TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#597/17-Sep-01

まず先週のテロリストによる攻撃で影響を受けた人々への我々の哀悼の意を表したい。この事件について Adam が簡単に触れかつ援助の手を差しのべている Mac 関連会社について述べる。Geoff Bronner は Palm ハンドヘルドでのワイヤレス Ethernet をテストし、Adam は iRemember があなたの Web ブラウジングの足跡をどのように提供してくれるのかを検証する。ニュースの部では、Apple が Apple Expo Paris をキャンセル、Handspring が新しい Visor を出荷、そして CS Odessa が ConceptDraw Professional をリリースした記事を扱っている。

記事:

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MailBITS/17-Sep-01

Apple Expo Paris 2001 はキャンセル、しかし Seybold は続行 -- 本日 Apple は短いアナウンスながら、2001/9/26 から 2001/9/30 までフランスのパリで予定されていた Apple Expo 2001 をキャンセルすると発表した。Apple CEO の Steve Jobs はこう語っている;「先週の壊滅的で悲劇的な出来事に鑑み、我々は Apple Expo をキャンセルする決断をした。ユーザー及びデベロッパの人々の期待を裏切るのは忍びないが、安全の確保が最優先されねばならない」。これとは対照的に、Seybold Seminars は 2001/9/24 から 2001/9/28 まで予定されている Seybold San Francisco はそのまま続行するつもりだと発表した。その理由として Seybold Seminars のGene Gable 社長は次のように説明している;「Seybold の仲間としての正当な対応は、我々業界のバイタリティとそれが世界経済に対してできる貢献度を世の中に示す事であると確信するからである」。[ACE](カメ)

<http://www.apple.com/pr/library/2001/sep/17expo.html>
<http://www.key3media.com/seyboldseminars/events/statement.shtml>
<http://www.key3media.com/seyboldseminars/sf2001/>

Handspring 社 Visor Pro と Neo を発表 -- Handspring は本日、Palm OS ベースのハンドヘルドにスピードとより多くのメモリを追加した二つの新型 Visor 機をリリースした。エントリーレベルの Visor Neo は $200 で、8 MB のメモリを持ち 33 MHz Dragonball VZ プロセサのお陰で Visor Deluxe よりも 50% 速くなっている。$300 の Visor Pro は同じプロセサを使っているがメモリは 16 MB 搭載しており現時点では Palm 機の中では内蔵メモリとしては最大を誇っている。電源は内蔵の充電型電池である。両機ともグレースケールスクリーン、Springboard 拡張スロット、それに Visor Deluxe と同じ外形寸法を保っている。違いは色であり;Pro はシルバー、Neo は透明な赤、青、それに "スモーク" となっている。さらに両機とも現在 Handspring が行っている "VisorPhone Springboard モジュールがタダ;どの Handspring Visor とでも同時購入しサービス加入登録すれば" プロモーションの対象となる。(VisorPhone についての詳細は TidBITS-586 の“Visor Springboard モジュールを極める”を参照されたい)[JLC](カメ)

<http://www.handspring.com/products/visorneo/>
<http://www.handspring.com/products/visorpro/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06477>(日本語)Visor Springboard モジュールを極める

CS Odessa 社 ConceptDraw Professional に進化 -- CS Odessa は本日ConceptDraw Professional をリリースした。これは同社の強力でかつフレキシブルなグラフィックアプリケーション(全レビューは TidBITS-553 の“ConceptDraw コネクション”に)の強化版である。ConceptDraw Professional の新機能には、イメージとシンボルに特化した 25 以上の追加のライブラリ、CAD アプリケーションとの DXF import/export 経由での互換性、PowerPoint プレゼンテーションとのインポート、エクスポートの双方向サポート、Microsoft Visio とのデータ交換性の改善、そして図と文字フォーマットとの間の(双方向)変換のためのアウトライン機能がある。ConceptDraw Professional には Classic Mac OS, Mac OS X, そして Windows 用があり $250 である;ConceptDraw からのアップグレードは $125 で学術用割引もある。ConceptDraw Professional は Mac OS 8.6 かそれ以上で PowerPC 603e ベースの Mac (PowerPC G3 推奨) で 32 MB の使用可能 RAM を必要とする。[ACE](カメ)

<http://www.conceptdraw.com/professional/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06179>(日本語)ConceptDraw コネクション


理解を深め、助け合い、前進しよう

文: Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
訳: 斎藤美礼 <mirei@x.age.ne.jp>

国際問題について特別な知識があるわけでもないし、そういった見方から語ってみようというつもりもない。しかし、ここ数日間、座って、衝撃を受け、恐れをなし、無感覚になるうちに、先週の火曜日に起こった世界貿易センターとペンタゴンへの恐ろしいテロリストの攻撃に関して TidBITS の考えを少し掲載するのは適切なことだと思うようになっている。

私の理論は単純なものだ。どんな共同体も、世界的な共同体のレベルでさえ、私達が毎日作り上げ維持している個人の結びつきほどの強さでしかない。攻撃での人命の損失という重大な犯罪行為に私は圧倒された。ただ何千人もの人がこのたった一度の、不運にも故意の、広く報道された出来事で亡くなる、ということがどういう意味なのか、理解できない(理解しようとも思わない)のだ。しかし、私の思いはすぐにオンラインでのコミュニティに向かった。TidBITS、TidBITS Talk、XNSORG の中の、ニューヨークで生活し、働き、旅行していたことを私が知っている人々だ。1、2 日のうちに、もっとも親しくしている人たちの消息を聞いたが、みな無事である。

しかし、私達のコミュニティの中にも死傷者や、死傷者の友人、同僚、親戚を持つ人はいる。彼らのために私達は哀悼し、テロリズムを行う余地のない自由で開かれた社会を作るために働くしかない。私達は恐怖の中で生きることはできないし、内にこもった人生を送ることもできない。また、より安全性を確保するという名目で自ら警察国家に服従しようとする誘惑に抵抗しなければならない。

アメリカ合衆国というのは進行中の自由に関する実験なのだ、と Tonya は私に言ったが、彼女の意見はまったく正しいと思う。私達の過去と現在の闘争は、南北戦争から妊娠中絶を受ける権利に関する議論まで、多くが自由という問題を巡ってのものだ。答えが簡単に出るものではないからだ。自由には危険が必ず伴い、そういった危険はいろいろな形でやってくるが、その後ろに潜む脅威はすべて自由を失うことなのだ。それが、そしてそれだけが、この実験を終了し、しかも最悪の終わり方での終了となるだろう。

援助しよう -- この状況の中、経済援助を必要とする救援活動と組織が数多くある。どうか彼らの努力を援助してほしい。インターネット上でかなり多くの支援団体を簡単に見つけることができるだろう。しかし、救済組織への寄付を頼むふりをした詐欺があらわれているので、気をつけた方がいいだろう。Coalition Against Unsolicited Email(CAUCE)とSpamCon Foundation からの呼びかけを以下に掲載する。

安全に募金するには、アメリカ赤十字の National Disaster Relief Fund にするとよい。赤十字のサイトで直接クレジットカード経由で募金できる(訳注:日本赤十字は郵便振替のみ)。また、Amazon と PayPal は赤十字のサイトが攻撃後混乱していた時にもっと簡単な募金方法を提示している。両社とも通常の手数料を取らないので、募金は 100 %救援活動へ行く。これを執筆時点で、200,000 以上の個人および組織(TidBITS も含む)が 730 万ドル以上募金している。赤十字への募金は電話番号 800-HELP-NOW でも行うことができる。

<http://www.redcross.org/>
<http://www.redcross.org/donate/donate.html>
<http://www.amazon.com/paypage/PKAXFNQH7EKCX>
<http://www.paypal.com/cgi-bin/webscr?cmd=p/gen/relief-outside>

赤十字に関する情報は、800-GIVE-LIFE で知ることができる。血液が緊急に必要な状況ではなくなったが、国内の血液の供給は、献血されてから 42 日が血液の寿命であるため、絶えず補充される必要がある。だから、献血は数週間待って、通常の予定日にまた行ってほしい。

<http://www.redcross.org/donate/give/>
<http://www.aabb.org/Pressroom/In_the_News/wnprtrag091201.htm>

援助活動を行っている企業 -- Macintosh 関連のいくつかの企業が売り上げからの収益を救援活動への援助に送ることを約束している。彼らの行いは賞賛に値する。この方法で募金を行っている企業は、Aladdin 社(2001 年 9 月30 日までのオンライン上での各販売ごとに 1 ドル)、Intelli Innovations (2001 年 9 月 21 日までの販売につき 10 ドル)、MCF Software(2001 年9 月 30 日までのListSTAR の売上の 100 %と MacRadius の売り上げの 50 %)、PagePlanet Software(2001 年 9 月 30 日までの総売上の 50 %)、RadGad(2001 年 9 月 30 日までの総利益)、Small Dog Electronics(2001 年 9 月 17 日からの 1 週間の各注文につき 10 ドルとふさわしい義援品)、Thursby Systems(2001 年 9 月 21 日までのオンライン上での総売上)である。

<http://www.aladdinsys.com/>
<http://www.intellisw.com/>
<http://www.mcfsoftware.com/>
<http://www.pageplanetsoftware.com/purchase.html>
<http://www.radgad.com/pr.html#RadGadDonatesProfitsToRedCross>
<http://www.smalldog.com/>
<http://www.thursby.com/redcross.html>

同様の誓約を行っている会社を知っていたら、TidBITS Talk に書き込んでもらえれば、リストに追加する。

<http://www.tidbits.com/about/tidbits-talk.html>

前進しよう -- 最後になるが、私は TidBITS をこの悲劇を特集したフォーラムにするつもりはないし、テロ事件の議論のホストに TidBITS Talk を使いたいとも思わない。それは TidBITS Talk が扱う範囲を超えている。この特集と議論のためにはるかにふさわしいフォーラムがあるし、傷を癒す過程には、起こった出来事の大きさを認識することと同時に、正常に戻ることも含まれているはずだからだ。ショックの大きさは様々だと思うが、私達がお互いに作り上げた電子的なつながりは、私達みんなに事件の影響があることをはっきりさせた。その点から、私達はみんなで前進しなければならない。人生とはそういうものだからだ。


ワイヤレス Palm、もうひとつの接続方法

文: Geoffrey V. Bronner <geoffrey.bronner@dartmouth.edu>
訳: 細川秀治 <hosoka@ca2.so-net.ne.jp>

私の持ち歩くポータブルデバイスは、まだワイヤレスではないが、超小型のPalm Vx だ。最近まで、Palm OS デバイスとワイヤレス技術といえば、ワイヤレスモデムを内蔵した Palm VIIを入手するか、または外付けの携帯用モデムを利用することだった。ところで、私が必要なのはそんなものではなく、Palm デバイスを、私が勤務先で毎日使っていて家での AirMacベースステーションでも使っている 802.11b ワイヤレスネットワークに接続する手段だ。

勤務先 (数百の Cisco Aironet アクセスポイントを持つ大学キャンパス) のワイヤレスネットワークはラップトップユーザーへの賜物として始まった、しかし今では、Compaq iPaq などの、より小さなポータブルデバイスに人気が集まっている、私は Palm OS デバイスをぜひその仲間に追加したいものだと願った。今年の初め、Xircom (現在 Intel 所有) は、Handspring Visor およびPalm m500 ハンドヘルド用のワイヤレス LAN モジュールをリリースする予定であると発表した。そして SpringPort ワイヤレスイーサネットモジュール(SWE) が六月に発売され、続いて八月には Palm ワイヤレスイーサネットモジュール(PWE) も発売された。どちらのモジュールも Xircom の価格は 300ドルだ。

<http://www.xircom.com/cda/page/0,1298,0-0-1_1-1576,00.html>

外観は別にして、これらふたつの Xircom モジュールでの顕著な違いは、バンドルされているソフトウェアだ。SWE には、MultiMail SE とHandspring Blazer ウェブブラウザが付いている。PWE にはどちらのソフトも含まれていないけれど Palm m500s および m505s に MultiMail SEとPalm 製ウェブクリッピングアプリケーションが付属している。

私は、手持ちの Palm Vx を下取りに出して、Palm m500 とワイヤレスモジュールを注文し、入手次第すぐにテストを開始することにした。私の上司はCompaq iPaq を携帯しているが、その膨張ケースと取り付けたワイヤレスカードは、ひどく嵩張りバランスが崩れている。それに引き換え、Palm m500 のモジュールはハンドヘルドの背面に取り付け、厚みは増えるが、それでもシャツのポケットに収めることができる。モジュール無しなら、m500 はiPaq よりもはるかに小さく軽い、これは就業後や週末の携行に便利だ。

このモジュールには、小さな取説小冊子のみが付属している、私はこれで申し分ないのだが、802.11b ネットワーキングにそれほど慣れていない人には簡潔すぎるかもしれない。このモジュールを m500 に装着すると、XircomPWE セットアップソフトウェアが自動的にハンドヘルドのメモリにコピーされる。Palm m500 に標準付属する AC アダプタでバッテリを充電した後、私の大学のネットワーク設定を入力した(たった数分でデバイスを設定できた)。もしあなたが複数のネットワーク (職場と家庭など) に接続するなら、別々のプロフィールを各々に設定する必要がある。私の場合は、家でも大学でもDHCP で IP アドレスを供給しているので共通のプロフィールを使用でき、ネットワーク設定は家も大学も同じ名前にした。

野外テスト -- 一旦モジュールを設定すると、あなたはもう XircomPWE プログラムを忘れてしまってもよい、しかしこのアプリケーションには、使っているワイヤレスアクセスポイント、信号強度、モジュールのバッテリ残量、あなたのIP アドレス情報のすべてを表示する状態画面も含まれている。

ワイヤレスモジュールの受信状態は良い。電波の到達範囲においてワイヤレスPCカード付きのラップトップに比肩する。これは直近/最強のアクセスポイントを選択する。アクセスポイントから遠ざかると途端に受信が落ちてしまうようだが、私はこれがモジュールの低電力消費のせいだと理解している。しかしながら、アクセスポイント間で移動受信するのは信頼性が悪い、そのため、何かをダウンロードしながら距離間を移動すると接続が中断するかもしれない。

仕事で一日忙しく使ってもバッテリは充分長持ちする。そしてモジュールをPalmに取り付けた状態で AC アダプタを継ぐと、どちらのバッテリーも充電される。通常の使用に比較して、モジュールの使用で Palm のバッテリがより速やかに放電することはないようだ。

仕事に使ってみる -- Xircom のセットアップ取説には、「Network HotSync を使う」セクション以外に、このモジュールでアプリケーションを使う方法は何も書かれていない。Network HotSync を使うと、Palm をひとつのコンピュータに同期させることができ、それがネットワーク上にある他のどんなコンピュータからでも操作できる。キャンパスのどこからでも HotSync できるのは有り難いことだ。ところが残念なことに、Network HotSync は Palm Desktop 2.6.3 for Macintosh でサポートされていない。そこで代わりに、私はWindows 98 SE、Outlook 2000、Palm Desktop 4.0 を入れたIBM ThinkPad ラップトップでこの機能をテストした。それは万事うまくいった。私のMacintosh でも同じことができたらいいのにと思う。Macintosh で Network HotSync のサポートを Palm がいつまでもしないのは、期待外れで、Mac ユーザーにとってこのかなり高価なアクセサリの価値を貶める。

Network HotSync は使えないけれど、このモジュールを使い始めて Palm デバイスを使う方法がたちまち変わってきた。私はいつもこれを持ち歩くようになり、さらに多くの用途を発見する。AirMac を内蔵した私の PowerBook は無視されて少し寂しがっているだろう。

ワイヤレスネットワークによってラップトップを会議に持ち込むのが容易になり、壊れるのを心配しながら大きなコンピュータを運んだりする必要がなくなった。それでも机から離れるとき何時も PowerBook を掴んで行くのもあまり実際的ではないので、今では、確実に必要な時だけ私はラップトップを持ってゆく。

アプリケーションに関して言えば、何が最も多くの違いを産み出しているのだろう? 答えは、もちろん、電子メール、オリジナルのキラーアプリケーションだ。こまめに設定された MultiMail SE と IMAP メールサーバーにより、ラップトップにはできない繊細さで、受信する電子メールの動きを追うことができる。このソフトだけで、私は Palm デバイスを使うのが二倍または三倍になった。とりわけ先週の世界貿易センター攻撃の直後の混乱で、私はこの増大した接続性の重要さに気が付いた。私はマンハッタン育ちで、また世界貿易センター地区には多くのダートマス卒業生が働いているのだ。

Palm の Xircom モジュールはモデムのように働くので、モデムを使用するどんなアプリケーションもこのモジュールではうまく動くだろう。例えば、私は週末に家に居て AvantGo の Modem Sync 機能を使い私の AvantGo チャネルを更新するが、私のクレイドルはオフィスに置いたままだ。私はまたテキスト専用ブラウザの EudoraWeb を使ってウェブにアクセスし、私の Web サーバをチェックしたり TidBITS ハンドヘルド版を読むことができる。EudoraWeb はEudora Internet Suite の一部だ、それはまた Palm OS 用 Eudora 電子メールアプリケーションとWindows 版のみの電子メールコンジットを含む。EudoraWeb は素晴らしいことに、cookie と SSL を処理できる、そしてHandspring の Blazer ブラウザのようには proxy サーバを必要としない。これは無駄のない簡素なウェブ実装だが、忙しいとき必要な種類の情報が得られるこのようなアプローチを私は好きだ。

<http://www.avantgo.com/>
<http://www.eudora.com/internetsuite/>
<http://www.tidbits.com/about/handheld-edition.html>

先を見れば -- 多くの会議や展示会で今日ワイヤレスネットワークが準備され、参加者はこれらの情報を利用できる。私はこれまで PowerBook でこのような情報を利用したものだが、これからは、道中で Vindigo と AvantGo の情報を容易に更新できるよう、私の PWE と Palm m500 を連れて行くだろう。

<http://www.vindigo.com/>

オフィスに戻ってまとめてみよう。我々はこれまで見たことで、モジュールが使い易くそして Palm の価値を高めることがよく分かっただろう。Network HotSync なしでさえ、PWE は Palm を独立したネットワークデバイスにし、いっそう有用なアプリケーションと相まってまったく異なったタイプのユーザに使われるだろう。これまでは旅行する経営者に役立った MultiMail のようなアプリケーションが今や技術サポートスタッフ、現場監督、会社や大学キャンパスを移動する他のユーザに役立つだろう。

我々はすでに我々の技術サポートスタッフが使用したウェブベース電話追跡システムのハンドヘルド指向バージョンについて論じている。他の様々なアイデアも話し合われている、しかし、ワイヤレスモジュールがもっと安価になるまで、それらの幾つかは待たなければならないかもしれない。もしあなたにワイヤレスのインフラと予算があるなら、あなたの Palm や Handspring ハンドヘルドで本格的なネットワーク市民を楽しむことができるだろう。

[Geoff Bronner は Dartmouth College の Tuck School of Business ウェブマスターで、非常に多くの DVD を購入しており、熱心な Lego コレクターだ。]


あっそうだ! iRemember で覚えてる

文: Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

コンピュータの発展というものはその能力が次々と追加されていく歴史であって、生命の進化の歴史と同じようにいくつもの重要な分岐点を経てきている。初期のコンピュータは電線とスイッチとパンチカードによってプログラミングされた計算機から始まった。それから巨大なメインフレームとインターフェイス専門のターミナルの時代が過ぎ、コマンドライン・インターフェイスの初期Apple II と PC の時代を駆け抜ければ、もうつい最近の、グラフィカルなインターフェイスによってコンピュータが本当にパーソナルなものとなった時代、つまり現在の我々が慣れ親しんできたコンピュータの時代になるわけだ。

このように超特急で概観しただけでも、コンピュータの使用法の進化というものが見て取れる。初期のマシンはただ数の計算をするだけのものだった。その後、大量のデータを管理するための能力が付け加えられた。その次に来たのがインタラクティブなアプリケーションという概念で、その後、書類というものをすべてのコンピューティングの中心に据えようという哲学が広まった。(OpenDoc がその良い例だろう。)しかしながら、インターネットの隆盛に伴い、ここにおそらく最も重要な機能、つまりコミュニケーションという要素が参入してきたのだ。Microsoft の Macintosh グループが数年前に行なった調査によると、iMac のユーザーが実行している最も中心的な作業は電子メール、ウェブブラウジング、ワードプロセッシングの3つであったという。さらに、これら3つほどにはまだ普及してはいないが、インスタントメッセージングもインターネット上の大きな活動の一形態となっていることは確かだ。

コンピュータの利用形態がこのように大きく変遷してきたのにもかかわらず、そこで必要となるソフトウェアの改良に向けての努力というものは残念ながら表面的なものだけにとどまっているようで、インターネットから個人のコンピュータに流れ込むデータの重要性が充分に認識されてきたとは言い難い。ごく最近のバージョン以前の Netscape では、あなたの訪れたウェブサイトの履歴は1つのウィンドウにリストされているだけで、そのウィンドウを閉じた途端に、あなたの足跡はすべて消えてしまっていた。Internet Explorer ではこの制限は無いのだが、最大 999 個までのページしか記憶できないという、独自の別の制限を持っている。(私の場合これでは一・二週間ほどしかもたないので、私はもう少し長期の記憶ができる方が好みだ。)また、Internet Explorerには URL をタイプ入力する時の補完機能という非常に便利な機能があって、たとえば私が 2.4 GHz アンテナについて調べたい時には URL に“2400”という文字が含まれているのを覚えているだけで希望のページがすぐに開ける。Netscape にも同様の機能が追加されており、どちらのブラウザも近年になってそうした機能、つまりウェブから流れ込むデータをより賢く利用できるようにするための機能、取り入れてきている。他の例を挙げると、どちらのブラウザにも「関連サイト」機能があって Alexa へのリンク(Internet Explorer 5.1では“Tools”メニューの“Show Related Links”、Netscape 6.1 では“What's Related”サイドバー)が利用できる。あなたの興味を引く会社が見つかった時、同種のものを扱っている他の会社を探すのに便利だ。また、Internet Explorer の“Auction Manager”機能なども、まだまだ頼りないところもあるものの、まさにあなたのコンピュータに流れ込むウェブデータの上層レイヤーとしての賢さの追加というものを目指した試みと言える。(私はそんなにオークションに参加するわけではないが、オークション用の専用ツールでもっとパワフルなものがあるだろうとは推測している。)

<http://www.alexa.com/>

記憶を拡充する -- 前置きが長くなってしまった。ことに、これから紹介するプログラムは私が自分では使わないと決めたものなのだからなおさらだ。しかし考えれば考えるほど、この小さなシェアウェアのユーティリティ、Serac Software の iRemember は、まさにこの、コミュニケーションの時代にあってコンピューティングをいかに前進させていくべきか、という考え方の良い実例になっている気がしてならない、そういうソフトウェアなのだ。

<http://www.seracsoftware.com/iremember.html>

iRemember の根幹をなしているコンセプトは驚くほど単純なものだ。2つの機能拡張ファイルがインストールされる。1つは Open Transport モジュールで、もう1つはウェブブラウザが動作する度に起動されるアプリケーションだ。このメインの iRemember 機能拡張と Open Transport モジュールとは協力して働き、あなたのコンピュータに流れ込むすべてのウェブデータを探知する。このアプリケーションは Apple Information Access Toolkit(Sherlock の動作の根幹をなす索引付け・検索テクノロジー)を利用してあなたの読んだウェブページすべてのテキストを索引付けする。この索引付けの作業自体はバックグラウンドで静かに行なわれ、あなたに気付かれることもないはずだ。ただしこのやり方にも欠点はあって、それはあなたが今訪れたばかりのページは索引付けの作業が終わるまでは検索にかからない、ということだ。

iRemember を動作させながらウェブをしばらくの期間ブラウズした後で初めて、その使い道が見えてくる。iRemember の signature 機能では、あなたの訪れたページに登場する単語を検索でき、検索結果をダブルクリックするだけで iRemember はその URL をあなたのウェブブラウザの新規ウィンドウに開かせる。ここで注意すべきなのは、iRemember はウェブページのテキストを一旦索引付けした後ではもはやその全テキストを保存してはいないことだ。つまりそのページを見るにはブラウザで改めてウェブに行き直さなければならないのだ。

このシンプルな機能だけでも、驚くほど便利なことがわかる。たとえば、ある話題についてどこかで読んだ覚えがあるのだがどこでだったか思い出せない、というのは私がいつも経験することだ。いくつもあるウェブ雑誌のどれかの記事だったかもしれない。これらウェブ雑誌はたいていそれぞれに検索機能を持ってはいるのだが、どれもいいかげんな検索しかできないような代物だ。悪いことには、こうした記事の多くは Google のような外部の検索エンジンの検索対象外なのだ。以前の私は従来の検索エンジンを使ってページを探したものだったが、こうしたツールはたいていニュース記事やウェブ上の討論フォーラム、その他のデータベース管理型の情報にはヒットしないので、ただイライラさせられるだけ、という結果に終わることが多かった。もう1つの問題は、Google のような検索エンジンは私のブラウジング履歴を知らないわけで、これまでに読んだことがあって私が興味のあるページと、これまでに読んだこともなくて私には興味ないページとを、区別してくれないことだ。

iRemember の場合は、私がこれまでに訪れたページ、そういうページだけを覚えてくれている、これが重要なことなのだ。そういうページは、私には特別の価値がある。そういうページの内容だけを検索できるというのは、これまでには不可能だった全く新しい一大機能だ。さらに私は、iRemember が私の読んだすべてを記録してくれているという安心感だけで、私のウェブページの読み方そのものが変わってきたことにさえ気付いた。私は普段から情報にフィルターをかけながら読んでいる。速い速度で読みながら、情報を次々と頭にたたきこみ、あとで必要になった時にいつでも思い出せるように、という読み方をする。先に知りたいテーマがあってそのことを深く知るために読む、という読み方はあまりしないのだ。この習慣のおかげで、TidBITS に記事を書く時でも一見関係のない多数の情報をうまく組み合わせて1つのトピックの説明に役立てることができる。しかし、歳を重ね、インターネット上の情報量が爆発的に増加するに従って、私にはこの読み方を続けるのがだんだん困難になってきた。そういうわけで、今、この Bill Gurley の記事を読んで Bluetooth は成功を収めないだろうと彼が予言する根拠を記憶できなかったとしても、後で必要になればいつでもそのページが見つかる、という安心感が私にとっていかに大きなものだったか、お分かりいただけるだろう。

<http://news.cnet.com/news/0-1270-210-6832075-1.html>

iRemember は他にもいろいろのやり方であなたのブラウジング履歴を利用する。これはあなたがどんなブラウザを使っていても構わない。時間順に並べたそのままのリストも使えるし、ウェブサイトごとに並べ替えたリストもある。どちらの場合も、リストの各項目はそれぞれいくらかのメタデータを伴っている。たとえばそのページを見た日付、いくつかのキーワード、などである。キーワードはそのページの内容を類推させるような言葉、つまり検索の逆機能というわけだ。また、1つのページを指定してそれと関連のある内容のページを iRemember が索引付けしたものの中から探すことができるし、Sherlock を使ってインターネット上で関連ページを検索することさえできる。これらのリストで1つの項目をダブルクリックすれば、そのページがあなたのウェブブラウザで開かれる。

もちろん、ウェブ上のページは消えてしまうこともある。iRemember はそんな場合に、見つからないページをスキャンして索引から消去することもできる。(オリジナルが無くなってしまった場合にも残しておけるようにしても良いとは思うが。)また、一定の日付よりも古いページを消去したり、特定のページだけを(たとえば自分がどこかのサイトを訪れたことを誰かに知られたくないような場合など)消去したり、索引を圧縮して消去したページ分の空白を使えるようにしたりもできる。索引が壊れていないかチェックする機能や索引ファイルを読み込む機能もある。(索引が壊れた場合にこの機能を使ってバックアップを読み込んだり、複数のコンピュータ上の索引ファイルを1つにまとめたりするのに使える。)

不便な点など -- iRemember は新しいものではない。しかし私が初めて iRemember のことを聞いたのは何故かつい最近で、今年の MacHack の会場で友人に勧められてのことだった。そこで私はそれをダウンロードしてインストールし、試用期間の 30 日間をほとんどフルに使って試し、結局最後には使うのをやめた。私が訪れたページの内容を覚えていてくれるというその機能はとても気に入ったのだが、私の Power Mac G4 (Mac OS 9.1) ではあまりにも頻繁にクラッシュするので、使っていられなくなったのだ。iRemember 2.0 は 2000年5月以来アップデートされていない。それ以降に Apple が行なった変更に合わせて修正する必要があるのかもしれない。

このクラッシュはイライラさせられるものではあったが、それほど深刻なクラッシュというわけではなかった。クラッシュはたいていは MacsBug で脱出できるもので、そのまま仕事を続けるか、またはきちんとした再起動ができた。しかしながら、私がついに iRemember の使用を諦めた最後の日、そのクラッシュは他のいくつかのアプリケーションを道連れにして最後には私の Mac をフリーズさせた。これで私の堪忍袋も緒が切れたのだ。でも、それまでの深刻でないクラッシュにも問題はあった。私が実際に iRemember を使った 25 日ほどの間、いつの間にか私は訪れたページのすべてが記憶されているものだと思い込むようになっていた。しかし、クラッシュが起こってそのまま仕事を続けた場合、その後マシンを再起動するまでの間はページの記憶作業は当然行なわれず、後日になって、訪れたことがあるはずのページを iRemember が覚えていてくれないことで自分自身の記憶力に自信を失ってしまうことになってしまった。

また、何かを読んだのがメールでだったかウェブでだったかという心理的混乱も、問題だった。私は日常的に電子メールの文中の URL をクリックすることでウェブページを開く。つまりこの両者は私の意識の中で一体となっているのだ。ところが iRemember はウェブでの活動のみしか記録しないので、まずは iRemember で検索して、それで見つからなければ Eudora で電子メールを検索する、という手間がかかるのだった。

未来を覚えましょう -- おそらく私が iRemember で一番気に入ったのは、私がウェブを使う際の使い勝手を私だけのために専用に誂えられたやり方で改良してくれるということ、つまりこれがユーザー型インターフェイスだ、ということだろう。書類という概念がこの地を支配していたあの時代に一世を風靡した Super Boomerang がユーザーが最近使ったファイルやフォルダを簡単に開けるようにしたことで圧倒的な人気を得たのと同じ理由なのだ。(Power On Software の Action Files が Super Boomerang の正統の後継者となっている。 TidBITS-434 の記事“ACTION Files の使命”を参照。)

<http://poweronsoftware.com/products/actionFiles/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=04931>(日本語)ACTION Files の使命

これは、ソフトウェア開発者に課せられた大きな宿題だ。CPU サイクルやディスク容量を、ユーザーのコミュニケーションの履歴を分析してユーザーの今後の使用をより楽なものに変えていく、という作業にもっと割り当てる方法を探って欲しいのだ。いわば、未来を覚えるわけだ。ウェブブラウザならば、ユーザーが平日の朝は毎日特定のいくつかのページを開くことを探知してその作業のインターフェイスを単純化してくれるとか、そういうページを前もって取り込んでアクセスを高速化するとか、または次に読むべきページを提案してくれるとかいうのはどうだろうか。電子メールプログラムならば、メッセージ内容に応じて(またはユーザーの動作に応じて、というのも考えられる)自動的にメールをカテゴリーに振り分けて分類してくれるとか、そういうカテゴリーごとにメールの読み方をオプションで提案してくれる、というのも良いかもしれない。

さらに、このユーザー型インターフェイスが情報をユーザーに提示する方法も、いろいろと進化の余地があるだろう。iRemember が提示するのは単なるテキストのリストに過ぎないのだが、グラフやマップなど、他の方法も可能かもしれない。たとえば Eudora の履歴リストはそれ自体すでに、あなたがメールをやり取りした相手の名前やメールアドレスを自動的に記録するという意味ではユーザー型インターフェイスになっているのだが、ここにいわばフォト・リアリスティックなユーザー型シェル・インターフェイスというものが考えられるかもしれない。(フォト・リアリスティックなのは書類よりも人の顔の方がふさわしいだろう。)あなたが現在メールを取り交わしている相手や、インスタントメッセージングの議論をしている相手ごとにその相手の顔が現われたら、そういう相手とのこれまでのコミュニケーションを一覧したり、または新しいコミュニケーションを始めたりする際に都合が良いだろう。このようにして表現された人々のグループというのはあなた一人だけのためのものであり、あなたの行なうコミュニケーションの実質を反映して常に変化し続けるものとなるわけだ。

コミュニケーションに関わるテクノロジーにおけるユーザー型インターフェイスについて1つだけ注意しておかねばならないことがある。マーケティングをする者やソフトウェア開発者にとっては、ユーザーに関わるデータを収集してそれを統計的に利用し、より良いマーケティングのターゲット設定などの目的に利用したい、などということは非常に強い誘惑であろう。絶対に、どんな場合でも、その誘惑に負けてはならない。個々人のコミュニケーションは、別にどうということはない内容であっても、本質的にプライベートなものであり得るのだ。今日のようにプライバシーを重んじる風潮の下においては、それを破ることによって起こりうる危険がどんな利益をも凌駕するものになってしまった。コミュニケーションに関するデータの収集と分析はすべて個々のユーザーのマシン内のみにおいて成されるべきものであって、さらにそのデータが少しでも機密を要する内容のものであり得る場合には、ユーザーがそのデータを保護して管理することのできるツールを、開発者は提供する責任を負っているのである。

しかしながら、注意深いデザインと適切な用心とをもってすれば、このユーザー型インターフェイス、つまりコンピュータのインターフェイスがユーザーの動作とユーザーのコミュニケーションとに基いて自己修正を行なうようにするという考え方は、コミュニケーションというものが中心概念となったこの現代において、コンピュータがしばしばコミュニケーションを妨げてしまうという現状を打破し、むしろコンピュータがコミュニケーションをさらに支援する、という時代の流れに沿ったものになっていくだろう。


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Valid XHTML 1.0! , Let iCab smile , Another HTML-lint gateway 日本語版最終更新:2005年 12月 26日 月曜日, S. HOSOKAWA