TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#582/04-Jun-01

Web の基礎は、ハイパーテキストであるのだろうが、今週は、Matt Neuburg が、Eastgate 社の Storyspace の若返りについてレビューする。 Storyspace は、Web 以前のハイパーテキストのオーサリングツールであ る。今号では、また、TidBITS の世界における移り変わりとして、Engst 一家がニューヨーク州のイサカへ帰ろうとしていることについて語る。そ して、PC Connection 社の Outpost.com 社買収、Frontier 7.0、Now Up-To-Date Contact 4.0、そして BBEdit Lite 6.1 のリリース、加え て、Mac OS X 版 Internet Explorer 5.1.1 と OmniWeb 4.0 について取 り上げる。

目次:

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MailBITS/04-Jun-01

(翻訳:三好 泰子 <yokomo@mio.to>
(  :山下 英治 <vatcanza@fhe.freeserve.ne.jp>)
(  :西村 尚 <hisashin@hotsync.co.jp>)
(  :今井 律子 <poorsun@mb.neweb.ne.jp>)
(  :篠原 慎一 <sshino@mbd.sphere.ne.jp>)

UserLand 社、Frontier 7 を出荷 -- UserLand Software 社は、同社の 主力ソフトウェア Frontier のバージョン 7 をリリースした。Frontier は、Web ページの作成によく利用されているパワフルなアウトライナー、 データベース、そしてスクリプティング環境である。また、インターネッ トのクライアント/サーバ型なので、Web ページをダイナミックに生成す る Web サーバとしてよく利用されている。Frontier には Manila が含ま れている。この Manila というのは、ユーザーがブラウザを使って、ダイ ナミックな Frontier ベースの Web サイトの生成や保守ができるスクリ プトのセットのことである。また、Manila によって生成されたサイトは、 Radio UserLand を使って保守することができる。Radio UserLand は Frontier の「軽量」バージョンであり、インターネットサーバ機能は持 たない。さて、Frontier 7 では、どんな点が新しくなったのだろうか? まず一つ目として、Manila に対するいくつかの微調整とバグフィックス が行われている。二つ目は、Unix シェルとの通信機能を含んだ Mac OS X ネイティブ(Carbon)版の到来である。最後に、Frontier と Radio UserLand は共に、強力なアクションをスクリプトで書いてネイティブア ウトライナーに持たせることができるようになったことである。たとえば、 小見出しをみるためにアウトラインの見出しを開くと、これらの小見出し がインターネット上のライブで生成されたファイルのリストとなったり、 (Frontier で再生できる)自分のハードディスク上の MP3 のファイルの リストとなる。Frontier の価格は、年間 900 ドル(アカデミック価格は 100 ドル)である。Manila の試用(および Radio UserLand のダウンロー ド)は、無料となっている。[MAN]

<http://frontier.userland.com/newIn70>
<http://manila.userland.com/>
<http://radio.userland.com/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05351>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05679>

Outpost.com、PC Connection 社に買収される -- インターネットの整 理統合は続いている。Outpost.com の創業者にして CEO の Darryl Peck 氏は 5 月 30 日、古参のハードウェアおよびソフトウェア販売会社であ り、Mac Connection カタログで販売を行い、 Web サイトを運営している PC Connection 社によって彼の会社が買収されたと発表した。 Outpost.com は、130 万の顧客とその名の通ったブランドのおかげで、急 速にことごとくなくなってしまった他の多くのインターネット関連企業の ような悲しい結末を迎えることは回避できた。Outpost.com はそのブラン ドの下で現在の設備により引き続き経営されるが、PC Connection 社の広 範な在庫リストを共有することになるであろう。Outpost.com にとっては 興味深い 6 年間であった。そこで、Outpost.com の創業時と PC Connection 社に対する Darryl 氏の当時の考えを振り返るために 1996 年の我々と Darryl 氏との対談を見てみよう。[ACE]

<http://www.outpost.com/>
<http://www.corporate-ir.net/ireye/ir_site.zhtml?ticker=PCCCscript=410 layout=7&item_id=179031>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbser=1021>

無料の BBEdit Lite が 6.1 にアップデート -- Bare Bones Software 社は BBEdit Lite 6.1 をリリースした。同社の無料のテキスト編集アプ リケーションの最新版である。BBEdit Lite 6.1 は Mac OS X 用にカーボ ン化され(しかし System 7.5.5 まで遡って古いシステムソフトウェアを サポートする)、Navigation Services と Appearance Manager のための サポートを組み込み、さらに QuickTime を使ってムービーを再生し、複 数の画像形式の変換を行う。また、バージョン 6.1 はより優れたパター ン照合(grep)検索/置換シンタックスと改良された複数ファイル検索に も進歩がある。BBEdit Lite は 4.3 MB のダウンロード容量で、PowerPC ベースの Mac を必要とする。BBEdit Lite の登録ユーザーには商品版の BBEdit への割り引きアップグレードの資格がある。[GD]

<http://www.barebones.com/products/bbedit_lite.html>
<http://www.barebones.com/products/bbedit.html>

Now Up-to-Date Contact 4.0 のリリース -- Power On Software 社 は Now Up-to-Date Contact 4.0 をリリースした。広く使われている個 人情報マネージャのインターフェースや性能を改良したものだ。Power On 社は Grab-'n-Go(Microsoft Office 2001 のような他のアプリケーショ ンからデータを取り込むためのコンテクストメニュー)、AlphaBar(コン タクト情報に容易にアクセスできる)、あるいは QuickFilter(リスト中 のコンタクト情報を簡単に選別する)のように、商標登録名がつけられた 新しい機能も加えた。今回のリリースにはまた、新しいユーザー定義やイ ンターネット/電話フィールド、TCP/IP や DNS サポート、コンタクト情 報に写真を付ける機能等々も含まれている。フルバージョンの Now Up-to-Date Contact は 120 ドル、旧バージョンからのアップデートな らば 50 ドルだが、いずれもオンラインで入手できる。また全機能装備の 10 MB のデモ版をダウンロードして、30 日間無料で使ってみることも可 能だ(マニュアル付きで 14 MB)。このソフトは Mac OS 8.6 〜 9.1 ま でのバージョンと、Mac OS X の Classic 環境で使用できる。オーナーは Mac OS X のネイティブ版への無償アップデートを受けることができ、そ れは 2001 年の第 3 四半期までには出荷できるよう計画されている。 [JLC]

<http://www.poweronsoftware.com/products/nudc/>

Internet Explorer 5.1.1 と OmniWeb 4.0 登場 -- Apple 社は Mac OS X とともに供給されている Microsoft Internet Explorer Web ブラウザ のアップデートを出荷した。Internet Explorer 5.1.1 はまだ公式にはプ レビュー版で、System Preferences 内の Software Update コントロール パネルを通じてのみ入手可能になっており、Microsoft 社や Apple 社の Web サイトからダウンロードすることはできない。Apple 社によると、 Internet Explorer 5.1.1 は、特にブラウザの信頼性改善とファイルダウ ンロードのサポート向上が図られているという。本ソフトは英語、日本語、 フランス語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語、スウェーデン語をサポー トしている。

<http://www.microsoft.com/mac/products/ie/5_1/t_default.asp>

一方、長い間 NeXT プラットフォームの、そして最近では Mac OS X Server と Mac OS X のソフトウェア開発会社である Omni Group は、ネ イティブの Cocoa Web ブラウザ、OmniWeb 4.0 の最終バージョンをリリー スした。OmniWeb は、現在の Internet Explorer をカーボン化したバー ジョンよりも優れた性能を発揮するという評判を得ている。OmniWeb は無 償で使用可能だが、30 ドルのライセンスを購入すれば、ソフトが非ライ センス版である旨のメッセージを表示しないようにすることができる。 [MHA]

<http://www.omnigroup.com/products/omniweb/>

MyFonts.com 社が新フェースを追加 -- 最近のドットコム崩壊の間にも、 よいアイデアの健闘ぶりを目にするのは快いものだ。オンラインのフォン ト販売会社、MyFonts.com 社は新たに 11 種のフォント追加を発表した。 これらのフォントは Bergsland、BlueVinyl Fonts、Burghal Design、 Storm Type Foundry などからのフェースを含んでいる。MyFonts 社が持 つ魅力は、そのフォントの多さだけではなく、同社のオンライン・テクノ ロジーにある。WhatTheFontはアップロードされたスキャン画像を調べ、 使用されているタイプフェースを特定することができる。一方、 TypeXplorer は太さ、幅、コントラストや x-ハイトに基づき、使用され ているフォント候補を提示する。[JLC]

<http://www.myfonts.com/>


TidBITS イサカに帰る

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:蒲生 竜哉 <gamo@lib.bekkoame.ne.jp>)

誰も二度と同じ家には戻れないと人は言う。逆説的な哲学者ヘラクレイト スの言葉としてプラトーが引用した言葉、「同じ川に二度と足を踏み入れ ることはできない」の伝で言えば確かにそうかも知れない。今の Tonya と私は 10 年前の私たちと同じ人物とはいえないし、イサカも私たちがそ こを後にした 1991 年の時とは違うだろう。しかしそれでも私たちはホメ ロスの書いたオデッセウスと同じようにニューヨーク州北部 Cayuga 湖の ほとりにあるイサカに帰ろうとしている。願わくば旅の道中と終わりがオ デッセウスのそれよりは多少楽でありますように。

Tonya と私がシアトルに越してきたのは大学を卒業して 2 年のち、 TidBITS を始めてちょうど 1 年経った 1991 年のことだ。ここシアトル で私たちは個人として、そして社会人としてさまざまな面で成長した。そ してこの 10 年でシアトルそのものも必ずしも良い方向にばかりではなく 変わったと思う。実のところ、たくさんの良い友達や群を抜いて美しいこ の地域の大自然といったここでの生活の魅力的な点も最悪の交通事情や大 都市で生活するための苦労などといった欠点の前に色あせて見え始めてい る。しかし、こうした欠点と付き合いながら生活するというのが我々の決 めたことのはずだった。Tristan が生まれるまでは。唐突に、私たちは毎 回ドライブするたび 20 分から 60 分の間、本人の意思にかかわりなく文 字通り小さな子供を車にしばりつけているという事実に気づいたのだった。 将来を考えた時、これは私たちが思い描いていた生活でもあるいは Tristan に送ってもらいたいと思っていた生活でもないと判ったのだ。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05244>

インターネットがある限りほとんどどんなところでも生きていける。この 素晴らしい自由は おおむねいつも楽しいシアトル近郊のものぐさ生活の 影になっていた。明るく晴れた元旦に Washington 湖の湖畔を歩きながら Tonya と私が引越しするべきかどうか相談していたとき、私たちは生活を 送る上での現実問題がすでに答えを指し示していることに突然気づいたの だった。新しい地域を探索したり、地理や歴史を学んだり、出会ったこと のない人たちに会ったり、その土地の人たちを性格付けているものが何な のかを判ろうとしたりすることは楽しい。しかし現時点ではこうした生活 にまつわるこまごまとしたことまで改めて学びたいとは思わない。たとえ ば空港まで一番早く行く道はどれなのかとか、運転免許の更新にはどこに 行けばいいのかとか、あるいは地理的にも気質的にも肌に合うランニング クラブはどこなのかなどといったことを知るために無駄に時間を使いたく はない。もっと重要なのは子供と生活する上では地域のサポートの重要性 を私たちが学んだこと、そしてこうした要求を見知らぬ町や都市、あるい はたくさんの友達はいるけど家族は住んでいないシアトルが満たしてくれ るかどうか私たちが確信を持てないでいることだ。

突然、答えは明白になった。なぜならそうした私たちの要求を満たす場所 は一つしかないからだ。イサカなら生活を送る上で必要なことを私たちが 知っているばかりでなく、家族の支えも得ることができる。私たちは二人 ともイサカで育ち、Cornell 大学で学び、そしてこの地域に住んでいた。 イサカに住む上で私たちが問題だと思うことはほとんどない。物理的にも ゴージャスな場所であり、人々は学識を持ち思慮深く、人々の絆は深く強 い。実際 1991 年にここを離れた主な理由は Tanya がシアトルで大変条 件の良い仕事を見つけたということだったのだ。それともう一つ、これは あまり実際的な理由ではないが、おとぎ話のヒーローというものは常に自 らの未来を切り開くために家を離れるものだというアメリカの開拓者精神 の奥深くに巣食う文化の遺伝子に突き動かされたということもある。

ともかく、私たちはシアトルで未来を切り開くことができた。TidBITS の 成功、ベストセラーとなった本のシリーズ、インターネットの隆盛に僅か ながらも貢献したこと、たくさんの親友、Olympic 山脈を望む山の中腹で の生活、そしてもっとも最近では Tristan。しかし将来の展望が開けた今、 そろそろ家に帰る頃合いだろう。TidBITS と Tristan ももちろん一緒に イサカに行く(しかし、digital.forest にある私たちのメインサーバは シアトルに残る)。友達と別れるのは寂しい。しかし、しばらく会わない でいる間もインターネットがお互いの距離を埋めてくれるはずだ。

私たちはこれからも生活の適切な場面にインターネットを組み入れていく 作業を続けるつもりだ。できれば様々なインターネットの利用方法や引越 しの過程で私たちの Mac がどう扱われているかということももっと伝え たいと思っている。さらに、小さい町で暮らすということのいくつかの欠 点、たとえば大きな書店がないことなども適切にインターネットを利用す ることによってほとんど補うことができ、その結果生活する上でもっとも 重要な部分に集中できるようになるということも伝えよう。

実際、この数週間は本当に大変だった。まだこの他にも家を売ったり買っ たり、私たちの所有物だけではなく生活そのものを国の向こう側に運んだ りといったことがあるのでこれから先 2 ヶ月の間は大変だろうと思う。 TidBITS は Geoff Duncan、Jeff Carlson、Matt Neuburg と Mark Anbinder によって今まで通り休むことなく発刊され続けるはずだ。しか し彼らにも余計な負担がかかることは否めない。端的に言って私たちはし ばらくのあいだ思うように返事を書けないと思う。できればしばらくのあ いだ、私たち宛ての e-mail は本当に必要がある場合に限っていただきた い。それではいつものように、またネットでお会いしよう。


Storyspace の話を聞かせて

by Matt Neuburg <matt@tidbits.com>
(翻訳:斎藤 美礼 <mirei@x.age.ne.jp>)
(  :飯橋 真紀 <k-m611@ma4.seikyou.ne.jp>)
(  :吉田 節 <benjamin.takashi@nifty.ne.jp>)
(  :亀岡 孝仁 <kameotak@iea.att.ne.jp>)

10 年前、たった 2 つのアプリケーションが、花咲かんとする Macintosh の時代の華やかさと新しさの予感をすべて体現していたように私には思え た。Apple 社の HyperCard と Eastgate Systems 社の Storyspace だ。 HyperCard のおかげで私は小さいインタラクティブな世界をプログラムで きた。私や他のユーザーがボタンを押したりテキストを読んだり入力した りできた。すぐれた教育ツールだった。しかし、その名前とは裏腹に、 HyperCard があまり得意でないことのひとつがハイパーテキストだった。 ハイパーテキスト!この概念は私の頭の中で鳴り響き、Engelbart 氏や Nelson 氏、Xerox の PARC や Xanadu がこだまする!テキストの向こう のテキストの向こうの絵の向こうのテキスト、こういったあらゆる知識の 総体が何万ものやり方で神秘的にリンクしあい、広がりゆく発見の道がマ ウスのクリックで開いてゆく!そして Storyspace はハイパーテキストの すべてだった。

Storyspace は 1991 年に私が TidBITS に書いた初めての題材だった。そ の後 Storyspace をいろいろなオンラインのハイパーテキストの文書を作 り出すために使い、古代ギリシャ語の動詞を表示する文書、あるプラトン の文にギリシャ文法を埋め込んでコメントしたもの、SuperPaint のマニュ アルなども作成した。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbser=1198>
<http://www.ojai.net/matt/downloads/gkvbhelp13.hqx>
<http://www.ojai.net/matt/downloads/jactplatoreader.hqx>
<http://www.tidbits.com/matt/downloads/superpaint-hyperhelp.sit>

とは言うものの、Storyspace は急速に私の Mac 上で精気を失っていった。 情報の蓄積と検索の他の方法の中でも、主にアウトライナーやデータベー スや 2 者の混合物が上位を占めるようになった。HTML と World Wide Web の隆盛がハイパーテキストを好奇の的ではなく一般的なものにした。 というのもブラウザ以外に特別なソフトウェアを必要としなかったからだ。 さて Storyspace がバージョン 2 になり完全に書き直されて帰ってきた。 インターフェースが改善され、マニュアルも良くなり、ドラッグ ドロッ プやコンテクストメニューなどの最新のテクノロジーを駆使している。も う一度検討してもいい頃だろう。

<http://www.eastgate.com/Storyspace2.html>

昔々は -- Storyspace のドキュメントはテキストの断片である snippet をいれるコンテナである。テキストはスタイルを適用でき、 Storyspace を旧式だが有能な編集環境にするような矢印キーによるナビ ゲーションが可能である。スタイル情報を持つテキストの既存の文書の取 込みも可能で、小さな snippet に後から「分ける」こともできる。たと えば、キャリッジリターンごとに分割できる。snippet に画像を含むこと もできる。QuickTime ムービーを参照することもでき、それに音声をつけ ることもできる(しかし後述のバグリストを参照)。

snippet にはすべて実際に snippet を構成するテキストとは違った名前 がある。名前はスタイルを適用できず、32 文字より短くなくてはならな い。必須ではないが、ほかと重ならない名前であればその方がよい。

Storyspace はテキストの snippet を階層化する。つまり、ある snippet を上の階層に置き、またある snippet を下の階層に置くといったことが 可能である。階層を閲覧するときに、snippet の名前を見ることになる。 名前をドラッグして階層を並べ替えることもでき、またダブルクリックし て snippet のテキストを見ることもできる。

snippet の階層を閲覧するのに、1 つでもなく、2 つでもなく、 4 つ の違ったやり方がある。

階層を閲覧するのに、たった一つのウインドウを変更するのではなく、望 みのタイプの view ウインドウを開くことになる(たとえば、「New Outline View」など)。好きなだけ view ウインドウを開くことができる。 view ウインドウはどれもコンテクストメニューが利用でき、すべての snippet のリストアップと選択が可能である。別のウインドウに Locate ウインドウというものがあるが、すべての snippet をアルファベット順 に表示し、snippet について新しい view を開くことができる。よって、 ほとんど確実に、自分の文書のあらゆる部分を、便利だと思うあらゆる方 法で、見つめたり並び変えたりできるだろう。ある view ウインドウで階 層を並べ替えたら、ほかの view ウインドウの内容が新しく並べたものを 反影して変更される、ということは付け加えておかねばなるまい。おそら くこんなことに感銘を受けるべきではないだろうが、とてもクールに思え、 何時間もこれで遊んでしまった。

Storyspace の階層構造の大きな弱点は、snippet の名称設定の仕組みだ。 32 文字を守るのは厳しい制限だ。snippet に説明となるような名前を与 える十分な長さではまったくない。どんなサイズの文書でも、名前だけで snippet を見分けるのは不可能になる。しかしまさにそうしなければなら ない状況が多く存在するのだ。

-- あなたの文書はハイパーテキストリンクにより別の階層構造を持 つことになる。snippet 全体、snippet 内の特定部分のテキスト、あるい はイメージ内の長方形領域からリンクして、他の snippet 全体、または 特定部分のテキストにたどれる。リンクをつけるのはとても簡単だ。2 つ の snippet が表示されていて snippet 全体へのリンクの場合、リンク元 を選択し Create Link を選んでリンク先をクリックすればよい。または、 リンク元と Tunnel と呼ばれるフローティングパレットをリンクして、そ して Tunnel とリンク先をつなぐ方法もある。

同様にリンクをたどることも容易だ。基本的には、リンク元を Command + Option + クリックすると、リンク先の snippet のテキストが開く。リン クをたどって snippet を閲覧すればリンク元の snippet に戻ることは常 に可能だ。さらに、Storyspace はブラウザのようにあなたが見た snippet の履歴を保存しており、後でたどったり見たりすることができる。

ここまでのところ、Web ブラウザとさして違いはなさそうだ。しかしなが ら、Web 機能をしのぐ注目すべき点はリンクが一つだけでない場合に生じ る。クリックしたテキスト部分から複数のリンクが発生している場合、リ ンク先の snippet のリストを載せたダイアログボックスが現われ、あな たがたどりたいリンクを選択できる。もし snippet 全体から複数のリン クが発生している場合、リンクは優先順位がつけられて、たどるのを防ぐ 「保護フィールド」がない最優先リンクをたどることができる。保護フィー ルドは簡易フィルタであり、簡単な条件をいくつかつけることができる。 たとえば、あるテキストが選択されれば、あるいは特定の snippet を訪 れたことがあれば、もしくはなければリンクをたどる、といった具合だ。 Storyspace がある程度のインタラクティブ性があって先の読めない文書 を構築するのに優れていることは間違いない。

自動的にリンクをたどる他に、リンクの扱い方が 3 つある。

Storyspace のリンク構造における大きな弱みは、リンク先が特定部分の テキストにあたる場合の処理の仕方にある。問題点は 2 つある。第 1 に、 リンクからテキストのある部分にたどりついても、その部分は選択されな いのでリンク先のテキストと何の関連があるのか見当もつかない。第 2 に、テキストの一部を見てもそこへリンクが来ていることを知る術はない。 これでは、文書整備に困難が生じ、リンク機能そのものを予測不可能でほ とんど意味のないものにしてしまう。

-- ひとつの snippet にいくつでもキーワードを関連づけることが できる。これは主に Find ウインドウで、あるテキストを含んでいるか、 あるキーワードを含んでいるか、またはその両方の条件で snippet を探 すことができるので役に立つ。残念ながらこれより複雑な検索はできない。 たとえば 2 つのキーワードを含む snippet は探せない。

キーワードはリンクを自動的にたどることに関しても利用できる。「魔法 の」キーワードが 2 つある。一つのキーワードは、それを持つ snippet へ移ろうとすると、その snippet のサブ snippet の中でまだ訪れたこと のないものを代わりに表示する。もう一つの魔法のキーワードは履歴リス トをクリアして、どの snippet にも訪れていないことにしてしまう。私 はキーワードの第 2 の利用方法は混乱しやすく不要だと本当に思う。リ ンクの保護フィールドと snippet の保護フィールドには有用な違いがあ るべきだということは認めるが、その違いを作り出すためにキーワード機 能を用いなければならないとは信じがたい。

大脱走 -- 情報を保存したり引きだしたりする一つの手段として、自分 自身で Storyspace 文書を扱うことができる;しかしこの情報を他人と分 ち合いたいとしたときにはどうだろうか?Eastgate 社は 3 つの方法を提 供している。

最初の方法は Storyspace Reader アプリケーションのコピーを相手に渡 すことである;これは自由に配布できるアプリケーションであなたの文書 を開くことができて Storyspace そのものに似ているが、編集や保存の機 能はすべて取り除かれている。ユーザーが見るインターフェースをどれだ け単純化したバージョンにするかについてはかなりの程度に自由になる。 たとえば、view ウィンドウを省いてリンクによって文書をたどるよう仕 向けたり、リンクをたどるとき元の snippet を閉じるようにするのかど うかも指示できる。それからユーザーが見るのは 2 つのツールバーのう ちどちらにするかの選択もできる。一つのツールバーからは階層全体を自 由にたどることができる(この snippet の次の兄弟へ行け、この snippet の最初のサブ snippet、等々)。もう一つのツールバーではナビ ゲートするには snippet の中でクリックするか言葉をタイプするかしな いといけない;このタイプされた言葉は選択されたテキストと同様に保護 フィールドとして働く。(これが私の Greek Verb Paradigm 文書をたど るやり方である;Present Active Indicative を見ているときに、 「passive」とタイプするとあら不思議、Present Passive Indicative を 見ていることになる)。

この Reader のインターフェースは前のバージョンに比べればはるかに進 歩した。新バージョンでは、ユーザーは Storyspace が持つメニュー項目 のほとんどにアクセスできる。例をあげれば、テキストやキーワードの検 索をするには Find が使え、Roadmap も使えるし、Paths ウィンドウを開 くこともできる。ということで、前にはあまり有用ではなかった機能が役 に立つようになった。ただし見方を変えれば、ユーザーに力を与えすぎか もしれない:たとえば、Paths ウィンドウを使うことでリンクの名前を変 更することができるし(ただしその変更は保存できないが)、そして History リストをクリアすることもできる(これは保存できる)。

Storyspace 文書を共有する 2 番目の方法は HTML としてエクスポートす ることである。これは驚くほど進化している。個々の snippet がページ となる;Storyspace はテキストのスタイルを保持しようとある程度の試 みをする;ピクチャーはエクスポートされる。もっと重要なことは、テン プレートファイルに HTML を書き込むことができることである。これでエ クスポートされた内容をはめ込むことができ、ページの中にかなりこみいっ た情報も盛りこむことができる。例をあげれば、もし snippet がサブ snippet であれば、その上位の snippet へのリンクを含み、そのリンク は「Upwards to」という語句とその snippet のタイトルという文からな る、といった定義ができる。テンプレートは Storyspace の機能のうち HTML 化されないために失われてしまうものを補うことにも使える;たと えば、HTML はページ全体から派生したリンクを扱う仕組みを持たないが、 複数のリンクのリストとして表示するように定義できる。他の機能、保護 フィールドのようなものは完全に失われてしまう;これにはびっくりした、 というのもこれらは JavaScript を使えば実現できると思っていたからで ある。

最後に、テキストとしてエクスポートできる。スタイルとピクチャーは失 われるが、Storyspace を単に記述ツールとして使うのであれば、これで 十分かもしれない。snippet はすべてエクスポートできる、指定した snippet とそのサブ snippet、あるいは Path に属する snippet すべて である。テンプレートファイルを使うことでエクスポートを多少カスタマ イズできる;たとえば、snippet 間に区切りを挿入できる。この記事はそ のようにして書いた;まず Storyspace で作り、後で Nisus Writer にエ クスポートしたのである。

最終章 -- Storyspace が広範囲に改良されたのは間違いない。インター フェースはよりシンプルで強力になり、おかげではるかに使いやすくなっ た。私は特にウインドウ(すべての snippet のリスト、Find ダイアログ、 リンクブラウザなど)が一般的なものになった、つまりモーダルではなく なった点が気に入った。さらに、snippet がリストに現れたらそれがどこ であっても、リスト内容に対して view ウインドウに現れた snippet に 対する操作と同じことができる。たとえばあるテキストを検索した後、結 果のリストから snippet を view ウインドウへドラッグすれば、snippet を並べ変えられる。(Paths リストではできないのは奇妙だが。)

またマニュアルも完全に書き直され、とてもナイスな PDF で提供される (ちなみに私が PDF を「ナイス」だと言ったら、それは本当にとてもナ イスでなければならない)。完璧ではないが、すごく良い。

その反面、インターフェースには小さな欠点が山ほどある。Storyspace はファイルダイアログと私のメニューバークロックを勝手なフォントで表 示してくれる。カーソルは慣例に従った使いやすい変化をしない。たとえ ばテキストを編集している間、カーソルは挿入ポイントではなく矢印のま まである。たまにテキストウインドウがあらぬ場所へ行ってしまう。ウイ ンドウを開けと指示すると他のウインドウが全部バックグラウンドへ押し やられるが、何も表示されない。テキストウインドウがときどき変に更新 されて読みにくくなる。テキストウインドウ下部のボタンとスクロールバー が、保存するたびにウインドウの縁へ徐々に沈み込んでいき、やがてアク セスできなくなる。いくつかのダイアログでは部品の並びがちょっと変で、 チェックボックスが重なっていたりする。QuickTime ムービー機能はほと んど役に立たない。選択と再生が難しく、気まぐれに消えるからである。 録音機能では音質が悪い。音のデータを小さく保つために低いサンプリン グレートが使われているためだと思うが、ユーザーが指定できるほうがよ い。新たに snippet を作るダイアログは Rename と呼ばれており紛らわ しい。初期設定の一部はまったく機能しない。たとえば、新しい snippet を常に New York フォントで作れと設定してみたが、代わりに Charcoal が使われた。map view では snippet の名前が、拡大率 200 % のときよ り 100 % のときの方がわずかに大きく、また拡大率設定がドキュメント に保存されない。Choose a Link ダイアログでは線のハイライト表示がお かしい。テキストを起点とするリンクを削除してもリンクの存在を示す色 がテキストから消えず、見当違いのテキストへ不可解に広がってしまうこ とすらある。私は少しのバグは避けられないと悟っているが、バグ修正の アップデートがすぐに行われて問題の多くが解決されてほしいものだ。

本気で書かれたハイパーテキストはおもしろく、先鋭的である。Eastgate Systems 社はそんなハイパーテキストの著者の居場所を作った。著者たち はオリジナルのフィクションやノンフィクション作品を Storyspace フォー マットで販売することもできる。テキストを扱う本当に面白い方法を探し ているなら、個人で使うにせよ最終的に配付するにせよ、Storyspace は 確かに一見の価値がある。少なくとも、デモ版を使って幅広い分野の人々 から Eastgate 社が集めた体験談を読むことをお勧めする。Storyspace が自分のニーズにぴったりだとわかるかもしれない。

<http://www.eastgate.com/>

Storyspace は 300 ドルで、以前のバージョンからのアップグレードは 100 ドル。System 7.5 以降が動作する PowerPC 搭載の Mac が必要であ る。3 MB の デモ版がダウンロード可能。Windows 版もある。


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