TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#740/02-Aug-04

RealNetworks は、自らスズメバチの巣をつつこうとしているのだろうか。その Harmony ソフトウェアを使えば RealPlayer Music Store からの音楽が iPod で聴けるようになるという。言うまでもなく、Apple がこれを放っておくわけがない。今週号ではまた、Joe Kissell が Apple の Mail ソフトウェアを使う時に添付書類をうまく付けるためのアドバイスを分かち合う。(同時に彼の新刊電子ブック“Take Control of Email with Apple Mail”についてもお知らせする。)また、TidBITS が新しいウェブログでブログの世界に参入し、先週末に癌の手術を受けた Steve Jobs には早い快復をお祈りする。

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MailBITS/02-Aug-04

Steve Jobs が癌の手術を受ける -- 2004 年 8 月 1 日に Apple 社従業員にあてた電子メールで、Apple 社最高経営責任者 (CEO) の Steve Jobs は彼自身がすい臓の悪性腫瘍の摘出手術を受け、手術は成功したと伝えた。8 月中は彼は回復のための療養に専念するという。その間、Apple の現在の国際販売および業務部門の責任者である Tim Cook が Apple の責任者となる。Jobs は彼の癌が膵島細胞種 (islet cell neuroendocrine tumor) で、これは手術で治療できる非常に稀な症例だと説明した。また、彼の場合は早期に発見されたので放射線治療や化学療法は必要ないとも述べた。Jobs は、すい臓癌ではより一般的な(より重症の)腺癌 (adenocarcinoma) ではなかった。彼ができるだけ早く、そして完全に快復されるよう、お祈りしたい。[GD](永田)

<http://www.cnn.com/2004/BUSINESS/08/01/apple.jobs.ap/>


Apple、RealのHarmonyと歌うことを拒絶

文: Geoff Duncan <[email protected]>
訳: 貞広正則 <msadahiro@peccom.com>

先週、Apple と RealNetworks の間で、Apple の iPod 音楽プレーヤーで再生可能なコンテンツに関する論争が勃発した。RealNetworks は、QuickTime とMicrosoft の Windows Media テクノロジーと競合する音楽プレーヤーソフト、RealPlayer を開発している。RealNetworks はまた、RealPlayer Music Store(Apple の iTunes Music Store の競争相手)と音楽サブスクリプション・サービス Rhapsody を運営している。

<http://www.rhapsody.com/>
<http://www.real.com/>

デュエット中の歌姫たち -- 今起こっている大騒ぎには少しの歴史がある。2004年4月9日、Realnetworks の CEO である Rob Glaser は、Apple に戦術的提携を持ちかけた。その中身は、Apple が Realnetworks に iTunes Music Store で使用されているデジタル著作権管理(DRM)技術 FairPlay をライセンス供与するものである。これにより Rhapsody や RealPlayer Music Store で購入したコンテンツを、携帯型デジタル音楽プレーヤーの世界では、当時も今も大部分のシェアをを持つ iPodで再生することが可能になる。その代りに、RealNetworks はiPod を音楽配信サービスで使用する“一番のお勧めデバイス”に認定する。Glaser はまたApple との交渉がうまく行かなかった場合には、Microsoft のWindows Media、あるいは他のハードウェアベンダーに乗り換えることをほのめかした。

<http://www.internetnews.com/bus-news/article.php/3340801>

Apple は直ぐさま、Realnetworks の提案を断った。Apple はすでに最も人気のある携帯プレーヤーと音楽配信サービスを持っていたので、現在の状況を維持することが、より小さなパートナーと契約を結ぶことに努力を割くよりも明らかに有益であると感じていた。Apple はまた、RealNetworks と Microsoft間に深い恨みをもたらした法廷闘争の歴史から、RealNetworks が Windows Media を採用する可能性は低いと見ていたかもしれない。

シャウト合戦 -- 2004年7月26日、Realnetworks が新しいテクノロジーHarmony を発表すると、RealNetworks と Apple 間の沈黙が破られた。他のことに加えて、Harmony は、非 AppleDRM テクノロジーで保護されたコンテンツを、iPod で再生可能にすると表明している。Realnetworks にとって Harmonyは、市場を有利に展開するための武器になり得るかもしれない。現在、iPodは、保護されていないファイル(例えば、通常の MP3 など)、あるいはAppleの FairPlay DRM システム(iTunes Music Store から購入された曲のように)で保護されたファイルを再生することができる。Sony、Rio、PalmOne、Gateway、Dell、そして他のメーカーから出ている数多くの機器だけでなく、Apple の iPod で、彼らのコンテンツを使えることを主張できれば、RealPlayer Music Store と Rhapsody 音楽サービスは、競争力を持つことになるであろう。RealNetworks の DRM で保護されたコンテンツは70以上のデバイスで再生できる一方で、iTunes Music Store の保護されたコンテンツはたった一つのデバイスでしか使うことができない。RealNetworks がHarmony開発につけた理由は説得力がある。すなわち、人々が音楽をオンラインで購入すれば、ファイル形式やコピー防止を気にかけることなしに、彼らが選択したどんな携帯プレーヤーでも再生できるべきだ。再生できさえすればいいのだ。

<http://www.real.com/harmony/>
<http://www.realnetworks.com/company/press/releases/2004/harmony.html>

私は Harmony の技術的な詳細に十分精通しているわけではないが、RealNetworks が Apple の協力を得て Harmony をつくったのではないことは明らかだ。それどころか、RealNetworks 独自の道を進み、非 Apple DRM で保護されたコンテンツを、iPod での使用を可能にするために Apple のFairPlay DRM で包み込んだ。そのためiPod は、ユーザーがRealNetworks で購入したコンテンツを見つけると、すんなりと再生してくれる。この方法は Rhapsody やRealPlayer Music Store で購入されたコンテンツに有効である。というのは、これらのサービスは iTunes Music Store のコンテンツと(128 Kbps ではなく192 Kbps のより高いビットレートであるけれど)同じオーディオ形式である AAC を使っているからである。iPod 本体でAAC をサポートしているので、Harmony は iPod のソフトウェアに、変更を加えたり、新しいメディア形式を扱う能力を与えたりしているわけではない。

2004年7月28日、Apple は RealNetworks に対して激しい反撃に出た。Appleは、RealNetworks が iPod でコンテンツを再生するために、“ハッカーの戦法と倫理観を用いたことに唖然としている”と述べた。さらに、Apple が新しい iPod のソフトウェアをリリースすると、Harmony 技術が、現行および将来の iPod で機能しなくなる可能性は非常に高いと警告した。言い換えると、Apple は怒っており、できる限り早い段階で、Harmony を使い物にならないようにするつもりである。Apple はまた、デジタルミレニアム著作権法(DMCA)への違反の可能性を含め、法的措置を調査中であると述べた。2004年7月29日、RealNetworks は声明を発表し、Harmony へのコミットメントを再確認し、この技術は全くの合法であり、RealNetworks 独自で開発したことを断言した。

<http://story.news.yahoo.com/news?tmpl=story&cid=528&ncid=528&e=12&u=/ap/20040729/ap_on_hi_te/apple_realnetworks>
<http://www.realnetworks.com/company/press/releases/2004/harmony_statement.html>

大きな声で音痴で -- Apple と RealNetworks との論争は、オンラインミュージックやデジタル権利管理の世界の多くの泣き所に触れている。Appleの iPod は現在のところ閉じられた独自仕様の DRM システムを使っていると不快感を抱いている人たちがいる。そして、音楽が iTunes Music Store あるいは他のサービスで購入したかには関係なく、多くの人たちは自分の好きな場所で買った音楽を iPod で再生できることを歓迎するだろう。更なる DRM システムをサポートすることで、iPod の人気がさらに上がるかもしれない。iPod が高い利益を生み出す製品であることを考えると、このことは Apple にとって収益の増大を意味するかもしれない。結局のところ、Apple はまだ、iTunes Music Store 経由の音楽販売では(あるとしても)多くを稼いでいるわけでは無い。人々が他のサービスを使って曲を購入しようと、利益を生み出している iPod で再生する限り、Apple はなぜ気にかけなければならないのか。

その一方で、iPod の成功は iTunes と iTunes Music Store がデバイスと密接に一体化しているところにその理由の一部がある。ブラウジングし購入するところからデバイスとの同期や再生まで、ユーザのオンラインミュージックストアでの体験をコントロールすることで、Apple は最善のソリューションをつくり出した。iPod で他の DRM システムをサポートすること、あるいはFairPlayを他の音楽サービスにライセンス供与することは、Apple のデジタルミュージック戦略上の2つの重要な要素である、iTunes と iTunes Music Store の両方を引き渡すことになるだろう。もし他の(Rhapsody のような)オンラインミュージックサービス、あるいは(RealPlayer のような)ジュークボックスソフトが iPod をうまくサポートできなければ、iPod に対する市場の認識度が減少してしまうだろう。

しかしながら、RealNetworks は DMCA に違反しているという Apple の主張する根拠が弱く思えるので、もし Apple が Harmony に反対の立場を取り続けるならば、ソフトウェアアップデートを使って足下をすくおうとする以外、Apple が現実的な方法論を持っているのかどうか、まだ明らかでは無い。まず第一に、RealNetworks は Microsoft との長年の厳しい戦いをしてきているので、質の高い法的な助言を手に入れることができる。公な主張をする前に、RealNetworks は十分な量の宿題をこなしていると考えたほうが無難である。第二に、RealNetworks の Harmony は、DRM を無効にしているわけではないので、保護されたコンテンツの著作権に違反しているとは思えない。保護されたコンテンツは iPod に移動された後も保護された状態である。第三に、Harmony は iTunes や iPod 内蔵のソフトウェアに変更を加えるわけではないこと、そして DMCA には相互運用性の目的でリバースエンジニアリングをすることが明確に免除されているので、Apple は自身の著作権が違反されていると主張することが困難かもしれない。

<http://www4.law.cornell.edu/uscode/17/1201.html>

肥えた女性はまだ歌っていない -- Harmony 開発は、RealNetworks がiPodに自身のコンテンツを乗せ、そして Windows だけの Rhapsody ミュージックサービスを拡げようとする努力の増大を、単に表しているだけかもしれない。Apple の現在のデジタル音楽配信におけるマーケットリーダーの位置が、競争と市場の希釈化から自身のビジネスを守る状況に追い込まれ、その守りの中で、Apple を長く愛してきた者たちが不快に感じるやり方を、Apple は間違いなく取るであろうという事実を、この論争はまた浮き出している。実際、このやり方は長期にわたって OS 市場を独占してきた会社、Microsoft をより思い起こさせるかもしれない。


号外! 号外! 全部まとめたブログはいかが!

文: Adam C. Engst <[email protected]>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

近ごろはブログが大流行で、民主党や共和党の全国大会の会場にまでブロガーが報道関係者として正式に入場を許されるほどになっている。けれども私はつい最近まで、自分ではウェブログなんて持ちたくもないと思っていた。TidBITS ではれっきとした出版をしているのだし、TidBITS Talk というモデレータ付きのメーリングリストも運営しているのだから。発言の場所が2つもあるのに、それ以上話すべきことなんてあるのだろうか? けれども、よく考えてみると、実はそういうことは結構たくさんあるのだ。

少し話が逸れるが、先週、TidBITS の HTML 版を受け取っておられる方は先週号の代わりに空のメッセージが届き、その後で HTML 版でなくテキスト版が届いたのを覚えておられることだろう。Geoff が空メッセージの問題に気付いたのは、私のところで 10:30 PM ごろ(彼の現地時間で 7:30 PM)のことだった。私たちはその後の2時間半を電話をかけて過ごし、何が原因なのか、どうすれば直るのかを見極めようと試みた。私の現地時間で真夜中ごろ、設定を変えては HTML 版を送り直そうという試みが何度か失敗した後、私たちはあきらめてテキスト版を送ったのだった。(私たちが既に知っている問題について読者たちから悪意はないけれども膨大な数のメールが殺到するのを予防するため、説明の文章も付けておいた。)このテキスト版はうまく送れた。残念なことに、今週になってもこのトラブルの原因はまだ判明せず、修正はうまく行っていない。いったいどうしてこの問題がその醜い頭をもたげたのか、私たちにはさっぱり分からないのだ。プロセス全体は高度に自動化されており、これまで何年もの間完璧に動作し続けてきた。先週号の内容に何か特別に不都合な単語が含まれていたというのでもない限り(実際そんなはずはないのだ - メッセージのフォーマットも構造的に問題なかった)システム全体に何ら変更は施されていないのだから。結局、今週号の発送プロセスをこれから自分の目でしっかりと監視して、問題が再現しないように見張っておくしかない、ということになった。

それが何か、ブログと関係あるのだろうか? TidBITS 内部のシステムを書くこと自体に気が引けたりすることは別にないが、より大きな内容の文脈に関連してそれを報告する理由があるような場合(この記事のような場合!)を除き、普段私たちはきちんと一線を引いて、私たちのサーバやその他さまざまの物事に関するトラブルを詳しく報告したりはしないでいる。毎週の TidBITS 号の長さも(読者に過大な負担をかけるのを避けるため)意図的に制限しているし、スパム発信者による悪辣な辞書攻撃からリストサーバを守るために私たちがいかに勇敢に戦い続けているかというような、内部的な物語をお届けできる余地もおのずと限られている。ことに、全く同じ被害を受けている読者もなく、私たちのように古びたハードウェアやソフトウェアを使い続けている人も少ない(従って技術的な教訓をお伝えすることにもならない)のだからなおさらだ。けれども、実際に問題が起こってしまった時、例えば先週の HTML 版の発送の問題のような場合には、現状では状況報告にあたるものをお伝えできる良い方法を私たちは持ち合わせていない。それに、私たちの読者数は膨大な数にのぼるので、既に分かっている問題について知らせて下さる読者たちからの電子メールに一つ一つ答えるのは(いくら Eudora に定型テキスト機能があるといっても)あまりにも時間がかかり過ぎる。

でも、私たちが今回ウェブログを始めようという気になった第一の動機は、今述べた問題の状況報告のためではなかった。長年にわたって、TidBITS の各号の構成は次第に決まった形に落ち着いてきた。まず初めにその週のイベントや特に興味深い製品のリリースなどに関して二・三の短い文章が並び、その後にもっと長くて踏み込んだ内容の記事が二つか三つ続く。これらの記事は一般的にある程度の時間をかけて書く必要のあるもので、それぞれ出版の前に少なくとも二人のスタッフが目を通して編集している。もちろんそのお陰でより正確な文章になり、見過ごされていたタイプミスも直すことができているわけだが、一方でそのプロセス全体が頭でっかちのものになりがちで、その結果として TidBITS の各号にはもっと短くてくだけた内容の情報、何か大きな文脈と繋がりでもしない限り TidBITS の号で取り上げるのは気が引けるような文章 (特にちょっとした意見など)、おもしろいけれどもそれほど重要ではなかったり、私たちに時間や元気が足りずに記事に仕上げるまでに至らなかった文章などが抜け落ちる傾向になってしまった。皮肉なことに、ブログというのは比較的最近に発展したように思われているが、その種のタイプの書き物こそ、まさに私たちが 14 年前に TidBITS をスタートさせた時の在り方そのものだったのだ。

そういう理由で、今回私たちは ExtraBITS をスタートさせることにした。ここでは TidBITS のスタッフたちが、皆さんが TidBITS で読んで楽しんで頂けるような種類のさまざまな文章を、ブログ風に盛り合わせて提供させて頂く。個々の文章は短くて、気楽に読め、そしてもちろん文章の完成度や情報リサーチの徹底度はそれほど高くない。そのようなサイズと独立文脈の文章だから、TidBITS 各号の記事ほど有用でもなければ楽しみも及ばないかもしれない。ただ、違う目的のものなのだ。私の予想では、いわばその昔の新聞社の特派員が(その新聞の記事にするために)遠い異国の地から手紙で送ってきた原稿、そのようなものになるという気がしている。もちろんこうして ExtraBITS にポストされた文章が一人前の記事に成長を遂げて後日 TidBITS に登場することもあり得ないことではないが、私はそういうことはごく稀にしか起こらないだろうと思う。むしろ私は、TidBITS の公式出版物という在り方と、討論形式による TidBITS Talk との、ちょうど中間にあってその隙間を埋めるべきもの、ExtraBITS とはそういうものだと思っている。

もちろん、今回 ExtraBITS を始めた理由は他にもいろいろある。技術的な立場から言えば、ブログ用のソフトウェアは数多く出回っているとは思うが、今回私たちは Web Crossing の Weblog プラグインを使うことにした。何しろこれは、すべてをセットアップしてこれまで私が Web Crossing で使ってきたすべてのことと統合させ終わるまでに、ほんの5分とかからなかったのだから。ここにはあらゆる種類の便利な機能も備わっている。例えば RSS リーダ(カテゴリーレベルさえ含む)のサポート、購読してポスト内容を電子メールで受け取れるオプション、ポスト時のスペルチェックなどもある。さらに重要なことは、私にとってこれは私たちのコンテンツ管理システムをデザインして行くことに備えて、Web Crossing の各種のローレベル機能に馴染んでおきたいという目標への次の一歩に当たるのだ。ひょっとしたら、今や一般的に知られるようになったウェブログのインターフェイス要素が、私たちの究極のデザインの一部として取り込むべきものになるかもしれないではないか。

例えば、私たちのコンテンツ管理システムのために検討したいと思っているものの一つに、記事ごとに対するコメントをメーリングリストと統合させる、ということがある。そうなれば、読者が記事を読んでそれに対するコメントをポストすれば自動的にそれが元の記事に付随させられるとともにメーリングリストの適切なスレッドに投稿されるようになるだろう。実際これは私たちが現在データベース中の記事と TidBITS Talk アーカイブ中のスレッドについて実現済みのことなのだが、スレッドと記事との間にリンクを作るためには適切な URL を手動で入力せねばならず(現在はほとんど私がモデレータとしての作業に合わせて手入力している)これが間違いを生みやすいネックとなっている。

私の立場から ExtraBITS が利益をもたらしてくれると思われることがもう一つある。それは、これがいったん軌道に乗れば、私たちのウェブサイトへの全体的なトラフィック量を(特に週の半ばに)増やしてくれるだろうということだ。現在、私たちのウェブトラフィックはその大半が火曜日と水曜日に集中していて、週のその後はずっと少なくなる。現在の読者の大半は TidBITS を電子メール出版だと見なしており、もちろんそのこと自体は今後も変わらないだろうが、このスパムののさばる時勢では電子メール出版で読者を増やしてゆくのも難しいだろう。私たちのウェブサイトを少しでもより交通頻繁なものとすることで、ことに今では非常に人気も出てあちこちで使われるようになってきたウェブログというメディア形式を使うことで、結果的にもっと多くの人たちが TidBITS に親しんで下さるようになれば、と期待している。

これらの利点をすべて考え合わせれば、つまり、これまで書かれなかったようなものを書き留める場所ができ、より多くの Web Crossing 機能を学べる機会が生まれ、これまでとは一味違う出版メディア形態が経験でき、そしてウェブサイトがより定期的にアップデートされてトラフィック量も増えれば、まさにこの ExtraBITS こそ最強の組み合わせになり得ると私は思う。どうぞ、先週のポストを満載した現在の ExtraBITS を、こちらのリンクからご覧あれ!

<http://www.tidbits.com/ExtraBITS/>

[訳注:“Extra”というのは新聞の「号外」という意味です。“ExtraBITS”とは「TidBITS 号外」というニュアンスなのでしょうね。]


Apple Mail で添付ファイルを送る際の注意点

文: Joe Kissell <[email protected]>
訳: 佐藤浩一 <koichis@anet.ne.jp>

私は以前、多くの管理職 (そして、何よりも彼らの秘書たち) が組織内部のコミュニケーションは紙のメモを中心に回っていると未だに考えている会社で仕事をしていたときがある。その頃はよく「メモを参照のこと」とだけ書かれた電子メールを受け取ったものだ。そこで添付された文書を Word で開いてみれば、そこにはいつも電子メールの本文へそのまま簡単に入力できる (あるいは貼り付けられる) メッセージが会社標準の定型メモに一行か二行書いてあるだけだった。この時代に逆行するコミュニケーションの取り方には、とてもイライラさせられた。送信者が電子メールを適切に使わなかったことにより、みんなが単純なメッセージを読むために余計な手間をかけさせられたのだから。

分別のある電子メールユーザ (例えばほとんどの TidBITS 読者が該当することと思う) は、メッセージに文章だけでは伝えられない情報を追加する場合だけ添付ファイルを使うだろう。しかし、添付ファイルを上手に使おうとしても、電子メールプログラムが対応していなければ無駄になってしまう。Apple のMail は一般的に使いやすいのだが、添付ファイルを送るときに予想外の動作をしてしまうことがある。私の最新の著書“Take Control of Email with Apple Mail”から以下に抜粋したいくつかの簡単なガイドラインを守って頂ければ、大部分の添付ファイルはほとんどの受信者に届くこと間違い無しだ。

常にファイルの拡張子を付ける -- ファイル名に拡張子を付けても何も害は無いし、付けることで助かることが多々ある (例え受信者が Mac ユーザーであっても)。それぞれのファイルに拡張子が付いているかどうか確認するためには、Finder でそれを選択し「ファイル」→「情報を見る」において「名前と拡張子」を確認する。Mail に関して言えば、特定のファイルにおいて「拡張子を隠す」オプションがチェックされていても関係ない。つまり、拡張子が付いてさえいれば、それは受信者のところまできちんと届くということだ。ファイルを一つずつ確認する手間を省くためには、(ファイル名の見栄えが若干悪くなるが) Finder の「環境設定」でツールバーの「詳細」ボタンを押し「すべてのファイル拡張子を表示する」を選択する。このようにすれば、ファイルに拡張子が付いているかどうかが一目で分かる。

常に Windows 対応の添付ファイルを使う -- 添付ファイルを“Windows 対応”形式で送ることは、Mac に対しても好結果をもたらすことが多い。この、Windows 対応の添付ファイルというものは、拡張子とは関係がないし、それを追加することでもない。それでは何か?

標準で Mail は受信者も Mac ユーザーだと想定するため、添付ファイルのリソースフォーク (もしあれば) も一緒に送ろうとする。通常 Mac ユーザーにはこのような添付ファイルは一つのファイルにしか見えないが、Windows ユーザーはファイルが二個、つまりファイルのデータフォーク部分とリソースフォークの部分が別々に見えてしまう。

“Windows 対応”の添付ファイルにすると、Windows ユーザーが二つではなく(どのみちこのうちの一つは使い物にならない) 一つのファイルだけ受け取るように、Mail はリソースフォークを取り除く。ほとんどの場合、少なくとも最近のアプリケーションで作成されたファイルは、すべての重要な部分はデータフォークに格納されている。そのため、ファイル名に正しい拡張子が付いていて適切なアプリケーションがあれば、Windows ユーザーがファイルを開くことは可能だ。

この“Windows 対応”という言葉には、このオプションを使うと添付ファイルが“Mac 非対応”となってしまうかのように聞こえてしまうかもしれない。Mailのマニュアルにも“Windows 対応”オプションがオンの場合 Mac ユーザーがファイルを開くことができなくなるかもしれないと書いてあるため、余計そう思ってしまうことだろう。しかし、実際の話、逆も真なりということも頻繁にある。例えば、Mac 版 Eudora は、“Windows 対応”オプションを使わないで送られた場合 Word 文書などの普通の Mac ファイルを時々完全に元に戻せなくなる場合がある。言い換えれば、“Windows 対応”をデフォルトでオンの設定にして、どうしても必要な場合添付ファイルを“Mac 対応”にできるオプションを搭載したほうが賢い設計だっただろう。

Mail で新規メールに対していつでも Windows 対応のエンコーディングを使うよう設定するには、「編集」→「添付ファイル」→「常に Windows 対応の添付ファイルを送信」を選ぶ (このコマンドはメニューとして現れるが、実際には環境設定として格納される)。奇妙なことに、新規メッセージを書いている最中はこのコマンドは使えない。

各メッセージごとに Windows 対応にするかどうかを決めることもできる。ツールバーの「添付」ボタンを使ったり「ファイル」→「ファイルを添付」(Command-Shift-A) からファイルを添付する場合、下の方にある「Windows 対応の添付ファイルを送信」チェックボックスに注目して欲しい。これが選択されている場合、そのメッセージに含まれる添付ファイルすべてが Windows 対応フォーマットで送られる。残念ながら、Mail にはドラッグ&ドロップあるいはコピー&ペーストでメッセージに追加された添付ファイルに対して、Windows 対応状況を切り替えるための便利な方法が提供されていない。

問題が出た場合は、Zip で圧縮する -- もし拡張子を付けても Windows 対応にしても添付ファイルが読めない場合は、そのファイルを圧縮してみると良い。Zip で圧縮することにより一つあるいはいくつかのファイルをまとめて (もしあればリソースフォークも含めて) プラットフォームに依存しないコンパクトなファイルにする。Panther なら、ファイルを選択して「ファイル」メニューの「<ファイル名>のアーカイブを作成」を選べば Finder でファイルやフォルダの圧縮 (Windows 対応の Zip 形式) ができる。もちろん、StuffIt Deluxeや StuffIt Standard Edition でも保護された Zip や StuffIt アーカイブを作成することが可能だ。

<http://www.stuffit.com/mac/>(日本語)StuffIt Official Site

画像を添付ファイルで送る場合 -- メッセージに画像を添付する場合、受け手の電子メールプログラムがインライン表示をサポートしているなら、画像はインライン (メッセージ内に) 表示される (“Take Control of Email with Apple Mail”には、Mac 及び PC でよく使われている電子メールクライアントの中でこの機能を持っているものの一覧が含まれている)。もし電子メールクライアントがインライン表示をサポートしていなければ (あるいは受け手がインライン表示オプションをオフにしている場合) ファイルは添付ファイルとして表示され、別のプログラムによって開く必要がある。

インライン表示は受け手にとって見るのが簡単だ。ただ見るだけで良いのだから。しかし、その反面インライン表示はスクロールするのにイライラするかもしれない。もし画像をインラインイメージとして送りたくないのであれば、添付する前に圧縮する必要がある。悲しいことに Mail には内蔵された圧縮機能が欠けているが、Panther ユーザーなら特別なアプリケーション無しに Zip 圧縮機能が Finder で提供されている。

ここで注意が必要なのは、新規メッセージを作成する時 Mail は常に添付ファイルをメッセージの本文中に表示するということだ。それらはどこか別の場所にドラッグすることができるが、多くの電子メールクライアントではメッセージ本文のどこに入れたとしてもすべての添付ファイルは別リストとして表示される。

もし、画像をメッセージへペーストしたり別のウインドウ (例えばウェブブラウザ) から画像をドラッグ&ドロップすれば、Mail は画像データを TIFF 形式の添付ファイルに変換する。しかし、画像ファイルのアイコンをドラッグ&ドロップした場合 (あるいは添付ボタンを使ってファイルブラウザの中でファイルを指定した場合)、Mail は画像ファイルを元のフォーマットのまま扱い変更しない。この違いは大きい。なぜなら、ほとんどの電子メールクライアントはJPEG 画像を何の問題もなく表示できるが、TIFF は特に Mac 以外の電子メールクライアントであればそれほどポピュラーではないからだ。できるなら、画像データは直接ペーストしたりドラッグするのではなく添付にするよう、私は提案する。

Take Control of Email with Apple Mail -- Mail は気に入っているのだが、誤解を招くエラーメッセージからさらには一見欠けているように見える機能など、ほかにかなりの数の問題や不満がある。自分でこのような障害を経験したり、同じ問題に悩むユーザーの文字通り数千に及ぶ報告書を読んだあと、見えないところで実は何が起こっているのか調べようと思い立った。89 ページからなる私の電子本“Take Control of Email with Apple Mail”では、Mail がどのように動作するか (あるいは何故動作しないのか)、そして Mailでよく起こる様々な問題をどのように解決すればいいのかを説明している。Mail を使っていて何も問題が起きていなくても、さらに効果的に使う方法が学べるだろう。“Take Control of Email with Apple Mail”の価格は 10 ドルだが、“Take Control of Spam with Apple Mail”(通常 5 ドル)と同時に購入すれば両方で 12.50 ドルになる。ほかの Take Control 電子本同様、マイナーな修正版は購入者に対してすべて無料で提供される。

<http://www.tidbits.com/takecontrol/email-Apple-Mail.html> (日本語)Take Control Ebooks: あなたの知りたいことがすぐわかる

[Joe Kissell はサンフランシスコ在住のライター、コンサルタント、そしてTake Control シリーズの第一巻をベストセラーとなった“Take Control of Upgrading to Panther”で飾った Mac ソフトウェア開発者でもある。Mac の問題に取り組んでいないとき、彼は自分の Interesting Thing of the Dayウェブサイトでいろいろなものを紹介している。]

<http://www.tidbits.com/takecontrol/panther/upgrading.html>(日本語)Take Control of Upgrading to Panther 日本語版 - Panther へのアップグレード
<http://itotd.com/>


Take Control 値段について

文: Adam C. Engst <[email protected]>
訳: 亀岡孝仁 <takkameoka@earthlink.net>

Joe Kissell の "Take Control of Email with Apple Mail" については $10という値段にした事にお気づきのことと思う - 以前 Glenn Fleishman の"Take Control of Sharing Files in Panther" でも同じことをした - これは我々のその他の電子本に適用してきた初期導入価格の $5 とは異なっている。その理由はいくつかある:

私が最初に Take Control プロジェクトについて書いた時に述べたように、$5というのは初期導入価格であり、この試みについて商売の側面をもっと勉強できた時点で見直すべきものと思っていた。今でもまだ値段付けについて断定的なことを言うにはまだ時期尚早であると思っているが、$10 というのは 100頁の大台に近く将来無料のアップグレードでそれを越すであろうと見込まれるような本には合っていると思える。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=07405>(日本語)Take Control してみようよ!

次回の注文では 10% 節約できる恩典を簡単に享受できるような仕組みも作ったので注目して欲しい。どの電子本でもいいが、現行版の表紙にある Help a Friend ボタンをクリックしその本を友達一人に紹介 (その友人も 10% 引きとなる) するのである。気になるのは、このボタンはもう数千人の人が目にしている筈なのだが、この割引を利用した人はたったの 11人しかいないことである。(もしこの友人紹介を扱う Web ページに問題があるのであれば知らせて欲しい。 というのもこれは Web Crossing 上で私が始めてやったプログラミングだからである。) そして、全てのユーザーグループのメンバーもどの Take Control 注文に対してでも 10% 引きの特典を利用できる;ほぼ 150 のユーザーグループがこの割引と我々の電子本の無料試し版を享受している。

我々はこれに本気で取り組んでいる。そして皆さんのお気に召すであろう新電子本も沢山あるし取りかかっているプロジェクトもある。とはいってもどのビジネスでも一緒だが、これらの計画を進めていくに足りるだけの収入を確保できるようにしなければならない。これまでの皆さんからのサポートには本当に感謝している。そしてこれからも皆さんのサポートに応えられる電子本を出していく所存である。

<http://www.tidbits.com/takecontrol/>(日本語)Take Control Ebooks: あなたの知りたいことがすぐわかる

[訳注1] 初期導入価格 $5 となっているが、日本語版の場合翻訳費用が上乗せされ $7.50 となる。[訳注2] 日本でユーザーグループを構成されている人達が 10% 引きの特典を得る方法:代表者が Adam にメールを送って「自分は ***という名前のユーザーグループの代表者で、私たちのグループは Mac 関係のこんな活動をしている、ついては Take Control 本の割引をお願いしたい」と書けば、Adamが正当と判断すれば 10% 割引コード(注文時に入力する文字列)を知らせてくれ、さらに「電子本の無料試し版」も送ってくれるはずです。

(日本語)Take Control のユーザーグループ向け団体割引


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Valid XHTML 1.0! , Let iCab smile , Another HTML-lint gateway 日本語版最終更新:2005年 12月 26日 月曜日, S. HOSOKAWA