TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#681/19-May-03

ドライブ旅行を計画している? 自動車での旅行のお供として、エアコン以来の大革命だと噂されているのが Apple の iPod だ。でも、どうやって音楽を車のスピーカーに送ればよいのだろうか? そこで Travis Butler が iTrip を検討し、iPod で使えるあと2機種の別の FM 送信機とも比較する。この号での他の話題としては Adam の本 iPhoto 2 Visual QuickStart Guide が発売となり、Safari 1.0b2 v74 と Interarchy 6.2 がリリースされたことをお伝えする。それから、来週は TidBITS を休刊にします!

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MailBITS/19-May-03

来週は TidBITS 休刊 -- 来週の月曜日にはスタッフの全員が休暇を取れるように TidBITS を休刊とさせて頂く。特に iMovie 3: Visual QuickStart Guide の著述を終えたばかりの Jeff Carlson には、5 月 30 日の彼の誕生日へと続く一週間をリラックスして過ごして欲しい。また、Tonya、Tristan と私はドライブ旅行をして Tonya の妹が Oberlin College を卒業するのを祝いに行く予定だ。私たちは iPod は持っていないのだが、iTunes Music Store のおかげで私は家族の好きな曲を集めて2枚の MP3 CD に録音しており、これを数年前にプレゼントとして貰った MP3-互換のポータブル CD プレイヤーで聴くつもりだ。では、2003 年 6 月 2 日の次号でお目にかかりたい。[ACE](永田)

Safari 1.0b2 v74 セキュリティを改善 -- Apple は新バージョンのSafari 1.0b2 をリリースし、SSL 認証を使ったウェブサイトでの本人証明の方法を改善した。SSL では重要データの転送にセキュアな接続を確保するため、ショッピング、銀行取引、その他 SSL を使ったウェブサイトでの問題を避けようとする全ての Safari ユーザーはアップグレードされるようお勧めする。Apple は、この v74 リリースで他の変更については何も言っていない。注記:この Software Update は Safari 実行中でもダウンロードでき、Safariを自動的に終了させない。旧バージョンをそのまま使用して不都合のある方は、新しいコードで使用するため、一旦終了して再起動すべきだ。[ACE](細川)

<http://www.apple.com/safari/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=07147>(日本語)Apple が Safari Public Beta 2 をリリース

Interarchy 6.2 リリース -- Stairways Software はファイル転送とネットワーク接続試験のユーティリティ Interarchy 6.2 をリリースした。この新バージョンでは、interarchy コマンド行ツール、より効率の高い SFTP ミラーリング、ELFP および SuperDOS FTP サービスのサポート、Bookmarksウィンドウから Rendezvous URL をコピーする機能が追加されている。また、関連する機能をまとめてインタフェースを再編成しており、Go メニューとOrganizer ウィンドウを整理統合して Bookmarks の最初に置き、Bookmarksウィンドウから使用しないフォルダを削除するのが容易になった。上級ユーザー向けには、新しい icutil コマンド行ユーティリティにより、Mac OS Xの インターネット環境設定をブラウズして編集できる。Interarchy 6.2の価格は 45ドル、Interarchy 6.0 およびそれ以降のアップグレードは無料で 3.2 MB のダウンロード。Mac OS 8.5 かそれ以降で使用でき、幾つかの機能は Mac OS X のみで使用できる。[JLC](細川)

<http://www.interarchy.com/>


Adam の著書 iPhoto 2 Visual QuickStart Guide 新発売

文: Adam C. Engst <[email protected]>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

私の新刊書、iPhoto 2 for Mac OS X: Visual QuickStart Guide については、これまで事前注文をして下さった方々にはすでに章ごとのリリースを済ませており、また気の早い人のためには本全体を1つの PDF ファイルとしてすでにお送りしている。そういうわけで、今回この本の現物版が、つまり紙に印刷した実際の本が、旧来の書店の店頭に並べられて発売される日を迎えたからといっても、今さら得意げにそれを発表するのも気が引けるような感じもする。それでもとにかくこの本は無事店頭に発売されているのだし、これまで長年にわたって本を出版してきた私でさえも、印刷されて仕上がったこの本を最初に手に取った時には、ワクワクする気持ちを抑えきれなかった。Peachpit Press から出版されたこの本は、Amazon で現在 30% 引きの $14 で販売されている。

<http://www.amazon.com/exec/obidos/ASIN/0321197763/tidbitselectro00>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=07064>(日本語)iPhoto 2 VQS を章毎に出版前に入手しよう
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=07115>(日本語)電子出版生き残りゲーム

どこが新しい? -- iPhoto 2 で新たに変更された事柄を反映して本をアップデートする作業には、第1版を執筆した時とほとんど同じくらいの時間が掛かってしまった。その理由の1つは、Visual QuickStart Guide の高度にデザインされたページの中に新たな情報を滑り込ませるのが決して易しい仕事ではないからだ。新しい文章や追加のスクリーンショットをはめ込むスペースを作るために、ページ全体を手間を掛けて調整し直す作業に次から次へと私は追い回された。また、iPhoto 2 には驚くほど多数の変更点があるために、そのステップ・バイ・ステップの使用説明を新たに書かなければならないこともあった。とは言っても、iPhoto 2 について書くべきことはすべてちゃんと書くことができたという点に、私はかなり自信があるし、それでもまだ漏れている点があれば、読者から私の iPhoto FAQ ページに質問を投稿して頂くこともできる。

<http://iphoto.tidbits.com/>

この努力の成果として、今回の本は前回の版よりもおよそ 50 ページほど長くなっており、新しいヒントの情報も 100 個以上追加されている。(何と言っても、ヒントこそが、コンピュータ関連本では一番の売りの内容なのだから!)また、今回は詳細なトラブルシューティングの章も新たに加え、写真のバックアップを巡る不安点への対策も解説し、iPhoto を iDVD 3 や iMovie 3 と統合して使うための方法も書いてみた。極め付けは、付録として追加したデジタルカメラの章で、ここではあなたの目的にベストマッチしたデジタルカメラの選び方についての詳細なアドバイスを述べ、さまざまな状況下でより良い写真を撮るためのたくさんのヒントも提供している。

無料の電子版 -- 今回発売された iPhoto 2 VQS では、印刷コストを抑えるために以前と同じく写真をグレイスケールで印刷している。けれどもこの本を購入して頂いた方々にはすべて、無料の PDF 版をダウンロードして頂けるようにした。この PDF 版には、すべての写真がフルカラーで含まれている。それだけではなく、Adobe InDesign の素晴しい PDF 機能のお陰ですべてのページにブックマークが付いており、簡単にどこへでもジャンプできるようになっている。InDesign はまた目次のすべての項目をリンクにしているので、目次の項目をクリックするだけで相応するページが開く。もう1つ、テキスト内で別の章が引用されているところをクリックしてもその引用箇所にジャンプできるし、もちろん、すべての URL や電子メールアドレスもクリック可能なリンクになっている。

この PDF 版の入手方法は、本の中でももちろん説明されているが、注文はしたけれども本が到着するまで待っていられないという方々は、あなたの注文レシートを <[email protected]> 宛に送って下されば、私からダウンロードの方法をお送りしたいと思う。

最後に、前バージョンの iPhoto 1.1 Visual QuickStart Guide についても、本を購入した人には PDF 版を頒布していたことを覚えていて下さる方々もおられることと思う。言うまでもなく、この前バージョンは iPhoto 1.1 の内容しかカバーしていないので、内容が完全に時代遅れとなってしまっている。というわけで、今回この前バージョンの PDF 版を無料でどなたにでも差し上げたいと思う。まだ iPhoto 2 にアップデートしたくないと思っていらっしゃる方々のお役には立つかも知れないし、また、これを無料頒布することで新バージョンのプレビューとしてよい宣伝にもなると思うからだ。この、前バージョンの無料 PDF 版は、今回改めてパスワード無しの StuffIt アーカイブとしてアップロードしておいた。ダウンロード方法をお知りになりたい方は、どうぞ <[email protected]> 宛に電子メールで問い合わせて頂きたい。


旅の供に iTrip: FM 送信機三つ

文: Travis Butler <[email protected]>
訳: 倉石毅雄 <takeo.kuraishi@attglobal.net>
訳: 亀岡孝仁 <takkameoka@earthlink.net>
訳: 佐藤浩一 <koichis@anet.ne.jp>

過去四年間で私は自分の車で 110,000 マイル走った。会社の車での走行距離は数え切れない。そう、私は路上にいる時間が長いのだ。非常に長い。

そんな私にとって、ディスクベースの MP3 プレーヤーは神からの授かり物だった。おかげで片田舎の怪しげなラジオ局に頼る必要がなくなり、テープやCD の束を荷物に詰め込むことなく、自分の音楽を常に持ち運べるようになった。まずは Nomad Jukebox そして Archos Jukebox (どちらも TidBITS のためにリビューした) そして最終的には iPod のおかげで運転がより楽しいものになった。しかし残念ながら、車の中で音楽を聴くのはあまり便利ではない。直接入力できるジャックがついているカーステレオは少ないし、(カセットアダプタを使用するのは二番目の選択肢だが) 最近の新しい車にはカセットプレーヤーはついていない方が多くなっている。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06261>(日本語)携帯する MP3: Nomad Jukebox
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06521>(日本語)Nomad Jukebox に挑戦する Archos Jukebox 6000

幸運なことに、他の選択肢がある:小型 FM 送信機だ。これらの機器は選択した周波数で FM 信号に音楽を乗せて放送する。音楽を聴くには送信機をプレーヤーのヘッドフォンジャックに挿し込み、車の FM ラジオを設定した周波数に合わせると、普通のラジオ局からの放送と同じように音楽が車のスピーカーから流れてくる。このような FM 送信機を使えば、適切な入力ジャックがついていないステレオで自分の iPod からの局を聴かせるのにも便利だ。気を付けるべきなのはこのような送信機はヨーロッパの一部では違法らしいという点だ。以下のリンクで、いかにややこしい状況かが見て取れるだろう。

<http://www.neurosaudio.com/community/forum/topic.asp?TOPIC_ID=255>

私は最初に一般的な使用のための FM 送信機を試した。Arkon Resources のSoundFeeder 100 と iRock 300W だが、どちらにも失望した。ところが New York での 2002 Macworld Expo で、PowerMate などの巧妙なエンジニアリングで長く知られている Griffin Technology が iTrip を発表した。これはiPod の為に設計された FM 送信機で、他の二種での問題の解決策を提供してくれそうだった。ようやく iTrip が発売開始になった。では、実際どれだけのものなのだろうか?

<http://www.arkon.com/SF100.htm>
<https://www.myirock.com/players/300W%20-%20FM%20Transmitter.htm>
<http://www.griffintechnology.com/products/itrip/>

基本環境 -- これらの機器はどこでどのように使用するかによって性能が全然異なることを既に発見していた。私はアメリカ中西部の中規模な都市Kansas City に住んでいる。Kansas City には多くのラジオ局があり、私の音楽観賞時間の三分の二は市内やその近郊で過ごしている。残りは長距離のドライブで費やされる。私の車は 1998 年式の Pontiac Sunfire で、ラジオアンテナは後部の角に取りつけられている。また私は会社の大型 GM ピックアップトラックでも長時間運転する。これは客席側のフロントガラスの前にアンテナがついており、受信性能は良い方だ。どちらの車も標準的な GM の CD/FM ステレオが付いているので、ステレオの機種によってはもっと性能が良い可能性もある。

私は会社の車を乗り換えることが多く、予告無しに出かけることが多いため、FM 送信機が小さくて嵩張らない方が良い。

そして最後に、私は音楽好きとはいえ、技術的なオーディオマニアではない。例えば周波数レスポンスについての正確な説明は出来ないだろうし、音の良し悪しについて言えることはは、自分がそれを聴いた感想だけだ。どちらにせよ、車はハイファイの音楽観賞環境とは言えない。

The SoundFeeder 100 -- 私は最初に $30 の SoundFeeder を試した。何もないよりマシなものの、お気に入りとは絶対に言えない。12V のライターソケットから電力を得るため電池は不要で、どの周波数にも合わせられる。また、他の機器のための電源をも内蔵しているが、私の使用している MP3 プレーヤーのいずれでも使用不可能だったため、私にとっての価値はなかった。

これらの利点は SoundFeeder の問題でかすんでしまう。まず、一番いらだたしいのは機械的チューナーが少しづつずれていってしまう点だった。同じ周波数に維持するために常に調整する必要があった。二番目の問題は、放送信号が弱く感じられる点だった。これはチューナー問題の副作用だったかもしれない。三番目の問題は、全体として嵩張ることだった。チューナーの箱と、同じ位の大きさのライターソケットプラグと電源アダプタ、そしてヘッドフォンジャックと二次電源サポートのケーブルのおかげで持ち運びが不便で絡まりがちだった。

それよりも良い物はある。私は iRock を入手した時点でこれを手放した。

iRock -- この $30 の iRock は、別に Link-It! の名前でも売られているが、SoundFeeder に比べれば格段の進歩である。チューナーのドリフトの問題を四つの固定周波数に限ることで防いでいる:88.1, 88.3, 88.5, と 88.7である。iRock は強力で同じ周波数にある局を置き換えてしまうことがある -88.1 は地元のラジオ局の周波数であるが、通常ここが私の場合 iRock からの受信が一番良い所でもある。デザイン的にも SoundFeeder より洗練されており、電池と送信機を収納する丸みをおびた本体とヘッドホンジャックに接続する短いケーブルだけである。iPod につながったまま iPod だけを持ってiRock がぶら下がった状態にしておくことは可能であり、そして又やり易い、勿論この状態で長時間置いておくのはお奨めできないが。

iRock にも欠点がないわけではない。何といっても一番は、電源スイッチである。これは大きなボタンで押して入り切りするのタイプなのだが、ほんのちょっとした力しかいらない。何らかのはずみでスイッチにさわったばかりに電池を放電してしまう危険性があり、現に私のラップトップのケースに入れておいてスイッチが入ってしまっていることがしばしばあった。

四つの固定周波数しかないということで、もしあなたの居る所では 88.x のバンドにいくつかの局があるとすると、動きが取れなくなる可能性もある。Kansas City では、88.1 と 88.5 に局があり、とりわけ 88.5 の信号は強いので 88.3 と 88.7 にも干渉を起こしてしまう。

最後に、この短いブタのしっぽ付きのデザインは SoundFeeder の絡みつく問題に比べれば大きな進歩であるが、それでもまだ不便だしダメージを受けやすい構造であることに変わりはない。私の最初の iRock はヘッドホンプラグに近いところでワイヤがどうも擦り切れてしまったらしく取り替えねばならなかった。これは察するに、私が iPod にぶら下げたまま長時間持ち運んでいたためかもしれない。と言うのもこのケーブルは iRock 自身と AAA 電池 2個の重みを担わなければならないからである。

電池の話のついでに言っておくと、iRock を買うなら同時に一組の AAA NiMH充電電池をお買いになることをお奨めする。私の経験では、一組の電池で数時間の使用には耐えられたが、あの電源スイッチのせいで電池を頻繁に取替える羽目にならないとも限らない。

iRock は悪い FM 送信機ではないし、私もまあまあ満足して何ヶ月も使ったが、それでも何かもっとましな物が欲しいと思っていた。

iTrip の旅に出る -- この $35 の iTrip は、Apple の最初と二代目のiPod 専用に設計された最初の FM 送信機で、工業デザインのセンスを見せている。それは小さな筒型で iPod の頭の所に取りつくようになっているが、iPod のサイズと重さには殆んど悪さを与えていない。本体についているプラグはヘッドホンジャックに入るように出来ており、このプラグを囲む小さなリングが iPod のヘッドホンジャックを取り囲むリモートコントロールのコンタクトに嵌るようになっている;このリングを通して iTrip は電力を吸い上げる。もう一つのプラスチックの板状のプラグが iPod の FireWire ポートに嵌るようになっており、これで iTrip を iPod に固定する。放送周波数を選ぶにはソフトウェアを通じて iPod 自身が iTrip をコントロールするようになっており、電源スイッチや選局の必要性を省いている。

このデザインは競合品に比べれば圧倒的に使いやすい。箱とワイヤとの格闘する代わりに、シャツのポケットに入る単体のユニットを持ち運ぶだけである。プレイリストを変えたり選曲をするために iPod を取り上げるのはいとも簡単である、接続ケーブルが無いのだから...充電器を接続しない限りは。充電器をつなぐには、iTrip を 90度回転し、プラスチックの FireWire ポートプラグを正面に持ってくることでケーブルを接続する空きを作る必要がある。下記のリンクの写真を見てもらえば、iTrip の二つの位置での接続状態とそれにiRock との比較も分かる。右端の写真が、iPod の FireWire ソケットに嵌るプラスチックプラグの端面からみた格好を示している。

<http://www.tidbits.com/resources/681/iTripComparisons.jpg>

但し残念ながら、FireWire ポートプラグの助けを借りないで給電リングをしっかりと嵌めることに私は大変てこずったので、今は iTrip を使っているときに iPod を充電するのは完全にあきらめている。

この様に iPod の構造にこれほど密着した設計とすることに伴う弱点もある:Apple は最近リリースした第三世代の iPod のリモートコントロールソケットを変えてしまったので、この iTrip は使えなくなってしまった。望むらくは、Griffin はこの新しいユニットに合う様 iTrip のケースを再設計できることを願う;それだけで済むはずである。

iPod コントローラ -- iTrip は iPod をそのコントローラとして使うらしいと聞いた時、私は素晴らしいと思うと同時に疑いも持った。この概念を生かしたスッキリしたデザインを見たい反面、Apple が次に iPod のファームウェアを変えた時にはその中まで入り込むようなソフトウェアパッチを当てなければ行けない羽目に陥るのではないかと危惧したのである。Griffin の出してきた解は、私の想像以上にエレガントであり、そして Rube Goldberg 風[訳注:簡単なことを「風が吹けば桶屋が儲かる」風に漫画チックに複雑にしてしまう] でもあった。iTrip には、102 の 5 秒間の MP3 ファイル一式が含まれている:FM 周波数一つに付き一つと、それに一対の iTrip のステータスを示す LED である。iTrip をある特定の周波数に合わせるには、それに対応する MP3 ファイルを演奏するのである、こうすることで一連の変調パルスが送られそれを iTrip は選局コマンドと認識する。iTrip はまた出力を感知して電源のコントロールをする。iPod からの出力を聞くとスイッチをオンとし(約 3 秒かかる)、無音状態が 30 秒続くとスイッチオフとする。

この選局方式が独創的であるだけ、それに伴う不便さもある。まず、ちょっと凝りすぎである;最初に選局トラックを演奏しなければならない、そしてiTrip がその LED を明滅させてコマンドが受け入れられたのを示すのを待つ、そこで iPod が次のコードの演奏に移る前に素早く一時停止させる。もしiTrip がスリープ状態にいると、目覚めるのにかかる時間のためにこの選局コマンドすべてを聞き取れない;LED は明滅するが、局は正しく設定されない。

第二に、この 5 秒間のファイルはあなたの iPod を乱雑にしてしまう。Griffin はこれらに独自のアーティストとアルバムの名前を与えているので、通常のブラウズ中にこれに行き当たる事はあまり無いと思うが、それでもそれは全曲リストの中には存在していることに変わりは無い。この事実から第三のイライラが出てくる - もしあなたが iPod 上の全曲をさっとなめてみるのが好きだったりすると、選局ファイルの一つが演奏されることで誤ってあなたの現在の周波数を変えてしまうこともあり得る。Smart Playlist を作ってこのiTrip ファイルのためのアーティストとアルバムを除外するよう設定することでこの問題は回避できるが、それでも手間がかかることに変わりは無い。

四番目にして最後は、周波数を変えるという事は今演奏されているものを何であれ止めることを意味する。まず今いる所から抜け出して、選局トラックを探し出し、それから元いた所までナビゲートして戻るのである。Griffin は、多くの人は一旦周波数を決めたら後は変えないと思っているらしい。付属の説明書を見ると、自分に必要なもの以外の周波数ファイルは捨ててしまっても良いと書いてある。残念ながら、私の場合、街の周りを運転してまわるだけでも周波数を変えなければならない、長距離のことなど持ち出す前にである。

これらの短所にもかかわらず、iTrip の選局方式は、SoundFeeder のドリフトのある機械式チューナや iRock の固定周波数に比べれば、格段の進歩だと思う。

iTrip の性能 -- それでは、iTrip はどの程度使えるだろうか? 理想としては、より良い性能であるに越したことはない。この機器は、周波数がクリアーならば、FM ラジオ局並の非常に良い音がする。残念ながら、このクリアーな周波数を探すのが格段に難しい。カンザスシティー周辺を 20 時間ドライブした時、どこでも最低一つは使用可能な周波数を探すことができたが、どの場所においてもクリアーである周波数というものは見つけられなかった。あたかもラジオ局の電波が届く範囲ぎりぎりをドライブしているように、市街を移動するに従って弱い電波障害や信号の減衰もしばしば経験した。電波障害は、数秒の時もあれば、周波数を変えなければならないほどのこともあった。さらに、甲高いヒューヒューという音も時折聞こえたことがあった。これは、場所により変化し iPod が一時停止状態でも聞こえるのだが、30 マイルほど市内から離れると聞こえなくなるので、ラジオとの干渉によるものと思われる。もし、iPodの音量を大きく (80 パーセント以上) すれば、音が大きい時に電波障害が聞こえ始めるだろう。iRock も同じ問題を抱えているが、それほどでは無い。

しかしながら、このような問題があるからといって iTrip の評価を厳しくすることはできない。なぜなら、試用した FM 送信機すべてが同様なトラブルを持っていたからだ。FCC の規制によりこのような種類の機器の出力は制限されており、これが今回試した 3 つの FM 送信機の特性が同じようなものである原因であることは、想像に難くない。それでもなお、SoundFeeder の評価が一番低い。チューナーを機械的に合わせる方式なので、周波数にピタリと合わせ続けることが難しく、そのため聞こえづらいのが周波数がずれていくためなのかラジオとの干渉によるものなのかはっきりしないためである。

iRock は、88.x MHz 周辺に強い信号が無いエリアで良い性能を発揮する。残念ながら、このようなエリアは iRock の設計者達が考えるほどありふれている訳ではない。iRock は、競合する信号を iTrip より多少うまく扱えるようだが、同じ周波数で 2 つを並べて比較してみた時、iRock のほうが信号が若干強いと思うものの、明らかに優れていると言えるほどではなかった。iTrip の広範囲で使用可能な周波数レンジのほうが、総体的に見て優れていると言えよう。

最後に残った課題は、バッテリーの減り具合である。iTrip は iPod から電源を取っているが、これにより iPod のバッテリーがどれだけ影響するだろうか? これを見積もるのは、iPod のバッテリーゲージが不正確なため難しい。Griffin 社では、通常ヘッドフォンを使う以上にバッテリーには影響しないと言っているが、iTrip と iRock を通常の使用時に比較したときには、iTrip を使っていたときのほうが iPod のバッテリーの減りが早かったように思えた。しかし、たくさんのバッテリーと充電器を用意したり電源ケーブルがもつれたりすることを考えれば、充分利点のほうがまさるだろう。

旅の供に iTripを -- iTrip は完璧か? 答えは「ノー」だ。信号がもっと強く、市街地のどこでもクリアーにそしてコンスタントに受信できれば良かったと思う。代案は無いものの、Griffin 社には、チューニングの方法がもっと簡単に出来る方法を採用して欲しかった。

iTrip は人に勧めることができるか? 答えは「イエス」である。少なくとも、他の FM 送信機に比べ多くの改善された便利さは充分価値がある。広範囲にわたるデジタルチューニングも、たとえそれがこのように面倒な方法だとしても、歓迎されるものだ。

さらに、FM 送信機の性能は一般的に少し物足りないものだが、入力ジャックやカセットプレイヤーが付いていないカーステレオを持っている人に対し、ほかに良い対案があるとは思えない。車の中でヘッドフォンを使うのは、不便で危険であり、場所によっては違法である。また、自分の車に入力ジャック付きのカーステレオを買おうと思っても、社用車を使う場合の問題が解決されるわけではない。いろいろな難点があるとしても、私は FM 送信機を手放すことはできないだろう。そして iTrip が、もしこれと動作する旧型の iPod を持っているなら、断然ベストだろう。Griffin 社から、第三世代の iPod で動作するバージョンが提供されることを期待したい。

PayBITS: もし、この Travis の記事がどの FM 送信機を買おうか決めるのに役立ったなら、数ドルで良いので PayBITS で彼に感謝の意を示して下さい。
<https://www.paypal.com/xclick/business=tbutler%40mac.com>
PayBITS の説明 <http://www.tidbits.com/tb-issues/lang/jp/paybits-jp.html>


TidBITS Talk/19-May-03 のホットな話題

文: TidBITS Staff <[email protected]>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Challenge-Response アンチ・スパム・システム -- Challenge-response アンチ・スパム・システムに対する我々の方針を述べた記事は、どの立場の人たちからも活発なコメントを喚起した。このシステムを良いと思う人たち(主要な challenge-response サービスのうちの1社の CEO も含む)からも、また、スパム発信者たちがこれに対するアタックを開始することになればこのシステム自身が電子メールの長期的な利用価値に対する重大な脅威となると考える人たちからも、意見が寄せられた。(メッセージ数 14)

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=1939>

Palm Tungsten C の使用感 -- Palm Tungsten C のレビューをした Geoff Bronner の記事への、多岐にわたる追加情報。Tungsten C の購入を検討している人には必読。(メッセージ数 4)

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=1945>

Mac OS X 10.2.6 での変更点 -- Mac OS X 10.2.6 で何が変わったのか、功罪取り混ぜての簡潔なコメントいろいろ。(メッセージ数 5)

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=1941>

私はアップグレードすべきか? -- Mac OS を(あるいは何かアプリケーションを)新バージョンに今すぐアップグレードすべきなのか、それとも問題なく動いている旧バージョンを使い続けるべきなのか、決断するためのベストな方法の提案。(メッセージ数 4)

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=1942>

シェアウェアのアップデート頻度 -- 1つのシェアウェアプログラムが頻繁に、例えば毎週1回、のような頻度でアップデートされるのを見ると、うんざりした気分にならないだろうか? そう感じるのは決してあなただけではないはずだ。けれども、開発者の側でいろいろ工夫することによって、ユーザーのイライラを最小限に抑えるやり方がある。(メッセージ数 6)

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=1943>

iTunes をコントロール -- iTunes をコントロールできるシンプルな方法について触れた先週号の記事に応えて、TidBITS 読者からそれ以外の、もっと優れた iTunes のコントロール方法について多数の提案が寄せられた。便利に使える素晴らしいユーティリティも二・三紹介された。(メッセージ数 8)

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=1944>

iTunes Music Store と不適切語 -- 楽曲のタイトルにある種の単語が含まれている場合、iTunes Music Store はそうした単語部分に伏せ字を使用しているように見受けられる。その処理の実態、またどうすればもっと良いシステムにできるか、などについて、なかなかの議論が TidBITS Talk 上で展開された。(メッセージ数 10)

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=1938>

iTunes Music Store セレクション -- iTunes Music Store にどれだけ広範な楽曲を取り揃えることができたか、これまでの Apple の仕事ぶりを評価しての議論。特にクラシック音楽、アニメのテーマソング、コンピュータゲームのサウンドトラックなどについて。(メッセージ数 8)

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=1940>


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Valid XHTML 1.0! , Let iCab smile , Another HTML-lint gateway 日本語版最終更新:2005年 12月 26日 月曜日, S. HOSOKAWA