血走った目、手元の定まらない手、それに牛犬の Clarus があちらにもこちらにも - これらすべてが一堂に会するところなんて MacHack 以外に考えられる?Adam が MacHax ベスト・ハック・コンテストの勝者についてお伝えする。さらに今週号では、Chris Barylick が公立学校とユーザーグループがお互いにどう助け合えるのか検証し、Jeff は先週からの Apple のソフトウェアアップグレードの狂騒を追いかける。そして、Adam の iPhoto Visual QuickStart Guide がついにペーパーバックで登場。
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iPhoto Book 出版される -- 私の最新の本である iPhoto 1.1 for Mac OS X: Visual QuickStart Guide が、今や全国の一般書店で $20 の値段で伝統的な形である紙の本として入手できる。今年の 4月、Peachpit と私は PDF 形式で電子本を出版した (顛末については TidBITS-626の 新刊書! iPhoto ビジュアルガイド
を参照)。これは、Amazon を通してこの本を予約した人に対して行ったものである;これらの人に対してはもうすぐ予約されたハードコピー版が届けられるはずである。この電子的に予稿を出版するという実験的試みは、どこから見ても大成功であった;私自身まだ実際の販売部数の数字は貰っていないが、この本は Amazon のベストセラ−リストで最高 8位にまでリストされた事がある。もちろん今はずっと下まで下がったとは言え、そしてたとえ一時的にしろ、Harry Potter のような本と肩を並べてベストセラーに顔を出したことを不満に思う作者はいないと思う。この本の現在の版の電子版をどうやってリリースすれば一番良いかについても Peachpit と検討中である。いずれにしても、一度地元の本屋にまで足をのばしてこの本を手にしてみて欲しい;もしお気に入りの本屋が身近に無ければ、下記のリンクから $14 で Amazon を通してオーダーできる。この場合、余計な事だが、私の手元には売価の幾分かが還元される。[ACE](カメ)
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06787>
<http://www.amazon.com/exec/obidos/ASIN/0321121651/tidbitselectro00A/>
Macworld Expo Exhibit への無料パス -- Peachpit Press といえば、同社の Kim Lombardi の言によると、今度の New York City での Macworld Expo のショー会場への無料パスがかなり余っていて、希望者には誰にでも郵送してくれるという。もし無料パスがあるのなら行って Macworld Expo では何が起っているのか(例えば私の自由講演 - 課題は来週発表する)覗いてみようという気になる人は、是非自分の住所を添えて <macworldny@peachpit.com>へメールを送られたい。折返し、Javits Convention Center へ無料で入場できるハガキが手元に郵送される。もうショーまで 2週間しかないこの時期なので、ハガキが事前に手元に届くよう今すぐ行動を起すべきである。[ACE](カメ)
文: Jeff Carlson <jeffc@tidbits.com>
訳: 佐藤浩一 <koichis@anet.ne.jp>
先週は、ソフトウエア・アップデートのお知らせが何度も画面に表示されたことから判断すると、四半期末の締め切りに追われてというわけではないだろうが、Apple のプログラマー達はきっとこぞって必死に仕事をしていたに違いない。というのも、Mac OS X と Mac OS 9 両方に対して様々なアップデータとユーティリティ - セキュリティ機能の強化に関する重要なものから機種に特有なものまで - が多数リリースされたからだ。ここで、簡単に紹介しよう。
Security Update July 2002 -- 最近、Web 共有および他のサーバとの接続に使用される Unix の 2 つの基本構成要素でいくつかの脆弱性が発見された。Security Update July 2002 は、Apache においてサービス妨害攻撃が引き起こされる問題と OpenSSH で侵入者がネットワーク経由でコードを実行しうる問題を解決する。アップデータは 1.2 MB のダウンロードだ。
<http://docs.info.apple.com/article.html?artnum=120131>
Apple は、問題が発見されてから数日中にアップデータを用意したり、変更された部分のさらに詳細な情報を Security Updates ウェブページに掲載するなど、このようなセキュリティホールへの対応は良くなっている。今回のケースでは、Apache と OpenSSH は標準で使用しない設定になっているので、ほとんどの Mac OS X ユーザには影響がないであろうことも一筆の価値があるだろう。Apple はまた、Security Announce メーリングリストに、CERT Advisory で述べられている複数の DNS Resolver ライブラリに存在する別のバッファオーバーフロー問題は、Mac OS X と Mac OS X Server には影響しないとの電子メールを送っている。
<http://www.apple.com/support/security/security_updates.html>
<http://www.lists.apple.com/mailman/listinfo/security-announce>
<http://www.cert.org/advisories/CA-2002-19.html>
Networking Update 1.0 for Mac OS X -- Apple は Mac OS X 10.1.5 Build 5S60 が動作しているマシンに対する Networking Update 1.0 をリリースした(Build 番号を確認するには、Apple メニューから「このコンピュータについて」を選び、バージョン番号をクリックする)。 Apple によれば、このアップデートはスリープから復帰した後あるいは再起動後のインターネットやネットワークへのアクセスを改善するとのことだ。ダウンロードするためのサイズは284K である。
<http://docs.info.apple.com/article.html?artnum=120124>
iMac Update 1.0 -- もし iMac で Mac OS X 10.1.5 Build 5T91 を動かしているのなら、このアップデートは上記の Networking Update を含み、さらにApple 以外のアプリケーションをインストールするためのサポートを改善する。アップデータは 2.5 MB だ。
<http://docs.info.apple.com/article.html?artnum=120130>
Repair Privileges Utility 1.0 -- Mac OS X が Unix を核に持つことの副作用の一つとして、全てのことが権限を基にしていることが挙げられる。ソフトウエアのインストール、初期設定の変更、印刷など、これらはユーザがその処理を実行出来るかどうかで決定されるのだ。もしこの権限がおかしくなったら、この Repair Privileges Utility 1.0 を走らせて初期状態に戻すことができる (少なくとも Mac OS 自体と Apple が提供するソフトウエアに関して)。Disk Copy を使ってディスクイメージがマウントできない問題、プリントキューの障害、あるいは Finder でロックが解除不可能などの場合、このユーティリティは効果があるだろう。Apple はしかし、サードパーティーのソフトウエアが設定したパーミッションは変更しないものの、そのソフトウェアの動作に問題が起こる場合もありうると注意を促している。サイズは 112K だ。
<http://docs.info.apple.com/article.html?artnum=106900>
CarbonLib 1.6 -- Mac OS X と Classic Mac OS 双方で動作するアプリケーションをリンクする役目を持つ CarbonLib の新バージョン 1.6 は、Mac OS X下の Classic と共に、Mac OS 8.6 と 9.0 で信頼性とパフォーマンスを改善する。アップデータは 2.9 MB で、Mac OS 8.6 あるいは 9 から起動した状態でインストールしないといけない。
<http://docs.info.apple.com/article.html?artnum=120047>
AppleScript 1.8.3 Update -- Mac OS 9 と Mac OS X それぞれ別々の最新版 AppleScript は、いくつかのアプリケーションでパフォーマンスの問題を修正し、Unicode テキストデータを扱うときの信頼性を上げ、そしてファイルやフォルダ名にアクセント付き文字や特殊文字を使用していても動作するようになった。このバージョンはまた、Mac OS 9 でのファイルやエイリアスオブジェクトの仕様を以前のものに戻す。前のバージョンで動作が Mac OS X とさらに互換になるようにしたが、これにより沢山のスクリプトが動作しなくなっていたためだ。アップデータは、1.5 MB (Mac OS 9) と 2.2 MB (Mac OS X) である
<http://docs.info.apple.com/article.html?artnum=120128>
<http://docs.info.apple.com/article.html?artnum=120129>
AirPort 2.0.4 Update -- もし Snow (Dual Ethernet) モデルの AirPort(訳注: 日本名は AirMac、以降 AirPort(AirMac) と記述) をお持ちであれば、AirPort 2.0.4 Update により、ネットワークに接続していなくても PPP による電話接続でベースステーションにダイヤルインし、ベースステーションと接続されているコンピュータを管理する機能を追加できる (とってもスマートだ)。また、PPTP (Point to Point Tunneling Protocol) や IPSec タイプのVPN (Virtual Private Network) を利用する Windows クライアントとの互換性、および米国国内での AOL 5.0 との互換性を追加した。旧モデルであるGraphite の AirPort(AirMac) ベースステーションには新機能は一切追加されないが、Mac にインストールされている AirPort(AirMac) カードでは全てのバージョンで他のワイヤレスネットワークとの互換性が改善される。
これらのアップデートは Mac OS 9 からインストールできるが、新しい機能はMac OS X が動作している Mac から設定しないといけない。その後は Mac OS 9 マシンでも恩恵を受けられる。アップデータの大きさは、8.5 MB (Mac OS 9)と 3.6 MB (Mac OS X) である。
<http://docs.info.apple.com/article.html?artnum=120120>
<http://docs.info.apple.com/article.html?artnum=120121>
文: Chris Barylick <barylick@gwu.edu>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>
静かな十月の午後、バージニア州 Arlington のとある学校で、Rhonda Clevenson 博士は自分の教室のあちこちに置いてある数台の iMac の前に子供たちを座らせて、iMovie でムービーを編集する方法の説明を始める。これは6年生のための特別強化プロジェクトの授業なのだ。子供たちののみこみは早く、自分たちが大好きでよく知っているいろいろなサウンド、画像クリップ、グラフィックスを次々にミキシングしてゆく。(プロレスのスター選手、ポケモン、ポップ歌手など、何千もある情報ソースから見事に取り込んでゆくのだ。)時々 Rhonda が覗き込んで一言二言気軽な会話で助言をしていく以外は、すべてがスムーズに進み、あっという間に 40 分の授業時間が過ぎてゆく。ベルが鳴り、子供たちは廊下に出て行き、入れ替わりにまた次のクラスの子供たちが入ってきて、また同じようにエネルギッシュな時間が始まる。こうした授業、こうしたカリキュラムはすべて、これら数台の iMac に内蔵されているテクノロジーが無ければ成り立たないのだ。
これが現在のアメリカの公立学校の新教育システムだ。教育システムそのものがコンピュータ・テクノロジーに寄りかかっており、教室におけるコンピュータの力はますます大きなものになりつつある。ワードプロセッサからデジタルメディア、インターネットでの調査まで、公立学校はますます大きなお金をコンピュータやソフトウェアにかけるようになってきた。この傾向の背後にある考え方ははっきりしていて、子供たちをテクノロジーに触れさせることによって将来子供たちがますますテクノロジーの進みつつある社会に巣立って行くための心構えができるだろうし、また、教育の方法としてもさまざまに異なった生徒たちの多様なニーズに応えることのできる柔軟なやり方が可能となるから、というものだ。
私はつい最近フルタイムの大学院生の身分に戻ったのだが、それまで 16ヵ月の間 Arlington の公立学校システムで各学校を渡り歩くシステムアナリストとして働いていた。これはカレッジを出たての最初の職業としては悪くなかったし、部屋代を払って一人者の食費を賄うだけならば十分の給料も貰えた。仕事の内容としては、学区内のすべての学校のコンピュータシステムに起こった問題を修理し、問題の予防をはかるためにあらゆる手段を講じて努力する、というものだった。お察しの通り、この「あらゆる手段」というのが問題だった。
一人ですべてを -- Arlington では、その公立学校システムに属する各学校ごとに1人ずつの Instructional Technology Coordinator (ITC) が配属されており、自分の担当の学校のテクノロジー教育のカリキュラムに責任を持つようになっている。この人物は、原則として相当の教育とテクノロジーの知識、それにグループトレーニングの経験を持った者が採用され、その学校のコンピュータがスムーズに動作するよう管理することも仕事の一部なのだ。具体的な仕事としては、いろいろな質問に答えたり、管理担当者の手に負えないようなあらゆる種類の修理、コンピュータ、テレビ、モニタ、キーボード、マウス、ネットワーク、その他学校の建物内のあるゆる設備の修理を任される可能性もある。ITC の仕事はそれだけではない。生徒たちや教師たちにテクノロジーについて教えるための毎年のカリキュラムを考案する、というのも重要な任務の一つで、この教育によって彼らが州政府の厳しい試験をパスできるようにしなければならないのだ。
バージニア州の法律によれば、教師たちは5年に1回 TSIP (Technology Standard for Instructional Personnel) の試験に合格しなければならない。それと同時に、生徒たちが何の説明も与えられずに Microsoft Word と向かい合わされる、などという授業が許されないのも自明の理だろう。これら双方をきちんと良い状態に保つのが ITC の責任であって、もしもその責任が果たされない場合には、教師たちは職を失い、生徒たちは実社会の期待するレベルとは程遠い状態で放置されることになるわけだ。こうして ITC たちは、たった数枚のクローンディスクだけを与えられ、その職責に見合ったトレーニングなども一切無く、学校から「さあ頑張って下さい」の一言だけで、重大な責務のもとに放り出される、というのが実態だ。
幸いなことに、ITC は学校システムの中で他のコンピュータ・エキスパートの人を呼び出して援助を受けることができる。コンピュータたちが一斉に教師の期待とは違った挙動を始めて手に負えない場合には、何人かのフィールド技術者たちのチームが呼ばれて修理に当たることもある。もしもネットワーク自体が 2001年宇宙の旅の HAL のような挙動を始めた場合には、ITC はいつでも学校担当のネットワークアナリストを呼び出して事態収集に乗り出してもらうことができる。(かく言う私がそのネットワークアナリストなのだ。)ただ残念なことに、このようにして呼び出されても、当の技術者やアナリストは他の学校での仕事に忙しくてすぐには駆けつけることができないことも、よくあるのだ。こうして、ITC は援助の手を得ることができないまま何日も放っておかれる、というわけだ。
そんなひどい仕事なら何だって ITC なんかやろうとするのか、という疑問が湧いただろうか? 理由は人によって違うだろうが、一番多い動機はおそらくテクノロジーが好き、トレーニングの機会になる、普通の教員よりも給料が高い、あるいは管理職への出世の近道、ということもあるだろう。私がこの学区に勤務していた期間内だけでも、数人の ITC の人たちがその地位をもとに副校長に出世したり、または校長職を目指したトレーニングを開始したりしていた。この ITC 職が基本的に要求している人物像が「いつもそこにいて何でも解決してくれる頼りになるコンピュータのプロ」であるのにもかかわらず、現実の学校においては、ITC 職が単なる「出世のための踏み台」と化しているのが実態なのかもしれない。
皆が一つに -- 公立学校の話からちょっと話題を変えてみたい。学校全体のコンピュータのことを一手に引き受けて孤軍奮闘する ITC と完全に対照的に見えるのが、ユーザーグループだ。多くの人々が余暇の時間を利用して一つ所に集まってテクノロジーについて議論したり、コンピュータについて長年の経験を持つメンバーたちから信じられないほどの技術情報を聞き出したりする、そういう場が、ユーザーグループというものだろう。
私が生まれて初めてユーザーグループの会場に足を踏み入れたのは 1993年の Rhode Island Macintosh User Group (RIMUG) のミーティングだった。その時の私は何と言ってよいのかわからないほどの驚きに打たれたものだ。目の前に、Mac への真剣な興味を共にする人々が一ヵ所に集まっており、ソフトウェアの修正とか、ハードウェアのアップグレードとかを話し合ったり、また現状のテクノロジーを使えばどれだけのことが理論的に実行可能なのか、といったようなことを討論し合っていた。多くの人々はそれぞれ自分のコンピュータを持参してきており、夢中になってコンピュータのケースを開いてはコンポーネントを組み込んだり、再びケースを組み付けては成果をテストしたりしていた。会場全体の雰囲気は、知識を持った人からはそれぞれに知識の光がきらめいて祭のような気分を醸し出し、互いにその知識を共通の場で共有する喜びによってその光がさらに燃え上がる、という感じだった。
もしも私が1台の壊れた Macintosh SE/30 を RIMUG のミーティングに持ち込んだら、たちまちのうちにメンバーたちに取り囲まれたかと思うと、数分後にはそのマシンが俊敏なラブラドル・リトリーバー種の猟犬の爪先を切り取る方法を編み出し、1時間後にはスペースシャトルを発射することもできるのではないか、という気がした。現在の RAM の値段を尋ねれば、ものの数秒で誰かが正確な答えを教えてくれる。機能拡張のコンフリクトについて声を出して自問してみたら、多分すかさず誰かが同じコンフリクトを経験したことがあって解決法を教えてくれるだろう。簡単に言えば、こういう人たちにあなたのコンピュータの問題点についてあなたを助け _ない_ でくれ、と言ってもできない相談なのだ! 彼らはその習性として、必ず助けてくれるのだ。ここにはたっぷりと蓄積された知識の宝庫がある。さらに、こんな感じのユーザーグループは数え切れないほど各地に存在している。ただ、残念なことに、彼らの豊富な知識を外の世界に流れ出させることのできる水路というものが、ほとんど存在していないのだ。悪いことに、インターネットによって開かれたコミュニケーションの水路がこうしたユーザーグループの本来の目的を奪い取ってしまったために、多くのユーザーグループは会員の確保にも苦しみ、自分たちの知識のはけ口をも見い出せずにいる、という事態を招いてしまった。
皆が皆のために -- 現状の道具を使って困難な状況をコントロールしてゆくことができるのが良い管理職だとするなら、普通とは違う新たな道具を見つけ出すことによって困難な状況が初めから生じないように予防することができるのが、偉大な管理職だと言えるだろう。ITC たちのコミュニティーにとって、サポートのためのネットワークの現状を見れば、そこに素早い援助・継続した援助が望めると期待するのは、良く言えば楽観的、悪く言えばズダボロ、というところだろう。さらに問題を複雑にしているのは、こういう人たちは常に新しいアイデア、テクノロジーを使ってどんな新しいことをしようかという考えで頭が一杯なので、他のことは何も考えられなかったり、ましてや目前の雑用のことはすっかり忘れてしまったり、ということもありがちなのだ。
もしも近所の Macintosh ユーザーグループが学校のシステムに援助の手を差し伸べることができたならば、それはきっとお互いに得るところのある関係となるに違いない。ITC たちはユーザーグループの知識を利用させてもらえるようになって、その知識がオンラインで(メールやメッセージボード、あるいはチャットルームなど)または直接面と向かって利用できるようになり、どんな問題が起こっても答えが手に入るようになるだろう。ユーザーグループの側でもこの関係は歓迎すべきものとなる。学校のシステムは彼らの技術的知識を実地に生かす絶好の機会となるだろうし、またそれによって新たな会員を増やすことにも結び付くだろう。彼らは ITC の横に立って手伝うこともできるし、問題が起こった時に直接その解決に当たることも、また ITC の授業計画に意見を述べることもできるだろう。ユーザーグループは往々にしてミーティングの場所の確保に苦労するものだが、学校という場所はまさに絶好の、しかもインターネット接続も可能な空間なのだ。もちろん、たいていのユーザーグループには生意気な顔をしてロゴの入ったポロシャツなんかを着た Apple 社員に太刀打ちできるような色男はいないかもしれないが、少なくとも ITC の毎日の生活を悩ませるさまざまな問題に、経験に裏打ちされた解決の手を差し伸べることはできるのだ。
私の経験から言わせてもらえば、外部からの声、中でも経験に裏打ちされた助言の声こそが、最も頼りになるものなのだ。ITC たちはその仕事上、毎日毎日ありとあらゆる問題の集中砲火を浴びている。そういう問題のすべてを、彼らは解決しなければならない。パスワードを忘れたとか、Office 書類のフォーマットの質問とか、教室の iMac から発する放射能が怖いとか、噛みかけのスウェーデン製お魚キャンディーがフロッピードライブに挟まった、なんてこともある。最悪のシナリオを紹介しておこう。ある ITC が一人の先生に呼ばれた。その先生が言う:「この青白 G3 タワーの Mac を踏み台に使ったらね、私がちょっと乗っただけで外枠がバリっと割れてしまったのよ! 何とかしてちょうだい!」その ITC はただ両手で頭を抱えるしかなかった。うなり声と笑い声とを交互につぶやきながら長時間かかって彼が発見したのは、CD-ROM ドライブがイジェクトできなくなっていることと、マシンの一部が壊れてしまっていること、そして彼の力で何とかしてこのマシンを動くように復旧させなければならない、ということだった。
一言で言えば、時として ITC は外部からの援助の手がなければどうにもならないこともあるのだ。上のような技術サポートの悪夢について語り合う相手がいるだけでも大きな救いになるかもしれない。技術的知識を蓄えたユーザーグループこそが、まさにそれにぴったりの解決策となる。
コミュニケーションしよう -- Apple はユーザーグループのデータベースをオンラインでアップデートされた情報として管理している。そこに登録されていないユーザーグループならば、User Group Connection ウェブサイトや Hershey Apple Core の Ultimate Macintosh User Group List を見れば載っているかもしれない。もっとヒューマンタッチの調査がしたいならば、Association of Apple Computer User Groups (AACUG) に問い合わせてみるのも良いだろう。AACUG のサイトでユーザーグループフォームに記入しておけば、数日のうちにユーザーグループのボランティアの人から直接連絡があり、相談に乗ってもらえる。また、近所の Apple Store や Mac ディーラーで尋ねてみるのも良い方法で、こういう店は近隣のグループのリストを持っている可能性が高い。
<http://www.apple.com/usergroups/>
<http://www.ugconnection.com/>
<http://www.hersheyapplecore.com/muglist/mug.html>
<http://www.aacug.org/Feedback/locator.html>
ユーザーグループが見つかったら、ミーティングに出席してみよう。そうすれば大勢の人に出会え、喜んで援助・同情・経験の声をかけてもらえるだろう。誰かを苦境から救い出す助けができた、ということだけで彼らには十分の満足が得られるのだ。ユーザーグループと公立学校教員との間には、実は思いもかけないほどの共通点があるものなのだ。実際、これまで現実にこの種の交流は行なわれている。User Group Academy の助成金プログラムがその良い例だ。このプログラムは、1999年以来公立学校やユーザーグループに何千ドルものお金を提供して、教員の使用のために数台の iBook をネットワークで結ぶことから、文学作品の出版活動まで、さまざまなプロジェクトを援助してきている。
<http://www.UGAcademy.org/Grants/>
これとは逆の状況もあり得るだろう。つまり、ユーザーグループのメンバーが自分で近所の学校に出向いて自分と自分のグループについてその学校の ITC に紹介するのだ。その ITC はきっと大喜びでいろいろなレベルでの援助の受け入れを考えてくれるだろう。ひょっとしたら援助を必要とする事柄が多過ぎてどれを依頼してよいかわからない、ということになるかもしれない。ユーザーグループの役割というものはこれまで年月に従って変遷してきたが、公教育の改善を援助するという役割だけは、いつの時代にも現存する、決して色あせない事柄なのだ。
文: Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>
毎年恒例の MacHack カンフェレンスの中心行事は、MacHax Group の Best Hack Contest だ。このベスト・ハック・コンテストでは、集まった世界最高水準のプログラマーたちが(2晩徹夜で)互いに競い合って(できればその 48 時間だけの仕事で)ソフトウェアを書き、プログラミングの独創性、知識度、あるいは神秘性において究極といえるものを創り出すことを目指すのだ。理想的には、そのプレゼンテーションがユーモアたっぷりのものであることが望ましい。何か実用的な価値のある働きをするようなハックに対しては、たいてい聴衆から「便利ィ〜!」という、からかうような叫びが浴びせかけられる。そのハックの有用性を強調しようものなら、たちまち「宣伝、宣伝!」というあざけり声に包まれてしまう。
<http://www.hax.com/MacHack/HackContest.html>
コンテストに参加したハックは例年通り数も多くその内容もさまざまだった。ハックの総数は 65 で、そのうち 26 は「若者たち」の作品だった。(先週号で触れた通り、「若者たち」の活躍が今年の MacHack の特徴の一つだった。)総数としては過去2年間よりも少し減ったのだが、数が減ったということはハックコンテストの終了時刻が例年よりも1時間早い午前5時になったということで、誰も文句を言う人はいなかった。
今回の MacHack のテーマは「ハックの鉄人」だった。これはあのテレビの人気番組「料理の鉄人」(訳注: 日本の料理番組で、現在全米ネットで放映中)をもじったものだ。あのテレビ番組は、まるで“American Gladiator”や“BattleBots”のようなガチンコ格闘技ショウの要素を、料理番組に持ち込んだ代物だ。(「料理の鉄人」の番組ファンサイトでは、このテーマのためにわざわざ MacHack のことを引用までしている。)MacHack のハックコンテストでの「今日の食材は?」と言えば、言うまでもなくあの牛犬 (dogcow)、Mac OS X も含めた Mac OS の「ページ設定」ダイアログに登場する、半分は犬で半分は牛の生き物だ。こういうわけで今回のコンテストではこの牛犬関係のハックが目立ち、プレゼンテーションの画面に牛犬の Clarus 君が登場するたびに会場は“Moof!”というおどけた叫び声で満たされた。(Clarus 君のことをあまりご存じでない方のために説明しておくと、“Moof!”と叫ぶのは何も Clarus 君のことが好きでたまらないからというわけではない。この牛犬のロゴも、この鳴き声も、れっきとした Apple Computer 社の商標なのだ。Moof!)
<http://www.foodtv.com/foodtv/show/0,6525,IC,00.html>
<http://home.ironfans.com/cgi-bin/news/viewnews.cgi?id=1024489207>
<http://developer.apple.com/products/techsupport/dogcow/history.html>
<http://clarus.chez.tiscali.fr/ENGLISH/>
選外の佳作たち -- 誰もがハックコンテストに優勝するわけにはいかないし、7位以内に入賞するのも並大抵のことではない。けれども賞に漏れたものの中にも素晴しいものはたくさんあった。ほとんどのハックは Mac OS X に基づいており、そのうちのいくつかは Mac OS X の Unix コアに踏み込むものだった。例えば Josef Wankerl の OldSchoolEdit は、好きなテキストファイルをターミナル内の Unix エディタ emacs(または vi)で開かせる、というものだった。
何人かは Dock をハックした。Dock の中でアイコンを宙返りさせたり、そこいらをうろつき回らせたり、あるいはマウスカーソルから跳んで逃げさせたりするものもあった。Travis Hicks と Paul Scandariato の「若者」ペアの作品 Dock Invaders は、現在動作中のアプリケーションたちのアイコンから成るインベーダーの襲撃から地球を守る Clarus 君を主人公にしたゲームになっていた。
別の「若者」ペア、Andy Furnas と Noah Spies の作品は Mac OS X のログイン画面をハックして、オープンソース・ゲームの TuxRacer を1ラウンド、クリアしなければログインできないようにするものだった。
Sustainable Softworks の Peter Sichel の書いた Mac Enforcer は、ネットワークをスキャンして接続されたすべての PC の Ethernet カードの MAC アドレスをチェックして判別する、というものだった。この作品に対しては、「便利ィ〜!」の声もいくつか掛かってしまったものの、私の近くにいた人たちの意見では、もしもこの作品が Richard Ford がネットワークにインストールしてくれた PacketShaper に接続することで PC を自動的に 1200 baud まで絞り込ませてしまう、というところまで行っていたら確実に5位以内には入っていただろう。
<http://www.packeteer.com/products/packetshaper/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06595>(日本語)インターネットのトラフィックに手を入れる
いくつかのハックは別のハードウェアに関するものだった。Mike Neil は iPod に隠れて内蔵されている秘密のブロック崩しゲームのためのエディタを書いた。Jorg Brown、Sean Parent、それに John Shafer の3人は協力して、モーター、プーリー、ケーブルを組み合わせ、それを USB コントローラ・キットに繋いで“AniMac”、つまり「動く iMac」を作り上げた。この iMac は液晶モニタ部分を上下左右に傾けて動かすことができる。そればかりでなく、アカンベをする(つまりオプティカルドライブのトレイを開閉させる)こともできる。これらの動作はすべて Apache で働くスクリプトによって動くので、リモートコントロールができる。
第7位: Depth Perception -- 第7位に入賞したのは Lisa Lippincott だった。彼女は数年前のハックコンテストでは UnFinder で優勝した経験を持っている。UnFinder は Finder に“Undo”(取り消し)コマンドを追加しよう、というもので、この良いアイデアは今や Mac OS X に内蔵された機能になっている。彼女の今回の作品は Depth Perception で、これは Mac OS X の透明ウィンドウ機能を利用して、何重にも重なったウィンドウもすべてほとんど透明にすることで全部透かして見えるようにする、というハックだ。
第6位: Metadata -- Allon Stern は MacHack の会場で、徹夜続きの参加者たちの求めに応じて、Jolt コーラよりも上品なカフェインを、というわけでエスプレッソ・コーヒーをいれてくれていたのだが、彼の作品、Metadata が6位に入賞した。ファイルの属性情報を、よりパワフルなタイプ・クリエータの方法に依るのを放棄してファイル名の拡張子に依存しよう、という Apple の馬鹿げた方針に対して、痛烈な批判を浴びせるハックだ。Metadata が動作している間は、適切なクリエータとタイプを使った拡張子を付けたファイル名にファイルを改名すると、Metadata が自動的にそのファイルのタイプとクリエータをその通りに変えてくれる。例えば、“foo”という名前のファイルがあったとして、そのファイルを“foo.R*ch.TEXT”に改名すると、そのファイルのタイプとクリエータが変更されて BBEdit ファイルに早変わりする。(そのファイルのタイプが“TEXT”に、クリエータが“R*ch”になる。このクリエータコードは BBEdit の作者の Rich Siegel の名前をもじったものだ。)
第5位: Clarus All Over -- 第5位に入賞したのは父親と息子とのペア、Doug と Nigel Clarke の親子に P.D. Magnus の加わったチームで、作品は Clarus All Over という名前だった。このハックは3つの部分から成っていて、1つは Lego ブロックでできた牛犬が Lego Mindstorms 機構で動いてマウスをクリックし、2つ目はとてもかわいい牛犬のアイコンいろいろと、Finder のさまざまなアイコンをこの牛犬アイコン(中でも最高だったのはゴミ箱アイコンで、ゴミ箱が横倒しになって Clarus 君が頭を突っ込んでいる)で置き換えるためのスクリプトとの組み合わせ、そして3つ目が Apple のテレビコマーシャル“Power To Be Your Best”をもじった傑作で、Clarus がマウスボタンをクリックしようと3回トライする、という内容になっている。
第4位: Classic Edge -- Tony Francis と Matthew Morse のペアが Classic Edge で4位となった。このハックは、アプリケーションがクラッシュするスリルを Mac OS X でもちょっとは楽しんでみたい、という狙いのもので、これを動作させると現在動作中のアプリケーションからランダムに1つを選んで、選択肢から1つを選ぶクイズ形式のダイアログを表示する。もしもあなたの答えが正解でなければ、そのアプリケーションが強制終了される。あ痛ッ!
第3位: Load Minimizer -- 3位に入賞したのは Load Minimizer、作者は Mac Murrett と Philippe Hausler だ。Load Minimizer は現在のシステム負荷の度合をグラフィカルに表示する。どうやって表示するのかというと、システム負荷が増加すればするほど画面全体を縮小させるのだ。Mac に実際に高負荷をかける実演として、Mac と Philippe は Microsoft の CEO の Steve Ballmer が熱狂的に演説しているムービーをプレイしてみせた。演説が高調するにつれて、Load Minimizer はぐんぐん画面を縮小させてムービーのウィンドウはほんのちっぽけなものになってしまった。このプレゼンテーションが満場の大喝采を受けたのは言うまでもない。
第2位: NewsTracker -- これは本当に珍しいことなのだが、第2位に入賞したのは「若者」、わずか 12 歳の Adam Atlas で、その作品は NewsTracker というプログラムだった。「便利ィ〜!」の野次と、ジョブ・オファーとの両方が聴衆から彼に押し寄せたものだったが、彼のプログラムはいくつかのウェブサイトを訪問してそれらの内容から主な項目の見出しを収集し、それらを表示するというものだ。表示された見出しの1つをクリックすると、該当するページをあなたのウェブブラウザにロードさせるか、または Adam のプログラムに内蔵のミニ・ブラウザの中にロードさせることもできる。どのサイトをロードするかを設定するためのインターフェイスとか、各サイトで項目見出しを検出するために HTML を解釈する方法を指定するためのインターフェイスまで用意されている。これは本当に印象的な仕事と言えると思うし、堂々の「ベスト若者ハック」賞と、皆の憧れの的の Victor A-Trap 賞とを獲得するにふさわしい作品だった。彼が来年どんなものを作り出してくれるか、今から楽しみだ。
第1位: FireStarter -- 第1位の優勝者には、例年通りかの憧れの Victor A-Trap 賞が授与された。これは Victor 社製のネズミ取り器で、表面に印字された“RAT Trap”の文字に X-Acto ナイフによる切り込みを入れて“R”と“T”の文字を削り落とし、“A-Trap”と変えてある、というものだ。(A-Trap というのは、classic Mac OS においてプログラマーが Mac OS をパッチできるようにするために入れられたトラップアドレスの名前なのだ。)さて、今年の優勝者は Quinn "The Eskimo" で、作品は FireStarter だった。このプログラムは QuickTime による燃える炎の効果を画面に表示し、次いでその効果を FireWire 経由で接続されたすべての Mac に伝播させることができる、というものだ。ターゲットとなる Mac には特別のソフトウェアは一切不要だ。その Mac はインストール CD で起動されたものでも構わないし、ログインウィンドウを表示してログイン待ちの状態であっても構わない。基本的に、FireStarter は FireWire の DMA (Direct Memory Access) を使って直接ターゲットの Mac のビデオ RAM にアクセスを得るのだ。これがセキュリティー上の問題になり得ると心配する人もいるかもしれないが、心配は要らない。このプログラムの動作にはターゲットの Mac に関する具体的な情報を知っていることが必要だし、それにもちろん、FireWire ケーブルをプラグインできる程にあなたの Mac に物理的に近くに居る人ならば他にいくらでもあなたの Mac に不埒なことをする方法があるのだから。優勝した Quinn にはおめでとうを言いたい。彼は長年にわたって Mac のプログラミングの世界で知られてきたし、(中でも Peter Lewis との共同作業による Internet Config の創作は重要な仕事だった。)また、Apple の Developer Technical Support の一員として働いて、世界中の Macintosh プログラマーたちの助けとなってくれた。そう、もちろん、ただ一言“Quinn”と言えば、誰もが彼のことだとわかるのだ。
<http://www.quinn.echidna.id.au/Quinn/WWW/>
ハックの入手法 -- 例年ならば、エントリーされたすべてのハックと、それに MacHack に参加したすべての論文やプレゼンテーションなどを含んだ CD が、およそ $20 ほどの値段で販売されている。収益の一部は次回の MacHack の運営のために使われる。今年の組織委員会はまだこの CD に関する詳細を発表していないが、発表され次第、TidBITS でそのニュースをお伝えしたいと思う。あなたがたとえプログラマーでなくとも、これらのハックを実地に体感してみるのはとてもおもしろいだろうし、MacHack の雰囲気を想像しながらご自分で「便利ィ〜!」の野次を飛ばしてみるのも、オツなものではないだろうか。
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, , 日本語版最終更新:2005年 12月 26日 月曜日, S. HOSOKAWA