TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#648/23-Sep-02

メールに溺れている?それならフィルタが必要である、William Porter によれば、それも Mailsmith だという。その革新的な分散フィルタリング技術のおかげである。Matt Neuburg は、新 StuffIt Deluxe 7 とそこに使われる新しい StuffIt X ファイル形式について手短に紹介する。それから、来るべき O'Reilly Mac OS X Conference での我々の提供するセッションについてのお知らせ、更に、Apple からの三つのアップデート、PowerMate ソフトウェアの新バージョン、8 インチ Godzilla 型 FireWire ハブについてお伝えする。

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MailBITS/23-Sep-02

Apple、Mac OS X 10.2.1 と iTunes 3.0.1 をリリース -- Apple は三つの小さなアップグレードを先週 Software Update 経由及び個別のダウンロードとしてリリースした。最も意味があるのは Mac OS X 10.2.1 で、このオペレーティングシステムを数多くの小さな改善でピリッとさせている。例をあげれば、iMovie とメディアコンバータ間の対応性の向上;Mac 上で焼かれた CDを Windows 下で読むことが出来る機能;Mail で接続が途絶えた時メッセージが失われてしまうのを防止するための改良;印刷問題の解決;そして少々のiBook 修正がある。Mac OS X 10.2.1 は 17.1 MB のダウンロードである。他にリリースされたが何が変ったのかの詳細なしなのが iTunes 3.0.1 で、特定されていない機能強化と Jaguar 対応である;こちらのアップデートは 5 MB のダウンロードである。最後に、Apple は Security Update 2002-09-20 を出した、これは Terminal アプリケーションを公にされない理由で入替える;ダウンロードは 680K である。[JLC](カメ)

<http://docs.info.apple.com/article.html?artnum=107036>
<http://docs.info.apple.com/article.html?artnum=120134>
<http://docs.info.apple.com/article.html?artnum=120150>

PowerMate 1.5 リリースされる -- Griffin Technology は PowerMate 1.5 をリリースした。これはその不気味に人気の $45 のマルチメディアコントローラ (我々の Macworld Expo San Francisco 2002 で見つけた珠玉たちの記事の中で取上げた「ピカピカのノブ」) を走らせるソフトウェアに対するアップデートである。このバージョンで新しくなったのは、Volume Up, Volume Down, それに Eject キーのためのエミュレーション;Global Only 設定;Long Click ユーザーアクション、そしていくつかの小修正である。PowerMate 1.5 は Mac OS 9 と Mac OS X の両方に対するバージョンがあり 3 MB のダウンロードである。[JLC](カメ)

<http://www.griffintechnology.com/software/software_powermate.html>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06687>

DragThing 4.5 Gets Tabbed -- James Thomson の DragThing がアップグレードされてバージョン 4.5 となった。これは TidBITS のスタッフの中でも人気の Mac OS X ランチャーである。Jaguar の導入に伴って発生したバグの修正のほかに、このバージョンでは有意義な新機能を提供している:ドックはいまや、そのタブだけを見えるように残して後はスクリーン外にいることが出来る。タブをクリックするかそこにドラッグするか、或は組合せホットキーを使うと、ドック全体が画面に滑り出てくる(むしろ Mac OS 9 のタブ付きウィンドウか Sig Software の Drop Drawers X ユーティリティの様に;DragThing と Drop Drawers X の更なる詳細については TidBITS-628厳選 Mac OS X ユーティリティ: コントロールをカスタム化 参照)。他にもここで全部紹介するには多すぎる程沢山の小さな改善がなされている。このアップグレードは DragThing 4 の登録ユーザーに対しては無償であり、新規ユーザーに対しては $25(他社のランチャーの所有者に対しての $20 の乗換え価格もある)である。[MAN](カメ)

<http://www.dragthing.com/english/whatsnew.shtml>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06805>

Hubzilla、Macintosh に出会う -- 予めいっておくと、これはあまりにもおかしくてこの場所にはそぐわないほどかも知れない。Charismac Engineering は 8 インチ(20 cm)の高さのプラスチック製 Godzilla のおもちゃに組みこんだ 4 ポートの FireWire ハブを出した。ポートそのものはそのうろこ状の背中についており、その目は赤色の LED で、口には青色 LED が一個ついている(そしてこれらの LED は Hubzilla が Mac につながる度に光り輝く)。ドライバーは必要ないが、電源アダプタがオプションとなっており(別売り)必要な時に外部電源を提供する。Hubzilla は $75(旧態の退屈なFireWire ハブと較べてもそれ程法外に高くなっているとは思えない)で、Charismac は現在予約注文を受けつけている。通常、我々はまだ入手できない製品については扱わないのだが、Charismac の Tony Overbay によると反響は絶大で最初の入荷分は(11月始めの予定)予約注文分だけではけてしまいそうだという。Hubzilla そのものは引続き入手可能であるが、次の大きな入荷は今年のクリスマス商戦の最盛期には間に合いそうも無いという。ひょっとすれば、1月の Macworld Expo には間に合うかもしれない。Charismac はコンピュータハードウェアに次の大きなデザインの流れを持ちこもうとしているのかもしれない - 昨日のレトロおもちゃの姿に組みこんで。[ACE](カメ)

<http://www.charismac.com/Products/hubzilla/>


O'Reilly の Mac OS X Conference で会いましょう

文: Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

こんどの日曜日は Tonya の誕生日だ。彼女の誕生日を祝った後で、私は大陸を横断してカリフォルニア州 Santa Clara まで一飛び、O'Reilly 社主催のMac OS X Conference に 9 月 30 日から 10 月 3 日まで参加して、講師も務めることになっている。10 月 2 日(水曜日)の 2:15 PM から、私は“Mac OS X Report Card”と題するセッションで講演する。題名の通り、その内容はMac OS X の通信簿、つまり Apple が Mac OS X のさまざまの面に関してどの程度うまくやっているかを評価してしまおう、というものだ。この講演の内容をちょっと覗いてみたいという方は、TidBITS Talk の読者たちが私の付けた成績にどんな反応を見せたかを、TidBITS Talk で読んでみられたい。また、10 月 1 日(火曜日)の 10:45 AM からの“Automating Mac OS X”では、TidBITS 編集寄稿者の Matt Neuburg が、QuicKeys、BBEdit、REALbasic のようなツールを Eudora、Microsoft Word、FileMaker Pro のようなアプリケーションで使うことで、あなたの Mac を完全自動で(あなたがするよりも上手に!)動かすやり方について講演する。

<http://conferences.oreillynet.com/macosx2002/>
<http://conferences.oreillynet.com/cs/macosx2002/view/e_sess/3371>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=1760>
<http://conferences.oreillynet.com/cs/macosx2002/view/e_sess/3150>

もしもあなたが Macworld Expo と MacHack の中間程度の技術的レベルのMacintosh カンフェレンスがあればいいのに、と思っているのなら、今回のO'Reilly のカンフェレンスがまさにあなたの好みにぴったりかも知れない。ソフトウェア開発者向けのセッションもあれば、ネットワーク管理者やテクノロジー専門家、また一般のパワーユーザー向けのものもある。Tim O'Reillyや Ted Landau、David Pogue といったいつもの面々に加えて、TidBITS やTidBITS Talk によく寄稿してくれる人たちも数多く講演者として名を連ねている。例えば Glenn Fleishman、Dori Smith、Rich Siegel、Stuart Cheshire、Cory Doctorow、Gordon Meyer、それに Dan Frakes といった面々だ。数々の公式セッションだけでなく、こうした多くの講演者の面々は毎夜の非公式の討論の集まりや、水曜日の夜 9:00 PM からの Birds of a Feather セッションなどにもきっと顔を出すことになるだろう。いわば、リアルタイムの TidBITS Talk が実現するわけだ!

<http://conferences.oreillynet.com/pub/w/19/speakers.html>
<http://conferences.oreillynet.com/pub/w/19/bof.html>

まだ予約を済ませていないけれどもこのカンフェレンスに参加してみたいと思っている人のため、O'Reilly は TidBITS 読者のために特別に 35% 割引のディスカウントを延長してくれた。予約時に“macosx02tdbt”のコードを使えばディスカウントが受けられる。皆さん、会場で会いましょう!


StuffIt Deluxe 7 - ファイル名の中身は?

文: Matt Neuburg <matt@tidbits.com>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

ディスク容量が足りなくて困ったことなんかない、という人もいるかも知れない。どこか人里離れた一軒家に住んでいるので誰ともファイルのやり取りなんかしたこともない、という人もいるかも知れない。でもきっとあなたは、そんな人ではないでしょう? もしもこの私の推察が正しいとしたら、そしてもし、あなたがこれまである程度の期間 Mac ユーザーであったのだとしたら、あなたが普段何も考えずに慣れ親しんで使い続けているようないつものユーティリティの中に、きっと Aladdin 社の StuffIt が、どっしりとその腰を落ち着けているに違いないだろう。ファイルやフォルダをアーカイブに変えれば、たちどころにハードディスクに占める容量が小さくなり、インターネット上で転送する時にも小さな帯域幅で済むようになるからだ。だからこそ、2001 年の 3 月に Mac OS X が登場した時にも、Utilities フォルダの中にちゃんと Mac OS X-互換版の StuffIt Expander があるのを見て、私は安心のため息を漏らしたものだった。でも、そこにはただ一つ、問題があった。このバージョンは、まともに動かなかったのだ。

いや、もちろん、私はちょっと誇張している。たいていの場合には、うまく動いてくれた。けれども時々、私が何かアプリケーションをダウンロードして、それを StuffIt Expander にかけると、出てきたものは使い物にならない、ということがあった。たいていの場合、もう一度ウェブサイトをチェックしてみると、そこには別の方法で圧縮されたバージョンも置いてあるのだった。例えば gzip 圧縮されたディスクイメージで Disk Copy でマウントできるもの、というような具合だ。これは、多くのユーザーが StuffIt 圧縮によるバージョンが使えないという苦情を寄せたために、作者が急遽の対策として置いてくれていたのだ。

Mac OS X 用に転向したばかりの数々の他のプログラムと同様に、StuffIt もまた、この時点ではいくつもの不十分な箇所を抱えていた。そのなかでも一番誰の目にも明らかな欠陥といえば、それは何と言っても、長いファイル名に対応できていないという問題点だった。今から4年以上も前、HFS+ が導入された時に、ファイル名の長さの上限はそれまでの 31 バイトから 255 バイトにまで引き上げられたのだった。そして、32 バイト以上の長いファイル名を扱うためのハイレベルのプログラミング API は Mac OS 9 と共に提供された。けれども、実際に多くのユーザーが長いファイル名に直面するようになったのは Mac OS X の登場以降になってのことだった。Mac OS X になってようやくFinder で長いファイル名が入力できるようになり、普通のプログラムでファイル保存をする際にも長いファイル名が使えるようになったのだ。もちろん、それはちゃんと正しく書かれたプログラムならは、ということだが。プログラムによっては、例えば Microsoft Office のようなものでは、Mac OS X の下でも長いファイル名を扱うことはできなかった。(現在でもまだ Microsoft Office は長いファイル名を扱えていない。)

StuffIt の場合は、この問題がさらに深刻なものとなった。なぜなら、このStuffIt の欠陥は圧縮アーカイブを“ゴキブリホイホイ”と化してしまったのだから。つまり、長い名前のファイルはアーカイブに入ることはできたが二度と出てくることはできなかったのだ。長い名前を持つファイルを含んだアーカイブを伸長しようとすると、そのファイル名は何か短い名前のものに変えられてしまうのだった。なんだ、大した問題じゃないではないか、と思われるかも知れないが、実はそうではない。Mac OS X では、あなたの目には触れないようなところに長い名前のファイルがたくさん存在しているのだ。たとえアプリケーションの名前が短いものであっても、Mac OS X においてはそのアプリケーションの実体はただのファイルではなくて1つのパッケージ(基本的には特殊なフォルダ)という形をしていることが多く、そういう場合にはその内部に多数のファイルが含まれていてそのいくつかは長い名前かも知れない。もしもそういう内部ファイルの名前が変わってしまったら、きっとそのアプリケーションは正しく動作できないだろう。

2001 年の 9 月になって、Aladdin 社は StuffIt 6.5 をリリースした。けれどもこのバージョンでも、依然として長いファイル名はサポートされていなかった。それから我々を待たせることさらに1年、ようやく今になって、少なくともこの問題は解決された。今回、Aladdin は StuffIt Deluxe 7.0 をリリースし、このバージョンにおいて新しい StuffIt X というファイルフォーマットを導入して、長いファイル名を扱うことができるようになった。この新しいフォーマットのその他の特徴としては、より強力になった暗号化機能、1つのアーカイブに巨大な量のデータを入れることのできる能力、データロスを予防するための redundancy チェックのオプションなどがあり、また圧縮率の向上も謳っている。

<http://www.stuffit.com/stuffit/sitxformat.html>

StuffIt X -- 過去においては、StuffIt が新しいファイルフォーマットに切り替わる度に、皆は大声で不満を述べたものだった。1999 年のはじめにStuffIt 5 がリリースされた時に起こった大騒ぎのことは、覚えておられる読者の方々も多いことだろう。この StuffIt 5 フォーマットはそれまでのフォーマットと互換性が無かったので、大多数のユーザーが新バージョンに切り替え終わるまでの長い間、それこそ次から次へとトラブルの止む間が無かったものだった。一般ユーザーの Aladdin への信頼は、この時大きく傷つけられた。そして Aladdin はそのことをしっかり覚えていてくれたのだ。今回のリリースでは、Aladdin は賢明な方策を選ぶことによって、自らの立場を失うことなく解決に向けて前進することができたと思う。この新しいフォーマットは、当然以前のフォーマットとは互換性が無い。だが、互換性のある振りをすることも無いのだ。両フォーマットは簡単に見分けることができる。新しいフォーマットのアーカイブファイルは、“.sitx”という接尾辞の付いたファイル名になる。他方、StuffIt は旧フォーマットの“.sit”のアーカイブもこれまでと同様に伸長(unstuff)できるし、(さらに重要なことだが)データを“.sit”フォーマットのアーカイブに圧縮することもできる。つまり、旧フォーマットへの互換性も完備しており、アクセスも可能になっているわけだ。もしもあなたが新フォーマットを使いたくないならば、使わなくてもよい。但しもちろん、長いファイル名を含むアーカイブを作りたいのならば新フォーマットを使わざるを得ない。これまでのバージョンの StuffIt Expander は新しい StuffIt X フォーマットのアーカイブを伸長することはできないが、フリーウェアの StuffIt Expander 7 を使えば伸長することができ、これは現在ダウンロードが可能になっている。

<http://www.stuffit.com/expander/macupdates.html>

StuffIt Deluxe 6.5 と同じく、StuffIt 7 にも Finder integration の機能が用意されており、Finder でのコンテクストメニュー、または Magic Menu メニューアイコンを使って簡単にアクセスができる。私の場合は Mac OS X のメニューバーが既に一杯になってしまったので Magic Menu はインストールしていないが、コンテクストメニューはとても便利に使っている。StuffIt の様々な機能が、Control-クリック(または右クリック)だけで手軽に使えるのだから。圧縮したり伸長したりする作業は、私は主にコンテクストメニューでするようになった。実際に StuffIt Deluxe アプリケーションを起動させる必要はほとんど無いだろう。

けれども、残念ながら、このコンテクストメニューの項目には新フォーマットと旧フォーマットのどちらでアーカイブを作るかの選択肢が与えられていない。圧縮するためのフォーマットを切り替えるには、あらかじめ環境設定画面を使わなければならない。同梱されている DropStuff アプリケーション(ドロップレット)にも同じことが言える。“.sit”圧縮用と“.sitx”圧縮用の2つのドロップレットを提供してくれればよいのに、と思うのだが、Aladdin は1つだけしか提供してくれなかった。フォーマットを選ぶには、ドロップレットにドロップする前に、あらかじめ環境設定をしておかなければならない。私の意見では、この Aladdin の判断は極めてまずいインターフェイスの選択だったと思う。この不便を回避するための、おそらく一番手軽な方法は、やはり同梱されている StuffIt Express PE アプリケーションを利用することだろう。このアプリケーションを使えば、自分の好きなドロップレットを自由に作ることができる。そういうドロップレットにファイルやフォルダをドロップすれば、好きなフォーマットに圧縮させることもできるというわけだ。(StuffIt Express はこの他にもいろいろのことができる。多数のファイルに決まったファイル処理を頻繁にしなければならないような場合には、一見の価値があるだろう。)皮肉なことに、StuffIt Express で作ったドロップレット自体に長いファイル名を付けることはできない。

StuffIt Deluxe 7 のその他の機能としては、ウィンドウにドラッグ&ドロップしてのファイル圧縮、Microsoft Word との統合により Word 2001 や Word X の中から書類を圧縮してメールできる機能、Zip アーカイブのフルサポート、Stuff および Mail コンポーネントによる Microsoft Entourage とApple のMail のサポート、ファイルを圧縮・伸長するためのコマンドラインツール、StuffIt および Zip アーカイブの内部を検索できる ArchiveSearch アプリケーション、などがある。

StuffIt Deluxe 7 の価格は $80 で、アップグレードは $30 となっている。また、$50 の StuffIt Standard Edition(以前 StuffIt Lite と呼ばれていたもの)もあって、こちらには DropStuff、DropZip、DropTar と StuffIt Expander のみが含まれる。

<http://www.stuffit.com/stuffit/deluxe/>
<http://www.stuffit.com/stuffit/lite/>


Mailsmith と分散フィルタリング、その 1

文: William Porter <wporter@polytrope.com>
訳: 倉石毅雄 <takeo.kuraishi@attglobal.net>
訳: 佐藤浩一 <koichis@anet.ne.jp>

あなたに会ったことはないが、知っていることが一つある:今年は昨年以上の、それもかなりの量のメールを受け取っているだろう。もし受信箱と送信箱にメールが溜まるに任せているのなら、近いうちに手におえない整理の悪夢となるだろう。この悪夢を防ぐ方法は(もしくはもう手遅れならば、その解決策は)メールのフィルタを定義し使用することだ。メールの整理の手助けは、メールソフトにとってはメールの送受信の次に重要な機能で、フィルタがその一番の道具だ。

この記事はTidBITS-638 での Mailsmith のレビュー“Mailsmith 1.5: すごい、鋭い、電子メールマシン”の続編だ。そのレビューでは、私はMailsmith のフィルタオプションは既存の Mac OS のメールソフトのうちでもっともパワフルで柔軟でバラエティに富んでいると述べた。Mailsmith のもっとも独特な機能は“分散フィルタリング”と呼ばれている。その斬新さから、TidBITS の編集部はこれについてもっと詳しく説明する機会を提供してくれた。これで Mailsmith の試用を考えている人達にその可能性を理解してもらえれば、また、現在使用中の人達がその機能をフルに活かす事が出来れば幸いだ。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06870>(日本語)Mailsmith 1.5: すごい、鋭い、電子メールマシン
<http://www.barebones.com/products/mailsmith.html>

分散フィルタリング -- Mailsmith のフィルタは標準的な方法でも当然使用できる。つまり、単純に受信したメッセージを適切なメール箱へ区分けしていく。Mailsmith の標準的なフィルタはかなりパワフルだ。おそらくは他のメールプログラム以上だろう。しかし、Mailsmith は完全に異なったそして独特のフィルタ方法をも提供している。分散フィルタリングだ。

標準的なフィルタを使用している場合、受信箱に到着した全てのメッセージは定義された全てのフィルタによって検査される。もしフィルタ 29 番の条件に合ったとしても、大抵の場合はさらに 30 番から 50 番のフィルタによっても検査される必要がある。全てのフィルタが受信されたメッセージを検査し終えたら、プログラムがどの条件が合致したか判断し、必要とあればフィルタ間のコンフリクトを解決してメッセージをどう処理するか決める。その結果、メッセージは期待する郵便箱へと転送されるはずだ。ただし、この場合、郵便箱の配置はフィルタリングに全く関係ない。

しかし、Mailsmith の分散フィルタリングではそうではない。これは郵便箱の配置を利用して受信したメッセージのフィルタ適用を設定し、また限定する。受信されたメッセージはまず階層の最上レベルでアルファベット順に最初の郵便箱によって迎えられる。郵便箱がメッセージの受信を“認識”する、つまりそれぞれの郵便箱に付随するフィルタの条件のどれかと一致すると、その郵便箱がメッセージを獲得する。そのメッセージは続いてその中の郵便箱によって検査される。しかし、一度郵便箱に獲得されたら、階層の最上層のアルファベット順でそれ以降の郵便箱に付随するフィルタにはもう検査されない。

分散フィルタリングの働き -- 上記の説明はどうしても抽象的になってしまうので、具体的な例を挙げて分散フィルタリングの効能を見てみよう。

以下のような郵便箱の階層は私の設定を基にしたものだが、これを見て欲しい。(受信)と(ゴミ箱)は Mailsmith に所属する。つまり、Mailsmith が作成し、移動、削除、名前変更などは出来ない。それ以外には最上層の郵便箱としてクライアント(client)、メールリストや定期購読(list & subscriptions)、そして私用(personal)を設定している。これらは私がメールをダウンロードする三つの主要 サーバアカウント(POP 郵便箱)に対応している。

 (incoming)
 (trash)
 clients
 lists & subscriptions
   - Mailsmith
      -- Mailsmith / keep
   - FileMaker
      -- FileMaker / keep
   - TidBITS
 personal

まず最初の二つのサーバアカウントからのメッセージを処理するフィルタを作成しよう。

 If Server Account Contains "clients"
 [Then] Deposit

そして

 If Server Account Contains "lists"
 [Then] Deposit

最初のフィルタをクライアント郵便箱に付けて、二つ目のフィルタをメールリストと定期購読郵便箱に付けよう。(私の例のフィルタは Mailsmith フィルタ定義ダイアログとかなり似ている。ここでは分かりやすくするために少しだけ編集した。)

新しいメールがメールリストのサーバアカウントから到着すると、まず、クライアント郵便箱によって検査される。なぜなら、“クライアント”は“メールリストと定期購読”よりもアルファベットで先に来るからだ。しかし、メッセージはクライアントフィルタの条件とは一致しないから、メールリストと定期購読に廻される。私用郵便箱へは絶対に行かない。

しかしまだ先がある。これはメールリストと定期購読内の郵便箱によって更にフィルタリングされるかもしれない。例えば、その中には“TidBITS”という郵便箱がある。以下のフィルタが付随しているとしよう:

 If To Contains "tidbits"
 [Then] Deposit

もしこの仮のメッセージが条件に一致すれば、TidBITS 郵便箱に移動される。分散フィルタリングで“投函(deposit)”アクションを使用すれば、単純明快で効率的な方法でメッセージは郵便箱の階層の正しい場所へと分散して行く。

なぜこの方法が良いのか?分散フィルタリングの設定は具体的だ。郵便箱の配置を見れば、フィルタの適用方法が一目で分かる。問題解決も楽だ。私の郵便箱で三つ以上のフィルタが付随しているのは無い。受信箱には一つも付いていない。正しい行き先へ行かなければ、フォルダ階層のどこへ行ったかを見て、郵便箱のツリーを辿って行き、間違いが起きた分岐を見つける。この手法では調査するフィルタは多くて一つか二つだ。逆に Microsoft Entourage では、50 のフィルタのうち一つが正しく働いていない場合、他のどれも問題の原因で有りうる。プログラム中の別の場所にある Entourage のメールリスト法則と迷惑メールフィルタを加えるとさらに可能性が広がってしまう。

フィルタリングを最大に -- ここまでは、分散フィルタリングの基本だけを見てきた。分散フィルタリングが印象的なのは、それが従来のフィルタを使ってできることを若干うまくできるということではなくて、分散フィルタリングがメールを処理するという考え方をまるごと新しいレベルに持っていってしまうことだ。次の例で考えてみよう:

私は、活発でとても役に立つ Mailsmith Talk メーリングリストを購読している。フィルタにより、このリストから受信したメールはまず最初に“Mailsmith”と名付けられた郵便箱に入れられる。時間があるときに新しいメッセージを読むと、ステータスは自動的に未読から既読へと自動的に変わる。メッセージはすべて楽しく読ませてもらっているが (メールの流量はそれほど多くないからできることだ)、保存しておこうと思えるのは、毎週少ししかない。なので、読み終わったあと、将来のために取っておこうと思ったメッセージに対しては定義してある簡単なキー操作によりカスタムラベル(“keep”)を付ける。ここで、“Mailsmith”郵便箱の中にはさらに“Mailsmith / keep”という下位の郵便箱が含まれており、以下に述べる 2つのフィルタが付随している。最初の“Archiving”と名付けられたものは、以下のようになっている。

 If ((Label Is Equal To "keep"
   Or From Contains "lists@polytrope.com")
   Or Answered Is Equal to True)
   And Read is Equal to True  
 [Then] Deposit

Mailsmith がどのように条件を評価するか分かるように、ここでは丸括弧を用いてある。このフィルタは、次の 3 つのうち一つ - “keep”ラベルを付けたもの、自分自身からのもの、あるいは返信したもの - そしてその中で既読のものに該当するメッセージを捕まえる。

残りのメッセージはどうなるか? それらは、次の“Trash”と名付けられた単純なフィルタにより処理される。

 If Read Is Equal To True
 [Then] Transfer [to] "(trash)"

このフィルタにより、最初のフィルタで引っ掛からなかったものは全てゴミ箱に移動される。

ここで、フィルタの名前のアルファベット順に意味があることに注意して欲しい。もし“Trash”フィルタが“Archiving”フィルタより前にメッセージを処理してしまえば、もちろんすべての既読のメッセージがゴミ箱に直行してしまうだろう。さらに条件を加えれば“Trash”フィルタをもっと安全なものにできなくもないが、この設定で充分だとの確信を持っている。

もちろん、受信したばかりのメッセージは文字通り未読であるので、これらのフィルタが新しいメッセージを処理することはない。これらのフィルタはメッセージが読まれた に処理をするが、ほとんどのフィルタは読む に処理をしている。それでは、どのようにしてこれらのフィルタが実行されるのであろうか? Mailsmith が起動するたび実行するように、簡単な AppleScript スクリプトを書くことによってこのプロセスを自動化することもできるが、私は自分の好きなときに選択した郵便箱に対して Mailsmith のフィルタを再適用するコマンドを使うことを選ぶ。到着時に既にフィルタリングされていたメッセージも再度フィルタリングされ、さらにプロパティが変わっているため、最初に合わなかったフィルタの条件にも合うことになる。

こうして、すべてのメーリングリストのメッセージ - 一日に数百通 - は、いわば揺りかごから墓場まで Mailsmith の分散フィルタにより処理される。一つづつメッセージを消したりはしない。代わりに、読み終わった後、不要なものにではなくて取っておきたいものに焦点を合わせる。これは、とても効果的だ。なぜならほとんどの場合、消去したいと思うものよりも取っておきたいと思うメッセージのほうが少ないからだ。

状況によるフィルタリング -- しかし、ちょっと待って欲しい。分散フィルタはさらに凄いのだ。まったく同じフィルタをたくさんの別のフォルダに設定することができ、その影響はそれが適用された状況により決定される。

私がメーリングリストから受け取るすべてのメールは、Mailsmith Talk メーリングリストから受け取るメールと同じ方法で処理される。私が購読しているいくつかの FileMaker メーリングリストからくるメールは、最初に“FileMaker”郵便箱に保管される。この郵便箱の中にはさらに“FileMaker / keep”という郵便箱があり、それには“Mailsmith / keep”と同じ 2 つのフィルタが設定されている。

もう一度これら 2 つのフィルタを見て欲しい。どこにも Mailsmith メーリングリストか FileMaker メーリングリストのどちらから届いたメッセージであるかによって変わるような条件を使用していないのがわかるだろう。Entourageでもある特定のフォルダにある特定のメッセージがあるかどうか、そしてその結果により対応するような条件を作成することはできるが、これは状況によるフィルタリングではない。なぜなら、その条件はそのフィルタ内で定義されなければいけないからだ。

複数のアカウントをフィルタリング -- 分散フィルタは、特に私のような複数の電子メールアカウントを持っているユーザに対し威力を発揮する。これにより、あるアカウントに送られてきた全てのメールを直接そのアカウントの最上位レベルの郵便箱に導き、そしてそれ以降はそのアカウントから受け取ったメールに特有の内容に基づく条件でフィルタリングを行う。メーリングリストからのメールは、いつも同じアドレスから届き、またフィルタに合致しやすいので、特に都合が良い。

残念ながら、受信するメールすべてがこのように簡単にいくわけではなく、また特に重要なメールに限って簡単にいかないメールであるものだ。私はクライアントに、私宛のメールを出すときはある特別なアドレスへ送って欲しいとお願いしている。そうすれば、そのメールはある特定の POP アカウントに届くことになり、クライアント郵便箱に次のフィルタを設定することができる:

 If Server Account Contains "clients"
 [Then] Deposit

クライアント郵便箱の中には、現在作業中のプロジェクトに関するクライアントのために定義された特別な郵便箱がある。それぞれの郵便箱には特定のクライアントからのメールを取り出すためのフィルタが設定されている。例えば、Not So Big Company, Inc. 社からのクライアント用の郵便箱のフィルタはこのようになるだろう:

 If From Contains "@notsobig.com"
 [Then] Deposit

しかし、あなたが想像したように、私にメールを出すときいつも都合の良いアドレスを使ってくれるとは限らない。時折、クライアントからのメールが私用の郵便箱に入ることがある。これを解決するのは、クライアントに特有なフィルタを、最上位のクライアント郵便箱とその中にある個別のクライアント郵便箱の双方に設定するだけで良い。このようにすれば、最初のフィルタでメッセージを抽出できなくても、2 番目のフィルタで抽出できる。どの郵便箱にでも複数のフィルタを設定することが可能だ。

このアプローチは単に転送作業を行うフィルタを定義してそれを受信郵便箱へ設定するよりも良いだろうか? 私は良いと思う。フィルタの適用方法にある程度の冗長度があるとはいえ、それでも分散フィルタは定義するのは簡単だしトラブルも減るだろう。欲を言えば、Mailsmith のフィルタリストで選択したフィルタがどの郵便箱に設定されているかわかれば良かった。

来週のMailsmith と分散フィルタリング、その 2では、受信メールだけでなく送信メールまで分散フィルタを使ってどのように管理するかを考察しながら、この革新的な分散フィルタについての説明を終えることにする。さらに、分散フィルタが打ち寄せる spam の荒波を食い止めるのにどのように役立つかについても見ていくことにする。


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Valid XHTML 1.0! , Let iCab smile , Another HTML-lint gateway 日本語版最終更新:2005年 12月 26日 月曜日, S. HOSOKAWA