TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#730/17-May-04

この前 Mac OS X のトロイの木馬について記事を載せたのはほんの数週間前だったが、今回 Adam は、悪意ある新しいトロイの木馬が出回っているのが発見されたことをお伝えする。Adam のもう1つの記事では、われらプロフェッショナルなライターたちのためにデザインされた仮想上のワードプロセッサ、WriteRight に加えるべき機能の希望リストを並べてみる。また、今週号ではウェブページを再訪するのに便利な HistoryHound が St. Clair Software から新リリースされたこと、.Mac に電子メールサポートが追加されたこと、それから disclabel 2.0 と、それに“Take Control of Customizing Panther”の日本語翻訳版がリリースされたこともお伝えする。

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MailBITS/17-May-04

Apple が .Mac サービス用に1対1電子メールサポートを開始 -- 2004 年 5 月 3 日、Apple は .Mac サービス関係の質問を受け付けるために直接電子メールのサポートを開始した。従来は討論フォーラム上の会話のみでサポートが提供されていたので、これは一つの方向転換と言える。これまでは、.Mac 電子メールや .Mac での iSync の使用その他で何か問題があった場合、返事や助言がもらえるための唯一の方法は、Apple の .Mac 用討論ボードに質問を投稿することだけだった。しかしこれからの Apple は、.Mac 電子メール、iDisk、HomePage、Backup、Virex、それから iPhoto や iSync など様々なアプリケーションを .Mac と共に使うことなどに関する直接サポートも提供してくれる。Apple はまたアカウントに関する質問用のリンクも提供している。

<http://www.apple.com/support/dotmac/>(日本語) アップル - サポート - .Mac

[訳注: 当面これは米国向けのサービスのようです。]

それぞれのセクションの冒頭には、FAQ(よくある質問とその答)や、そのサービスの使用についてのデモ・ムービーへのリンクなどがリストされている。下の方へスクロールすればフォームが用意されていて、24 時間以内にできるだけ早く返事をすると約束している。この直接電子メールサービスは、私たちがいつも感じ続けてきた .Mac への不満の1つが、ようやく解消されたことを示している。年額 $100 で、Apple も安価な ISP の標準レベルにまでは達してきたようだ。[GF](永田)

HistoryHound が過去をつかみ取る -- リアクションが遅いって、別に悪いことじゃない! 私は何年も前からずっと、たいていのウェブブラウザは以前に訪れた場所に戻ることにかけてはものの役に立たないと、文句を言い続けてきた。ずっと遡って 1996 年には Web Ninja という名前の MacUser ユーティリティがあって、これはあなたが以前に訪れたすべてのページの URL を把握して、あとでそれらを手軽に検索して再訪できるようにしてくれた。そして今年の 1 月に Omni Group が OmniWeb 5 のプレ・リリース版を公開してくれるまでは、この Web Ninja のパワーに太刀打ちできるものは何もなかったと言っていいだろう。OmniWeb 5 において、初めて Omni Group がこの扉を開いてさらに水準を引き上げ、あなたが過去に訪れたページの URL だけでなく、全テキストまでも索引付けしてくれるようになった。私は OmniWeb 5 のベータテストに参加しており、自分の履歴を毎日検索するとまでは行かないにしても、この機能には一度となく助けられたことがある。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=00892> (日本語) Web 忍者の襲撃
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=07511>(日本語) Macworld Expo SF 2004 で見つけた珠玉たち
<http://www.omnigroup.com/applications/omniweb/5/>

では、他のブラウザ、例えば Safari や Internet Explorer のようなものではどうなのだろうか? そこで助けになるのが、St. Clair Software の Jon Gotow が出してくれた HistoryHound だ。これは $20 のユーティリティで、Safari や Internet Explorer の既存の履歴とブックマークを読み込み、ウェブ上のそれらのサイトを訪れたり、それらのサイトの内容を索引付けしたり、その索引を検索したりできるようにする。検索するには、キーボードショートカットを押す。(これはどんなアプリケーションにいても働く。)それから検索すべき用語をタイプして、ランク付きでリストされる検索結果の中からページを一つ選ぶ。すると、そのページが即座にあなたのデフォルトのブラウザで開かれるのだ。これは素晴しい、とてもエレガントなインターフェイスだ。私は自分がまだ Safari をメインに使っているいくつかの Mac で、まだそれほど長期間使ったわけではないが、これが今後手放せないツールの一つになるのだろうという予感がしている。(使われているアイコンは Cartoon Dogs の Tony Bush の手になるもので、これも素晴しい。)何週間か前、あるいは何ヵ月か前に訪れたことのあるサイトが見つからないで困ったら、ぜひ HistoryHound を使って見つけてみるとよい。HistoryHound 1.0.2 の無料の 30 日間有効デモ版は 1.6 MB のダウンロードで入手可能で、これは Mac OS X 10.3 またはそれ以降を必要とする。[ACE](永田)

<http://www.stclairsoft.com/HistoryHound/>
<http://www.cartoon-dogs.com/>

GarageBand 1.1 リリースされる -- Apple はちょっとガレージを整理整頓し直して、今日 GarageBand 1.1 をリリースした。今回の新バージョンでは、多数の問題点が修正され、トラック単位のエコー設定を追加、保護付きでない AAC オーディオのサポートも追加されている。また、今回のアップデートで GarageBand のデフォルトのディスク場所以外に保存されたループライブラリもサポートできるようになり、また GarageBand の楽曲を別のコンピュータに移した場合の問題点の修正や、音符単位・領域単位でのタイミングの修正、Propellerhead Software の ReWire(アプリケーション間、例えば GarageBand とサードパーティのソフトウェアインストゥルメントとの間でオーディオデータをリアルタイムで転送するメカニズムを提供する)のサポートも追加された。GarageBand 1.1 ではトラックをドラッグして並べ替えられる機能も加わった。今回のアップデートは 37.5 MB のダウンロードで、Software Update または Apple のウェブサイトから入手できる。[JLC](永田)

<http://www.apple.com/ilife/garageband/>(日本語) アップル - iLife - GarageBand
<http://www.propellerheads.se/>
<http://www.apple.com/support/downloads/garageband.html>(日本語) ソフトウェアアップデート

disclabel 2.0 リリースされる -- SmileOnMyMac から disclabel のアップデートが出た。これは、CD や DVD のラベルを作ったり、CD ケースの差し込みを作ったりできる、なかなか洒落たアプリケーションだ。disclabel 2.0 での新機能としては、グラフィックス処理の改善、例えばフォアグラウンド・バックグラウンドのレイヤーや、オブジェクトの分配・配置、マスク効果とソフトフォーカス効果、それに複数の画像を組み合わせてモンタージュを作る機能などがある。画像がトラック単位で読み込めるようになり、ケースの差し込みやカバー、小冊子などを普通の紙に印刷したり、PDF、TIFF、または JPEG として書き出したりもできるようになった。disclabel 2.0 の価格は $30 で、以前のバージョンを 2004 年 1 月 1 日以降に購入した人には無料のアップデート、それ以外のアップデートは $10 となる。6 MB のダウンロードだ。[ACE](永田)

<http://www.smileonmymac.com/disclabel/>

“Take Control of Customizing Panther”日本語版出来 -- もう今では、Mac OS X 10.3 Panther にアップデートしようと心を決めたあなたなら、既にそのインストールを終えておられることだろう。でも、あなたは Panther の実力を最大限に引き出しておられるだろうか? そのいくつもの新機能、例えば Expose や、Finder ウィンドウのサイドバー、Font Book ユーティリティなどは、使ったことがおありだろうか? Matt Neuburg 著の電子ブック、“Take Control of Customizing Panther”(Panther のカスタマイズ)日本語翻訳版では、これらの数々の機能を説明、キーボードショートカットのカスタマイズ方法を解説、代表的なサードパーティのカスタマイズ・ユーティリティを概観、インターネット・ヘルパーアプリケーションの設定方法も説明しており、システム環境設定と Finder の環境設定を使ってできる基本的なカスタマイズをリストアップした長いセクションもある。

この度“Take Control of Customizing Panther”(Panther のカスタマイズ)日本語翻訳版が完成し、下記のリンクから価格 7.5 ドルで発売となった。(注文用ページが英語であることはお許し願いたい。契約しているウェブ商店が未だ日本語ローカライズに対応していないので。)また、この Matt の電子ブックの英語版を既に購入して頂いた日本語読者の方には、日本語版を無料で提供させて頂きたい。お持ちの“Take Control of Customizing Panther"”英語版の表紙にある Check for Updates ボタンをクリックし、表示されたページのダウンロードリンクをクリックすれば、日本語版がダウンロードできる。この無料ダウンロードリンクは 2004 年 6 月 1 日までのみ有効とさせて頂く。英語版は最新版の Version 1.2 でないと表紙に Check for Updates ボタンがないので、まだ更新をお済ませでない方は、4 月 10 日付けでお届けしたメールの記述に従い、まず英語版を 1.2 にアップグレードして頂きたい。もしも何か不都合があれば、Tonya <tc-comments@tidbits.com>. まで(英語の電子メールでお願いします)お問い合わせ下さい。[ACE](細川、永田)

<http://www.tidbits.com/TakeControl/jp/panther/customizing.html>


本物の Mac OS X トロイの木馬出現

文: Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
訳: 亀岡孝仁 <takkameoka@earthlink.net>

MP3 ファイルの様に見えるトロイの木馬 (TidBITS-726 の "Mac OS X のトロージャン技術:達人の手土産には注意せよ" 参照) を作り出すのに使える技術についての Intego によるプレスリリースに関する大騒ぎから数週間して、本物の Mac OS X Trojan horse (トロイの木馬) が出たことが Macworld UK に対して報告された。この Trojan horse は、Microsoft Word 2004 の Web インストーラを装っている。これまでに解明されている技術は使って _いない_ が、明らかに悪質である。もしこれを信じ込んで走らせてしまったら、全 Home フォルダが消去されてしまう。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=07636>(日本語) Mac OS X のトロージャン技術: 達人の手土産には注意せよ
<http://www.macworld.co.uk/news/top_news_item.cfm?NewsID=8664>

多少混乱が見られる記事の中で Macworld UK は、この問題を報告してきた読者はこれを"LimeWire から" ダウンロードしたと言っている。(LimeWire は実際のところ Gnutella ファイルシェアリングネットワークのクライアントソフトウェアである。) この読者は、コモンセンスというものは理想とされる程には皆に共有されていないこともあって、どうもこのファイルは次期バージョンの Microsoft Word の公開ベータに違いないと思い込んでしまったらしい。それで彼はこれをダウンロードし、そのアイコンも "本物で信用出来そうに" 見えたとしてダブルクリックしてしまった。その結果、彼の Home フォルダは消されてしまったのを知ることとなった。

Gnutella ネットワークについて Acquisition (とりわけ粗野な LimeWire に較べれば真にエレガントな Macintosh プログラムで検索に良く使っていた) を使った検索では何も引っかからなかった。Gnutella ネットワークでのこの様な共有されるファイルの IP 番号はいつでも入手できるので、この Gnutella ネットワークに種蒔きをした人が誰であれ、それ以上の検出を避けるためこの Trojan horse を取り除いてしまっていて、更に検出は容易なのでこの様な悪質なプログラムを敢えてシェアしようとするような愚か者はいなかったということであろう。

<http://www.acquisitionx.com/>
<http://www.limewire.com/>

Macworld UK は最初は使われたテクニックを暴くのは控えたのだが、Intego はどうしようもない相変わらずの良識の欠如を暴露し、どうやったら同様の Trojan horse を作り出せるかを説明した情報へのリンクを含んだプレスリリースを直ちに発行した。Macworld UK はこれを受けて Intego の情報を再公開し、更に多くの他のサイトも同調した。この様なテクニックを公開するのは、どの様にして作られたのかを知っていれば、将来のこの様な Trojan horses に気がつきそれを避ける事が出来やすくなるであろうということなのであろう。でもそれは尤もらしいだけで、そもそも Trojan horse はその人がダブルクリックする所までだませなければ意味がないのである;それがどの言語で書かれているかを知ること自体に何の意味もない。そのテクニックを公開するというのは単にその様な Trojan horse を作り出せる人の数 (この場合すでにかなり大勢である可能性が高い) を増やすだけの意味しかない。皮相的な見方をする人達はすでに次の様な見方をしている:この前の Trojan 技術の Intego による公開が今回のものの生成のきっかけになったかもしれないと。もし Trojan horse の報告がこの後も続くとしたら、それはそのやり方を公開した Intego とその他の人のせいである。

明らかにこのテクニックはきわめて単純である;この Trojan horse は人々の騙され易さと貪欲さにつけこんで起動させようとするものである (理屈を言えば、これは進行中のデジタルダーウィン主義の片割れとも言える)。この Trojan は Mac OS X の弱点を狙ったものではないことは知っておく価値があるかもしれない;これは単にファイルを除去するプログラムに錯覚を起こさせる名前を付けたものであり、そして、どの様なプラットフォーム上でも変装して名前を変えた悪質なプログラムを防ぐ確実な方法はない。この Trojan を検出するのにはいかなるウィルス対策ソフトウェアも要らないし、自己増殖することもない。信用できないソースからアプリケーションをダウンロードしない限り、なんら心配する必要ないし、常にきちんとバックアップを取っていれば万全である。


WriteRight: ライターのためのワードプロセッサ

文: Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>
訳: 古川敬章 <tac@mac.com>
訳: 貞広正則 <msadahiro@peccom.com>

このタイトルを一目見ただけで希望に胸を高鳴らせた方がおられたら、謹んでお詫びさせて頂きたい。WriteRight というものは現存していないし、私自身何千もの記事とかなりの冊数の本を書き上げてきた、プロのライターとしての経験から言わせて頂くと、ライターのためにデザインされたワードプロセッサは、私の見るところ Macintosh 世界には一つも無いと言って過言ではないと思う。他のプラットフォームについても、私はあらゆるプラットフォームのワードプロセッサを完璧に知っているわけではないが、状況に大して変わりはないと思う。今私が話しているのは、セメスターごとに何個かのレポートをやっつけ仕事で書くだけでよい学生たちや、時折の現状報告を書くだけでよい経営者たちの話ではない。私の念頭にあるのは、本物のライターたち、一日中ワードプロセッサに向かって、テキストを創り出し、それを良い文章に練り上げ、それからそのテキストを次の段階へと仕立て上げて、ウェブページにしたり、プレスリリースや、雑誌の記事、書物、その他の形として出版する、そういう仕事を生業とする人々のことだ。このような、最もプロフェッショナルな、最も堪能なるユーザー層に直接ターゲットを絞ったワードプロセッサが、これまで一つも作られてこなかったというのは、昔から私にとって驚き以外の何物でもない。これではまるで、ハリウッドの映画監督に Final Cut Pro の代わりに iMovie を使って映画を作れと言うようなものではないか。

過去・現在 -- 最初に、まずちょっと歴史を。初めに何があったかと言えば、それは MacWrite だった。WYSIWYG (what you see is what you get) という概念を、ワードプロセッサの世界に導入したのがこの MacWrite だ。Macintosh の初期の時代には他にもいくつか優秀なワードプロセッサがあった。例えばあの軽快さが嬉しかった WriteNow や、FullWrite (その 2 MB というメモリ量要求が、当時はショッキングな大きさに見えたものだ)、それにあと2つ、今日まで生き存えているものもある。Microsoft Word と Nisus Writer だ。その他には現在はもう廃れてしまったプログラムを基盤としていた BeagleWorks や GreatWorks のようなワードプロセッサもあった。それから、ClarisWorks (現在の名前は AppleWorks) や、いつも負け犬の立場に甘んじてきた RagTime も、依然として吠え声を聞かせてくれている。

<http://www.apple.com/appleworks/>(日本語) アップル - AppleWorks
<http://www.comgrafix.com/ragtime_5.html>

生き残ってきたプログラムたちに加えて、最近では小ぶりのワードプロセッサに対する需要も復活して来ているようだ。Nisus Writer Express (これは、あのパワフルかつ奇癖ある Nisus Writer Classic との類似が偶然の産物に過ぎないとも言えるような、完全に新しい別のプログラムだ) や、Mariner Software の Mariner Write、それにイスラエルの RedleX 社の興味深い製品、Mellel などがその代表格だろう。また、あの有名な BBEdit の血統を引くテキストエディタ、Bare Bones Software の TextWrangler も忘れてはならない。でも残念なことに、これらのワードプロセッサを私は「小ぶりの」と形容したが、これらは皆その言葉通り本当に小さい。これらはそれぞれにキラリと光る特長を持っており、それぞれに良いところはあるが、他の著者たちと共同で著述し、何人もの編集者たちと一緒に作業し、プロフェッショナルな出版物のためのテキストを作り出していかねばならない本物のライターたちにとっては、やはり役に立つような代物ではないのだ。

<http://www.nisus.com/express/>(日本語)ナイサス・ライター・エクスプレス
<http://www.marinersoftware.com/>
<http://www.redlers.com/>
<http://www.barebones.com/products/textwrangler/>

Microsoft Word は今も変わらず業界の人喰い怪物であり、遠慮無く言ってしまうと、巨大でバグだらけの Word 6.0 に対抗して Nisus Writer Classic ならばそれに取って代われるのではないかと思えた数年間だけを例外とすれば、Macintosh において Word を超えてパワフルかつ高機能のワードプロセッサが出現したことはなかった。それと同時に、Word ほどライターたちの悪態を一身に集めたものもなかったろう。その機能の数々は山よりも高く海よりも深く積み重なり、何かとても便利なことを出来るのだということは判っていても、往々にしてその使い方があまりにも混乱させられるのでとても実際問題として使えたものではない、ということがよくあった。例えば、Word の Compare Documents 機能で実際に役立つ結果が得られたのを私は経験したことがない。人によってはそういう幸運に恵まれたこともあるのかもしれないし、新バージョンになれば劇的に改良されて使えるものになるのではないかという希望は私としても常に持ち続けているのだが、結局今のところ、私自身 Word との間に一歩離れた距離を保つ以上の関係を持つことはあり得ないだろうという感じで落ち着いている。

<http://www.microsoft.com/mac/products/wordx/wordx.aspx>
<http://www.nisus.com/NisusWriter/>(日本語)Nisus Writer6.5J

というわけで皆さん、これから私と一緒に、ファンタジーの旅に出かけましょう。ライターのための究極のワードプロセッサにあるべき機能とは何か、私の意見(私が普段協力して働いている数多くのライターたちや編集者たちの意見にも裏打ちされたもの)での理想の姿を描き、それを仮に WriteRight と名付けてみよう。もちろん、そのようなプログラムにはワードプロセッサの基本的機能がすべて確固として実装されていなければならない。ここでは、特にライターのために重要な機能や、多くのライターたちから強烈な要望の声を聞いたことがある機能などに焦点を絞って話を進めていこう。そういう会話はいつでも「これが Word に出来さえしたら...」という言葉から始まるもので、そこを足掛りに夢の機能リストへと踏み込んで行こう。

キーボードとマウスでのナビゲーション -- ワードプロセッサを使ってみてそこにキーボードナビゲーションがフルに提供されていなかったり、テキスト選択機能が完璧に装備されていなかったりするのを見る度に、私は驚きの念を禁じ得ない。ライターというものは長時間ワードプロセッサで仕事をするので、キーボードやマウスのショートカットはただ単に便利な機能だというだけでなく本質的に必要なものなのだ。ここでそのすべてを列挙する訳にもいかないが、例えばキーボードのみを使って書類を文字単位、単語単位、文単位、段落単位、あるいは書類単位で移動でき、Shift キーを押すかどうかで選択範囲の移動と切り替えられなくてはならない。またダブルクリックは単語の選択、3クリックは文の選択、4クリックは段落の選択をすべきだ。

その関連で特に便利なのがキーボードショートカットのカスタマイズだ。私にとっては(そして多くのプログラムがそうなのだが)Option-Delete といえば単語を消去するのが当然だ。けれどもなぜか、プログラムによってはこの機能が Command-Delete に割り当てられている。これはとても耐えられない。そこで私はいくら手間を掛けてもそういう普通でないプログラムを標準化しようと努力する。そのデフォルトの挙動を変更するために iKey や QuicKeys といったマクロユーティリティを使うのも厭わない。もちろんそのプログラム内部でキーボードのカスタマイズができればより良いことだ。

オートセーブ -- もう一つ、多くのワードプロセッサに欠落していて驚かされるのが、適切なオートセーブの能力だ。最も単純な形では、オートセーブは数分間経過するごとにファイルをディスクに書き込んでくれるだけだ。これで、もし何か間違いが起こっても、最後の数分間の作業以上のものを失うことはない。Nisus Writer Classic はこの点で最良のコントロールの組み合わせを提供してくれた。保存が実行されるまでの基準として、経過時間とキー入力数の両方を指定することができたからだ。例えば、私は 5 分間ごとにオートセーブが働くようにしていても、かなり速くタイプできる私が 500 キーを打てばオートセーブされるようにできるわけだ。私の知る限り、ここまでのレベルの設定ができるワードプロセッサは他に無かったが、WriteRight ならばそうあるべきだ。

Nisus Writer Express には、私が当初あまり関心を持たなかったけれども次第にその有難みがわかってきた新機能がある。それが、Document Manager だ。単純に言えば、Nisus Writer Express はあなたに個々のファイルを別々に保存させるのでなく、新規の書類を自動的に Document Manager の中に保存されるようにする。時には、私はただ単純に文章を書き始めたいと思うことがある。そんな時私はファイルに名前を付けてどこか特定の場所に置かなければならないのを煩わしく思う。(オートセーブ機能は、書類があらかじめどこかに保存されていなければ動作しないのだから始末が悪い。)

保存と保存の間にどんなアクションがおこなわれたのかを、別途のログにすべて列記して、ユーザーが再起動後にその間の編集作業を再現できるようにする機能は、一見うまい機能に見えるかもしれない。私も、それがうまく実装されてさえいれば本当に良い機能だろうと思う。例えば、Word はクラッシュからの再起動後、自動的にあなたの書類のコピーを開いてくれる。でもそれは単なるコピーに過ぎない。だからあなたはその内容を実際に読んで、元のファイルには無くてそのコピーには残っている、何か有用なデータが無いかどうか、自分の手で確かめなければならない。そして、もしもそういう有用なデータが見つかったならば、その回復されたテキスト部分だけをコピーして元のファイルに貼り付けるべきか、それともコピーの方を保存して Finder で元のファイルを置き換えるべきか、迷うところだ。心理的に言って、ユーザー自身はたった今データ喪失の危機に直面したばかりなのだから、このような重要な判断を迫られるのには最悪のタイミングだと言わざるを得ない。これとは対照的に、Adobe InDesign にはなかなか良い列記ログの機能がある。私の経験では、InDesign 書類で保存しない作業があるのにクラッシュした場合でも、たいていの場合 InDesign は単純に私の書類に未保存の編集作業も盛り込んだ状態のものを開いてくれた。もちろん、私が iPhoto Visual QuickStart Guide を執筆中、クラッシュ後に InDesign があっけらかんとして「この書類は壊れていて開けません」と報告してくれたことも2度あったのだが。そんな時、最後に保存した状態(それならば壊れていないはずだ)に戻るチャンスが提供されていれば有難かっただろうにと思う。2度とも、Retrospect バックアップが私を危機から救ってくれた。

もっと強力な検索を -- さて、たいていのワードプロセッサが合格域に達していないもう一つの分野が、検索・置換機能だ。ここでも、やはり金字塔をうち立てているのが Nisus Writer Classic だ。Nisus Writer Classic では、書類中のテキストのどんな属性でも、単純検索またはパターンベースの検索で、現在の選択範囲内でも、書類全体でも、あるいは複数の書類にわたっても検索できる。パワフルかつフレキシブル、それにエレガントこの上ない。他のプログラムがどうしてみんな揃ってこの機能をそっくり真似しないのか、私には不思議で仕方がない。Nisus Software 社自身の Nisus Writer Express でさえ、これに及ぶ機能は装備していない。

ライターたちがそこまでの機能を必要とするのだろうかと疑いをお持ちの方は、ちょっと想像してみて頂きたい。締切間際になって編集者から電話が入ったとしよう。本の中の図のキャプションを、すべて“Figure 1.2 - テキスト”というフォーマットにせよ、というお達しだ。でも、あなたが書き上げたばかりの 350 ページにわたる本は、従来のフォーマットで“Fig. 1-2: テキスト”というキャプションに統一されている。ここで Nisus Writer Classic があれば、そんな変更はほんの数分間で朝飯前だ。でも他のプログラムなら、何時間もかけて手で一つ一つ修正した上、まだ見落としがないかと心配し続けなければならないだろう。(そして、そのプログラムから「書類の冒頭から検索を続けますか?」と問いかけて来ようものなら、私はきっと狂ったように叫び出すだろう。単純な検索なのに、いったい何でいちいちユーザーに質問なんかするんだよ、と。)

文字と段落のスタイル -- ワープロの最も重要な機能の一つがスタイルである。といっても太字、下線などのスタイルのことでなく、ユーザ定義の文字や段落のスタイルのことである。そのような機能では、ユーザがスタイルの定義を変更すれば、そのスタイルのテキストがそれに合わせてすべて変わる。段落のスタイルが一段落(リターン文字で区切られる)のテキストに適用されるのに対し、文字のスタイルは1文字以上の文字列に適用される。

インターフェースが複雑だったり、複数のスタイルが同じテキストに適用された時の動作がおかしいことはあるが、Wordのスタイルへのサポートはかなり完全だ。MellelもAppleWorksもあるレベルのスタイルをサポートしている。Nisus Writer Express 2.0(数ヶ月後にリリース予定)ではサポートが約束されているが、現在のバージョンのNisus Writer ExpressとMarinerWriteはスタイルが全くサポートされていない。さらにテキスト指向のエディタ、Bare Bones Softwareのテキストエディタも同様である。

WriteRightではスタイルへのサポートに焦点を当て直したい。スタイルはあるテキストの外観や他の属性(スペルチェックするべきでないスタイルや、URLと捉えられるべきスタイルの指定など)を操作するのに役立つ。しかし最も重要なのは、スタイルの定義、適用、変更が簡単で他のプログラムでも使用できることだ。例えば、InDesignやQuarkXPressがワープロの文字や段落の属性を読み込むことができなければ、文書レイアウトを作成するために使えないだろう。WriteRightは文字や段落のスタイル定義に応じてHTMLやXMLに書き出すこともできるべきだ。変換は簡単であればあるほどよいからだ。

レファレンスツール -- テキストの編集について言えば、書く人を援助する道具を提供するワープロソフトが少なすぎる。インラインスペルチェッカーや辞書、類語辞典、文法チェッカなどはあるが少数である。機能がある場合も、書き手の視点からはこれらの機能の実装法にはまだ問題点が多い。

インラインスペルチェックはもちろんすばらしいが、今の時点で私の主な不満は多くの辞書が別々に提供されている点だ(今ではAppleのOS共通の辞書があるのに)。結果、Eudora、Word、Cocoaアプリケーションで異なる辞書を使うはめになる(ユーザ辞書をプログラムやMac間でシンクロナイズするシェアウェアを誰か書いて欲しい。iSyncが開発者にカスタマイズできればいいのに)。また、私がテキスト編集に使うBBEditやInDesignはいまだにインラインスペルチェック機能がないので、ユーザ辞書は専用のもので、ユーザはダイアログ上でぎこちないスペルチェックをしなければならない。

(AdobeはInDesignのスペルチェッカを恥じるべきだ、と言っておきたい。おそらく私が今まで見た中で最悪の出来で、ユーザ辞書に単語を追加するのにふたつのダイアログで3回もクリックする必要がある。またURLなどのテキストをスタイルを用いてスペルチェックから外す術がない。救いは、InDesign CSでは大文字で始まらない文を警告しないオプションが追加された点だ。私のiPhoto Visual QuickStart GuideはAppleの"i"表記のため半分くらいの文は小文字で始まっている。)

インラインスペルチェック以外の編集機能については、首尾一貫の度合いがぐっと下がってしまう。Wordはライターでない人に便利な文法チェッカを用意している。(プロのライターが下手な文法を使う時は、一般にわざとである。)文法チェッカの便利な使い方は校正用としてだ。単語としては正しいスペルの間違い("its"など)など小さな間違いを発見するのに使える。

Wordには定義を引ける辞書が付いているが、Nisus Writer Expressの賢い機能には遠く及ばない。フリーのNisus Thesaurusと組み合わせると、Nisus Writer Expressは挿入ポイントの隣または上の単語の類語を示してくれる。私は今ではよくNisus Writer ExpressでTidBITSの記事を書き始める。リアルタイムの類語辞典はほとんど同じ単語ばかりを色々な記事で使うことの防止になるからだ。WriteRightでも似たようなリアルタイムの辞書引き機能を見たい。

<http://www.nisus.com/Thesaurus/>

ワープロにインターネット検索をつけて、選択した単語のGoogle検索などできるような機能は付けたくなりがちである。しかしこういった機能(最新のEudoraにも現れたが)は的外れで、一単語でGoogle検索をしても結果はおそらく無意味なものとなるので、ユーザがそれをやりたいとは思えない。しかし、WriteRightにAppleのテキストの要約機能の結果をGoogleに送る機能を付けるというのは想像できる。検索キーワードが増えることで、検索結果は有用になるのではないだろうか。

ワードカウントと文書情報 -- 長い間、Microsoft WordのプロダクトマネージャはWordのレビューでいつもワードカウントが使いにくいと示されていることに抗議してきた。Microsoftはついに書類ウィンドウの下のステータスバーに常に更新されるワードカウントを追加した。次の会議では、Microsoftの社員たちは、この機能はレビュー対策だろうと冗談を言った。私はいっしょに笑いながら内心ため息をついた:ワードカウントは物書きで仕事をする人には必ず必要なもので、それを表示する機能が出るのは遅すぎたのであってレビュー対策などではない。

TidBITSの記事では、単語数ではなく文字数に気を使っている。文字数は単語数よりも記事のサイズを正しく表すからだ。ほとんどのワープロはワードカウントをサポートしているが、Nisus Writer ExpressとMelleは文書情報をはっきり表示している点で特筆すべきである。私の架空のWriteRightも同じような線でいくと思う。

アウトラインを作る -- 多くのライターは作文の先生が教えるようにアウトラインから書き始める。アウトラインは先にアイデアをまとめるのに役立ち(特に長い文章を書く場合)、終わりに近くなってから文章の構造を間違えていたことに気づくといったことがなくなる。

もちろんスタンドアロンのアウトラインプロセッサが多く存在している(OmniOutliner, NoteTaker, Hog Bay Notebook等)。しかしアウトラインを書くのは文章を書く最初のプロセスであって、別のプログラムでアウトラインを作成して書くときに後から何度も参照するのは面倒である。現在あるワープロのうち、アウトライン機能を持っているのはAppleWorksとWordのみで、AppleWorksのアウトラインツールは高機能でない。Wordのアウトラインツールは、他のWordの機能の例にもれず、アイデアは良いが実装に大きな問題がある。

<http://www.omnigroup.com/applications/omnioutliner/>
<http://www.aquaminds.com/>
<http://www.hogbaysoftware.com/products/hog_bay_notebook.php>

WordにMore(本格的なアウトラインプロセッサの定番)のようなアウトライン機能がないというMatt Neuburgの長年の批判にはここでは深入りしない。私はMattほどアウトラインの扱いにはうるさくないが、私がWordで作るアウトラインはあくまでアウトライン止まりである。私はいつも書類を書くとき新しいファイルを作る。そうすると、アウトラインに記事、本、論文などの清書を書き足すことができなくなる。さらに、長い文書の中で作業していて章全体の順序を変えるために全体を小さなアウトラインで見たいと思っても、それは全くできないようだ。部分的な理由は、WordのアウトラインモードがWordに内蔵されているスタイル(ページレイアウト固有のテンプレートとぶつかるので出版では使われないことが多い)に大きく依存しているからである。しかし、こうした理由でWordの内蔵スタイルに依存している私たちのeBookであるTake Controlでさえも、Wordのアウトライン表示はきれいでない。テキストの一部がなぜか適切な階層に収まってくれないことがよくある。

まとめて言うと、Wordの持つアイデアはよいが、WriteRightではMatt Neuburgが気に入るようなアウトライン機能だけでなく、著者がいつでも各項目の内容テキストを展開したり閉じたりできるようなものが欲しい。

コラボレーション機能 -- 火の気の無い屋根裏部屋で、初めての小説に取り組んでいる者を除けば、ほとんどのライターたちは、他のライターや編集者たちとの共同作業である。しかし、この事実はワードプロセッサを造っている会社の耳には届いていないようである。実際のところ、Mac の世界では、2つのワードプロセッサしかコラボレーション機能を持っていない。マイクロソフトの Word と(ワードプロセッサの意味を広げることになるが)SubEthaEditである。じゃ、何が必要なのか?WriteRight には次の機能が装備されていなければならない。変更履歴、校正コメント、そしてコラボレーション編集、さらに、Word、InDesign、QuarkXPress、そして普及しているワードプロセッサや編集ソフトに、原稿が持ついっさいの情報を失うことなしに、読みこみ可能なフォーマットで書き出す機能である。

<http://www.codingmonkeys.de/subethaedit/>

Word は確かに、テキストの色を変えることで、誰が何を変更したかが分かる変更履歴機能を持っている。この機能は、重要な文書作成プロジェクトには無くてはならない。欠かせないものには違いないが、実装のされ方がひどく、使うことが難しく、そして重大な問題を引き起こしかねないバグが存在している。(特に目立つのは、Word は時折ユーザが誰であるかを忘れ、全ての訂正箇所を名称不明ユーザによるものとマーキングし始めてしまう。)同じ人が1回以上変更することがあり、さらにどの校閲回数でどの変更が行われたかを確認することが重要であるので、変更履歴機能は人(Word がこれである)と時間の二つの要素を管理しなければならない。Glenn Fleishman と私が The Wireless Networking Starter Kit を書いていたとき、第一稿と次の稿を区別するためだけに、Word 上で自分たちの名前を変えることがあった。

変更履歴機能は、時間経過に伴う原稿の様々なバージョンを区別したり、作業したりすることでは、大した役には立たない。もし原稿が、別の人たちによって、いくつかの閲覧回数を通ると、どの時点であっても原稿の状態を見ることは困難であるか、あるいは不可能であるかもしれない。時折、Word 書類は壊れることがあるので、原稿の暫定的なバージョンをコピーしておくことは賢明である。メールで原稿をやり取りする場合、一つのファイルに対して複数のバージョンが厳然と存在してくれる。つまり、あるバージョンの原稿を送れば、別のバージョンが戻ってくるということである。けれども、もし共同編集者と共有フォルダを使う場合は、手動でバージョン番号を付け、チェックアウトするシステムを用意しなければならない。ほとんどの場合、バージョン番号と名前のイニシャルを含むファイルネームを付けるやり方である。私は以下のような機能をWriteRight に持たせてみたい。それはバージョン管理のできる原稿配給システムである。そこで、原稿を書き、それをチェックアウト(ほかの人にその原稿を送ることが許されるステップのこと)する、そして変更された原稿を受け取ると、そのシステムに、再びチェックインできるのである。WriteRightが、整合性のあるやり方で、単にディスク上でファイルを管理しているだけであっても、ファイル名や入出力フォルダをいじくる必要がなくなるだろう。

校正は原稿本文に行われるが、同様に重要なことは、原稿外に、別の人がコメントを付けられる機能である。Word は確かにコメントを書き込む機能は持ち合わせている。Word 2004で改善される予定だが、Word Xでは見事なほどにイライラさせられるので、出荷前、マイクロソフトで誰かが、実際に使うことができたのかと思えるほどである。コメントをクリックすると原稿がスクロールされ、コメントの文が画面の一番下に表示される(だから、ほとんどの部分は見えなくなるのだが)方法は私の胃を痛くする。しかし、変更履歴と同様に、コメントを書き込める機能は、他の著者や編集者と共同作業をしているときには、無くてはならない機能である。つまり、WriteRight には完璧なコメント機能が付いていなければならない。

書類管理サーバ -- さらに大胆なファンタジーの世界では、WriteRight にインターネットからアクセス可能な書類管理サーバ機能を持たせ、同じ原稿に複数の人間が、同時に閲覧し、コメントを付け、他人のコメントを確認できるようにさせよう。これは、無駄な繰り返しを避けたり、他人のコメントにさらに意見を追加したり、反対意見を述べるすばらしい方法になる。今、この時点では、これを行う最良の方法は、QuickTopic Document Review という無料のウェブサービスを利用することであるが、さらに、実際の原稿に付けられた複数のコメントを統合するマルチユーザーコメント機能を是非、備えてもらいたい。

<http://www.quicktopic.com/docreview>

私の知る限りでは、唯一 SubEthaEdit テキストエディターが持っている機能、リアルタイム共同編集作業を行う機能を、書類管理サーバは、可能にしてくれるのである。リアルタイム共同編集作業とは、ネットワーク(インターネット接続を含む)に繋がっている複数の人間が同時に同じ原稿を書き進め編集作業をすることができるという意味である。原稿空間を共有することにはある程度の慣れが必要であるが、アウトラインの仕上げあるいは、情報の収集段階では特に重要で、ときには信じられないような力を発揮することがある。

残念なことに、SubEthaEdit は、真のテキストエディターであってワードプロセッサではない、それゆえ、最低限のテキスト編集機能しか備えていない。書類が閉じられた後、誰が何を書き足したのかを示すカラーマーキングを保存する明解な改良点が署名機能には備わっていない。SubEthaEdit の開発者たちが、共有手順をドキュメント化し、彼らが適切だと思う方法-オープンソースとしてかあるいはライセンスする方法のどちらか-で本格的なワードプロセッサを開発している会社に公開して欲しいと願っている。リアルタイム共同編集作業を可能にする機能は、機能が限定された SubEthaEdit のようなアプリだけに持たせることはあまりにももったいない話である。

単一ファイルフォーマットで全てを -- Microsoft Word は2つの理由でワードプロセッサの市場をコントロールしている。最初の理由は、見てきたように、書くことを専門にしている人たちにほかのどのワードプロセッサよりも役立つ機能を提供しているからだ。たとえ操作性が悪くても、バグが有っても、何も無いよりはましだからだからである。2つ目の理由として、これがより重要だが、Word 形式がワープロ書類の共通語になってしまっているからだ。ネットワーク効果といえるかもしれない、つまり、多くの人たちが Wordを使っているために Word 形式で書類をやり取りするのが簡単だかからだ。ほとんどの人が使っているということで、ページレイアウトアプリもWord 形式をサポートし、さらに、のちにレイアウトすることを考えて、文書を Word 形式で書くことが要求されるからだ。はっきりさせると、WriteRightは Word 形式の読み込み、作成ができるだけでなく、できうる限りネイティブモードでWord 形式をサポートしなければならない。文書情報を失うことなしに、Word書類を.doc 形式から、.rtf 形式に変換する機能は最低限必要であるが、現実的には RTF になるだろう。

そうではないと考えたい気持ちもあるが、ファイル変換の現状は、満足するものでは無い。私は最初の数冊の本を Nisus Writer Classic を使って書き、それを PageMaker を使ってレイアウトするために、編集者に送る際に Word 形式に変換した。変換作業はうまく行ったが、文体の名称が完璧で首尾一貫して使用されていることの確認など、該当ファイルを変換するための準備に多くの時間を要した。変換後でも、最終レイアウトのレベルに見合うように、ファイルの細かな点の確認・調整と、さらなる作業が待ち受けていた。いやもっと悲惨であった。編集者は Nisus Writer Classic を使っていなかたので、Word書類に素早く変換し、彼のコメントを再び、元の Nisus Writer 書類に取り込んだりと、共同作業をスムーズに行うために複数のアプリを交互に使用させられたのは、まさに悪夢であった。最終段階での変換の後、次のエディションをいかに始めるかという問題にも直面させられた。さすがに私もこの方法は使わないことにした。現在は Word(あるいは InDesign で直接)で本を書いている。

変換機能が向上していることを疑ってはいないが、いたずら気分で、文体、テーブル、そしてコメントでほんの少し複雑になっている Word 書類を Nisus Writer Express で開いてみた。確かにテキストには何の変更も加えられていはいなかったが、元の原稿と見た目はかなり違っていた。変更後に再度 Word書類に戻してみても、どうしようもなかった。書類は既に、他の様々な特徴に加えて、パラグラフ形式、テーブル、そしてコメントといった本質的な属性情報を無くしていたからである。

WriteRight は全くのファンタージーの産物か? -- 正直に言って、ワードプロセッサを造っているどこかの会社が、その製品を私の仮想上のWriteRight のレベルにまで引き上げる意図をもっているなどという、甘い希望を私は持ち合わせていない。RedleX 社は Mellel の開発を素早く行っているように思える。Nisus Software 社は Nisus Writer Express を Nisus Writer Classic のレベルまで、直ちに向上させるほどの開発チームを持っていないが、それを目標には設定している(手本としていることは言うまでもないが)。

本当に求めていることは、私の最後の要求部分である。すなわち、WriteRightが情報を一つも失うことなく Word 書類を読み書きできることである。RTF 形式であれば、コメントや変更履歴を含む、Word 書類の持つ全ての情報を実際にエンコードできると思う。しかしこの情報が役立つには、WriteRightがこれらの機能全てをサポートしていなければならない。要するに、WriteRight は Word の重要な機能(テーブルやハイパーリンクは述べていないが)をほとんど全てを兼ね備えた、クローンアプリでなければならないことになる。情報を無くすることなく、Word 書類を読み込むことができなければならないし、もっと重要なことは、全ての情報が手を加えられていない元の状況に書き戻すことができることである。これは到底無理な注文であって、実現不可能かもしれない。

私の日々の生活を、より早く、より簡単に、そしてより良くしてくれるような道具を夢見ても悪くはないということは別にしても、これらの要求が人々の目に触れ、ワードプロセッサを開発している人たちが、原稿のテキストがボールド体とイタリック体で違ったフォントを使えるようになるだけでも私たちは真剣に見ているのだ、と知ってくれれば、それこそが重要なことなのだと私は思う。


TidBITS Talk/10-May-04 のホットな話題

文: TidBITS Staff <editors@tidbits.com>
訳: 貞広正則 <msadahiro@peccom.com>

以前と同じく、以下に挙げた各項の URL の2つ目のものは、私たちの Web Crossing サーバに繋がるようになっている。こちらの方がずっと高速だが、ただこちらはまだ望ましいデザインに改良される所までは達していない。

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iTunesから iPod に保存された曲を再生 -- iTunes を使って、iPod に保存された曲を再生できない問題の解決方法。(メッセージ数2)

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最西の Wi-Fi ホットスポットは? -- ハワイのカウアイ島で Adam が発見した Wi-Fi ホットスポットは、本当に最も西に位置するのか?読者がその場所や「最西」の定義を議論する。(メッセージ数4)

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