TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#623/01-Apr-02

今週のトップニュースは Microsoft の、バグなしソフトウェアによる和解の提案だ。これであなたは満足だろうか? Adam はまた、インターネット支払いサービス Kagi の 新商品について紹介する。お気に入りのアーチストをファンがサポートするのに向いているだろう。John Moltz が iPod で可能な著作権の万引きについて見解を寄稿した。Tonya が Microsoft の新ユーティリティについてプレビューし、我々は Apple の新サポートオプションについて検証する。ニュースでは、Apple の新 i 製品 iTiVo についてビデオ性能を調べ、SpamCop の新eメールフィルタ・サービスを紹介する。

記事:

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MailBITS/01-Apr-02

Apple の新製品 iTiVo のビデオ性能判明 -- 未確認ながら Apple 社内部の信頼すべき筋からの情報によると、Apple は独自のパーソナルビデオ録画機 (PVR) をリリースする予定だという。これは TiVo, Inc. からライセンス契約によって得たテクノロジーを使用している。(TidBITS-594 の記事“TiVo: 時間をずらせばそこに自由が”を参照。)この機器は仮称ではあるが“iTiVo”と呼ばれており、Apple のデジタル・ハブのコンセプトにテレビ番組視聴を含めるものとなる。テレビ番組はこの iTiVo の巨大な 160 GB のハードディスクに録画され、いつでも好きな時に番組を見ることができ、また Mac との間の FireWire 接続によって番組を QuickTime ムービーに変換することもできる。つまり、テレビ番組を手軽に PowerBook や iBook に取り込んで持ち運んで見ることができるわけだ。噂によれば Apple は TiVo 本来の Linux ベースのソフトウェアを Mac OS X で動作するように移植したというが、この機器でビデオを見た感触から言えば現存の TiVo ソフトウェアとほとんど変わっていないようだ。(ちょうど Handspring や Sony が Palm OS をほんの少し変更しただけのものを使っているのと似ている。)技術的詳細はまだ明らかではないが、下記のリンクにあるビデオで判断する限り、iTiVo はメモリーやハードディスクのアップグレードもサポートしており、AirMac アクセス(つまり録画オプションの設定が付属のリモコンだけでなく Mac からもできる)も可能で、Apple らしい革新的な工業デザインとなっている。[JLC](永田)

<http://www.tivo.com/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06543>
(日本語)TiVo: 時間をずらせばそこに自由が
<http://www.tidbits.com/resources/623/itivo.html>

GramCop が間違いだらけのメールを逮捕する -- 綴りや文法がめちゃくちゃなメールを読むのに飽き飽きしてはいないだろうか?短いメールやインスタントメッセージの流行が文章力を読解不能なまでに悪化させているのではと心配したことは?しかし今後は心配御無用、SpamCop の開発者達が新たに提供するサービスを利用することで基礎的な文法や綴りの確認を怠らない送信者以外からのメールを弾く事ができるようになる。幸運なことに、文法や綴りが心もとない人たちでも GramCop の厳しいチェックをパスするための苦痛をやわらげるためのツールが既に提供されている。多くのメールソフトウェア、Eudora や Microsoft の Outlook Express とEntourage、Appleの Mail などはスペルチェック機能を内蔵している。他のメールソフトを使いたい人のためには Casady & Greeneの Spell Catcherや Grammarian のようなサードパーティ製品もある。文法チェックツールはその不正確さのために長らく人々の失笑を買ってきた訳だが、GramCop は厳しい事で定評のある 7 年生 [訳注:日本の中学一年生] の英語教師達による自動ツールが追加されている。これにより、GramCop の正確さが向上している事が期待される。

<http://www.spamcop.net/>
<http://www.gramcop.net/>
<http://www.casadyg.com/products/>

個人ユーザー向けの GramCop は年間 30 ドル、拙いメールを全ドメインから駆逐したい人のための割引きサイトライセンスも用意されている。年間 10 ドルのサービスを追加することで綴り間違いと文法間違いを詳細に説明したメールを送信元に返送するオプションもある。GramCop は英語の筆記能力を向上させたいと思っている非英語圏の人たちに人気が出ることが期待されている。[ACE](蒲生)


Microsoft、和解でバグなしソフトウェアを誓う

文:Matt Neuburg <matt@tidbits.com>
訳:亀岡 孝仁 <tkameoka@fujikura.co.jp>

Redmond, Washington での驚きの共同記者会見で、Microsoft の Chairman で Chief Software Architect である Bill Gates は 9 つの米州の法的代理人とともに新たな妥協案で和解に同意したと発表した。これに伴い、米州側は Microsoft に対するすべての反トラスト訴訟を取り下げる。合意の条項によれば、Microsoft は今後、ソフトウェアアップグレードが既存のバグ修正に失敗したりあるいは新たなバグを作り出したりした場合は消費者に課金することを止めることになる。California 州の Deputy Attorney General である Mark Breckler は冗談めかして次のように表現している: "今後は、ソフトウェアは正常に動作するか、さもなくばタダーーーとなる!!!!"

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbser=1152>

この和解の元になる考え方そのものは、説明によると、Gates 自身から出たものらしい - 古い Dilbert の漫画を見ていたら "消費者が求めているのはバグなしのソフトウェアで、しかもタダのものである" というのにぶち当たってこれを思いついたのだという。Gates によれば、最初はこれのどこがおかしいのだろうと思いあぐねているうちに、本当に深く考え始めたらしい。"大体ソフトウェアをバグなしで供給できるとは限らない、もしバグなしができるとすれば、それはもうタダというわけには行かない;でも、バグを出してしまった場合は、我々の間違いによって消費者を罰するのはおかしい。" Gates はソフトウェアの値決めについてのこの様な見方が、青天からの稲妻のように彼を襲ったのだと説明している。“私自身、これまでこの様な見方をしたことは一度もなかった。でも一旦そう考えれば、「いやー、誰もが我々に対して怒るのも無理はないわ!」と思ったよ。”

[訳注:Dilbert は Scott Adams による自己体験を元にした漫画の主人公で、テクノロジーをこよなく愛する。詳しくは、作者自身による Web サイトを参照されたい:<http://www.dilbert.com/>]

和解の詳細についてはまだ整理が必要な部分がある。現実には、Microsoft のソフトウェアが完全にタダになることはありえないであろうと Breckler は語っている;より現実的な路線としては、ソフトウェアの中のバグ1個につき消費者は部分的な返金を受けるか、或は次のバージョンを買う際のクレジットとしてカウントする方法であろう。更に言えば、このクレジットの額も利用者のニーズに応じて変る様にするのも一案である。例えば、ドイツ語の顧客は、Microsoft Word で u-ウムラウトをタイプするのを妨げるようなバグに対しては毎回 $.01 のクレジットを受けられるが、アメリカの顧客でドイツ語など使わず一度もこのバグに遭遇しない人が受けるクレジットはゼロであるとかである。

Gates はこの様に語っている。"我々のソフトウェアを買い、バグに遭遇するお客様は、先駆者のようなものである;この様に早くから使ってくれたことに対して罰するのではなく、バグを見つけ余計な苦労を強いたことに対してむしろ対価を支払うべきなのである。我々はセキュア .NET サービス、そして MyBugs バグ報告サービスを通じてこれらのことを実現できると思っている。" Gates はさらに、他のソフトウェア会社もこの価格モデルをもつ Microsoft のリードに追従することを願うとし、もしそうしないのであれば消費者はますます Microsoft への傾斜を強めていく事になるであろうとも警告している。この和解案は連邦地裁の Colleen Kollar-Kotelly 判事のもとに送られなければならない;予備ヒアリングは来週のうちに開かれる予定である。プライバシー擁護者と反 Microsoft 連合の会社の代理人たちはこの Microsoft の要件は消費者に MyBugs と .NET サービスを利用するために Passport 口座を持たなければならなくするとして警告を発した。Gates はこれに対して検討に値しないと一蹴した。その中で、Microsoft はすでに、この業界をコンピューティングの信用性を全く新しいレベルに持ち上げるために率先垂範していくことをすでに発表していると言及した。


Apple、天才専用サポート窓口を開く

文: Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

こんな状況に陥ったことが、あなたにも一度はあるのではないだろうか。あなたの Mac がどこかおかしい。スタンダードなトラブルシューティングの方法は全部試したし、インターネットで情報を探してみたし、ちょっと思いついた解決法もやってみたけれど、どれもうまく行かないので、最後の手段として Apple のテクニカルサポートに電話をしてみる。さんざん待たされたあげくに、結局わけのわからないサポート担当員と話す羽目になり、こいつがまた入社してまだ何ヵ月かしか経っていないような新米で、一生懸命サポートデータベースを検索しようとしているらしいが、どうせ時給 $12 くらいの仕事しかできないとすぐにわかる。また 25 分ほど待たされたあげく、あなたは答える。「さっきそう言ったでしょ! Mac を再起動してみましたし、デスクトップの再構築もやってみましたよ! 私はただ、Mac OS 9 ではちゃんと動いていた Apple 製の USB デバイスが Mac OS X でクラッシュすることがあるのかどうかを、あなたが知っているか、と聞いているだけなんです!」

この、イライラさせられて費用がかかるばかりのテクニカルサポートの不備、という問題に、Apple がやっとのことで重い腰を上げ、対処を始めてくれた。それが今回登場した Virtual Genius Bar(バーチャル天才相談所)だ。この窓口では Apple の中でも最も経験を積んだ Mac サポートエンジニアのみがスタッフとなっており、かつ、この窓口にアクセスを許されるのはちゃんと物のわかったユーザーのみに限られる、というシステムになっているのだ。このバーチャル天才相談所へのアクセスは2つの関門によって保護されている。1つはオンラインの“Genius Test”(天才度テスト)で、ユーザーの Macintosh に関する知識を試してくる。もう1つは状況に即応した“Just Checking”(ちょっとチェック)質問で、ユーザーがすでに基本的なトラブルシューティングのステップを済ませたかどうかを確認するためのものだ。Apple はあなたの Apple ID と共にあなたの天才度テストの結果も保管するが、時折新しい問題が追加されて、一度テストに合格したユーザーも、随時新情報に対応したアップ・ツー・デートな知識を持っているかどうかを試される。また、このテストの結果は単なる合否だけでなく、あなたの天才度レーティングの点数が付くようになっている。

バーチャル天才相談所のテクニカルサポートを受けたい場合には、まず Apple のサポート用ウェブサイトにあなたの Apple ID を使って接続しなければならない。すると、まずあなたの天才度レーティングがアップ・ツー・デートなものかが確認され、次いで対象となるトピックのちょっとチェック質問を受けることになる。それに合格して初めて、対象となった問題点に限定されたパスワードコードが受け取れるのだ。これでようやく電話がかけられる。まず Apple の通常のサポート電話番号 (800/275-2273) を呼び出してから先ほどのパスワードコードを入力すれば、通話がバーチャル天才相談所に転送されることになる。Apple の従来の AppleCare SupportLine と同様、最初の 90 日間は通話料は無料で、それ以後は相談1件につき $50 の料金がかかる。

もちろん Apple としては電話以外の形でのサポートの方が望ましいわけで、その目的のためにバーチャル天才相談所のウェブベースのコンポーネントも用意されている。バーチャル天才相談所の討論フォーラムは誰でも読むことが出来る。けれども、このフォーラムに投稿することができるのは天才度テストに合格した者だけに限られるのだ。つまり、このフォーラムに書かれているユーザーの声は非常に信頼性が高いことが保証されるのだ。(各投稿ごとに、それぞれの投稿者の天才度レーティング点数が明示される。)さらに素晴しいことには、バーチャル天才相談所のサポートエンジニアたちが常時この討論をモニターしており、自らも定期的に討論に参加してくれる。また、これは現在検討中とのことだが、バーチャル天才相談所のサポートエンジニアたちが自由にユーザーの投稿を消去したり、個々のユーザーの天才度レーティングを修正したり、Knowledge Base 内の記事との間で相互のリンクを付け加えたり、また特殊なフィルターオプションを加えて Apple のエンジニアからの投稿のみを、または特定の天才度以上のユーザーからの投稿のみを表示したりもできるようにする、ということも予定されているようだ。さらに一部の情報によれば、バーチャル天才相談所のサポートエンジニアたちはその方が能率的と判断した場合にはいつでも自由に相談を直接の電子メールによるものに移行させる権利を持つ、ということだ。もちろん私なら、そういうことになっても異論はないだろうと思う。

<http://discussions.info.apple.com/vgb/>
<http://kbase.info.apple.com/>

ともあれ、Apple が今になってようやく、ユーザーベースの知識と経験を尊重する、という考え方を打ち出してくれたことは、本当に、本当に心暖まる、実に感動的とも言えることではないか! この、Apple の大転換は、これまでろくに経験もないようなサポートエンジニアにうんざりさせられ続けてきたユーザーにとって大歓迎のことであるのは言うまでもないが、逆に Apple の側にとっても有益なことだと言える。なぜなら、サポートの通話時間は確実に短くなるし、難しい質問は専門のサポートエンジニアのもとに直接届けられるようになるのだし、さらには、討論のすべてを記録した検索可能なウェブ上のアーカイブがそれ自体、非常に有用なサポートツールになってゆくに違いないからだ。


iPod は泥棒たちのお気に入り?

文:John Moltz <john@crazyapplerumors.com>
訳: 蒲生竜哉 <gamo@earthlink.net>

おそらくあなたは知らないと思うが、実は iPod にもスキャンダルはある。

Wired 誌の最近の記事によると、コンピューターショップの店員の目前でソフトウェアを万引きするために iPod が使われているというのだ。コンピューターショップのデモマシンに満載された高級で美味しそうなソフトウェアを盗むためには転送速度が速い Firewire が搭載されていて外付けハードディスクとして使うことができる上、隠す事が非常に簡単なかたちとサイズの(しかも格好いいときている) iPod が最適なのだという。

<http://www.wired.com/news/mac/0,2125,50688,00.html>

ショックだろ?

まあ、もし人々がソフトウェアを盗むために実際に iPod を使っているという伝聞証拠以上のものがあるのなら確かにショッキングなニュースかも知れない。Wired 誌は総合計一件の盗難行為が一人の十代の少年によってテキサスのCompUSA で発生したと伝えている。もしこれがコンピューターからソフトウェアが盗まれた初めての事件だとしたらこれはやっぱりショッキングかも知れない。あるいは iPod がコンピューターからソフトを盗む唯一の手段だった場合もやはりショッキングだったろう。

個人的にはこうした盗難事件を起こした犯人がフルヌードで犯行を行ったんだとしたらそりゃショッキングだろうなあと思う。あるいは毎回あなたがこうした盗難事件に関する記事を読むたびに、ともかく何らかの手段によって1万ボルトの電撃を食らうとしたら?そりゃあきっとショッキングだろうな。

しかし実のところ、ソフトウェアを iPod でコピーするなどというニュースはあなたがとてつもなくナイーブでもないかぎりショッキングでも何でもない。一部の少年、たとえば Wired 誌の記事の少年とかが万引きするのもはや世界の常識だ。おなじように一部の大人だって万引きする。一部のハムスターですら万引きする。ただハムスターの場合、奴らが他のハムスターからしか盗まないためニュースにならないだけだ。もっとも、人質をとったらニュースになるかも知れないな。でもそのようなことは普通は起らないだろう。なにしろ高飛びしようと思ったら犯ハムスターグループは例の小さなボール [訳注: ここでいうボールとはハムスターを入れて散歩させるためのプラスティックの中空ボールのこと。ハムスターボールという名称で日本でも売られている] の中で人質ハムスターを自分たちと同じ方向に走らせなければならないもんな。これは実際かなり大変な……

あれ、何の話をしていたんだっけ?

そうだ、万引きだ。実のところコンピューターのハードディスクからソフトウェアを盗むという行為自体は新しい現象でもなんでもない。大昔、 iPod がまだ Jonathan Ive のコンセプト描きですらなかった頃ならたった一枚のフロッピィディスクにアプリケーションをまるまる一つコピーすることだってできたのだ。ちなみにここで言っているのは TeachText のことではない。PageMaker だってまるまるコピーできたのだ。さらに、これはあまり知られていないことだが、Eniac のオペレーションシステムですら小さなメモ用紙に書き写されて一度盗まれたことがある。これは実話だ。

ともかく、アプリケーションのサイズが肥大化するにつれ、フロッピィがソフトウェアを盗むための現実的なメディアとしての地位を失ってすでに久しい。Mac がフロッピィドライブを搭載しなくなってもう数年になることは言うまでもない。しかし、メディア形式とデータ転送速度がアプリケーションのサイズに再び追いついたため、今ではコンパクトフラッシュカードを搭載したデジタルカメラや CD-RW、 5 GB や 10 GB の iPod よりも大容量の Firewire ハードディスクといった新しい選択肢が生まれている。こうしたものと iPod の唯一の違いはそれが同時に MP3 プレーヤーでもあることだ。そのため盗人たちは一目を盗んでソフトウェアをかっぱらっている間 Pat Boone でグルーヴしているふりをすることがより簡単にできるという訳だ。

このことから CompUSA で起った事件の重要なポイントをみることができる。むろん被害者をせめるつもりはないが、CompUSA が Mac を店の奥に押し込み、太古の周辺機器の中に埋もらせている中でこの事件が起きたというのは実に驚くべきことではないだろうか?店員が潜在的な Mac の購入者と話をするのを避けるためにどこかに行っているということは言わずもがなだ。

実際のところ最初に iPod を盗んでそのあとこれを使って大量のソフトウェアを盗もうとする人たちが CompUSA と問題を起こさないのは驚くほかない。もし Mac が鎖でつながれていなかったら、犯人は赤いシャツを着た店員がそばにやってきて、「Windows XP をごらんになりませんか」と話しかけてくる前に Mac そのものを盗むことだってできただろう。たとえ店員が近づいてきたとしても、Mac OS Xに関する簡単な質問でその店員を混乱させてゆうゆうと逃げ出すことができたに違いない。 [訳注: CompUSA はアメリカの有名な大型コンピューター量販店。Apple の公式な販売店のひとつであるにも関わらず店員がまったく Mac を売る気がないことで有名]

ちょっと CompUSA に辛く当たりすぎたかな?

いや、ちょっと読み返してみたが、どうやら正しい事を書いているようだ。

さて、iPodは ソフトウェアを万引きすることを簡単にしただろうか?もし潜在的な犯人がデジタルカメラや Firewire ハードディスクをまだ持っていない、あるいは CompUSA で 10 枚一組6ドル 99 セントで売られている CD-R ですら買えないのだとしたらおそらくそうだろう。ここで一つ提案したい。iPodがソフトウェア盗難を助長し教唆しているなどという事で人々を興奮させる前に一つ質問してみてはどうだろう。『もしそんなに iPod が気になるのなら、ハムスターによる犯罪の驚くべき増加についても心配したらどうです?』相手は普通それで黙る。

[John Moltz は Crazy Apple Rumors サイトと "ハムスター: ふわふわ毛皮の私たちの友達" というパンフレットの作者だ。書き物をしていないとき、John は長除法と箸で戦う日本の格闘技、箸道に興じている]

<http://www.crazyapplerumors.com/>


Microsoft AutoGadget が Finder を初期化

文:Tonya Engst <tonya@tidbits.com>
訳:倉石毅雄< takeo.kuraishi@attglobal.net>

昨年の Office v.X 発表後、新しい方向を模索していた Microsoft の Macintosh Business Unit は今日、AutoGadget を発表した。このMac OS X 専用ユーティリティは Microsoft の数々の自動編集と書式ツールを Finder で使用可能にする。プレスリリース中で、Microsoft は次のように述べている。「当社の使いやすさ研究室の専門家らは、Office のユーザが Office の自動ツールが使用できないと顕著なストレスホルモンの増加が見られることを発見した。」 AutoGadget は Microsoft はコンピュータ環境でのストレスを軽減するべきだという、最近の Bill Gates からの通知に応えるものだ。AutoGadget の興味を引く機能としては以下がある。

マイクロソフトは Macintosh のユーティリティの分野には新参者だ。Office の自動ツールに対する強い愛憎双方の反応を考えても、Mac ユーザが AutoGadget をどう受け止めるかは疑問だ。それでも、それぞれの AutoGadget 機能は単独で付けたり消したり出来るので、Office の手助けが嫌いではないなら AutoGadget を試してみるべきだろう。

AutoGadget 1.0 は Office v.X を必要とし、次のサービスリリースと一緒に発送される予定だ。そして、Office v.X ユーザに Microsoft のリラックセーションを重視しているとのメッセージを伝えるためにも、今現在、Microsoft の Mactopia Web サイトから無料のダウンロードとしても入手可能だ。

<http://www.microsoft.com/mac/>


Mac Mania Geek クルーズ、Love Boat と合流する?

文: Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

来たる5月に予定されているアラスカ沿岸のクルーズ企画、Mac Mania Geek Cruise は予想よりもさらに楽しみなものになりそうだ。もちろん、Woz(かの Steve Wozniak ご本人)も参加して Apple II の歴史について語ってくれ、切り離してない2ドル札のシートでレジの娘をからかうところも見せてくれるだろうし、Mac 界のそうそうたる顔触れ、Bob LeVitus、David Pogue、Glenn Fleishman、Tom Negrino、Dori Smith、Sal Soghoian といったところでも不足というならば、俳優の John de Lancie(スター・トレックの“Q”の役)までもが参加してくれる。これ以上、何を望めというのだろうか?

<http://www.geekcruises.com/home/mm_home.html>
(参考)<2001年末ギフト提案: Macintosh 指向の人向け

こう書くと深夜放送のテレビ映画を紹介したテレビガイドの記事のように見えてしまうのは承知の上だが、とにかく想像してみて欲しい。もしも今挙げたような Macintosh 著名人たちに1人のハリウッド俳優、それに大勢の Mac ファンの参加者たち、という面々に加えて、かの人気テレビ番組“Love Boat”のオリジナルシリーズの出演者たちが勢揃いした First International Love Boat Fan Cruise が合流したら、と。私の見るところ、そこまで信じられないほどの豪華さを業界用語で表現するとしたら、あの「いったい、何が起こったというのかぁぁぁ?」という叫びしかないだろう。

そうなんだ。私は、Google で“cruise”を検索しながら、クルーズというものについていろいろ調べようとしていた。何しろ、クルーズについての私の知識ときたら、はるか昔の 1970年代後半に Love Boat の番組を何回か見たことくらいしか無かったのだから。(誤解しないで欲しいが、当時の私はほんの 11 歳で、テレビのチャンネルは4つしかなく、ほとんど他に選択肢は無かったのだ。)するといきなり、First International Love Boat Fan Cruise のページに行き当たった。これは Love Boat のファンのための7日間のクルーズで、Mac Mania と同様、外洋を航海しながらいろいろな催しを楽しもう、というものだった。はじめは Love Boat の番組を思い出して好奇心を誘われただけだったが、そのページの「開催の日取りは後日決定」という文句に引かれて主催者の Rick Portes にメールを送ってみた。そこでわかったのは、何と、彼はその Sea Princess 号のクルーズの予定を当初のカリブ海からアラスカ沿岸に変更し、5月下旬の Volendam 号での Geek Cruise に合流することにしたというのだ!!

<http://www.loveboatcruise.com/>

彼はメールで答えてくれた:「もちろん、明るい陽光を楽しむという Love Boat の当初の考え方からはかなり外れることにはなるが、Stubing 船長の口ぐせにも言う通り、新しいことをやってみるのはいいことだ、からね。」

何百人もの Love Boat ファンとクルーズの船を共にすることになるというニュースを聞いた Mac Mania の講演者たちの反応は、全般に好意的なものだった。Bob LeVitus は、自分のことを三人称で形容しながらこう言った:「そりゃあ、ほんとに素晴しいことだと思うさ。だって、“Mac 博士”Bob LeVitus から Mac OS X について教わった後で、“ハリウッドの大御所”Bernie Kopell (Love Boat の“Doc”の役)と近づきになれ、その舞台が Quake 3 のアリーナと同じなんだろ? それに、手付かずのアラスカの大自然がバックの豪華なクルーズで何千ガロンもタダ酒が飲めるんだろ?」

Java や JavaScript に関する数々の著書のある Dori Smith も同じ意見だ:「2年前の第1回 Geek Cruise の船上で Tom [Negrino] が私にプロポーズしてくれた時から、Geek Cruise はずっと私にとっての Love Boat だったわ。もちろんその時は私は講演中だったので、横を向いて、あっちへ行ってと答えただけだったの。そしたら彼はそのクルーズの間じゅうションボリしていたのよ。だから、あまりうまく行った Love Boat じゃなかったかも知れないわね。でも今回は公式の Love Boat に一緒に乗るんだから、私たちの結婚も順風満帆ね!(これはデタラメの作り話などではないのよ。この Wall Street Journal の記事の最後のところを読んでみるといいわ。)」

<http://interactive.wsj.com/public/current/articles/sb992549028358994888.htm>

AppleScript 専門家の Sal Soghoian も、Love Boat ファンの技術レベルについて助言を寄せてくれた:「Love Boat にしょっちゅうゲスト出演していた Florence Henderson がよく Bernie Kopell に AppleScript を教えていたことは、あまり皆が知らないことだろうね。でもこのことをバラしても彼女はそんなに気にしないと思うな。できたら、私の AppleScript セッションの時も彼女がちょっと寄ってくれて、彼女の“Brady 一家”スクリプトを読んでくれたらいいと思うんだ。きっとおもしろいぜ。」

もちろん、Mac Mania 側の参加者である俳優の John de Lancie が Love Boat シリーズに何度も出演していることを考えれば、これら2つのテーマクルーズの間にまだまだいろいろの意外な関係が見つかるのは想像に難くない。それに、今 Mac Mania の講演者たちの間で盛り上がっている話題といえば、Titanium 使いの Mac マニアたちと、Sony Vaio ばかりの Love Boat ファンたちとの間で、きっとコンピュータネットワークの不具合が起きてチャットがうまく行かなくなり、そのクロス・プラットフォームの悶着の中から思いもかけないロマンスが生まれるかも、という話だ。想像するって、いいモンだ。

<http://www.google.com/search?q=john%20de%20lancie%20love%20boat>


Kagi 経由でアーティストをファンが直接サポート

文: Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

この TidBITS では、著作権について、また、今やコンテンツをコピーしたり共有したりすることがほとんど障害なしにできるようになってしまったこのデジタル世界において、アーティスト(あらゆる意味でのアーティスト)が、いかにして生活の糧を得ることができるのかということについて、これまでいろいろな記事で触れてきた。我々 TidBITS 制作チームのメンバーも、ライターでありミュージシャンである(まあ、少なくとも Geoff はそう呼べるだろう)し、複雑に入り組んだ現状に何とか説明をつけようと努力するタイプの人間でもあるので、互いに相反するアイデアの板ばさみになって苦しんできた。コンテンツの作者たちがその仕事の報酬として金銭を得る権利があるのは当然だが、一方、そういう権利を作者たちに与えるのはあくまでも公共的価値のためのものであるべきだ、ということも我々は固く信じている。あらゆる種類のデジタルコンテンツが至るところでコピーされつつある、という現状をどう解決するにせよ、たとえそれが部分的解決に過ぎなくても、それはコンテンツの作者の側の必要と、公共的価値の側の必要とを、共に満たすものでなければならない。

さらに、こうした議論で常に忘れてならないのは、テクノロジーの世界では、一旦魔法のランプから魔人ジーニーを出してしまえば二度と元のランプに戻すことはできないということだ。印刷機、自動織機、自動車、原子爆弾、避妊薬、こうした新技術が世に出た後、もう二度と世界が後戻りすることは無かった。デジタルコンテンツ、高速インターネットアクセス、それにピア・ツー・ピアのファイル共有ネットワークの組み合わせの登場も、やはり新しい世界の夜明けを告げているのだろうし、好むと好まざるとにかかわらず人類の社会的、経済的、法律的インフラストラクチャを根本から変革するものとなってゆくのだ。

解決の方法には良いものも、そうでないものもあるだろう。だが、我々が一番注目しているのは、インターネット上の支払いサービスで定評のある Kagi 社の計画している新しいプロジェクトだ。例えば PayPal のような大手の会社とは違って、Kagi はこれまで常に注意深く、小規模の個人経営で安定した確実な運営を続けてきたので、今回少しは実験的な戦略に出ても良いだろう、と踏み切った。それが何と、世界をゆるがすかもしれない、この大実験だった...

直接サポート -- 今日の音楽業界で一番問題となっている緊張関係は、ファンたちが自分の好きなアーティストをサポートしたいと願っているのにもかかわらず、レコード会社の懐を暖めたいとは全然願っていないということだ。ことに、オーディオ CD がいくら売れてもアーティスト自身の財布は決して潤うことがないという現実が知れわたってからは、そう考えるファンが多くなった。また、少額支払いの問題もある。自分の大好きな曲に $1 を、ということなら誰でも喜んで払うだろうが、その曲の入っている CD に $15 も払うかどうかということになれば、たじろぐ人が多いかもしれない。残念なことに、アーティストに直接お金を払ったり、また、1つの曲、あるいは1つの CD に対して自分が適当と思うだけのお金を払ったり、ということは不可能だった。しかし、今やすべての状況が変わったのだ!

Kagi が今回始めようとしているプロジェクトは、Tipping Worldwide Entertainment Artists via Kagi (TWEAK)(「世界のアーティストにチップを払おう! Kagi プロジェクト」)と呼ばれている。この名前がすべてを言い表しているだろう。あなたが、あなたの好きなアーティストに、その作品への感謝のしるしとして、好きな金額のドネーションを送ることができるのだ。このドネーションのお金は、決して音楽のダウンロードとか、その他何らかの行為に対するライセンスになっているわけではない。そのような権利は多くの場合アーティストとレコード会社との契約に既に縛られているからだ。

個々のアーティストがあらかじめ Kagi と契約を結んでおく必要もない。あなたがファンなら、ただ TWEAK のウェブサイトに行って誰でも好きなアーティストにあててドネーションをすることができるのだ。(このサイトにはアーティストのリストがあって、あなたはそこから選ぶこともできるし、新たなアーティストの名前を入力することもできる。)Kagi は、指定されたアーティストを見つけてそのお金を渡すために最大限の努力をする。Kagi の創設者かつ CEO の Kee Nethery は、見つけるのが困難なアーティストについてはウェブサイトを設定して世界中のインターネットユーザーに捜索に協力してもらえるようにしたいと言っている。該当するアーティストが死去した場合は、Kagi はお金をその人の資産に繰り入れるなり相続人に送るなり、適切な処置をする。この場合も、そのお金は純粋に自発的なドネーションであることにより一切の著作権とは無関係なので、著作権消滅後にアーティストに渡すことも自由なのだ。もちろん、Kagi がどうしても該当するアーティストを発見できない場合もある。Kee によれば、一年間捜しても発見できなかったアーティストについては、そのお金をアーティストをサポートする適切な非営利団体に送ることにしたいということだ。将来はウェブサイトで、どのアーティストがコンタクト済みでどのアーティストが見つからないかをきちんと表示し、見つからない場合にはお金をどの非営利団体に送るかもユーザーが選べるようになるだろう。

<http://music.kagi.com/?mp3>

このサービスに関して Kagi がどうやって利益を得るのだろうと不審に思う読者もいるかもしれないが、それは単純なことだ。実際にアーティストに送金されるまで4ヵ月の間、すべての金額は Kagi の手元にとどまることになる。その間の資金に対する金利が Kagi の収入になるのだ。さらに、個々のアーティストはごく長期間に一度ずつ小切手を受け取るようにすることもできるので、そうすればなおさら Kagi に入る利子は多くなる。もちろん、個々の支払いは少額なので、それぞれに対する利子というのは意味がない。このサービスは、あくまでも大量の回数の支払いが期待できることが前提となっているのだ。

どうやって広めるか -- この TWEAK サービスが人から人への口伝えのみでしか広まらないのならば、当然長い時間をかけなければ多くのアーティストのために多くの金額を集めることはできないだろう。しかし、いくつかの良いアイデアは既に寄せられている。MP3 ファイルのファイル名、またはその ID3 タグなどに TWEAK の URL を入れておけば、インターネットで音楽をダウンロードした人々が大好きなアーティストのために感謝の気持ちを形にすることが、ずっと手軽にできるようになるだろう。現在のところ TWEAK はまだ個々のアーティストごとのカスタム URL をサポートするまでには至っていないが、Kee は将来こうした URL を使ってドネーションがより簡単にできるようにしたいと言っている。

望むらくは、LimeWire、Kazaa、Morpheus、eDonkey2000 などのピア・ツー・ピアのファイル共有クライアントの開発者たちが TWEAK のサポートを考慮してくれるようになるのが理想だと思う。ファイル名とか ID3 に URL を埋め込むといったような不確実な方法に頼るよりも、そうしたクライアントプログラムが自動的にアーティスト名(これは普通ファイル名に埋め込まれている)を読み込んだ際に、例えばコンテクストメニューなどによってユーザーが TWEAK の URL に直接リンクできるようにする、というのはどうだろう。また、将来には新たなインターフェイスが開発されて、その音楽を検索、あるいはダウンロードしている最中にドネーションを促すようなものができれば素晴しいと思う。

もしもこの TWEAK プロジェクトが成功すれば、きっとアーティストたちはこぞって自分たちの作品をインターネット上に提供するようになり、インターネットから着実に収入が得続けられるように工夫を凝らすようになるだろう。そして、それこそが、理想の目的だったのだ - アーティストたちが、公共的価値のために作詞し、作曲し、演奏し、かつそれによって生活の糧を得ていくことができる、という世界が現実のものとなるのだ。

[訳注: お楽しみいただけましたか? 念のため申し添えますが、この号、TidBITS#623/01-Apr-02 の _すべての_ 記事は、あくまでもエイプリルフールの日のみ、4月1日の、一日限りの内容となっておりますので、あしからず!]


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Valid XHTML 1.0! , Let iCab smile , Another HTML-lint gateway 日本語版最終更新:2005年 12月 26日 月曜日, S. HOSOKAWA