TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#640/29-Jul-02

Macworld Expo への参加は単に仕事というだけではない、それはパッションでもある - 我々の Expo 取材の締めくくりとして、Adam はショーと二つの Apple Store で過した彼の一週間を一緒にたどってみることをおすすめする。そしてまた、我々がショーのフロアを歩いていて最も印象深かった製品について Macworld Expo の優れものとして紹介する。最後に、もし Apple の iTools から有料の .Mac への転換に落胆しているとすれば、先週のアンケートの結果はあなたが一人ぼっちでないことを示している。

記事:

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MailBITS/29-Jul-02

.Mac すべきか、それとも .Mac せざるべきか? -- Apple の .Mac に対する課金に関する皆さんの意見を問うた我々のアンケートの結果が何らかの指標であるならば、Apple は 2,200,000 の iTools ユーザーから数を減らして、大体 20,000 から 30,000 の .Mac ユーザー相手にサービス提供することとなるであろう。回答者のうちおよそ 85% が、その大多数が iTools を使った事があるとしながらも、.Mac は使わないであろうとしている。.Mac を使うつもりだと答えた 15% の人のうち、13% の人は前に iTools を使ったことがあり、そして 2% の人は .Mac の機能にひかれた新ユーザーである。私は今でも皆さんに自分の意見を Apple に対して直接届けるようお勧めしているが、この様な結果とか TidBITS Talk での議論の内容を見ていると、Apple 内部でこの決断に関っている人はこの様な反応を十分承知の上で、それでもやはり苦い薬を処方せざるを得ないと判断したのであろうと思わざるを得ない。我々の Web とメーリングリストのホストもしている digital.forest の VP of Technical Operations である Chuck Goolsbee は、TidBITS Talk の中で iTools のために Apple は年間少なくとも $10 から $20 million の出費を強いられているであろうとの見積りを披露している。直近の決算でも Apple はそこそこの利益を計上して頭はかろうじて水面上に出してはいるものの、iTools がらみのコストをコントロール下におかねばならないという Apple の必要性は容易に理解できる。それが、既存の顧客の大事な信頼関係を犠牲にしてでも。[ACE](カメ)

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbpoll=77>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06883>(日本語)iTools が .Mac に変身、ユーザーは大騒ぎ
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=1687>
<http://www.apple.com/feedback/mac/pm.html>


Macworld Expo New York 2002 報告

文:Adam C. Engst and Mark H. Anbinder <editors@tidbits.com>
訳:倉石毅雄 <takeo.kuraishi@attglobal.net>

例年に比べて Macworld Expo New York の展示者数は少なかったかもしれないが、それでも見るものは沢山あり、ここで取り上げるに値する製品もいくつかあった。

EyeTV -- 今回のショーの一番の当たり製品は Roxio の Toast を開発している El Gato Software からの新製品 EyeTV だった。これは Mac を TiVo や ReplayTV などのディジタルビデオレコーダのように使用することを可能にするハードとソフトのコンビだ。番組を直接ハードディスクに保存して (一時間あたり 650 MB を必要とする) 、保存した番組の再生のインターフェースを提供し、生放送の一時停止でき、同時に再生と保存を行える。利点としては Toast を使用して CD-R へ番組を保存できる点や、使用可能ディスク容量の調整、そして追加のサービス料金無しで低額 ($200) である点などが挙げられる。欠点としては、EyeTV がデフォルトで比較的低画質の MPEG-1 を使用している点や、もし高画質設定にすると番組を CD-R へ保存できない点などが挙げられる。さらに、解像度は 320 x 240 画素しかなく、説明を読む分には EyeTV はディジタルケーブルや衛星放送とは使用できない。そして、当たり前だが、Mac がテレビからケーブルで届く範囲にいなければいけない。[ACE]

<http://www.elgato.com/eyeTV/>
<http://www.tivo.com/>
<http://www.replaytv.com/>

MyTV2GO -- El Gato のすぐ近くには Eskape Labs がいた。彼らは Mac の画面上のウィンドウでテレビ番組を表示するための様々なハードやソフト製品を展示していた。たった $80 ながら、画像キャプチャとテレビチューナ機能を備えた MyTV2GO を始めとして、Eskape は単純に Mac でテレビを見たい人の為に低価格な製品を揃えている。MyTV 製品の FM 受信機モデルもある。他の Eskape の製品としてはラップトップの画面をテレビで表示 (もしくは録画) するための USB ビデオミラー機器や、標準的な画像キャプチャ機器や、標準的なビデオ会議用の機器などがある。[MHA]

<http://www.eskapelabs.com/products.html>

帰ってきた Now Software、ウィンドウズとの互換性を手に入れる -- 古くからのユーザは Now Software の名前を覚えているかもしれない。人気があった Now Utilities (最近 Aladdin Systems が Ten For X ユーティリティとして復活させたアイデア) とパワフルな Now Up-to-Date & Contact カレンダとコンタクト管理ソフトを発売していた。Now Software は経営が行き詰まり、良く分からない理由で Qualcomm に買収され、Power On Software に救われるまでは休眠状態にあった。Power On は最近、Now Software の名前を復活させ、Now Up-to-Date & Contact を新しい Now Software 部門に移した。もっと興味深いのは、Now Software からのほぼ同じ機能を備えた Now Up-to-Date & Contact の Windows 版の発表だった。これには、LAN やインターネットでカレンダ事項やコンタクトの互換性がある共有機能をも加わっている。残念ながら、最終的な Windows 版はまだ先だ (Now Up-to-Date は 2002 年の最終四半期、Now Contact は 2003 年の第二四半期を目指している)。Windows ユーザとカレンダやコンタクト情報を共有する必要がある数多くの Mac ユーザにとって、このソフトは待ち遠しいことだろう。[ACE]

<http://www.nowsoftware.com/>
<http://www.aladdinsys.com/tenforx/>

Six Degrees -- 共同作業プロジェクトで電子メールに頼っている人達には Creo の Six Degrees が関心を引くかもしれない。これは電子メールの作業を観察し、送受信したファイルや、共有している相手、そして関連した議論などの後を追う。そしてファイルやメッセージをどこかへしまったり名前を変えていようと、プロジェクトに関連した電子メールの話題の筋を検索するためのすっきりしたインターフェースを提供する。Six Degress の一番有り難かった点は無作為にある整理方法を強制するのではなく、自分が今まで行ってきた作業方法に適応してくれる点だ。このような機能を提供してくれる製品はあまりにも少ない。だが、Six Degrees も完全ではないし、私は以下の二つの理由からこれを使用しないだろうと思う。まず、Microsoft Entourage (そして Windows 上の Microsoft Outlook) としか働かない点がある。さらに、私の作業といえば、決まった人達とファイルを共有するようなきっちりとしたプロジェクトがある訳ではなく、不特定多数の人達や TidBITS のスタッフとのやり取りが主だ。そうとは言え、Six Degrees は便利そうなので、Eudora、Mailsmith、PowerMail、そして QuickMail のような専門的な電子メールプログラムのサポートを加えてくれるのを楽しみにしている。値段は $100 で、30 日間限定の評価版もある。[ACE]

<http://www.creo.com/sixdegrees/>

4D Mail と WebSTAR 5.2 -- 4D が WebSTAR を Mac OS X に移植した際に、製品群の Mac OS 9 版と比べるとメールサーバの欠如という目立つ穴があった。WebSTAR のメールサーバは大して良い訳ではないが、もしそれを使用している場合、Mac OS X へのアップグレードがもっと金がかかり、難しいものなってしまう。選択肢としては Tenon の Post.Office (100 の郵便箱で $300) と Stalker Software の Communigate Pro (50 の郵便箱で $500) があるが、どちらも Macintosh で作動する管理用アプリケーションがない。だが、Macworld Expo で、4D は Mac OS X-ネイティブの POP/IMAP/SMTP/WebMail サーバの 4D Mail を発表した。強固な迷惑メール防止機能と Virex を使用した Mac や Windows ウィルスのフィルタを備えており、さらにサーバ管理のための Mac OS X アプリケーションも付いてくる。4D Mail は WebSTAR 5.2 と併せてと別々の両方として販売される。

9 月上旬に 4D Mail が発売になったら、既存の Mac OS X メールサーバ製品と互角の値段になる。10 の郵便箱を提供する小企業版は $150、100 の郵便箱を提供するバージョンは $250 で、さらに 100 個で $150 ずつの郵便箱拡張パックが付き、そして郵便箱の数が無制限なバージョンが $1500 だ。WebSTAR の所有者にとってはもっと良い。もし 2002 年 8 月 31 日までに WebSTAR V を登録すれば、4D Mail が付いた WebSTAR 5.2 へのアップグレードは無料で、郵便箱が無制限なライセンスが付いてくる (8 月以降は 100 の郵便箱用ライセンスしかついてこない)。同様に、2002 年 10 月 31 日までに WebSTAR 4.x からアップグレード ($200) したら、WebSTAR 5.2 に無制限の郵便箱ライセンスが付いてくる。全部まとまったパッケージを探している人のためには 4D は Mac OS X でオンライン店舗を開くための $500 の 4D Business Kit 1.2 と、ウェブログ、議論フォーラム、競売などを備えたカスタムポータルサイトを作成するための無料の Mac OS X 用の 4D Portal 1.5 を (ソースコードを含めて) リリースした。[ACE]

<http://www.webstar.com/products/4dmail.html>
<http://www.tenon.com/products/post_office/>
<http://www.stalker.com/CGatePro.html>
<http://www.4D.com/4DBK/>
<http://www.my4dportal.com/>

Move2Mac -- Apple はなぜ Windows から Mac へ切り替えたかを一般の人達が話す新しい Switchers 広告を押している。Macworld Expo のキーノート演説では Steve Jobs は Switchers Web サイトへのビジターの 170 万人のうち、60% は Windows マシンから訪ねて来たと言っていた。しかし、Mac を購入した Windows ユーザはどうやって書類や電子メール住所録などを新しい Mac へ移すのか?Detto Technologies から数ヶ月以内に出される予定の $60 の Move2Mac を使用すればデータの移動の手間が減らせる。これは移動するデータを選択するためのソフトと実際に接続するための USB ケーブルのコンビだ。[ACE]

<http://www.detto.com/move2mac/>

JBL Creature スピーカ -- Harman Multimedia はスピーカの斬新な工業的デザインの先駆者だが、最新の $130 JBL Creature スピーカもその伝統を引き継いでいる。電源回路を内蔵した衛星スピーカとサブウーファは三色あり (金属ブルー、銀、そして白) 、Darth Vader のヘルメットのようなつぶれたような形をしている。大きなサブウーファにはバスやトレブルを調整するためのノブがついており、小さな衛星スピーカの片方には接触式音量調整ボタンが二つついている (両方に同時に触れるとミュートする)。衛星スピーカは下に LED が付いており、薄暗い部屋では地球離れした光り方をする。当たり前だが、Macworld Expo ショーの騒音中でスピーカの音の善し悪しを評価するのは不可能だった。だが、無声映画時代の俳優同様、大事なのは声の良さではない。見栄えの良さだ。[ACE]

<http://www.harman-multimedia.com/>

Microsoft から遠隔コンピュータ操作 -- Microsoft からの意外な発表は Remote Desktop Connection Client (RDC) という、正確ながらも堅苦しい名前の無料のプログラムだった。簡単に説明すれば、Terminal Services か Remote Desktop Services を走らせている Windows 2000 か Windows XP マシンへのウィンドウを開くことができる。そして、Windows アプリケーションを走らせたり、ファイルをコピーしたり、クリップボードを使用してテキストを移動することも出来る。RDC は Netopia の Timbuktu、無料の VNC、もしくは Apple の Remote Desktop などのような画面共有プログラムなどとは違う。これらのプログラムは遠隔画面を自分の Mac に転送するのだが、RDC は遠隔のコンピュータからの指示に従って、こちらで画面を描いている。まだ試してはいないが、画面共有プログラムに比べて RDC は反応が明らかに速い筈だ。もし対応している Windows オペレーティングシステムを走らせている PC を時々使用する必要があるならば、RDC が一番の方法かもしれない。Mac OS X だけでしか作動しない 610K のダウンロードだ。[ACE]

<http://microsoft.com/mac/products/rdc/>
<http://www.netopia.com/en-us/software/products/tb2/>
<http://www.uk.research.att.com/vnc/>
<http://www.apple.com/remotedesktop/>

Spamfire が郵便箱で迷惑メールをストップ -- ここ数年、商業目的の迷惑電子メールについて述べる機会は多かった。最近は、サーバ側の内容に対する電子メールフィルタの副作用に焦点があたっている。Matterform Media からの Spamfire Pro はコントロールを握っているべきユーザに主導権を与える。ダウンロード可能なデモ版、廉価な Lite 版、そして Pro 版がある。Spamfire は柔軟に設定できる規則やフィルタを基にして、電子メールクライアントがメールをダウンロードする前に POP3 や IMAP 郵便箱から迷惑メールをフィルタする。$20 の Lite 版は一つの郵便箱だけチェックできる。$30 の Pro 版は複数の郵便箱をチェックでき、販売元からの一年分の自動フィルタアップデートが含まれる。[MHA]

<http://www.matterform.com/spamfire/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbser=1221>(日本語)メールのフィルタリング: 皆のアプリがダメになる
(日本語)メールフィルターの実状を暴く


Macworld Expo New York 2002 滞在日記

文: Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
訳: 佐藤浩一 <koichis@anet.ne.jp>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Macworld Expo についての私の記事はたいてい分析記事で、その年の重要な流れやテーマを紹介しながら Mac 業界の現状を理解しつつその将来の方向性を探ろうというものだ。けれども今年は、そういう記事はあまり書けそうにもない。なぜなら、去年のニューヨークでのショウの分析記事をただ書き直したようなものになってしまいそうだからだ。ごく手短に書いてみると、参加者の数は驚くほど多く(ただし去年に比べて 10% ほど数は減少していたが、これは去年の9月にニューヨークを襲ったテロリスト攻撃の影響を考えれば無視してもよい落ち込みの量と言えるだろう)参加者の表情は一様ににこやかで楽天的に見えた。出展者の数も少し減ったが、私の話した範囲では出展した人たちは皆、人出の好調さと会場での売り上げに満足していた。去年と同様に、真の意味で驚くべき製品というものは見られなかった。ただ、これはなかなかおもしろい、というようなものはいくつもあったので、今週号の“Macworld Expo New York 2002 報告”の記事で紹介しておいた。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06502>

今回はその代わりに、Macworld Expo に参加した私の身の回りに起こったイベントの数々をご一緒に経験して頂こうと思う。Macworld Expo での3日間の前後にそれぞれ1店ずつ訪れた Apple Store での出来事も紹介してみたい。私の体験を共有して頂くことで、Macworld Expo に行く週というのがどんなものになるのか、Expo がショウの会場以外でもどんなに活発に動いているものなのか、ということを感じて頂ければ嬉しく思う。

7 月 14 日、日曜日 -- 私の旅の最初の行程は、ニューヨーク州 Ithaca の自宅からニューヨーク州 West Nyack にある Apple Store までの3時間半のドライブだった。この Apple Store で私は iPhoto を題材に“Meet the Experts”の講演をすることになっていた。そこは Palisades Mall という名前の巨大なショッピングモールで、数え切れない店が集まっていて道に迷ってしまったが、やっとのことで Apple Store を見つけた私は店内に入ったところにある“Genius Bar”(「天才カウンター」)にいた Scott に声を掛けて自己紹介した。Scott も、“Genius Bar”にいた他のスタッフたちも、物のよくわかった人たちのようだったが、Scott に言わせればここで仕事をする上での最大の悩みは、来る客来る客が次々に「君は本当に天才なのか?」と尋ねてくることだという。(その質問への正解は:「はい、ただし“Genius”(「天才」)という単語は大文字の“G”で始まる(固有名詞)で“TM”(商標)記号のついた用語であることをお忘れなく。」)さて、私の講演自体は開始早々から大変だった。始まってすぐに聴衆の後ろのほうから iPhoto のやっかいなトラブルシューティングの質問の声が掛かったのだ。幸いにもこの質問は手早く処理することができたので、私はそれから順々に iPhoto の基本を解説し、うまく使いこなすコツを伝授していった。聴衆は、ごく最近に初めて Mac オーナーになった人たちが多いようだったにもかかわらず、驚くほど的確な質問を次々に問いかけてくれた。私の講演が終わりに近づいたころ、知らないうちに2時間近くも経過してしまっているのに気が付いて驚いた。

<http://www.apple.com/retail/palisades/>

講演の後、私は手早く荷造りして車に飛び乗り、1時間ほどのドライブでニューヨーク市内に入り、私の祖父母と会って一緒にディナーを楽しんだ。それから、さらに1時間ほどドライブしてスターテン島に住む叔母夫婦の家に着いた。しばらく談笑してから、ベッドルームに入って電子メールに追い付く作業に取りかかった。疲れ切ってベッドに入ったのは午前1時ごろだった。

7 月 15 日、月曜日 -- 月曜日は TidBITS 発行の日だ。そこで私は朝一番にその週の号の編集作業をし、他の編集者たちや記事を投稿してくれた人たちとの電子メールでの連絡に取り組んだ。また、New York Times 紙が私たちのスパムフィルターに関する経験を短い記事にしてくれた(TidBITS-637の記事“メールのフィルタリング: 皆のアプリがダメになる”参照)ので、その関係の連絡にもかなりの時間がかかった。知らないうちに私の親戚たちは皆仕事を終えて帰宅しており、夕食の時間になっていた。叔母夫婦におやすみの挨拶をしたのが午後 10 時ごろだったが、この夜も私は午前1時ごろまで起きて、Macworld 誌の記事の最終編集の作業を終わらせ、できるだけの数の電子メールに返事を書いた。なぜなら、火曜日は一日中ネットへの接続をする暇はないはずだったから。

<http://www.nytimes.com/2002/07/15/technology/15SPAM.html>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06866>(日本語)メールのフィルタリング: 皆のアプリがダメになる

7 月 16 日、火曜日 -- Macworld Expo 開会前日の火曜日は、例年私は一人でニューヨーク市内を楽しむ日として空けてある。そこで私は早起きして叔母と一緒に彼女の仕事場について行った。彼女は自由の女神像の第2責任者として働いている。(自由の女神像の内部にはまだ観光客が入ることはできないが、今は外側を歩き回ることはできるようになっている。)午前中私は Ellis Island Museum の素晴しい展示物を眺めて過ごし、それからマンハッタンに向かった。地下鉄でアップタウンに行き、Paramount ホテルでチェックインを済ませ、それから午後は Chelsea 地区の画廊を探訪したり路上の人々の写真を撮ったりして気ままに過ごした。

<http://www.ellisisland.com/>

午後8時に、Paramount ホテルのロビーに戻った。そこには既に TidBITS 読者たちが、毎年恒例の TidBITS Ice Cream Social(下記の URL の写真を見て頂きたい - 写真を撮ってくれた Pekka Helos に感謝!)のために集まりかけていた。半時間ほど談笑して、Alex Hoffman が持ってきてくれた驚くほどフレッシュな Krispy Kreme ドーナツを味わい、それからホテル近くの Ben & Jerry's の店に向かった。皆でアイスクリームを楽しんでから(特に蒸し暑い夜だったので最高だった)また Paramount ホテルに戻り、皆でいろいろと語り続けた。スパムフィルターの問題から、Apple のトレードショウのバナーを印刷するための部屋サイズの印刷機の話、それに新刊雑誌の REALbasic Developer magazine まで、あらゆる種類の話題で盛り上がった。やっとお開きになったのはもう真夜中近かった。それから私は1時間ほどかけて翌朝送信するためのメールの準備をして(旅行中私はできるだけ毎日、私の3歳の息子 Tristan に、私の見たものの写真なども付けて電子メールを出すようにしている)から、ようやくベッドに入った。

<http://www.tidbits.com/resources/640/ice-cream-social-2002.jpg>
<http://www.rbdeveloper.com/>

7 月 17 日、水曜日 -- Steve Jobs の基調講演を皮切りに、公式な Expoが本格的に始まりを告げる。基調講演は午前 9 時から始まるが、プレス関係者は午前 8 時までに Javits Convention Center へ行く必要があるので、私は早起きして急いでホテルを飛び出した。いつも私は、朝 Paramount から Javitsへ向かう道を歩くことにしている。15 分程の距離だが、リラックスできる時間なのだ。Javits へ着くとすぐ、マスコミ用の大きな看板を持たされてプレス関係者を適切な場所に誘導している、シアトル以来の友人の Apple 社員に出会った (彼は礼儀正しく、私たちを紳士的に扱ってくれた)。15 分ほど彼と雑談した後、またごった返しているプレスの連中の群れに合流し、その後さらに 20分たってから会場の席に誘導された。興味深いことに、今年は去年ほどプレスの登録をした人は多くなかったらしく、今年は難なく空いている席を見つけられた。

Macintosh のメディアの世界は比較的小さいので、かなりの人がお互いを知っており、私はたくさんいた Macworld Magazine の編集者たちと一緒にすわった。私たちは、Jobs が非常に多くの発表をした 2 時間あまりのあいだ、時折コメントをやりとりしたりノートを見せあったりしていた (詳細は、TidBITS-639 を参照のこと)。

<http://www.tidbits.com/tb-issues/TidBITS-639>(日本語)Macworld Expo New York

基調講演は Macworld で大きな注目をあびたが、私にとってそれは単におびただしい数のミーティングやショウへの幕開けに過ぎない。基調講演が終わった後、Creo 社のプレス発表へ急いで駆けつけた。同社の Six Degrees は、プロジェクトに関するファイルや電子メールを組織的にまとめる新しい手段を提供するが、現在は Microsoft Entourage ユーザだけが対象である。

<http://www.creo.com/sixdegrees/>

この後、約 20 分間で昼食を控室で素早く取り AirPort (訳注: 日本ではAirMac) ベースのインターネット接続を使って電子メールの送受信を行なった後、Macworld ユーザカンファレンスで私が行なう iPhoto プレゼンテーションに向かった。ここでも良い質問を多数受けたので、予定の 2/3 しか終えることができなかったが、幸運にもすぐ後行なわれた Peachpit ブースでのサイン会で続きを喋ることができた。これに 1 時間を費やし、その後 Peachpit の出版人である Nancy Ruenzel と会って、本の出来映えや今後のことを話し合った。次は、Web Crossing 社のマーケティング担当部長と手短に話をした。TidBITSでは次世代のインフラ用に同社のソフトウエアを検討しているのだ。午後 5 時頃になりやっと展示会場を見る機会に恵まれ、少なくても終了する 6 時までいた。

<http://www.webcrossing.com/>

これで終わりだとは思わないで欲しい。最初は Netter's Dinner に向かう人びとと共に表に出て、レストランまで歩いた。しかし、そこへ着く前に、NetBITSで一緒に仕事をしている良き友人の Glenn Fleishman と私は、みんなに別れを告げ地下鉄に乗ってダウンタウンへ行き、以前シアトルに居た Mike Daisey がAmazon.com で働く姿を独演しているオフ・ブロードウェイの劇場で、数人のMac 友達のグループに合流した。Glenn は半年間 Amazon でカタログマネージャとして働いていて、Amazon がまさに脚光を浴び始めているとき私たちは共にシアトルに住んでいたこともあり、Mike のショウは特に素晴らしかった (ドット・コム企業の盛衰を目の当たりにした人なら誰でもこれを見ることを勧める)。Glenn と Mike はお互いに知合いなので、私たちのグループは地下鉄に乗って帰る前に Mike 夫妻と夕食を共にした。Paramount に戻ったのは真夜中になってしまったが、同室の Chuck Shotton (WebSTAR の最初のバージョンの作者だ)が既に帰ってきて寝ていたことに気付いたのでロビーに行き、へばってしまう前に 1 時間程電子メールで作業した。

<http://www.mikedaisey.com/>

7 月 18 日、木曜日 -- より良い電子メールの環境を得ようと思い立ち、早起きして展示会場が開く前の午前 9 時に Javits に着いた。幸運にもAirPort (訳注: 日本では AirMac) によるインターネット接続とベーグルの朝食が用意されているプレスルームは開いていたので、自分の電子メールに落ち着いて取りかかれた。しかし、Dantz Development の前のマーケティング副社長、今はネットワークソフトウエア会社である Neon Software 社の社長であるCraig Isaacs が前触れもなく現われたため、大して読んでいる時間は無かった。お互いの近況を報告しながら見せてもらった Neon の NetMinder とLANsurveyor は、後でじっくり試すことにしようと心に決めた。Craig はミーティングに遅れていることに気付いて行ってしまい、私はさらに数分だけ電子メールに時間を費やした。この時、自分が Macintosh の世界で影響力を持つ人のリストである MDJ Power 25 でまた 3 番目にランクされたことを知った。このリストは毎年自尊心をくすぐるし、人とのつながりを作り正しい事を行なうことが最良の行ないだという自分の信念を裏打ちしてくれる。

<http://www.neon.com/>
<http://www.macjournals.com/pages/gcsf/mdj_power_25_2002.html>

10 時に展示会場へ入り、CMS Peripherals 社の ABSplus バックアップ機器 (カスタムコントローラ付きの FireWire ハードディスクとソフトウエアで、いつでも端子に挿せば変更されたファイルをバックアップしてくれる) の説明を聴くまでの数時間、ブースを見て回った。その後、昼食を 4D 社の社長と一緒に取り、彼らの新しいメールサーバについて話し合った。

<http://www.cmsproducts.com/usb_abs_mac.htm>
<http://www.webstar.com/products/4dmail.html>

お次は、Aladdin Systems 社のブースで私の iPhoto 本のためのサイン会だ。Sean King が彼の Your Mac Life ショウの生放送へ招待してくれた後、やっと会場に足を向けたときにはもう閉場 30 分前だった。

<http://www.yourmaclife.com/>

昼食は取っていたが、Peachpit 社の著者たちとの夕食は歓迎すべきものだった。それに、蒸し暑い中をずっと歩くことなく、みんなでリムジンで移動できたのも嬉しかった。そこでは、陽気な会話と共に、ソーホーの Apple Store で最初に売れたのが自分の iPhoto Visual QuickStart Guide だということを知った。食事の後、少し雨が降ったが蒸し暑さは変わらず、同じく著者である Dori Smith と私はタクシーをつかまえて Apple の Pro-to-Pro パーティーへ出かけた。これは、ベンダーが集まった中で、自社の商品を小さなブースから紹介する場である。残念ながら、小さなステージからもデモが耳を聞こえなくするような音響設備で行なわれていた。パーティーが終わる前に、主催者に、Macworld パーティを上手に行なう方法について 1998 年に書いた記事を見せることができたのは、幸運だったに違いない。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=04694>

終わりにさしかかった午後 10 時には、Macintosh All Star Band が出る Your Mac Life パーティーに出席する元気は無くなっていて、Tim Holmes (Apple のMac OS エバンジェリストのマネージャであり、今年の MDJ Power 25 リストで5 番目の人物) と私は歩いて Paramount に戻り、別の友人である Packeteer社の Richard Ford と偶然会うまでの数時間、Paramount のバーで話をしていた。彼が来たことで寝るのがさらに数時間伸び、部屋に帰るころには午前 3 時を回っていたが Chuck はまだ起きていた。お互いの情報を交換しているあいだにまた 1 時間が過ぎてしまった。

7 月 19 日、金曜日 -- Chuck と私はこの朝会場へ出発する前にホテルをチェックアウトすることになっていたので、二人ともちゃんと早起きして9時前には荷造りを済ませた。朝食では Richard Ford と、それから Apple 社の Tom Weyer とも一緒になり、ワイヤレスのネットワークにおける特異な状況をめぐる議論に花が咲いた。実は、Tom はつい最近まで ワイヤレスネットワークに関する宣伝担当者だったのだ。さて、会場の Javits Convention Center に到着するやいなや、私は大急ぎで講演者控室に向かい、またまた電子メールを読んでから Tristan に走り書きのメールを送り、それからユーザーグループ・ラウンジにて非公式の円卓会議討論の司会を務めた。この討論会はとても楽しく、TidBITS について話したり、TidBITS の豆知識をクイズに出題して正解者に TidBITS Tシャツを配ったりした。このTシャツはこのような形で配るために何枚か持ってきてあったのだ。その後、残りの時間で会場のあちこちをできるだけたくさん見て回り、最後の一時間は Peachpit のブースで聴衆にデジタルカメラや iPhoto についての講演をした。ここでさらに嬉しかったことは、Peachpit が用意していた私の iPhoto の本がすべて売り切れたことだ。Aladdin のブースにまだ何冊か売れ残っているということで、最後の何人かの人にはそちらに回ってもらった。Expo 閉会の時刻が来ると、私は例年通り一時間ほどかけていつもの情報入手先から予想総入場者数を聞き出したり、今回のショウについての出展者たちの意見を聞いたりした。

さて、ショウ自体は閉会したのだが、私の仕事はまだ終わってはいなかった。私はまた Tim Holmes に会って、一緒に手荷物を受け取りながらお互いのショウに関する取材ノートを比較し合った。その後で Andy Ihnatko(MDJ Power 25 で 23 位になった人物だ)に会って、3人で一緒にタクシーに乗って Brooklyn に行き、Tim の弟の家で大勢の Mac 関係の友人たちとディナーを楽しんだ。ほとんどの人は真夜中前には帰るかベッドルームに入るかしたのだが、私を含め何人かはほとんど午前4時近くまで起きて話し込んでいた。

7 月 20 日、土曜日とその後 -- 睡眠不足続きのこの一週間で、さすがに私の体も参っていたのだろう、午前7時半に起きるのは大変辛かったが、何とか同僚ジャーナリストの David Strom と一緒に彼の車で8時に出発した。朝食はチャイナタウンで点心を食べた。とても時間がかかったが、おいしかった。David は私を Soho の Apple Store まで送ってくれた。ここで私は午後6時半から講演をすることになっていたのだ。予定通り私は手荷物を Apple Store のオフィスに置かせてもらって、午後は Soho を歩き回って過ごした。路上のアーティストたちと話したり、いろいろな店や画廊などに入ったりして楽しい午後を過ごせたのだが、そのうち突然、すべての電灯がちらついたかと思うと一斉に消えてしまった。マンハッタンの南地域の大部分に電力を供給している ConEd のメインの発電所で変換機が飛んでしまったのだ。私はニューヨーク市の出身ではないので即座に最悪の事態を連想することはなかったが、まわりの市民たちは皆、ビクっと飛び上がっているのがはっきりと見て取れた。ことに消防車がサイレンを鳴らして走り回り始めた時には。(渋滞したマンハッタンの道路を走り抜ける消防車も、見事な眺めだったが)

この停電の後、私は Apple Store まで歩いて戻ったが、そこで私は店内のエレベーターに閉じ込められた人々を消防士たちが救出するのを見守ることになった。その後消防士たちが梯子を抱えて帰っていくところを、店内に居た客たちすべてがスタンディングオベーションで見送った。この Apple Store は同じ地域の他のたいていの店よりも運が良かった。つまり、ここは停電があってもまだ開店していたし、たっぷりしたデザインの店内は自然光にあふれていたし、それにもちろん、PowerBook や iBook の数々は皆バッテリー駆動で少なくともあと数時間は動作し続けたから。

<http://www.apple.com/retail/soho/>

それでも、まだ午後の早いうちだったこともあって、私はずっとここで停電が直るのを待っていてもしかたがない、と思った。そこで私は、ダウンタウンへ歩いて行って J&R Music & Computer World の店を見てくることにした。ここはニューヨーク市内でも一番メインの Mac ディーラーの一つで、停電地域からはかろうじて道路一つ分だけ外れた場所にあった。こういう店が Apple Store とどう違うのかということにも興味があったし、またそうやって比べて見ているうちに、Apple が今必死で Apple Store の数を増やそうとしている理由が、私にも見えてきた。J&R のような店は一般的に言って Mac ディーラーとしての評判は良いのだが、Apple Store の側には2つの大きな利点がある。第1に、Apple Store では置いてある商品のすべてが Mac で動作するものだと期待できる。第2に、店を訪れた客が Mac を触ることができるだけでなく、デジタルカメラやスキャナ、プリンタなど、いろいろな周辺機器も触ることができる。この点で Apple は素晴しい英断をしていると思う。

<http://www.jandr.com/>
<http://www.apple.com/retail/>

さらにマンハッタンの先の方を目指して歩いて行くと、あのテロリスト攻撃の「グラウンド・ゼロ」にさしかかった。今ではここは広大な工事現場のようになっているが、ワールドトレードセンターの建物の崩壊の痕跡はまだあちこちにたくさん見られた。私が Apple Store に戻ったのは午後5時ごろで、停電が回復する見込みがないので6時に閉店するということを聞かされた。何? 講演は中止?それなら今ここでやろうじゃないか、というわけでその時点でたった1つ駆動可能だった私の iBook を動かして、どなたでもどうぞ、とその場で iPhoto のデモンストレーションを始めた。とても嬉しかったのは、毎日ここで iPhoto やその他の Apple 製プログラムの実演をやっているこの Apple Store の店員の人たちに、私がこれまで身に付けてきたいろいろなトリックやテクニックを説明してみせることができたことだった。

幸いなことにスターテン島フェリー乗り場行きの地下鉄はまだ走っていたので、素晴しい眺めのフェリー乗船を楽しんだ後で、無事叔母の家にたどり着いて叔母や叔父と一緒のディナーの席で今日一日の出来事を語り合うことができた。ベッドに入ったのは、久しぶりに午後 11 時という早い時間だった。

遅い朝食をのんびりと楽しんでから、4時間のドライブで帰宅した。残りの午後から夜の時間は、この記事を書いたり、たまっていた重要なメールを読んだりするのに費やされた。私にとっては悔しいことに、結局その週の号ではキーノートの記事を優先すべきだということになったので、月曜日丸一日かけて皆さんが先週読んで下さったキーノートの記事を書いた。まあ、普段はもっとリラックスした制作スケジュールでやっているのだが、Macworld Expo のような特別の状況では、こんなふうに直前にあたふたさせられることも珍しくない。

最後に -- Macworld の一週間の私の生活ぶりを、ずっとたどって旅してきたわけだが、楽しんで頂けただろうか? またいつか、もしもショウの会場で私を見かけて、時として私の様子がおかしかったり、疲れているように見えたとしたら、もう皆さんにはその理由がおわかりになっているだろうと思う。この私の日記からすぐわかることは、会場のフロアを訪問したりメールに追い付いたりするための時間を見つけること、というのがショウの会場での最大の問題なのだから。

このようなイベントの週には私は毎夜毎夜疲れ切ってしまうのだが、それでも私はそういう生活が大好きだ。いろいろな人々と Macintosh やインターネットの話題で話をすることほど私にとって楽しいことはない。そして、業界の人々の多くと実際に顔を突き合わせて話し合えるのは、このようなトレードショウの会場というのが絶好の機会なのだから。

Macintosh の世界と他のさまざまの世界とをはっきりと区別できる大きな違いは、Mac をめぐって育て上げられてきたコミュニティーの存在だ。そして、そのことを実感できる最大の機会が Macworld なのだ。もちろん、ただ Macworld Expo に行って数時間会場を歩き回り、それからただ帰るだけ、という人々も大勢いる。けれども、ちょっと目を開いて他の人たちと会い、話をしてみれば、あなたもこのコミュニティーに歓迎されているということが、すぐに実感として感じられることだろう。


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Valid XHTML 1.0! , Let iCab smile , Another HTML-lint gateway 日本語版最終更新:2005年 12月 26日 月曜日, S. HOSOKAWA