TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#626/15-Apr-02

TidBITS も 12 歳である!Mac とインターネットについて書き続けて 12 年、我々は次にどんな奥の手を用意しているのであろうか?詳細はこの記念号の記事に読み進んで欲しい。Adam はさらに彼の最新の書下ろし本 iPhoto for Mac OS X: Visual QuickStart Guide と、これに派生して経験した出版にまつわるユニークな事情について語っている。ニュースの部では、Dantz が Retrospect 5.0 をアップデート、Now Up-to-Date & Contact 4.2 が Mac OS X と Palm との同期に対応、そして CE Software が QuicKeys X 1.5 をリリースしたことを取上げている。

記事:

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MailBITS/15-Apr-02

Retrospect アップデータで二つの問題に対応 -- Dantz Development は Retrospect Express と Retrospect Desktop/Workgroup/Server 向けにアップデータをリリースした。これは TidBITS-624 “Retrospect 5.0 で Mac OS X のバックアップが可能に” でもレビューした同社の新しいバックアップソフトウェアに関する二つの問題に対応するためのものである。最初の問題は Retrospect の全てのバージョンに関係するもので、LaunchCFMApp プロセスが走っている間に(LaunchCFMApp は Carbon アプリケーションを開くために使われる)Mac OS X の RetroRun ユーティリティで発生するメモリリークで、これを解決している。二つ目に解決されたのは、Retrospect Desktop/Workgroup/Server に関係するもので、"elem.c-812" で挿入される目障りなチェックエラー表示である;これは Retrospect が Mac OS 9 下で動いていて、かつやはり Mac OS 9 下で Personal File Sharing か AppleShare IP のどちらかが稼動している Retrospect Client コンピュータをバックアップしようする時に発生する事がある問題である。Retrospect 5.0 の全ユーザがアップデートすべきである;このアップデータは無償である。Retrospect Express 5.0 アップデータは 3.6 MB で、Retrospect Desktop/Workgroup/Server アップデータは 4.1 MB である。[ACE](カメ)

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06775>(日本語)Retrospect 5.0 で Mac OS X のバックアップが可能に
<http://www.dantz.com/index.php3?SCREEN=intro_mac_retrospect#update>

Now Up-to-Date & Contact 4.2、Palm と同期 -- 新 Palm Desktop 4.0 (TidBITS-622 の “Palm Desktop 4.0 リリースされる” 参照)のリリースから時を待たず、Power On Software は Now Up-to-Date & Contact 4.2 for Mac OS X をリリースした。これで人気のカレンダーとコンタクトマネジャーの Palm に対する同期機能が追加された。その他の新機能には、同期セッションを元に戻す事のできるバックアップユーティリティ、Now Contact から iPod へコンタクトをロードすることができるようにする iPod モジュール用の無償の NowPak、そして多くのヨーロッパの祝祭日を加えた新しい祝祭日ファイルがある。もし Palm OS ハンドヘルドももっていないしそして新たな祝祭日ファイルもいらないならば、アップグレードすべき理由はない。加えて、アップグレードを考慮すべきは Mac OS X のユーザーのみである - Now Up-to-Date & Contact 4.0.3 が Mac OS 8.6 から 9.2.2 までに対しては最新版である。Now Up-to-Date & Contact 4.2 はバージョン 4.0 か以降の所有者に対しては無償である;それ以前のバージョンからのアップグレードは $50 で、完全版は $120 である。お試し版もあり 15.2 MB のダウンロードとなっている。[ACE](カメ)

<http://www.palm.com/software/desktop/mac.html>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06760>(日本語)Palm Desktop 4.0 リリースされる>
<http://www.poweronsoftware.com/products/nudc/
<http://www.poweronsoftware.com/products/nudc/contact2ipd.asp>

QuicKeys X 1.5 メニューサポートを追加 -- CE Software はその自動化ユーティリティの新バージョンである QuicKeys X 1.5 をリリースした(TidBITS-602 の “QuicKeys X: 幽霊の再来”参照)。今度はメニュー項目を名前か場所で選択できる;とはいっても全てのアプリケーションで働くわけではないが(例えば、Eudora とか Classic アプリケーション)、他の新機能である Menu Clicks がその不足をほとんど補ってくれる。Menu Clicks は実際の所、新しい Multiple Clicks ショートカットの一つの具体的な使い方である。Multiple Clicks とはユーザーが容易に定義、変更できる一連のクリック動作であり、QuicKeys X はそれを高速で実行する。CE Software は、ウィンドウを閉じる、縮める、ズームするといったウィンドウ操作を追加したが、以前のバージョンにはあった他の基本的なウィンドウ操作、例えば次のウィンドウに切替えるといったことが未だできない。他に新しいこととして、Classic をスタート・ストップするショートカット、ネットワークサーバへの接続が改善されたこと、クリックの位置座標の指定が、スクリーン全体での位置、ウィンドウからの相対位置、マウス地点からの相対位置、のいずれでも指定が可能なことがあげられる。短所として、テキストを挿入する(テキストをタイプするに対して)ショートカットはテキストが強制的に Helvetica 12 に、挿入点のフォントとサイズを継承するのではなく、されてしまうことである。CE は我々が報告した数時間後にはこのバグを修正している;数日内に出されると思われるバージョン 1.5.1 に注意をはらっていて欲しい。QuicKeys X 1.5 は $80 である;QuicKeys X 1.0 からのアップグレードには $16 の値段をつけている。クラシック Mac OS 用の QuicKeys からのアップグレードは $65 である。30日限定のデモ版もあり 7.6 MB のダウンロードとなっている。[MAN](カメ)

<http://www.quickeys.com/products/qkx.html>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06603>(日本語)QuicKeys X: 幽霊の再来


新刊書! iPhoto ビジュアルガイド

文: Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

誰でも、何の心構えも出来ていない時に、突然ひづめの音も高く歩道を打ち鳴らし、角を低く構えてこちらに向かって突進してくる雄牛に出くわすような事態を経験することが、時にはあるものだ。たいていの場合、普通の人なら、私も含めてだが、さっと横に退いて雄牛の突進をかわす、という対処をするものだろう。けれども今年一月の Macworld Expo 会場での私は、無謀にも雄牛の角を両手で掴んでしまった。雄牛を地面に組み伏せるまでには至らなかったとしても、少なくとも牛の背中を楽しんでいるというのが現状だ。

ご存じの通り、Steve Jobs が iPhoto を発表したのがこの Macworld Expo のキーノートでだった。私は同日の午後サンフランシスコに到着したのだが、Starbucks でコーヒーを飲みながら Jeff Carlson と打ち合わせた結果、Jeff がキーノートの記事を担当して私が iPhoto について書くことになった。iPhoto は、その場でダウンロードしてすぐにテストを始めることができた。もちろん iPhoto に未完成な点が残っているのは明白だったが、同時に Apple のこの製品がヒット作になるだろうということも明らかに感じ取れた。明けて翌日、 Expo が開幕すると、私はまっすぐに Peachpit 社のブースに直行して Peachpit の出版編集者の Nancy Ruenzel を見つけ、iPhoto Visual QuickStart Guide の著作を私にやらせてくれないかと頼んだのだった。もちろんその場では、他の人が他の出版編集者に声をかけているかもしれないということで、はっきりとした返事はしてもらえなかったが、Expo の最終日になって彼女からのメールが届き、本を書いて欲しいという依頼を受けた。私は大喜びでイエスの返事を出した。そろそろまた本を書きたいと思っていたところだったし、iPhoto という題材はその内容の範囲が決まっている(“インターネット”とか“Mac OS X”というような際限なく範囲の広い内容ではない)ということで理想的な題材だったし、また間違いなく人気の出るソフトウェアだから、という理由もあった。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06683>(日本語)iPhoto がiアプリの仲間入り

Peachpit と私はできるだけ早く本を完成させたいという点で合意していたので、私はサンフランシスコから家に帰る飛行機の機内で早速書き始めた。それから6週間、私は錆び付きかけていた自分の QuarkXPress テクニックに磨きをかけ、iPhoto についてありとあらゆることを調べ上げ、数え切れないほどのデジタル写真を撮っては読み込み、何とか 124 ページの本を書き上げた。けれどもその作業を進めるうちに、私たちが大きな問題に直面していることが、明らかな事実となって浮かび上がってきた。

出版の裏事情 -- その問題について説明するためには、出版界のしくみについて簡単に見ておく必要がある。著者が本の原稿を出版社に届けた後、それを印刷して配布できるまでにはほぼ4週間から6週間ほどかかる。本のレイアウトや校正などの作業が必要な場合にはもっと長い期間が必要だろう。私が以前に書いた Eudora Visual QuickStart Guides と同じく、今回の本でも私は「パッケージ済みの本」を書いた。つまり、すべてのレイアウト作業は私が自分でやり、コピー編集と索引付けについては私が自分で費用を出して専門の業者に依頼した。完成して出版社に届けた時点では、すぐに印刷機にまわせる状態になっていたのだ。

それにもかかわらず、印刷と配布にかかる時間を考慮すれば、私が3月上旬に仕上げたとしても、実際に本屋の店頭やウェブに登場するのは4月中旬以降になってしまうのだ。普段なら、この程度の遅れは我慢の範囲内と言えるかもしれないが、一方で本というものは印刷や配布にかかるコストを回収するために、ましてや著者の印税や出版社の利益を確保するためにも、最低限でも6ヵ月以上は店頭に置ける必要があるのだ。iPhoto についての本を書き進め、オンラインで iPhoto についての議論を追っていくうちに、私には Apple がもうじき iPhoto のアップデートを出すだろうということがはっきりと確信できるようになってきた。一番早い可能性としては、7月のニューヨークでの Macworld Expo だろう。もしそうなら、この本はほんの2・3ヵ月しか店頭に置けないことになる。Apple からは何の発表も無かったが、Peachpit にとってみれば私が3月上旬に書き終えた本を何千部も印刷するというのは財政的リスクがあまりにも大きすぎた。私の立場から言っても、リスクを負うのが Peachpit の側だとしても、やはりタイミングの悪さから何千部もの本を回収せざるを得ないというのはどう見ても嫌な気分だ。けれども、とにかく私は本を書き上げてしまったのだし、それに iPhoto は2ヵ月の間にすでに百万回以上ダウンロードされていたので、本を出せば多くの人にすぐに役立ててもらえることは確実だと思えた。

そこで、私はこの本をその商業的価値を失わずにインターネットで PDF フォーマットとして配布できる方法はないかと考え始めた。いくつかアイデアが浮かんだが、最終的に決定的なアイデアを思いついたのは Tonya だった。「本を注文したら電子バージョンの方がすぐに手に入って、あとで改訂版が出た時に印刷バージョンの本を送ってもらえる、というのはどう?」と言ってくれたのだ。これは完ぺきな解決法だ。読者に電子本の値段について不満を与えることもなく、改訂版によって売り上げが減ることもなく、しかも何時になるかもわからない改訂版を何ヵ月も待たずに読者に今すぐ本を利用してもらえるからだ。

というわけで、この方法で私たちは本を出すことにした。ただ、きちんとした PDF に仕上げるのにてこずったために、思ったよりも時間がかかってしまったが。現在のところ、これだけの柔軟性を許してくれる書店は Amazon だけのようで、注文は Amazon 経由のみとなっている。もちろん、読者が第1版をダウンロードできて、第2版が完成次第自動的に発送される、という条件を受けてもらえるのならば、他の販売業者にもぜひこの本を扱ってもらいたいと思う。

この本の定価は $20 で、Amazon での現在の売価は $14 となっている。もしも下記のリンクから購入して頂ければ、その分 TidBITS に通常より 15% 増しの収入が入ることになっている。今のところ、予定は次のようになっている。Amazon が電子バージョンの本をオンラインに置くのが 2002 年 4 月 16 日の火曜日、その日中に下記の最初の方のリンクはアップデートされて電子バージョンがダウンロードできるようになるはずだ。今はまだアップデートされていないので具体的にどんなページになるのかは私にはわからない。もしもページがまだアップデートされていなくて予備注文段階のことしか書いてなければ、もう1日ほど待ってから試して欲しい。下記の下のほうのリンクは、電子バージョンの本を Amazon サイトの Digital Library からダウンロードする方法を説明したページだ。あなたが本の注文手続きを済ませれば、このページに私の PDF ファイルが登場するはずだ。おわかりのように、今この原稿を執筆時点ではまだこの本はサイトに出ていないので、具体的な説明はできない。もし必要ならば、追加情報のアップデートを TidBITS ウェブサイトに掲示したいと思う。それから、Amazon のサイトを見ると、すでに予備注文を済ませた分、および外国からの注文の分にはダウンロードはできない、という断わり書きがあるが、私は現在 Peachpit と共にこの方針をくつがえすことができないかと交渉中だ。

<http://www.amazon.com/exec/obidos/ASIN/0321121651/ref=ase_tidbitselectro00A/>
<http://www.amazon.com/exec/obidos/tg/digital/octopus-rules/-/books/0321121651/>

PDF の良い点、悪い点 -- この本の制作時点ではこれを電子本として配布しようなどということは全く考えずに作られたということもあって、PDF 版の作成にあたってはいくつかの良い点と悪い点とが目立った。悪い点と言えば、とにかくこの本はコンピュータ画面での使用を考慮しないで作られている。この Visual QuickStart Guides シリーズの本はすべて共通の QuarkXPress テンプレートを使っており、コンピュータ画面に合うように書き直すのは不可能だった。もう1つのやっかいな点は、Amazon が配布できるファイルのサイズを 10 MB 以内に制限していることで、我々はスクリーンショットの画像ファイルを極端に圧縮しなければならなかった。画像にズームインして拡大して見るとか、プリンタにかければ鮮明な画像になるとか、そういうことはあきらめざるを得なかった。プリンタにかけて自分で印刷したい読者のために、冒頭のページにメールアドレスを載せて、印刷に向いた 25 MB のバージョンをリクエストできるようにした。(フルのペーパーサイズに印刷するには、ページ設定ダイアログで 125% にスケールアップするとよい。)

良い点と言えば、この本は Acrobat Reader でフルに検索可能で、専門家の作品である索引の能力を存分に拡張してくれる。(注意して欲しいのは、コンピュータは決して索引は作れないということだ。コンピュータが作れるのは同一用語の一覧に過ぎないのであって、コンセプトベースの本物の索引は熟練したプロフェッショナルの手に依らなければ出来ないのだ。)索引と言えば、巻末の索引も、巻頭の目次も、どちらもホットリンク付きになっている。索引や目次の項目をクリックすれば、即座にその場所にジャンプしてくれる。それだけでなく、画面の左側には章ベースの階層的ブックマークが並んでいて、本全体の内容が一目で見て取れる。もちろん、ここでもクリック1つでどのページにもジャンプできる。

というわけで、本物の本のようなずっしりした蝕感は無いし、ぺらぺらと手でめくることもできないが、この PDF に縦横に内蔵されたリンク構造と、1ページには1つのタスクという Visual QuickStart Guides 独特のページスタイルとが相まって、なかなか魅力的なものに仕上がっていると思う。他の本ではこうはうまくは行かないかもしれないが、今回のこの本に関して言う限りでは、電子バージョンも悪くないと思う。

本の内容は? -- Peachpit Press の Visual QuickStart Guides シリーズのこれまでの本をご覧になったことがあるなら、この本でも注意深く同じアプローチの方法がとられていることがおわかりになるだろう。1つのページは iPhoto の1つの動作について説明しており、その動作を実現するために必要な操作を1段1段ステップに分けて詳しく紹介している。ステップごとの豊富なスクリーンショットも付いている。それだけでなく、本の各所にわたってさまざまな役に立つヒントが何百もちりばめられており、隠し機能を説明したり、起こりうる問題への対処の仕方を示したり、また能率良く作業を進めるための助言を与えたりしている。この本の章のうち、写真の読み込み、整理、編集の各章からいくつか便利なヒントを選び出してここに列挙してみよう。ちなみに、それ以外の章としては本の制作、写真の共有、トラブルシューティングの各章がある。

本のコピーについての考察 -- 電子本バージョンを売ることについて Peachpit が最初に Amazon と交渉した時、Amazon の担当者の返事は「当分は暗号化した PDF を販売するための装備が無いから」というものだったという。私はこれを聞いて、「暗号化した PDF!」と、思わず叫んでしまった。「私は暗号化なんてして欲しくない!」と。これで、三者とも安堵のため息をついたものだ。このような状況の場合、暗号化に手を出すことは、ありとあらゆる厄介事に関わることになるからだ。

結局、この本をコピーすることに対する私の態度はこうだ。もともとこの本を手にすることができるのは、すでに料金を払った人々だけだ。そして、この電子本の前書きの部分で、私は読者に対して、この電子本は普通の本を貸し借りするのと同じ気持ちでどうぞ貸し借りして欲しい、そして、借りた人が本を気に入ったらぜひ自分でも一冊買うようにと勧めて欲しい、と明言している。いずれ時間が経てば、結局は人手から人手へと渡って、あちこちに本のコピーが出回ることになるだろう。でも、それは良いことなのだ! この電子本はいずれ何ヵ月か経てば旧版になってしまう。内容の更新された、紙に印刷した新バージョンの本に置き換わる。そして、印刷した本をコピーするのはたやすいことではないのだ。もちろん何人かの人々は電子本を無料で手に入れて読み、買うのはやめようと思うかもしれない。けれども私はそれはかまわない。なぜならそういう人々はどちらにしてもこの本を買ってはくれない人々なのだ。だから私は何も損はしていないわけだ。別の人々は電子本を無料で手に入れて読み、これは役に立つかもしれないと思い、料金を払って印刷版の新バージョンを心待ちにしてくれるかもしれない。これは私にとって素晴しいことだ。この場合は、無料のコピーが出回っていることは有効な広告として機能しているわけだ。もちろん、それ以外にも電子本を無料で手に入れて読み、役に立つと思いながら結局料金を払ってくれない人々も大勢いることだろう。そう、これは、出版業界に対して破壊的な活動を続けているあの施設、つまりあの図書館という施設を利用する人々と、結局は同じことなのだ。正直言って、私はそれはそれで構わないと思う。誰かが私の努力の結晶の恩恵を受けてくれて、それが私のメールを読む手間を増やすことにならないというのであれば。

というわけで、私はこの配布方法に大きな期待をかけている。この方法ならば、人々が友人との間で無料で貸し借りするのを制限する必要もなく、かつ以下に挙げる3つの点で人々に本を買おうという動機を与えているからだ。

そしてもちろん、私自身、とても楽しみながらこの仕事をすることができた。それ自体おもしろい内容の仕事で、その成果を実感することができ、その上、保護の加えられていないデジタルコンテンツをもとに実際にビジネスモデルを築くことが可能だという事実を、自分の財布でもって実証できるのだから。だから皆さん、もしも皆さんが iPhoto をお使いで、このプログラムを最大限有効に利用できるための数多くのヒントを含んだ説明書に興味がおありなら、どうぞこの iPhoto for Mac OS X: Visual QuickStart Guide の電子本バージョンを読んでみて、このビジネスモデルの実証に参加してみませんか。


TidBITS が満12歳に

文:Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
訳:倉石毅雄 <takeo.kuraishi@attglobal.net>

インターネットで途切れることなく発行し始めてから、今号が TidBITS の12周年記念にあたる。今までの記念号では TidBITS の初期の歴史について書いたり、今までの経験から学んだこと、そして昔に較べ、いかに変化があったかについて書いた。これらの記事は今でもあてはまるし、正確だ。そこで今回は同じ内容を繰り返すのはやめておき、(特にその頃読者でなかった人達には)記事のデータベースで元の記事を読むよう勧めるにとどめておく。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbser=1166>(日本語)TidBITS の刊行満 6周年
(日本語)TidBITS は今週で創刊 7 年を迎え
(日本語)TidBITS は創刊 8 周年を 祝う
(日本語)TidBITS 創刊 8 周年を記念して
(日本語)TidBITS の 9 周年記念号にあたる
(日本語)TidBITS 10 年の教訓
(日本語)TidBITS、11 年を経て

私達の初期の頃の遺物の発掘には Google のお世話になった。Google は過去 20 年間分の Usenet アーカイブをオンラインで見れるようにする作業をつい先日終了した。これは 7 億以上のメッセージにあたる。このアーカイブがどれだけ正確であるか判断するなど私の記憶力では到底不可能だが、それでも二つの興味のあるメッセージを見つけた。comp.sys.mac ニュースグループへの TidBITS の発表と、comp.sys.mac.digest ニュースグループへ、binhex した HyperCard スタックとして送付された最初の TidBITS だ(Mac OS X で HyperCard スタックを読むための手順を全て覚えていて出来る人にはおまけ点をあげよう)。

<http://groups.google.com/groups?selm=3938.2632f1c2%40vax5.cit.cornell.edu>
<http://groups.google.com/groups?selm=CMM.0.88.641582494.werner%40rascal.ics.utexas.edu>

今年は過去の成功を振り返ったりするのはやめておきたい。その代わり、TidBITS が市場で取引されている会社であると仮定してみて、今後の経営上にどのような挑戦が待っているかを公表してみたい。例えば Apple の倒産などといったものは極端過ぎる(そしてあり得ない)ので、それらに備えるのはあまり意味がない。そこで、夜に眠れなくなってしまうような二つの心配事に絞ってみたい。うちの小さな子供のおかげで既に眠るのには苦労しているが。他の小さな団体でも似たような懸念事項があるだろう。私の考えやこの後の TidBITS Talk での議論でこれについての考えをまとめる助けになるかもしれない。

スタッフ -- 新しい TidBITS プロジェクトの責任を誰がとるかという話になると、決まって話題に上るのが“バスにはねられたら”という心配だ。どのような小さな団体でも個人個人が重要であり、どのような理由にせよ誰かがいなくなってしまった場合にどう対処するかという計画は非常に重要だ。今まで、私達はパスワードと内部情報さえあればスタッフの誰でも TidBITS の号を書いて配布できるよう準備して来た。何年もの間、私一人で TidBITS を発行していたのは事実だが、色々な面に手を広げて複雑になるにつれ、一人で全てをこなすのは想像すら出来ない。

しかし、短期間であれば、一人で全てをこなせるというのは TidBITS の目標であって良いと思う。私達は、TidBITS を書いて編集する部分はうまくやっており、新しい知識や新鮮な意見を必要とする時には外部の著者を入れるようにしている。そして多くの発行者と同じだろうと思うが、もし資金が無尽蔵にあれば TidBITS スタッフに引きずり込みたい人のちょっとしたリストが頭の中にある。

それよりも心配なのはスタッフが技術とどう関係しているかだ。もし問題の汎用の解決方法がない場合、自分らの手作りの方法で対応してきた。“応用解決策”とでも言って良い。むしろ苦肉の策だ。私達の記事のデータベースや TidBITS Talk アーカイブなど、私達は(“私達”は正確には“Geoff”だが)必要なコードを設計し、書いて、データベースを裏からサポートして来た。結果には非常に満足しているが、自家製の方法では理想に比べて見張ったり管理などの必要が多いのは否定できない。Geoff の“バスにはねられたら”指数は短期的には非常に高いということを意味する。逆に、私の“バスにはねられたら”指数は短期的には比較的低いが、TidBITS を長期的に見れば言うまでもなくかなり高い。

技術 -- 私達の総合的な“バスにはねられたら”指数を下げるという点はそのまま第二の挑戦につながる。クリントン大統領の最初の任期の頃からあった私達のインターネットサーバをもっと新しいものに更新する必要性だ。現在、私達が主の Web と電子メールサーバ、データベースと検索、そしてメーリングリスト用に使用しているのは Power Mac 7600 二台、Power Mac 7100、Performa 6400、そして Power Mac 8500 だ。さらに多くの場合、WebSTAR、EIMS、FileMaker、Lasso、そして ListSTAR などは最新から数バージョン前のものを使用している。これらの Mac とプログラムの年齢が問題なのではない。必要を満たす古い技術を使用することには何ら問題はないし、これらで十分に用が足りる。しかし同時に、これらの古いシステムを新しくすることを考え始めている。

読者の意見が大事 -- 当たり前だが、これらの作業を行っているのは、より読者の役に立ちたいからだ。そしてそのためにも、私達の技術的な挑戦や解決策に関心がある人たちは、私達が何を良くやっていて、何を改善できて、よりうまくやる方法、新しいシステムで出来る新しいアイデアなど、TidBITS Talk 議論に加わって述べて欲しい。遥か昔、私達は読者の皆に検索エンジンコンテストにサンプルのシステムを開発してくれるよう依頼して、いくつもの優れた検索エンジンのうちから選んだ。それから遥かに増大したデータでは今回はそのようなアプローチは無理かもしれない。だがそれでも、読者の意見は大事だ。これらのシステムを使用しているのはあなた達なのだから。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbser=1045>
(日本語)TidBITS 杯争奪 Macintosh 検索ツール決定戦
(日本語)TidBITS 牧場の決闘
(日本語)勝敗の行方は

この開発は大きな作業となることに疑いはない。だが、それをまとめるにあたって楽しみもあることを期待している。幸運なことに、特別にスケジュールがあるわけでもないし、必要とあれば旧友のサーバソフトらの必要なバージョンが Mac OS X への移行を果たすのを待つのも気にならない。


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