TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#723/29-Mar-04

グニャグニャした感触の Apple Pro Keyboard に飽き飽きしているのでは? Adam が Matias の Tactile Pro Keyboard をレビューする。これは Apple の今はなきあの偉大な Extended Keyboard のフィーリングとレスポンスに匹敵すべき初めてのキーボードだというのが彼の意見だ。Adam はまた iChat AV の紛らわしいステータスについても検討し、チャットに思わぬ人が紛れ込んで来るのを予防するための提言を述べる。その他のニュースとしては、iChat AV 2.1、iPhoto 4.0.1、それに Timbuktu Pro 7.0.1 のリリースを報告し、Macintosh 用の FrameMaker が開発中止になったことをお伝えする。

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MailBITS/29-Mar-04

iChat AV 2.1 が Windows とのビデオ会議を追加 -- Windows を使う友人との間でビデオやオーディオのチャットをしてみたいと考えていた人は、先週のリリースこそが待ちに待ったものだったろう。iChat AV 2.1 では、Windows 用の AOL Instant Messenger 5.5 を使っている友人とあなたの間でビデオ会議ができるようになった。今回の無料アップデートに際して Apple はこれ以外の変更点を発表していないが、Mac OS X 10.3 かそれ以降を少なくとも 600 MHz の PowerPC G3 プロセッサ以上の Mac で走らせていることが必要になる。(Mac OS X 10.2 Jaguar のユーザーは iChat AV 2.0 に留まる必要があり、こちらの価格は $30 だ。)今回のアップデートは 4.3 MB のダウンロードで、Software Update 経由または別途ダウンロードで入手できる。[ACE](永田)

<http://www.apple.com/ichat/>(日本語)アップル - iChat AV
<http://www.apple.com/support/downloads/ichatav.html> (日本語)アップル - iChat AV - ダウンロード

Adobe が Macintosh 用 FrameMaker を開発中止 -- 予期できないことでもなかったが、Adobe Systems はハイエンドのパブリッシング・プログラムである FrameMaker の Macintosh 版を 2004 年 4 月 21 日をもって終了すると発表した。Mac 版 FrameMaker 7.1 のサポートは 2005 年 4 月 21 日まで続けられる。Adobe は結局 FrameMaker を Mac OS X 用にアップデートすることはしなかったので、長年使ってきたユーザーたちはやむなく Mac OS X の Classic 環境で使わざるを得なかった。今回の発表により Macintosh での FrameMaker ユーザーたちに残された道はどれもあまり嬉しくないものばかりだ。Adobe が今後も FrameMaker の開発を続ける予定の Windows(あるいは Solaris)に移行するか、あるいは InDesign CS に移行するかだが、この InDesign CS には長い書類の処理や XML の読み込み・書き出しなど、FrameMaker にはあったいくつかの機能が欠けている。[ACE](永田)

<http://maccentral.macworld.com/news/2004/03/23/framemaker/>
<http://www.adobe.com/products/framemaker/main.html>

iPhoto 4.0.1 がバグを修正 -- Apple が iPhoto 4.0.1 をリリースした。これは同社の写真管理プログラムの、重要なバグ修正アップデートだ。いつも通り、Apple のリリースノートは具体的な点については簡潔にしか触れていないが、iPhoto 4.0.1 ではパフォーマンスの改善、サムネイルのレンダリングの改良、それに多数のバグ修正が施されていて Apple はこれで安定性が向上したとしている。私が確認できた修正点を挙げると Trash アルバムのサイズが報告されるようになり、画像編集ウィンドウのコンテクストメニューにある「セピア」コマンドがグレイ表示になっていたのが直り、Originals フォルダが正しくディスクに焼けるようになり、フィルムロールを修正しても全体のソート順が勝手に変わってしまうことがなくなった。まだ残っているバグもある。例えば編集した写真を複製してもその名前に“copy”が付かないバグはまだ直っていない。新機能といえば、私が iPhoto 4 Visual QuickStart Guide の最終原稿のチェックをしながら気付いた範囲では、複数モニタを使っている場合にスライドショウが iPhoto ウィンドウがあるのと同じモニタでプレイされるようになったことだけだ。

<http://www.apple.com/ilife/iphoto/>(日本語)アップル - iLife - iPhoto
<http://www.apple.com/support/downloads/iphoto_readme.html>

改良されたサムネイル・レンダリング機能を享受するためには、iPhoto に既存のサムネイルをアップグレードさせなければならない。これは非常に時間のかかる作業で、私の 6,100 枚の写真を処理するのに1時間もかかった。そのことを除けば、iPhoto 4.0.1 は私のテストでも安定性の向上が感じられた。ただ、Apple のディスカッション・ボードで報告されたところでは、何人かのユーザーはアプリケーションの起動時に問題があったりスライドショウでトランジション効果が失われたりといったことを経験しているようだ。見たところ、これらの問題は iPhoto アプリケーションバンドルのアクセス権に関係しているようだ。いつも通りのトラブルシューティング作業(ディスクユーティリティでアクセス権を修正、~/Library/Preferences フォルダから com.apple.iphoto.plist ファイルを削除、iPhoto を再インストール、DiskWarrior を走らせてディレクトリの問題を修正、など)で直るかもしれない。もしそれでも直らなければ、下記の最初の URL でユーザーが報告している修正を試してみるとよいだろう。iPhoto 4.0.1 は Software Update 経由で 4 MB のダウンロードとして、または独立のダウンロードでも入手できる。[ACE](永田)

<http://discussions.info.apple.com/[email protected]@.6890942e/39>
<http://www.apple.com/support/downloads/iphoto.html>

Timbuktu Pro 7.0.1 が Tab の問題を修正 -- Netopia は先週 Timbuktu Pro 7.0.1 をリリースした。これは、少数のマイナーな修正と、1つの大きな修正とを含んでいる。バージョン 7.0 のユーザーは、フルサイズでない遠隔操作セッションにおいて Tab キーを押すと、Timbuktu メニューの横に沿ったボタンが選択されてしまうことがあった。もう一度タイプ可能になるようにするには一旦フルスクリーンモードにしてから戻す必要があった。

<http://www.netopia.com/en-us/support/technotes/software/tb2mac/latestnews.html#7.0.1>

この Tab キーに関する問題は必ずしも Netopia が悪いのではない。Mac OS X 10.3 Panther では、アクセシビリティとカスタマイズの機能が新設されて、そのうち1つ、「キーボードとマウス」環境設定パネルに隠された1つの設定項目、「キーボードショートカット」タブの「フルキーボードアクセスをオンにする」という項目が犯人だった。今回の 7.0.1 アップデートでは、プログラム内に限りこの設定を無視するようにして、このコンフリクトが回避された。Timbuktu Pro 7.0.1 は 4.6 MB のダウンロードが無料でできる。(インストーラをダウンロードする際にバージョン 7.0 のシリアル番号とアクティベーション・コードとが必要だ。)[GF](永田)

<http://www.netopia.com/support/technotes/software/tb2mac/tb2macupgrade7_01.html>

DealBITS 抽選: SmileOnMyMac の当選者 -- 先週の DealBITS 抽選への応募者の中から無作為に選ばれたのが次の方たちだ。おめでとう! 2cdesign.org の Caleb Clauset、csi.com の Maarten Festen、それに sympatico.ca の Nick Avery の3名が、SmileOnMyMac の PDFpen 1.2 を受け取ることになった。今回抽選から漏れた人もどうかがっかりしないで欲しい。SmileOnMyMac はすべての TidBITS の読者に特別割引として PDFpen を $5 値下げし、通常価格の $29.95 を $24.95 に下げて提供している。この値引きは下記の二番目のリンク経由で 2004 年 4 月 9 日迄有効である。今回応募してくれた 885 人の人に感謝したい。また次回の DealBITS もどうぞお楽しみに。[ACE](永田)

<http://www.smileonmymac.com/pdfpen/>
<http://www.smileonmymac.com/pdfpen/dealbits.html>
<http://www.tidbits.com/dealbits/smileonmymac.html>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=07593>(日本語)DealBITS 抽選: SmileOnMyMac 製 PDFpen


iChat のステータスについての考察

文: Adam C. Engst <[email protected]>
訳: 佐藤浩一 <koichis@anet.ne.jp>
訳: 亀岡孝仁 <takkameoka@earthlink.net>

Apple が Mac OS X に iChat をバンドルしたおかげで、私はインスタントメッセージプログラムというものを使うことになった。他のインスタントメッセージプログラムでは考えつかなかったことだ。違いは簡単。皆が持っているからである。知らない間に、私が連絡を取りたいと思う人のほとんどが iChat をインストールしていたのだ。iChat のおかげで、Carlson、Geoff Duncan、そして私自身のあいだで次号の様々なドラフトのやりとりをする月曜日の TidBITS 編集プロセスは、以前ほど電話をかける必要が無くなった。完全に電話が不要となったわけではなく、実際 iChat は多くの場合電話をかけて大丈夫かどうか確かめるだけに使うことが多い。タイプするのに疲れてチャットが電話での会話に発展することも多々ある。このような場合は大抵、相手に電話をかけて iChatに“ring”とタイプして相手に知らせている (最初の一、二回は変な感じだったが、今は習慣になっている。たとえば、最近全然関係ない人が“ring”とタイプして Jeff Carlson を iChat を始めたとき、Jeff はそれを私だと勘違いした位だ)。

ところで、どうして iChat AV のボイス、あるいはビデオチャットを使わないのかと不思議に思うかもしれない。理由は単に Apple がレビュー用に送ってきた iSight カメラがある日を境に正常に動作しなくなり、使うたびにどこが悪いのか調べるのに疲れてしまったからだ。この問題は Apple の PR 部門に挙げたがすっかり忘れ去られてしまったようで、元通りに直す時間も取れていない。いずれそのうち何とかなるだろうか。

このユーティリティが優れていることは否定できないが、私は iChat に関して愛憎の入り交じった感情を持っており、深く考えた結果、これはこのプログラムの使用上の問題ではなく、異なるグループの人に自分の状態を限られた方法でしか知らせることができないということに起因していることに気が付いたのだ。

現在の状況 -- ここで少し復習してみたい。iChat は AOL Instant Messenger (iChat が利用しているネットワーク) から受け継いでいる 4 種類のステータス、「オフライン」、「不在」、「チャット可能」、そして「待機中」を持っている。あなたが「オフライン」の時、誰もあなたを見たりあなたとチャットを始めたりすることができず、さらに困ったことに、あなたも他の誰かを見られないし誰かとチャットを始めることもできない。これとは逆に「不在」、「チャット可能」、そして「待機中」の場合、ほかのメンバーはあなたが見えるしチャットを開始できる。一つの例外を除き、「不在」と「チャット可能」の違いは純粋に見た目だけだ (赤の四角と緑の丸、あるいはそれを見たくなければ赤と緑の丸だ)。実はこの例外が大きい。「チャット可能」の場合でも、5 あるいは 10 分キーボードやマウスに触らなければ iChat はオプションの設定によりステータスを「待機中」へ変更してしまうのだ (もし自分が待機中であるかどうかほかのメンバーが確認できないようにしている場合、代わりに iChat は一定時間経つとステータスを 「不在」に変える)。「不在」と「チャット可能」どちらもメッセージの編集が可能だ。「待機中」の場合、iChat はコンピュータが何分間使われていないのかだけを表示する。

カスタムメッセージは、基本ステータスを細かく指定できるため重要であるが、これは iChat ユーザーに対してだけ有効だ。ほかのインスタントメッセージプログラムのユーザーには見えないからである。とはいえ、あなたのメッセージが見えているメンバーには、「不在」の“邪魔しないで”と「チャット可能」に“電子メールを読んでいる”には大きな違いがある。もちろん、iChatStatusなどのプログラムを使えば、代わりに様々な自動メッセージを表示させることができるが、これは面白いとは言えあなたの状態を管理するのに役立たない。

<http://ittpoi.com/>

これら 4 つのステータスは、数々のプライバシー設定により補強されている。オンライン状態であることを、すべての人が、あるいはメンバーリストに登録されている人や特定の人だけが確認できるように設定できる (これはつまりチャットを開始することもできるということだ)。すべての人あるいは特定の人をブロックすることも可能である。残念ながら、これらのプライバシーオプションは、iChat で作成したグループに対して適用することができない。これができれば非常に有り難いのだが。もしほかのメンバーに自分が怠けているのを見られたくない場合、あるいはあなたの Mac を使っている人がいない (つまり盗難に対し無防備である) ことを大々的に宣伝することに懸念を持っているなら、自分が待機中であるかどうか、ほかのメンバーが確認できないようにするオプションがある。

ステータスを理解する -- ステータスを知らせるためのこのような方法が、ティーンエイジャーやあるいはチャットを社交上の目的で使う人たちに通用するかどうかは分からない。しかしながら、少なくとも私にとってこれは使用に耐えないと確信を持って言える。このやり方は、私が状態を知らせたいと思う方法とまったく合わないのだ。

私の人生では現在、Mac を使わずに放っておくことは無くなった。いつも文章を書いたり編集しているわけではないとしても (これが私の仕事だ。あのいまいましい週刊 TidBITS の締め切りのやつめ!)、私の Eudora の受信メールボックスは今までに無く常に増え続けている (現在 1,200 通になろうとしている)。そのため、コンピュータに向かっているときはいつも作業をしているので、私のステータスは誰にどれだけ邪魔されても構わないかによって設定したいのだ。もしメールを読んでいるだけであれば、友人からの iChat による割り込みは大して邪魔にならないし、メールを読みながらチャットをすることさえしばしばこなしている。しかし、文章を書いたり編集している時は、同じ作業をしている同僚以外からの割り込みは絶対避けたい。例えば、月曜日は最終記事の作成と編集をほとんど一日中行っているので、割り込みは TidBITS のスタッフと現在編集を行っている外部から送られてきた記事の著者だけにして欲しい。

作業するやり方は人それぞれだし、ほかの人の考えを知るために私の始めた一組の TidBITS Talk スレッドにおいて多くの人がそのやり方を共有した。しかし、これらの議論やいつものチャット相手と話した結果明らかになったのは、現在の「オフライン」「不在」「チャット可能」「待機中」というステータスはかなり混乱を招いているということだ。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=2112+2195>

初心者にとって、「オフライン」は iChat の状態 (理由はなんであれもしそれが動作していなければ、あなたは「オフライン」だ) と、割り込みをして欲しくない作業状態の両方を反映している。残念ながら、自分で「オフライン」状態にした場合、メンバーリストに登録してあるメンバーのステータスが見えなくなってしまう。これは面倒だ。なぜなら、例えば私はよく電話をする前に相手の iChat のステータスをチェックするが、これはオンラインにしないとできない。iChat はあなたのステータスの変化を他のメンバーに知らせることができるため、接続しただけで望まないチャットを始める羽目になることがある。

「不在」と「チャット可能」の場合はさらに問題だ。第一に、「不在」は実際にあなたが Mac の前にいないということを意味していないし、メッセージをブロックしたりチャットを開始しようとしたメンバーに対して設定しておいたメッセージを返したりもしない (あなたが電話を取れない場所にいるときに留守電がするように)。そして、メンバーが本当に Mac から離れているかどうかを知るための方法である「待機中」状態は、あなたが「不在」状態であると表示されない。つまり、「チャット可能」状態は結局、あなたが実際に Mac から離れていてなおかつ「待機中」状態である以外はチャットが可能だということになる。そして「不在」はあなたが Mac から離れているかもしれないが、チャットをすることも可能かもしれないということになる。一体どうなっているのだろう?

状態機能の改善 -- 少し改良を加えれば iChat の状態機能はずっと意味を成すものになりインスタントメッセージを使う人のやり方にも適合するように出来るはずである。以下が私の提言:

Available/Busy に対するこの考え方は大事であると私は思う。なぜならば、あなたのチャットしてもいいと言う意思を形はともかくとして表すことが出来るからである。あなたのスクリーン名を知っている人なら誰とでも喜んでチャットしたいと言う時には、皆に対応できることを知らせることが出来る。チャットには応じてもいいが見知らぬ人からのメッセージは避けたいと言う時は、あなたの Buddy List にだけ限定するのは意味のあることである。あるプロジェクトをグループで或いは誰かと一生懸命やっている最中は、その他の人は誰も邪魔出来ないように出来る。もし何かに集中していて邪魔をしてくる人に対しては無礼でも構わないのであれば、他の人とコンタクトすることは出来るようにしておきながら全ての邪魔を排除することも出来る。

そしてまたこの自動応答機能も大事である。なぜならば、どうして入ってくるメッセージを受け付けないのか、忙しいためなのか或いは実際にコンピュータから離れているためなのか、説明してくれるからである。

状態の自動変更 -- 状態を管理する難しさのもう一つの側面は、チャットする気が変わった時 iChat の方もアップデートするのをどうしても忘れてしまうことである。例えば、私のカスタムメッセージを変更するのを忘れてしまったりすると、まだ昼食終わらないのかという不機嫌なコメントを貰う羽目に陥ってしまったりする。

iChatStatus の様なプログラムは、iTunes から流れてくる曲や外の気温のようなものに合わせてあなたのメッセージを変更することは出来るが、iChatStatus が提供するスクリプトにより今使っているアプリケーションを報告する、Salling Clicker と Bluetooth フォーンと連携してあなたとコンピュータとの近さを推測すること以外は、殆どのものが他の人に対する真のあなたの都合の度合いを表す助けにはならない。あなたがどれほど忙しいのか推測し(多分、訓練モード付きで)その活動状況や何をしているかに応じてカスタムメッセージを作り出してくれるようなソフトウェアにお目にかかりたいと思う。

Parliant の PhoneValet の様な他のソフトウェアは、あなたが電話で話している時は Away 状態を On the Phone 状態に切り替えてくれる;これは大変重宝である。また、一度に一つ以上のチャットをするのを嫌う人の声;iChatに、現在進行形のチャット以外の人はブロック出来るオプションを付けて欲しい。iChat は今でも audio/video チャットをする時はすでにこれを実行している。それは同時に一つのチャットしか出来ないからである。従って、この考えを文字チャットの方にまで延長するのはそれほど大変なことには思えないのである。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=07428> (日本語)PhoneValet 1.1 が連携を改善

技術的可能性 -- 残念なことには、これらの変更がどの程度実現性があるのか私にはわからない。カスタム Offline メッセージ、Away のためのタイマー、それに自動応答機能といったものは、iChat だけが関係するものなので比較的易しいのではないかと思える。(例えば、自動応答オプションを持つインスタントメッセージクライアントは他にすでに存在する。) しかしながら、iChat は Apple がコントロールしない AIM ネットワーク上で運用されているので、真の意味での Away や Available 状態を対象外の人に対しては Busyに切り替えるようなことは出来ないのかもしれない。そうではあっても、私の希望は、現在の Available と Away モードでのカスタムメッセージをこの様な状態を反映したものにすることを最低限 iChat ユーザー間でだけでも出来るように Apple がしてくれることである。AIM クライアントを使用している他の人達とやり取りしている時に物事がうまくいかなくなることは予想されるが、自動応答機能が少なくとも混乱を回避する助けになってくれるであろう。

実現性がどれぐらいかは別にして、私は Apple がこれらの進言に少なくとも耳を傾け iChat の状態機能に、あまり物事を複雑にしないで、有用な改良を加えてくれることを期待したい。それまでの間、我々に出来ることは適切なカスタムメッセージを設定し、他の人の都合の意思を尊重することである。


荘厳なるアルプスにキーボードの帝王が輝く

文: Adam C. Engst <[email protected]>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

昔々、ADB がこの世に満ち溢れていた時代に、Apple はかつてこの地上に存在したキーボードのうちで最高のものの一つを作り出した。それが、Apple Extended Keyboard だ。これは大きくてしっかりしたキーボードで、個々のキーの下にそれぞれ独立のメカニカルスイッチを置くことで、素晴しいキータッチの感触を実現していた。けれども良いキーボードというものはお金がかかる。やがて Apple は、Mac 用の最高のキーボードを提供しようという願いよりも、キーボードにかかるお金をケチって Mac 一台あたりの費用を抑えようという願いの方を優先させるようになった。Alps 製のメカニカルキースイッチを使うのをやめたことにより、Apple のキーボードは軟弱なタッチに一変し、古き良きキーボードにこだわる私たちは、密かに文句をつぶやきながら古いキーボードにしがみついたのだった。

でも、当時の状況が悪く見えていたとしても、その後の状況はさらに悪化の一途を辿るばかりだった。(PowerBook や iBook のキーボードでの Fn の位置など、私が大嫌いなことをここでくどくど繰り返すつもりはないが。)Apple が iMac を導入した時、それに付属していたキーボードはちょっと可愛い小型のもので、キーのレイアウトは標準から程遠く、キータッチの感触は最悪、おまけにあのさらに最悪な丸いマウスまで付いていた。ほとんど誰もがこのキーボードが大嫌いだった。(公明正大に言えば、実際これが好きだという人は私は一人も知らないのだが、世の中は広いのだし、Apple はたくさんの iMac を売ったのだから、きっと誰か好きな人はいたに違いないだろうと思う。)さらに悪いことには iMac は ADB を使うのを止めて USB に切り替えてしまっていたので、古い ADB キーボードを使うのは難しかった。USB-to-ADB のアダプタはキーボードでは時々調子が悪くなりがちだったし、ことに普通でない状況、例えば Mac の電源を切る時、スリープの時、あるいはクラッシュした時などうまく働いてくれなかった。

これまで体験したことのないような深みまで落ちた結果、Apple はようやく自らを悪臭立つ泥沼から抜け出させようとして、フルサイズで標準レイアウト、キータッチもなかなか良い Apple Pro Keyboard を持ち出してきた。この Apple Pro Keyboard は元の iMac キーボードよりは格段に良い物だったので、誰もが安堵の吐息を漏らし、ほんの少数の人たちを除けば皆が Apple Pro Keyboard でさえも Apple Extended Keyboard に比べれば全く比べ物にもならないという事実をすっかり忘れてしまったようだった。

探索の旅路 -- 私も、TidBITS スタッフの他のメンバーたちも、普段たくさんタイプをする。私たちのキーボードは一日中ひっきりなしに使われており、私たちは記事を書いたり編集したり、電子メールを作ったり返信したり、その他あらゆることをキーボードでこなしている。実際、私たちが使わないキーボードの目的は何かと言えば、それは高速で正確な反応が要求されるようなタイプのゲームのようなものだけだろう。

過去数年にわたって、私たちは数々のキーボードを試してきた。注意して頂きたいのは私たちが決して何か高級な機能、例えば分割キーボードとか、多数の追加特殊キーが付いているものとかを望んでいる訳ではないということだ。私たちが望むのはただ本物の Macintosh キーボード(Windows と Alt キーではなく Command と Option のキーが付いているもの)で、Apple Extended Keyboard と基本的に同等レベルのもの、というだけのことだった。

Macally、Kensington、MicroConnectors なども含め、私たちが試したキーボードのどれもが、諸手を挙げて歓迎できるようなものではなかった。そしてさらに問題だったのは、多くのキーボードが何か重要なことで欠格になってしまったことだ。(誰が、あんな N キーなんて欲しいものか!)

Tactile Pro 登場 -- 私たちのところには毎日たくさんのプレスリリースが押し寄せているが、私たち内部のスタッフ用メーリングリストでそのどれかを取り上げて議論することはあまりない。けれども、Matias 製の Tactile Pro Keyboard の最初のプレスリリースが届いて「“Apple 製キーボードの最高峰”が Matias の手によって再現された」と謳い文句を掲げ、この Tactile Pro Keyboard は元の Apple Extended Keyboard と同じメカニカルスイッチのテクノロジーを使用、と説明されているのを読んだ時は、誰が最初にこれを試してみるかでほとんどオンライン戦争勃発寸前という状態になった。そこで穏やかで理性的なる声で一言、私は自分がまず最初に試してみよう、と宣言して争いを収めたのだった。Tom Petty の言葉にある通り、王様であるというのはいいもんだ。

<http://tactilepro.com/>

表面上は、この Tactile Pro Keyboard は Apple Pro Keyboard と非常によく似ている。(少なくとも私の Power Mac G4 に付属のものとは似ている。)透明プラスチックのシェルの表面が白いプラスチックで覆われ、キーも不透明な白色だ。全体の幅(Caps Lock キーから数字キーパッドの端まで)は Apple Pro Keyboard よりもほんの少し狭いが、奥行き(スペースバーからファンクションキー上端まで)はほんの少し長い。Apple Pro Keyboard と同様、固定式のケーブルと上方両側に2個の USB ポートが付いている。キーボード全体を傾斜させたい場合は底面から2個の脚を引き出して使える。(そうすると指が手首よりも高い位置に来ることになり、不自然な手のポジションになるので私としてはお勧めできないが。)

キーボード配置は標準のものだ。(Fn とか何とかの飾りのようなキーはどこにもない!)全体的に Apple Pro Keyboard とほとんど同じだ。ただ、わずかながら違いはある。最上列のキー(Escape キー、ファンクションキー、音量キーと Eject キー)は Apple Pro Keyboard と比べてもう少し他のキーとの間隔が開いている。間違ってこれらのキーを押してしまう恐れが減るので、これは良いことだ。Tactile Pro Keyboard にはファンクションキーの上方に電源キーも付いている。Mac 本体の電源キーが使いにくい所にある場合や、Apple 製のモニタ(マシン用の電源スイッチ付き)を使っていない場合にはこれが便利だ。ただし、これは Matias の責任ではないが、この電源キーは必要なハードウェアサポートを提供できる旧型の Mac でしか電源スイッチとして使えない。Apple が現在出している Mac はもはや USB 経由の信号で電源を入れる機能はサポートしていないのだ。(もちろん、Mac の電源が入っている時にこの電源キーを使って再起動 / スリープ / システム終了のダイアログを出すことはできる。)

一目見て、この Tactile Pro Keyboard のキートップはどこかが普通と違って見える。よく観察すると、Matias はこれまで誰もしなかったのだけれど考えてみればごく自然なことを実行してくれたのだ、ということが分かる。それは、個々のキーの上にそれぞれの Option- および Shift-Option- 文字が合わせて印刷されているのだ。これは素晴しいことだと思う。角度記号を出したい時にいちいちソフトウェアユーティリティを出してキーを確認したりする必要もない。これなら、ただキーボードの表面をちらっと見るだけで、角度記号は Shift-Option-8 だと分かるのだ。これまで私は、シングルとダブルの丸い引用符を出すのがどのキーだったか、どうしても覚えられなかったものだが、これからは一目で分かる。(Option- または Shift-Option を押しながら角括弧キーを押せばよいのだ。)

<http://tactilepro.com/viewer/tp_mainpic.html>

欠点を言えば、この Tactile Pro Keyboard の Option キーは Apple Pro Keyboard に比べてもちょっと小さすぎる。正しく押すのがかなり難しくなるのだ。Apple Pro Keyboard の Caps Lock キーはちょっと特殊なキートップになっていて、A キーとはっきり分離された感じがして良かったが、この Tactile Pro Keyboard にはその特殊なキートップは無く、間違って Caps Lock を押してしまうことが以前よりも目立って多くなった。特殊キーといえば、音量キーと Eject キーについては Mac OS X 10.2 Jaguar ユーザーは専用のドライバをインストールする必要があり、インストーラの入った CD-ROM が付属している。

けれども、この Tactile Pro Keyboard が本当に真価を発揮するのはその感触の良さだ。キーのタッチは際立って「クリック感」があり、ずっとメカニカルな感じがする。キーを押した時の押し込み距離も少し深くなっている。その結果として、Apple Pro Keyboard のような腰砕け感は全く無い。反面、タイプ時のノイズはかなり大きくなった。私が高速でタイプをすると、この Tactile Pro Keyboard はほとんどガタガタ騒音を立て続けるというありさまだ。でも、私としては全然気にならないと自信を持って言える。最初は新しいフィーリングに慣れるまで少し時間が掛かったが、1日もしないうちに、とても素晴しい感触だと思えるようになった。

もちろん、この騒音を気に入らないという人がいるのは間違いないだろう。Apple Pro Keyboard やその他のゴム膜スイッチを使っているキーボードに比べれば、Tactile Pro Keyboard はずっとやかましいキーボードと言える。キーボードの静粛性が重要になるような状況も多々あるだろう。けれどもそれ以外の多くの人たちにとっては、キーボードで何が重要かといえばタイプした時のフィーリングが第一だろう。実は、Matias が最初私に送ってくれた Tactile Pro Keyboard は数週間使って A キーの調子が悪くなり、短い期間その代わりに Apple Pro Keyboard に戻らなければならないことになった。Edgar Matias は私に、Alps 製のキースイッチは通常何年ももつのだが、時には故障するものもあって、その場合はごく早い時期に故障が出るものだ、と言ってくれた。(だからこそ Matias は 5 年間の「ほぼ無条件の」保証を付けているのだ。)

さて、その時 Apple Pro Keyboard に戻してみて、本当に実感できた。私のタイプの正確度は急激に低下し、長い間タイプし続けると私の手が痛むようになったのだ。あと一・二週間も使い続ければまた順応できたかもしれないが、交換品の Tactile Pro Keyboard が届いてそれに戻した時には大きな安心感を感じたものだ。

他の人がどう感じるかは私には分からないが、もしもあなたがキーボードにこだわる人なら、あるいは Apple 製のキーボードの品質に満足できないなら、ぜひ一度は Tactile Pro Keyboard を試してみて損はないだろう。Matias からの直接購入ならば価格は $100 プラス送料 $20 だが、たぶん一般の業者、例えば TidBITS スポンサーの Small Dog Electronics(ここでの価格は $80 プラス送料)のようなところから買う方がお買い得だろう。

アルプスを護ろう -- ところで、この話にはちょっとおもしろい余談がある。これは、私がキーボードをレビューしながら Edgar Matias と何度か通信しているうちに明らかになってきたものだ。Tactile Pro Keyboard が世に出てから間もなく、このメカニカル・キースイッチを製造している Alps 社から、同社がこのキースイッチの製造を中止する予定だという発表があった。

たいていのベンダーは廉価版のキースイッチに切り替えることに決めたが、Edgar だけは、送られてきたサンプルのキーボードを試してみて、これはひどいと思った。タッチは軽すぎて、キートップにちょっと触れただけでその文字をタイプしてしまうのを防ぐのが難しい。軽いタッチは良いことだと思われがちだが、実はタイプしていない時も指をそっとキーの上に乗せておくのは普通のことで、スイッチに適度の抵抗力が与えられていないと、思ってもいない文字を誤ってタイプしてしまうはめになる。軽すぎるタッチのキーボードでは、たいていの人が指をキーボードのすぐ上に離してキープするようになってしまうが、実はこの無意識の動作が、一日の仕事の終わりに積もり積もった疲労を倍増させるのだ。それほどまでにタッチが軽いにもかかわらず、このサンプルのキーボードは Tactile Pro Keyboard よりもさらに騒音が大きかった。言うまでもなく、彼はこの状況にショックを受けた。一つには自分の Tactile Pro Keyboard の未来が心配になったし、もう一つにはあの有名な Alps のキースイッチが永遠に消えてしまうことに耐えられなかったのだ。一旦製造を中止すれば、Alps はこのタイプのキースイッチを製造するのに使う道具類をしまい込まざるを得ないだろうし、そうなれば使われずメンテナンスも受けられずに倉庫に積み上げられた道具類は劣化して、結局二度と製造の再開は無くなってしまうだろうから。

けれども幸運なことに、Edgar は台湾にある Alps の工場を説得して、百万個のキースイッチを購入することを約束し、必要な道具類も使用可能な状態に保てるようにして貰えた。一台の Tactile Pro Keyboard には 110 個のキーが(従っておそらく同数のキースイッチが)付いているので、Matias は約束の百万個のキースイッチを消化するために 9,000 台あまりのキーボードを売らなければならないことになった。かなりの自信だな、と私は思ったものだが、Tactile Pro Keyboard を試してみた後では、現実的な数字だと私にもわかった。このキーボードは価格も Apple Pro Keyboard よりほんの少し高いだけ、すべての Option- と Shift-Option- 文字がそれぞれのキートップに書いてあり、少なくとも私にとっては素晴しく感触が良くて、そのお陰で私はより速く、より正確に、そしてより快適にタイプできる。手仕事の好みは人それぞれだが、もしもあなたが私のようにキーボードが生き死ににかかわるほど大事なものと考えているのなら、これはもう絶対に Matias の Tactile Pro Keyboard を試してみるべきだ。


TidBITS Talk/29-Mar-04 のホットな話題

文: TidBITS Staff <[email protected]>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

ワープロ書類を比較するツールで DocuComp に代わるもの -- 2つの書類を比較するユーティリティと言えば DocuComp があったが、現在 DocuComp は Windows のみになってしまった。書類比較ツールとしては、他にどんなものがあるのだろうか? (メッセージ数 6)

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=2199>

iChat ビデオチャット -- Windows AIM ユーザーで、ビデオカメラを持っていないのにメンバーリストにカメラのアイコン付きで現われる人がいる。(メッセージ数 2)

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=2197>

デジタル写真 -- デジタル写真をプリントしてくれるオンラインサービスはどれが良いか、読者たちがこの話題を再検討する。(価格も全般的に以前より下がってきているようだ!)(メッセージ数 2)

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=2196>


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