TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#784/20-Jun-05

今週は二つの全く違った内容の記事をお届けする。Charles Maurer は、先週に引き続き、$100 以下のソフトウェアを使ってスナップ写真を修正するための初心者向けの手引きを語る。一方、Jeff Carlson は DD Tournament Poker でコンピュータ相手にポーカーゲームを戦い、自分の技術を磨こうと試みる。ニュースの部では、Opera Software が Mac 用ウェブブラウザのバージョン 8.0 を出荷、また先週の DealBITS 抽選の当選者をお知らせする。

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MailBITS/20-Jun-05

Opera 8 がスピードとセキュリティを誇る -- Opera Software が同社のウェブブラウザの最新版、Opera 8 for Macintosh をリリースした。このバージョンでは Opera の Windows 版および Linux 版のブラウザにあるさまざまの機能が Mac でも利用できるようになった。例えば、ページのロードの高速化、ネイティブな Scalable Vector Graphic (SVG 1.1 Tiny) のサポート、プライバシー関係機能の拡張、それに Opera の Extensible Rendering Architecture (ERA) によりページのアピアランスがブラウザウィンドウのサイズに基づいて調整されるようになったこと、などがある。Opera 8 は Mac OS X 10.2 かそれ以降を要し、5.5 MB のダウンロードだ。制限付きのバージョンは無料で使用でき、フルバージョンの方は $40 で購入できる。[JLC](永田)

<http://www.opera.com/>
<http://www.opera.com/pressreleases/en/2005/06/16/>(日本語)Opera 8 日本語版公開のお知らせ

DealBITS 抽選: Matias OS X Keyboard Winners の当選者 -- 先週の DealBITS 抽選で当選し、Matias の OS X Keyboard ($29.95 相当) を受け取ることになったのは、cox.net の Joe Benenati、yahoo.com の Jan Ferrera、wi.rr.com の Glenn Zieman、ericframpton.com の Eric Frampton、mac.com の Don Andrews、pensee.com の David Dunham、kvochick.com の Amy Kvochick、それに yahoo.com の Jean Ohlde の8名が、有効応募者 1,296 名の中から選ばれた。おめでとう! これに加えて、上記のうち最後の2名が DealBITS 紹介を受けての応募だったために、yahoo.com の Andrew Kvochick と macconnect.com の Robert Ohlde にもキーボードを受け取って頂くことになる。どうか、今後の DealBITS 抽選も、楽しみにお待ち頂きたい。そして、新しい抽選をあなたのお友達や家族、同僚の方々に紹介して下さることで、あなたが当選する確率が増えるのだということをお忘れなく。今回は応募総数の 10% 近くが友人から DealBITS を紹介されての人々からの応募だった。[ACE](永田)

<http://www.tidbits.com/dealbits/matias/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=08134>(日本語)DealBITS 抽選: Matias OS X Keyboard


ポーカーで腕試し: DD Tournament Poker

文: Jeff Carlson <[email protected]>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

高校時代も大学時代も、私はポーカーの勝負に参加したりすることは決してなかったし、正直言って、二年ほど前にある友人から、何人か集めてポーカーで遊ばないかと誘われたあの日までは、私はこのゲームのことをほとんど考えたこともなかったと思う。

近ごろでは、World Series of Poker や Celebrity Poker Showdown などのテレビ番組のお陰で、ポーカーが再び人気を復活させつつあるようだ。テレビに煽られたこの熱狂的なブームが来るよりも前から私がこのゲームに興味を向けていたという点にはささやかなプライドを持っているものの、正直に言えば私もこのポーカーの時流に乗っているというのが事実だ。それに、Maura Tierney のような女優が、普段からポーカーをプレイしていると称するセレブ連中をきれいに打ち負かすのを見るのも、それはそれで溜飲の下がる思いがするものだ。

<http://www.worldseriesofpoker.com/>
<http://www.bravotv.com/Celebrity_Poker_Showdown/Recaps/2/Game_6.shtml>

もちろん、このポーカーにおける問題は、これが何人かが共同でするゲームだということで、当然ながら一夜をカードゲームに費やしてもいいという友人たちを五人か六人集めるというのは簡単なことではない。(私の友人の多くは忙しいフリーランスのライターやアーティストたちなのだから。)インターネットゲームに参加するという手もあるが、私は自分がそれほど優れたプレイヤーではないということを自覚しているので、いくら何千マイルも離れたところに住んでいるのだとしても、そういう現実の人たちとライブでポーカーをプレイするというのは、何かちょっといたたまれない気分にさせられる。それに、現実にお金を失うというのもあまり嬉しいこととは言えない。

結局のところ、私はただプレイするのが好きなだけだ。ちょっと仮想のお金を賭けてみたいという欲求に駆られた時、最近の私は Mac で動くポーカー用アプリケーションを二つ、使うようになった。今回の記事では、Donohoe Digital から出ている DD Tournament Poker について書いてみたい。また後日の記事で、Scenario Software の iPoker の方もテストできればと思う。

<http://www.ddpoker.com/>
<http://scenario.com/iPoker/>

いつ Hold 'Em すべきかを知る -- このポーカーブームに関心のなかった人たちのための書き添えておくと、現在のところ圧倒的に流行しているのは Texas Hold 'Em(あるいは単に Hold 'Em)という名前の変種だ。このゲームでは、一人一人にまず二枚ずつのカードが伏せて配られ、それから皆がそれぞれにベットかフォルドをする。その後で、三枚のカード(これをフロップと呼ぶ)が表を上にして並べられ、この三枚はすべてのプレイヤーが共有することになる。それからさらにもう一枚(ターンカード)と、その後で最後の一枚(リバーカード)も共有のカードとして表を上に並べられる。(こういう洒落た用語も、私がポーカーに惹かれる理由の一つだと思う。)それぞれのラウンドの間ごとにベット(賭け)が繰り返され、合計七枚のうち五枚で最高のコンビネーションを作れた人がその回のゲームを勝ち取る。

トーナメントで勝負する時には、Hold 'Em は大勢の人たちが参加するのに適している。なぜなら、ベットの機会も多くて、いくつかの強制的アンティ(ブラインドと呼ばれる)もあり、それらによって賭け金が引き上げられていくからだ。ブラインドは一定の時間が過ぎれば増額されるだけでなく、テーブル上で順次回転して行く。例えば、ディーラーの左隣りに座っているプレイヤーは、カードが配られる前にスモールブラインドと呼ばれるもの(例えばチップで $10)を出し、そのさらに左隣りの人がもう少し高額(例えば $15)のビッグブラインドを出す。このシステムのお陰で、一人のプレイヤーが毎回毎回カードをフォルドしていつまでもチップをため込んだままにするということができなくなる。最終的にすべてのチップを獲得した人が勝者となる。

DD Tournament Poker 1.2 では、好きなだけの数のコンピュータ対戦者を入れてトーナメントを戦うことができる。標準の Card Room 設定では 40 人のプレイヤーとなっているし、2004 World Series of Poker の再現では 2,576 人のプレイヤーが参戦している。また、あなたがたった一人の相手だけと戦う Heads-Up ゲームもプレイできる。

インターフェイスは基本的に一つのテーブルを上から見下ろしたもので、ここには 10 人のプレイヤーが座る。大人数のゲームでは、プレイヤーが破産する度に他のプレイヤーがテーブルに座ることになる。

容易に想像して頂けるだろうが、これほど多くのプレイヤーやチップを管理するのに要するレベルの統合能力を求めるなら、コンピュータほど適しているものはない。スクリーンの左上の隅には、プレイされたゲームの回数、アクティブなプレイヤーとテーブルの数、あなたが全体で何位にランクされているか、がリストとして表示される。驚いたことに、こんな些細な情報が表示されているだけで、私はかなり大きな事業に参加しているという気分を味わうことができ、私が全体で2位にランクされて自分のテーブルでは最も高くチップが積み上がっていた時など、1位っていうのはどんな奴だ、と私は思わず叫んでみたりしたものだ。(だって、想像力を膨らませることこそ、どんなゲームでも一番の楽しみでしょう?)

コンピュータのスキル -- 私がこれまで実地に Hold 'Em をプレイした経験はない(私は家庭でのゲームをしたことがあるだけで、本物のカジノでの経験がない)ことを差し引いての話だが、この DD Tournament Poker における人工知能はかなり侮り難いレベルに達していると思う。コンピュータ対戦者のスキルレベルは Low、Medium、High のうちから選べるが、Medium と High のレベルではコンピュータ対戦者たちがより頻繁にブラフをし、より攻撃的にベットをつり上げ、過去のゲームでのあなたの実績をより参考にするようになる。

私は普段 Medium レベルの対戦者たちを相手にプレイしているが、時々彼らは強い手を持っている場合に少額のベットをするという戦術で私からチップをむしり取ることに成功している。少額のベットで来られると、どうしても大きく賭けてブラフしてやろうという誘惑に私は負けてしまうのだ。けれどもブラフがうまく行くことも多い。特にゲームの初めの頃には、現在のベットの三倍か四倍をいきなり賭けて他のプレイヤーたちをフォルドさせる「ブラインドスチール」が簡単に決まることもある。

コンピュータゲームに欠けているものは、「テル」だ。これは、そのプレイヤーが強い手を持っているのかそれともブラフしているのかを推定できる手掛かりとなる、声に出さないふるまいのことだ。例えば、良い手が来た時には椅子にもたれ掛かるとか、ブラフする時には鼻をいじるとかいう癖のあるプレイヤーをコンピュータゲームでは見ることはできない。プロのポーカープレイヤーにとっては、どのカードが来れば強い手ができるかという知識と同じくらいに、テルはプレイの中核を占める重要な情報なのだ。

けれども、コンピュータ対戦者のふるまいをもとに、それを電子的なテルとして利用できることがない訳ではない。幾人かのプレイヤーは頻繁にレイズするし、その状態で最後のカードが配られた時点でその人以外の全員がフォルドしているのでなければ、その人がブラフしているのかどうか、たいていの場合に見極めることができる。残念ながら、(少なくとも私が見る限り)個々人のプレイヤーが一貫した挙動を示すということはないようだ。Albert(プレイヤーたちはファーストネームで表示される)があるゲームでは攻撃的にプレイしたかと思えば、別のゲームではいきなり臆病になることもある。だから、次に Albert があなたのテーブルにやって来た時に彼に対する過去のあなたのプレイを参考にすることはできない。(2005 年 8 月 5 日に DD Tournament Poker のバージョン 2.0 が出ることになっているが、そのバージョンでは AI の挙動も各種設定も、一段と進歩すると予告されている。2005 年 6 月 5 日以降に現バージョンを購入すれば、無料でバージョン 2.0 にアップグレードできるという。)

<http://www.ddpoker.com/details-v2.html>

あなたの手も私の見える所に置く -- インチキのできる可能性が隠されていないものを、コンピュータのカードゲームと言えるだろうか? もちろん、袖の中にエースを隠しておくなんてことは無理だが、DD Tournament Poker ではいくつかのインチキのオプションが用意されていて、あなたのゲームの成績を向上させる助けになるようにしている。

ポーカーで不満に思うことの一つは、いったんあなたがフォルドしてしまえば、他の人のカードの内容を覗いて実際には勝てたのかどうか見ることがもうできないことだ。このルールのお陰で、あなたがブラフしていたのかどうかを他の人に知られることが防げるし、現実のプレイで(私自身も含めて)弱い手でもとにかくステイして、フロップ、ターン、リバーと進むうちにどれだけ手が発展するかを試してみるということも奨励され得るわけだ。このプログラムのチートオプションの中には、勝った手を表示する、フォルドした手を表示する、そして表向きのカードを全部表示するという機能もあるので、例えばフォルドさえしなければあの貧弱なスペードの2とハートの4でもストレートができて勝利手となれたのに、と自分で自分の頬をぴしゃりと打つこともできるのだ。

もっとパワフルなオプションとしては、他のプレイヤーの手の中を覗くというのもある。この機能をオンにすると、マウスを他のプレイヤーのカードの上に動かせばそのカードが表示される。その場合はコンピュータがあなたに向かってブラフすることはできなくなるが、後で配られるカードが何になるかはわからないのだから、あなたが負けるという可能性はまだ残っている。最後に、Never Go Broke というオプションを選ぶこともできて、その場合は次の手が配られる度にトーナメントリーダーの持つチップのうち半分があなたの山にこっそりと回って来ることになる。よい子たちはこんなことをしちゃ駄目ですよ!

ポーカーの一夜 -- DD Tournament Poker は一人でプレイするように設計されているが、Poker Night モードを使えば、実際のカードとチップを使ったホーム・トーナメントを催行する補助としても使える。大きなデジタル時計が表示されて現在のレベルをカウントダウンし、現在のブラインド額もリストされる。この機能を使ってホームゲームの計時管理ができ、決まった時間間隔でブラインドを増額することで朝までゲームに熱中してしまうのを防げる。組み込み済みのポーカーゲームの種類がいくつか設定されていて、いろいろなレベルのプレイに対応できるようになっている。例えば Poker Night 1 ではおよそ 3 時間続くプレイを想定しており、Poker Night 2 では 4 時間かそれ以上、といった具合だ。

Poker Night ゲームをあなたの指定する通りに細かく設定することもできる。ブラインドの額や、リバイ(チップを全額失ったプレイヤーが更にお金を出して買い増すこと)の回数、その夜の終わりに賭け金の精算をどのようにするか、といったことが指定できる。

私はまだライブの Hold 'Em トーナメントを主催したことはないので、実際上のことを語ることはできないが、夜が更ければ誰もが扱い切れなくなるような雑事をコンピュータがきちんと処理してくれるというのは、良いことだと思う。

さあ行こうぜ、相棒よ -- DD Tournament Poker にはその他にも数々の機能があるが、説明の不要なものも多い。カードの裏のデザインはいくつか異なったものの中から選べるし、自分でデザインしたものを使うこともできる。(ただ、私が作った画像を指定してみたところ、カードを配る時の速度がかなり遅くなってしまった。)手の内の情報を表示して、現在の手の強さから勝つ確率を示してくれる設定もある。また、自分の手が普段は伏せられていてカーソルがその上に来た時だけカードを見ることができる設定もあり、これを使えば自分の手を暗記する習慣がついて現実のゲームに役立つだろう。実際にカジノでプレイする時には、自分のカードを一回見た後はテーブルの上に伏せて置いておくのが普通だからだ。サウンド効果もなかなかいい感じで巧妙にできていて、音量も調整できる。バックグラウンド音楽のオプションもあるが、私はこのプログラムを初めて起動させたその時以来、音楽はオフのままにしている。

DD Tournament Poker は Java アプリケーションなので、各種のコントロールはあまり Mac らしいフィーリングを与えてくれないが、それは大した問題ではないだろう。プレイ中に使う各種のボタン(ベット、フォルド、コール、その他)はすべてそれぞれのコマンドの頭文字をキーボードでタイプすれば働く。だから、マウスに触れる必要があるのは、一旦ゲームを中止して後で再開できるようにゲームを保存する時と、プログラムの各種オプションにアクセスする時くらいだ。

もしもあなたのお好きなポーカーゲームが Texas Hold 'Em なら、この DD Tournament Poker はその素晴らしいコンピュータ版と言える。特に私はこれが単なるカードゲーム・シミュレータではないという点が気に入っている。このゲームの開発者は、あなたが本物のゲームをプレイするための準備としてこのデジタル・ツールを使いたいのだということを意識して、これをデザインしているからだ。もちろん、本物の人間相手に勝負をするにはそれなりの覚悟が要る。私もぜひ近いうちに、近所のカジノに(今はワシントン州にもいくつかカジノができている)出かけて一勝負し、このプログラムでトレーニングした甲斐があったかどうか、試してみたいと思う。

DD Tournament Poker は、$30 の登録料を払う価値が充分にある。デモ版も 9.5 MB のダウンロードで入手できるが、これは毎回のゲームが 30 ハンドに制限されている。

<http://www.ddpoker.com/demo.html>


スナップ写真をパチリと修整

文: Charles Maurer
訳: 羽鳥公士郎 <hatori@ousaan.com>

私は仕事が好きだ。『ボートの三人男』の語り手のように、何時間でも座って注意していられる。何かしなければならないものがあるときはいつでも、それをいつまでも続ける方法を一所懸命探す。私の経験では、写真を修整することほど、このことを容易にしてくれるものはない。これは簡単で、やりがいがある。何時間でも作業を引き延ばすことができる。

私の妻 Daphne は、作業を引き延ばすことについては私よりもうまくなかったが、彼女も使えそうなカメラを見つけ(TidBITS-783 の "コンパクトカメラを選ぶ: Panasonic DMC-FX7" 参照)、撮った写真のいくつかを修正しようとし始めた。そうなれば、彼女もまずまず作業を引き延ばすことができる。写真を修整することは、それらをもう一度見ることの理由になるということを彼女は理解し、初心者だとはいっても、操作をすればやはりすぐにやりがいを得るようになった。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=08136>(日本語)コンパクトカメラを選ぶ: Panasonic DMC-FX7

Daphne の役に立つよう、スナップ写真用のカメラを使う初心者という視点から見たときにどんなことが無理なくできるだろうかと考え、うまくいくようなレシピを作成した。これは、スナップ写真を、最小限の技術と時間しか必要とせず、十分実用的な範囲で、できるだけ改善しようとするものだ。可能性のほとんどすべてを引き出すことはできないだろうが、ほとんどの場合にほとんどの人にとって十分なはずだ。

この方法を考えるにあたって、典型的なコンパクトカメラの限界を前提にしたということに注意してほしい。この限界については、先週の私の記事で説明した。この方法はデジタル一眼レフで撮った写真に対しては全く理想的ではない。また、この方法では露出の悪い写真を救うことはできない。実際のところ、デジタルコンパクトカメラで露出の悪い写真を撮ってしまったら、それを救う方法はない。デジタル一眼レフならば、露出の悪い写真にでも引き出すことのできる情報が記録されていることがあるが、デジタルコンパクトカメラでは、写真を撮った後に液晶画面に表示されるものが、ほとんどそのまま最終的に得られるものになる。

(うまいことに、デジタル写真では、露出が悪くなる理由はない。写真を撮ったその場で、結果を見ることができる。それが気に入らなければ、露出を調整してもう一度撮ればよい。コンパクトカメラでは、露出が悪くなるのは、太陽があなたの正面にあって、あなたに面するものがすべて影になってしまう場合が普通だ。カメラは情景の平均の明るさを測定するから、太陽が明るいために、カメラが勘違いして露出を下げすぎてしまい、影が黒くなって見えなくなってしまう。これはよくあることなので、たいていのコンパクトカメラには、これを補正するモードが用意されている。逆光モードとかスノーモード、ビーチモードなどというのがそれだ。)

基本的な 12 ステップのプロセス -- この記事の後半で、私のレシピに沿って料理するために必要なソフトウェアについて話すつもりだが、最初に、その手順をすべて説明しておきたい。これは込み入っているように見えるかもしれないが、見かけよりは単純だ。Daphne もすばやく簡単にこなしているし、もっとも難しいところといえば、コマンドがメニューやダイアログのどこに隠れているかを覚えることだ。

  1. ほとんどのカメラは、ファイルを JPEG と呼ばれる高い圧縮率のフォーマットで保存する。これは便利ではあるが、圧縮アルゴリズムは情報を捨ててしまうので、JPEG フォーマットでファイルを保存すると、そのたびにこのアルゴリズムを適用し、それによってますます情報を失ってしまう。あなたは、それぞれの手順のあとに作業を保存しておきたいと思うだろう。もし写真をJPEG ファイルとしてコンピュータに移し、それに対して作業をすれば、画像はゆっくりと崩壊に向かう。そうならないために、写真をコンピュータにコピーするとき、TIFF ファイルに変換して、それに対して作業をする。

  2. 屋外では、最も暗い影と最も明るい部分との明るさの違いは、1,000,000:1を越える。印刷した写真では、利用可能な範囲は 100:1 を越えることはめったにない。当然のことながら、あなたは紙の上で可能となる範囲をすべて使いたいと思うだろう。写真の中の明暗のレベルを、完全な黒から純粋な白までゆきわたるように調節する。この手順では、2つのポインタを動かすことになる。

  3. 明暗のレベルを調整したら、写真が全体として暗すぎたり明るすぎたりするかもしれない。別の言い方をすれば、その写真の明暗の平均値が暗すぎたり明るすぎたりするのだ。これを補正するには、コンピュータに対して、明暗の平均値を正確にどれだけ暗くするのかを伝えればよい。この手順では、1つのポインタを少しずつ動かして、写真がもっともよく見える場所を探す。

  4. これで写真の全体的な見た目はよくなったはずだ。黒から白までゆきわたり、細かい部分のほとんどは適切な明るさになっている。しかし、一般的には、影が暗すぎることが多い。あなたは、影を明るくしたいと思うかもしれない。暗いものをすべてではなく、影だけを明るくするのだ。この手順でも、スライダを動かして、写真がもっともよく見える場所を探す。

  5. 明るさの範囲が違う(手順1)ので、写真が、あなたの見たものを正確に再現することはないということは明らかだ。これは明るさだけでなく、色についても当てはまる。写真の色が満足のいくものになることはあっても、正確になることはありえない。スナップ写真用のカメラは、普通は手を加えなくてもそれなりに満足のいく色を作り出すが、全体の色相を少し暖かくしたり少し冷たくしたりするとよくなることも多い。色相を変えるには、スライダを少しずつ動かしながら改善されるところを探す。

  6. カメラは、明るさを圧縮するのと同じように、色の彩度も圧縮する。しかし、極端な場合に対応するため、必要以上に圧縮してしまうのが普通だ。彩度を少し上げてやると、写真の見栄えがよくなることが多い。彩度を上げるには、スライダを少しずつ動かす。これが終わったら、色相をもう一度調整してもよい。

  7. 赤目はグロテスクに見えるが、直すのは簡単だ。目を指定するか、目の周りを囲んで、クリックする。

  8. 鉛直線は垂直になっているべきだ。そうなっていなかったら、写真を回転して垂直にする。そのためには、写真の1つの角をつかんで、円の周りで適当な角度だけドラッグする。もちろん、鉛直線のすべてが平行になっていなかったら、すべてを垂直にすることはできない。そういうときはもっともよい妥協点を探す。

  9. 建物の写真を撮るときにカメラを上向きに傾けていると、壁が上に向かって収束するので、倒れてくるように見える。カメラが明らかに上向きまたは下向きでない限り、つまり、高層ビルを見上げたりあなたの靴を見下ろしたりしているのでない限り、垂直な線は垂直になっていなければならない。同じように、カメラが明らかに横を向いていない限り、水平線は水平になっていなければならない。これを変更するには、4つの角をドラッグして調節するか、あなたの代わりに角をドラッグしてくれるスライダを少しずつ動かすかして、写真の形を整える。

    (これは高度な操作だと思っている人が多いが、それはフィルム時代の名残だ。フィルムでは、遠近感を調整するには、ビューカメラの後ろにまわって黒い布の下で長い時間を費やす必要があった。コンピュータでは、この調整はちょっとした手間に過ぎないし、驚くほどの違いを生む。)

  10. 写真を切り抜いて、重要なものに注意を集中させ、重要でないものを消す。写真の縦横の比率を気にする必要はない。写真の内容が大事だ。切り抜くためには、残したいものの周りに長方形を描いて、クリックする。

  11. もし写真の情報が、色よりも線から来ているのなら、色は目にとって邪魔となり、情報を加えるよりは差し引いてしまうかもしれない。そういうときは、写真を白黒に変換するとよい結果が得られることがある。下記のリンクで実例をご覧いただける。カラー写真が本来よりもよく見えないときは、白黒、コンピュータ用語では「グレースケール」にしてみるとよい。マウスを一回クリックするだけで写真を変換することができ、いつでも元に戻すことができる。結果が気に入ったら、それを別の名前で保存して、手順3と4を繰り返すとよい。

    <http://www.tidbits.com/resources/784/kangaroos.jpg>

  12. 輪郭を強調すると、あるところまでは、写真が鮮明になる。強調しすぎると、輪郭がゆがんでしまう。スライダを調節したり、メニューコマンドを選んだりして、いじってみるとよい。コンパクトカメラはすでに画像をシャープにしているから、引き伸ばすときには効果がないことが多いが、ウェブ用の小さい写真には効果があるかもしれない。シャープ化はやり直しができないし、適切な量は写真の目的によって異なるから、必ずコピーに対して実行すること。

これを Daphne に初めて説明したとき、彼女は、私は正気でないと思った。「これがすばやく簡単ですって? それなら相撲取りはやせっぽちね? 」しかし、1枚の写真で実際にこれをやって見せると、彼女は目を見開いた。彼女はすべての写真を保存し、悪いものだけを直すことから始めたが、どんなことがおきるのかを理解すると、よいものを修整してほかのものは捨てるようになった。彼女はもはや、へディーの頭から木が生えている写真には満足できなくなった。もちろん、木を消すことは可能だ。画像を、オリジナルのものが何も残らなくなるまでリタッチすることもできる。しかし、それは別のレベルの写真家がすることだ。

道具を選ぶ -- 私はこのレシピを初心者用に作ったのだが、私の味蕾は、写真編集プログラムを作っている人たちとは異なっているようだ。iPhoto もほかの初心者向けプログラムも、この仕事を完全にこなすことができない。プロフェッショナルレベルまでいかないところでは、2つのパッケージだけがこの仕事をこなすことができる。より高価なものは、GraphicConverter(30 ドル)に2つのサードパーティープラグイン、ShadowFixer(17 ドル)とPerspective(40 ドル)を組み合わせたものだ。(プラグインというのは、別のプログラムに機能を追加する小さなプログラムだ。ほかのプラグインでもPerspective と同じ仕事をするものがあるが、それらはより高価だ。)より安価で、より強力で、より機敏なものは Adobe Photoshop Elements(80 ドル)で、これはそれ自身ですべてをこなすことができる。Photoshop Elements にはよりよい説明書もつく。

<http://www.lemkesoft.com/en/graphcon.htm>
<http://www.fixerlabs.com/pages/shadowfixer.html>
<http://www.theimagingfactory.com/>
<http://www.adobe.com/products/photoshopelmac/main.html>

(ShadowFixer と Perspective をインストールするには、それらを/ライブラリ/Application Support/GraphicConverter/Plug-ins にコピーする。ライブラリ フォルダは、コンピュータのルートディレクトリにあるものでもよいし、あなたのホームディレクトリにあるものでもよい。前者に置くと、あなたのコンピュータを使うすべてのユーザがアクセスできる。後者では、あなたしかアクセスできない。)

Photoshop Elements は GraphicConverter よりお買い得だが、ずっと使いづらい。これは大切なことだ。特に、Photoshop Elements は Macintosh の数多くの規範と慣習にしたがっておらず、ほかのプログラムとの統合という点でもうまく動かない。たとえば、「電子メールに添付」機能は、私が使っている電子メールクライアント PowerMail を認識しない。

Daphne のためにこの2つを見てみた結果、GraphicConverter の方が使いやすいだろうと結論したが、これには環境設定項目がたくさんあって、挫折しないためにはそれらを適切に設定しなければならず、それにしては説明書が初心者向きではない。家の中にヘルプデスクがなければ、Photoshop Elements の方が覚えるのは簡単だろうと思う。

どちらのプログラムでも、いくつかのステップでは、写真がもっともよくなるまでスライダを動かすことが求められる。あなたがどんなに経験豊かだとしても、どの時点で画像がもっともよくなるのかを見極めることは決してできないから、このような操作に確信を持つことはありえない。あなたにできることといえば、ある点でよりよくなることがなくなって再び悪くなりはじめるということを見ることだ。両方の方向に行き過ぎてみて、それぞれの方向で、どこで写真が再び悪くなりはじめるのかを見極め、両者の妥協点を取る必要がある。それぞれの方向に何度か行き過ぎてみれば、どこが中間の点であるかがそれなりにはっきり分かることもあるし、変化が不明瞭なので正確な設定を気にする必要がないということが分かることもある。

最後に一言。作業を始める前には、モニタをキャリブレートすること。これは簡単な作業だ。システム環境設定で ディスプレイ パネルを開き、カラー タブをクリックしてから 補正 ボタンをクリックする。現れたウインドウで、詳細オプション にチェックをして、続ける をクリックし、指示に従う。ガンマを設定するよう求められたら、PC 標準の 2.2 に設定する。これは普遍的な標準(sRGB)の一部となっている。古い Mac 標準の 1.8 は、一般的な使用にはもはや適さない。

GraphicConverter による手順 -- GraphicConverter の使用法についてより詳しく学ぶには、Hagen Henke による 10 ドルの PDF マニュアルが絶対に必要だ。Help メニューはそのマニュアルを指し示している。上でおおまかに述べたプロセスを実行するために GraphicConverter 5.6 を使うときの詳しい手順は以下のようになる。[GraphicConverter の古いバージョンを使うことも、インターフェースにわずかな違いがあるとしても、可能だろうということに注意してほしい。しかし、私はバージョン 4.4 にプラグインを認識させることができなかった。 -Adam]

1. TIFF として保存する。File メニューから Save As を選択し、Save ダイアログの中で Format ポップアップメニューから TIFF を選択する。

2 & 3. レベル補正は Picture> Levels にある。左側のヒストグラムが写真の明暗を表している。三角形が両端の点と中間点を表している。外側の三角形を内側に、曲線のもっとも外側の端まで動かして、次に写真が全体としてもっともよく見えるように真ん中の三角形を調節する。

4. Filter> Fixerlabs Filters> ShadowFixer を選択する。Amount スライダを 50 パーセントにすることから始めて、影の見え方がもっともよくなるまで2つのスライダをいじる。それが終わったら、手順2と3に影響があったかもしれないので、もう一度チェックする。ShadowFixer プラグインの小さなウインドウを、+ 記号をクリックすることで拡大できることを心に留めておくとよい。

5 & 6. Hue スライダと Saturation スライダが Picture> Brightness/Contrast にある。それをいじる前に、Link Sliders と Full Screen Previewチェックボックスが選択されているようにする。Brightness と Contrast スライダは使わないようにする。

7. 赤目を補正するには、楕円形の選択ツールをクリックして、瞳孔を選択し、Effect> Red Eye を選択する。楕円形の選択ツールは、ツールボックスの左側の列の上から2つ目にある。ツールボックスは Window> Show Toolbox(古いバージョンでは Picture> Toolbox)を選択すると開く。

8 & 9. 写真を回転したり遠近感を修正したりするには、Filter>theImagingFactory> Perspective を選択する。あなたのレンズの焦点距離を選択し(これは重要ではなく、間違った長さがもっともよく見えることもある)、スライダをいじる。Rotation はほかの2つと影響し合うけれど、まず回転角を設定し、OK をクリックしてから、もう一度ウインドウを開いてほかのことをしてもよい。ここでの操作では、そのたびごとに鮮明さがわずかずつ失われるから、こういう方法は原則としてはよい方法ではないが、スナップ写真では、その違いはたとえ拡大したとしても目に付くほどにはならない。

10. 長方形の選択ツール(プログラムのバージョンによって、ツールボックスの右側の1番目か2番目のツール)を使って望みの部分を選択し、Edit>Trim Selection を選択して切り抜く。

11. Picture> Mode> Grayscale を使って白黒に変換し、手順2、3、4をもう一度繰り返してみる。

12. Effect> Sharpen Edges のスライダを調節して(コピーに対して)シャープ化を試してみる。

Photoshop Elements 3.0 による手順 -- Standard モードで作業する必要がある。これを選ぶには、Quick Fix ボタンではなく Standard Edit ボタンをクリックする。どちらのボタンも右上の水平ツールバーにある。(このボタンはボタンのように見える、つまり操作可能でクリックされるのを待っているボタンのように見えるが、そのようには機能しないということに注意しよう。というのも、これは実際には操作不可能なボタン、すでに選択されているボタンなのだ。Photoshop Elements のユーザインターフェースにはいらいらするほど一貫性がない。幸いにも、ヘルプファイルはよくできている。)

始める前に、Photoshop Elements> Color Settings を Limited Color Management に設定する。この設定は、ダイアログに書いてある通りウェブ用に適しているだけでなく、あなたが使うであろうスナップ写真用のプリンターやあらゆる写真印刷サービスのためにも適している。

1. Save As ダイアログで、sRGB プロファイルを埋め込むオプションを選択して、TIFF で保存する。(カラープロファイルについて気にする必要はないが、Photoshop Elements は Windows 用に生成したプロファイルを埋め込むということを覚えておくとよい。このプロファイルは Mac ではうまく働かない。)

2 & 3. レベル補正は Enhance> Adjust Lighting> Levels にある。ヒストグラムが写真の明暗を表している。三角形が両端の点と中間点を表している。外側の三角形を内側に、曲線のもっとも外側の端まで動かして、次に写真が全体としてもっともよく見えるように真ん中の三角形を調節する。

4. Enhance> Adjust Lighting> Shadows/Highlights で影を明るくする。それが終わったら、手順2と3に影響があったかもしれないので、もう一度チェックする。

5 & 6. 色相と彩度は Enhance> Adjust Color> Adjust Hue/Saturation にある。

7. 赤目を取り除くには、赤目ツール(垂直ツールバーの左側の中ほど)をクリックし、赤くなってしまった目を1つずつクリックする。左上の水平ツールバーにあるスライダで、黒くする領域と色調を細かく調整できる。

8 & 9. 写真を回転するには、Image> Rotate> Free Rotate Layer を選択し、Photoshop Elements に新しいレイヤーを作らせてから、写真の端にある黒い「ハンドル」の1つをつかんで、それを回転させる。(この作業を始めるときに、写真のどの部分も選択されていないことを確認すること。さもないと、この操作で選択部分だけが回転してしまう。Photoshop Elements で何かの選択を解除するには、Select> Deselect を選択する。)もう一つの方法として、遠近感も修正する必要があるときは、写真をそれぞれの方向にゆがめて、それによって同時に回転修正もできる。最初にキャンバスを1インチか2インチ拡大して(Image> Resize> Canvas Size)、Image> Image Transform> Skew を選択し、ハンドルを動かす。

10. 切り抜くには、最初に切り抜きツール(垂直ツールバーの左側の中ほど)をクリックし、次に長方形をドラッグして描く。その長方形で切り抜くか、その選択を解除するには、切り抜きツールをもう一度クリックするか、画像をControl-クリックしてコンテキストメニューから Crop を選択する。

11. Image> Mode> Grayscale を使って白黒に変換し、手順2、3、4をもう一度繰り返してみる。

12. Filter> Sharpen にあるメニューコマンドの上の3つを使って(コピーに対して)シャープ化を試してみる。

PayBITS: 写真を修整するための Charles の手順説明があなたのお役に立ったなら、ぜひ「国境なき医師団」に寄付をお願いします。 <http://www.doctorswithoutborders-usa.org/donate/>国境なき医師団日本
PayBITS の説明 <http://www.tidbits.com/tb-issues/lang/jp/paybits-jp.html>


TidBITS Talk/20-Jun-05 のホットな話題

文: TidBITS Staff <[email protected]>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

各話題の下の2つ目のリンクは私たちの Web Crossing サーバでの討論に繋がる。こちらの方が高速のはずだ。

買うべきか、買わざるべきか -- Apple が Mac を Intel プロセッサに移行させようとしていると発表してしまった現在、これは誰もが思い浮かべる疑問だろう。今、Mac を買うべきか、それとも買い控えるべきかと。この議論はコンピュータの購入全般にかかわる多岐にわたる問題点を引き出すこととなり、特に既存のソフトウェアとの後方互換性について、また一般に人々はどれくらいの周期で Mac を購入するのかという話題について盛り上がった。(メッセージ数 29)

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=2629>
<http://emperor.tidbits.com/TidBITS/Talk/483/>

チップの変更で Windows からの転向を -- Intel パワーの Mac なら、より多くの Windows ユーザーに Apple のハードウェアを買って Mac OS X に乗り換えるようにと説得することができるだろうか? 少なくとも理論的には、将来の Mac では Windows も走らせられるはずだから。(メッセージ数 3)

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=2631>
<http://emperor.tidbits.com/TidBITS/Talk/485/>


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Valid XHTML 1.0! , Let iCab smile , Another HTML-lint gateway 日本語版最終更新:2005年 12月 26日 月曜日, S. HOSOKAWA