TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#702/20-Oct-03

今週は、まったく新しい出版プロジェクトを発表したい。第一級の Macintosh著者によって書かれた Take Control シリーズという電子本である。さらにWindows 版 iTunes や AOL および Pepsi との業務提携、そして iPod の改良点や小物など Apple の音楽関連のアナウンスを深く掘り下げる。それからDealBITS が Business Card Composer を引っ提げて戻ってきた! ニュースでは、Apple が第 4 四半期に 4,400 万ドルの利益を計上したことと DragThing 5.0 の登場をお伝えする。

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MailBITS/20-Oct-03

Apple が第 4 四半期に 4,400 万ドルの利益を計上 -- Apple Computerは、2003 年第 4 四半期の売上高が 17 億 1,500 万ドル、純利益は 4,400 万ドルにのぼると発表した。同期の粗利益率は 26.6 パーセントで、売上に占める海外分は 38 パーセントしかなかった。今期売上のうち約 1,500 万ドルは例えば自社株買い戻しや投資収益など今回限りのものであったが、Apple は同期に 78 万 7,000 台の Mac (Apple の新 15 インチ PowerBook や PowerMac G5システムはこれには少ししか含まれていない) を出荷し、iPod も 33 万 6,000台が売れた。同社によれば、来期の売り上げは待ち望んでいる休暇シーズン中の販売増が見込まれるため、およそ 19 億ドルに達すると予測している。[GD](佐藤)

<http://www.apple.com/pr/library/2003/oct/15results.html>

DragThing 5.0 が、またしてもやってくれた -- TLA Systems から、そのランチャーユーティリティ、DragThing のバージョン 5.0 がリリースされた。今回追加された機能は Panther のサポート(もちろん Jaguar とも互換)だ。その他にも多くの改良が、プログラマー James Thomson のいつものスタイルのままに施されている。つまり、完璧、細心、明晰、そして超次元の彼方までユーザーのカスタマイズが可能だ。新設の Window dock がアプリケーションのウィンドウをリストし、これで DragThing は以前にも増して強力なドック代替ツールとなった。コンテクストメニューも大きく強化された。中でも注目すべきなのは DragThing ドック上のアプリケーションのアイコンにドロップした書類がすべてそのアプリケーションのコンテクストメニューに記憶されて、あとでそこから開くことができるようになったことだ。DragThing 5 は既存の登録ユーザーには $12 のアップグレード、それ以外は $30 となっている。無料の 2.8 MB のダウンロードを使って2週間の試用ができ、その期間が過ぎればいくつかの機能が使用不可になる。[MAN](永田)

<http://www.dragthing.com/english/about.html>
<http://www.dragthing.com/english/whatsnew.shtml>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06805>(日本語)厳選 Mac OS X ユーティリティ: コントロールをカスタム化
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06939>(日本語)DragThing 4.5 Gets Tabbed


DealBITS 抽選会: Business Card Composer

文: Adam C. Engst <[email protected]>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

名刺を作ろうと思う時、2つの問題が頭をよぎる。一番問題なのは、電話番号や住所が変わる度に何百枚もの未使用の名刺を捨てなければならないことで、これはたいていの印刷所では注文の際に最小印刷枚数が高く設定されているためだ。もう一つ嫌になることは、従来のグラフィックスソフトウェアを使って見栄えの良い名刺を作ろうとすると非常な努力が要求されるということだ。確かに可能には違いないが、どう見ても必要以上の労力に感じられる。これら2つの問題を両方とも解決してくれるのが、BeLight Software の Business Card Composer だ。これはとてもエレガントな Mac OS X 用プログラムで、これを使って魅力的な名刺を自分でデザインして、普通のインクジェットプリンタで標準の名刺用紙に印刷することができる。

<http://www.belightsoft.com/composer/>

今週の DealBITS 抽選会では、Business Card Composer の電子版 ($40 相当) が3本、賞品になっている。また、3人の当選者以外の応募者全員に、もれなく Business Card Composer の割り引き資格が贈られる。ぜひ奮って下記にリンクされた DealBITS ページで応募して頂きたい。その際、ページに記された応募のルールをよく読んでそれに同意してから応募されたい。寄せられた情報はすべて TidBITS の包括的プライバシー規約の下で扱われるので、その点はご安心頂きたい。1つだけ注意を: ご自分のスパムフィルターに注意して頂きたい。当選したかどうかをお知らせするこちらからのメールを、あなたは受け取る必要があるのだから。

<http://www.tidbits.com/dealbits/belight.html>
<http://www.tidbits.com/about/privacy.html>(日本語)プライバシー規約

当選者は次週の TidBITS 上で発表する。また、応募者全員にも個別に当選者名をお知らせする。

[訳注: 応募期間は 11:59 PM, 26-Oct-2003 Pacific Standard Time まで、つまり日本時間で 10 月 27 日(月曜日)の午後 5 時頃までとなっています。]


iTunes Music Store、Windows, Audible, 独立系へも手を広げる

文: TidBITS Staff <[email protected]>
訳: 亀岡孝仁 <takkameoka@earthlink.net>
訳: 佐藤浩一 <koichis@anet.ne.jp>

先週、Apple は同社が "第二世代" と呼ぶ iTunes Music Store の旗揚げをした。これに伴い数多くの発表があり、そこには iTunes for Windows、Mac 用の iTunes の新バージョン、iTunes Music Store のいくつかの新しいマーケティング上の提携、そして iPod に対する有益なアップデートが含まれている。

iTunes for Windows -- この中で最も重要な発表は間違いなく iTunes for Windows のリリースであろう。これにより iTunes Music Store は膨大な Windows ユーザーにも開放され、そして PC につないで使われる iPod の主インターフェースの座を引き受ける事になる。よくよく中身を調べたわけではないが (PC ソフトウェアをインストールして試験するのは我々の忙しい週の中では優先項目にはならない)、iTunes for Windows は Mac 用のiTunes に非常に近いもののようである。iTunes 4.1 for Windows は Windows 2000 か XP で、少なくとも 500 MHz Pentium クラスのプロセサと 128 MB の RAM を必要とする。更に QuickTime 6.4 も必要であるが、これは iTunes for Windows のダウンロードの中に含まれていて、この分のダウンロードサイズは 19.1 MB である。

<http://www.apple.com/itunes/>
<http://www.apple.com/pr/library/2003/oct/16itms.html>(日本語)アップル、iTunes for Windowsを提供開始

先週、我々は iTunes for Windows の発表について取材していた時、"Windows ユーザーからのダウンロード数について、数週間中に Apple から勝ち誇ったプレスリリースがあるぞ!" と言ったものである。そして予言通り - Apple はリリース後三日半で iTunes for Windows のダウンロード数は百万コピーを超えたと発表した。そして同じ期間に iTunes のユーザーは百万曲以上を購入した。Windows ユーザー側にはきっと潜在需要が溜まっていたに違いない - Apple が最初に iTunes Music Store を始めた時には、百万曲に到達するのにまる七日間かかった。

<http://www.apple.com/pr/library/2003/oct/20itunes.html>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=07337>(日本語)http://www.apple.co.jp/news/2003/oct/21itunes.html
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbser=1240>(日本語) iTunes Music Store 一千万曲を売る

Mac 用の iTunes -- 先週時を同じくして Software Update 経由で、QuickTime 6.4 と iTunes 4.1 for Mac OS X がリリースされた。iTunes 4.1 では、On-The-Go プレイリストや自分の iPod 上に作った音声ノートを iTunes と同期でき、大きなプレイリストを複数枚の CD や、必要なら DVD 上に焼く事ができ、リンクを iTunes から Web ブラウザやメールプログラムへドラッグでき (更にリンクを Control-クリックして Copy iTunes Music Store URL を選択できる)、そして iTunes Music Store から Audible の話し言葉コンテンツを購入する事が出来るようになる。iTunes 4.1 は 6.2 MB のダウンロードで、QuickTime 6.4 は 19.8 MB のダウンロードである

<http://www.apple.com/itunes/download/>(日本語)iTunes をダウンロードしよう
<http://www.apple.com/quicktime/download/>

iTunes Music Store の変更点 -- iTunes の新たなリンクコピーの機能から、iTunes Music Store の興味深い台所裏を窺い知る事が出来る。まず最初に、iTunes Music Store の全ての曲は今や独自の認識番号を持つようになった。書籍の ISBN 番号のようなものである。我々は、これは ISRC (International Standard Recording Code) コードではないかと思っている。ISRC コードはレコーディング一つ一つに(同じ曲でも)与えられる。ISRC コードは無償だが、だからと言って取得が易しいということではない。米国では RIAA (そう、12才の子供に対して訴訟を起こした あの RIAA, the Recording Industry Association of America である) から取得できる。国際的には、IFPI (International Federation of the Phonographic Industry) から当り始めるのが良いであろう。

<http://www.riaa.org/issues/audio/isrc_faq.asp>
<http://www.ifpi.org/isrc/>

第二に、Apple は同社の音楽作品を検索するための Web ベースのツールを作った。これを使えば、iTunes Music Store にあるどの曲へでも直接リンクするのに使える HTML が生成される。しかし不幸な事には、Apple は利幅が極端に薄いので、これをアフィリエイト・プログラム(個人などのホームページに広告主のサイトへのリンクを貼り、訪問者がそのリンクをたどって商品を購入すればコミッションが支払われる仕組み)とする余裕はないとしている。このようなリンキングにはもってこいのやり方だと思うのだが;でもいずれにしても、iTunes Music Store へ直接行く、曲やアルバムのリストを自分の Web ページやウェブログに入れておきたいと思う人は多いであろう。

<http://phobos.apple.com/WebObjects/MZSearch.woa/wa/itmsLinkMaker>

ディープ・リンキングをサポートするという変更の他に、iTunes Music Store では今や曲を購入するのに使える商品券や月々の小遣いと言ったものまでサポートし、そして iTunes は多くのアルバムに対してアルバムノートや、時には批評までも、表示するのである。我々は、iTunes Music Store が最初に発足した時、これら三つの問題に関する多くの iTunes Music Store のユーザーの声に同調して来ただけに、これらの変更が取り入れられたのを見るのは嬉しいことである。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=07175>(日本語)Apple、デジタル音楽の新しい顔となる

Apple によれば、10月末までには iTunes Music Store の扱う曲数は 400,000 曲に達し、五大メジャーレーベルと 200 以上の独立系音楽レーベルのものを扱う事になるという。これは当初 iTunes Music Store で扱っていた曲のおおよそ二倍の量にあたる。そして、独立系レーベルの曲を扱うと公に Apple が口にしたのもこれが初めてである。もっとも Apple が独立系レーベルとはもう数ヶ月も交渉をしているという事は良く知られていた。それでも Apple がこの独立系を加えた事に付いてあまりいろいろ言わない事に我々は多少驚いている。この裏には、次の発表が間もなくされるのか、或いはメジャーレーベルとの関係を刺激しないよう控えめにしているというのがあるのかもしれない。

Audible -- Apple はまた iTunes Music Store に 5,000 本を越える Audible の話し言葉コンテンツも加えたと発表した。これには、オーディオブック、ラジオショー、雑誌の音声版、講演、講義、等々が含まれる。オーディオブックは同じものを Audible の Web サイトと較べると同じ値段か $1 安いようだ (Audible の月々 $15 と $20 のプランに入っていない人にとっては。毎月二つ以上のオーディオブックを聞く人にとってはこの定額のプランの方がやはりお得なようだ)。

<http://www.audible.com/>
<http://www.apple.com/pr/library/2003/oct/16audible.html>

この iTunes Music Store の使い易さのお陰で、Audible の話し言葉コンテンツの魅力が大幅に増すかもしれない。例えば、車での長旅用に iPod にかけるオーディオブックを気軽に買うとか - これまでの Audible の通常の Web インターフェースから同じことをやる面倒さがブレーキをかけていたかも知れない。

AOL と 甘い水で iTunes Music Store を宣伝 -- マーケティング上の戦略としては、今後も iTunes Music Store が合法的なオンライン音楽配信サービスのリーダーでいられるように、Apple は 2 つの重要な計画を発表した。Appleは AOL と提携し、2,500 万人と推定される米国内の AOL ユーザーに対し、iTunes の全カタログを 既にある AOL の音楽サイト、AOL Music へ統合することで、クリック一つで iTunes Music Store に登録できるようになるのだ。この提携により、2003 年末までに AOL ユーザーは他の登録 iTunes ユーザーと同様に iTunes Music Store で音楽のプレビュー・購入が行えるようになる。Apple にとっては iTunes Music Store の潜在的顧客を劇的に増やすことに成功し、 AOL にとっても同社の提供するオンライン音楽を一番成功している商用デジタル音楽配信システムと競争するのではなく協調することに成功したのだ。

<http://www.apple.com/pr/library/2003/oct/16aol.html>

これに付け加えて、Appleは、以前 Steve Jobs が John Sculley を Apple のCEO にならないかと説得していた頃“砂糖水売り”と呼んでいた Pepsi 社とも手を組み、最大一億曲を iTunes Music Store から無料でプレゼントする。2004 年 2 月 1 日から始まるスーパーボウルの宣伝にて、無作為に選んだ同社のペプシ、ダイエットペプシ、そして Sierra Mist の 1 リットル及び 20 オンスボトル一億本のボトルキャップに当選コードを封入する。当選したコードを iTunes Music Store に入力すれば、99 セントの曲ならどれでも選ぶことができるようになる仕組みだ。(詳細はまだ不明であるが、このキャンペーンは米国居住者にしか適用されない可能性がある。)

<http://www.apple.com/pr/library/2003/oct/16pepsi.html>

もちろん、当選したボトルキャップを曲と引き換えるためには当選者の Mac かWindows システムに iTunes と QuickTime が正しくインストールされていなければならず、つまりこれはこのような機会が無ければ iTunes など考えもしない何百万人ものペプシ愛飲家の目の前に iTunes ソフトウエアを置くことに等しい。これまでに iTunes Music Store では 1,400 万曲しか売れていないのに一億曲も無料で提供するのは馬鹿げて見えるかもしれないが、間違いなく Appleと Pepsi は一億個の当選番号すべてが曲と引き換えられるわけではないことを理解していると思うし、Apple が配信元や音楽会社に支払うのは実際に引き換えられた分だけだろう。一人が引き換えられる番号に上限はないので、使われずに捨てられてしまうかもしれないボトルキャップを捜して引き換える人たちが出てくるかもしれない。

全体的に見れば、このキャンペーンは iTunes サービスにとって非常に大きな追い風になる可能性があり、Apple の CEO である Steve Jobs も次のように的確に述べている。「ペプシは商品を代々音楽を通して販売してきた。今回の試みも同じであり、数十年もの間記憶にとどまることだろう。」私たちは、マイケル・ジャクソンの髪の毛が燃えた事件と同じような意味合いで記憶に残ることがないよう願っている。

iPod 2.1 Update と Belkin アクセサリ -- 上記の iTunes および iTunes Music Store のアナウンスと平行して、Apple は最近の iPod モデル (ドックコネクタが装備されているもの) 用ソフトウエアをアップデートした。iPod Software 2.1 はソフトウエア・アップデート経由で入手可能であり、これはOn-The-Go プレイリストを iTunes へ転送したり、iPod を操作していても数秒後にバックライトが消えることがなくなり、バッテリー残量表示メーターを 5段階から棒グラフへ変更し、そしてプレイリストが長大な場合のスクロールを改善した。 Windows ユーザーは、このアップデートにより iTunes Music Storeなどで購入した AAC 方式の音楽ファイルを再生できるようになる。このアップデートでは、新たに Music Quiz が追加された。音楽ライブラリから選択した曲を iPod が演奏し、その曲名を 5 つの候補から選ぶのだ。

<http://www.apple.com/ipod/>

さらに興味を引くのは、iPod Software 2.1 が、やはり先週発表された Belkin社の 2 つの新しいアクセサリもサポートしていることだ。50 ドルの Belkin社製 iPod Voice Recorder は iPod の上部に接続し、ボイスメモ、インタビュー、あるいは講演などを数時間分録音することができる。この機器には再生時に使われる 16 ミリのスピーカが内蔵されており、特別なソフトウエアは必要とせず、iPod が Mac あるいは Windows コンピュータと接続された場合ボイスメモなどを iTunes と同期する。

<http://store.apple.com/1-800-MY-APPLE/WebObjects/AppleStore?productLearnMore=T7419LL/A>

旅行をする人にとっては、100 ドルの iPod 用 Belkin Media Reader のほうが便利かもしれない。これは、iPod のドックコネクタポートに接続しデジカメで使われる様々なフラッシュメモリ (コンパクトフラッシュ (タイプ 1 及び 2)、スマートメディア、SDメモリーカード、ソニー製メモリースティック、そしてマルチメディアカード (MMC)) を読み込める。この Belkin Media Reader を、あとでコンピュータに転送するデジカメ画像を iPod に格納するために使うことができる。iPhoto は iPod を画像記憶装置として認識し、写真をライブラリに取り込むことが可能だ。iPod 用 Belkin Media Reader があれば、デジカメと iPod だけを持って旅行に出かけることができる。ただ写真をダウンロードするだけのためにラップトップをカバンに詰め込まなくていいのだ。もちろんiPod だけでは格納されている写真を見ることはできない。たぶん、将来 iPodの画面がカラーになれば可能になることだろう。

<http://store.apple.com/1-800-MY-APPLE/WebObjects/AppleStore?productLearnMore=T7418LL/A>

新しき標準 -- これらの変更により、Apple はオンライン音楽サービスのリーダとして iTunes Music Store の地位を固めた。クロスプラットフォーム対応で、使うのは簡単、とんでもないコピー防止機能に頼っていず、そしてApple のマーケティングの影響力が影にある。もし強力な競争相手が登場しようとしているのであれば、早くしないと間に合わなくなるだろう。

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Take Control してみようよ!

文: Adam C. Engst <[email protected]>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

こんなに私が興奮しているのは本当に久しぶりだ。今週、私たちは全く新しい出版プロジェクトの御披露目をしようとしている。その名も Take Control、これは第一線の Macintosh ライターたちが著作する新しい電子本のシリーズだ。この Take Control を引っ提げて、私たちは 21 世紀にふさわしい新たな出版モデルを作り出そうとしている。ここにはオンライン・雑誌・本といった各種出版形態の良いところが統合されており、可能な限りタイムリーな、最も焦点を絞った、一番価格効率の良い、そして最高の品質の技術的解説書を、あなたの手にお届けしようとしているのだ。

この Take Control プロジェクトが実現できたのは、私が何年もかけて積み上げてきた出版の経験とさまざまな人脈、Tonya の編集技術とプロジェクト管理能力、それに Macintosh 業界でも最高水準の著者たちの何人かの卓越した知識と熟練の執筆力を組み合わせた結果だった。現時点で決定している執筆陣には皆さんにもお馴染みの名前が並んでいる。Jeff Carlson、Glenn Fleishman、Dan Frakes、Joe Kissell、Kirk McElhearn、Matt Neuburg、Todd Stauffer といった面々に、Tonya と私も加わっている。

では、この Take Control シリーズが皆さんのどんなお役に立つのか、説明させて頂きたい。

どうして Take Control? -- どんな人でも、遅かれ早かれ、皆いつかは、自分のコンピュータでコントロール不能のお手上げになることがあるものだ。そうなれば、ますます複雑になって行く世界の、その荒波の海に放り出されたような気になってしまう。問題の根源はお粗末なインターフェイスにあるのかも知れないし、説明書の不備が原因かも知れない。あるいはプログラムのバグの所為かも知れないし、ひょっとしたらロー・レベルでディスクが壊れたのかも知れない。でも、ほとんどの人にとっては、問題の根源が何かということなどよりも、どうしたらコンピュータが復旧して仕事が続けられるのかということの方が、はるかに重要なことなのだ。

そこで登場するのが Take Control の電子本だ。私たちの目標は、皆さんができるだけ早く、最も安価な方法で、ご自分のコンピュータのコントロールを取り戻すことができるように、お手伝いすることだ。私たちが出版するのは、それぞれ特定の題材に絞った内容の、実用的な Take Control 電子本のシリーズで、まずは Mac OS X 10.3 Panther を題材にした本から始める。(皆さんがまず自分でコントロールしたいと思っておられるのは Mac OS X 10.3 Panther、これしかないでしょう?)それを手始めに、順々に題材を拡げて行きたいと思っている。

最初に出版される本は、最も基本的な内容の“Take Control of Upgrading to Panther”で、著者は Joe Kissell、あなたが安心して Mac OS X 10.3 を使い始められるよう、お手伝いする本だ。標準的アップグレードにすべきか、それとも Archive and Install を使う方が良いのか? Mac OS 9 からアップグレードする場合はどうか? もしも Jaguar に戻りたくなった場合は? Joe はこうした質問にすべて答えてくれ、他にもたくさんのことを答えてくれる。あなたの Mac に Panther CD を実際に挿入するよりも 前に、あなたの知りたい専門的アドバイスを、Joe は語ってくれるのだ。その次に出るのが“Take Control of Customizing Panther”、著者は TidBITS 編集執筆者の Matt Neuburg だ。Matt は Joe の解説の後を引き継いで、どうすればあなたが Panther 環境をカスタマイズして、あなたの Mac があなたの望み通りの見栄えと動作方法で動くようにできるのか、その最高の方法のいくつかを紹介する。これで、Mac があなたをコントロールするのではなく、あなたが Mac をコントロールできるようになるというものだ。

以上2冊の本は、2003 年 10 月 24 日に Panther がデビューを飾ってから、その後間もなくリリースする予定にしている。<[email protected]> あてにメールを送って頂ければ、低ボリュームのメーリングリストに登録され、新たに本が出版されるたびにそのお知らせがメールで届くようになる。(スパムやワームが登録されてしまうのを避けるため、登録には確認メールの返信をお願いしている。)個々の本の内容について詳しいことは、現在構築中の Take Control ウェブページ(下記)をご覧頂きたい。

<http://www.tidbits.com/takecontrol/>

分量、価格、焦点 -- Take Control の電子本は、雑誌の記事と書籍とのちょうど中間の位置、まさにそのツボを押さえている。雑誌の記事は一般にかなり短く、500 語程度のレビュー記事から 1,500 語程度の特集記事までくらいの範囲だ。雑誌といっても必ずしも値段が安いとは限らない。1冊あたり年間購読ならば $3 程度、町で購入すれば $8 程度だろうか。それに、その1冊の雑誌があなたの必要とする情報を載せているのかどうかは全くわからないのだ。それとは対照的に、一般の書籍は 100 ページ以下の薄さであることはめったにない。これは、製本して販売され、そこに認められるべき価値の要請による必然のことだ。どんなに小さなコンピュータ本でも、$13 から $15 ほどはするだろう。たいていの書籍は 100 ページよりもずっと分厚く、時には 1,000 ページを越えることさえある。たいていの人にとっては、そういう本は長すぎて不要な内容が多すぎ、ちょっとのことを知りたいだけのためにそんな分厚い本にお金を払い、本棚に保管し、いずれは捨てなければならない、そんな無駄をする気にはなれないというのが本音だろう。

私たちが狙うのは、雑誌の記事と書籍とのちょうど中間だ。Take Control の電子本は当面 5,000 語程度の長さ(ほぼ TidBITS の1つの号と同じ程度)から出発し、題材によっては必要に応じてもう少し長くすることもできる、という方針にしている。ただし、Take Control のそれぞれの本は唯1つの題材だけにはっきりと焦点を絞ることにしているので、あなたの知りたいことだけが書いてあるのだ、ということがあらかじめわかっているし、しかも著者も編集者もその道の熟練の人たちばかりなのだ。私が著者たちに念を押していることを言い添えれば、Take Control の電子本は人々が普段知らないことで、Google で3語検索をしても見つからないようなこと、そういう内容を皆さんに語るようなものでなければならない。価格についても触れておくと、発売当初価格はごくシンプルでお買い得な設定、つまりすべて電子本1冊あたり $5、となっている。Take Control のどの電子本も、間違い無く $5 以上の価値があると、自信を持ってお勧めできると思う。

この電子本は、PDF フォーマットで出版することにしている。これは、現時点で PDF が電子本に最も適した機能を提供できると思うからだ。Take Control 電子本はスクリーン上で読むのも見やすい。これは、非常に読みやすいということを第一に考えてレイアウトをデザインしてあるからだ。また、ブックマークや内部リンク、ウェブサイトへのライブのリンクなど、PDF の便利な機能もすべて実装してある。もちろん、この PDF は完璧に検索可能だ。紙に印刷したものを読むのがお好きな方のために、デザインを工夫してインクジェットでもレーザープリンタでも、どちらでもうまく印刷できるようにしてある。さらに、Adobe Reader for Palm OS ソフトウェアを使えば、Take Control PDF を Palm OS ハンドヘルド機で読むこともできる。PDF なんて嫌いだ、とお思いの方も、どうかそれを「たいていの人はいいかげんに PDF ファイルを作っているが、そんな PDF なら嫌いだ」いう考えに切り替えて頂きたいと思う。それに、Panther で登場する新バージョンの Preview を使えば、PDF ファイルを Mac 上で読むのがもっと楽になるはずだから。

<http://www.adobe.com/products/acrobat/readerforpalm.html>

私たちは Take Control の電子本にコピー防止テクノロジーを組み込むつもりはない。そのようなやり方には哲学的に反対したいという事実からだけでなく、私たちは顧客の皆さんを理性ある、正直な人たちとして扱えば、皆さんも私たちを同じ気持ちで扱って下さると、固く信じているからだ。

電子本の形式をとる利点は他にもある。扱っているプログラムがマイナーアップデートで変わった場合や、新たな情報が判明した場合、小さな間違いを修正したい場合など、電子本ならばその内容を簡単にアップデートできることだ。このような小さなアップデートは、その Take Control 本の最初のバージョンを購入した人ならば無料で入手できる。単に新しいものをダウンロードし直すだけでよいのだ。以上、Take Control モデルが読者にとって有利な点をまとめてみると:

著者こそが Take Control -- ここで、ちょっと私たちのプロジェクトの覆いを外して、内部でどんな作業が進行しているのかを皆さんにこっそりとお教えしてみたいと思う。実は、著者たちの目から見た Take Control シリーズというのはこんな具合なのだ:

私たちがこの Take Control シリーズのアイデアに思い至ったのは、これまで何年も書籍や雑誌の出版業界で仕事をしてきた間に積み上げられた経験から来る所が大きい。私自身、自分の本や記事で最高のものはどれかと考えてみれば、それは仕事上の良い関係を保ってきた出版社との間で作ったものだ、と断言できる。そこで、私たちはこの Take Control プロジェクトをデザインする際に初めから著者たちのことを中心に考えながら進めてきた。同時に、最初の時点での著者たちとの話し合いこそが、プロジェクトの細かい点に磨きをかける上で大きな力になってくれた。

著者たちの目から見てこの Take Control 電子本が魅力的なのは、主にそのリスクと報酬との比率の有利さだ。この場合のリスクとは電子本を書くために必要な作業の量に他ならない。けれどもこの分野で経験豊富なプロフェッショナルの著者にとっては、Take Control の電子本を一冊書き上げるのにかかる期間が全部で一・二週間を越えることはないだろう。一方、報酬の面では私たちは収入を著者と均等に分配することにしている。つまり、その本の売り上げから取り引きに必要な諸費用を差し引いた金額を単純に半々に等分して、私たちと著者とで分けることにしたのだ。その諸費用も、私たちの友人の Kagi 社の協力で可能となった新しいバックエンドのアプローチを採用しているので最小限に抑えられている。以上、著者たちにとって有利な点をまとめると:

この結果、私たちはさらに多くの第一線の著者たちにも Take Control 電子本を書いてもらうようにと説き伏せることが可能となり、そのことが巡り巡って読者たちにとっても Take Control の魅力を増していくことになると、私たちは信じている。(Take Control シリーズの著者になってみたいとお思いになりましたか? もしもあなたが著述の経験があり、あなたの分野でエキスパートと呼べるような人ならば、どうぞ私にご連絡下さい。)

あと二・三日お待ち下さい -- 私たちは、是が非でも Panther が店頭に並ぶ前に Take Control について発表をして、Joe の電子本“Take Control of Upgrading to Panther”について今週号の TidBITS で皆さんにお知らせしておきたいと思ったのだ。なぜなら、次週の TidBITS が出るのは Panther が出荷される 2003 年 10 月 24 日よりも後だからだ。ただ、Joe の電子本がリリースできるにはもうあと二・三日ほどかかるので、今のところはどうか皆さん、 <[email protected]> あてにメールを送って Take Control アナウンスメントリストにサインアップして頂き、ご質問があればどうぞ自由に TidBITS Talk にお送り頂きたいと思う。さあ、もう 10 月 24 日まであまり日が無い... あと何時間かずつ、1日が延びてくれたらいいのに...


TidBITS Talk/20-Oct-03 のホットな話題

文: TidBITS Staff <[email protected]>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

メール送信を有料にすればスパムは解消? -- 1メッセージ送信についていくらかの料金を徴収するシステムにすれば、私たちが受け取る歓迎されない商用電子メールの数が減るのではないか? でも、そのようなシステムが正当なメール、例えば無料の週刊ニュースレターのようなものに与える影響は? (メッセージ数 3)

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=2087>

CA スパム法の記事に訂正 -- 先週号でカリフォルニア州のアンチスパム法について書いた記事の著者 Brady Johnson から、記事の内容について訂正を1つと、読者たちから寄せられたいくつかの問題点について掘り下げた考察とが届いた。(メッセージ数 1)

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=2086>

もしも CA の法律が有効でないなら -- スパムに対抗する方策についてのさらなる議論。スパムについての経済的負担者を移行させる方法、実際どのメッセージがスパムなのかを識別する方法など。(メッセージ数 5)

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=2085>


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