TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#611/07-Jan-02

本日の Macworld Expo の基調講演は Apple の基準から言っても高いといえる期待をあおる波にのってのお目見えとなった。そして出し物は 15インチ LCD iMac, iPhoto, それに 14.1インチスクリーン付きの iBook であった。現実は期待にそえたのか? Jeff と Adam が現場からお伝えする。さらに、Mac OS X 10.1.2, BBEdit 6.5.1, Nisus Writer 6.5, Classic 専用の Internet Explorer 5.1 のリリースについて、そして PowerBook G4 用の Combo ドライブと Microsoft Office X Test Drive の入手可能状況についてお伝えする。

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MailBITS/07-Jan-02

PowerBook G4 Combo アップグレード 1月14日に始まる -- PowerBook G4 Titanium の新しい Combo ドライブに関する我々の記事の通り、Apple は PowerBook G4 Combo Upgrade Program を発表した。このプログラムのもとでは、550 MHz か 667 MHz のプロセッサ付きの PowerBook G4 Titaniums の所有者は(もしどちらか定かでなければ Apple System Profiler をチェックの事)、元々の DVD-ROM または CD-RW ドライブを $300 で DVD-ROM/CD-RW Combo ドライブと交換できる。このプログラムの詳細については Apple の Web サイトで 1月14日に明らかにされるはずだが、対象の PowerBook を Apple に送るか Apple Store に持ち込むかの形態となるであろう。このプログラムは2002年3月30日で打切りとなるので、アップグレードをしようと思う人は早めに申し込むことをお勧めする。[ACE](カメ)

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06663>
(日本語) PowerBook G4 Titanium に Combo Drive が付く
<http://www.info.apple.com/usen/powerbook/upgrade_faq.html>

Internet Explorer 5.1 Classic 対応となる -- 普通とはちょっと違う動きながら歓迎すべき事として、Microsoft は Internet Explorer 5.1 - これまで Mac OS X のみであった- を多少の機能を加え信頼性を改善して Mac OS 8.1 から 9.2までのためにリリースした。Internet Explorer 5.1 の機能構成は 5.0 からほとんど変っていないが、Mac OS X 用の Internet Explorer 5.1 で採用された数少ない新機能が追加されている。まず新しい Interface Extras 初期設定パネルで見栄えに関する多少の設定ができる:Address フィールドをクリックすることでテキストを選定するのか或は挿入点とするのか、他のアプリケーションで新たな URL に行くよう指示されたとき、Internet Explorer が新しいウィンドウを開くのか或は前面のウィンドウを使うのか、さらに、新しいブラウザウィンドウを開く時にツールバーを表示したままなのか或は現在のデフォルトの設定に従うのかの設定。他の有用な機能にCommand-Shift-click ショートカットがあり、これでクリックオンしたリンクを新たなウィンドウとして現在のウィンドウの裏に開ける。また、これまでのNTLMv1 対応に加えて NTLMv2 認証対応にまで拡大されている。Internet Explorer 5.1 for Mac OS 8.1 through 9.2 は少なくとも仮想メモリオン状態で 16 MB の RAM と 12 MB のディスク空間が必要である。5.3 MB のダウンロード。[ACE](カメ)

<http://www.microsoft.com/mac/DOWNLOAD/IE/ie51.asp>

Mac OS X 10.1.2 修正を盛りこむ -- 新年を迎える直前に、Apple は Software Update 経由で Mac OS X 10.1.2 へのアップデートをリリースした。数多くの機能強化とバグ修正(そして従前のアップデートよりはずっとましなリリースノート付きで)が盛りこまれている。このアップデートでは USB と FireWire サポート(FireWire ベースのデジタルカメラのサポートを含んで)が改善され、PC Card ストレージ機器とメディアリーダのサポートが加えられ、CRAM-MD5 認証対応に Mail がアップデートされ、AirPort 2.0 が組み込まれ、Apache を 1.3.22 にアップデートし、来るべき AppleScript Studio で必要となる AppleScript 1.8 を提供している。バグ修正はその内容は具体的には説明されていないが、オーディオ、ディスプレイ、スピーチ、ネットワーキング、File Manager、そして印刷がらみでなされている。さらに Software Update 経由で数多くのプリンタドライバがリリースされた - もしまず絶対に使いそうもないものが繰返し出てくるのがいやならば、それらを選択し Update メニューから Make Inactive をクリックすればよい。[ACE](カメ)

<http://www.apple.com/macosx/upgrade/softwareupdates.html>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06667>(日本語)AppleScript のしっかり者 Studio

無償の Microsoft Office X Test Drive -- 最近の Microsoft Word X for Mac OS X の Test Drive バージョンに続いて、Microsoft は Mac OS X 用のアプリケーションである Microsoft Office X スウィート全体の無償の Test Drive バージョンを発表した。これには、Word, Excel, PowerPoint, それに Entourage の Mac OS X バージョンが含まれている。この Test Drive は 30 日間有効でユーザーは Office X の機能とパワーを実際に体験できる - Office X の本番品のほとんどすべての機能が Test Drive に盛り込まれている。この Test Drive は現在のところ 122 MB という巨大なダウンロードとして出されているが、1月14日以降は、合衆国及びカナダのユーザーは小額の取扱い手数料と送料で CD-ROM 版を注文できる。Office X は Mac で Mac OS X 10.1 かそれ以降を必要とする。

<http://www.microsoft.com/mac/officex/otdreg.asp>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06581>(日本語)Microsoft 社 Word X Test Drive を提供
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06637>(日本語)Microsoft Office X 出荷
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06514>(日本語)Microsoft Office 10 のアメとムチ

加えて、Apple と Microsoft は Mac OS X と Office X を購入する顧客を対象にメールインリベートプログラムを発表した。新しい Mac を Office X 付きで購入すると $150 のリベートの対象となる;新しい Mac を Office X アップグレード付きで購入すると $75 のリベートの対象となる、また Mac OS X と Office X か Office X アップグレードを購入すれば $50 のリベートの対象となる。これらのリベートは 2002年3月31日まで実施される。[GD](カメ)

BBEdit 6.5.1 のバグ修正やマイナー機能の追加 -- Bare Bones Software からリ リースされたBBEdit 6.5.1 では、JSP (Java Server Pages) のサポート、修正された キーボードショートカット、インタフェースの調整、そしてスクリプトへの小さな改 善などが加えられた。小さなバグ修正のリストは広範囲にわたる(製品のリリース ノートの書き方の手本と言っても良いものだ!)。もし BBEdit 6.5 を少しでも本格 的に使用しているのであればこの無料のアップデートは必須だろう。7.3 MB のダウン ロードだ。[ACE] (倉石)

<http://www.barebones.com/products/bbedit.html>
<http://www.barebones.com/support/bbedit/bbedit-notes.html>
<http://www.barebones.com/support/updates.html>

Nisus Writer 6.5 にアウトラインや Document Manager が追加される -- Nisus Software は、Nisus Writer 6.5 を携えて年末直前に大きなリリースをするという年末時の伝統に参加した。これは当社のパワフルなワープロソフトへの大幅な改正版だ。新しいアウトライン機能は何年も要望があったものだ。必要な基本的アウトライン機能はそろっているようだが、これがどれだけ変幻自在のものなのかはしばらく使ってみた後でないと実感できないだろう。また、新しい階層式のDocuments メニューからアクセスするDocument Managerも新しい。これは書類へ素早いアクセスを可能にする。他の小さな変更点としては、コピーされた段落の貼り付け方の変更、Catalog ウィンドウに32文字以上タイプするとクラッシュするバグの修正、脚注のインポートとエキスポートの修正などがあり、さらに、新しいアウトライン機能との互換を保つためにユーザ定義のスタイルを削除しないよう、Plain Text コマンドが修正された。アップグレードは、Nisus Writer の登録済みユーザは期間限定で 40 ドルだ(通常 50 ドル)。期間限定割引は新規購入(100 ドルではなく、80 ドル)や競合ソフトからのアップグレード(70 ドルではなく、55 ドル)にも適用される。Nisus Writer 6.5 は Mac OS 8.5 以上(Mac OS X では Classicで働く)を走らせている PowerPC ベースの Macを必要とし、最低 2 MB のRAM を使用する。30 日間有効なデモは 23.1 MB のダウンロードだ。 [ACE](倉石)

<http://www.nisus.com/Products/NisusWriter/Upgrade/VersionChanges.asp>
<http://www.nisus.com/Store/DemoNowRedirect.asp?product=NisusWriter6.5>


Macworld Expo SF 2002 基調講演 : 喝采? それともハッタリ?

文: Jeff Carlson <jeffc@tidbits.com>
訳: 佐藤浩一 <koichis@anet.ne.jp>

人々は Apple 社の宣伝担当をこてんぱにやっつける準備をしていると思いたい。Apple の今まで行なってきたイベントの中でこの基調講演ほど誇大に宣伝されていたものは無く、Apple が発表するのは噂系サイトのレポートなど比較にならないものだとしていた。(Crazy Apple Rumor Site がこれに受けて立ち、最終的にあちこちで立っている噂を越えるには解剖学的に正しいセックスロボットを発表することだけだ、と結論付けた。)

<http://crazyapplerumor.blogspot.com/>

しかし実際の話、Apple が LCD iMac を発表することを期待していなかったのは、土曜日の夜ビンゴトーナメントの勝者が誰になるかが一番のニュースであった人達くらいだ。新しい iMac のデザインはいかした外見であることに間違い無く、また多数の人々がこれが好みかどうかよく分からないといっていた。これは、もしも丸みがなかったらトゲトゲしたデザインと呼ばれかねなかったものにしては、良い前兆なのだろう。

全般的に、このようにかなり誇大宣伝された基調講演の割には実際のプレゼンテーションはもの足りなかった。iMac は別として、iPhoto は話題をさらったが少なくてもここ TidBITS では一年前から予期されていたものだ (詳しくはこの号の“iPhoto がiアプリの仲間入り”を参考されたい)。また、iBook の拡張は、大きい画面のモデルなど仕様上の数値が大きくなっただけだ。私達はMacworld の基調講演に期待し過ぎているのか? いつもはそうかもしれないが、今回は Apple が過熱した期待の責任を取るべきである。

Mac OS X -- Mac OS X の最大のニュースは、全ての新しい Mac のデフォルトオペレーティングシステムとして Mac OS X が採用されたことで、本日発表されたモデルから始まり一月末までに全ての製品 (もちろん iPod は違うと思うが) に渡る予定である。これは私達が予想したよりも早く、率直に言えば時期尚早であると思う。Apple が 2001 年中に Mac OS X を劇的に改善したことは認めるが、例えば Adam と私が Mac OS X でファイル共有とインターネット接続を試みた時にちょうど発見したように、未だ Mac OS 9 のように成熟したレベルには程遠い。Mac をウェブ閲覧やメールを読んだり MP3 を聞いたりあるいはデジタルフォトのコレクションを管理する程度にしか使わないのであれば Mac OS X で充分だが、Mac OS X で出来ないことは簡単に見つけられる。Apple が 2,500 の Mac OS X アプリケーションがリリースされていると主張しているのにも関わらずである。

それでも、基調講演に各メーカーが続々登場するのは歓迎したい。Adobe 社のAfter Effects 5.5 は出荷開始、GoLive 6.0 と LiveMotion 2.0 も発表された(出荷時期は明言されていない)。しかし、最も熱望されている Photoshop は遠回しに約束されただけだった。とりあえず Adobe はデモを行ない、内蔵のスペルチェッカーがあることに沢山の拍手が来たが、これは恐らく文章を書くのにPhotoshop を使う人達からだろう。

基調講演での Mac OS X のハイライトは (基調講演全体の中で、と言っても良いだろうか)、Wolfram Research 社の Theodore Gray 氏だった。“そう、これは数学だ... しかしこのグラフを見よ!”と言いながら Mac OS X 版Mathematica をデモンストレーションした。出演の仕上げに Gray 氏は複雑な数式のモデリングをデモしながら、“これは真空管を設計するのに信じがたい程便利だっただろう”と名言を吐いた。

Lucasfilm 社の Dan Gregoire 氏はビデオクリップでプレゼンテーションを始め、それには George Lucas 監督が観衆を歓迎し、次作の Star Wars: Episode II, Attack of the Clones で 4,000 程のアニマティック (シーンを低解像度でビジュアライズ化したもの) を作成するのにどれほど Mac が使われたかを説明していた。Lucas 氏の目の下の隈から察するに、あまりゆっくり眠れないようで Mac を使ってもあまり助けになっていないらしい。しかし、初期の特殊効果を作成する方法から比べれば改善されたことは明白だ。Gregoire 氏は次にアニマティックデザイナーが Maya for Mac OS X と After Effects を使ってシーンを作成する方法を簡潔に説明した。

iBookの兄貴分 -- 今日まで iBook の兄弟は PowerBook G4 Titanium だけだったのに、実は異母兄がいたなんて誰が知っていただろうか。既に購入可能な 14.1 インチの iBook は、今までの iBook と同じデザインだが 14 インチの画面に合うようわずかに大きくなった。この新しいマシンは、Apple によれば 6 時間持つという大きめのバッテリーを装備している。14.1 インチモデルは、600 MHz の G3 プロセッサ、256 MB の RAM、そしてコンボドライブが付いて 1,800 ドルで販売され、重量は前よりも約 450 グラム程重い。たぶん iMacと Power Mac の間に位置して孤児となった Cube の悲劇と同じ轍は踏まないだろうが、この大きい iBook のほうが価格帯の隙間により適切に埋まる。それより疑問なのは、以前は iBook と PowerBook の一番の違いが画面の大きさだったことにより、Titanium の販売に大きなダメージを与えないかということである。

他の iBook もいくらか注目を浴びた。CD-ROM 付きのエントリーモデルが 100 ドル安い 1,200 ドルに、そして以前までハイエンドだったコンボドライブ付き600 MHz iBook は 1,500 ドルとなった。

フラットパネル iMac -- 新しい iBook でも非常に大きく歓迎された訳ではないことから、観衆は新しいハードウエアの発表、とりわけ噂されているフラットパネル iMac を期待してうずうずしていたのは明白だった。Jobs は、Apple が 1998 年の発表以来 600 万台の iMac を販売したことに触れ観衆を焦らした後、iMac のコマーシャルを連続して流し iMac シリーズの進歩について説明したようだった (目立ったのは Flower Power と Dalmatian モデルについて何も言及されなかったことである)。彼は、さらに素早く印象的な仕様のリストを読み上げていったが、その時私達が本当に見たかったものは他でもない、まだ見ぬそのデザインだった。

ステージの中央にせりあがってきた台の上にあったものは、今まで見たこともない不思議な卓上ライトだった。もちろんこれは正当な描写ではないが、基調講演後このように言われていたことが一番多かった。iMac のオールインワンを継承し、新しいモデルは直径 10.6 インチの白い半球型のベースに全てを、G4 Cube では外付けの大きい塊だった電源をも詰めこんでいる。にもかかわらず、iMac にはファンが付いていないのでほとんど音を出さない。 (訳注 : 実際には可変速度ファンが付いているようだ。) 15 インチフラット画面は、左右に15 インチフラット画面は、左右に 180 度、上下に 90 度回転する調節可能な金属製の支持架の先に付いている。画面自体も前後に傾斜させることができ、さらに支持架を動かした時でも角度を維持する (つまり、画面が垂直なら支持架を動かしても垂直のままである)。画面の周りの枠は自在に支持架を動かすのに便利だ。これから四日間、沢山の人々が Apple のブースにある新しい iMac を我も我もと触りたがるであろうことは間違いない。画面の表示領域は 17 インチ CRT モニタと同じ広さで、1,024 × 768 あるいは補間された800 × 600 の解像度が得られる (外部モニタが接続されていれば 640 × 480も選べる)。

ベース部分は、最初はどちらかというと普通に見えたが、後部を覗き見るとポート類が姿を現わす。FireWire × 2、Pro スピーカジャック、ヘッドフォンジャック、イーサネット、電源、モデム、USB × 3、そして iBook タイプのビデオ出力ポート (ビデオミラーリングのみ)。唯一の電源スイッチは後部左側にあるボタンだが、これはいくぶん使いにくい。特に Apple のキーボードが電源ボタンの機能を持たなくなった現在、なおさらである。正面の白地に白の笑った顔に見えるメディアベイには、構成によりトレイタイプのCD-ROM、コンボドライブ、あるいは SuperDrive が収納される。

さて、iMac のパワーはどうだろうか? ここでは、iMac をコンシューマモデルという言い方は、純粋にマーケティングの副作用である。ローエンドとなる1,300 ドルの構成には、Velocity Engine 付 700 MHz PowerPC G4 プロセッサ、128 MB RAM、40 GB ハードディスク、そして CD-ROM ドライブが含まれる。100 ドル高いミッドレンジモデルでは、プロセッサとハードディスクは同じだが 256 MB RAM とコンボドライブを搭載する。1,800 ドルのハイエンド iMac は、800 MHz G4 プロセッサ、256 MB RAM、60 GB ハードディスク、そして SuperDriveが付く。全てのモデルで、Nvidia GeForce2 MX グラフィックカードを搭載しており、最大 1 GB の RAM をサポート、そして AirPort (日本名は AirMac) 対応である。AirPort (AirMac) アンテナはモニタの外周に沿って配置されているので、電波の到達距離に問題は無いだろう。そして RAM と AirPort (AirMac)スロットには、ベースの底のプレートを外すだけで簡単にアクセスできる。その他のアップグレード、例えばハードディスクの入れ替えはどの程度簡単か現段階では不明だ。

安価になった SuperDrive 装備の Mac の高い需要を見越して、800 MHz iMac は 1 月末には入手可能となる予定で、その他ミッドレンジモデルは 2 月に、エントリーレベルは 3 月に、それぞれ製造が増えるにつれて出回ることだろう。

Apple は新しい iMac を理想的なデジタルハブとして販売するが、その観点に立てば間違い無くそれ以上の能力がある。実際、最大の疑問は、潜在的購入者がこの新しいデザインを受け入れるかどうかにかかっているように見える。Apple が iMac を発表するまでデザインは普通一番最後に考慮するものだったことを考えれば、これは興味深い苦境だ。しかし、この“新しい”iMac が、Apple の提供する唯一の iMac になることに疑問の余地が無いとすれば ( 2 つのローエンド旧 iMac はまだ販売されているが、これは Apple の在庫限りと推測される)、新 iMac の能力は最も懐疑的な目にも印象的に映るに違い無い。特に机の上の作業スペースをより広くしたいと思っている人達なら。


iPhoto がiアプリの仲間入り

文: Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

デザインを一新した iMac とちょっと太った iBook に加えてもう1つ、今日のキーノートで Steve Jobs が発表したビッグニュースは、iPhoto だった。iPhoto は、庭園の草花のごとく林立する PC たちの群れから Mac をはっきりと区別させるべく Apple 社が繰り出した、一連の無料アプリケーションに新規参加するもので、非常に歓迎すべきものに仕上がっている。もっとも、悪く言えばその内容は「見え見え」のものかもしれないが。そしてこの新年、これから出荷される Mac のデフォルトのシステムが Mac OS X になるのに合わせ、iPhoto は Mac OS X 専用となっていて、現在の Mac ユーザーを Mac OS X に移行させる誘因となるべき役割も担っているようだ。

<http://www.apple.com/iphoto/>

iPhoto のどこが「見え見え」かというと、まずはこの iPhoto という名前、これは一年前に Apple がコンシューマー・レベルのアプリケーションに力を入れることがはっきりし、デジタルカメラで撮った写真を管理するアプリケーションを出すだろうと予測された時点で、我々でさえもがまず一番に考えついた名前だった。いずれにしても、もしも Apple 社が本気で Mac を「デジタル・ハブ」にしたいと考えているのなら、デジタル写真の扱い方に関しても、これまでより一歩も二歩も進んだものを提供する必要があった。そして、強力な機能を満載した画像カタログプログラムはこれまでも多数存在していたけれども、それらはどれも画像処理のプロフェッショナル向けに作られていて、一般ユーザー向けのものではなかったのだ。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06285>(日本語)Macworld SF 2001 のトレンド:写真カタログ

それとは対照的に、iPhoto は明らかにデジタルカメラの平均的な使用者を念頭に置いてデザインされている。(そして、2001年の1年間に U.S. 国内だけで六百万個のデジタルカメラが売れたことを考えれば、これは無視できない市場だ。)iPhoto のインターフェイスは3つの区域に分かれていて、ちょっと iTunes にも似ている。左側の区域は、iTunes でのプレイリストに代わってユーザーの作ったフォトアルバムを管理する領域になっていて、基本的ないくつかの機能のコントロール(フォトアルバムを追加、スライドショーを上映、画像またはアルバムの情報を表示・設定、画像の回転など)が配置されている。一番大きな右側の区域は1つの画像、または複数の画像の(サイズもスケール可能な)サムネイル、を表示する。第3の区域は iPhoto ウィンドウの下辺に沿って横一杯に拡がっていて、現在の表示モードによって変化し、追加の情報表示やコマンド入力などを扱う。

読み込みと整理 -- 写真を iPhoto に読み込むには、サポートしているデジタルカメラやカードリーダーに接続するか、またはハードディスクに存在している画像ファイルを読み込むか、のいずれかになる。(Apple のウェブサイトには、サポートしているデジタルカメラ、カードリーダー、プリンターの一覧表がある。)この読み込みは、ハードディスクからの場合でさえも、決して高速とは言えないが、それでも操作は1回だけで済む。iPhoto はファイルを Finder に保管する際にちょっと変わった方式をとる。そのホームディレクトリの中の“Pictures”フォルダの中に、日付に基づく巨大なフォルダ階層を構築して、ファイルをその中に整理するのだ。例えば、私の“2001”フォルダの中には私が写真を撮ったことのある月ごとに番号のついたフォルダができ、それぞれの月のフォルダの中には日ごとのフォルダができる。そのフォルダの中にその日に撮った写真の個別のファイルが順に番号を付けて保存される。同じフォルダの中に iPhoto が使用するメタ・データを記録するための各種の別ファイルもあって、アルバムやキーワード、タイトルなどの情報を保管している。1つの利点として、(そしてこれはあなたがどんな写真を保存しているかによってとんでもない結果を生むことにもなりかねないが)iPhoto の保管した画像はすべて Mac OS X の“Slide Show”スクリーンセイバー・モジュールで自動的に利用されるのだ。

<http://www.apple.com/iphoto/compatibility/>

いったん iPhoto で保管された画像は、さまざまの方法で整理することができる。[Organize]ボタンをクリックすれば、iPhoto は整理モードになる。このモードで、アルバムを作ったり、アルバムに写真を追加したり、ウィンドウ下辺のコントロールを使ってキーワードを付加したりもできる。デフォルトのキーワードを変更したり、また最大 16 までの新しいキーワードを作ったりもできる。[Edit]メニューの[Edit Keywords]コマンドを選べばキーワード編集モードに入ってこの作業ができる。このモードのインターフェイスはちょっと見苦しくて使いにくいが、まあそれほど頻繁に使用するわけではないので我慢できるだろう。個々の画像に名前を付けることもできる。画像を1つ選択して、左側区域にある[info]ボタンをクリックすれば、その画像についての各種情報、日付、画像サイズ、ファイルサイズ、ユーザー定義のコメントなども表示される。私は個々の画像に名前を付けることはあまり勧めたくない。手間がかかる割には結局役に立たないことになってしまうものだからだ。(あなたがごく一般的タイプの人なら、あなたの撮った写真のほとんどは結局同じような題材のものになりがちで、そうなると終始一貫した名前を付けるのは難しくなっていくだろう。)チェックボックスが2つあって、サムネイルの脇にタイトルやキーワードを表示するかどうかを指定でき、さらに3つ目のチェックボックスを使えば、サムネイル表示領域を“フィルム一巻”単位で分離線によって区分して表示するかどうかを指定できる。この“フィルム一巻”というのが、いつ画像を iPhoto に読み込んだかによって画像をグループ分けして整理するための概念なのだ。

整理のためにアルバムとキーワードとをどう使い分けるべきかを判断するのは、ちょっと難しい。画像にキーワードを指定しておけば、キーワードコントロールをクリックするだけでそのキーワードにマッチする画像だけがすべて表示される。つまり、キーワードを使ってもアルバムによっても、どちらもまったく同じ整理の効果が得られるのだ。私の推薦する方法はこうだ。(ただし、この原稿を書いている時点で私はまだわずか数分間しかこのプログラムを経験していないことを忘れないで欲しい。)アルバムは、今後二度と使いそうもないような一回限りのラベルに使い、キーワードは、ほとんどどんな写真にも適用できるようなたぐいの分類分けに使う、という方法だ。加えて、アルバムによる指定は、後述する「写真集」を作る際には必須のものとなる。

画像の編集 -- たいていの画像カタログプログラムで感じる不満は、画像に加えることのできる編集機能が回転操作のみに限られていることだ。確かに画像の回転は普通の人がまず第一に必要とする操作だろうし、iPhoto でももちろん[回転]ボタンはすべての表示モードで使える。編集モードでは、このボタンは一回り大きいものになる。どちらの場合でも、ボタンをクリックすれば画像が反時計回りに回転し、Option-クリックすれば時計回りに回転する。

しかし iPhoto の編集機能はそれだけではない。さらに3つの機能も加わっていて、これだけあれば事実上ほとんどの必要に対処できるだろう。まず、画像のクロップができる。クロップの作用を指定の画像サイズに限定することもできる。次に、領域を選択しておいてボタンを押すだけで赤目効果を緩和させられる。写真では赤目が起こりやすく、そのままでは悪魔の写真のように見えてしまうからだ。最後に、[Black & White]ボタンを押せば画像が白黒に変換される。これは特に人物写真で効果的だ。整理モードではサムネイルの大きさを設定していたスライダーが、編集モードでは画像のズームイン・ズームアウトに用いられる。それから、[Previous]と[Next]のボタンを使えば編集モードに居ながら素早く画像から画像への移動ができる。すべてのプロセスを通じて、iPhoto は ColorSync を利用して正確なカラー値の維持を図っている。

iPhoto の画像編集機能では充分でないという場合には、ヘルパーアプリケーションを設定しておけば画像をダブルクリックしただけでその画像が指定のヘルパーアプリケーションで開かれる。例えばカラー修正やコントラスト・輝度調整を頻繁に行なう必要がある場合などに便利だろう。個人的には、私は iPhoto の現時点での機能で充分だと思う。それ以上の高度な操作をやろうとしても、私の技術ではたいていブザマな結果に終わるのがオチだからだ。

画像の共有 -- 実は、iPhoto が真に輝いて見えるのは、あなたの写真のコレクションを他の人と共有したりプレゼンテーションしたりする機能なのだ。おそらく最も革新的な iPhoto の機能と言えば、あなたの画像から写真集を作る機能だろう。iDVD での場合と同様にたくさんのテーマを選べ、それぞれの中では、各ページに何枚ずつの画像を入れるかとか、どんなテキストを付けるかとかがカスタマイズできる。残念ながら、この写真集を自分で印刷することはできない。その代わり、でき上がった写真集を印刷サービスにアップロードすれば、上質紙に印刷して粋なリネン装丁のハードカバーに製本してもらえるのだ。この印刷・製本サービスの価格は 10 ページ以内なら $30、それを超えればページ当たり $3 の追加、それに税金と翌週配達の送料がかかる。キーノートの直後に友人の一人がこぼしていた通り、この料金だと祖父母たちに毎年数回ずつ贈り続けるだけですぐに相当な金額になってしまうだろう。(でも、年末のホリデーギフトとしては手軽だから、きっと人気が出るに違いない。)

共有モードをクリックすると、印刷、スライドショー、印刷を注文、写真集を注文、ホームページ、書き出し、という選択肢が現われる。印刷は4つのスタイルで可能だ。コンタクトシート (1枚に印刷する画像の数を選択すれば、iPhoto が自動的に画像のスケーリングをする)、フルページ、グリーティングカード (片側、または両側見開きで各ページ1枚ずつの画像を印刷)、それに標準印刷 (サイズは 4x6、5x7、8x10 の3種類) の4つだ。スライドショーでは、遅延時間とバックグラウンド音楽を指定してスタンダードなスライドショーが上映できる。印刷を注文、を選ぶと Kodak 社のサイトに接続され、選択した画像をさまざまのサイズ(とさまざまの料金)で印刷して指定の住所に郵送してもらえる。写真集を注文、も同様だが、写真集ファイルはすでにあなたのコンピュータ上にできあがっているのだから、指定できるのは注文冊数と郵送先だけだ。ホームページ、をクリックすると、いくつかのテーマから選べばあなたの画像があなたの iDisk にアップロードされ、あなたの Mac.com のピクチャーページに表示される。(ここまで3つの機能の説明は記憶だけを頼りに書いているので不正確なところがあるかもしれない。今これを書いている時点ではインターネット接続ができないので実地に確かめることができないのだ。)最後に、書き出し、を選ぶと画像を個々のファイルとして、あるいはカスタム・ウェブページとしてウェブサーバーへのアップロード用に、または QuickTime ムービーのスライドショーとして友人や家族に贈るために、それぞれのフォーマットで書き出しができる。残念ながら、ウェブページへの書き出しの機能はあまり良いものとは言えない。iPhoto はサムネイルを並べたページを作ってくれ、そのサムネイルをクリックすれば画像が展開されるのだが、次の画像に移るためのナビゲーションさえも提供されていないので、画像間の移動のたびにいちいちサムネイルページに戻らねばならない。私は、サムネイルでも展開した画像でも、どちらも簡単に画像間の移動ができるようなフレーム付きウェブページを生成するプログラムを誰かが考え付いてくれないかと、心待ちにしている。

シヤッターを押して -- iPhoto についての現時点での私の最も大きな不満は、おそらく次のようなことだろう: 今日、多くの家庭では2台以上のコンピュータを持っていて、1つのフォト・ライブラリを複数のコンピュータで共有したいという需要がある。iPhoto はこの切実な需要を完全に無視しているのだ。もしかしたらエイリアスを巧みに使いこなせば実現できるのかもしれないが、今のところ我々はまだ、1つのコンピュータの iPhoto に別のコンピュータ上のフォト・ライブラリを開かせる方法を見つけられずにいる。iTunes でもこの不便はあるのだが、少なくとも iTunes では他の Mac 上の Music フォルダを指定してネットワーク経由で音楽をロードすることはできる。(残念なことに、iTunes はこういうやり方で共有した MP3 トラックをプレイしようとする際にボリュームを自動マウントすることはできない。)

今回我々はまだほんのわずかの時間しか iPhoto に触れてみていないが、それでもこれが Apple に大きな成果をもたらすものになるという確信は、明確に感じられる。多くの人々に PC から Mac への移行(もっとも、公平を期せば、Windows XP にもこれに似た機能を提供する若干のものはあるが)と Mac OS 9 から Mac OS X への移行を促すばかりでなく、iPhoto は無料のアプリケーションでも Apple 社の収入業績を伸ばす力になりうることの見事な実例になっている。印刷や写真集の注文によって現金収入を創出するからだ。Steve Jobs の発表したところによれば、Apple 社は昨年だけで空の DVD-R ディスクを百万枚売ったということだ。(Apple はつい最近価格をディスク1枚 $5 に値下げしている。)しかし、昨年1年間に DVD を焼いた人数よりも、今年印刷や写真集を注文してみようと思う人々の人数の方がはるかに多くなるのは確実だろうと私は思う。私自身も、これまでデジタル写真印刷サービスを利用した経験はないけれど、この iPhoto の写真集印刷サービスはぜひ利用してみたいと思っているのだから。


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