FileMaker Pro 7 が先週登場し、この人気あるデータベースアプリケーションが非常に大きな変貌を遂げた。今週の特大号では、William Porter がこの新バージョンをレビューし、どこがそんなに大きな問題なのかを説明する。それから Joe Kissell が、Panther にアップデートした際に一部の人たちが経験した FireWire のデータ喪失問題について再検討する。Matt Neuburg は一連の新リリース、DEVONthink 1.8.1、Affrus 1.0、StyleMaster 3.5、FaceSpan 4.0、それに NoteTaker 1.8 について報告する。また、Adam が最近ラジオ番組でインタビューに登場したこと、iTunes Music Store が 5,000万曲のダウンロード件数を記録したことについてもお伝えする。
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Apple が Mac OS X 10.3.3 をリリース -- 今週号を出そうという時にちょうど間に合った。今日、Apple は最新の無料アップデート、Mac OS X 10.3 をリリースした。バージョン 10.3.3 は多数の改良点を提供している(Apple の Knowledge Base 記事を参照)が、私たちがまず嬉しかったのは Finder ウィンドウや開く・保存のダイアログのサイドバーに表示されるボリュームのリストにネットワークマウントされたボリュームも含まれるようになったことだ。このアップデートにはまた、その他いろいろなネットワーク関係の修正や、AppleTalk のクロス・プラットフォーム互換性の改良、.Mac iDisk との同期化の速度や挙動の改善などが盛り込まれ、Finder、DVD Player、iPhoto、Mail、Address Book と Image Capture への修正が施され、10.3.2 アップデートで起動にかかる時間がスローダウンしてしまった一部のコンピュータについて、それを再びスピードアップしている。Mac OS X 10.3 Panther のオーナーはソフトウェアアップデート経由でアップグレード (58.8 MB) できるし、Apple からスタンドアロンのインストーラをダウンロードすることもできる。[MHA](永田)
<http://docs.info.apple.com/article.html?artnum=25711> (日本語)Mac OS X: Mac OS X 10.3.3 Update について
デボン紀は今日も続く -- 先週号で DEVONthink 1.8 をレビューしたばかりだが、早速次のバージョン 1.8.1 が出た。新機能としてはディスク上の書類をデータベースに読み込まずに索引付けできるようになり、これで私がデータベースのサイズが必要以上に大きくてディスク容量を節約するために元の書類を消去するとデータを失うリスクを冒すことになる、と批判したことに対する一つの解答が出たことになる。また、今回から DEVONthink は対応しているフォーマットのものについてはリンクされたファイルの内容も表示できるようになった。(対応しているのはテキスト、RTF、それに画像だ。)ただ残念なことに、この機能追加に伴って私の気に入っていた機能が削除されてしまった。(以前はリンクされたファイルのデータベース「テキスト」を編集することができた。)また、コメント内容の検索機能も働かなくなり、これらは私の目から見れば一歩後退だ。このアップデートは 2.7 MB のダウンロードで、登録ユーザーは無料でアップデートできる。
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=07575>(日本語)DEVONthink は考える、あなたのために
<http://www.devon-technologies.com/products/devonthink/editions.php>
<http://www.devon-technologies.com/download.php>
それと同時に、DEVONtechnologies は DEVONthink の「弟分」となる DEVONnote も登場させた。こちらはデータベースの基本的な2パネル表示に限定されており、片方のパネルには書類のリストが、もう片方のパネルには現在の書類の内容が表示される。画像や PDF ファイルの表示はできない。しかしながら、こちらは今でもテキストや RTF の編集ができる。(さらに、RTF 書類の内部に画像を含めることもできる。)ディスク上のファイルへのリンクを含めたり、ウェブページを表示したりすることもできる。DEVONnote には DEVONthink のように読み込まずに索引付けする機能は無いし、検索語に近い言葉を探したり、単語リストを表示したり、キーワードのリストを提供したりする高度な検索ツールも装備されていないが、それでも DEVONthink の超高速の基本的検索や、似た書類を探し出してそれに応じて書類をグループ分けする機能は装備されている。こちらは 4 月末までは $15 というお買い得価格だ。(それ以後は $20 となる。)[MAN](永田)
<http://www.devon-technologies.com/products/devonnote.php>
iTunes Music Store が 5,000 万曲を売る -- Apple は今日、iTunes Music Store での販売曲数が 5,000 万曲を超えたと発表した。これは週あたり平均 250 万曲となり、売り上げのほぼ半分がアルバムによるものだったという。今朝の記者会見で、Apple の副社長 Rob Schoeben は「今回私たちが達成したこの数字は単に時間の経過とともに到達したものではない」と述べた。実際、この iTunes Music Store での販売はこれまでいくつものメジャーなイベントと組み合わせて宣伝されてきた。例えば Windows 用の iTunes ソフトウェアの登場やクリスマスセール、iPod mini のデビューや Pepsi との提携キャンペーンなどが挙げられる。
<http://www.apple.com/pr/library/2004/mar/15itunes.html>(日本語)iTunes Music Storeからのダウンロード件数、5,000万曲を超える
Schoeben はまた Green Day というバンドが iTunes を謳ったエクスクルーシブ・シングルをリリースしたことにも触れ、この曲は発表から一日経たないうちにベスト1の座に輝いてその後三週間の間トップ3に留まったと述べた。(Pepsi が iTunes 提携キャンペーンのためにスーパーボウルの間この曲を使ってコマーシャルを流したことが大きかったのだろう。)ラジオ各局も、この曲が通常の形のシングルとして発売されていないにもかかわらず競ってこの曲を取り上げた。[GF](永田)
<http://www.apple.com/itunes/pepsi/ads/>
<http://phobos.apple.com/WebObjects/MZStore.woa/wa/viewAlbum?playlistId=5305681&selectedItemId=5305679>
[訳注: iTunes Music Storeは、現在は米国のみのサービスです。]
FaceSpan の新しい顔 -- 長い間の沈黙を破り、FaceSpan が Mac OS X 用に完全に書き直されたバージョンとなって戻って来た。FaceSpan 4.0 は AppleScript をプログラミング言語とするアプリケーション構築キットだ。あなたは自分でインターフェイスを「描き」、AppleScript を書いてそれをスクリプトとして個々のインターフェイス項目に対応させ、全体をコンパイルすれば、たちまちスタンドアロンのアプリケーションができ上がる。Apple の AppleScript Studio と同様に FaceSpan は Cocoa で書かれており、その構築してできるものも Cocoa アプリケーションで、呼び出すのは Cocoa (Objective-C) メソッド、AppleScriptKit 辞書を使用する。
<http://www.facespan.com/facespan/pagespeed/url/features4.0/>
<http://www.apple.com/applescript/studio/>
もちろん、AppleScript Studio の方には価格が無料だという利点がある。( TidBITS-610 の記事“AppleScript のしっかり者 Studio”を参照。)けれども FaceSpan はサイズも小さく(8 MB 以下)自己完結しており、使い方も簡単だ。あまりにも簡単なので、私は自分の初めてのアプリケーションを、マニュアルを全く読まずに作り上げてしまった。(まあ、これは2つの数字の足し算をするというだけのものだったが、何にでも始めの第一歩というものはあるのだから。)これほど簡単である一つの理由は、インターフェイスが格段に直観的にできているということだ。もう一つの理由は、スクリプトが個々のコントロールごとに結び付けられるため、そのコントロールのコンテナとの間の従属関係をはっきりと示していることだ。例えば、ウィンドウの中のあるボタンがそのウィンドウのスクリプトを「見る」という機能を持つことができる。ちょうど HyperCard と同じような感じだ。オプションとして、FaceSpan は Late Night Software の Script Debugger 3.0.8 と統合させて使うこともできる。これで Apple が提供するものよりも遥かに優れたデバッグ環境ができる。FaceSpan には2つのバージョンがあり、完全バージョンは $200、一方“lite”バージョンは $90 で、コンパイルしたアプリケーションが FaceSpan がインストールされたコンピュータでしか動作できないという制限が付く。旧バージョンのオーナーは $100 でアップグレードできる。[MAN](永田)
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06667> (日本語)AppleScript のしっかり者 Studio
<http://www.latenightsw.com/sd3.0/updateDownload.html>
Affrus 1.0 で Perl が手軽に -- Late Night Software は、Apple が手を抜いた分野を埋めるという伝統を持っているようだ。Mac OS X には AppleScript が含まれているが、Apple 自身の Script Editor は編集環境としてはそれほど素晴しいとは言えないし、それにデバッグは全くできない。そこで出番が来るのが Late Night の Script Debugger で、AppleScript を手軽に編集可能かつデバッグ可能にしてくれる。Late Night Software はさらにこの流れを発展させ、Affrus を発表した。これは、Perl で同じことをしてくれるものだ。(権利関係の責任放棄宣言: 私はこれら双方のプログラムのマニュアルを書きました。)
Perl は Unix で人気のあるスクリプト言語だ。Mac OS X には Perl が含まれているが、Perl スクリプトを手軽に編集したりデバッグしたりできるネイティブなアプリケーションは含まれていない。Affrus ならば、この必要を満たしてくれる。Perl スクリプトをステップで進んだり、設定したブレイクポイントまで走らせたり、ランタイムのコンテクストで数式を計算したり変数値を確認したりできる。シンタックスカラーによってスクリプトの意味が見やすくなる。ポップアップメニューでサブルーチンの定義へと(それが外部モジュールにあっても)飛べる。Affrus の価格は $100 で、Mac OS X 10.2 Jaguar またはそれ以降を必要とする。30 日間有効のデモ版が 4.9 MB のダウンロードで利用できる。[MAN](永田)
<http://www.latenightsw.com/affrus/>
Style Master 3.5 はウェブサイトの魔法使い -- Western Civilisation の Style Master は、ウェブページのカスケード・スタイルシート (CSS) を作成・編集・プレビューするために、私が長年好んで使ってきたアプリケーションだ。( TidBITS-501 の記事“Style Master で高精度 Web ページ”を参照。)このアプリケーションは、難しい言語を易しいインターフェイスの中にカプセル化してくれる。別の言葉で言えば、このアプリケーションが CSS を知っていてくれるのであなたは知っていなくてもよい。(もちろん、あなたがその気ならば直接手で CSS を編集するためにも使える。)そして、今回のバージョン 3.5 では「ウィザード」が導入され、あなたが 本当に 何も CSS を知っていなくてもよくなった。
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05602>(日本語)Style Master で高精度 Web ページ
<http://www.westciv.com/style_master/product_info/>
ウィザードとはダイアログの列だ。一連のダイアログによってあなたを導き、あなたがウェブページをどんな見栄えにしたいか(フォント、マージン、境界、その他)を選択させてくれる。そして、それに見合った CSS と、いくらかの HTML を自動的に生成し、あなたの選んだ各種属性の効果を見せてくれる。さらに、単なる一般的なページレイアウトのレベルを超えて、サイトナビゲーションバーとか「パン粉」(あなたのサイト内でユーザーが現在どこにいるかを示す一連のリンク)などの一般的なページ要素のためのウィザードも含まれている。ウィザードですら難し過ぎるという人のためには、出来合いの CSS ページ・テンプレートも十個以上含まれている。(これらは Creative Commons ライセンスによって提供されている。)CSS の有効性確認機能の付いたページプレビューも今回から内蔵された。この確認機能は Style Master 内で走らせることも、またオンラインで W3C の確認システムを使うこともできる。これで、誰が使っても素晴しい見栄えの、しかも有効な CSS ベースのウェブサイトが、ほんの1分間ほどででき上がる。Style Master は Mac OS X 10.0 以降を要し、価格は $60 だ。既存のオーナーは $40 でアップデートできる。30 日間有効のデモ版が 5.8 MB のダウンロードで利用できる。[MAN] (永田)
<http://creativecommons.org/licenses/by/1.0/>
<http://jigsaw.w3.org/css-validator/>
NoteTaker 1.8 がさらに高音域に到達 -- AquaMinds はその代表製品であるノートブック・アウトライナーのプログラム、NoteTaker のバージョン 1.8 をリリースした。(TidBITS-677 の記事“NoteTaker でテイク・ノオト”を参照。)今回のバージョンでは XML に書き出す機能と、NTML (Note-Taking Markup Language) と呼ばれる新しいマークアップ仕様が加わった。このような書き出しはその場で XSL への変換ができ、そのコンセプトの実証としてキーノートフォーマット (APML) も内蔵されている。その他の新機能は Mac OS X 10.3 Panther のテクノロジーを利用したもので、Word (.doc) フォーマットの読み込み・書き出しが可能になり、また NoteTaker をウェブブラウザとして使うこともできるようになった。検索フィールドにタイプして好きなオンラインエンジンでウェブ検索をかける機能(Safari の“Google”フィールドを強化したようなもの)も装備されている。
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=07157>(日本語)NoteTaker でテイク・ノオト
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=07224> (日本語)NoteTaker 1.5 でもっとテイク・ノオト
ページや他の項目へのリンクの上にマウスをかざしながら Option キーを押すと、フローティングウィンドウが現われてその中にその対象の内容が表示される。つまり、リンクされた内容を実際にそこへ移動せずに読むことができるのだ。(人間は同時に二ヵ所に居ることはできないなんて言ったのは誰だ?)そのリンクがウェブの URL ならば、そのページのタイトルだけが読み込まれて表示される。これで、どんなフォルダでも「ライブラリ」として使うことができるということだ。NoteTaker が、そのフォルダに含まれているすべての NoteTaker 書類のすべてのページを、ドローワまたはダイアログにリストするので、すべてに簡単にアクセスできる。その他のいろいろな既存の機能もそれぞれに改良され強化された。さまざまな速度や能率の改善が図られ、なかなか綺麗な PDF マニュアルの第1原稿も添えられている。NoteTaker 1.8 の価格は $70 で、既存のユーザーは無料でアップグレードできる。30 日間有効のデモ版が 14.7 MB のダウンロードで利用できる。[MAN](永田)
<http://www.aquaminds.com/introducing1_8.jsp>
Adam の今月のラジオ出演 -- 私は最近2つのラジオ番組にゲスト出演した。Wi-Fi のセキュリティ、最近のワームの横行、TidBITS の Web Crossing への移行、Take Control 電子ブック、それに Mac 業界の最近の動向などについて私が語っているのをお聞きになりたい方は、どうぞ 2004 年 3 月 5 日の Gene Steinberg's Mac Night Owl ショウ(この番組の URL を直接 QuickTime Player に読み込ませる必要があるかもしれない。私の出演は番組の後半だ)と 2004 年 3 月 13 日の Scott Sheppard's Inside Mac Radio ショウ(こちらも、私の出演は番組の後半だ)をお聴きあれ。[ACE](永田)
<http://www.macradio.com/friday/>
<http://www.osxfaq.com/radio/03-2004/03-13.html>
文: Joe Kissell <[email protected]>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>
昨年の 10 月に Apple が Mac OS X 10.3 Panther をリリースした時、多くの人たちが(決して全員ではないのだが)FireWire ハードドライブで深刻な問題を経験した。その問題に見舞われた人は、ドライブを接続したままコンピュータを Panther で再起動した後に、そのドライブが全くアクセス不能になってしまっているという事態に直面させられたのだった。もはやそのドライブはどんなオペレーティングシステムでもマウントできず、完全に壊れてしまって、ディスク復旧プログラムでもデータの復旧ができなかった。
この問題が表面化してから程なく、Apple は Oxford 922 ブリッジチップセットを使った FireWire 800 ハードドライブでファームウェアのバージョンが 1.02 またはそれ以前のものに関係する問題点を認めた。該当するドライブの製造元各社は素早くファームウェアのパッチをリリースし、Apple の方も自分の側で問題解決に取り組んだ。その後の Mac OS X アップデート(10.3.1 やそれ以降のもの)では FireWire 800 ドライブについての「信頼性の改善」が盛り込まれ、同時に Apple は該当する機器のファームウェアのアップデートも怠らないようにという推奨を発表した。(TidBITS-704 の記事“Panther FireWire 問題にも多少の救済策あり”と TidBITS-705 の記事“Apple が Panther を 10.3.1 にアップデート”を参照。)
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=07420>(日本語)Panther FireWire 問題にも多少の救済策あり
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=07425> (日本語)Apple が Panther を 10.3.1 にアップデート
FireWire 400 ドライブでのデータ喪失 -- 今述べたことは、たいていの TidBITS 読者の皆さんがよくご存じのことだろう。けれどもこれまで何ヵ月も過ぎたというのに、FireWire 400 ドライブのユーザーたちは、依然として Panther にアップデートしてよいものかどうか、迷いの日々を続けざるを得ない立場にいる。Apple の側も、ハードディスク製造元各社も、FireWire 400 ドライブのデータ喪失問題については公式に何も発表していない。それでも数多くのユーザーたちが、それには少なくとも一人の Take Control 執筆者も含まれているのだが、いくつかの機種の FireWire 400 ドライブで、全く同じ症状を経験している。どうやらその原因は一つではないようで、また問題の起こる頻度も比較的低いようだが、それでもデータの消失が起こってしまえばその深刻さは同じだ。
FireWire 800 での問題は簡単に再現できたが、FireWire 400 の問題は規則性を持たずに起こっているようだ。同じ機種でも、あるマシンでは問題を起こすのにそれと全く同じ構成の別のマシンでは問題が起こらないということもある。一般的に言って、私が読んだ情報から受けた感じでは、複数個の FireWire 機器がチェイン接続されていたりバスパワーのハブで接続されている場合、特にその機器の一つが iSight カメラである場合に、問題の発生率が高くなる傾向があるように思える。(Apple の iSight 1.0.2 アップデートを施せばこれは直るかもしれない。)また、FireWire 400 と 800 の両方をサポートする機器、あるいは FireWire 400 と USB(1.1 または 2.0)をサポートする機器では、FireWire 400 のみをサポートしたドライブよりも問題が起こりやすくなる感じもする。最後に、コンピュータが FireWire 400 のみをサポートし FireWire 800 をサポートしていない場合には問題が起こりにくいように思える。
<http://docs.info.apple.com/article.html?artnum=93705> (日本語) iPod またはその他の FireWire ドライブで最適な性能を得るためには iSight 1.0.2 Update をインストールしてください
"iPod またはその他の FireWire ドライブで最適な性能を得るためには iSight 1.0.2 Update をインストールしてください"
ここまでの説明で、私は「感じ」とか「傾向」とか「思える」とかいう表現をちりばめてきた。残念ながら、大勢の Mac 専門家たちと私は話をしてきたが誰も問題の原因を言い当てることはできなかった。ドライブ製造元各社も膨大な時間を費やしてテストを繰り返してきたが、決定的な結果に至ることはできなかった。一方、何千人ものユーザーが(私を含めて)FireWire 400 ドライブを(それもさまざまな製造元のものを)何の問題も無く使っている。それでも、この問題を決して引き起こしたことのない FireWire 400 機器といえば、私の知る限り iPod 以外に無い。
FireWire 400 と Panther についての対策を推奨 -- 去年の 11 月に出版された私の電子ブック、バージョン 1.1 の“Take Control: Panther へのアップグレード”の中で、私は詳しい情報が判明するまでの間は FireWire 400 ドライブを Panther の下で使うのは避けた方がよい、少なくともコンピュータが起動またはスリープから復帰する時には決してそういうドライブが接続されていないように、と書いた。けれどもこの問題の起こる頻度が比較的低いことを考え、私はもう少し厳しさを和らげた対策を推薦することにした。
もしもあなたが FireWire 400 ドライブを Panther で使いたいならば、ぜひ以下の原則を忘れずに守って頂きたい:
Panther をインストールする前に、そのドライブの内容のすべてを DVD や CD-ROM など、FireWire ハードドライブ以外の何らかのメディアにバックアップしておく。
ドライブ製造元のウェブサイトをチェックして、ファームウェアのアップデートが出ていないか調べる。もし出ていれば、(できれば Panther をインストールする前に)それを適用する。そのアップデートがこの問題に関係があると製造元が発表していなくても、必ずこれは実行する。
その FireWire ドライブ自体に Panther をインストールしようとしているのでなければ、そのドライブはコンピュータから接続を外し、Panther をインストールしてバージョン 10.3.2 かそれ以降にアップデートし終わるまでは接続しない。
複数個の FireWire 機器をチェイン接続することは避ける。特に、チェイン接続された機器のどれかが自前の電源供給を持っていない場合には避ける。あなたのコンピュータに付いているポートの数よりも多くの FireWire 400 機器を持っている場合は、電源付きのハブを使う。あるいは、より良い方法として、もしも PowerBook か Power Mac を使っている場合は、PCI または PCMCIA カードで FireWire バスを増設する。
どうしても FireWire 400 ドライブを使う必要があるのにバックアップができないか、あるいはチェイン接続を避けることができない、という人は、上記の原則に加えて以下も守って頂きたい:
あなたのコンピュータのスイッチを入れる時には、あらかじめ必ずそのドライブの FireWire ケーブルを抜いておく。
システム終了や再起動をする時、あるいはコンピュータをスリープさせる前に、あらかじめ必ずその FireWire ディスク上のすべてのボリュームをアンマウントして、さらにそのドライブの FireWire ケーブルを抜いておく。
もしもあなたのコンピュータが自動的にスリープに入るように設定されている場合は、当面その機能をシステム環境設定の省エネルギー設定画面でオフに切り替えておく。
ドライブのケーブルを繋ぐのは、必ず既に Panther が立ち上がった後の状態でおこなう。今述べた通り、ドライブを使い終わったら必ずディスクをアンマウントして、さらに FireWire ケーブルも抜いておく。
既にハードドライブを壊された人はどうしたら良いか? -- 通常のディスク修復アプリケーションでは、例えばディスクユーティリティや Norton Utilities、TechTool Pro、さらには DiskWarrior でさえも、この問題で壊されたドライブを修理したりデータを回収したりすることはできない。けれども相当数のユーザーから、Prosoft Engineering の Data Rescue X を使って成功したという報告が届いている。もしそれでもうまく行かなければ、残された方法はあなたのドライブをデータ回復サービスの会社に送ることしかないかもしれない。例えば DriveSavers 社も定評があるが、その価格は決して安いものではない。
<http://www.prosoftengineering.com/products/data_rescue.php>
<http://www.drivesavers.com/>
“Take Control: Panther へのアップグレード” -- FireWire 400 ハードドライブのユーザー向けに助言を述べてきたが、これは私が電子ブック“Take Control: Panther へのアップグレード”の最新版で新たに追加した数々のトピックのうちの、たった一つに過ぎない。今回バージョン 1.2 となってページ数も 89 ページに増え、この電子ブックはあなたがどんなバージョンの Mac OS からでも安心して Panther にアップグレードできるようにとステップごとに詳しく説明を展開している。新たに追加した内容の大部分は読者の皆さんから頂いたお問い合わせに直接お答えしたいという動機からのものだった。すでにアップグレードを済ませて Panther を使っておられるあなたにも、トラブルシュートのための詳しいヒントや、よく使うファイルを起動ボリューム以外の場所に保管する方法の助言、それに Panther で大きく変わったためにまごつかされるいくつかの事項にどう対処するかという情報など、いろいろと助けになることもあるはずだ。この電子ブックが、皆さんのお役に立てることがあれば嬉しい。
<http://www.tidbits.com/takecontrol/panther/upgrading.html> (日本語)Take Control of Upgrading to Panther 日本語版 - Panther へのアップグレード
[訳者注: 電子ブック“Take Control: Panther へのアップグレード”のバー ジョン 1.2 は、英語版は既に入手可能ですが日本語版は現在翻訳作業中です。 近日中に日本語版 1.2 も完成予定ですので、もう少しお待ち下さい。]
[編者注: 私たち TidBITS のポリシーとして、この Joe の電子ブックの以前のバージョンを購入して下さった方には無料で今回のアップデートを差し上げている。そのために、購入者全員に先週この新バージョンについてのお知らせを電子メールでお送りした。(読者のほぼ半数の方々が既にアップデートをダウンロードされている。)けれども、その電子メールのうちの相当数が電子メールアドレスの変更とかスパムフィルタなどの理由で返送されてきた。もしも該当される方でまだこの電子メールを受け取っていないという方は、どうか下記の“Ordering Tips”ページの末尾にあるフォームを使って私にご連絡頂きたい。もう一つお知らせしたいことがある。TidBITS では、今回新たに読者紹介キャンペーンを初めた。この Joe のアップデート本の表紙にあるボタンをクリックすると、あなたの友人1名に 10% 割引のクーポンをお送りし、併せてあなたも次回の注文が 10% 割引になる、というものだ。Take Control 電子ブックを多くの方々に知って頂けるよう、あなたのご協力をお願いします! - Tonya]
<http://www.tidbits.com/takecontrol/ordering-tips.html>(日本語)Take Control ご注文の手引き
[Joe Kissell はサンフランシスコ在住のライター、コンサルタント、そして Mac ソフトウェア開発者でもある。]
文: William Porter <[email protected]>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>
訳: 佐藤浩一 <koichis@anet.ne.jp>
FileMaker Pro の過去の数個のバージョンを眺めてみて、私はもちろんただ鼻で笑って見下すようなことはしないが、かと言ってどれをとってもわくわくするような新バージョンというものは一つもなかったと思う。FileMaker Pro 6 で XML のサポートが追加されたのは本当に画期的なことだったが、それがあまりにも画期的過ぎて、その後2年の月日が経っても開発者たちの多くがまだそれをどう使いこなしていいのか見当が付かないでいるというありさまだ。その点以外ではバージョン 6 は単なるメンテナンス版に過ぎない様に感じられ、追加されたものといえば数個の新しいステータス関数と、デジタルカメラから直接写真を読み込める機能、それに検索・置換機能などだけだった。
その結果として、事情通でない多くの人々は、今回リリースされたばかりの FileMaker Pro 7 が、劇的に、深いところで、徹底的に過去のバージョンとは違ったものとなったことに驚かされた - いやいや、それでは言葉が足りない - 心底ショックを受けたのだった。これは、「違った」ものとなった、そして、一足飛びに私の結論を言えば、より良いものとなったのだ。
<http://www.filemaker.com/products/fm_whatsnew.html>(日本語)FileMaker 7 新製品ライン
さて、ここで私が言った「違い」というのは、決して新機能とか機能の変更とかいう話ではない。もちろん、そういう新機能や機能の変更はここで私が紹介しきれないほど多数盛り込まれているが。私の言う「違い」とは、むしろ考え方そのものが一新されたということなのだ。経験を積んだ FileMaker 開発者たちが FileMaker Pro 7 での作業を習い始めようという時、彼らは一様に、まるでステーキ用のナイフを手に食卓につくことに慣れたテキサスの男が突然に、箸を使ってうどんを食するようにと言われたかのような感想を抱くだろう。箸というものは、単に食物を持ち上げるための違った道具というだけではない。これは、別種の料理に対応するように作られているのだ。その背後には、食事というものに対する考え方の根本的な違いがある。FileMaker Pro 7 についても同じことが言える。ただ単にデータベースを別の方法で構築しようというのではない。我々は、根本的に違った種類のデータベースを構築しようとしているのだ。
アップグレードすべきか? せざるべきか? -- FileMaker Pro 7 と FileMaker Developer 7 はともに現在入手可能だ。[訳注: 日本語版については未定のようです。]FileMaker Pro 7 の新規ライセンス価格は $300、FileMaker Pro 2.1 まで遡る過去の各バージョンの FileMaker については 2004 年 9 月 17 日までに限り特別アップグレード価格 $150 がある。2004 年 9 月 17 日が過ぎれば、FileMaker Pro 6 のオーナーだけがアップグレード価格の適用を受けられる。FileMaker Developer 7 の方は $500 で、過去のバージョンのオーナーには $100 のキャッシュバックがある。その他特定の購入者に対する特別価格もあるので、ぜひ FileMaker, Inc. のウェブサイトをチェックすることをお勧めする。
<http://www.filemaker.com/upgrade/>
もしもあなたが既に FileMaker Pro を使っているならば、このアップデートはあなたがいずれしなければならないものとなる。ただ、それをいつ実行するかは、慎重に考えてからする必要がある。とりわけ、あなたがエンドユーザーであるか、あるいはデータベースを利用してホスティングやメンテナンスをする、いわゆる「IT 側」の仕事をしているような場合は、特に慎重になるべきだろう。
急いで明日にもあなたのすべてのコンピュータに FileMaker Pro 7 をインストールしてはいけないという主な理由は、使用目的によって FileMaker Pro 7 が「ハレルヤ!」を高らかに歌ってくれるか、それとも悲鳴を挙げて暴れ回ってくれるかが、すぐには予想できないからだ。これまでの使用法のうちいくつか(おそらくは多くのものがそうなのだろうが)はあまり問題もなく新しい環境に変換できるだろう。けれどもそうでないものもたくさんあるに違いない。私の経験はあまり多くないが、それでもある程度以上の複雑さを持ったものは変換の前にかなりの努力を必要とする傾向にある。その上、変換後も相当の作業が必要かもしれない。FileMaker, Inc. 社ではこの新バージョンへの変換について、多くの情報をウェブサイトに発表している。これは読んでおかなければ、後で泣きを見ることになるだろう。そして、嬉しいことにあなたは片手のケーキを食べながら、もう一方の手の中のケーキは持ち帰ってもよい。つまり、FileMaker, Inc. ではライセンスを調整して、あなたがバージョン 7 に手を染めつつ、同時にバージョン 6 で旧ソリューションを走らせ続けることもできるようにしてくれた。双方のバージョンを同時に走らせても、何の問題もない。
<http://www.filemaker.com/upgrade/migration.html#techbriefs>
<http://www.filemaker.com/legal/licensing_faq_us.html#1>
もしもあなたのソリューションがネットワーク上共有されているならば、その場合は別の方策を考えなければならない。FileMaker Pro 7 データベースを現行の FileMaker Server 5.5 の下で共有することはできず、頼りの FileMaker Server 7 の方はリリースまでにまだあと二・三ヵ月はかかるからだ。
<http://www.filemaker.com/products/fms_home.html>
FileMaker Pro 7 は Mac OS X 10.2.8 またはそれ以降(あるいは Windows 2000/XP)を必要とする。それより古いオペレーティングシステムを使っているあなたは、FileMaker Pro 7 をインストールするよりも前にオペレーティングシステムをアップグレードするか、またはいっそあなたの Mac を買い換えるかしなければならない。
エンドユーザーのための機能は? -- 博物館の管理者、小さな会社のマネージャー、秘書や法律家、セールスマン、医者、エンジニア、教師、会計士、出版者 - こういった人々こそが、FileMaker Pro の主要な顧客層だろう。こういう人々が FileMaker Pro 7 にこぞって手を触れるようになるまでにはまだあと数週間か数ヵ月ほどはかかるだろうが、それでもこういう人々が待ち望んだ改良点もいくつかある。
FileMaker Pro 7 では、同じデータを複数のウィンドウで見ることができる。つまり、同じ検索結果の記録の一覧をフォーム表示とリスト表示の両方で同時に見ることができるし、もちろん全く違った2つの検索結果の記録を両方リスト表示にして見ることもできる。
FileMaker Pro 7 では、あなたが1つの記録を編集し終わった時、変更を保存するかどうか尋ねられるかもしれない。記録にたくさんの変更をしてから気が変わったことが、あなたにもこれまでになかっただろうか? あるいは、間違えて別の記録を編集してしまったなどという経験はないだろうか? FileMaker 7 では、そういう時ただ“Don't Save”をクリックするだけでその記録は以前の状態に戻るのだ。
例えばあなたがある記録を緊急に編集しなければならなかったとして、たまたまその時営業課の Jenkins が先に同じ記録に取り組んでいたとしよう。FileMaker Pro 7 ならば、あなたは Jenkins にインスタントメッセージを送って、その記録は今すぐ閉じてしばらくの間データベースに触るなと命令することができる。上司冥利に尽きるではないか。
予算が厳しくなってきたら、FileMaker Pro に内蔵のインスタントウェブ出版機能が、今回からようやく使い物になる。この機能をオンにして、データベースをあなたの作業グループのイントラネットで共有すればよいのだ。この時あなたの仲間たちがそれぞれのブラウザで目にするものは、FileMaker Pro クライアントにおいて表示されるものとよく似たものになる。このインスタントウェブ出版機能は最大5名までのユーザーに同時に使える。ようやく FileMaker はあの「12 時間の間だけ 10 の異なった IP アドレス」という馬鹿げた規制を撤廃してくれたのだ。
次は果たしてエンドユーザーたちが騒ぎたててきた機能なのかどうか自信がないが、コンテナフィールドの内容としてそれこそ昼飯の残り物以外ならば何でも盛り込めるようになった。写真や QuickTime ムービーだけの話をしているのではない。Word や Excel の書類、PDF、MP3、さらには他の FileMaker Pro データベースまでも、コンテナフィールドに取り込める。そのコンテナフィールドをクリックして、Insert メニューの適切な項目を使うだけでよい。これで、FileMaker Pro には真の意味の書類管理システムとしての能力が備わった。FileMaker Pro 7 データベースに保存されるファイルはそれ自身共有ネットワークドライブ上でユーザーたちにアクセス可能である必要もない。その上、FileMaker のセキュリティ機能を使えばデータベース内に保存されたファイルへのユーザーのアクセスをコントロールすることもできる。
セキュリティと言えば、FileMaker Pro 7 ではセキュリティモデルが完全に一新されている。共有データベースにログインしなければならないエンドユーザーは、アカウント名をパスワードの両方を入力しなければならないようになった。実はここにはとても重要なニュースが隠されているのだが、これが少し専門的過ぎる情報であり、しかもまだ発表するには時期尚早だ。なぜなら、この新しいセキュリティ機能は FileMaker Server 7 がリリースされるまではその力を発揮できないからだ。当面、マネージャーや IT/IS スタッフたち、それに共同作業をしている開発者たちも、これまでに無かったほどシンプルかつ安全な方法で貴重なデータにアクセスできるようになる、とだけ言っておこう。
<http://www.filemaker.com/downloads/pdf/techbrief_security.pdf>
<http://www.filemaker.com/downloads/pdf/whitepaper_fm7_security.pdf>
こんな調子で新機能の紹介をいつまでも続けることもできる。でも正直に言うと、FileMaker Pro 7 での最も革命的な変更は、実は表面上には見えないところに隠れているのだ。確かにステータス領域やいくつかのダイアログに少し見栄えの変わった箇所があるし、Mac OS X ユーザーが再びツールバーを使えるようになったこともあるが、そういう細かいことを除けば、もしもあなたがリレーションを定義したこともなければスクリプトを書いたこともない人ならば、あなたの目には FileMaker Pro 7 は今までと何ら変わったこところのないものに見えるだろう。FileMaker Pro 7 の持つ素晴しい点のすべては結局はエンドユーザーのために利益になることばかりなのだが、そうした利益は皆間接的に伝わるのだ。
では、開発者のための機能は? -- 開発者にとって FileMaker Pro 7 は痛し痒しだ。例えば、新しくなったツールは以前のものと比べて遥かにパワフルである。しかしその一方で、今までの知識がまったく役に立たなくなっているのも事実だ。
新しい機能はたくさんある。例えばフィールドの中身に基づいて計算を行うEvaluate 関数や、計算式の中で計算中に変数を定義・使用できる Let 関数などがそうだ。ボタンはパラメータをスクリプトに渡すことができる。例えば、同じボタンでも別のレイアウトにあれば、そのボタンを呼んでいるスクリプトに現在のレイアウト名を渡すことが可能なため、それぞれの場合で別々の結果を生じさせることができる。FileMaker Developer で作業する場合、定義したユーザー関数をファイルに保存できるので、そのファイルを FileMaker Pro で開いてもそれらの関数を使用することができる。フィールド中にあるテキストは、例えば検索文字をハイライトするために、計算によってフォーマットを適用することができる。C あるいは C++ 形式で計算式にコメントを追加することも可能だ。同様の改善点はさらにある。
しかし、これらの強化策は重要ではあるが、大きなニュースでは無い。FileMaker Pro 7 の大きなニュースは、ファイルの構造と関連性にあるのだ。
一つのファイルに沢山のテーブル -- FileMaker Pro 7 では、データベースファイルとテーブルを区別するようになり、さらに重要なことに、一つのデータベースファイルに複数のテーブルを保存できるようになった。いくつまでか? その数、実に 100 万であり、これは必要以上だろう。しかも、FileMaker は正しく「テーブル」と呼ぶに値する物を持つようになったので、私たちはやっと「データベース」という言葉を普通の意味で使えるようになった。
同じファイルにたくさんのテーブルが入っているということは、スクリプトパラメータやいくつかの新しい関数との組み合わせにより、今までよりもさらに一般的でモジュール構造のスクリプトを書くことが可能になったということを意味している。私の書いた 14 ファイルからなるソリューションでは、14 ファイルそれぞれにある大量のスクリプトは基本的に同じことをしている。リストビューに移動したり、ユーザからの入力によりスクリプト化された検索を実行するなどである。私の FileMaker Pro 6 版のソリューションでは、これらのスクリプトはそれぞれ各ファイルに別個に必要であった。あるファイルのレコード検索スクリプトを改良しようとするとき、ほかの 13 ファイルも同様に修正しないといけないのだ。FileMaker Pro 7 なら、このような重複した努力はほとんど必要無い。
全部を一つのファイルに詰め込む必要は無い。ファイルは別のファイルを参照できるし、別ファイルのテーブルにもアクセスできる。FileMaker Pro 7 は、この利点を利用して既存の複数ファイルソリューションを変換する。古いソリューションのそれぞれ別個のファイルは、新しくテーブルを一つしか含まない別個のファイルに置き替わる。これらのファイルは、小規模なファイル同士の関連からなるグループ内で連係しており、以前とほとんど同じような形で関連している。ほとんどの場合、これは悪くはないのだが、FileMaker Pro の旧バージョンの原点を考えると望ましくない結果となる。もしこれら別個のファイルを統一したいのなら New Millennium 社の FM Robot ユーティリティが自動で行ってくれる。しかし、大概は、余裕がある場合元の古いソリューションを一から再構築することが望まれる。
<http://www.newmillennium.com/Product_Overview.htm?pid=P77YJCFQ66NXQYB0LCXW>
分離モデル -- 別のファイルを参照する時は、そのファイルにあるものすべてを参照する。別の言い方をすれば、もし“My_Data.fp7”というファイルの中に 22 のテーブルがある場合、別の“My_App.fp7”は、それらのテーブルが外部的にではなく内部的に格納されているかのようにアクセスすることができるということだ。「参照」とはどういう意味だろう? これはつまり、My_App.fp7が My_Data.fp7 のテーブル内のフォームや一覧表示で使われるレイアウトを含むことができるということである。現 FileMaker には馴染み深い、制限があるインターフェース要素の「ポータル」としてではなく _本当の_ リストとして一覧、ページ毎にきれいに印刷できるリスト、要約付き合計も表示できるリスト。My_App.fp7 は、それ自身の中にテーブルが一つも入っていなくても、このようなことが可能である。My_Data.fp7 のテーブルをうまく利用して、レイアウトとスクリプトだけしか持たないようにすることも可能だろう。
これがどういうことを意味するかお分かりだろうか? FileMaker Pro 7 なら、データをあるファイルに入れ、レイアウト、スクリプト、値リスト、サマリーなどのプログラムに必要な要素を別のファイルに保存しておくことができるのだ。データ (とデータ構造) を、データの分析や表示を行う場所と別にしておくことは、開発のプロセスへ大幅な透明性をもたらす。これはまた、開発者が遠隔作業しているクライアントに対して多大な利益をもたらしてくれる。6 百万レコードからなるソリューションを更新する場合、IT 担当者はソリューションをオフラインにし、古いフロントエンドファイルを捨てて新しいフロントエンドファイルをセットし、ソリューションをオンラインに戻す。ダウンタイムはせいぜい 5 分だ。
FileMaker の開発者たちは長いこと「分離モデル」のことを話してきたが、あるファイルから別のファイルのデータへアクセス・操作・表示するやりかたに制限があったため、以前は単なる夢物語だった。一覧表示のレポートはポータルから効果的に印刷できないため、普通はデータファイルを開いて行毎に印刷せざるを得なかった (請求書やクラス名簿など)。さらに、レコードをソートしたりそれらをレポートレイアウトで表示をするためには、データファイルの中にスクリプトを含めないといけなかった。
しかし FileMaker Pro 7 なら、論理的に別のファイルのテーブル全てを組み込むことができ、それらをあたかも内部的に格納されているように利用できるため、真に分離するための障害は無くなった。分離モデルへ残されたハードルは主に予期しないフィールドの対処とユーザによるアカウントとパスワードの変更の必要性であるが、多くの懸命な開発者たちはこれらの問題に対処中である。私は、PowerBook にこの分離モデルを完璧に実装したソリューションを持っている。これはいくらか地味だがきちんと動作している。
分離モデルはすべての開発者が導入するものではないだろう。開発者の多くは一つのファイルに何でも入れられることに大喜びして、少なくてもしばらくの間はその他の方法を考えないことだろう。それを受け入れる人でさえ、定期的なバックアップを要するデータサイズが不必要に増えてしまうこともあり、すべてのソリューションで使うことはないだろう。しかし、ファイルサイズに関して言えば、制限は青天井だ。FileMaker Pro データベースファイルは 8 テラバイトまで増やせる (もし保存するのに Xserve RAID を持っていれば)。FileMaker Pro データベースの大きさは増え続けているため、分離モデルの利点はさらに明らかとなり説得力を増すことだろう。
リレーションとは? -- 私は、一つのファイルを別のファイルのテーブルとして含めることのできる機能こそ、FileMaker Pro 7 での最も重大な変更点だと思う。けれども現在までのところ多くの開発者たちが最も興奮している(あるいは混乱している)のは、リレーションというものの定義と管理の方法が変更された点のようだ。
FileMaker Pro 1 は、フラットファイルのデータベースだった。たった1つの種類のレコードしか持たない1つのファイルの中にすべてが収められた。FileMaker Pro 2 になって、1つのファイルが別のファイル内のデータを参照してコピーして来ることが可能になった。これは真のリレーショナルなものとは言えなかったが、私たちはそれでも構わなかった。私たちは、この「参照」という機能をしっかりと腕に抱きしめて、大声で叫び続けながら「参照」と一緒にゴールポストを駆け抜けたのだった。おお、あの懐かしき 1993 年!
バージョン 3 になって、FileMaker Pro はある意味リレーショナルなものになった。少なくとも、バージョン 2 よりはリレーショナルだった。ファイルとファイルの間のデータの共有は自動的(参照の方は手で実行しなければならなかった)で、関係の付いたデータが重複して二度保存されることはなかった(参照の方では二度保存された)し、1つのファイルのデータを直接別の(関係の付いた)ファイルの中で編集することができた。開発者たちはこの新機能に注目し、それを使ってさまざまの驚くべきことをやってのけた。
けれども、これはリレーショナルとは言ってもかなり特異な種類のものであった。まず、関連付けは一方向のみだった。「送り状」を「一覧項目」に関係付けることはできたが、それはただ送り状のファイルから一覧項目を見ることができたというだけの意味で、もしも逆に一覧項目のファイルから送り状のデータ(例えば送り状の日付など)を見ようと思うならば、もう一度「一覧項目」のファイルへ行って二度目の関係付けを定義し直さなければならなかった。例えて言えば結婚式を二回するようなものだ。一度は花婿のため、もう一度は花嫁のために。さらに悪いことには、もしもポータルの中の「製品」リストからある値を「送り状」が一覧項目表示になっているところへ表示しようと思ったら、その一覧項目ファイルに計算用のフィールドを作って、その値を探知してから関連する行の部分へと送り出さなければならなかった。まるで、隣の家以外からは砂糖を借りてきたりできないようなものだ。この古いリレーショナルのモデルはなかなか巧みな小細工だったが、やはりそれは小細工でしかなかった。そして、この状態がほとんど十年間ほども続いたのだった。
それが終わりを告げたのが、先週だった。FileMaker Pro 7 におけるリレーションとは常に双方向のもので、あなたの望むままどんな所にでも結び付けることができる。もしも送り状が一覧項目に、一覧項目が製品に、それぞれ関係していれば、「送り状」ファイルの中のポータルは個々の項目の中の個々の製品それぞれに会社名を表示することもできる。もはや計算用フィールドなど作る必要は全くない。その上、FileMaker Pro 7 では、1つのファイルの中に、それとは別のファイルの中にあるいくつものテーブル同士の関係を定義することさえできる。それらのテーブルが保存されているファイルの中では何の関係もなくても構わない。
さらに、テーブル同士の関係を付けるためのいくつもの新しい方法が導入された。FileMaker Pro 6 やそれ以前では、関係付けの方法は単に1つのファイルの1つのフィールド中のデータと別のファイルの対応したフィールド内のデータとのシンプルな結び付きに過ぎなかった。それが FileMaker Pro 7 では、多様なオペレータと複数のマッチフィールドを伴って関連付けをすることができるようになった。以前は複雑な計算用フィールドを作らないと結果が得られなかったものが、純粋に関連付けだけによって同じ結果が得られるようになったのだ。
FileMaker Pro のバージョン 3 から 6 までで一番まずかったことは、しっかりしたグラフィカルなインターフェイスを持つプログラムでありながら、リレーションを定義する時だけはテキストベースのダイアログを使う必要があったことだ。まったく何てことだろう、Microsoft Access でさえグラフィカルにリレーションを定義しているというのに! 今回の FileMaker Pro 7 では、リレーションの定義にはリレーションシップグラフと呼ばれる特別のダイアログを使うようになった。このグラフ上にさまざまなテーブルを「表示」し、それらの間に線を引くことで関連付けをするのだ。
技術的な立場から言えば、FileMaker Pro におけるリレーションの実装方法はまだまだ独特の風変わりなもの、と言わざるを得ない。以前は、ポータル中のデータをいろいろな方法で並べ替えるために余分のリレーションを定義する必要があった。この点は FileMaker Pro 7 で解消されたが、他のさまざまな理由により、FileMaker Pro 7 でも依然として同じ2つのテーブルを何度も関係付けしなければならないことがよくある。この種のことはリレーショナルデザインの標準的な教科書を読んでも載っていない。それでも、FileMaker Pro 7 では以前のバージョンよりもはるかに標準的な教科書の内容に近づいた事柄が進行している。全体的に見れば、この新しいリレーショナルモデルはパワフルかつ柔軟性もあり、非常にうまく実装されていると言えるだろう。
気に入らないところは? -- 今回のリリースはこれほどに野心的なものだったのだから、いくつかの欠点が FileMaker Pro 7 にあってもそれほど驚くにはあたらないだろう。
Sort Records と Export Records のダイアログはこれまで全くリサイズ不可能だったが、今回からリサイズ可能になった。ただし、それはダイアログの右側のみの話だ。それぞれのダイアログの左側にあるフィールドのリストは、依然として狭すぎて長いフィールド名を全部表示することができない。ただ、フィールドを一つ左側のリストから右側のリストへと移動させれば、右側でその名前を見ることで正しいフィールドを移動させたのかどうかを知ることはできる。
Windows 用の FileMaker Pro 7 には、テキスト文字がぼやける(アンチエイリアスの不具合)という重大な問題があるようだ。これは Mac OS での開発者も心しなければならない問題だろう。なぜなら、Windows ユーザーが FileMaker の市場の大きな部分を占めているからだ。
先ほど述べたパワフルな新装備の Let 関数は、それが定義された計算のみにスコープが限定された変数をいくつか作成する。例えば1つのスクリプトから別のスクリプトへと変数値を受け渡すためには、やはりグローバルフィールドを疑似変数として使う必要がある。
とても残念なことだが、FileMaker Pro 7 でも、 _依然として_ ユーザーがフィールドを脱出した時に自動的にスクリプトを走らせることができない。実はこれこそ、私が新バージョンに関して抱いた最大の落胆要素の一つだ。
結論 -- FileMaker Pro は、その使いやすさこそが特徴だと一般に見られている。けれども、これまではいくらひいき目に見てもそれはたかだか半分の真実でしかなかった。FileMaker Pro バージョン 6 は素晴しい製品であり、今でも素晴しさは消えていない。けれどもギターの演奏でも言えるように、FileMaker Pro が易しいのは初心者にとってだけだ。熟練の FileMaker 開発者にとっては、FileMaker とはその機能の限界を補正するために長い長い時間を費やさなければならないものであった。言葉を変えて言えば、FileMaker Pro のみに頼っている限り、自分の能力や知識が伸びていけばいくほど、ある時点からは得られるものが少なくなり、実際何をするにも困難度が増していくばかりで、表面上は難しく見える別の開発システムを使った方が実は易しい、というのがこれまでの実態だった。正直、このことに私はこれまで何度もイライラさせられた。私たち開発者の多くは、それでも努力さえすればそれだけの結果は得られる、と FileMaker Pro を使い続けた。けれどもそれは「易しい」などとはとても言えなかった。
エンドユーザーや初心の開発者にとっては、FileMaker Pro 7 は以前に比べて易しくもなければ難しくなってもいない、というところだろう。けれども経験を積んだ開発者にとっては、ちょっとそのどちらでもある、というところだろう。多くのタスクが、短期的な意味では開発者にとって難しくなった。なぜなら、このプログラムは以前の何倍も複雑なものになったからだ。けれども長い目で見れば開発は実際易しくなった、と私は自信を持って言える。なぜなら、以前のバージョンであったような、ある時点からは得られるものが少なくなる、ということがなくなったからだ。その代わりに、その時点で私たちはもっと効率的な、もっと知的な、そしてもっと実り多い方法で、より興味深いソリューションを作り出すことができるのだ。それこそ、私たちにとってもクライアントたちにとっても、わくわくするような可能性ではないだろうか。
[William Porter は以前古典が専門の大学教授だったが、1998 年に大学での定職を捨てて「他の分野」、例えばデータベースアプリケーションの開発、の興味を追い求めることに決めた。現在彼は FileMaker Solutions Alliance の Associate Member であり、No Starch Press から出版予定の FileMaker Pro 7 についての解説書を著述中だ。]
PayBITS: FileMaker Pro 7 をレビューした Will の記事は、あなたに有用なデータを提供しましたか? ならば、PayBITS で少額のお金を送ってみませんか?
<https://www.paypal.com/xclick/business=wp%40polytrope.com>
PayBITS の説明 <http://www.tidbits.com/tb-issues/lang/jp/paybits-jp.html>
文: TidBITS Staff <[email protected]>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>
FileMaker Pro 7 のリリース -- この新しいデータベースソフトウェアの新機能は? 過去のバージョンとどう違う? 読者たちが議論する。(メッセージ数 6)
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=2190>
SQL データベースのフロントエンド -- FileMaker Pro 7 の新機能の議論は、パワフルな(けれど通常難しい)SQL データベースのためのグラフィカルなフロントエンドはあったかなかったか、という議論に変貌した。(メッセージ数 4)
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=2191>
同期化ソフトウェア? -- この種の Mac 用ユーティリティがこれほど多数存在しているという事実は、効果的な同期化というものがいかに思ったよりも難しいか、ということを実証している。読者たちがさらに多くの方法を紹介し、それぞれの経験を語る。(メッセージ数 20)
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=2181>
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, , 日本語版最終更新:2005年 12月 26日 月曜日, S. HOSOKAWA