コンピュータの前を離れて外へ行く時間では? Geocaching に出かけるのはどう?この GPS 機器を使用して隠れた宝物を発見する Net 関連の娯楽について Mariva H. Aviram が報告する。また、Palm によるライバルの Handspring 買収の発表を掘り下げ、QuickTime 6.3 を評価し、WebSTAR 5.3、Spring Cleaning 6.0、そして After Dark for Mac OS X について、また Apple からの iMovie 3.0.3、iSync 1.1、そして Keynote 1.1 のリリースについて述べる。
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iMovie 3.0.3 が (ようやく) 性能向上 -- 先週 QuickTime 6.3 をリリースしたすぐ後に (詳しくは後の記事)、Apple は iMovie 3.0.3 をも無料のアップデートとして提供を開始した。iMovie は QuickTime 技術に基づいているため、重要な改良点としては QuickTime 形式での映画のエキスポートの際のオーディオとビデオの同調の改善が挙げられる。それ以外には、iMovie 3.0.3 の反応がかなり早くなったように感じられるのは有難い改善だ。以前は Ken Burns 効果は iMovie に取りこんだ静止画像全てに適用されたが、この pan-と-zoom 効果を有効や無効にするオプションが加えられた。また Apple のアップデートの説明でそれとなく述べられているのは写真を Ken Burns Effect を使用して切り取れる機能だ。Finish ラジオボタンを Option-クリックして Start 状態と同じズーム設定を適用できる。(これを使用すると Start と Finish 状態が微妙に違う場合に起きてしまう静止画像での画素の横ずれの問 題が防げる。) 他の有難い改善点としては、新しいプロジェクトを NTSC や PAL 形式に設定する機能設定のオプションがある。このアップデートは iMovie 3 での全ての問題点を解決するわけではないが、それでも iMovie 3.0.3 はかなりの改善と言える。頻繁なクラッシュのユーザ報告が来ているなど、問題は残っている。アップデータ−は 12.1 MB のダウンロードだ。完全なインストーラーは 82.3 MB のダウンロードだ。iMovie 3.0.3 は Mac OS X 10.1.5 以降と QuickTime 6.3 を必要とする。256 MB 以上の RAM の装着を推奨している。[JLC] (倉石)
<http://www.apple.com/imovie/>
<http://www.apple.com/imovie/download/>
iSync 1.1 でより多くの携帯電話機と、Safari ブックマークをサポート --Apple 社は、連絡先やカレンダーその他の情報を、複数のコンピューターや他の機器同士で同期させるための Mac OS X 専用アプリ iSync 1.1 をリリースした。(TidBITS-639 "Jaguar、iCal、そして iSync 現わる"を参照されたし。)バージョン 1.1 では、いくつかの新しい携帯電話機と、コンピューター間での.Mac アカウント経由による Safari ブックマークの同期(もし何らかの理由でiSync をインストールしたくないのであれば、フリーの JeepSafari で同様の機能を実現できる。)のサポートが追加された。iSync 1.1 はソフトウェアアップデート経由か、5.3MB のダウンロード版が利用可能である。また、iSync 1.1は Mac OS X 10.2 かそれ以降と iCal 1.0.2 かそれ以降が必要で、Palm デバイスとの同期には iSync ダウンロードページからリンクされている iSync 1.1 Palm Conduit が別途必要となる。[GD] (Pablo)
<http://www.apple.com/isync/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06880>(日本語) Jaguar、iCal、そして iSync 現わる
<http://www.apple.com/isync/devices.html>
<http://www.apple.com/safari/>
<http://homepage.mac.com/sweetcocoa/jeepsafari.html>
<http://www.apple.com/isync/download/>
Keynote 1.1 で機能が向上 -- Apple 社は、Mac OS X 専用プレゼンテーションソフト Keynote の新版であるバージョン 1.1 をリリースした。このアップデートではパワーポイント形式のプレゼンテーションの読み込みおよび書き出し機能の改良、スライドショー実行中に指定したスライドにジャンプする機能の追加、3D トランジションをクリップしないオプションの追加、ナビゲーター内のスライドで作業する際の反応や操作性の改善、QuickTime 形式ファイルへの出力の最適化、テーマとプレゼンテーションのファイル容量の低減、そして QuickTime Video における全体的な性能の向上が含まれる。Keynote 1.1 アップデートは30.3MB のダウンロード容量で現行の Keynote ユーザーには無料である。Keynote自体は $100 である。[GD] (Pablo)
<http://www.apple.com/keynote/>
<http://www.apple.com/keynote/download/>
After Dark が Mac OS X 用に再来 -- Tonya は今でもフライング・トースターのスウェットシャツを着ることがある。そう、これは Berkeley Systems のスクリーンセイバー、After Dark が世界中で人気を博していた時代以来のものだ。あの時代には、After Dark についての本が一冊、いやいや二冊も書かれたものだった。(TidBITS-150 の記事“After Dark: The Books”を覚えておられるだろうか。)実際のところ、記念すべき TidBITS の始まり、第1号の最初の記事も、After Dark の新バージョンについての話題だったのだ! 読者の方々の中には After Dark のことを覚えておられない方もいらっしゃるかも知れないが、とにかくこのスクリーンセイバーは 1989 年にデビューしてから 1999 年に消え去るまで続いたのだ。After Dark には、フライング・トースター以外にもさまざまのモジュールがあり、水族館のシミュレーションや、Mandelbrot フラクタルのジェネレータ、それにあのいつまで経っても芝刈りを終えることができない(でもいつまで経ってもガソリン切れにならない)Sisyphean Mowing Man などが有名どころだった。それ以外にも、独立のプログラマーたちの作品や、毎年のプログラミング・コンテストなどもあって、それこそ数え切れないほどのモジュールが巷に溢れていた。でも、私のアイデアを実現してくれるプログラマーは結局誰もいなかったのだが。私のアイデアとは、パネルを裏返すたびにさまざまの色の砂粒が流れ落ちて、この世のものは思えないような風景を作り出してくれる、あの「砂彫刻」パネルをシミュレーションするモジュールがあったら素晴しいのに、というものだった。
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=02854>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=03912>
残念なことに、After Dark のエンジンは Mac OS 9 とは互換になり得ないものであったので、Mac OS 9 の登場とともに After Dark は静かにソフトウェアの墓場へと消えていった。ところが、もともと After Dark の日本での配布元となっていた Infinisys 社が勇ましくも闇の世界へと分け入って、忘却の世界の彼方から After Dark を救い出して来てくれたのだ。Infinisys が今回発表した新製品 After Dark X + Fish は、Mac OS X 内蔵のスクリーンセイバーエンジンを利用して動作し、さらにInfinisys は Mac OS X による OpenGL 3D のサポート機能も利用して、過去のモジュールの直接の書き直しではなく数多くの全く新しいオプションや表現方法を提供している。After Dark X + Fish の価格はたったの $10 で、Mac OS X 10.0.4 またはそれ以降で動作する。(筆者としては、Mac OS X ユーザーの読者の皆さんは全員少なくとも Mac OS X 10.1.5 以降を既に使っておられると信じたい。)モジュールの中にはマルチモニターの環境ではうまく動作しないものもある。[ACE](永田)
<http://en.infinisys.co.jp/product/adx/>日本語After Dark X + fish 製品情報
Spring Cleaning 6.0 がゴミ掃除 -- 今は春だから(少なくともこちら側の半球では... 南半球の方々、お許しあれ)きれい好きの若者の気持ちとしてはハードディスクから余分なファイルを削除したい、コンピュータの動作速度も改善したい、自分の好みを他の誰にも覗かれたりしないように手をうっておきたい、という気分がムクムクと湧いてくるというものだろう。こういう季節にふさわしく、Aladdin Systems が Spring Cleaning 6.0 をリリースした。これは同社のアンインストーラで、クッキーを残らず食いつくし、空のフォルダをリサイクルし、厄介物のインターネットキャッシュもきれいに掃除し、親のいなくなった設定ファイルを捨ててくれる等、多彩なツールの最新版だ。バージョン 6.0 での変更点としては、オペレーティングシステムに内蔵された言語のうちから不要なものを捨てる機能が追加された。(××語をあなたの Mac でアクティブにしておいたからといって、あなたがその言葉をしゃべれるようになるわけじゃないですものね。)また、Sherlock のクッキーを捨てる機能も追加され、Opera や Safari もブラウザとして認識するようになった。Spring Cleaning は Mac OS 9.1 かそれ以降、または Mac OS X 10.1.5 かそれ以降で動作し、英語版、ドイツ語版、フランス語版、それに日本語版がある。新規購入は $50 で、以前のバージョンからのアップデート、または競合製品からの乗り換えの場合は $20、また他の Aladdin 社製品のユーザーは $30 で購入できる。[ACE](永田)
<http://www.aladdinsys.com/springcleaning/>
WebSTAR V 5.3 が iCal サポートを追加 -- 4D は 4D WebSTAR V Server Suite 5.3 をリリースした。これは、同スウィートの 4D WebMail Pro モジュールをアップデートし、iCal カレンダーを表示、公表し、それに加入する機能を加えた。他にも改良されたのは WebSTAR の検索エンジンで、高速化し、国際文字セットを扱え、追加のライセンスなしで無制限のページインデックス作成をサポートする。最後に WebSTAR 5.3 には新しい Security Plug-in が付いており、サイトのある特定の部分に対するアクセスを許可するか拒否する時に、新たな階層を提供する。WebSTAR 5.3 へのアップデートは、WebSTAR V の登録ユーザーに対しては無償;WebSTAR 4 のユーザーには $200;WebSTAR 3 と Mac OS X Server のユーザーに対しては $300 で、新規では $400 である。[ACE](カメ)
<http://www.4d.com/products/webstar53.html>
文: Geoff Duncan <[email protected]>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>
Apple が QuickTime 6.3 をリリースした。同社のデジタルメディア・テクノロジーの基礎となるソフトウェアの最新版だ。バージョン 6.3 では DV オーディオ・ビデオの同期が改良(ビデオ編集アプリケーションがこれで扱いやすくなるだろう)され、また Apple 製の Keynote、iMovie、iDVD の各アプリケーションのための改良も加えられた。バージョン 6.3 ではまた「ストリーミング移送の自動探知」という新機能もある。この内容の詳細は発表されていないが、たぶんローカルデバイスではなくネットワークからのストリームによってアクセスしたメディアを QuickTime がより良く扱えるということだろうと思われる。
<http://www.apple.com/quicktime/>日本語QuickTime 6.3
おそらくそれよりもっと重要な新機能としては、QuickTime 6.3 が 3GPP メディアをサポートするようになったことが挙げられる。この 3GPP というのは MPEG-4 標準を拡張して、ワイヤレスのブロードバンドネットワーク(例えば Apple の AirPort (AirMac))を通じて各種のワイヤレスデバイスへと豊かな内容のメディアが送信できることを狙ったものだ。(3GPP とは第3世代移動体通信システムの標準化団体 (3rd Generation Partnership Project) のことで、Apple は 3GPP に関する基礎的な情報やヒントを下記のウェブページにまとめている。このフォーマットは特にアジアやヨーロッパの携帯電話や PDA のユーザーによって広く使われ始めている。)QuickTime 6.3 による 3GPP のサポートは H.263 ビデオコーデック(ビデオコンファレンスで実績のあるコーデック)と AMR (Adaptive Multi-Rate) オーディオコーデック(会話に特化された狭帯域用のコーデック)とを組み込んでおり、またオーディオやビデオと同期できるテキストトラックの 3G テキスト (TX3G) もサポートしている。このような 3GPP のサポートの背景には、QuickTime でコンテンツを作成すいる人々がそのコンテンツを携帯電話や PDA、さらには単フォーマットしか使えないコンピュータなど、さまざまのワイヤレス機器にも展開できるようにしたい、そしてそのコンテンツのメディア自体が自動的にそれぞれの機器の能力に合わせてスケールされるようにしたい、という考え方があるのだろう。
<http://www.apple.com/mpeg4/3gpp/>日本語3GPP
QuickTime 6.3 は 20 MB のダウンロードとして Software Update から利用可能であり、また独立のインストーラとして別途入手することもできる。3GPP の再生とオーサリングには 3GPP コンポーネントが必要で、これはまた別途ダウンロードすることが必要だ。QuickTime 6.3 は Mac OS X 10.2.3 以降または Mac OS X 10.1.5 以降、および Windows 98/Me/2000/XP 用のものがある。3GPP サポートは classic Mac OS では使えない。[訳注: Mac OS 8.6 や 9.x 用の日本語版 QuickTime の最新版は、現在 QuickTime 6.0.2 となっている。]QuickTime Pro へのアップデート(QuickTime アプリケーションでオーサリング機能が利用可能となる)は、以前と同じく $30 の費用がかかる。
<http://www.apple.com/quicktime/download/standalone/>日本語QuickTime - スタンドアローンインストーラ
<http://www.apple.com/quicktime/download/3gpp/>日本語QuickTime - ダウンロード - 3GPPコンポーネント
文: Jeff Carlson <[email protected]>
訳: 佐藤浩一 <koichis@anet.ne.jp>
Handspring 社を設立するため Palm 社の創始者たちが同社を離れて 5 年が経った後、Palm は彼らを呼び戻すこととなった。Palm が、1 億 9,200 万ドル相当の株式交換により Handspring を買収すると発表したのだ。加えて取締役会は、Palm OS の開発とライセンスを担っている PalmSource 社を新しい別会社へ独立させることを最終的に承認した。Palm によれば、Handspring の買収は 2003年の第 3 四半期中に予定されている PalmSource の分社化の後になるという。
<http://www.palm.com/>
<http://www.handspring.com/>
<http://www.palm.com/us/entry/news_palm-handspring.html>
この合併した会社は今年後半に新社名となる予定で (PalmSpring か?) 、Palmハンドヘルドの責任者である 3 人の Handspring 創業メンバーを擁することとなる。Palm を発明した Jeff Hawkins 氏は最高技術責任者となり、 Handspringの社長兼最高執行責任者である Ed Colligan 氏は新しいスマートフォン・ソリューション・グループを統括し、Handspring の現最高経営責任者の Donna Dubinsky 氏は取締役会のメンバーとして新会社に残る。Palm の Palm Solutions Group (Palm のハード開発と販売を担当する) の現社長兼最高経営責任者である Todd Bradley 氏の地位は変わらないが、ハンドヘルドコンピューティングソリューショングループは Palm の現販売・マーケティング担当副社長の Ken Wirt 氏にまかされることになるだろう。
この度の買収劇には少々驚かされたが、Hawkins とその部下たちが Palm (当時は 3Com の子会社であった) による束縛を嫌って Handspring が創立されたという経緯を知っていれば、このような経済状況下では今回の出来事は分からないでもない。好評を博している電話機能付 Treo シリーズがリリースされた後、Handspring からは何も聞こえてこないし一連の製品で大きな変更もされていない (海外の数カ国で Treo を販売できるようにするためずっと忙しかったとは思うが)。一方 Palm は、基本的な事しかできない旧モデルに比べはるかに多くの事が出来る Zire 71 あるいは Tungsten シリーズのようなハンドヘルドを発表するなどし、やっと会社本来の姿を取り戻した。
<http://www.handspring.com/products/communicators/>
<http://www.palm.com/products/handhelds/>
しかし、両社ともに新ハンドヘルドの販売数がはっきりと減少していく事態に直面していた。現在使用されている Palm オーガナイザは、ほとんどの人が必要とする基本機能 (アドレス帳とスケジュールの管理) を提供している。これはつまり数年前に購入した機器がいまだに使えるということで、ユーザにとってはとても良いことであるが、存続のために定常的にハードウエアの売り上げが必要な会社としては厳しい状況である。そのため、新しいハンドヘルドではカラー画面、マルチメディアオプション、大容量メモリ、ワイヤレスカード、そして高速プロセッサを提供するのだ。
このまま行けば、Palm は Handspring を買収することにより成長著しい携帯電話・PDA マーケットへ即座に参入できる (IDC によれば今年は 3 倍の規模に成長するという)。がしかし、たぶんもっと重要なのは、Handspring がやっと手に入れた各国の携帯電話サービスプロバイダに対処する経験を Palm が得られるということだ。今回の買収はまた、成長してきた Microsoft の Pocket PCマーケットに対抗するための資産を提供し、Apple に携帯電話や PDA マーケットへ参入する糸口として Handspring を買収するという噂に終止符を打つことだろう。
<http://www.microsoft.com/mobile/pocketpc/>
財務的な観点から見ると、Palm と Handspring は両者の経営を統合し重複しているプロジェクトを取りやめ関連不動産を処分することにより、約 125 名の従業員が離職することも含めて年間 2,500 万ドルの経費節約になると見積もっている。この買収の一環として、買収が完了するまでの間 Palm は Handspringに 1,000 万ドル (必要なら最大 2,000 万ドルまで増やせる) を貸し付けることに合意した。
文: Mariva H. Aviram <[email protected]>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>
ぼうっと光を放つスクリーンの前で何時間も、他の人とはほとんど直接の交流を持つこともなくぶっ続けに座ったまま過ごすというのが、まあ一般的なインターネット体験の姿と言えるだろう。けれども分野によっては、インターネットからユーザーたちに、さあ、キーボードから離れて外に出よう、現実の世界と関わりを持とう、と強く呼びかけてくれるような場合もある。私がこれから語ろうとする分野のウェブサイト、これらはすでに非常に人気もあって、ほとんどの場合商業主義とは無縁のものなのだが、今のところまだ適当な名前が付けられていない。この種のサイトはウェブを超越した活動や趣味、時にはライフスタイルとまで呼べるようなものを扱っており、それ自体オンラインかオフラインかという区別も付け難いような存在だ。私は、このような種類のウェブサイトを総称して“インターネット補助によるオフライン・レクリエーション”(Internet-Guided Offline Recreation, IGOR) と呼ぶことにした。この IGOR というのは単にオフラインのレクリエーションを扱ったサイト、例えばヨットや手芸などを議論するサイトのようなものとは別で、IGOR で扱われる活動は、そのウェブサイトによって仲介を受けたり追跡されたり、本質的にウェブサイトと不可分な活動なのだ。
GPS ゲーム -- 2000 年 5 月 1 日のこと、当時のクリントン政権はそれまで実施されていた合衆国政府による強制信号劣化 (Selective Availability) の政策を解除することを決定した。つまり、全地球測位システム (Global Positioning System, GPS) の信号を意図的に劣化させていたのを止めたのだ。その結果 GPS の情報が一般市民にもフルに利用できるようになり、通信・緊急連絡・交通・産業などの各分野で実際的な応用が可能になった。そして、この GPS を利用して、全く新しい形のレクリエーションが誕生することにもなった。
<http://www.ngs.noaa.gov/FGCS/info/sans_SA/docs/statement.html>
強制信号劣化が停止されてからたった2日後のこと、ある人がログブックを箱に入れてオレゴン州ポートランド近くのある場所に隠し、その場所の GPS 座標値を sci.geo.satellite-nav ニュースグループに公表した。そのたった3日後には、“隠し場所”(cache) と呼ばれたそのケースは2人の人に発見され、その2人はログブックに自分の名前を記録するとともにオンラインにもその成果を発表した。その素晴しく好奇心をそそる内容と、反応の素早さ、そしてそのクールさとが相まって、ここにたちまちのうちに新しいハイテクの隠れん坊ゲームが誕生した。これが“geocaching”だ。
<http://www.geocaching.com/about/credits.asp>
<news:sci.geo.satellite-nav>
Geocaching.com は geocaching 専門のサイトとしては最初のものであり、現在も最も活発に利用されているサイトだ。ここで、手軽に cache を探したり、自分で新しい cache を作ったりすることもできる。Geocaching.com のデータベースにおいては、個々の cache の位置を代表するデータは“waypoint”という形で登録されている。それぞれの waypoint はその cache の正確な位置を示す GPS 座標に対応している。
<http://www.geocaching.com/>
<http://www.trimble.com/gps/>
<http://www.pbs.org/wgbh/nova/longitude/gps.html>
<http://www.groundspeak.com/>
Geocaching.com サイトではあるゆるデータについて検索ができる: zip コード (ユーザ定義の距離範囲内で)、位置、座標値、キーワード、地域コード、waypoint、また geocache 設置者のユーザー名などで検索可能だ。例えば“waypoint GC78A5”で検索すれば“Stock Market CrACHE in Twin Peaks”という名前の geocache が見つかる。その詳細情報ページを開けば、その座標値、困難度と周囲の地形レーティング、各種の情報メモや暗号化されたヒント (これは“cheater”リンクをクリックするだけで簡単に暗号が解読される)、ズーム可能な周辺地図、また訪問者のログ記録や他の geocache プレイヤーたちの写真などを見ることができる。
<http://www.geocaching.com/seek/cache_details.aspx?ID=30885>
たいていの cache は公園とか森林地帯、あるいはその他の公共の場所などに隠されている。このような cache を探す時は、GPS 座標値だけではなく設置者の出してくれたヒントも常に携帯しておくのがよい。また、何人もの人が草の上に残した踏み跡の道によって自然と隠し場所が顕わになってしまうこともある。
難しい cache の中には、一度では見つからずに二度三度と試みることが必要になるようなものもある。座標値の精度はせいぜい 15 フィート (4.6 m) くらいが限界なので、これを2つのユニット、つまり設置者の GPS ユニットとあなたの GPS ユニットそれぞれの誤差の分で2倍すると、30 フィート (9.1 m) の誤差は常にあり得ることになる。それ以後の探索はすべてあなた次第、ということだ。私が“Sounds of the Bay”を探した時は一度では見つからず、緩い岩の積み重なった岸壁の、何十という岩の裂け目のどれに隠されているのか、全くわからなかった。隠し場所の写真を“spoiler”として設置者が出してくれていたのを見ても、何の参考にもならなかったくらいだ。
<http://www.geocaching.com/seek/cache_details.aspx?ID=12491>
“伝統的 Geocache”(サイトではデフォルトアイコンで示される) では、密封防水容器の中にログブックとペン (訪問者がコメントを書き込めるように)、使い捨てカメラ、それに何か気の利いた記念品などが入っている。基本的には、それを発見した訪問者はこれらの記念品に目を通して、気に入ったものを1個だけ取り、その代わりに新しい記念品を1個入れておくのだ。宝探しだからといって、発見した箱の中に金銀財宝がざくざく入っているとは思わないで欲しい。たいていの場合、箱を発見したご褒美は古ぼけたおもちゃか、コインや貝殻、子供たちが取りかえっこして遊ぶガラクタのようなものだ。でも、物を手に入れることが geocaching の目的なのではない。本当の賞品とは、cache を発見した喜びと、その場に座って休憩しながら眺める、辺りの雄大な景色だけなのだ。
それ以外のタイプの geocache としては“Multi-Cache”と呼ばれるものがある。これは、第一の cache の中にヒントが入っており、プレイヤーはそのヒントを見て第二の cache、あるいはさらに続けていくつもの cache を探してゆく、というものだ。このようなものを探すのは、時によってまる一日がかりの仕事になることもある。ヒントだけでなく、パズルやなぞなぞが含まれていることもある。難しいパズルやなぞなぞを解くのは、熟練の geocache プレイヤーでも時間と忍耐とをかけなければ無理、ということもあるだろう。(Geocaching.com ウェブサイトはこれまですべて無料だったが、最近このような難しい geocaching をサポートするための有料サービスも開始している。)
時によっては、全く何の賞品も無いこともある。少なくとも持ち帰れるようなたぐいの賞品は。“Virtual Cache”では箱のようなものは一切隠されていない。発見した場所それ自体が賞品なのだ。(詳細情報ページを開くと、その場所に関する質問に答えるよう要求されたり、あるいは何らかの作業をするように指定されたりする。)“Event Cache”では、空間的場所だけでなく時間も問題になる。つまり geocache プレイヤーは指定された場所を指定された時刻に訪れて他のプレイヤーたちと会うのだ。熱心な geocache プレイヤーなら、定期的にウェブで Events Calendar をチェックして、近所で Event Cache が開催されないかどうか調べるのを習慣にしているものだ。
<http://www.geocaching.com/about/cache_types.asp>
<http://www.geocaching.com/about/calendar.asp>
隠れん坊 -- 当然のことながら、geocaching の楽しみは探すことだけではない。あなた自身の cache を作るのも楽しいことだ。ただし、初めての cache を実際に設置する前に、まずは他の人の geocache を探して発見するまでの行程を少なくとも一度は経験して、うまくいくためのコツや、どんなものが良い cache なのかを実感しておくことをお勧めしたい。あなたが隠した cache の管理責任があなたにあることも忘れてはならない。つまり、定期的にその場に行って、ごみを掃除したり、フィルムが一杯になっていたら新しい使い捨てカメラと取り替えたり、新しい記念品を追加したり、といったことをしなければならない。そんなことは面倒だ、geocache の世話をしている時間が無い、と思う人は自宅のごく近くに隠すようにすればよい。そうすればチェックのために何度も遠くまで旅行する必要がなくなる。また、設置のための注意書きはよく読んでおくべきだ。私は一度、うっかりと自分の cache を Land's End、つまり Golden Gate National Recreation Area の範囲内に隠してしまったことがあったが、ここは国有地であって、それは geocaching では絶対にしてはいけないことだった。この場所は町の反対側にあるので、実は私はまだ回収しに行く暇が見つけられないでいる。また、その地域についてあなたが知っていることを十分に吟味してから隠し場所を選ぶ方がよい。ある時私は美しい手作りのログブックと一袋のキャンディーを入れた geocache を、私が絶好の隠し場所だと思った場所に隠した。それは、巨大な常緑樹の幹の中だった。けれども私はその木がサンフランシスコ市内にあることを考慮するのを忘れていた。ある日、一人のホームレスの人がこの大木の枝の下に居を定め、私の cache は当然のごとくに姿を消してしまったのだった。
当初私は3個の geocache を隠していたが、現在ではそのうち1個だけしか残っていない。でも私はその1個だけで十分満足だ。その隠し場所は誰でも手軽に訪問できる、美しい地域にあるので、大勢の訪問者たちを迎えている。そこに入れておいた最初の使い捨てカメラの内容を私は写真にプリントして photo CD にも記録し、その画像を geocache の詳細情報ページにアップロードしておいた。プリントされてきたこれらの写真を見た時、私は初めて心から実感した - geocaching がこんなにも素晴しい趣味だったのだ、ということを。1つ1つの写真は、どれも皆違っていた。男の人が一人で立っている写真もいくつかあったし、その中には自分で自分を撮ったために中心からずれているのもあった。カップルで、あるいは友人たちのグループで、微笑みかけたり、舌を突き出しているようなのもあった。若い父親が背中のキャリアに赤ん坊を背負って写っているのもあったし、犬が風に身震いしていたり、時刻を写そうとして腕時計がピンぼけになっていたり、おもちゃが草の上に放り出してある写真もあった。時刻もさまざま(夜中に重装備で写っている男性もいた)季節もさまざま、天候もさまざま(快晴の日も、霧の日も)だった。私はこれらの写真を安いポケットサイズのフォトアルバムに差し込んで、「あなたの前に来た geocacher たちをご覧なさい」と表紙に書き、cache の中に入れておいた。
複製サイトたち -- Geocaching.com がいかに人気があるかの証拠が、その複製サイトの数々だ。Navicache.com は Geocaching.com とほぼ同様の内容を提供しているが、サイトとしては少しアマチュア的な感じで、cache の登録数も少ない。Geocaching Worldwide サイトはオーストラリア専用のサイトとして始まったが後日世界中の cache も含めるように拡張された。Geodashing サイトは geocache 探しを競争としてとらえており、これは次から次へと cache を見つけるたびに写真をアップロードしていく。ここでは“waypoint”の代わりに競争らしく“dashpoint”という用語を使っている。アメリカ人が皆愛国心に溢れている今日この頃にふさわしいのが CacheAcrossAmerica サイト、ここではアメリカ大陸を横断する geocache のチェインリンク(Interstate 80 号線にほぼ並行)を作り上げることに成功している。新手のものは EcoScavenger、ここでは geocacher たちに「物よりも場所そのものを共有しよう」と呼びかけている。なるほど良いアイデアには違いないが、これは既に Geocaching.com の virtual cache のアイデアで実現されている。Hasbro 製の安いプラスチックの猿のおもちゃ、あの古典的な Barrel of Monkeys に触発されたのだろうか、二人の冗談好きな人たちが始めた Monkey Cache サイトは、いまや本格的な geocaching サイトへと成長し、愛好家たちにペンシルバニアの Linn Run State Park で「猿の研究」をしませんか、と呼びかけている。
<http://www.navicache.com/>
<http://www.geocachingworldwide.com/>
<http://geodashing.home.attbi.com/>
<http://groups.yahoo.com/group/CacheAcrossAmerica/>
<http://www.ecoscavenger.com/>
<http://www.monkeycache.com/>
<http://www.geocaching.com/seek/cache_details.asp?ID=2716>
<http://www.hasbro.com/games/pl/page.viewproduct/product_id.8616/dn/>
[訳注:日本のサイト]ジオキャッシング
Geocaching 愛好家たちの間で重宝がられているのが Buxley's Geocaching Waypoint サイトで、これはいろいろのおもしろい情報が詰まったコンパニオンガイドだ。世界中の cache の隠し場所を示した Buxley の world map を見れば、われわれテクノエリートたちのものとしてのこの趣味に、はっきりとした一つのパターンが見てとれる。つまり、圧倒的大多数の cache はアメリカ合衆国内(およびカナダ南部)と西ヨーロッパに隠されているのだ。それ以外のものはオーストラリアの沿岸部、中央および南アメリカ、南アフリカ、アジアの大都市、太平洋の島々などに分布している。言葉を替えて言えば、geocaching がいくらお金のそれほどかからない趣味だとは言っても、それに参加する人たちはいわゆる「金持ちの」地域に住んでそこへ旅行する人たちであり、GPS ユニットやインターネット接続のコンピュータを買えるだけの収入があって衣食の足りている人たちなのだ。Buxley のサイトにはまた geocaching に関するニュースのログや、単純な waypoint と隠し容器だけではないような珍しい cache についての記録なども載っている。
<http://www.brillig.com/geocaching/>
さあ、Geocaching を始めてみよう -- Geocaching の最大の売りは、比較的安価に、しかも誰でも手軽に参加できる趣味であることだ。一番シンプルな携帯用 GPS ユニットならばおよそ $100 ほどで購入でき、これで衛星からの信号を受信してかなり正確な座標を測定でき、あなたもすぐに初めての geocache 探しがスタートできる。$350 ほども出せば上級機種の GPS ユニットが入手でき、これならば地図のダウンロードや、waypoint の保存、高度計、その他の専門的ながら役に立つ機能がたくさん付いてくる。それ以外にも自動車内で使うためのユニットや、GPS 機能に魚群探知装置や海上ナビゲーションツールなどを組み合わせたものもある。
GPS ゲームというのは、コンピュータの専門性とアウトドアの冒険旅行とを組み合わせた、画期的な遊びだと言えるだろう。費用もほとんどかからず、まったくの初心者でも熱意さえあればすぐさま geocacher たちの「秘密の仲間」の一員になれる。ハマッてしまえば虜になること受け合い(毎年何百もの cache を探す geocacher たちもいる)だが、虜と言ってもこれならばそんなに悪習とも言えないだろう。
続きの記事となる次回では、他のタイプの geocaching をいくつか、例えば世界中の通貨を追跡したり、実際のノートブックを交換したり、といったものなどに触れてみたい。次の waypoint でお会いしましょう!
[Mariva H. Aviram は、何冊もの本や、数え切れないほどの記事の著者であり、アウトドア、アート、本や映画、カルチャー、それに風刺に情熱を燃やしている。詳しくは彼女のウェブサイトを参照されたい。]
文: TidBITS Staff <[email protected]>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>
オンラインのクロスワードパズル -- Mac 上でクロスワードパズルを解いたり作ったりするための、他のソフトウェアの紹介。(メッセージ数 7)
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=1954>
古い Mac でワイヤレス -- 旧機種の Mac をあなたのワイヤレスネットワークに加えるための、他の方法。(メッセージ数 8)
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ワイヤレスの受信状態の改善 -- ワイヤレスネットワークの範囲の限界近くではいつもイライラさせられるものだ。WiFi Speed Spray でも効き目が無い時、これがもう1つの方法かも知れない。(メッセージ数 3)
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Mac で Apple 製以外のワイヤレスハードウェアを使う -- Apple 製のワイヤレスネットワーク用ハードウェアは性能が良いが、往々にして他社製のものより値段が高い。それなら、他社製の装備を Mac で使えるのだろうか? 結果は場合によって違うようだ。じっくり読んで頂きたい。(メッセージ数 11)
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Palm が Handspring を買収 -- TidBITS Talk は Palm-Handspring 合併のニュースに素早く反応した。Apple が Handspring を買収すべきだったとか、携帯電話と PDA との融合ははたしてうまくいくのか、等々の話題に花が咲いた。(メッセージ数 9)
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iTunes とインディーズ系アーティストたち -- いくつかのサイトで報告された情報によれば、Apple は多数のインディーズ系音楽レーベル各社と会合を持ち、独立のアーティストたちとの間の具体的な契約案の内容を提示したということだ。確かにそれは事実なのだが、TidBITS としては Apple が公式にサービスの実行を発表するまでは取り上げるのを控えたいと思う。(メッセージ数 3)
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, , 日本語版最終更新:2005年 12月 26日 月曜日, S. HOSOKAWA