TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#661/06-Jan-03

新年あけましておめでとうございます! 我々スタッフのほとんどは現在 Macworld Expo に向かう旅の途中で、Expo 期間中にいくつか新たなスケジュールの予定も入っているのでお知らせする。今号では Adam が 2003 年に向けてのコンピュータ業界の行く末を展望し、スパムに対抗するために新たに Habeas ヘッダを導入したこともお伝えする。ライター兼編集者の Mark Anbinder は Virtual PC 6 を検討する。それから、Mac OS X 10.2.3、iCal 1.0.2、それに iSync 1.0 のリリース(と若干の問題点)についてのニュースもある。それでは皆さん、Macworld でお会いしましょう!

記事:

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MailBITS/06-Jan-03

Apple が Mac OS X 10.2.3 アップデートをリリース -- Apple は 2002 年の締めくくりとして Mac OS X 10.2.3 アップデートをリリースした。これはかなり大がかりなアップデートで、数々の改良とバグ修正を Jaguar に取り入れている。変更点の主なものを挙げると、いくつかのデジタルカメラや外付け CD バーナと Mac との間の互換性の修正や、iPhoto、iChat、Mail、Disk Utility、それに Disk Copy などのアプリケーションの改良等がある。Mac OS X 10.2.3 ではまた、速度の遅い、あるいは混雑したネットワーク接続の下での iDisk のパフォーマンスの改善や、Rendezvous ネットワーキングの改良、それに Connectix の Virtual PC 6 における改良をサポートするための変更も加えられている。このアップデートはソフトウェアアップデート経由で 51 MB の巨大なダウンロードをすることもできるが、スタンドアロンのインストーラも Mac OS X 10.2.2 からのアップデート用および 10.2 か 10.2.1 からのアップデート用 (59 MB) の双方がポストされている。TidBITS Talk での議論、またいくつか個人的な経験にも基き、アップデートを施す前には必ずハードディスクに Disk First Aid を走らせておくことをお勧めしたい。特に、Mac OS X 10.0 以来ずっとアップデートを繰り返して来られた場合には、これが重要なようだ。[JLC](永田)

<http://docs.info.apple.com/article.html?artnum=107263>
<http://www.info.apple.com/kbnum/n120165>
<http://www.info.apple.com/kbnum/n120164>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=1815>

Apple が iCal と iSync もアップデート -- 前回 2002 年 7 月の Macworld Expo で Apple が派手にアナウンスした製品のうちの2つが、やっと今回の 2003 年 1 月の Expo に間に合った。iCal 1.0.2 では、このカレンダーアプリケーションに熱望されていたパフォーマンスの改善が実現された。起動時間も短くなり、読み込み能力も向上した。(少なくとも我々の環境では、やっと iCal が vCal および Microsoft Entourage のファイルを正しく読み込めるようになった。)この週の前半にリリースされた iCal 1.0.1 は、グリニッジ標準時から 10 時間以上離れたタイムゾーンにおいて正しく働かないというバグを抱えていた。今回のバージョン 1.0.2 のリリースノートではこの点は特に触れられていないが、Apple は iCal ダウンロードページに載っていたこの問題点の注意書きを既に削除しているので、この問題点の修正が今回の 1.0.2 への素早いアップデートの原因の一つだったのだと想像がつく。iCal 1.0.2 は無料で 10.4 MB のダウンロードだ。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06880>(日本語)Jaguar、iCal、そして iSync 現わる
<http://www.apple.com/ical/>

Apple は iSync 1.0 もポストした。今回でリリースバージョンとなったこのシンクロナイズユーティリティは、2002 年 9 月 30 日以来ベータ版として配布されてきたものだ。今回のリリース版の iSync では Palm OS デバイスとのシンクロが高速化され、Palm の設定を iSync 内でできるオプション(Palm Desktop 4.0 の HotSync コンポーネントが必要)や .Mac との自動シンクロナイズ、.Mac Address Book とのシンクロナイズ、また iSync メニューバーアイコンなどが追加されている。(我々のテストでは、iSync は非常に動作が遅く、プロセッサへの要求度が高いように見えた。)2003 年 1 月 7 日以降、.Mac のアカウントを持つユーザーは自分の Address Book 情報にウェブ経由でアクセスが可能となる。iSync 1.0 は 5.1 MB のダウンロードだ。[JLC](永田)

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06946>(日本語)iSync のパブリックベータ、リリース
<http://www.apple.com/isync/>

Macworld イベントのお知らせ -- 休暇中にも iBook を持ち歩いていてよかった! 思いがけないことも起こるものだ。まず、Creo からは Six Degrees での TidBITS スポンサー契約を更新したいという連絡が入り、その後には次々と Expo 関係の新たなイベントの連絡が飛び込んできた。というわけで、Expo 期間中に Glenn や私と The Wireless Networking Starter Kit について、あるいは他の話題について喋りたいと思っている方は、2003 年 1 月 8 日(水曜日)の 3:00 PM に DevDepot ブース (#3761) にも来て頂きたい。ここではこの本の販売もしているので私たちは喜んでサインもさせて頂く。もしもその時間に私たちに会いそこねた方は(直接会うのが恥ずかしいって?私たちは噛みついたりはしませんよ)DevDepot でも、あるいは Macintosh 対応のワイヤレスネットワーキング関係のベンダーである MacWireless (ブース #1646) でも、私たちのサイン入りの本を販売しているので目を通して頂ければ嬉しい。最後に、Expo に出席できない方々のために、Glenn と私は金曜日に TechTV の番組“ScreenSavers”に出演することになっている。録画は 4:00 PM から 5:00 PM までの予定だが、実際にケーブルテレビで放映されるのが何時になるのかはよくわからない。お宅の番組表を参照して頂きたい。[ACE](永田)

<http://www.devdepot.com/>
<http://www.macwireless.com/>


TidBITS メールに Habeas ヘッダを採用

文: Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

スパムメールの蔓延はもはや常軌を超えた規模のものとなっている。2002 年の1年間で、私は何と 23,000 以上ものスパムメール(私のメールのほぼ 35%)を受け取った。しかもこれは私のメインのメールサーバにおいて Mail Abuse Prevention System の RBL+ リアルタイム・ブラックホールリストを初めとする控え目ないくつかのサーバーサイドのスパムフィルターを動作させた上での話なのだ。もちろん、私のメールアドレスはかなり古くから使っている(私がかの昔の UUCP スタイルのアドレス <ace@tidbits.uucp>から移行して来て以来全く変わっていない)ものだし、大抵の人よりは広範囲に知られたアドレスであるには違いないのだが、ここであえて言わせてもらえば、私がさらされているこの事態は、一般の人たちのほんの一歩先を行っているだけのことなのだ。あなたが現在それほどたくさんのスパムを受け取っていないのなら、それは単にあなたがまだラッキーなのであって、荒波にさらされる前の仮の猶予期間に居るに過ぎないのだ。

<http://mail-abuse.org/rbl/>
<http://www.eudora.co.nz/eimsfilters.html>

ポジティブに考えよう -- けれども、当分の間はまだスパムの量は減る見通しが無いとはいえ、ここに来てようやく我々は、大多数のスパムを排除できるための基本となる考え方が確立されつつあるという転換点に立っているように私には思える。少なくともその考え方がうまく組み合わされて実地に適用されさえすれば、望みは充分あると思う。そういう考え方の例としては、特定の単語がどの程度の頻度で使われているかによって個々のメッセージがスパムであるかどうかの確からしさを推定しようと試みる Bayesian フィルターや、過去に真正のメールを受け取った人からのメールのみを通す whitelist、また、初めての人からのメールには差出人の認証を必要とさせる challenge/response システム等がある。さらに、その他で抑止効果を期待できるものとしては、合衆国のいくつもの州で制定されているアンチスパム法や、それらの法律に基いてスパム発信者に対して起こされている訴訟、よく管理されたブラックホールリストを使ってメールサーバの段階でスパム発信者に汚染されたメールサーバからの接続を拒否する方法、あるいは、スパム発信者に食い物にされる可能性のあるオープンリレイの数を適切なデフォルト設定とネットワーク管理者の教育とを組み合わせることによって減少させること、等もある。

<http://www.paulgraham.com/spam.html>
<http://www-106.ibm.com/developerworks/linux/library/l-spamf.html>

この、スパムをコントロールするための有望な方法のリストに、決して私がサーバーサイドの独断的なコンテンツフィルターを含めていないことにご注意頂きたい。サーバの管理者がスパムメールの中にその単語を見かけた覚えがあるという理由だけで特定の単語を含むメールをすべて拒否するようなサーバーサイドのフィルターを作ることは、スパムの与える害よりも大きな害を電子メールの有用性に対して与えてしまう。Geoff Duncan が TidBITS-637の記事“メールのフィルタリング: 皆のアプリがダメになる”で問題提起をして以来、New York Times や Newhouse News Service など、多くのメインストリームのメディアでもこの問題は議論されてきた。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06866>(日本語)メールのフィルタリング: 皆のアプリがダメになる
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06869>(日本語)メールフィルターの実状を暴く
<http://www.nytimes.com/2002/07/15/technology/15SPAM.html>

独断的なコンテンツフィルターの危険性を多くの人に知ってもらおうという私たちの努力は確かに実を結んでいるようだが、それでも問題が完全に解決したわけではない。つい最近のギフト特集号も、あるメールサーバで拒否された。(この号も、間違いなく同じ理由で拒否されるだろう。)その理由というのが、テキスト中に“cows”(「牛たち」)という単語が含まれていた、というだけのことなのだ!(皮肉なことに、この単語はあの Heifer Project のチャリティーに関連して出てきたのでもなく、実は Tropico ゲームについてのコメントの一部だった。)こうしたコンテンツフィルターの存在がメール返送という形で警鐘を鳴らしてくれる度に、私たちは購読者を失わないための対策として、そうしたメールサーバの影響を受けてしまった購読者の方々に TidBITS のアナウンスメント版の購読に切り替えてもらうようにお願いしている。アナウンスメント版ならばメールそのものに含まれる単語の数はずっと少ないので、このようなコンテンツフィルターを通り抜ける確率が高くなるからだ。

Habeas 登場 -- さて、スパムに対抗するためのもう1つの新しい方法で、私たちが早速採用することに決めたものがある。TidBITS にも記事を書いてくれたことのある Dan Kohn の始めた Habeas という名の新会社が、“送信者保証電子メール (sender warranted email)”という概念を考え付いたのだ。そのアイデアはこうだ。あなたの送信する電子メールのメッセージのヘッダ部分に 9 行から成る定型のヘッダ行を追加することによって、あなたの送信する電子メールがスパムでないことを、あなたが保証するのだ。Habeas ヘッダを含むメッセージは真正のメールであってスパムではないと、ISP も、メールプロバイダも、いろいろなスパムフィルターも、そして受信する人も、皆が信用することができるのだ。

<http://www.habeas.com/>

Habeas ヘッダとは、次のような 9 行だ:

 X-Habeas-SWE-1: winter into spring
 X-Habeas-SWE-2: brightly anticipated
 X-Habeas-SWE-3: like Habeas SWE (tm)
 X-Habeas-SWE-4: Copyright 2002 Habeas (tm)
 X-Habeas-SWE-5: Sender Warranted Email (SWE) (tm). The sender of this
 X-Habeas-SWE-6: email in exchange for a license for this Habeas
 X-Habeas-SWE-7: warrant mark warrants that this is a Habeas Compliant
 X-Habeas-SWE-8: Message (HCM) and not spam. Please report use of this
 X-Habeas-SWE-9: mark in spam to <http://www.habeas.com/report/>.

[訳注: 最初の 3 行は俳句です。翻訳すれば

    “冬から春へ
  一筋の光さす
  Habeas SWE (tm)”
  Copyright 2002 Habeas (tm)
  Sender Warranted Email (SWE) (tm) は Habeas の商標です。
  この電子メールの送信者は Habeas 社とのライセンスに基き
  当メールが Habeas Compliant Message (HCM) でありスパムではない旨の
  マークワラントを保証します。スパムにこのマークが使用されているのを
  発見された方は <http://www.habeas.com/report/> までご一報下さい。

という感じでしょうか。]

「でも、でも、ちょっと待って...」と、きっとご不満が沸いたに違いない。「こんな Habeas ヘッダくらい、スパムにも同じように付けられてしまえば何の意味もないじゃないか?」と。おっしゃる通り、スパムに同じヘッダを付けるのも簡単だ。但し、Habeas 社は弁護士たちの大群を用意していて、不正にこのヘッダを使用した者に対しては、著作権法および商標法の違反として厳しい鉄槌を下す準備をしている、というわけだ。Habeas 社にそのようなことができる根拠は、Habeas ヘッダの文章の中に、著作権を明示した芸術作品たる俳句と、いくつかの商標とが含まれているという事実だ。加えて、Habeas 社は侵害者たちをすべて DNS ベースのブラックリストに載せることになっている。このリストは他のいくつかのブラックリストに見られるような法的問題に妨げられないように注意して設定されているのだ。

侵害者が初めて現われた時に Habeas 社がそれをどう処理するか、私は息を殺してじっと待ち構えている。私自身がワシントン州のアンチスパム法に基いてスパム発信者を訴えた時の経験を言えば、満足すべき結論に至るまでに裁判を継続するだけの資金と、時間と、労力とを出し続ける余裕が私に無かったため、その時は中途半端な結果に終わってしまった。けれども Habeas 社はベンチャーキャピタル企業であり、侵害者をきっちりと懲らしめるだけの重大な動機も持っているのだから、きっと彼らにはスパム発信者を徹底的に追い詰めて金銭的なペナルティーを引き出すまでにできる可能性があるだろう。保護の根拠を著作権法と商標法におくことによって、Habeas には州によってさまざまに食い違いのあるアンチスパム法に頼る必要が無くなり、既にはるかに手遅れの、また仮に実現したとしてもおそらくはるかに非力な、連邦政府の法的保護を待つ必要も無い。それに、国際著作権法というものがあって、アフガニスタン、ブータン、エチオピア、イラン、イラク、ネパール、オマーン、サンマリノ、トンガ、イエメン以外のすべての国においても同様の保護が受けられる。金銭の取り立てに関しては、Habeas では取り立て専門の会社 Dun & Bradstreet の手にスパム発信者たちを引き渡すことによって最大限の資金回収を図ろうとしている。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbser=1167>
(日本語)バルクメール・ブルース
(日本語)Washington 州スパムを違法化
(日本語)TidBITS、スパマーを起訴
(日本語)スパムに反撃
(日本語)ワシントン州の反スパム法は憲法違反
(日本語)メールスパム:宣伝カーは鳴りやまず
(日本語)メールスパム:宣伝カーは鳴りやまず(第 2 部)
(日本語)対スパム用ツールをもっと
(日本語)スパム、ワシントン州で窮地に

スパムによって現実にたくさんのお金を稼いでいる有名なスパム発信者たちが何人か存在しているのは事実(彼らがインタビューなどで実名を公表しているのは愚かとしか思えない - 現実世界で、スパム被害者たちの怒りの矢表に立たされるのだから)だが、それでも Habeas 社が裁判によって大きな金額を受け取れるようになると考えるのは非現実的だろう。ほとんどのスパム発信者たちは大して懐の温かくない連中だろうから。実際には、Habeas 社は Habeas ヘッダをビジネス顧客にライセンスすることによって生計を立てている。ライセンスは、自分の電子メールは決してスパムではないと保証のできる個人や ISP には無料となっている。それ以外の会社などは年額 $200 のライセンス料を払う。但しその会社のビジネスが承諾済商業用電子メールの発送を運用する場合には、ライセンス料はメール受信者の数に応じて決められる。

<http://www.habeas.com/services/swe.htm>

Habeas のもたらすもの -- ユーザーの観点からは、Habeas について2つのことを知っておく必要がある。あなたの発信する電子メールメッセージにどうやって Habeas ヘッダを追加するのか(個人ユーザーの使用は無料であることをお忘れなく)ということと、Habeas で保証されたメッセージをどうやってフィルターにかけるのかということだ。実際の手順はあなたが使っている電子メールソフトウェアによって大きく異なるが、Habeas 社は多くの一般的な電子メールソフトウェアそれぞれに対応した説明書きやプラグインなど(例えば Eudora では、プラグインを適切なフォルダに入れるだけのことだ)を作成しており、また、それ以外のプログラムについてもユーザーから使用法の投稿があれば喜んでそれを掲示したいとも言っている。さらに、多くの電子メールプログラムではデフォルトでは普通でないヘッダは隠すようになっており、そうでないプログラムについても、Habeas は Habeas ヘッダを隠すための手順説明を発表しているので、あなたがメッセージごとにこのヘッダを見ることを強要されるということはない。

<http://www.habeas.com/support/install.htm>

TidBITS のメーリングリストで今回 Habeas ヘッダを付けるようにしたのは何が目的だったのだろうか? 一言で言えば、誤ったスパムフィルターによる被害を少しでも減らそう、というのが狙いなのだ。Habeas では現在、サーバーサイドのスパムフィルターの販売元の多くと協力して、Habeas ヘッダ付きのメッセージを whitelist に入れてもらえるように作業を進めている。また、ご自分でスパムフィルターを作成・管理している方々にも、ぜひ同じような対処を進めて、誤ったスパム探知の可能性を少しでも減らすように努めて頂ければと思う。また、スパム対処に関心のある人は皆、無料の個人 Habeas ライセンスにサインアップして貰いたいし、アンチスパムツールの作者の人たちにも、それぞれのツールで Habeas ヘッダ付きのメッセージを whitelist に入れるのを忘れないで頂きたいと願っている。

Habeas ヘッダを使ったからといって、一朝一夕にスパムの問題が解決するわけもない。けれども、最近になって登場し始めたいろいろなツールやテクニックとも組み合わせて使っていくことによって、きっと何かの結果は生まれるに違いないと思う。

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<http://www.tidbits.com/about/support/contributors.html>
PayBITS の説明 <http://www.tidbits.com/tb-issues/lang/jp/paybits-jp.html>


Virtual PC 6 登場、性能も上々

文: Mark H. Anbinder <mha@tidbits.com>
訳: 亀岡孝仁 <takkameoka@earthlink.net>

Connectix Corporation は 18-Dec-02 に同社の PC エミュレーションソフトウェアである Virtual PC の新版をリリースした。Virtual PC 6 では Macintosh と Windows オペレーティングシステム間の統合を深めること、動作性能の向上(とりわけ Mac OS X 10.2 Jaguar の下で)とに重点をおいている。

<http://www.connectix.com/products/vpc6m.html>

ドック作業者、手を結ぶ -- Mac OS X のユーザーは Virtual PC 6 の最も目につく機能の恩恵を享受できる:Dock とのやり取りである。 Virtual PC アプリケーションのアイコンが、プログラムが走っている間 Doc に現れる(他と同様に)のに加えて、起動した Winodws アプリケーションもすべて Dock に現れる。Winodws アプリケーションのアイコンは走っていない時でも、次の Virtual PC 起動を楽にするため Dock に置いておく事が出来る。最高なのは、Windows Start メニュー用の別個のアイコンが Virtual PC が走っているいないにかかわらず Dock に現れることである。このアイコンから Start メニューにあるすべての項目にアクセスできる;Windows アプリケーション、ドキュメント、設定、そして自分で入れたその他諸々何でも。(そしてもちろん、これらの Dock 統合機能をオフにも設定できる。)

この新しい Dock 統合機能を見てすぐ思ったことは、Virtual PC の未来版はさらにもう一歩進めて、個々の Windows アプリケーションはそれぞれに固有のウィンドウの中で動作すべきだということである。これは個々の Classic アプリケーションが固有のウィンドウの中で独特のメニューバーを持ちながら動作する状況と同じである。(中間的なアプローチとしては、Doc アイコンから VPC の Windows 環境の中でどのアプリケーションを最前面に置くかを自分で設定できるようにすることであるが、今はこれも出来ない。)当然ながら、全部の Windows 環境をエミュレートする方がいいという時もあろうし、Virtual PC ユーザーで一個の Windows アプリケーションしか使わないという人には Windows を全く使わないで済むように出来れば都合がいい。この様な変更には Connectix からの大きな開発努力が必要とされるので、Virtual PC を使う上でこの様な機能があればいいなと思う人は、同社に対してきちんと知らせる努力を忘れないように。

Connectix によれば、Virtual PC 6 の動作速度は 25% 高速化されているという。これは Apple が Jaguar に加えた変更のお陰でもある(このスピードを得るには Mac OS X 10.2.3 が必要である)。

Finder 上に Virtual PC ドライブイメージをマウントできる機能が復活したのはまことに嬉しい。しかし残念ながら、ドライブが動作中か PC セーブ環境の一部である場合にはマウントできない。Virtual PC の "セーブ状態" 機能というのは、Windows 環境を好きな時にいつでも中断し、戻る時には Windows が再度最初から立ち上げするのを待たずに済むようにするものであり、最強の機能の一つと言える - とはいえ、ユーザーが Virtual PC を終了してもよい状態に達した時は何時でもその PC の状態をセーブするという良い習慣を捨ててもよいといっているようで残念な気はする。(あるセーブ状態にあるドライブイメージをマウントするには、ユーザーはまずそのセーブ状態から PC を戻し、次に Winodws を閉じる必要がある。)

新製品の発表の大多数は Mac OS X 対応性に焦点を当ててはいるが、実際には Mac OS 9 をいまだに使っている人は大勢いることを TidBITS の読者からしばしば指摘を受けている。そのような人たちにとって Virtual PC は Mac OS 9 にも対応しているということはうれしい知らせであろう。ある時点で Mac OS 9 上または Mac OS X 上のどちらにいるかにかかわらず、同じ PC 構成、ドライブイメージ、そしてセーブ状態までをも使えるという能力は、この二つのオペレーティングシステム間をしょっちゅう切り替えながら使う人にとってはかけがえのない恩恵と言えるだろう。(少なくとも、Virtual PC がその切り替えを強制するアプリケーションにはならない!)

最後に、Virtual PC は平均的なビデオカードドライバの解像度よりもずっと多くのモニタ解像度、例えば 1280 x 854 LCD 付の PowerBook G4 のワイドスクリーン、に対応していることでも有名である。Virtual PC 6 ではこれをさらに拡張し最新型のディスプレイ、例えば 1920 x 1200 ピクセルの 23 インチ HD Cinema Display もサポートしている。

購入とアップグレード -- Virtual PC 6 は PC DOS 版が $130、Windows XP Home または Windows 98 版が $220、Windows 2000 と Windows XP Pro 版が $250、或いはアップグレードのみ(DOS や Windows OS なし)のパッケージは $100 である。アップグレードと DOS 版は直ちに入手可能である;その他の Windows オペレーティングシステム付のパッケージは間もなく店頭に出回るはずである。

Virtual PC 5.0 を 01-Nov-02 かそれ以降(31-Mar-03 迄)に購入した Virtual PC ユーザーは割引アップグレードの対象となる。これには該当者フォームに必要な書類を添えてファックスするか郵送することで可能となる。このアップグレードは、電子ダウンロード用が $5、米国またはカナダ内への郵送は $10、そしてその他世界各地向けは $20 となっている。

<http://www.connectix.com/products/vpc6m_specialupgrade.html>

PayBITS:VPC アップグレードを考えていて、Mark の記事がその決心の助けになったなら、彼に PayPal 経由で $1 か $3 チップしてはいかが!
<https://www.paypal.com/xclick/business=mha%4014850.com>


2002 年を振り返り、2003 年に期待する

文:Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
訳: 佐藤浩一 <koichis@anet.ne.jp>
訳: 倉石毅雄 <takeo.kuraishi@attglobal.net>

昨年の今頃、2002 年にはどのようなことが話題をさらうか、いくつか予想をしてみた ( TidBITS-612 の“2002 年の行く末を占う”を参照のこと)。これは、全般的に見て良く当たっていたと言えるのではないかと思う。デジタルコンテンツに関する論争が一年を通じて激しく続くだろうとか、ワイヤレスネットワークが引き続き主導権を握っていくと書いたところが、特にそうだ。2002 年にはPDA に対しそれほど関心が払われないとか、ブロードバンドのインターネットアクセスが回復するだろうとかの、どっちつかずな予想が正しかったかどうかは議論の余地があるだろう。興味を引くのは、去年の話題のいくつかが今年も私たちの注意を引き続けるだろうということだ。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06688>(日本語)2002 年の行く末を占う

著作権の戦い -- 著作権に関する論争は、昨年も一年を通じて衰えずに続いた。コンテンツ・カルテルは、デジタルコンテンツを共有することが良くも悪くも多大な人々の生活の一部になっているという現実に対し、あらゆる手段を使って既存のビジネスモデルを維持しようと努めている。著作権とピア・ツー・ピアのファイル共有は 2003 年も引き続き話題になることだろう。コンテンツ・カルテルがある日突然に何百万人もの人たちに対しファイルの共有をやめさせることはできない話だが、メディア業界の会社が敗北を認めてコンテンツをオンラインで無料で提供するようになることも同じように想像できない。

そして、法的な側面に関して言えば、DMCA とその信者に対しては大きな変化は無いと見る。最近、DMCA のコピー防止技術の迂回禁止条項の下に引っ張り出された初めての訴訟の一つで、陪審団がロシアの Elcomsoft 社に対して無罪を言い渡したような小さな勝利はいくつかあるかもしれない。また、コピー防止技術を迂回することを禁止している DMCA の条項に対し、例外とすることができる可能性のあるクラスの著作物を条文から探しだすという試みにおいて、米国議会図書館に提出されたコメントを読むのも興味深い。しかし、いずれにせよ政治の世界では物事の進み方は遅いのだ。

<http://www.eff.org/IP/DMCA/US_v_Elcomsoft/20021217_eff_pr.html>
<http://www.copyright.gov/1201/2003/comments/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06997>

それはワイヤレスな世界 -- 2002 年には、急激な価格の下降、高速な規格の進歩、そして今までになく増えたネットワークのコミュニティにより、ワイヤレスネットワークが大いに発展した。むしろ、2003 年のほうがワイヤレスの世界における変化の度合いが増えていくに違いない。現在、基本的に 802.11bはイーサネットケーブルから開放されるための代用品だが、さまざまな意味でこれは最初の一歩にすぎない。

802.11a と 802.11g は、どの系統の 802.11 とでも動作するマルチバンドアクセスポイントにおいて台頭しそうだし、チップセットの価格が下がってきたのに伴い一般的でない機器にもワイヤレスネットワークアクセスができるようになるのが見られることだろう。そうなれば、ワイヤレスになった MP3 ステレオコンポ (Slim Devices 社の SliMP3 と同様のコンセプトだ) や道路に停めてあるあいだに Mac から曲をダウンロードできる車載ワイヤレス MP3 プレイヤー(エンジニアの友人がこの前手持ちの部品を組み合わせてこのようなものを作ったが、彼女はただならぬハードウエアとソフトウエアの技術を持っていたからできたのだ) などが出るのは想像に難くない。それ自身にウェブサーバを持っていたりコンピュータの助けを借りずに電子メールや画像をアップロードできるワイヤレス化されたデジカメも考えられる (三洋電機はこれと同様なプロトタイプを作成していると主張している)。休暇中にメモリーカードがいっぱいになってしまった場合はどうか? ワイヤレス化されたインターネットカフェに行って、自宅のサーバに画像を全部送ってしまえば良い。

<http://www.slimdevices.com/>
<http://www.dpreview.com/news/0207/02070401sanyowificam.asp>

私は、Apple が 2003 年にワイヤレスに関して大きな変化を遂げること期待している。最初に Apple は AirPort (日本では AirMac) Base Station とAirPort (同 AirMac) カードを安価に販売してワイヤレス革命を引き起こしたが、Apple の価格はもはや競争力がなくなり、一体化されたモデムと AOL のサポートを除けば AirPort (同 AirMac) には魅力がなくなってきている。もしApple が AirPort (日本では AirMac) Base Station で 802.11a と 802.11g(現在使用されている 802.11b と下位互換である) を同時にサポートするようになり、AirPort (同 AirMac) カードでも同じようにすれば、Mac は疑いなくワイヤレスネットワーキングに関して卓越したプラットホームとなることだろう。 Apple はさらに、より良いパフォーマンスを求める既存の AirPort (同AirMac) ユーザの買い替え需要により利益を得ることができるかもしれない。

Bluetooth も、2003 年にはケーブルの代わりにワイヤレスとして人気が出てくることだろう。Apple が Mac に標準装備することになったとして、私はまったく驚かない。Steve Jobs 氏は、すべての Mac の裏側から (あるいは Power Mac G4 Cube の底から) 延びるあの見苦しいケーブルの乱雑さには我慢がならないだろうし、Bluetooth のサポートは Apple にとって多くのそれらのケーブルを取り除くために取るべき正しい道だと言える。

PDA の進化? 2002 は PDA にとって自慢できるような年でもなかったが、2003 こそ新しい形態のデジタル機器があたる年となるかもしれない。その高い値段にもかかわらず iPod で Apple が成功したことは、一般の人々が、必ずしも必要ではなくても、全体として十分魅力的であればデジタル機器を購入する意欲があることを証明した。

2003 年の製品を考えると、成功する製品には二方向からのアプローチがあるだろう。携帯電話とタブレットコンピュータだ。携帯電話では、多くの会社が新しい製品が前世代からどのように進歩したかの区別に苦労していることもあり、その市場は減速しつつある。だが、新しいデジタル機器を開発するのであれば、2002 年における Handspring Treo や Danger ヒップトップ (T-Mobile から Sidekick として発売された) などのように 携帯電話機能を追加することを視野に入れておく必要がある。

<http://www.handspring.com/products/communicators/>
<http://www.danger.com/>

タブレット PC は 2002 年に登場した。評価は素晴らしくはなかったが、スイートスポットを見つけられれば成功するだろう。PC 製造者のうちでは、優れたデザインセンス、デジタルメディアに重点を置いている点、そして品質の高いハードに金を出すことを厭わない忠実な客層をもつ Apple が (Sony だけを除けば) 一番成功の可能性がある。肝心なのは、タブレット型 Mac が iBook と競合するのではなく、むしろ DVD 映画や MP3 音楽などのデジタルメディアの再生や、(もちろんのこと AirPort を使用しての) Web ブラウジングに重点をおくことだ。だからと言って、必要な制御機器に適合した Finder のバージョンを備えてさえいれば、Mac OS X の完全バージョンを内蔵していけない事もない。そこまでいけば、Bluetooth を使用しているキーボードとトラックパッドを追加すれば旅行中の使用に適した完全に使用可能なポータブルコンピュータに変身する。しかし、Titanium PowerBook G4 のような全く妥協の無いラップトップとは違い、この機器はソファ でくつろいで MP3 音楽に耳に傾けながら Web ブラウジングをする点を強調することだろう。

2003 年に携帯電話かタブレットのいずれかの極端での Apple PDA が何らかの形で登場するだろうか?内部知識はないが、Apple は常に技術革新によって成長する会社であり、iPod でデジタルメディア機器の分野に手を広げられることも可能なことを示した。そしてもちろん、Newton の死後、Apple が PDA を開発しているという噂は絶えないから、これは単なる集団での希望的観測かもしれない。

極端な液晶明瞭度 -- 最後に、2003 年には大してニュースになるかどうか分からないが、LCD の値段は年が過ぎるにつれ、急激に下がると期待して良いだろう。どのような技術も安くなるから、それ自体は大して興味深い話ではない。だが液晶ディスプレーに関しては廉価なディスプレーによってもたらされる可能性に大いに興味がある。私の古い NEC 3FGe 15 インチ汎用モニターが駄目になった時にこれについて考え始めた。新しいモニターにあまり払いたくなかったし、私の PC で数ヵ月おきぐらいか、サーバを遠隔制御では操作できないときにしか使用しないものなので、スリムな LCD モニターが最適だろうと判断した。dealmac のおかげで、14 インチの液晶モニターがなんと $150 で入手できることを知って私は驚愕 (そして感謝) した。画質は日常的な使用には耐えないが、数週間に一度くらいに数時間使用するにはもってこいだ。

<http://dealmac.com/search.html?search=LCD+monitor>

液晶ディスプレーはラップトップの登場に欠かせない要素であり、そのおかげで私達は机から解放された。これからは液晶の大きさと柔軟性を活用する人々が増えるだろう。机のスペースを有効に使用するためにモニタを壁に掛けたり、立っての仕事場を可能にすることなどは当然としても、それ以上の使用方法もあるだろう。

ここまで値段が下がると、Bill Gates でなくても LCD モニターを購入して壁に芸術として掛けておける。写真のスライドショー、スクリーンセーバのパターン、iTunes の可視化表示、もしくは (今まで淡水の熱帯魚以上に手を出す勇気はなかったので) SereneScreen の Marine Aquarium など、どれも壁に掛けてみたい。Ceiva デジタル写真フレームの概念は素晴らしいと思うが、小さく、高額で、月々の費用を払う必要がある。古い Mac を使用してデジタル写真の表示をするのは Ceiva より安くはないだろうが、写真はもっと大きいし、Ceiva の信じられないくらいひどい Web インターフェースを使用するのに比べて、.Mac の共有スライドショーを使用する方がマシだ。

<http://www.serenescreen.com/product/maquariumx/>
<http://www.ceiva.com/>

勿論、ディスプレー技術ではもっと素晴らしい革新が色々と出てきている。例えば Samsung が最近発表した 54 インチ (137 cm) の巨大液晶ディスプレーや、インクジェット印刷技術を使用して塗布できる有機 LED ディスプレー、壁や服をディスプレーに変えられる液晶ペンキ、本を読んでいるような手触りでありながら、デジタル表示機器でもある電子紙などがある。これらの技術のどれかが 2003 年に私達の生活を変革するだろうか?恐らくそこまではいかないだろうが、それらを使用した初期の製品で 2004 年に楽しみにできるようなものが出てくるだろう。

<http://www.infoworld.com/articles/hn/xml/02/12/30/021230hnsamsung.xml>
<http://zdnet.com.com/2100-1103-936001.html>
<http://www.nature.com/nsu/020429/020429-7.html>
<http://directory.google.com/Top/Computers/Hardware/Peripherals/Displays/Flat_Panel/E-Ink/?tc=1>

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PayBITS の説明 <http://www.tidbits.com/tb-issues/lang/jp/paybits-jp.html>


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Valid XHTML 1.0! , Let iCab smile , Another HTML-lint gateway 日本語版最終更新:2005年 12月 26日 月曜日, S. HOSOKAWA