TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#625/08-Apr-02

Adam の頭の中は Mac OS X 用のユーティリティで一杯だ。今週号で彼が収集したのは、本気で Mac を使いこなすユーザーに最も必須のものばかりだ。Matt Neuburg は連続記事の第2回でユニコードについての解説を締めくくる。今回の解説の重点は Mac OS X におけるユニコードの使い方だ。ニュースの部では、Apple による最新の Mac OS X セキュリティー・アップデートと DVD Studio Pro 1.5 のリリース、それに Macworld Expo NY で展示ホール無料パスを手に入れる方法についてお知らせする。

記事:

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MailBITS/08-Apr-02

4 月の Mac OS X セキュリティー・アップデート -- Apple は先週、Security Update April 2002 を Apple ソフトウェア・ダウンロード・サイトからのソフトウェア・アップデートとしてリリースした。ダウンロードサイズは 4.7 MB で、内容的には Mac OS X における数々の Unix コンポーネントのアップデートを含んでいる。例えば OpenSSH 3.1p1、rsync 2.5.2、groff 1.17.2、PHP 4.1.2、sudo 1.6.5、mod_ssl 2.8.7、mail_cmds などが挙げられる。これらのアップデートされたコンポーネントにより、Unix ベースの攻撃によってあなたの Mac にオーソライズされていないアクセスを得ようとするものに対するセキュリティーが高まる。すべてのユーザーはこのセキュリティー・アップデートをダウンロードしてインストールすべきだ。ところで、今回のリリースで最も注目すべき点は、Apple が初めて同社の Security Announce メーリングリストを意味ある目的に利用した、という点だ。と言うのは、今回 Apple はこのメーリングリストに PGP 署名付きの投稿によって詳細な変更履歴ノートを発表したのだ。その内容はソフトウェア・アップデートに付属の変更履歴ノートよりも詳しいものだった。また、Apple の Security Updates ページでの変更履歴ノートには各種のリンクが含まれており、どのような種類の攻撃に対処したのかについての詳しい情報が読めるようになっている。こうなるには1年以上かかったが、Apple もようやくコミュニティーに対する責任に目覚めてきたようだ。これまでの、高度にセキュアな Mac OS 9 を捨てて、はるかにオープンな Unix コアを含んだ Mac OS X の世界に移行したことに伴う責任に。[ACE](永田)

<http://docs.info.apple.com/article.html?artnum=120111>
<http://lists.apple.com/mailman/listinfo/security-announce>
<http://www.apple.com/support/security/security_updates.html>
日本語Mac OS X セキュリティー・アップデート

DVD Studio Pro 1.5 が Mac OS X をサポート -- Apple は今日、DVD Studio Pro 1.5 のリリースを発表した。これは同社のプロフェッショナル向けDVD オーサリングツールの新バージョンで、今回 Mac OS X との互換性が追加された。DVD Studio Pro の定価は $1,000 で、フル・モーションのメニュー、より高品質のオーディオとビデオ、ビデオに DVD-ROM 用のデータを添付、などのハイエンド機能を提供することにより、同社がコンシューマー向けに無料で出している iDVD オーサリングユーティリティとの差別化を図っている。この DVD Studio Pro の新バージョンでのその他の変更点としては、プロジェクトでのビデオ編集時に Final Cut Pro が設定した章マーカーを認識するようになり、これを使って作成されたビデオ DVD を章に分けることができるようになった。(この機能能を使うためには Final Cut Pro 3.0.2 が必要だが、そのアップデートは今月中に Final Cut Pro 3 のユーザーに対しては無料でリリースされる予定だ。)以前のバージョンの DVD Studio Pro ユーザーは $200 でアップグレードできる。[MHA](永田)

<http://www.apple.com/dvdstudiopro/>
<http://www.apple.com/idvd/>
日本語<アップル、Mac OS Xに対応したDVD Studio Pro 1.5を発表

Macworld Expo NY 2002 展示ホール無料パス -- 2002 年の 7 月 17 日から 19 日までニューヨーク市で開催される Macworld Expo に参加しようと思っている皆さんにお知らせ。登録受付はもう始まっており、4 月 23 日までに早期登録すれば、特典として展示ホールの無料入場パス(通常価格は $35)がもらえる。そのためには、登録に際して、優待コード“E-NYCB”を入力する必要がある。いつもと同じく質問に答えて「個人情報」を記帳するが、同時に各出展者からのメールを受け取らないようにも指定できる。[ACE](永田)

<http://www.macworldexpo.com/macworldexpo/v31/index.cvn?ID=10007>


厳選 Mac OS X ユーティリティ: サードパーティ機能の復活

文:Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
訳:倉石毅雄 <takeo.kuraishi@attglobal.net>

この Mac OS X ユーティリティのシリーズの第一弾では Mac OS 9 に内蔵されている昔から使い慣れた機能を復活させるユーティリティについて述べた。しかし、 多くの人にとっての総合的な Mac OS 9 体験とは、 Apple からだけではなく、 Mac OS 9 を標準的な設定から大きく拡張するユーティリティの開発者らからの貢献によっても構築されていた。 今週はそれらの機能を Mac OS X の世界に移植するところまで進化したうちの重要なものをいくつか取り上げたい。 これらの多くは過去にも取り上げたが、 この記事は今までのバラバラな記事の復習とでも思って欲しい。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06763>(日本語)厳選 Mac OS X ユーティリティ: Mac OS 9 の機能を取り戻す

この記事は短めに抑えたいので、 ユーティリティの多くは後日の記事にとっておくことにした。 DragThing、 LaunchBar、 QuicKeys X、 Keyboard Maestro、 MenuStrip、 PiDock などのユーティリティは Mac OS 9 でサードパーティが提供していた機能を復活させるものの内に入るが、 よく見てみれば、 どれも同じようなことをしている。 ファイルの表示や開く方法、 テキストをタイプ、 Mac の再起動など、 どれもオペレーティングシステムの機能の代替制御方法と考えて良い。 これらはまとめて後ほど取り上げたい。

最後に、 先週述べるべきだったいくつかの新しいユーティリティがある。 これらは将来取り上げたいが、 とりあえずは TidBITS Talk の論議を読んでもらって私の自分勝手な分類から漏れたユーティリティや最新情報を手に入れて欲しい。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=1497+1600>

Default Folder X -- TidBITS-601 の "Appleの隠れた汚点 "で Matt Neuburg が指摘しているように、 Apple はファイルの開け閉めや保存を簡略化することに関しては あまり上手ではなく、 Mac OS X は多くの面で Mac OS 9 すらからも後退している。 Mac OS の旧バージョンでは慣れたユーザは Power On Software の(Now Software の Super Boomerang の後継者である)Action Files や St. Clair Software の Default Folder などのユーティリティを使用して Apple の Open と Save ダイアログを修正していた。 その中で Mac OS X へ移行したのは今のところ、 Default Folder だけだ。 これは Carbon (Cocoa はまだ) アプリケーション中での Mac OS X の Open と Save ダイアログの問題をいくつか直した。 Default Folder X 1.0については販売開始の時点で取り上げた。 Apple の使いづらく、 統一性がないOpen と Save ダイアログに苛立っている人達にとっては買うに値するものだ。 つい先日リリースされた Default Folder X 1.1 は Default Folder のメニューにアイコン表示や空き容量の表示のオプションなどの数々の小さな機能改善やバグ修正を含んでいる。 使用者数が大きい Microsoft Office Xを含め、 多くのアプリケーションへの対応も改善された。 Default Folder X 1.1 は $35 のシェアウェアで、 ダウンロードは 1.5 MB だ。

<http://www.stclairsoft.com/DefaultFolderX/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06594>(日本語)Appleの隠れた汚点
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06718>(日本語)Default Folder X、Mac OS X Open/Save ダイアログを改善

CopyPaste-X & PTHPasteboard -- 多くの人にとっては、 Apple のクリップボード機能で十分に用が足りる。 何かを選択し、 コピーかカットを選び、選択した内容がクリップボードの中身を置き換え、 貼り付けを待つ。 Nisus Writer のようなアプリケーションや、 (TidBITS-364 で評価した)CopyPaste のようなユーティリティは複数のクリップボードを使用出来るようにしてクリップボードの機能を拡張している。 この機能が CopyPaste-X と PTHPast eboard のおかげで Mac OS X でも使用できるようになった。 双方のユーティリティも最近コピーやカットした物を記録し(PTHPasteboard は 20 個、 CopyPaste-X は 10 から 200 個の間)、キーを一打ち、またはパレットをクリックするだけで、どれでも他のアプリケーションに貼り付けが出来る。 両方とも再起動後も保存した内容を維持するが、 CopyPaste-X はさらに進めてクリップボードの内容を編集可能にし、何度も再利用できるよう、 ユーザが定義したクリップボードを永久保存し、CopyPaste-X パレットから完全なドラッグ &ドロップを可能とする。 最小限の機能で満足ならば、おそらく PTHPasteboard で十分だろうが、 もし機能が一式揃った複数のクリップボードを扱うユーティリティが必要であれば、 CopyPaste-X しかあり得ない。CopyPaste-X は 1.3 MB のダウンロードで $20 かかる。 PTHPasteboard は123K のダウンロードだ。無料ではあるが、 寄付は歓迎している。

<http://www.scriptsoftware.com/copypaste/cpx.html>
<http://www.pth.com/PTHPasteboard/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=00751>(日本語)CopyPaste: 汚名返上

USB Overdrive -- Apple は Mac と一緒に一ボタンのマウスしかつけないが、 多くの人は複数のボタン、 スクロールホイール、 ミサイル発射器などがついたマウスやトラックボールを好む。 これらの代替ポインティング機器のメーカーのいくつかは Mac OS X 用のドライバを提供しているが(Kensington が代表的だが)、 多くの機器では Mac OS X の世界で使用可能にするにはAlessandro Levi Montalcini の USB Overdrive を使用する以外に道はない。 まだ Mac OS X 用はベータ版だが、 USB Overdrive があれば、 複数のボタンをプログラムでき、 スクロールホイールを使用できる。 ミサイル発射機はサポートしないだろうが。 Alessandro は USB Overdrive がベータ版であることを明示しているから、 リリースノートと知られている問題点のリストをちゃんと読むように気をつけよう。 問題があれば、 必ず詳しい報告をするように。 USB Overdrive ベータ 4 は 617K のダウンロードだ。 リリース後はシェアウェアになる予定だ。

<http://www.usboverdrive.com/trouble.html>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05831>(日本語)USB Overdrive 1.3 リリース

Snapz Pro X -- 遥か昔から Mac OS ではスクリーンの画像をキャプチャする方法があった。 何年か前に Apple はウィンドウだけをキャプチャ出来るよう、 この機能を拡張したが、 スクリーンショットを本格的に使用する人達は皆、 サードパーティのユーティリティを使用している。 同じことは Mac O S X にも当てはまる。 このような機能を備えたプログラムは数多くあったが、 TidBITS のスタッフを含め、 多くの人にとっては選択肢は Ambrosia Soft ware の Snapz Pro しかあり得なかった。 Snapz Pro X を使用すれば、 Mac OS X でプロ並みのスクリーンショットがとれる。 Mac OS 9 の機能拡張としてより作動はちょっと鈍くなってしまったが、 それでもスクリーンショットに関してはこれに勝るものはない。 Snapz Pro X 1.0.2 は $30(Movie Captu re には $50) かかるが、 新しい Mac のほとんどに無料で付いてくる。 このユーティリティは 13.1 MB のダウンロードだ。

<http://www.ambrosiasw.com/utilities/snapzprox/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=00696>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06546>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06707>
(日本語)はい、チーズ! Snapz Pro
(日本語)Snapz Pro X:Mac OS X 用スクリーンキャプチャ
(日本語)数々のバグが修正された Snapz Pro X 1.0.2

Font Reserve & Suitcase -- Mac OS がユーザの必要を満たせなかったもう一つの領域はフォント管理の面だ。 15 や 20 のフォントであれば大した事はないが、 多くのユーザが持っている何百というフォントやフォント使用の激しいプロジェクトでは、 Suitcase や Font Reserve のようなフォント管理ユーティリティは必需品だった。 Matt Neuburg が TidBITS-620で Font Re serve 3.0 を評価したが、 近いうちに Suitcase 10 の評価も予定している。両方のユーティリティとも、 Mac OS X が色々な場所に仕舞い込んでいるフォントを集める助けをしてくれる。 フォントをセットにまとめ、 現セットが手に負えるくらいの大きさにとどまるよう、 必要に応じて使用可能にしたり不可にしたり出来る。 Font Reserve 3.0 は $90 かかり、 アップグレードは$30 だ。 Suitcase 10 は $100 で、 アップグレードは $50 だ。

<http://www.fontreserve.com/products/frmac.html>
<http://www.extensis.com/suitcase/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06751>(日本語)Font Reserve が Mac OS X に


チェリーを2バイト - ユニコードと Mac OS X - その2

文: Matt Neuburg <matt@tidbits.com>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

前回の記事チェリーを2バイト - ユニコードと Mac OS X - その1で、ユニコードとは何かを紹介してきた。それは、あらゆる文字システムのあらゆる文字に、それぞれ独自のコード値を対応させようという、壮大な統一体制であって、可能性としては百万種類までの異なる文字や記号を許容するものだった。さて、Mac OS X では、このユニコードが内蔵されている。今回の記事ではこれを掘り下げてみよう。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06774>
日本語チェリーを2バイト - ユニコードと Mac OS X - その1

強制介入 -- 自分のコンピュータにユニコードが存在していることを実感する一番の早道は、実際にユニコードの文字をタイプしてみることだ。とは言っても、もちろん普通の方法でこれができるはずもない。なぜなら、キーボードのキーだけでは、たとえ Option や Shift の修飾キーを組み合わせたところで、とても 256 文字さえ区別できる組み合わせの数はできないからだ。そこで、いわゆる「インプットメソッド」なるものが必要になってくる。一番単純な方法はこうだ。Mac OS X のシステム環境設定の「地域情報」面を開き、「キーボードメニュー」タブを選んで、Unicode Hex Input チェックボックスをチェックする。すると、メニューバーにキーボードメニューが登場する。(私のマシンでは、これはアメリカの国旗のアイコンがデフォルトになっている。)

さて、これでタイプする準備ができた。Applications フォルダから TextEdit を起動してから、キーボードメニューの“Unicode Hex Input”項目を選ぶ。そして、Option キーを押し下げたままで“042E 0440 0438”と(引用符や空白文字は無しで、12個の数字と文字だけ)タイプしてみよう。すると、キリル文字でロシア語の名前「Юри」(ユーリ)が綴られるだろう。あなたが今タイプした値が、このロシア語の3文字に対応するユニコードの Hex 値(16 進数値)なのだ。

<http://www.unicode.org/charts/PDF/U0400.pdf>

ここでこの「Юри」の3文字を選択してフォントを変更しても、依然としてロシア語の文字のままであることに注意しよう。これは、Mac OS X ではすべてのフォントがキリル文字を含んでいるということなのだろうか? いや、そうではないのだ! 実は、もしも表示すべき文字が指定されたフォントに含まれていなかった場合には、Mac OS X は自動的にインストールされているフォントを調べてそれらの文字を含むものを探し、そういうフォントを代替として使うのだ。これは重要な事で、すべてのユニコード文字を含むようなフォントというのは巨大なものになってしまい、そもそもそういうものを作るのが不可能に近いからだ。こうして、フォントを作る人はそれぞれの得意の分野の文字のみに集中することができ、個々のフォントはユニコードのカバーする文字のうちのほんの一部を扱うだけでよいわけだ。

ところで、この Unicode Hex Input の入力方法は、Hex 値さえ知っていればどんなユニコード文字でも書けるという強みはあるものの、実際のタイプの方法として実用的でないのは明らかだろう。実際問題としては、もっとスムーズなタイプの方法が必要となる。その方法の一つが、キーボードマッピングだ。キーボードマッピングとは、あなたがタイプするキーと、その発生する文字コードとの対応付けのことだ。もちろん、普通のキーの1つ1つはそれぞれ ASCII 範囲内の1つの文字に対応している。けれどもここで Symbol フォントについて考えてみよう。Mac OS 9 では、Symbol フォントというのは ASCII 範囲に全く別の文字のセットをすげ替えて対応させていた。けれども Mac OS X ではそうではなくて、Symbol 文字はすべてユニコード文字となっている。つまり、これらの文字はもはや ASCII 範囲とは何の関係も無いのだ。そこで、Symbol フォントを使って文字をタイプしたいと思えば、全く別のキーボードマッピングを使わざるを得なくなる。あなたは普通通りにタイプするのだが、あなたのタイプするキーは普段とは違うキーコードを発生しているわけだ。このようにして、ユニコードのうちの Symbol 文字がカバーしている領域にも、あなたの手が届くことになるのだ。

このことを見るために、まず「地域情報」面で Symbol マッピングを有効に設定しておこう。次に、Application フォルダの Utilities フォルダから Key Caps を開き、フォントメニューから Symbol を選ぼう。さて、キーボードメニューを試してみよう。“U.S.”キーボードマッピングを選択した状態では、Key Caps はほとんどのキーのところで表示が空白になっているはずだ。けれども、“Symbol”キーボードマッピングを選択すると、ちゃんと文字が表示される。このように、重要なのはフォントの選択でなくて、マッピングの選択が重要なのだ。Symbol 文字はたくさんのフォントで登場している。(そして、先ほど述べたように、指定されたフォントにその文字が無い場合には Mac OS X が自動的に他のフォントを代用して正しい文字を表示してくれるのだ。)

キーボードマッピングが重要となるもう一つの例は、いわゆる「デッドキー」だ。普通の“U.S.”マッピングでは、デッドキーを使うことによっていろいろな発音符付きの文字、例えばいろいろなアクセントやウムラウトなどの付いた母音などにアクセスが可能となる。例えば、“U.S.”マッピングで Option-u とタイプしてから“u”をタイプすればウムラウト付きの u が表示される。この場合の Option-u は、このマッピングの処理においてすぐには文字を出力せずに次のタイプ入力を待ち、次にタイプされたキーに応じて出力すべき文字を決定する、という指令になっているのだ。“Extended Roman (U)”キーボードマッピングを「地域情報」面で有効にしておけば、このデッドキーの原理をさらに拡張してより多くの発音符付きローマ文字へのアクセスが可能となる。例えば、Option-a もデッドキーとなっていて、次にタイプされる母音に長音記号を付ける働きをする。

<http://homepage.mac.com/goldsmit/.Pictures/ExtendedRoman.jpg>

その他にも、各種の言語に応じていろいろなインプットメソッドが存在している。その中には(日本語のように)きわめて複雑なものもある。残念ながら Apple がこれまでに Mac OS X に装備してきたものは、Mac OS 9 で利用できたものに比べてまだ選択肢が少ない。例えばデーヴァナーガリー、アラビア語、ヘブライ語などのインプットメソッドはまだ Mac OS X 用のものは無い。場合によっては、特定の言語のためのインプットメソッドが特定のフォントが無いと Mac OS X に認識されないこともある。そういうフォントを得るには、必要なランゲージキットを Mac OS 9 CD から持ってきて Classic の中にインストールしなければならないこともある。また、必要なものが Software Update でしか入手できない場合もある。具体的なことはここでは述べないことにしよう。もしもあなたが特定のインプットメソッドを必要としているのなら、きっとあなたはその言語について、ユニコードについて、私が知っているよりも詳しいことを既にきっとご存じだろうから。

<http://docs.info.apple.com/article.html?artnum=106484>
<http://docs.info.apple.com/article.html?artnum=120065>

ウェブを探訪 -- ユニコードによる標準化の恩恵で誰の目にもわかりやすいのは、どんな言語のどんな文章でもウェブ上で普遍的に判読可能になるという点だろう。このことを実感したいと思うのなら、ぜひ Columbia 大学の Kermit プロジェクトによる UTF-8 Sampler ページを見てみるとよいだろう。URL は下に記しておいた。これを読むには OmniGroup のブラウザ、OmniWeb が必要となる。現在のところ、ユニコードフォントをきちんと扱うことができるのはこのブラウザだけのようだ。ページの表示を美しくしたいならば James Kass の Code2000 フォントをダウンロードしてあなたの Fonts フォルダのどれかの中に入れておいてから OmniWeb を動かすとよい。(わざわざ Code2000 をダウンロードするのも面倒、というのならばそれでもよい。Mac OS X 内蔵のユニコードフォントでも一応はきれいに表示される。けれども文字によっては「穴埋め文字」で代替されてしまうだろう。これは、本当の文字が存在していないという意味だ。)

<http://www.omnigroup.com/applications/omniweb>
<http://home.att.net/~jameskass/CODE2000.ZIP>
<http://www.columbia.edu/kermit/utf8.html>

この Sampler ページを OmniWeb で開くと、ルーン文字、中世英語、中世高地ドイツ語、現代ギリシャ語、ロシア語、グルジア語、その他多数の言葉が見える。欠けている文字も1つ2つあるものの、全体の見栄えは驚くほど素晴しい。唯一つの大きな問題点は、ヘブライ語やアラビア語など右から左へ書くスクリプトが逆方向に表示されてしまうということだ。(いや、つまり、普通の方向になってしまうのだ...)これらの文字はピクチャではないということに注意して欲しい! これらはすべて本物の文字で、あなたのシステムにインストールされているフォントを使って普通に1文字1文字表示されているものなのだ。ワードプロセッサで文字を表示するのと同じように。

HTML がどのような仕組みでブラウザにユニコード文字を表示させているのか、興味を引かれた読者もいるかもしれない。英語の普通の文字“e”がウェブページにあらわれるようにするには、ただ“e”を HTML 書類にタイプすればよいだけだが、それなら、例えばロシア語の「ю」(ユー)という文字をどうやって指定すればよいのだろうか? ユニコードでは、主な方法は2通りある。1つは、数値による指定の方法だ。おそらく読者の皆さんもご存じの通り、ダブルクォーテイション文字は HTML では“&quot;”という形で指定できるのだが、それと同様に“&#1102;”とすればロシア文字の「ю」になるのだ。(この文字のユニコード値の十進数表示が 1102 なのだ。)1つのページの中にユニコード文字がほんの数えるほどの個数しかないのならばこの方法でも充分だろうが、HTML を書いたり編集したりして長い書類を作ろうということになれば、こんな方法で1文字ごとに6バイトもタイプしなければならないのは、とても実用的とは言えないだろう。そこで、第2の方法が UTF-8 ということになる。

UTF-8 とは何かを考えてみるには、ユニコードをバイト列としてエンコードするにはどうすべきかをまず想像してみるとよい。誰でも最初に思いつくのは、個々の文字に対応する数値を直接バイト列として表現することだろう。例えばロシア文字「ю」の Hex 値は 044E なので、値が 04 のバイトと値が 4E のバイトとの2バイトであらわす、というアイデアだ。実際この方法には正式の名称が付いていて、UTF-16 と呼ばれている。けれどもこの方法は過去のエンコード法との互換性が全く無いという欠陥がある。ユニコードを実装していないブラウザやテキストプロセッサは UTF-16 書類の内容は1文字たりとも判読できないだろう。たとえその書類に含まれている文字がすべて ASCII 範囲に属する文字ばかりだったとしても。さらに悪いことには、UTF-16 書類はそのままではインターネットを通じて転送することができない。なぜならそこにあらわれるバイトのうちいくつかのもの(例えば先ほどの例では 04 というバイト)は適切な文字値とはみなされないからだ。そこで、適切な範囲の ASCII 文字に対応するバイト値ばかりから成るユニコードのエンコーディング法が必要となってくる。

それこそが、UTF-8 なのだ。UTF-8 では、インターネットで使える ASCII 文字のみから成る文字列によってユニコード文字がエンコードされる。また、もとの ASCII 文字セットの構成要素となる文字は、すべてその文字自身としてエンコードされる。こうしておけば、UTF-8 を理解しないアプリケーション(ブラウザやワードプロセッサなど)であっても、ユニコード文字については単なる ASCII 文字列として表示されて読めないゴミとなってしまうものの、少なくとも普通の ASCII だけは、そのまま正しく読める。HTML 書類がブラウザに対してそれが UTF-8 書類であることを指定するには、<meta> タグによって“charset”を“utf-8”に設定すればよい。OmniWeb はこのタグを認識しており、そのユニコード文字列を正しく解釈してくれる。例えば、UTF-8 エンコーディングではロシア文字「ю」は D18E となる。D1 も 8E も、どちらも正規のASCII 文字バイトだ。Mac ではこれらのバイトはそれぞれ em-ダッシュと鋭音の“e”をあらわしている。実際、UTF-8 と指定された HTML でこれら2文字をタイプするだけで、OmniWeb でそのページを開けばロシア文字「ю」が表示されるのだ。

もしもあなたがユニコードの文字セットについてもっと知りたいと思うなら、またあなたのフォントを標準に照らしてテストしてみたいなら、あるいはどれか特定の言語に焦点を絞って調べたいのなら、Alan Wood のウェブページを読んでみることをお勧めする。これは非常に良く整備された入門情報で、あなたの勉強の出発点として最適だと思う。また、TidBITS 読者の Tom Gewecke(彼はこの記事の準備のためにも大いに協力してくれた)も、Mac における言語のサポート状況についての有益な情報を盛り込んだページ(特に Mac OS X とユニコードに重点を置いたもの)を作ってくれている。

<http://www.hclrss.demon.co.uk/unicode/index.html>
<http://hometown.aol.com/tg3907/mlingos9.html>

あなたのフォントを探訪 -- ところで、あなたのハードディスクに話を戻すとして、あなたのシステムにあるフォントのうちどれがユニコードフォントか、それぞれがどんなユニコード文字を含んでいるか、というようなことが気になるかもしれない。残念なことに、そういうことを調べる手段を Apple は提供してくれなかった。Key Caps を使ってもこういうことはわからない。なぜなら、単なるキーと修飾キーの組み合わせだけに対応する文字の範囲はユニコード文字セット全体から見ればほんのちっぽけな範囲に過ぎないからだ。サードパーティーのフォントユーティリティも、ほとんどのものは ASCII の範囲外については何も言ってくれない。けれども、特筆すべき例外の1つが WunderMoosen から出ている $15 の FontChecker だ。このプログラムはユニコード文字の全範囲を任意のフォントで探究することができる。あなたの Mac でユニコードフォントについて何か知りたいと思うなら、これは必須のユーティリティだろう。ドラッグ&ドロップもサポートしているので、時にはこれをインプットメソッドの代用として使うこともできる。このユーティリティなしには、私はこの記事を書くこともできなかっただろう。

<http://www.wundermoosen.com/wmXFCHelp.html>

また、UnicodeChecker も訳に立つ。これは Earthlingsoft から出ている無料のユーティリティで、すべてのユニコード文字を表示できる。FontChecker とは違って、フォントによって整頓するのではなく、ただすべての文字を順番に表示してくれるだけだ。さらには、“supplementary planes”内の文字さえも表示できる。(そういう文字のいくつかを見たければ、James Kass の Code2001 フォントをダウンロードするとよい。

<http://homepage.mac.com/earthlingsoft/apps.html#unicodechecker>
<http://www.unicode.org/Public/UNIDATA/>
<http://home.att.net/~jameskass/CODE2001.ZIP>

まだまだこれから -- ユニコードは、まだ初期の発展段階にある。初期の発展段階と言えば Mac OS X も同じことだ。だからもし皆さんがこの記事を読んで、Mac OS X 上のユニコードがツールと言うよりオモチャに過ぎないのではないか、という風に感じたとしたら、それは正しい感覚と言える。Mac OS X によるユニコードのサポートが本当に有用なものとなるためには、まだまだいろいろの面において格段の成長を経ることが必要だろう。

現時点での大きな問題は、ユニコードをサポートしていないアプリケーションが多すぎることだろう。ブラウザについては先ほどから触れてきた。ユニコードのウェブページを正しく見るには OmniWeb を使う必要がある。(他のブラウザで先ほどの UTF-8 Sampler ページを開いてみれば、その違いは一目瞭然だろう。)また、ユニコードをタイプしてみる実験で私が TextEdit を使うように書き、他のワードプロセッサなどを使うようにとは書かなかったのも、ちゃんと理由があってのことなのだ。さらには、アプリケーションの説明書を読んだだけではそのアプリケーションがユニコードをきちんと扱えるかどうかはわからない、ということも覚えておいて欲しい。ソフトウェア会社というものはユニコードの用語をもっともらしく振りかざすのが好きなようだが、用語を振りかざすことと、実際に装備をしていることとの間には、深くて暗い川がある、というものだ。Microsoft Word X は「サポートされているすべての言語でテキストの入力、表示、編集が可能」と称しているけれども、そもそもユニコードの Hex Input メソッドさえも全く受け付けないし、単にユニコードの文字をペーストするだけのことすら、まともにできないことが多い。BBEdit はユニコードのテキストファイルを開いたり保存したりできるが、ユニコード文字の表示はあまり良くない。レイアウトがずれることもよくあるし、もともと一度に1つのフォントしか表示できない。(先ほど説明したように、ユニコード文字というものは本来いろいろのフォントを使って表示されるべきものなのだ。)BBEdit はまたユニコードの Hex Input メソッドも受け付けないので、ユニコードファイルの実際の編集の作業には使い物にならない。

オペレーティングシステム自体もまだまだ進化の必要がある。ユニコード標準では左右両方向のスクリプトや複数文字の結合についての要請事項があるが、Mac OS X はこれらについてまだ完全には扱うことができない。インストールされているフォントはまだ文字セットを全部カバーしきれていない。まだまだもっと多数のインプットメソッドを装備する必要もある。また、Apple はキーボードマッピングを作成するためのユーティリティを提供するべきだし、あわせてごくシンプルなインプットメソッドも提供して欲しい。そうすれば、ユーザーが自分の好きな文字に簡単にアクセスできるようになるだろう。他方、ユニコード標準の方は現在着々と改訂・拡張による整備が進んでいる。同時に、Windows ユーザーたちはいくつもの点で Mac OS X よりもはるかに進んだ各種言語とユニコードのサポートを内蔵するシステムを享受しつつある。願わくは、早く事態が進歩して Apple も情勢に追い付くことができ、Mac OS X におけるユニコードのサポートの約束が実現されてゆく日が来て欲しいものだ。その日こそ、Mac が単なるデジタル・ハブではなくて、テキスト・ハブにもなれる日なのだから。


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