com/>
<http://www.jefftolbert.com/>

Copy Craft 社は、10 ポイントの C1S Super Premium Kromekote 紙(硬 めの白い紙)に、300 スクリーン線数での 4 色刷り水なし印刷を行い、 水性コーティングした名刺 1000 枚を 100 ドルで作ってくれる。裏面へ 印刷したり、ドラムスキャンした写真を加えたり、名刺の背景と既存のレ ターヘッド用紙の色合わせをしたりすると追加料金がかかる。上記の金額 は、Copy Craft が受け取った版下をそのまま使った場合であり、理由は 何にせよ同社の技術者がファイルに手を加えなければならない場合は追加 料金が発生してしまう。

TidBITS のスタッフのご多分に漏れず、私も時間の節約と煩わしさの軽減 のために Web で各種業者を探すようにしている。Copy Craft はテキサス を本拠としているものの、こちらとしては先方がマシンで読んで印刷する ことのできるファイルをひとつ作成して届けるだけでよいのだ。町中を走 り回ったり、電話帳をひっくり返したりして、いろいろな印刷業者の価格 を集めて回らずにすんだ。

次なる問題は、どんなタイプのファイルを作成しなければならないか、で ある。Copy Craft はいまどきの DTP プログラムであれば大抵のものは扱っ てくれるはずだと思い、Troubleshooting FAQ を読んだところ、同社のソ フトウェア部門は私にとって大丈夫であった。ところが、デザインに関し ては少々苦労した。私は最初 Macromedia FreeHand を使って準備を始め た。このプログラムを使えば、簡単にテキストをいじったり、きっちりと したベクトルパスを保つことができるからだ。また、背景色を大きく 2 色に分けたり、TIFF ファイルになっている私のコーヒーカップのロゴを インポートすることもできる。残念ながら、ロゴを PDF ファイル(だん だんプルーフで使えるようになってきた)にしてプルーフしてみたところ で、ロゴで使用している黒色と背景の黒色が同じでないことに気がついた。 TIFF 画像の縁が明らかに目立ってしまっているのだ。

<http://www.copycraft.com/troubleshooting.html>

この問題は実にあっさりと解決できた。名刺原稿を Photoshop 6 で作り 直したのだ。コーヒーカップのロゴのうちの真っ黒でなければならない部 分にマスクをかけ、ロゴのレイヤーを黒の背景レイヤーに重ねたときに、 その 2 つが完全に融合するようにした。さらに、Photoshop 6 は新たに テキストをコントロールする機能が備わったので、文字を思いのままに操 作することができた。Photoshop 6 はデフォルトで文字をベクトルオブジェ クトとして扱ってくれるのだ。

<http://www.adobe.com/products/photoshop/>

文字列の部分ごとにレイヤーを一つ使いながらテキストを用意したところ で、Photoshop の Convert to Shape コマンド(Layer メニューの中の Type サブメニューにある)を実行した。これで、文字のベクトルレンダ リングにロックがかかり、Photoshop でテキストを画像としてレンダリン グするときにでてしまうギザギザがないシャープな印刷ができる。さらに、 このおかげで、ファイルにフォントをつけて送ったり、画像全体を EPS (Encapsulated PostScript)ファイルにエクスポートしたりしなくてよ くなった。

背景の二重断ちがうまくいくように、原稿の天地左右を 1/8 インチずつ 増やした。さらに、ロゴのレイヤーに Levels Adjustment レイヤーをか ぶぜてロゴを明るくしてあげた(Adjustment レイヤーを使えば、ソース にまったく手を加えずにソースレイヤーの見栄えを変更できる)。最後に、 Copy Craft からの指示に漏れなく対応しているかの確認を行った(Photo shop の Printing Inks Setup を SWOP(Coated)に設定するとか、ファ イルを CMYK に変換するなど)。

<http://www.copycraft.com/printquestions.html>

Jeff Tolbert 氏ご推奨の担当営業マンにチェックをしてもらってから、 Photoshop ファイルをそのまま Copy Craft 社に送った。(注文を入れる 場合は必ず担当の営業マンがつくことになっているが、営業の人とやり取 りするのを気に病むことはない。たとえば私の場合、担当者と 4、5 回メー ルのやり取りをしただけだし、私の質問に対して常にすぐ回答がもどって きた。)

プルーフか決断か -- Jeff Tolbert 氏の名刺は、最初、印刷が暗すぎ たので、私は 35 ドル余計に払って昇華型での印刷のプルーフを手に入れ ることに決めた。Copy Craft 社では 50 ドルの Agfa 社の PressMatch のプルーフも提供している。私は、自分のファイルを Copy Craft 社の FTP サーバへアップロードし数日でプルーフを受け取った。

ひどくはなかったものの、レベル 1 として提供されている昇華型でのプ ルーフは、最終製品とはかなり異なったものができあがった。このプルー フは、コーヒーカップの色をもっと明るくすべきだと判断すること以外に は、あまり役に立たなかった。背景のからし色は、でき上がりの名刺より も濃く、文字はぼやけていた。この黄色に関しては、私にとってたいした 問題ではなかった。それは、私が期待していた範囲内の色合いに収まって いたからである。しかしながら、もしもあなたが色の正確さにこだわると したら、レベル 2 の PressMatch によるプルーフに飛びつくことをお勧 めする(もっとも私はレベル 2 を注文しなかったので、その正確性をじ かに保証することはできない。しかし、PressMatch のプルーフは、昇華 型の印刷よりもずっと正確なようだ)。ロゴをもう少し明るくした後に、 私は新しいファイルを FTP でアップロードし、そして祈った。

約 5 日で私の名刺が届いた。まさに私が望んでいたとおりの見栄えだっ た。偶然にも、同時に TidBITS でも新しい名刺を作ったので、今は正確 なコンタクト先が載った TidBITS の新しい名刺セットも持っている。今 の私のたった一つの悩みは、1,000 枚もの名刺をどうやって配ればよいか ということである。もし、次回の Macworld Expo で偶然にも私に出会った ら、名刺を 1 ダースでも取って行っていただきたい。


幼い子どもにネットはふさわしいですか?

by John Laurence Miller <jlmny@erols.com>
(翻訳:飯橋 真紀 <k-m611@ma4.seikyou.ne.jp>)
(  :敦賀 康子 <hiroki-tsuruga.soul75@nifty.com>)
(  :林部 清実 <hayashibe@mvb.biglobe.ne.jp>)
(  :山下 英治 <vatcanza@fhe.freeserve.ne.jp>)
(  :尾高 修一 <shu@pobox.com>)

インターネットは幼い子どもたちにとって安全で健康的な場所だろうか? 多くの親がそうではないと不安を感じている。

Tonya Engst は最近 TidBITS 上で、子ども(および大人)と「Web サイ ト、コンピュータゲーム、テレビの人を夢中にする性質」に関して抱く 「複雑な思い」を語ったが( TidBITS-556 の「ネットで子育て」参照)、 我々の多くは彼女と同じように感じている。彼女の不安感は、2 才未満の 子どもにはテレビを見せないように勧める American Academy of Pediatrics のレポートから生じたものだった。一方で、「Fool's Gold: 幼年期におけるコンピュータへの批判的見解」と称された研究レポートが 広く広まって同様の不安を心に抱く人たちもいる。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06211>

私が Tonya の取り上げた問題に深く関心をもつのにはいくつかの理由が ある。最大の理由は個人的なものだ。というのは、私には娘が一人いて両 親ともにアクティブなインターネットユーザーという家庭のなかで育った 彼女への影響を私は心配している。また、子どもの発育における専門家と して生計をたてているので、職業的な興味もある。さらに、現在のところ 私はある主要な子ども向けインターネット会社の Director of Learning として働いていて CleverIsland.com という我々の Web サイトの基準の 設定と維持をする責任が課せられている。我々のサイトでは 3 才から 8 才までの子どもたちに貴重な教育的体験を提供していると同時に本当に安 全であるということを私は確かめなければならないのだ。

Fool's Gold は本物なのか? -- 残念ながら、多くの人々は Fool's Gold レポートだけに注目して、他のコンピュータと子どもに関する調査 には目を向けていないようだ。おそらく、Fool's Gold レポートは常にメ ディアの注意を引く子どもとコンピュータの使用に関する唯一の最も批判 的なものだろう。レポートには人々を動揺させるような主張が並べられて いる。そのなかで、コンピュータは子どもたちの深刻な健康問題を象徴す るものであり、幼い子どもたちの知的発育を妨げ、子どもたちに活発な肉 体活動をさせないものだと主張している。こういった内容を読めば、責任 ある親なら誰でも間違いなく不安にかられるに違いない。

そうは言っても、何者かが必ずしも真実でなくてよいものをただ書いただ けのようだ。初等教育と子どもの発達の両分野における専門家の大半は、 Fool's Gold レポートを論拠として認めるがその結論は根拠のないものだ と考えている。レポートに述べられた主張に反して、我々の多くはコン ピュータが、子どもの知的成長を邪魔するのではなく向上させる効果的な 道具であると強く信じている。さらに、責任をもってコンピュータが使用 される限り、子どもの健康や社会的成長への危険性は大抵の人にとって非 常に低いものだと思われる。事実、教育委員会や私立校のいずれも小学生 にコンピュータ使用の機会を増やす計画をしている。米連邦政府はこれら の計画の実施を援助するのに毎年 4 億 2500 万ドルを割り当てる。大半 の専門家たちは、この資金投入を現在のアメリカの教育における最も前向 きな展開の一つとしてみなしている。

専門家のコンセンサスは Fool's Gold レポートの挙げた不安材料が存在 しないことを証明するものだろうか?どんな分野の専門家でも間違うこと はあるだろう。この論争に興味のある方はぜひレポート自体を読んで、そ こに提示された証拠を検証してもらいたい。挙げられた証拠は、信頼でき る資料というより引用文であり事実ではなく意見で構成されていることが きっとわかるだろう。それでは、提示された問題のいくつかを考察してみ よう。

<http://www.allianceforchildhood.net/projects/computers/ computers_reports_fools_gold_contents.htm>

本対コンピュータ -- コンピュータが子どもたちに与える影響はプラス かマイナスか?その質問自体が変だと私は言いたい。コンピュータと教育 の分野の草分けであるマサチューセッツ工科大学の Seymour Papert 教授 は、この種の質問をすることが「テクノロジー中心主義的考え 」と彼が 呼ぶものの一例であると論じた。テクノロジーが良くも悪くも使われる道 具であるのに対して、テクノロジー中心主義的考えとはテクノロジーその ものが単独で子どもたちへ影響を及ぼす力を持っていると説く。教師、そ して/あるいは親が子どもたちにとって有益、もしくは有害な方法でコン ピュータを使っているかどうか尋ねることの方がより正確だ。同様に、もっ と良いコンピュータの使い方があるかどうか尋ねることが正当だ。

一つの対照として、本が子どもたちに与える影響はプラスかマイナスかと 誰かが尋ねたと想像してみよう。あなたはすぐにその質問がばかばかしい と気づくはずだ。プラスかマイナスかはどの本を思い浮かべるか、その本 は子どもの興味を引く物なのか、また、その本の難易度は適切であるかど うかによるからだ。

我々は通常、本を肯定的とみなす。にもかかわらず、あなたが子どもたち に与えたくないであろう多くの本が存在する。易し過ぎる本、逆に難し過 ぎる本、質が劣った本、あるいは成熟さが必要な内容の本がそれらに含ま れる。さらに、コンピュータの人を夢中にさせる性質に関して警鐘を鳴ら す人々は、良い本の人を夢中にさせる性質が、少なくとも同じぐらい重要 だということを念頭におくべきだ。けれどもこれらの事実にもかかわらず 我々は読書の危険性を心配することなどない。人々がコンピュータについ ても同様に感じるべきであると私は思う。

健康障害はどうか? Fool's Gold レポートは、子どもたちのコンピュー タ関連の健康障害について大げさに言っている。障害には反復的なストレ ス傷害、目の痛み、肥満、社会からの隔離、身体的、感情的、知的発たち への長期的ダメージが含まれるとレポートは主張している。

これまでの研究結果は何を示しているか?American Academy of Pediatrics によれば、「子どもたちはネットサーフィンをして多くの時 間を過ごすが、特に幼い子どもたちに関する調査は今日まで行なわれてい ない」ということだ。小児科学会はこの問題についての最初の研究を後援 する予定で、コンピュータの使用と運動神経の発達への影響に関連した問 題の、質素な 1 年の調査は費用が 5 万ドルである。

私は個人的にはより大規模な研究を期待する。医学の研究者たちは 5 万 ドルでは多くの時間を費やさないだろう。もし我々が明確な答えを得るこ とを望むなら、より大規模な研究が必要とされる。なぜ彼らはより多くの 時間とお金を費やさないのだろうか?専門職としての小児科医たちが時代 遅れなので、未来的なテクノロジーに象徴される危険性を正しく理解でき ないことはもちろんあり得る。 一方で、コンピュータを使うことの危険 にそれほど騒ぐ必要もないのだ。

コンピュータが知能の発達におよぼす影響 -- Fool's Gold のレポート によれば、コンピュータが知能の発達におよぼす影響についていまだ十分 に研究されていないというが、どの程度なら十分だというのか。この 25 年間、子どもの学習と発育におけるコンピュータの役割は、心理学と教育 の研究者にとって調査の重要なトピックであった。事実、この問題のみを 扱ったコンピュータと教育という新たな分野が発達してきた。教育の中で コンピュータをできるだけ有効に利用する方法について、大いに意見が分 かれている。しかし、それによりプラス効果がでるかどうかについて疑う 余地はない。発達心理学の重要なテキスト、「The Development of Children」のなかで、作者 Michael Cole 氏と Sheila R. Cole 氏は、こ の分野について賛成意見を述べ、次のような結論を下している。

『数多くの研究で示されてきたように、コンピュータを適切に使用すれば 授業でプラス効果を生むことができる。目下の難問は、どんな児童教育に おいても新しいテクノロジーの効果的な利用を普段から行い、この潜在力 を現実のものにすることだ。』

コンピュータは知能の発達を妨げるという主張に反駁しようとする際、問 題となるのはどこから切り出せばよいかを正確に知っておくことである。 そしてその証拠は確かにある。この論題に関する私の愛読書は、Robert Lawler 氏が行った彼の愛娘の学習についての綿密で入念なケーススタディ、 「Computer Experience and Cognitive Development: A Child's Learning in a Computer Culture」である。さらに、どんな学術的な科目 でも、タイピングのような純粋学問でない科目の多くにおいても、生徒に とって大いに役に立つソフトウェアを挙げることができる。子どもたちの 「考える能力」を助長する多くのプログラムが市販されており、知能指数 テストを基準に判定するものである。その良い例が Scholastic 社が制作 する I Spy シリーズの CD-ROM だ。視覚を鋭敏にする訓練ができ、最も 広く用いられている知能指数テストを基準としている。

<http://www.amazon.com/exec/obidos/ISBN%3D0470201932/tidbitselectro00A/>
<http://www.scholastic.com/ispy/cdroms/>

私の考えでは、コンピュータが最も強みを生かせる状況は、数学を学習す る場合である。コンピュータは本来、数学的な機械で、たいていの子ども たちにとってとても楽しめるものでもある。コンピュータで数学を学ぶこ とにより、物質的なものからなる現実の世界と、数学記号の抽象的な世界 とのすきまを埋めるのである。実に多くの子どもたちが数学に対して畏縮 するので、この点はとりわけ重要である。数学を教えるツールとして私が お薦めするものは、プログラミング言語、LOGO を使ったソフトウェア (例えば Lego Mindstorms のような)や、いくつかの CD-ROM(Learning Company 社制作の Reader Rabbit Interactive Math Journey がお気に入 りのひとつだ)と、CleverIsland.com のウェブサイトにあるいくつかの 数学ゲームである。

<http://mindstorms.lego.com/>
<http://www.learningcompanyschool.com/school/products/imj.htm>

コンピュータ対子ども同士での遊び -- 多くの親は子どもがあまりにも コンピュータ漬けになりすぎると、子ども同士で遊ぶ時間がなくなるので はないかと懸念している。これに対する答えは 3 つある。まずひとつめ は、何かに没頭してしまうことが問題であり、それはコンピュータだけに 限らない。少数ではあるが親が外で遊んで欲しいと望んでいる時に、本に のめり込んで本からはなれない子どももいる。また多くの時間、音楽を聴 いて過ごす子どももいる。そして、ほとんどの子どもは多くの時間、テレ ビを見て過ごしている。

2 つめは、コンピュータを使えば積極的に、社会的接点を増やせることで ある。E-mail を通して、別の地域間の子どもたちが知り合えることができる。 この経験は、ある意味では、ほかのどんなメディアも匹敵できないほど子 どもの経験を広げることができる。

最後の 3 つめは、もし子どもがコンピュータを使用する時間が多すぎる としたら、その責任はテクノロジーではなく親にある、ということである。 ここには再び、「テクノロジー中心主義的考え」の問題がある。親が子ど もにテレビを見たり、ビデオゲームで遊んだりというような、いろいろな 事をする時間を教えてあげる責任を持たなければならない。

ベストの子ども向けサイトは? Tonya と同じように、3 歳にもならない ような子どもと一緒にインターネットを使うのは私も気が進まない。第一、 インターネットを使うにはマウスを(と場合によってはキーボードも)操 作できるようでないとならない。これは小さな子どもにはとても難しいこ となのだ。インターネットを使うことができるようになったら、試してみ るといい優れたサイトはある。ただ、こうしたサイトにアクセスするには Flash や Shockwave をダウンロードしなければならないことがほとんど だ。

私の一番のお気に入りは、やはり私が制作を手伝った CleverIsland.com。 特にアプリケーション群が意欲的なことが主な理由だ。アプリケーション のサイズは他のサイトのものよりも大きいのだが、よりインタラクティブ でグラフィックも充実している。また、遊びと教育という要素をうまく統 合するという点でも成功している。そして最後に、ほとんどのゲームがス トーリーの一部となっているという点もユニークな特長だ。年間家族あた り 40 ドルの登録料がかかることが欠点と受け止められることもあるだろ うが、一ヵ月は無料でお試しができる。

<http://www.cleverisland.com/>

小さな子ども向け Web サイトで、これも登録制となっている優れたもの に Disney Blast がある。Disney のサイトはあらゆる子ども向けサイト の中で最も制作水準が高い。音楽とアニメーションを見事に統合し、実に 楽しめるゲームを用意している。おなじみの Disney キャラクターに会え るというのも子どもにとって嬉しいだろう。他方、他のサイトと比較して、 Disney のサイトではあまり教育性を強調していない。また、有料サイト (Disney Blast)と無料サイト(Disney Go)で、クオリティにあまり差 がないというのも気になるかもしれない。Disney Blast の登録料も年間 40 ドルで、10 日間のお試しモードがある。

[Disney は最近 go.com ポータルを閉鎖するという発表をした。一部コン テンツ主体の Web サイトは継続するとしているが、Disney Blast が同社 の方向転換の中でどういうことになるか現時点では不明だ。-Geoff]

<http://disney.go.com/>

ほかにも優れた無料の子ども向けサイトがある。ALFY.com も私の会社が プロデュースしたものだが、グラフィックを多用してテキストを最小限に とどめているので、小さな子どもでも使えるものになっている。ゲームと インタラクティブなストーリーが最も人気がある。

<http://www.alfy.com/>

子ども向け教材メーカーとして最も野心的で独創的な Knowledge Universe 社が運営している Kids Edge も私のお気に入りだ。(同社の LeapFrog 部門は LeapPad という製品を販売しており、これは子どもに読 みと発音を教えるには最も楽しめる道具であると思っている。)このサイ トのゲームも、親向けのセクションも気に入っている。親の関心事につい て、他の多くの Web サイトに見られる軽薄な俗説とは異なり、真面目な 論説が展開されているからだ。

<http://www.kidsedge.com/>
<http://www.leapfrog.com/>

Nickelodeon 社が運営している nickjr.com は、クリーンでシンプル、し かもかわいい。4 歳児の人気の的だ。同じく魅力的なものに SesameWorkshop.org がある(旧称 Children's Television Workshop)。 Sesame Workshop は最も優れた学齢前の子ども向け CD-ROM を出している。 同社の Baby and Me は、3 歳以下の子どもとコンピュータの出会いには 最も優れた CD-ROM だと思う。SesameWorkshop.org に対する最大の不満 は、まだ同サイトにはオフライン製品にあるようなイマジネーションのひ らめきがまだ感じられないことにある。

<http://www.nickjr.com/>
<http://www.sesameworkshop.org/>
<http://www.mattelinteractive.com/store/product.asp? OID=4142522SC=1105647CID=254>

インターネットの可能性 -- 私にとってまだ答えの出ていない最大の疑 問は、インターネットが小さな子どもにおよぼす危険ではなく、インター ネットが秘めている可能性の方だ。新たなメディアの登場は子どもの生活 を豊かにする大いなる可能性を伴ってきたことは、歴史を見れば明らかだ。 映画の出現によりオズの魔法使いとミッキーマウスが、テレビの出現によ りセサミ・ストリートが生まれたのだ。インターネットが映画やテレビに 匹敵するほどの革命的なメディアであることは間違いない。インターネッ トの製品が Jim Henson 氏や Walt Disney 氏によるものと同じくらい創 造性あふれるものになったら、一体どういうものが現れるのだろうか?

いずれわかる日が来るだろう。インターネットは子どもの学習や思考を促 進するものとして最も有効になると私は推測している。インターネットが 知的発育を妨げるとしている Fool's Gold 報告書は大間違いもいいとこ ろだ。逆に、インターネットは大人・子どもを問わず、これまでになく情 報と思考の世界に門戸を開放してくれている。こうした知識のどこに感動 があるかを示すことのできる人たちは、インターネットの持つ可能性をあ らゆる世代にもたらすことができるだろう。

[Dr. John Laurence Miller は精神科医であるとともに、子ども向けイン ターネット企業 ALFY の Director of Learning を務めている。同氏は New York 大学で発達心理学を教えてもいる。]


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