TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#598/24-Sep-01

Apple は Photoshop に関する一騎打ちで、高速の CPU を利して Mac が PC を打ち負かすのを見せるのが大好きである。しかし実際には Photoshop をうまく使う事で更なるスピードが得られる。今週は Iain Anderson がその一連のコツを教えてくれる。その他今週号では、Jeff Carlson が Palm m505 ハンドヘルドを概観し、DriveSavers は 2001年9月11日 の悲劇の犠牲者の援助をし、そして Interface Mafia の登場である。重要なリリース記事には Interarchy 5.0.1, Rumpus 2.0, StuffIt Deluxe 6.5 と Palm m125 が含まれている。

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MailBITS/24-Sep-01

Palmコンピューティングが Palm m125 をリリース -- Palmコンピューティングは、m500 シリーズの拡張性と接続性をもつ、入門用としてさらに魅力的になったモデル m125 をリリースした。m125 は 8MB のメモリ、m100 や m105 とおなじグレースケール画面、フェイスプレートの交換機能、および Secure Digital とMultiMediaCard フォーマットに対応した拡張スロットを備えている。また USB 接続のクレイドルその他の周辺機器用の Universal Connector を持ち、Palm OS 4.0 で動作する。$250 で販売中。[JLC](久島)

<http://www.palm.com/products/palmm125/>

StuffItがファイル操作機能つきでアップデート -- Aladding Systems は同社の誇る圧縮・アーカイブ・エンコーディングおよびファイル操作パッケージの最新版、StuffIt Deluxe 6.5 を出荷した。注目すべき新機能として StiffIt Express Personal Edition がある。以前は Aladdin Transporter として知られていた StuffIt Expressは、選択されたファイルに複数の連続的な動作をおこなう ドロップボックス・アプリケーションを作成するユーティリティである。Personal Edition で作成された ドロップボックス・アプリケーションは、StuffIt Express を持たない人へ配布することはできない。詳しくは TidBITS-jp-564 の記事“Macworld SF 2001 のトレンド:優れものユーティリティ”を参照のこと。その他の追加機能として Mac OS X 向の Magic Menu(Finderのメニューから StuffIt Deluxe の機能にアクセスできる)、Palm 用のダウンロードファイル(.prc と .pdb)を次の HotSync で Palm にアップロードできるよう特定のフォルダへダウンロードする機能、および .tar, .sit, .bzip アーカイブを作成できる ドロップボックス・ユーティリティ DropTar がある。StuffIt Deluxe6.5 は $80( 2001年12月31日 までは $60 の特別価格あり)で、StuffIt Deluxe の前バージョン所有者、および( 2001年10月12日 までは)Aladdin の他の製品の所有者に $20 のアップグレードがある。動作環境として Mac OS 8.6 以降の動作する PowerPCベース Macintosh で、6MB の空きメモリが必要である。

<http://www.stuffit.com/stuffit/deluxe/>
<http://www.stuffit.com/express/enterprise/mac/>
<http://www.stuffit.com/express/enterprise/mac/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06280>(日本語)Macworld SF 2001 のトレンド:優れものユーティリティ

Aladdin はまたフリーウェアの StuffIt Expander、DropStuff、DropZip も 6.5 へバージョンアップしている。それぞれのアプリケーションのアップグレードは無料だが、Aladdin はこれら 3つと DropTar 6.5 をバンドルしたパッケージを StuffIt Lite とした。StuffIt Lite インストーラをダウンロードし走らせると、未登録の DropStuuf、DropZip、DropTar、StuffIt Expander が出てくる。もし StufIt Expander だけが必要であれば他の3つのアプリケーションは捨ててもいい。他の 3 つもアップグレードしたいのであれば、出てきたものを起動し、以前の登録ナンバーを入力すればよい。入力しなければ、それら3つのアプリケーションは 15日間 は未登録でも動作する。それ以降は登録が必要となる。DropStuff 単体は $30、DropZip と DropTar はそれぞれ $20、StuffIt Lite フルパッケージは $50(言葉を変えれば StuffIt Expander はつねに無料)である。StuffIt Lite の動作環境は Mac OS 8.1 以降の動作する PowerPC ベースの Macintosh で、4MB の空きメモリが必要である。ダウンロード版のサイズは 6MB。[ACE](久島)

<http://www.stuffit.com/stuffit/lite/>

DriveSavers、無料のディスク復帰サービスを寄贈 -- 9月11日 のテロリスト攻撃で影響を受けた個人と企業のために無料のデータ復帰サービスを提供している DriveSavers に栄誉を贈る。DriveSavers のこのサービスは今後のアナウンスがあるまでは有効である。火災、水害、過電流、衝撃で障害されたディスクに対して行う。書き戻し用の CD か DVD メディアと FedEx の返送サービスつき。(同社のデータ復帰サービスについては TidBITS-jp-495 の“DriveSavers 救助隊”を参照されたい。)詳しくは DriveSavers に連絡のこと。[ACE](久島)

<http://www.drivesavers.com/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05530>(日本語)DriveSavers 救助隊

Rumpus 2.0 が業務用レベルの FTP サーバーを提供 -- Mac OS X に内蔵の Unix FTP サーバーや Mac OS X Server の存在にひるむことなく、(少なくとも Mac OS X 内蔵の Unix FTP サーバーには MacBinary をサポートしないという欠点があるのだ)Maxum Development は Rumpus 2.0 を発表した。同社のハイ・パフォーマンス Macintosh 用 FTP サーバーの大幅なバージョンアップである。Rumpus 2.0 では Mac OS X 互換用に Carbon 版が追加され、ファイルがアップロードされた際にユーザーを指定して電子メールまたは AppleScriptのスクリプトによって通知する機能を追加、フォルダのセキュリティ設定の拡張、転送レートおよびアップロード / ダウンロード比率についてユーザー毎のアクセス制限、1ユーザーによる複数同時接続、またユーザーアカウント管理のための内蔵ウェブ管理サーバー、さらにはセキュリティ強化のためのユーザーデータベースの暗号化などの新機能がある。昨年以降に Rumpus を購入したユーザーには Rumpus 2.0 へのアップグレードは無料、それ以外のユーザーのアップグレードは Standard 版(ユーザーアカウント数が32 まで、同時使用ユーザー数が 32 まで)が $80 で Professional 版(同時接続数が 256まで、ユーザーアカウント数はメモリの許す限り無制限)が $130 となる。新規購入は Rumpus Standard が $250 で Rumpus Professional が $395 という標準小売価格となっている。[ACE](永田)

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06415>(日本語)Mac OS X の FTP サーバ追加情報
<http://www.maxum.com/rumpus/>

Interarchy 5.0.1 がバグを修正 -- Stairways Software が Interarchy 5.0.1 を発表した。この定番のインターネットファイル転送・ユーティリティの今回のバージョンでは、多数のバグが修正されているが新機能は何もない。(TidBITS-593 の記事“FTP Disk 機能が Interarchy 5.0 の目玉”を参照。)今回のアップグレードはすべての Interarchy 5.0 ユーザーに対して無料で、すべてのユーザーがアップグレードするように強く勧められている。アップデータは存在しない。Interarchy 5.0 のユーザーは 3 MB のフルパッケージをダウンロードして、バージョン 5.0 のアプリケーションフォルダを新バージョンのもので置き換えることになる。[ACE](永田)

<http://www.interarchy.com/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06525>(日本語)FTP Disk 機能が Interarchy 5.0 の目玉

Interface Mafia は悪いインターフェイスをやっつける -- Macintosh ユーザーはインターフェイスのデザインに関して飛び抜けて詳しい知識を持ち、確固とした意見を持っていることが多い。Macintosh のソフトウェア開発者も同様に自分の開発するプログラムのインターフェイスには特別の注意をはらうのが通例なのだが、それでも良いインターフェイスを考案するのは困難な仕事だ。今回、Interface Mafia と名乗る非営利団体がウェブサイトを開設して、情報デザインに関わる論説、リンク、その他の情報を集める活動を始めた。この Interface Mafia ウェブサイトで特記すべきなのは、Macintosh のソフトウェア開発者専門のインターフェイス無料評価サービスである。(将来は他のオペレーティングシステムもサポートするかもしれない。)対象となるのはインターフェイスのデザインの評価のみ(ただしマニュアル・説明書も評価される。これは我々 TidBITS のスタッフにとってはいつも手がけている、一番関心のある分野だ)で、評価・レビューの結果はサイトに公開されて誰でも読んだりコメントを書き込んだりできるようになっている。良いインターフェイス・デザインの重要性を強調してくれ、その上さらに開発者たちに実際的なアドバイスを提供してくれる Interface Mafia に称賛の声を! [ACE](永田)

<http://www.interfacemafia.org/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=04865>(日本語)ドキュメンテーションの死


ちょっと薄暗い電球

文:Jeff Carlson <jeffc@tidbits.com>
訳: 倉石毅雄 <takeo.kuraishi@attglobal.net>

Palm OS ベースのハンドヘルドについての本や記事を書くために色々なハンドヘルドオーガナイザ機種をテストすることが多いのだが、Palm Vx は常に手許に置いてある。試用した機器は返還しなければいけないし、自腹を切ったのはPalmVx だけだからだ。薄く、軽量で、必要とするデータを保存できるだけのメモリを内蔵している。返還したモデルのうちで試用期間中、PalmVx の替わりになる可能性があったのは Handspring の Visor Edge と Palm の m505 の二つだけだった。

<http://www.handspring.com/products/visoredge/>
<http://www.palm.com/products/palmm505/>

Edge は薄く軽量で美しいデザインをしているが、Vx を越えるだけの機能はない。Vx と同様の機能ながらカラースクリーンを備えた m505 が発表になった時、クレジットカードの請求書に表れる寸前まで行った。寸前まで。

表面反射 -- 私はおそらく機能よりも形状と外見を意識しすぎてしまったのだろうが、単に外見を気にしていた訳だけではない。薄いハンドヘルドは持ち運びが楽で、持ち易く、シャツのポケットに入れても目立たない。Visor Prism や Palm IIIc のようなカラーの機種はどこへも持ち運ぶにはかさばる気がすぎる。

<http://www.handspring.com/products/visorprism/>
<http://www.palm.com/products/palmiiic/>

私の Palm Vx はがたがきはじめていただけでなく、そのデザインの限界も明らかになっていた。電源ボタンはもともとあまり接触が良くなかったのだが、強く斜めに押さないとつかなくなって来ていた。それ以上に困ったのは(ズボンのポケットに入れている時など)上のスクロールボタンが、付属でついていたフリップカバーにあたって、アラームがなった後、電源が入りぱなっしになってしまうことだった。この問題の解決に PalmVHack などの System hack をインストールしてみたが、必ずしもうまく働かなかった。Palm V 用ハードケースも役に立つのだが、折角の薄さを損なってしまう。おかげで、何度かボタンが押しっぱなしになり内蔵電池が空になり、データを失ってしまった。

<http://www.rgps.com/>
<http://www.palm.com/products/palmvx/accessories.html>

Palm m505 ではこの問題が解決されたことからも Palm がこれらの設計ミスを認識していたことは明らかだ。スクロールボタンは小さく平らで、電源ボタンはしっかりした作りになり、なんとバッテリを充電しているときには点灯までする。(無音で点滅するアラームとしても使用出来る。)ケース設計は Palm Vx からは少し変わり、横の曲線が少し強調され下部の広がりが減って、がっちりした感じだった先駆者からさらに頑丈に感じられる。

拡張と接続 -- 他の面でも Palm m505 は進化している。小さな切手サイズのメモリカードの Secure Digital と MultiMediaCard を挿入できる拡張スロットを備えており、デジタル写真、電子本、重要なファイルなどのデータを保存できる。以前の Palm ハンドヘルドに使用されていた低速のシリアルポートの代わりに m505 は Palm の USB ベースの Universal Connector ポートを使用している。このため周辺機器製造会社は Palm のコネクターに対応できるよう、また機器を設計しなおさなくてはならない。今度は Palm は当分の間、Universal 設計を維持するようだが。(Palm V が発売された直後は、ピン設定が異なっていたためキーボードなどの周辺機器が少なかった。)

<http://www.palm.com/products/accessories/expansioncards/>

良いニュースとしては HotSync クレードルを使用してのシンクロナイズが USB ではかなり速くなった点が挙げられる。悪いニュースとしてはクレードルからハンドヘルドを取り外すのは面倒になった点だ。m505 を押さえているクリップのため、45度ほど傾けてからクレードルから持ち上げなくてはいけない。

珠玉混同 -- m505 は Palm OS 4.0 が走る最初の機種の一つであるが、ユーザにとっては改良点は少ない。私の感想ではこのうちの一番は Attention Manager であろう。いちいちアラームをクリアしていくのではなく、とばされたアラームをまとめて表示して1タップでクリアできる。また、マスクされた記録を1つだけクリックしてパスワードを入力することにより表示することが出来、いちいちシステム全体のプライバシー設定を変更しなくて良い。読み終わるとまた見えなくなる。(いくつかの旧モデルの所有者のために Palm は 11月に Palm OS 4.0 のアップデートをリリースする予定である。)

<http://www.palm.com/software/palmos4.html>

さらに、Palm はサードパーティのソフトを加えた。エクセルやワードファイルをハンドヘルドで操作するための DataViz の Document to Go;今年前半にPalm が買収した Peanut Press の電子本ビューア Palm Reader;(対応する携帯電話を使用して)オンライン接続するための Palm の Mobile Connectivity ソフトウェアなど。そして一番肝心なのは CD-ROM に Macintosh Palm Desktop が含まれていることである。旧モデルの所有者は別売りの変換ケーブルを買うか、Palm からデスクトップソフトをダウンロードする必要があった。

<http://www.dataviz.com/products/documentstogo/>
<http://www.palm.com/ebooks/>
<http://www.palm.com/software/mobile_connectivity.html>

ではカラースクリーンは? -- では Palm m505 の一番の売りについては?私がクレジットカードを引っ張り出しかけた理由は Palm Vx 形状と65000色を表示できるスクリーンの組み合わせだったのだから。

実は m505 のスクリーンは暗い。私のオフィスの照明は低めなのだが、そこで初めて電源を入れたとき、カラースクリーンかどうか自信をもてなかった。バックライトをつけたらかなり良くなったが、それでも Palm IIIc や Handspring Visor Prism に比べてかなり暗かった。そして驚いたことに明るさ調整がなかった。バックライトは入か切しかない。

よく言えば、スクリーンの明るさが弱めなので電力消費が少なく、電池が長持ちし、日光の下では見やすい。多くのカラーハンドヘルドの二つの弱点である。また Palm からアプリケーションをダウンロードして、前回のバックライト設定を記憶させ、実質バックライトをつけっぱなしにすることが出来る。(505LightOn というプログラムのほうがもっと便利だが。)その光量になれた後はあまり問題でもなかったが、友人の Visor Prism をみたらその明るさが羨ましくなってしまった。

<http://www.palm.com/support/m505/backlight_utility.html>
<http://tipandgo.com/products/505light.html>

最後にまとめれば Palm m505 は Palm Vx の短所を直し、この素晴らしい形状にカラーを加えた。私が次に買う機種はカラースクリーン付きの予定だが、残念ながら Palm m505 の薄暗さでは 450ドルの値段を正当化できない。それが改善されるか他の会社がもっと良いものを提供するまで、私はちょっと傷ついた Palm Vx を手放すつもりはない。(Sony の Clie PEG-N710C はもう少しのところだったが。)

<http://www.sonystyle.com/micros/clie/models/710.html>


Photoshop 6 のパワーを最大限に引き出す

文: Iain Anderson <iain@funwithstuff.com>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>
校: 溝畑 考史 <mizo-tid@grf-design.com>

Adobe Photoshop 6 はプロフェッショナル用の画像エディタとして世界一の座を得ている。そのデザインの奥深さ、機能の豊かさは私の知る限りどんなプログラムにも勝っている。その機能の奥を究めようとすればあまりの複雑さに圧倒されてしまうのは事実だが、多くのユーザーにとっては Photoshop の能力のほんのうわべだけでも充分すぎるほどなのだ。一日中 Photoshop に向きあって印刷用に画像を整えているあなたも、また週のうちにほんの数回 Photoshop を使ってウェブ画像やデジタル写真に手を入れるだけのあなたも、ちょとしたこつを掴むだけで画像処理の苦労がぐっと楽になるはずだ。以下では、まず最新のバージョンで導入された新機能をいくつか紹介してから、毎日の作業をスピードアップしてくれる、あまり知られていないショートカットをリストアップしてみよう。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05793>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbpoll=24>

仕事場にスペースを確保する -- Photoshop のパレットの余りの多さに圧倒されたことは? あるいは、早く2台目、3台目の Apple Cinema ディスプレイが届いてマルチスクリーンで仕事をする日になれば、と待ち焦がれているのでは?複数のパレットを1つのグループにまとめる(例えばナビゲータや情報のドッキングパレット)ことはできるのだが、それでも時には必要なパレットが画面上に配置しきれないことがある。そこで役に立つのが新機能のツールオプションバーだ。これはメニューバーの直下に置かれていて、同名のこれまでのパレットに代わって現在選択されているツール関係のコントロールおよびパラメタを表示する。バーの右端にはパレット格納エリアがあって、他のパレットをすべてここにまとめていつでも使えるようにしている。どんなパレットでもそのタイトルタブをこの領域にドラッグすればそこに格納される。そのパレットを使いたい時には、そのタイトルタブをクリックすればその場所にパレットが現われる。

パレットをあちこち動かしたりせずに素早く仕事のスペースを確保したい時は、Tab キーを押せばすべてのパレットが隠れる。Shift-Tab はツールパレットとオプション以外のすべてを隠す。Tab または Shift-Tab をもう一度押せばパレットが再び表示される。

隠されたベクトル画像 -- Macromedia Flash、Adobe Illustrator、Macromedia Freehand などのユーザーなら、ベクトル画像の威力にはなじみがあることだろう。Photoshop は原則としてピクセル単位での処理によって豊かな写真効果を表示・再現するわけだが、それに対して上記のようなベクトル画像処理のアプリケーションでは解像度によらないスムーズな直線とか図形とかの実現が可能になる。これらのアプリケーションも最近のバージョンではピクセル処理とベクトル画像処理の垣根を越えて、これまではくっきりとしていた線をぼかすようになり、アーティストたちがより複雑なグラデーション、塗り、透過などの効果を使いこなせるようになってきている。

Photoshop も、今ではベクトル画像の利点のうちいくつかを利用できるようになった。ただしこれもあくまでもビットマップの観点から、ということだ。まず、解像度によらないベクトル図形が作成・編集でき、それを個々のレイヤーに対するクリッピングパスとして使用できる。また、テキストを図形に変換して、それを編集できる。(例えば dingbat フォントの記号を変形したりできるのが嬉しい。)カスタマイズした図形は保存して後で再利用ができ、図形のライブラリーを友人と交換したりすることもできる。

Photoshop のレイヤースタイル効果(これまではレイヤー効果と呼ばれていた)はベクトル画像に基くもので、グラデーション塗り、光彩、ベベルなども含んでいる。画像を PDF ファイルとして書き出す時も(画像の補間およびベクトルデータを含めるオプションをオンにしておけば)レイヤースタイルやベクトルシェイプは解像度によらなくなる。こうしておけば画面上でクリーンに表示され印刷の仕上がりも完璧だ。

ただし PDF ファイルを印刷サービス店に送って印刷してもらう場合は注意が必要だ。印刷機によってはまずビットマップ(例えば TIFF ファイル)にファイルを変換してから印刷処理をするものがある。この場合にはベクトル画像情報は消えてしまう。ジョブ内容によってはこの解像度変更によるロスは気にならない程度のものかもしれないが、とにかくあらかじめ印刷業者にあなたの意図を伝えておくことが肝要だろう。

自由にタイピング -- テキストツールを使ってキャンバスの中でクリックし、直接そこにテキストをタイプして打ち込むことが、やっと可能になった。そればかりではなく、Adobe のページレイアウト関係のコントロールも装備された。例えば各種の行整形オプション、インデント処理、行間隔およびパラグラフ間隔、フォントのコントロールなど。パラグラフ間隔?そう、通常のタイプレイヤーをテキストのパラグラフに変換できるのだ。(このコマンドはレイヤーメニューの文字サブメニューにある。)これでそのレイヤーは一般のページレイアウトプログラムにおけるテキストボックスと同様に扱えるようになる。パラグラフの幅や高さをコントロールしたり、各行の終わりでテキストを折り返したりできる。さらにまた、画像を PDF として書き出す際にテキストのフォント情報を含めるのかそれともテキストをパスとして定義するのかを選ぶオプションも新設された。

Adobe の追加してくれた新コマンドの1つにワープテキストがある。あらかじめ指定した多数のパスや歪みにテキストを沿わせることができるのだ。パスの修正もある程度柔軟にできるようになっている。もっともこれは専門のドロー系プログラムでのパス上文字オプションに比べれば見劣りがするのだが。

レイヤーを積み重ねる -- 白紙のキャンバスは、ただの1枚の平らなスペースだけなのではない。何枚もの透明なクリヤーシートが重なっていると想像して欲しい。それぞれのシートに絵を描いたり、複製して、移動し、隠し、修正し、そういったことが自由にできるのだ。これらのシートのそれぞれを Photoshop は「レイヤー」と呼ぶのだが、これが重要な概念なのだ。Photoshop 6 ではこのシートの数がメモリの許す限り無制限になっている。(バージョン5.5 では 99 枚までの制限があった。)レイヤーパレットには個々のレイヤーについて透過ピクセル、ピクセル値、ピクセル位置のそれぞれ、または全体をロックするチェックボックスが新設された。(訳注:Photoshop 6 日本語版のヘルプには“1つの画像あたり、合計で最大8,000のレイヤー、レイヤーセット、レイヤー効果を組み合わせて使用でき・・”とあります。)

最も基本的なレイヤーの操作は、1つのレイヤーを他のレイヤーの上に、あるいは下に、移動することだ。これはただクリックしてドラッグするだけだ。次によく使う操作は安全のためのもので、編集したいレイヤーをまず複製して、複製の方を編集し、結果に満足がいけば編集後の方を残す、というわけだ。こうすればすべての編集作業が安心してでき、いつでも元の方に戻れるからだ。

このレイヤーの複製という作業ひとつを見ても、Photoshop というプログラムの奥深さを示す特性の1つを窺い知ることができる。すなわち、1つの作業を達成するためにたいてい複数通りの方法が用意されているのだ。この場合は、レイヤーの複製に3通りの方法がある:レイヤーパレットのポップアップメニューからレイヤーを複製を選ぶか、レイヤー名を control-クリックしてレイヤーを複製を選ぶか、レイヤーをパレットの一番下にある新規レイヤーを作るアイコン(1つの角を折曲げた紙のようなアイコン)にドラッグするか、の3通りだ。私の場合はレイヤーの複製を始終実行するので、時間の節約のためにアクションの保存(一連のコマンドを実行できる Photoshop の内部スクリプト)をしてそれをファンクションキーに割り当てている。これで、いつでも単にレイヤーを選択して F6 キーを押すだけでそのレイヤーが複製される。(F6 キーは私が勝手に選んだのだが、今やこれが習慣になってしまった。)

レイヤー全体を複製するまではないという場合、例えば写真から木を1本だけ取り除きたい場合や赤目効果を除去したい場合などには、別の方法もある。選択またはなげなわツールで画像の一部を選択し、それから command-J を押せば、コピーしたレイヤー(これはレイヤーメニューの新規サブメニューから選ぶこともできる)すなわちその選択域のみが新規レイヤーにコピーされるのだ。もとのレイヤーには変更はない。ただし、このコマンドをカットしたレイヤーコマンドと間違えてはいけない。こちらはもとのレイヤーから選択域を切り取ってしまい、切り口にはピクセル消去の汚らしい跡が残ってしまうからだ。

レイヤーというのはもともと画像のいろいろな要素を別々に扱うためのものだったのだが、下にあるレイヤーに修正を加えるために追加する、いわゆる“修正レイヤー”というものもある。例えば、画像のコントラストやカラーレベルを変えるためには、単に最上部に修正レイヤーを別に追加してその修正レイヤーでセッティングを指定するだけでよいのだ。こうすることで、元の画像データを変更することなしに画像の修正ができ、さまざまの設定を試してみたり元の画像に戻ったりするのがとても簡単になる。これらのレイヤーは手軽な透明セットに整理しておくことができ、整理したセットは移動したり隠したり修正したりもできる。

いくつかのツール(特にテキストツール)はどんどんと勝手に新規レイヤーを作り出す。これは大局的に見て決して悪いことではない。例えばテキストレイヤーにレイヤースタイルを適用して特殊効果を施すことができる。しかし、テキストレイヤーというものは固有のフォーマットを持っているものだから、例えばフィルターをかけたり手書きの効果を加えたりする場合には Photoshop はまずそのテキストをラスタライズ、つまりピクセルに変換しなければならない。この際にはテキストとして編集したりスムーズさを保ってサイズを変えたりすることはできなくなる。

このラスタライズを避けるにはどうしたらよいだろうか。それには昔から頼りになる方法、レイヤーのグループ化がある。(レイヤーのグループ化をレイヤーのリンクと混同してはならない。後者は単に2つのレイヤーを連結して1つのレイヤーに変えるだけのものだ。)グループ化されたレイヤーはそれ以下にあるレイヤー中のアクティブなピクセルのみに作用する。例えば、“TidBITS ”という単語に、単一色の代わりに TidBITS スタッフの写真を埋め込んでみたいとしよう。まずテキストツールで TidBITS という単語をタイプすると、自動的にそれは新規のレイヤーに現われる。それから、その上にスタッフの写真のレイヤーを置く。写真のレイヤーを選択してレイヤーメニューの下のレイヤーとグループ化コマンドを選ぶか、またはレイヤーパレットで2つのレイヤーの間をoption-クリックするかすれば、単語の外側のピクセルはすべて透明になり、単語自体は写真の該当する部分で埋め尽くされる。その後でテキストレイヤーにレイヤースタイルを適用したり、ラスタライズしたり、またはさらに編集することも可能だ。2つのレイヤーは互いに独立なので、それぞれ独立に移動したり編集したりできるのだ。

レイヤーのグループ化は修正レイヤーを使っていてカラーレベルなどの設定を変更したい時にも便利だ。先ほど述べたように、修正レイヤーというのはそれ以下のレイヤーに適用される設定を内容としている。あなたの画像が複数のレイヤーから成っていて(もちろんたいていの場合はそうなっているはず)修正レイヤーの設定をすべてのレイヤーには適用させたくないような場合、修正レイヤーをその設定を施したいレイヤーのみとグループ化させれば、その設定はそのレイヤーだけを規定するようになる。

キーは踊る -- Photoshop の機能の多くはキーボードのコマンドのみでしかアクセスが可能でないようになっている。そのうちのいくつかは頻繁に使う便利なものなので、重要なもののいくつかは覚えてしまうことを強く勧めたい。例えば、ブラシまたは消しゴムツールで2つの点を shift-クリックすればその2点を結ぶ直線が描かれる。

Photoshop の最も重要なショートカットの大部分はここ数年の間変わっていないのだが、いくつかのツールのショートカットは変わってしまった。ツールのショートカットを知りたい時は、マウスカーソルをそのツールの上にちょっと持ってくればよい。しっかりと覚えたい時は、プログラム付属のクイックリファレンスカードを見ればよい。例えば、M は 選択 ツール、B は ブラシ、E は 消しゴム、という具合だ。以前のバージョンでは、同じキーをもう一度押すとツールオプションの移動ができた。例えば楕円選択ツールと長方形選択ツールでの移動はこの方法で行なった。これに対して Photoshop 6 では同種の別のツールに移動するには Shift キーを追加するように変更された。慣れるまでは使いにくいと思ったが、指はすぐに慣れてくれるものだ。

他のよく使うキーとしては、背景および前景のカラーをデフォルトカラーにする D キーや背景カラーと前景カラーを入れ替える X キーがある。これらはたしかに便利だが、クイックマスクの Q キーのことをマスターするまではまだその真価は見えていないはずだ。大きな範囲を選択するのになげなわ、選択、自動選択ツールではうまくいかないと悩んでいるなら、それはきっとそういうツールがベストの方法ではないからなのだ。クイックマスクを使えば好きなブラシを使って「上張り」として選択域をなぞり書きするだけでよい。この時 D や X のキーが手軽にペイント(黒)や消去(白)の作業をしてくれる。いちいちツールの変更やカラーピッカーを開く手間もいらない。もう一度 Q を押せばもとの画像に戻り、クイックマスクで描いたピクセルの部分が選択されている。(選択範囲はお馴染みの「蟻の行列」の線で囲まれている。)

ある領域が選択された状態で、または空のレイヤーでさえ、option-delete を押せば前景カラーでそれが塗りつぶされる。また command-delete を押せば背景カラーで塗りつぶされる。shift-delete ではさらにいろいろのオプションを提供するダイアログが現われる。カラーの塗りつぶしは、もはやシェイプやレイヤースタイルの塗りオプションほど流行の先端に乗ったものとは言えなくなってしまったが、それでも依然として素早く使えて便利な機能の1つだ。

回転やクロップも簡単 -- スキャンした画像を回転したりクロップしたりするのも簡単だ。これは Photoshop 5.x でも簡単だった。ものさしツールをまずは見つけ出そう。実はスポイトツールの下に隠れている。スキャンした写真の縁にできるだけ沿って左から右へ直線をドラッグし、その直線から手を離す。次に画像メニューの画像回転サブメニューから角度入力を選び、OK を押す。するとものさしツールで設定された角度が自動的に画像回転ダイアログに適用され、画像が回転する。

しかし、画像のクロップも同時に実行するのならばもっと手軽な方法もある。切り抜きツールを選んで、スキャンした写真のまわりにおよそのクロップ領域をドラッグする。クロップした領域の外側を(境界のハンドル以外の部分で)クリック・ドラッグして回転させる。写真の角度を合わせ、中央のハンドルをドラッグしてクロップ領域を持ち込めばよいのだ。Enter キーを押してクロップを承認すれば、画像の回転とクロップとが一度に済んだことになる。

最後にもう一言: Photoshop は、大多数の Mac インターフェイスと同じく、アプリケーション内でショートカットが首尾一貫している。Enter キーは常にダイアログを承認するし、Escape キーは常にダイアログをキャンセルする。キャンセルボタンを option キーを押しながらクリックすれば(または option-Escape を押せば)ダイアログが初期状態にリセットされる。ほとんどのオプションフィールドでは上下矢印キーが選択値を増加・減少させるし、その際 shift キーを加えれば値が 10 を単位に変化する。

Photoshop ではこうした「裏技」を覚えれば覚えるほどそれだけ成果が上がる。まずはいくつかキーやショートカットを覚えることから始めてみよう。その学習曲線は長年にわたるかもしれない。またその曲線の傾きは時によって変化するだろう。しかしいつの日にか、あなたもそうした裏技のとりこになるだろう。Photoshop の場合、裏技はいつもあなたの味方なのだ。

[Iain Anderson は印刷、マルチメディア、動画のデザイナー / 開発者で、現在ロンドンで活躍中。彼の Mac 使用歴は 10 年以上にわたり、現在は Adobe のベータテストプログラムに参加しようと工作中のようだ。]


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Valid XHTML 1.0! , Let iCab smile , Another HTML-lint gateway 日本語版最終更新:2005年 12月 26日 月曜日, S. HOSOKAWA