TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#782/06-Jun-05

まあちょっと落ち着いて私たちの分析をお読みください。Apple が来年以降、Intel のプロセッサに切り替えようとしています。今週号の残りの部分はマルチメディア関係の記事が集まった。まず、Geoff Duncan が iPod バッテリ関係の訴訟が解決に至ったこと、それに iPod のリサイクル関係の発表についてお伝えする。次に Adam が QuickTime Pro 7 にまつわる騒ぎについて検討し、最後の締めくくりとして Andrew Laurence が音楽プレイヤーの Squeezebox2 をレビューする。ニュースの部では、QuickTime 7.0.1 がセキュリティホールを修復したことをお伝えする。

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MailBITS/06-Jun-05

QuickTime 7.0.1 がセキュリティホールを修正 -- Apple はQuickTime 7.0.1 をリリースした。これはソフトウェア・アップデートからダウンロードでき 26.6 MB だ。このアップデートは、Quartz Composer プラグインを置き換える。それは、ローカルデータを収集し、エンコードした URL を使ってその情報を任意の Web サイトに送信する可能性があると指摘されていた。新しいコンポーネントはそのような行為が行えないようにしてある。QuickTime 7.0.1 は Mac OS X 10.3.9 以降をサポートしている。

<http://docs.info.apple.com/article.html?artnum=301714>(日本語)アップル - サポート - TIL
<http://www.apple.com/quicktime/>(日本語)アップル - QuickTime

QuickTime 7.0.1 には明記されていないバグの改修と Apple の Final Cut Studio との非互換性の改善も含まれている。TidBITS のTechnical Editor である Geoff Duncan は、QuickTime 7 のマルチチャンネルオーディオインターフェースに関する二つのうっとうしい問題が修正されていることも見つけた。QuickTime 7.0.1 はユーザーのステレオ出力に対する標準設定を尊重するようになった(バージョン 7.0 は1 と 2 チャンネルにしかステレオ出力を送らなかった。情けないことに、スピーカーを 3 と 4 チャンネルに繋いでいたとしてもだ!)そして、7.0.1 はモノラルオーディオを正しく再生できるようになった。 [JLC](笠原)

MathMagic が TidBITS のスポンサーに -- 私たちは、パワフルな数式作成ソフトの MathMagic で知られる小さな会社、InfoLogic を長期スポンサーに迎えられたことを歓迎してお知らせする。印刷物に数式を含めようとした人ならば(それがシンプルなものだとしても)高品質な数式を印刷物のために作ることは、数式を作ることや見栄えのいいアウトプットを製作することのどちらの面においても、歴史的に大変難しいことだと知っている。これは、伝統的レイアウトプログラムに数式を入れようとする時には特にそうだった。MathMagic は QuarkXPress XTension としてスタートしたが、同社は単独アプリケーションのMathMagic Personal Edition と MathMagic Pro Edition の開発に至った。Pro Edition が異なるのは、カラー ESP での書き出しのようなハイエンド機能や、読み込みや書き出しを行うことなく Adobe InDesign 2 やCS 、QuarkXPress 5 や 6 で直接数式を作成できるようにするためのプラグインが提供されているという点だ。Personal Edition は、数式をTeX、EPS、GIF、JPEG、PICT フォーマットで書き出してワードプロセッサやプレゼンテーションプログラム、グラフィックソフトに読み込んで使うような人に向けてデザインされている。MathMagic Personal edition はMac OS X、classic Mac OS、Windows 対応だが、MathMagic Pro Edition は Mac OS X (と Windows)対応だ。数式を印刷する必要があるのなら、MathMagic を試してみてはいかがだろう。それぞれのプログラムのフル機能版がダウンロードでき、最高 30 回の試用が可能だ。

<http://www.mathmagic.com/>

科学技術的なコミュニティのためのこのようなユーティリティソフトウェアが、Mac 用に作られているというだけでなく、MathMagic の場合、まず Mac 用に作られ、引き続いて windows 版が作られているというのを見ることは嬉しいことだ。このことは Mac のテクニカル業界における存在感が増えている証拠だろう。私たちのスポンサーリストは、つい最近、オーディオソフトウェアの Rogue Amoeba と小売・流通の Dr. Bott の復帰によって強化されたばかりだが、そこに InfoLogic を加えることができて、私たちは喜んでいる。 [ACE](笠原)


Apple が Intel プロセッサに移行

文: TidBITS Staff <[email protected]>
訳: 羽鳥公士郎 <hatori@ousaan.com>

本日、Apple の Worldwide Developer Conference(WWDC)において、Steve Jobs が Mac コミュニティーに爆弾を投下した。同社が 2007 年までに同社のコンピュータを PowerPC アーキテクチャから Intel プロセッサに移行させるという噂が正しかったことを正式に認めたのだ。このニュースは2週間前にthe Wall Street Journal にリークされ、先週 CNet と the Wall Street Journal が追認していた。

<http://developer.apple.com/wwdc/>(日本語)WWDC 2005
<http://www.apple.com/pr/library/2005/jun/06intel.html>

その理由は? パワーだ。それぞれの会社の 2006 年以降のプロセッサロードマップを引用しながら Jobs が語ったところでは、PowerPC がワットあたり15「パフォーマンス単位」を提供するのに対し、Intel のプロセッサはワットあたり 70 単位を提供することが可能だという。Jobs はまた、ラップトップに入れて動かすことができるだけの冷たい PowerPC G5 がいまだに手に入らないことにも言及した。このことは PowerBook ファンのあいだで長らく不満の種となっている。

しかし、WWDC の基調講演には詳細な情報が欠けているということに注意しなければならない。特定のハードウェアも、特定の目標ギガヘルツも語られていない。Apple のソフトウェアが大きく依存しているほかのハードウェア、たとえば AltiVec などのサポートについても触れられていない。しかし、そこらへんの古い Intel コンピュータを買ってきて Mac OS X をインストールすることはできないだろう。Apple 上級副社長 Phil Schiller のコメントによると、Apple は同社のオペレーティングシステムを、Apple が販売する Intelコンピュータに限定することになる。このような未来の Mac は、Windows アプリケーションを、現在のエミュレーションソフトウェアを使うよりもうまく動かすことができる可能性が高い。

Jobs が語ったところでは、Apple はここ5年間にわたって、Intel ベースのMac OS X という選択肢を保持し続けるために平行開発をしてきた。Mac OS Xのすべてのリリースは社内で Intel プロセッサ用にコンパイルされている。WWDC 基調講演の中で、Jobs は Photoshop CS2 などのサードパーティーアプリケーションを 3.6 GHz Pentium 4 プロセッサベースのシステム上でMac OS X 10.4.1 を使って動かして見せた。

Apple は、来年の今頃には Intel プロセッサを使ったローエンドの Mac を出荷する予定にしている。一方、ハイエンド寄りのプロフェッショナル用システムは 2007 年の登場になる。Jobs は、PowerBook G5 を今か今かと待ち望んできた人たちにはっきり謝った。だから、ハイエンドのラップトップが開発優先順位の上位にリストされているということも十分考えられる。

チップの中に DRM -- 今回の移行について、肯定的、否定的含意の両面で興味深くなるかもしれない側面としては、Intel の CPU に備わっている、いわゆる「trusted computing(信頼できるコンピューティング)」機能があげられる。これについての具体的な動きはまだほとんどないが、私たちが理解しているところでは、これは Microsoft のデジタル著作権管理(DRM)システムと連携するように設計されている。これが Apple の現在の音楽プランや将来のビデオプランにうまくあてはまるかどうかは、まだまったく分からない。

移行の実際 -- Xcode を使っている開発者は、プログラムにわずかな変更を加えることで、Intel プロセッサ上で動かすことができるはずだ。コンパイルされたアプリケーションのバイナリの中に、プロセッサに依存するコードをPowerPC 用と Intel チップ用の両方含めることができる。つまり、開発者としては、1つのプログラムで両方のタイプの Mac に対応したものをリリースすることができる。Jobs によれば、現在半分以上の Apple 開発者が Xcodeを使っており、20 パーセントはまもなく Xcode を使い始める予定にしている。驚くべきことではないが、Jobs は、残りの人すべてがこの時流に乗るべきだとも示唆した。

<http://www.apple.com/macosx/features/xcode/> (日本語)アップル - Mac OS X - Xcode

Jobs は Rosetta についても紹介した。これは、PowerPC 用のコードを実行時に Intel チップ用のコードに変換するバイナリ翻訳を提供する。このような変換機能は、これまでにも他の会社で、エミュレーションという形で使われてきたが、Jobs によれば、Rosetta は最適化されているので、Mac OS X の中でClassic を操作するときのようにしばしば不格好だったり不自然だったりするということはないという。今回の移行は、PowerPC に移行したときのように、Mac ユーザにとってシームレスな経験になるはずだ。そのときも、古い 680x0アプリケーションのほとんどはそのまま動いていた。Jobs は Photoshop CS2、Microsoft Office、Quicken を、変更していない PowerPC バイナリ形式のままで、Rosetta を使って動かして見せた。もちろん、それらのソフトが動いたからといって、それらのソフトがうまく動くという保証はないし、Photoshop のようにプロセッサスピードのベンチマークに一般的に使われているソフトでは特にそうだ。しかし、ソフトが動くということは、ユーザがお金を払ってソフトウェアのすべてをアップグレードする必要がないということを示している。Mac OS 9 から Mac OS X への移行では、多くの場合、ソフトウェアを新しいアーキテクチャで動かすためだけにアップグレードをする必要があった。

2つのアーキテクチャを隔てている川を、古いユーザを背負って渡るということについては、Apple は長い歴史を持っている。680x0 から PowerPC への変更は、例外もあったが、一般的にはうまくいった。Mac OS 9 から Mac OS Xへは、開発者が Mac OS 9 と Mac OS X で動くことのできるアプリケーションを作るにつれて、長く、時間がかかる移行にはなったが、結局は成功した。64 ビットプロセッサを PowerPC G5 という形で導入したときですら、発生した問題は比較的少なかった。

Jobs はまた、Mac OS X 10.5 のコードネームは Leopard であり、2006 年の終わりか 2007 年の初めに出荷されると発表した。これは Microsoft Longhorn とほぼ同じ時期にあたり、両者の対比が強調されることは間違いない。

小規模開発者の危機? -- Intel プロセッサへの移行は、大規模な開発者よりも小規模な開発者の方に大きな影響を及ぼすだろう。Mac OS X 用の製品を製作している大きなソフトウェア会社のほとんどは、Windows 版も作っている。コードベースはほとんど同一で済むだろう。より小さい開発者は、典型的には単一のプラットフォームでプログラムをし、テストに必要な経済的、人的資源を持っていない。

しかし、Apple は、現在 Mac 用のソフトウェアをリリースしている数千の企業を含む聴衆が準備を整えられるよう、ある提案をした。Apple の Developer Connection の Select または Premier 会員は、Developer Transition Kitを 999 ドルで購入できる。これには、Intel プロセッサベースのコンピュータと、Mac OS X のプレビューリリース、Apple ソフトウェアが含まれる。このシステムは一般向けには販売されないし、通常のコンシューマシステムのようには動作しない。プログラミングとテストに最適化されている。興味深いことに、開発者はこの Intel コンピュータを 2006 年の終わりまでに返却する必要がある。これは賃貸であり、購入ではないのだ。

<http://developer.apple.com/transitionkit.html>

熱くて触れない? -- かつて、Intel チップは、同等の PowerPC と比べて、動作時により熱くなり、より多くの電力を必要とした。しかし、同社は、Pentium 4M と Pentium M をラップトップ用に調整する中で多くのことを学んだし、新しいデュアルコアアーキテクチャは、1つの集積回路パッケージの中に2つのプロセッサがあるのと同等だが、計算能力が2倍になる一方で熱や電力は2倍にはならない。(IBM も Cell と呼ばれる9コアシステムをリリースするし、マルチコア技術はほとんどのプロセッサの近未来像のようだ。)

消費電力の数字だけではなく、実際の計算性能についても、IBM と Intel の差は縮まっている。以前は、実際の作業量ではなく1秒あたりのサイクル数ばかりが取りざたされて、「メガヘルツの神話」と呼ばれる論争を生んでいた。Intel はここ1年失敗続きで、プロセッサ速度の目標値を下げざるをえなかったが、それでも将来的には IBM をはるかにしのぐ軌道に乗っている。IBMは、昨夏 G5 の納品が間に合わずに G5 iMac を3ヶ月遅らせたなど、大事なところでつまずいてきた。

売り上げ減少? -- 技術的な点はわきに置くとして、本当の問題は、コンシューマやプロフェッショナルの反応だ。顧客はこの発表にどう応答するだろうか。今後プロセッサ性能が確実に向上し、その移行も比較的シームレスで現在のソフトウェアが使えそうだということを知って、現在の Macintosh プラットフォームにより強く帰依するようになるだろうか? それとも、企業や個人が1年か2年後のより速いマシンを待って、ハードウェアの売り上げが急落するだろうか?(私たちはいつも、必要なものを必要なときに買うよう勧めている。より新しく、よりよく、より速いものは、いつでも間近に迫っているのであって、革新が止まるまで永遠に待ち続けるというのはばかげている。)

Apple は、PowerPC G5 チップがラップトップで使えるほど冷たくはならないということを基本的に認めている。ということは、Freescale Semiconductor(Motorola のチップ部門が独立したもの)が今よりずっと速い PowerPC G4を生産できない限り、Apple は今後2年間、少しずつ速くなる PowerBook をリリースするにとどまるということになる。これはプロ市場やスピードの鬼向けの市場に対するときにかなりの痛手となる。

Apple がロードマップを Intel にシフトしたことで、金融アナリストや経済記者が大衆や各企業に対して、Apple がしっかりした足場の上に立つことになったと伝えるだろう。もはや、IBM の現在の収入のごく一部のさらに一部分にしばられることもなく、世界最大のチップメーカーの主要ビジネスに自らの希望を結び付けている。その一方、株式市場は一般的に変化は悪いことだと受け取るもので、CPU を乗り換えるということについて、独特な敗北感のようなものが漂っている(このような見方はもちろん、Mac を特別なものにしていたものはいつでもそのオペレーティングシステムであって、それを下で支えているハードウェアの技術的項目ではないということを無視している)。

さらに重要なことは、Windows XP と Longhorn が、おそらくはほとんど同じ機器の上で、Mac OS X に正面から挑戦することになるということだ。ネイティブの Intel Photoshop を Mac OS X と Windows XP の下で動かせば、Unix と Apple の実装の効率性が、これまで行われたあらゆるリンゴとミカン(あるいは Apple と Redmonds)のテストにもまして明らかになるだろう。


Apple が iPod バッテリ問題で和解、iPod リサイクルを発表

文: Geoff Duncan <[email protected]>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

先週、もはや Apple を象徴する製品となった音楽プレイヤー iPod に関して、二つの重要な進展がみられた。一つは Apple がスポンサーとなって実施されるリサイクルプログラムで、いずれ何百万台もの iPod が地中に埋められた時に環境に及ぼす影響を減らそうというもの、もう一つは初期の iPod モデルでのバッテリ寿命の問題に関して起こされた集団訴訟が当面の和解に達したというニュースだ。

減らして、再利用して、交換する! -- 不要になった iPod を、ユーザは誰でも自由にアメリカ国内の Apple Store に持参して、無料で「環境に優しい」廃棄の処理を依頼することができる。これは即時実施される。こうして iPod、iPod mini、または iPod photo を廃棄した人はすべて、新しい iPod が 10% 割引で購入できる。ただし、この 10% 割引はその当日のみしか有効でない。クーポンを持ち帰って次の月にもっとクールな iPod が出るのを心待ちにするという訳にはいかない。また、Apple は iPod shuffle のリサイクルは受け付けるようだが、iPod shuffle の購入は 10% 割引にはならない。Apple では、アメリカ国内で受け付けられた iPod はすべて国内で処理され、有害物質が国外に送られることはないと明言している。将来は、Apple がこのリサイクルプログラムを iPod 以外の製品にも拡大してくれることを期待したい。例えばラップトップ用のバッテリや、モニタ、CPU といったものが対象になればと思う。また、アメリカ以外の国でも同種の製品リサイクルを実現できるようになればとも思う。何と言っても、我々は皆同じ惑星に暮らしているのだから。

<http://www.apple.com/pr/library/2005/jun/03recycle.html>
<http://www.apple.com/environment/>(日本語)アップル - 環境

バッテリ訴訟は和解? -- その内容について Apple 側からの発表があることはあり得ないが、2005 年 5 月 12 日に Apple は、旧型 iPod のバッテリ寿命に関して起こされていた集団訴訟でひっそりと合意に達した。カリフォルニア州上級裁判所の判事がこの合意についての裁定を 2005 年 8 月 25 日に下すまでは確定しないが、それは単なる形式上のことと見られており、何人かの iPod オーナーたちは既に先週の木曜日にこの合意についての通知を受け取り始めている。

この合意条件は一年間の保証付きで販売された第一、第二および第三世代の iPod のうち 2004 年 6 月 1 日より前に販売されたものを対象にしている。当時は一回の充電で 8 時間音楽が聴けると宣伝されていた。該当する iPod であることが確認できる購買証明を提示できる顧客は、一年間の iPod 保証期間延長が受けられる。該当する iPod であることが確認できる購買証明が提示でき、かつその iPod が宣伝された演奏時間の 50% 未満しか音楽を演奏できないか、または時間の経過に伴って iPod のバッテリが劣化したことが認められた場合は、以下のいずれかができる:

この和解の対象となる iPod ユーザーの数は二百万人にものぼると見られているが、購買証明を提示しなければならないという条件によって Apple の負担はかなり軽減されていると見るべきだろう。この合意で、Apple は違法行為を認めた訳でもなければ iPod の欠陥を認めた訳でもない。実際、少なくとも公式には、Apple は iPod が宣伝された通りに動作するという姿勢を崩していない。ただし、ユーザーが正しいバッテリ管理を実行している限り、という訳だ。

<http://www.apple.com/batteries/>(日本語)アップル - バッテリー


QuickTime 7.0 Pro を楽しむのは有料

文: Adam C. Engst <[email protected]>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

長年にわたって Apple は QuickTime を Mac OS の一部分と見なしてきたが、その一方で QuickTime Pro を $30 で販売することによりいくらかの追加の収益を得ようとする方策を、この会社は採用してきた。この、QuickTime の有料バージョンを使えば QuickTime Player の機能が拡張され、フルスクリーンの表示(ビデオがしょうもないメタル調のウィンドウに限定されることもない)や、QuickTime ムービーの基本的編集機能、あるいはさまざまの書き出しオプションなどが利用できるようになる。Apple はこうした機能を多数用意した上で、QuickTime Pro を強く薦めるために無料版の QuickTime Player にうるさいダイアログを出させるという手段をもう何年も続けてきた。ただし、最近のバージョンではこのダイアログの出る頻度は下がってきたようだが。

けれども QuickTime Pro というのはちょっと変わり者で、互いに非常に異なったさまざまの市場に向けられている。ムービーをフルスクリーンで見たいというだけの理由でこれを買う人もいれば、ウェブページからムービーを取って来て保存したいという理由の人も、そのムービー編集機能やいろいろの書き出し機能が必要な人もいる。私が一度だけ $30 のアップグレードに飛びついた時の理由は、iPhoto から書き出したムービーをウェブ上の高速起動ムービーへと変換する方法を記事にするため、というものだったが、私はこの QuickTime Pro の使い易さの現状に、ひどくがっかりさせられたものだ。それに輪をかけて、説明書がひどく欠如しているという問題も目についた。それでも、私よりはビデオに本腰を入れている人で、これより上級のツールに大枚をはたくまでの気にはなれないという人には、この QuickTime Pro は充分使いでのあるツールだと私は思う。

これもお金、あれもお金 -- QuickTime 7 は Panther 用にも、Tiger の一部としても入手できるが、ただ一つ以前にはなかった無料/有料の区別に関する問題点がある。それは、QuickTime 6 で購入した QuickTime Pro キーが有効でなくなるという点だ。つまり、QuickTime 7 用にまた改めて QuickTime Pro を購入し直さねばならないのだ。Apple によれば、QuickTime 7 にはローヤルティーの支払いを伴ったテクノロジーが使われているからだという。言い換えれば、Apple は QuickTime Pro を一回販売するごとに一定量のお金を他の会社に支払わなければならず、そのコストをユーザーのあなたに回しているという訳だ。このことは、過去数回の QuickTime のメジャーアップデート版でもずっと同じことが言えていた。

ただ今回違っていたのは、多くの人が Tiger をインストールした結果として不意打ちの形で QuickTime Pro にお金を払わなければならない必要に迫られたということだった。全く予期しない状況でお金を要求された形になったわけだ。あなたは今 Tiger を買ったばかりだ。それなのに、QuickTime Player を使って何か QuickTime Pro の機能を要する作業をしようと試みた途端、いきなりあと $30 を払わなければその機能が使えなくなっているという訳だ。この費用が Apple にとってローヤルティーを払うために必要か開発費用を賄うために必要かは知らない(QuickTime Pro が Mac OS X の一部ではないことを忘れて欲しくない - だから少なくとも理論的には、その開発費用は何か他の方法で賄うべきものだろう)が、とにかく Apple はアップグレードに先立って、QuickTime Pro 6 ユーザーたちにもっとうまく警告を与えるべきだっただろう。さらに悪いことには、QuickTime Player 7 になって、QuickTime Pro 専用のメニュー項目がすべてグレイ表示で、それも PRO バッジ付きで表示されたままになってしまった。これは初めて使う人々に QuickTime Pro の可能性を知らせるためには良いことかもしれないが、既に QuickTime Pro 6 に料金を支払っている既存の顧客たちの目にはイライラの種としか映らないだろう。

どうやら Apple もこれは少しまずいと気が付いたのだろう。QuickTime 7.0.1 アップデートでは、はっきりと「QuickTime 7 をインストールすると、過去のバージョンの QuickTime、例えば QuickTime 5 や QuickTime 6 における QuickTime Pro の機能は使えなくなります。これをインストールする場合には、新たに QuickTime 7 Pro キーを購入して頂かなければ QuickTime Pro 機能を取り戻せません。インストール後、www.apple.com/quicktime で QuickTime 7 Pro キーをご購入下さい。」と明示するようになった。これで少なくとも、Apple があらかじめユーザーに通知するようにはなった。Tiger アップグレードの際にも、もっとはっきりとわかりやすく知らせてくれていたのなら良かったのに。

もう一つ不満なことがある。QuickTime 6 では無料だった機能で QuickTime 7 では Pro 機能の方に移行してしまったものが少なくとも一つあるのだ。それは、ウェブブラウザで QuickTime プラグインを使って見たムービーを保存する機能だ。幸いにも、そういうムービーを保存するために、ムービーのリンクを Control-クリックして、現われたコンテクストメニューで「ディスクに保存する」メニューを選ぶという方法は残されている。

過ぎし日を思い出す -- Tiger を走らせている人が QuickTime 6.5.2 にダウングレードするのは無理だと思うが、Mac OS X 10.3.9 Panther で QuickTime 7.0 にアップグレードした人は、QuickTime 6.5.2 Reinstaller for Mac を使えばダウングレードできる。これは QuickTime 7 を取り除いてから 6.5.2 をリストアしてくれる。残念ながら、QuickTime が良くなることを期待して QuickTime 7.0 にアップグレードし、その後さらに QuickTime 7.0.1 にまでアップグレードしてしまった人には、現在のところこの reinstaller は 7.0.1 からのダウングレードを提供できない。ただしこの点については Apple の QuickTime 討論ボードにおけるスレッドでいくつかの提案がなされており、もしも手で QuickTime 7.0.1 を除去することができたならば、フルの QuickTime 6.5.2 インストーラを使って再インストールが可能だ。ここでも、この解決策はあなたがまだ Panther を使っている場合にしか適用されず、Apple は Tiger で QuickTime 6.5.2 が動くとは一言も言っていない。

<http://www.apple.com/support/downloads/quicktime652reinstallerformac.html>(日本語)アップル - サポート - ダウンロード - QuickTime 6.5.2 Reinstaller for Mac
<http://discussions.info.apple.com/webx?14@@.68b103ac>
<http://www.apple.com/support/downloads/quicktime652formac.html>(日本語)アップル - サポート - ダウンロード - QuickTime 6.5.2

もしもあなたがフルスクリーンでムービーを見るためだけに QuickTime Pro を購入したのならば、オープンソースの MPlayer OS X を試してみるのも良いだろう。これは、Linux 用の Movie Player の Mac OS X 版だ。フルスクリーンのオプションだけでなく、シンプルながらライブラリ機能もあり、QuickTime がコーデックを持たないようなさまざまのフォーマットを再生することもできるということだ。

<http://mplayerosx.sourceforge.net/>

映画には良い顔を見せる -- 今年の 1 月に、サンフランシスコの Macworld Expo で、Steve Jobs は 2005 年が HD、つまり High Definition ビデオの年になると述べた。その際、彼は iMovie HD、iDVD 5、それに Final Cut Express HD などにおける新機能についてもはっきりと述べていた。けれどもその後、時が経つにつれて、iTunes 4.8 がビデオ再生の新機能を装備する一方で、あなたが既に見たビデオをウェブブラウザからあなたのハードディスクへとコピーするのはますます困難になってきているのを見るにつけ、私には Apple がこの 2005 年後半に大がかりにビデオ関係のことを押し出そうと、準備を整えているように思えてならない。

もしも Apple が iTunes Music Store 経由でムービーのダウンロード販売を開始したり、または iTunes で人々にストリームビデオを見させたり、あるいは iPod にビデオ再生機能を導入したり、それとも Mac mini をホームメディアシアターの拠点として使い始めたり、という状況が現実となれば、Apple 社としてはコンテンツ・カルテルのメディア巨人たちを相手にして、彼らの映画が「安全」であることを(それがどんな意味であるにせよ)説得できるようにならなければならない。だから、見たムービーをディスクに保存する機能を QuickTime 7 で削除したことがいくら馬鹿げてケチくさいやり方に見えた(それは実際そうなのだが)としても、私の見るところ Apple にはちゃんとすべてが見通せており、デジタルコンテンツを引き揚げるぞと脅しをかけてくるかもしれぬ会社たちに向かってはできるだけ良い顔を見せておこうという目的で、あえてこうした変更を実施しているのだろうと思える。

私の言うことが信じられないとお思いなら、下記リンクの QuickTime Pro ページでサイドバーの部分をご覧頂きたい。そこには、「ムービーを盗まないで」と書いてあるところがある。これは実際、素晴らしく頭の良い態度だと言える。そこにはいくつか短い文章で、次のようなことが書いてある:

<http://www.apple.com/quicktime/pro/>(日本語)アップル - QuickTime - QuickTime Pro

これは、誰がどう見ても映画会社に向けたポーズのための美辞麗句以外の何物でもないだろう。iMovie や iDVD や GarageBand を通じて誰もがコンテンツのクリエイターになれると強く宣伝しつつ、その一方では Macintosh のマルチメディア機能を制限しなければならない必要を Apple が感じているというのは、何とも残念なことだ。(iTunes Music Store がスタートして以来、iTunes はずっとこの種の機能制限の流れに取り憑かれているように思える。)遅かれ早かれ、この自己矛盾は大きなしこりとなってくるのではないかという気がする。


Squeezebox2: ロック万歳

文: Andrew Laurence <[email protected]>
訳: 羽鳥公士郎 <hatori@ousaan.com>

コンピュータベースのデジタルメディアをホームシアターで再生するには、大きく分けて2つのタイプのソリューションがある。ローカル再生とネットワークストリーミングだ。ローカル再生陣営は、Windows XP Media Edition やMythTV が代表だが、コンピュータを一人前のオーディオビジュアルコンポーネントとみなし、ライブラリの保存や再生を1つの装置でまかなう。しかし、管理・再生ソフトウェア(たとえば iTunes)で、可能な限り数多くのメディアタイプを扱うと同時に、ソファに寝そべって使えるようなインターフェースを備えたものを作ろうとすると、問題が発生する。そのようなソフトウェアは、たいていの場合 Tivo の洗練された機能性を追いかけて、たいていの場合失敗している。これまでのところ、コンピュータが専用装置になるにつれ、ユーザは自分のデータを有意義な方法で操作する能力を失っている。

<http://www.microsoft.com/windowsxp/mediacenter/>
<http://www.mythtv.org/>

それに対して、ネットワークストリーミング陣営は、デスクトップコンピュータが歴史的に強さを発揮してきたデータ保存と管理、そしてネットワークへのメディアの送出能力を活用している。そうすることで、再生機器は、高品質の再生、効果的なインターフェース、適切なリモートコントロールに集中することができる。

ストリーミング機器は人気を得つつあり、いくつかのメーカーから多数の製品が投入されている。D-Link、Linksys、Buffalo Networks やその他大勢だ。これらの機器は、オーディオ、ビデオ、写真をデスクトップコンピュータからストリームするが、これらの一体型機器は、現在のところ器用貧乏にとどまっている。Mac ユーザにとってさらに悪いことに、これらのサーバソフトウェアはWindows の下でしか動かない。多くの機器が、Syabas の iBox プラットフォームからライセンスされた技術を使っており、そのこと自体は問題ではないのだが、多くのベンダーのソリューションが同じところから供給されているということは、この業界一般に想像力が欠けているということを表している。El Gato の EyeHome(これも Syabas のライセンスを受けている)が唯一、特に Mac プラットフォームのために開発され販売されている一体型装置だ。(TidBITS-741 の "EyeHome: これがほぼ理想... いやまだ遠い" 参照。)

<http://www.syabas.com/>
<http://www.elgato.com/index.php?file=products_eyehome>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=07766>(日本語)EyeHome: これがほぼ理想... いやまだ遠い

この混乱のさなかに、Slim Devices の人たちが、彼らにとって3つ目となるストリーミング音楽プレーヤ Squeezebox2 と、それに対応するソフトウェアSlimServer 6.0 によって、自らの未来を運んできた。その結果生まれたのは、効果的で、驚くほど柔軟で、設定可能な、ホームステレオ用のデジタル音楽プレーヤだ。

<http://www.slimdevices.com/>

(ママにもついてる)スクイーズ・ボックス -- Squeezebox2 は、その前身(SLIMP3 とオリジナルの Squeezebox、どちらも以前私が TibBITS でレビューした)と同じように、黒いほっそりしたネットワーク音楽プレーヤで、大きさは VHS テープとほぼ同じだ。ネットワークには 10/100 Mbps Ethernetでつながる。ワイヤレス版を選べば、802.11b または 802.11g ネットワークに接続でき、ワイヤレスブリッジとしても機能する。ステレオとの接続は、アナログ RCA 端子か、同軸か光端子のデジタルオーディオ S/PDIF 接続となる。ヘッドホン用のミニジャックが装置の右側にある。すべてのユニットにはステレオ RCA ケーブルと使いやすい赤外線リモートコントロールが付属する。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=07150>(日本語)SLIMP3: MP3 よ、いざ Hi-Fi へ
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=07637>(日本語)良いノリは Squeezebox から

正面には、非常に明るくて読みやすい真空蛍光ディスプレイがあって、Squeezebox2 のただ1つの顔とインターフェースになっている。Slim Devicesの過去の製品では 40 x 2 文字のテキストディスプレイがあったところに、Squeezebox2 は 320 x 32 ピクセルのディスプレイを備えている。このディスプレイは、ソファからでも読みやすい美しいプロポーショナルフォントを表示するほか、イコライザ表示、プログレスバー、さらにはゲームのような視覚効果も表示する。

AC アダプタは注目に値する。そう、壁のコンセントにさし込むやつだ。Slim Devices は、Unifive の特別小さな切り替え式 AC アダプタを同梱している。その大きさはたったの 33 mm x 23.5 mm で、高さも 45.5 mm しかない。これだけ小さいと、他の電源ソケットの邪魔をすることがない。ベンダーが OAタップの存在を認識しているというのはいいことだ。

<http://www.unifive.co.kr/product/UL110.htm>

序曲 -- デジタルコンテンツを Squeezebox2 にストリームするには、無料の SlimServer ソフトウェアの Mac OS X 用ディスクイメージをslimdevices.com からダウンロードしてインストールする必要がある。同梱されているインストーラを起動して、設定パネルが現在のユーザだけに使えるようにするのかコンピュータ全体で使えるようにするのかを選んで、Install をクリックする。インストーラは数秒で作業を終え、システム環境設定の中で新しい SlimServer 設定パネルが開く。SlimServer が自動的に開始するのを起動時にするかユーザのログイン時にするか(それとも自動では開始しないか)を選び、Start をクリックする。デフォルトでは、SlimServer は iTunes ライブラリの内容を処理し、その内容を、首を長くして待っているプレーヤに送りはじめる。(SlimServer は、Windows 用のバイナリインストーラとして、Linux 用の RPM パッケージとして、またあなたが使おうと思っているかもしれないほかのプラットフォーム用に Perl のソースコードとして入手できる。)

Squeezebox2 をステレオシステムにつないだら、プレーヤの電源を入れて、ネットワークに合わせて設定を始める。感じの良い、役に立つウィザードが、Ethernet かワイヤレスネットワーク(WPA Personal と 64/128 ビット WEP暗号化がサポートされている)か、DHCP か静的 IP 番号かを指定するようたずねてくる。ネットワークにつながれば、プレーヤは Bonjour(以前はRendezvous と呼ばれていた)を使って SlimServer を探し出す。そうなれば音楽再生の準備は完了だ。

ゲッティング・イン・チューン -- リモートコントロールの矢印を使ってSqueezebox2 のメニューを操作し、音楽を選択して再生することができる。デフォルトのメニューリストには、Browse Music、Search Music、Browse Playlists、Internet Radio がある。サブメニューオプションで、Albums、Artists、Genres、Songs の中でブラウズしたり検索したりでき、これらのサブメニューをメニューのトップレベルに持ってくることもできる。音楽を検索するには、リモコンの T9 入力キーを使って、携帯電話でテキストメッセージを打つ要領で文字を入力する。曲(またはアルバム、またはアーティストの作品全部、または1つのジャンルを全部、またはインターネットラジオ局、またはプレイリスト)を再生するには、そのアイテムを選んでから Play を押す。選択されたアイテムが SlimServer の Now Playing キューに置かれ、音楽が始まる。

Now Playing キューは特別注目に値する。ほとんどの音楽プレーヤは、選択されたアイテムしか再生しない。しかし、Now Playing 機能は、レコードプレーヤにレコードを積み重ねたようなもので、キューにアイテムを次々に加えてゆける。そのためには、別のアイテムを選択して、Add を押せばよい。Now Playing キューは融通が利くので、音楽コレクションを思いのままにに切り刻むのも自由にできる。これは、iTunes で静的なプレイリストを築き上げるよりももっと流れるような体験で、スマートプレイリストよりももっと気まぐれにできる。そして、それをリモコンで、ソファに座りながら、コンピュータを別の部屋に置いたままで、できるのだ。

Squeezebox2 のアナログオーディオの品質は、私の耳には、かなり良く聞こえる。私が試したほかのデジタル音楽プレーヤと違って、Squeezebox2 の音には、何の欠点も感じられない。

エニィウェイ・エニィハウ・エニィホエア -- もし Squeezebox2 の2行のテキストがお気に召さないなら、SlimServer のウェブインターフェースを使うことができる。これは SlimServer をホストしているコンピュータの9000 番ポート上で動き、自分自身を Bonjour をつかって通知する。このインターフェースを通して、Now Playing キューの項目を再生したり、一時停止したり、シャッフルしたり、削除したり、ランク付けしたり、並べ替えたりできる。ネットワーク上に複数のプレーヤがあれば、それらを同じ Now Playingストリームに同期することもできるし、それぞれのプレーヤごとに別々のストリームを管理することもできる。ウェブインターフェースでは SlimServer 自体の詳細な設定もできる。たとえば、iTunes を使うのか MoodLogic ミュージックライブラリを使うのか、ミュージックライブラリの場所、サポートする音楽形式、インターネットラジオの登録、RSS フィードなどだ。Squeezebox2がテキストを2行しか表示できないのに対し、SlimServer のウェブインターフェースを制限するのはあなたのブラウザのウインドウサイズだけだから、検索機能を使ったり大きなリストを眺めたりするのが非常に簡単になる。

音楽形式ということでいえば、選択肢はめまいがするほどだ。Squeezebox2 はAIFF、FLAC、MP3、WAV 形式をネイティブで再生する。他にサポートしている形式としては AAC、Apple Lossless、Ogg Vorbis、Shorten、Windows Mediaなどがある。これらを使うには、他のソフトウェアがインストールされている必要がある。Mac OS X または Windows 用の QuickTime(AAC と Apple Lossless)、Windows 用の Windows Media(WMA)などだ。プレーヤへは FLACデータとしてストリームされる。残念ながら、iTunes Music Store で購入した曲はサポートされていない。Apple は同社の FairPlay デジタル著作権管理の枠組みに他のベンダーが参加することを許していないためだ。

音楽形式を混ぜて組み合わせることができる。SlimServer は、あなたのMP3、AAC、AIFF ファイルについての情報を、iTunes から独自の音楽キャッシュに取り込む。では、あなたが FLAC 形式の音楽も保存していたり、あなたの配偶者が Windows Media を使っていたりしたらどうなるのだろうか。そういうときは、SlimServer の「Music Folder」欄でそれらのファイルが保存されている場所を指定し、Rescan をクリックすればよい。SlimServer は2つのソースを1つのキャッシュに結合するから、あなたはデジタル形式を気にすることなく、楽しく音楽を再生できる。(Windows Media と互換性を持つためには、SlimServer は Windows コンピュータにインストールされていなければならない。)

<http://flac.sourceforge.net/>

多くの企業がオープンソースを採用することについて語っているが、Slim Devices はそれを実際の行動で示している。SlimServer は無料のオープンソースソフトウェアで、Perl で書かれており、GNU Public License(GPL)の下でライセンスされる。驚いたことに、SlimServer のよさを試してみるのにSqueezebox2 は必要ない。第一に、Now Playing オーディオストリームは、インターネットストリームを再生できるどんな MP3 ソフトウェアでも使うことができる。そのプレーヤを SlimServer の「stream.mp3」に合わせるだけでよい。第二に、同梱されている SoftSqueeze は、Java ベースのソフトウェア音楽プレーヤで、Squeezebox2 のインターフェースをエミュレートする。つまり、中庭に置いたラップトップで! Squeezebox2 のインターフェースを使いながら、Now Playing を操作し音楽を聴くことができる。Chuck Berry のCadillac セールスマンの言葉を引用するなら「頭金はいりません」。

<http://softsqueeze.sourceforge.net/>

SlimServer は Slim Devices の以前のプレーヤとも、それらのハードウェアの能力の範囲で、互換性がある。(たとえば、SLIMP3 は MP3 ストリームしか再生できない。)

シーカー -- SlimServer は、ハードドライブに保存した音楽を再生するのに加えて、Live365、radioio.com、SHOUTcast サービスからのインターネットラジオをあなたのプレーヤにストリームできる。Live365 には無料のログインアカウントが必要で、SlimServer のウェブインターフェースで Live365設定パネルを使って入力する。Slim Devices Picks は、iTunes の Celebrity Playlists のように、さまざまなサービスからの独自のお勧めを提供する。執筆時点では、Squeezebox2 がインターネットラジオを再生するためには、SlimServer のコンピュータが動いていなければならない。将来的には、SqueezeNetwork によってその必要がなくなり、Squeezebox2 が純粋なインターネットラジオプレーヤになる。SqueezeNetwork は現在、SlimServer のベータビルドの中に含まれており、おそらくは将来の SlimServer バージョンに加えられるだろう。

先程 RSS フィードについて触れたが、この機能は音楽プレーヤということでは筋違いと思われたかもしれない。しかし、Squeezebox2 はネットワークに接続されたディスプレイ機器でもあるので、ほかの情報ももちろん表示できるのだ。この目的のために、SlimSerber には RSS リーダーが含まれており、オンデマンドで、またはスクリーンセーバに設定して表示できる。デフォルトで6つのフィードが登録されているが、思う存分追加したり編集したりできる。

SlimServer にはプラグイン API が備わっており、実際のところ、内蔵されている RSS リーダー、インターネットラジオ局、Data/Time スクリーンセーバはすべてプラグインだ。サードパーティーの開発者から数十のプラグインがでており、さまざまな機能をカバーしている。ご想像の通り、ニュースフィード、株価情報、天気、テレビ番組表のプラグインは豊富にある。iTunes の再生回数をアップデートするプラグインや、iChat のステータスを SlimServerの現在の曲に合わせるプラグインもある。(Eudora 電子メールをSqueezebox2 で読みたい? そのためのプラグインもある。)

<http://www.slimdevices.com/dev_plugins.html>

アンダーチュア -- あなたは、このレビューを読んで、こうたずねたくなったかもしれない。「それで、AirTunes はどうなった?」Apple のAirTunes は、AirPort(日本では AirMac)Express にオーディオをストリームする技術で、iTunes の拡張だから、あなたの視点によって特長ともなるし損失ともなる。AirTunes は iTunes が動いているコンピュータのキーボードからしか操作できないが、SlimServer の Now Playing キューは、ウェブブラウザを備えたどのコンピュータからでも操作できる。AirTunes は1つのAirPort Express ユニットにしか配信できないが、SlimServer はあなたのネットワークが許す限りいくつでもストリームを配信できる。SlimServer がFLAC、Ogg、Windows Media 形式を扱えるのに対して、iTunes Music Store からの音楽を再生できるのは AirTunes だけだ。

Squeezebox2 はすぐれた音楽プレーヤで、SlimServer と組み合わせれば、ホームステレオでデジタル音楽を再生するためのほとんど完璧なソリューションを提供する。これは、あなたの音楽生活を iTunes Music Store にしばりつけないという点でもすばらしいソリューションだ。

Squeezebox2 の価格は、Ethernet モデルで 250 ドル、無線モデルで 300 ドルだ。仕上げは黒とプラチナが選べ、Slim Devices から直接購入するか、さまざまなインターネットショップやオフラインの販売店で購入できる。

[Andrew Laurence は、Mac mini の詳細なレビューと分析を modmini.com に寄せている。そこでは Squeezebox2 の不思議なほどよく似たレビューも公開されている。]

<http://www.modmini.com/>


Take Control ニュース/06-Jun-05

文: Adam C. Engst <[email protected]>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Take Control Tiger 電子本が 10,000 冊の売上げを達成 -- 先週、私たちの Take Control 電子ブックが Tiger 版になって以来二度目の大目標を達成した。Tiger 版の売上げが、ついに 10,000 冊を超えたのだ。不思議な因縁だが、この記念すべき 10,000 冊目はワシントン州 Issaquah に住む Prudence Holliger の手に渡った。彼女には、何年も前に私たちがシアトルに住んでいた頃 Seattle Downtown Business Users Group MUG でお目にかかったことがある。Prudence にも、その他何千人もの読者の方々にも、Tiger についての情報をできるだけ早くお届けしたいという私たちの努力に援助の手を差し伸べて下さったことに対して、心からお礼を申し上げたい!


TidBITS Talk/06-Jun-05 のホットな話題

文: TidBITS Staff <[email protected]>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

各話題の下の2つ目のリンクは私たちの Web Crossing サーバでの討論に繋がる。こちらの方が高速のはずだ。

信頼できるスキャナのベンダーは -- スキャナのベンダーが出しているソフトウェアが Mac OS X 10.4 Tiger の下で問題を起こすのを経験した人々は何人もいて、そういう人たちは多目的用の VueScan ソフトウェアに移行しつつある。(メッセージ数 12)

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=2608>
<http://emperor.tidbits.com/TidBITS/Talk/463/>

ソフトウェアのライセンスを読む -- ソフトウェアの包みに小さな文字で添付されているライセンス条項を実際に読んでいる人はいるだろうか? もしも読んでみたら、何が起こるのか? (メッセージ数 8)

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=2577>
<http://emperor.tidbits.com/TidBITS/Talk/434/>

Tiger での Preview の問題 -- Tiger に付属している新バージョンの Preview にはいくつか新機能もあるが、無くなってしまった機能もいくつかある。(メッセージ数 4)

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=2610>
<http://emperor.tidbits.com/TidBITS/Talk/465/>

Spotlight でもファイリングは必要 -- Spotlight の検索テクノロジーによって、ファイル名を考えたりファイルの場所を指定したりする必要がいずれは無くなってしまうのかどうか、読者たちが議論する。(メッセージ数 3)

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=2611>
<http://emperor.tidbits.com/TidBITS/Talk/466/>

Glenn Fleishman が Slashdot した! -- TidBITS 寄稿編集者の Glenn Fleishman が彼のウェブログ wifinetnews.com に、シアトル市内の喫茶店が無料 Wi-Fi サービスを中止したことについて記事を書いた。この記事が slashdot.org で取り上げられたのを受けて、読者たちが彼のサーバの負担はどの程度のものだったか心配し、また無料ワイヤレスインターネットアクセスについての意見も寄せる。(メッセージ数 5)

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=2613>
<http://emperor.tidbits.com/TidBITS/Talk/467/>

Tiger 用の USB 2 ハブ -- USB ハブの品質というものには当たり外れが多い、とある読者が体験を語る。幸運にも、USB 2.0 のスピードに対応した他の機種が推薦された。(メッセージ数 3)

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=2614>
<http://emperor.tidbits.com/TidBITS/Talk/468/>

Norton Utilities は 10.4 に非対応 -- Symantec 社はそのウェブサイトで、Symantec SystemWorks と North Utilities が Mac OS X 10.4 Tiger 互換にアップデートされることはないと発表した。(メッセージ数 1)

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=2615>
<http://emperor.tidbits.com/TidBITS/Talk/469/>


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