Happy holidays! 年末年始の休暇に入る前に、皆さんに休暇中にもゆっくりと楽しんで頂けるよう、たっぷりの内容を盛り込んだ増大号をお届けする。まず今後を見渡して、1 月の Macworld Expo で私たちにどこで会えるかの情報をお伝えし、Adam は皆がお世話になった Info-Mac Network が引退することを発表する。Charles Maurer が再び登場してデジタル写真の印刷とプリンタの購入について検討する。また、リリースのお知らせとしては SmileOnMyMac の browseback、Now Up-to-Date and Contact 5.1、Joe Kissell の電子ブック“Take Control of .Mac”、それに日本語版の“Take Control of Sharing Files in Tiger”がある。それから、レトロなゲームの Midnight Mansion が DealBITS 抽選の賞品となる。ではまた来年に、お会いしましょう!
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TidBITS の 2005 年末休暇 -- 今年もまた年末に向かってラストスパートの日々だった。トラックやクロスカントリー、ロードレースを普段からしている私が言うのだから間違いない。これは言葉のあやではなく、私たちは文字通り疲れ切っているのだ。だから、私たちは 2005 年最終号となるこの TidBITS とそれに引き続く数週間の本格的な休止期間を心待ちにしていたと言わせていただく。しかし、従来と同様、私たちは私たちだけでこのようにうまく運ぶことはできなかったに違いない。だから、私やTonyaがTidBITSを続けられるように手助けしてくれた全ての人に心からの感謝の気持ちを捧げたい。Geoff、Jeff、 Glenn、 Matt、 Mark。私たちのインターネットホストである digital.forest の善良な人たち。企業スポンサー。今年素晴らしい記事を書いてくれた親切な執筆者。Take Control の作者や編集者。無私なボランティア翻訳者。TidBITS Talk の参加者。そしてもちろん、私たちの文章を読むために自分の時間を使ってくれた読者すべて。皆さんどうもありがとう、皆さんの願いが叶いますように。次号は、私たちが Macworld Expo in San Francisco に向けて力を蓄えている真っ最中の 2006 年 1 月 9 日の発行予定だ。 [ACE](笠原)
SmileOnMyMac が browseback をリリース -- 今日、ウェブは広大な場所になった。例え Google のようなサーチエンジンを使ってさえそうで、以前にウェブ上で見つけた何かを探し出そうとすることは困難なことになってしまった。SmileOnMyMac は、あなたのウェブサーフィンの履歴を browseback 1.0 でブラウズするという新しいやり方を思いついた。これは、あなたが訪れたあらゆるページの PDF サムネイルを作り、サムネイルの並びが、トランプで遊んでいるように見えるようにして、アニメーションスタックとして表示するというものだ。それはエレガントなプレゼンテーションだ。もしあなたがビジュアル人間なら、あなたが訪れたページを絵として見られることは、St. Clair Software の HistoryHound 1.8 のようなページタイトルと URL の文字によるリストより見易いだろう。browseback では、HistoryHound と OmniWeb 5 とでできるような、訪れたページのコンテンツに対する全文検索もできる。さらに、ウェブベースのアプリケーションがロードする類似した多量のページによってインデックスが雑然としないよう、特定のサイトがインデックスに入らないよう取り除くこともできる。あなたが探しているページを見つけたら、それをウェブブラウザで見ることも、プレビューを使ってPDFを見ることも、単独ファイルとしてPDFフォーマットで保存することも、誰かに電子メールで送ることも、印刷することもできる。browseback を使うためには、Mac OS X 10.4 Tiger が必要だが、browsback は全てのメジャーなウェブブラウザでのサーフィンを記録することができる。これは $30 で2.4 MB のダウンロードだ。 [ACE](笠原)
<http://www.smileonmymac.com/browseback/>
<http://www.stclairsw.com/HistoryHound/>
<http://www.omnigroup.com/applications/omniweb/>
Now Up-to-Date & Contact 5.1 がリリースされた -- Now Software は、カレンダーとコンタクト管理の統合ソフトに対する多数のマイナーな機能強化とバグフィクスを加えた Now Up-to-Date & Contact 5.1 をリリースした。新しいキーボードショートカット、Unsanity の Smart Crash Reports というレポートアプリケーションのサポート(別にインストールする必要有り)、完成度が高まったスクロールホイールサポート、印刷の改良、ウェブパブリッシュの改善、等々が改良点だ。Now Up-to-Date & Contact 5.1 は登録ユーザには無料アップデートが提供される。17.5 MB のダウンロードで十分に価値のあるものだ。 [ACE](笠原)
<http://www.nowsoftware.com/products/nudc5/51.asp>
<http://www.unsanity.com/smartcrashreports/>
MacNotables での TV についての議論 -- Tonya と私は、最近の MacNotables podcast で Andy Ihnatko と Chuck Joiner と一緒に楽しく夜を過ごした。大きなスクリーンのデジタルテレビを Mac につなげるにはという単純なユーザの質問が、テレビ、映画、「配信革命」、そして、今日のインターネットが普及した世界の中で、ビデオを入手し支払う方法が論理的か非論理的かに話は広がった。 [ACE](笠原)
<http://macnotables.com/archives/2005/521.html>
DealBITS 抽選: Classic Solitaire の当選者 -- 先週の DealBITS 抽選で当選し、dogMelon の Classic Solitaire を受け取ることになったのは、adobe.com の Alan Stearns、hotmail.com の Bill Barstad、cox.net の Bruce Plummer、earthlink.net の Lowell Neudeck、comcast.net の Thomas Mansheim だ。 残念ながら当選しなかった皆さんも、2005 年 12 月 29 日までの期間、下の三つ目のリンクから注文すれば Classic Solitaire が 10% 割引になり $26.95 になる。この割引は TidBITS 読者の皆さんすべてに提供されている。650 人の応募者に感謝したい。そして、今後の DealBITS 抽選もお楽しみに! [ACE] (笠原)
<http://www.dogmelon.com.au/sol/Mac_Solitaire.shtml>
<http://www.tidbits.com/dealbits/classic-solitaire/>
<https://secure.bmtmicro.com/servlets/Orders.ShoppingCart?CID=1290&DISCOUNTCODE=QGN000M1&PRODUCTID=12900004>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=08360> (日本語)DealBITS 抽選: Classic Solitaire
文: Adam C. Engst <[email protected]>
訳: 笠原正純<panhead@draconia.jp>
最近、私はレトロゲームにご執心だ。だから、ActionSoft の Vern Jensen が彼の Midnight Mansion というゲームを DealBITS 抽選に提供してくれたときに興味をそそられた。これは、一つの世界を探検するタイプのゲームで、Indiana Jones のようなキャラクターを操作して、障害や妨害を乗り越えて宝を集めるものだ。もしあなたが Dark Castle や Prince of Persia を楽しんだのなら、Midnight Mansion を気に入るだろう。グラフィックは、あなたのマシンのグラフィックスカードに負担をかけない代わりに、カラフルで漫画チックで子供っぽい。サウンドはお見事な出来映えだ。私は最初のテストでチュートリアルモードが特に気に入った。ここでは、ゲームに現れるマークがゲームの基本を教えてくれる。他のゲームで、私は時々、基本的なゲーム操作を習得することが難しいと感じた挙げ句、仕事に戻らなければならないことを思い出すことがあった。
<http://www.actionsoft.com/midnightmansion.html>
今週の DealBITS 抽選は元旦まで継続することとし、一つ 20ドルの Midnight Mansion を 5 本賞品にする。幸運が足りずに当選から漏れた応募者にも Midnight Mansion の割引価格の資格が贈られるので、ぜひ奮って下記リンクの DealBITS ページで応募して頂きたい。寄せられた情報のすべては TidBITS の包括的プライバシー規約の下で扱われる。どうかご自分のスパムフィルターに注意されたい。当選したかどうかをお知らせする私のアドレスからのメールを、あなたに受け取って頂くのだから。また、もしもあなたがこの抽選を紹介して下さった方が当選すれば、紹介に対するお礼としてあなたの手にも同じ賞品が届くことになるのもお忘れなく。
<http://www.tidbits.com/dealbits/midnight-mansion/>
<http://www.tidbits.com/about/privacy.html> (日本語)TidBITS プライバシー規約
[訳注: 応募期間は 11:59 PM, 01-Jan-2006 Pacific Standard Time まで、つまり日本時間で 1 月 2 日(月曜日)の午後 5 時頃までとなっています。]
文: Adam C. Engst <[email protected]>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>
TidBITS の次号がお手許に届く頃には、San Francisco での Macworld Expo がもう始まっていることだろう。ショーのフロアが開いているのは 2006 年の 1 月 10 日から 1 月 13 日までだ。私の調べた限りでは、このショーのフロアは 330 以上の出展があってぎっしりの盛況になることだろう。Moscone Center の South Hall に全部が収まってしまうとはいっても、私の感じでは会場の雰囲気はその昔の巨大な Macworld Expos にずっと近づいたものになると思う。当時のようにパーティだらけということにはなるはずもないが、今回は予定されている公開イベントの数が前回より少しだけ多くなった。
<http://www.macworldexpo.com/live/20/events/20SFO06A>
Inside Mac がこの週の皮切りとして、1 月 9 日の月曜日に Macworld 2006 開始パーティーを Renaissance San Francisco Parc 55 ホテル (55 Cyril Magnin Street) で 9:00 PM から 11:00 PM まで開く。入場は無料で、デザートとコーヒーが供されて Inside Mac チームやイベントスポンサー、あるいは仲間の出席者の人たちと会える。
次にパーティー好きの人たちが向かうべきなのが、Deb Shadovitz の Party for the People で、これは 1 月 10 日の火曜日、Renaissance San Francisco Parc 55 ホテル 2 階の Piazza ラウンジで予定されている。開始は 8:00 PM で、入場には Macworld Expo バッジが必要だ。Tonya と Jeff Carlson と私も、スケジュールさえ許せばこれに出席しようと思っている。
<http://www.shadovitz.com/partyforthepeople06/>
それから、1 月 12 日の木曜日に、Netter's Dinner がその 20 周年を祝うことになる。伝統に従って会場は Sansome と Broadway の交差点近くの Hunan レストランで、ホットでスパイシーな中華料理(ベジタリアン料理もある)の値段は $18 だ。Kagi を通して 1 月 10 日の火曜日までに予約登録をしておかなければならない。下のリンクで詳細をチェックしよう。今回私はこのディナーを特に楽しみにしている。それは、私たちの豪胆不敵なオーガナイザ、響く声とアロハシャツの Jon Pugh その人が、今回は出席してくれる予定だからだ。つまり私は、今回はマイクを持たずに聴衆の側から、あの大騒ぎの挙手アンケートを楽しめるという訳だ。例年と同様、Moscone 南側最上階のエスカレータの前で 6:00 PM に集合して、元気よく、時には雨に降られる行進を覚悟しながら、San Francisco ダウンタウンじゅうの交通を邪魔しつつ歩こう。遅くとも 6:30 PM にはレストランへ向けて出発する。
<http://www.seanet.com/~jonpugh/nettersdinner.html>
TidBITS/Take Control イベント -- Tonya、Jeff Carlson、Joe Kissell、Scott Knaster と私が予定しているイベントをまとめると下記のようになる。この機会に皆さんとぜひお会いしたい。ブース番号や場所は、会場で確認して頂きたい。ぎりぎりになって予定が変更されることもあり得るから。
1 月 9 日の月曜日、私は User Group University で Chris Breen や Bob LeVitus と共に聴衆の質問に答えている。このイベントは Macintosh ユーザーグループのリーダーたち向けのもので、登録が必要だ。
1 月 10 日の火曜日はとてつもなく忙しい日になる。午前中は Steve Jobs のキーノートなので、私たちは緊急配備体制を布いて Apple が何を発表しても対応できるようにする。それだけならばいつも通りの狂気の一日となるが、今回はそれに加えて Tonya と私が MacNotables のライブ・ポッドキャストに出演する。4:00 PM から Macworld ブース (#807) だ。もちろん、Apple の発表内容について語ることになるだろう。それから、夜には先ほど述べた通り Deb Shadovitz の Party for the People に出席したいと思っている。
1 月 11 日の水曜日、私は iPhoto 漬けの日を過ごすことになる。まず私は Peachpit ブース (#1507) で 11:00 AM から講演し、それから Macworld Users Conference で 4:15 PM から 5:30 PM まで“Sharing Photos in iPhoto”プレゼンテーションをする。このプレゼンテーションの会場がどこになるかはあらかじめ発表されないが、ショーガイドか掲示で知らされるはずだ。
また、同じ 11:00 AM から Jeff Carlson が Users Conference で“Graduate from iMovie HD to Final Cut Express HD”という講演をする。2:00 PM になると、彼は Peachpit ブース (#1507) で iMovie について語り、iLife やその他何でも、その場で出た話題について質問に答える。その後 3:00 PM からは、Tonya が User Group Lounge にいてデスクトップの片付け方について語り、Scott Knaster が彼女の後を引き継いで 4:00 PM から“Take Control of Switching to the Mac”について語る。
<http://www.macworldexpo.com/live/20/events/20SFO06A/conference/tracksessions/Digital+Video/QMONYA04P5LD>
<http://www.mugcenter.com/macworld/sf2006/uglounge.html>
1 月 12 日の木曜日にはいろいろと多岐にわたるイベントがある。Tonya はその日最初の仕事として、9:30 AM から最新版の MacBrainiac Challenge ゲームに参加する。部屋の案内は掲示を見て欲しい。それから Joe Kissell と私は Now Software ブース (#2333) で Joe の“Take Control of Now Up-to-Date & Contact 5”マニュアルのサイン会をし、このソフトウェアについて話をする。3:00 PM からは、Jeff Carlson が“Intro to Desktop Movie Making”と題して Taste of the Conference セッションの講演をする。その後、4:30 PM から Tonya、Jeff それに私が Market Street の San Francisco Apple Store に向かい、Peachpit 主催のプレゼンテーションにて今回のショーで何がホットだったかを語る。特にデジタル写真やデジタルビデオ、ワイヤレスネットワーキングや、その他私たちの目に留まったことなら何でも、に関する話題に焦点を当てることになる。6:00 PM になれば、私たちは皆 South Hall に集まり、Netter's Dinner に向けて出発する。
私たちのセッションのうちいくつかは比較的自由に参加できる形なので、どうぞ皆さん、私たちがしていること何にでも、皆さんの疑問やコメントなどを携えてお集りいただきたい。そうすれば私たちも、ショーに向けて刺激過剰負荷だった数日間のことを忘れて、自分たちの足で立って語るという難しい仕事に挑戦することができるだろうから。では、ショー会場でお会いしましょう!
文: Adam C. Engst <[email protected]>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>
どんなに良いものにも終わりの時は来る。今回私は Info-Mac Network が引退することを公式に発表するにあたり、寂しい気持ちを禁じ得ない。名義上だけのことながら、私はこの非営利のボランティア団体の代表を、2000 年にこれを法人組織化した時以来ずっと務めてきた。でもその実態を言えば、数多くのボランティアの人たちの力が何年もの間 Info-Mac を動かし続けてきた中で、私はただそのメンバーのうちの一人に過ぎなかった。けれどもここ一年ほどの間は、Info-Mac がその有用なる生涯の大半をもはや生き尽してしまったこと、これ以上の時間と努力、それに資金を注ぎ込んでまで今後も続けて行くだけの価値はないということが、誰の目にも明らかとなってきた。
Info-Mac の過去と現在 -- そんな名前は初めて聞いた、とおっしゃる方もおられるかもしれないので説明しておくと、Info-Mac というのはインターネット上の Macintosh サービスとしては最も古いもので、TidBITS より六年も前に始まっている。私が今 Google Groups で調べたところによれば、Info-Mac が始まったのは 1984 年の 6 月だ。(面白いことに、Google 検索結果のその同じページに、MacObserver が私たちの最新刊の電子ブック“Take Control of .Mac”を記事にしているのが表示されていた。)
<http://groups.google.com/group/fa.info-mac?start=3000>
この Info-Mac Network は二つの部分から成り立っている。一つは Info-Mac Digest、これは Macintosh を巡るあらゆることをテーマにしたモデレータ付きのメーリングリストだった。そしてもう一つが Info-Mac Archive で、こちらは Mac ユーザーが興味あるようなファイルを保存して、無料再配付可能なファイルとして誰にでも利用可能となるようにしていた。初期のうち Info-Mac のホストとなっていたのは Stanford 大学で、sumex-aim.stanford.edu(sumex-aim とは Stanford University Medical EXperiment - Artificial Intelligence in Medicine の略だが、どういう事情でそのコンピュータ上に Info-Mac がファイル保管場所を確保できるようになったのかを私は知らない)と呼ばれるマシンの上で動いていた。どうやら、初代の sumex-aim マシンは TOPS-20 システムだったようだが、たしかこのマシンは後日 68000 プロセッサを備えた新型の Sun ワークステーションで置き換えられることとなったと思う。1992 年に $3,000 の寄付を頂いて Info-Mac がディスクを購入することができてからは数ギガバイトのディスク容量を持つようになった。1997 年には、America Online が Info-Mac に新しい Sun ワークステーションを寄付して下さった。このマシンは info-mac.org と呼ばれ、私たちは新しいホームとして MIT の Laboratory of Computer Science に引っ越した。ここには人気のミラーサイトである Info-Mac HyperArchive も同居していた。
<http://en.wikipedia.org/wiki/TOPS-20>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=02913>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=02157> (日本語)帰ってきた Info-Mac
全盛期には、Info-Mac Digest はおそらく何万人という人々に毎日読まれていたことだろう。(これは Usenet ニュースグループの comp.sys.mac.digest にも、ほぼ発足当時からミラーされていた。)また、Info-Mac Archive の方は全世界に 100 ケ所以上もミラーサイトを持つ Macintosh ソフトウェアの中心的集積地となっていた。(当時は、インターネット上でデータを運ぶ距離を最小限にすることによってデータ移送の時間と費用が大幅に節約できるという時代だったので、ミラーサイトを全世界に持つことに重要な意義があった。)インターネットが商業化された後になってもかなり長い間、人気のソフトウェアダウンロードサイト、例えば CNET の Shareware.com のようなところでさえ、実際に Info-Mac Archive のミラーサイトとしても機能していた。(公平を期するために言っておくと、Info-Mac Archive 以外にも Mac アーカイブサイトはあり、例えば UMich Mac Software Archive は有名どころだった。)
先程も触れたように、Info-Mac は当初から一貫して純粋にボランティアの働きによる組織だった。私が調べ得た限りでは、最初にこれを始めたのは Ed Pattermann で、その後 John Mark Agosta と Richard Alderson がモデレータの役割を引き継いだ。それから Dwayne Virnau が続いた。Jon Pugh が言うには彼が Dwayne の後を引き継いだということで、1990 年代の初めごろに私が初めて Info-Mac を知った時にモデレータであった Bill Lipa によれば、彼がこれに加わった時には Lance Nakata と Jon の二人がモデレータだったという。その時代以来、数多くの人たちがそれぞれの貴重な時間をこの目的のために捧げてくれた。何人かの名前を挙げると Igor Livshits、Liam Breck、Gordon Watts、Michael Bean、Mike O'Bryan、Robert Lentz、Shawn Bunn、Demitri Muna というところだろうか。現在の Info-Mac クルーの主なメンバーは Ed Chambers、Christopher Li、Chris Pepper、Tom Coradeschi、Hugh Lewis、Patrik Montgomery、それに MIT の Mary Ann Ladd と Noah Meyerhans には力強い技術的援助を頂いている。もしもどなたかのお名前を挙げ忘れていたらどうかお許し願いたい。そして、これまで何らかの形で力を貸して下さったすべての人に、本当にありがとうございましたとお礼を申し上げたい。
変わりゆくインターネットの顔 -- 私の気持ちの中では、Info-Mac はただ単にその有用性の寿命を生き終えたのだと思う。例えば Info-Mac Digest は、1980 年代や 1990 年代の初めごろにはインターネット通の Mac ユーザーたちにとって非常に重要なコミュニケーションの手段となっていた。その当時には Mac について議論するためのインターネット上の手段がこれ以外になかったからだ。当時はウェブというものがまだ生まれていなかったことに注意して頂きたい。電子メールと Usenet ニュース、それに FTP が、人々がインターネットを通じてコミュニケーションするための主な方法だった。Info-Mac は、これらの方法すべてをカバーしていた。けれども今日では、誰でも気軽にメーリングリストを始めることができるし、Macintosh の世界があまりにも巨大化したので、特定のプログラムや特定のテクノロジーに特化した議論に比べれば、汎用の議論リストというものの存在意義はほとんどなくなってしまったように思える。だからこそ、数年前にトラブルが頻発したためにサーバを移行して以来、私たちは Info-Mac Digest を再開させるための努力を注ぎ込むのは控えてきたのだった。
でも、Info-Mac Archive の方はちょっと話が違ってくる。たしかにこれは VersionTracker や MacUpdate のようなウェブサイトに取って替わられたとも言える。Macintosh 開発者たちにとっては自分のソフトウェアを世に知らしめる手段として、Mac ユーザーたちにとっては Mac ソフトウェアの世界で今何が新しいのかを探し出す手段として、これらは欠くことのできないものとなった。けれども、これらのサイトがどれだけ有用なものとなったとはいっても、ある一つの重要なことは解決してくれない。それは Info-Mac Archive が常に提供してきたこと、つまり、実際にファイルのサーバとなるということだ。世界中に散らばったミラーマシンのネットワークのお陰で、多数の異なったサーバがロードを分散負担することによって、Info-Mac Archive は常にソフトウェアの現物がそこにあって入手可能だという状態を保ち続けてきた。これは今日のウェブサーバでは往々にしてそううまく行かないことがある。多くの開発者たちは自分のソフトウェアをダウンロード用に提供するためにたった一つか二つのサーバしか使っていない。そのプログラムが非常に人気のあるものならば、一つのサーバはたちまちロードで溢れてしまうかもしれない。それに、たとえそのサーバがすべてのリクエストに応える能力を持っていたとしても、そのロード量の結果としてその開発者の手元に膨大な帯域幅の請求書が届くことになるかもしれない。
Info-Mac は、インターネットの変化に対応して進化することができただろうか? そうだったとも考えられるが、ただ、ボランティアの組織が大掛かりなリソースを投入してもよいと考える営利会社たちに対抗していくのは難しいこともあるのだということを、忘れないで頂きたい。私たちはここ五年ほどの間、いくつかの異なった折々にプロフェッショナルのウェブデザイナーたちを説得して私たちのウェブサイトを再デザインしてもらおうと試みたが、デザインを完成させるために必要なだけの時間を工面できた人は結局一人もいなかった。また、私たちはサーバを設定して動かし続けるためにそれほど目立った苦労はしなかったものの、新たにアップロードがある度に自動的に Info-Mac Digest 用にアブストラクトのテキストを生成するコードが年を経て古びてしまっていたのを全部書き直したいという希望も、結局実現できなかった。それは決して超高度な技術ではなかったのだが、でも私たちボランティアの持つスキル、あるいは私たちにひねり出せる時間の範囲内で届くことではなく、そのうちに私たちの壮大な計画、つまりフル機能のデータベース駆動サイトを作りたいという夢も、実を結ぶことなく終わってしまった。最後にもう一つ、 Info-Mac は、公衆の目に留まり続けるために、何らかの形でのマーケティングをする必要に迫られていたと思う。でも、Info-Mac Digest のモデレータとしての毎日の仕事に追われ、また Info-Mac Archive への新しいソフトウェアの投稿を毎日チェックしてアップロードしたりしなければならないボランティアの組織としては、そこまでの作業に手を伸ばす余裕は到底なかったと言える。
例えば Wikipedia のような人目を引くプロジェクトの成功を見て、充分数多くのボランティアたちに少しずつの仕事を分担させれば何事も実現不可能ではない、と論ずるのは容易いことだ。でも現実には、そのようなボランティアの努力を受け止められるシステムを作り出すのは、それほど簡単なことではない。ことに、限られた人数のスタッフで活動を保ち続けながら、同時にそういうシステムの案出をしようとするならばなおさらだ。それに、Info-Mac には歴史というものがある。新しいシステムを考えながら、同時にその過程で歴史は保ち続けなければならない。人々は変化を嫌うものだ。だから、公衆の目に触れるところはそのままに保ちながら、一方で内部の仕組みに重大な変更を施すというのは、すっぱりと新しく作り替えるのと比べてずっと困難なことが多い。最初の印象も痛々しいものなら、実際に踏み込んで行ってもイバラの道だ。
最後に実用的な一言を -- 私たちはまだ、info-mac.org のサーバをすぐに閉じようという訳ではない。でも、今後はもう Info-Mac Archive に新しくソフトウェアが追加されることはない。私たちが実際にサーバを恒久的に閉じてしまうのは数ヵ月後のことになる予定なので、その時が来るまでに各所のミラーサイトも、それぞれに今後アーカイブをどうするのかの決断をして下さるだけの時間の余裕があるだろう。また、もしも皆さんが、すべてが閉じられるよりも前にご自分のマシンにアーカイブのコピーを取り込んでおきたいと思われるなら、今こそそれを実行しておかれるチャンスだろう。私たちはアーカイブを閉じる前に公開 rsync アクセスの実験を進めている。Chris Pepper が教えてくれたところによれば、次のような Unix コマンド(Mac OS X ユーザーはターミナルから走らせられる)を使えば、7 GB のアーカイブ全体が取り込めるという:
rsync -va www.info-mac.org::info-mac-archive/ info-mac-archive/
このコマンドは、現ディレクトリ(コマンドを走らせる前にディレクトリの移動をしていなければあなたのホームディレクトリになっているはず)の中に info-mac-archive という名前の新しいディレクトリを作り、それからその中に全アーカイブのローカルコピーを作る。別の方法として、FTP を使って、最新の情報を含んだミラーサイトからすべてを取り込むこともできる。
<http://www.info-mac.org/mirror/>
文: Charles Maurer
訳: 羽鳥公士郎 <hatori@ousaan.com>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>
コンピュータでは美しく見えていた写真も、冷蔵庫の扉に貼り付けようとすれば大変だ。ほとんどの人は、デジタルカメラを買うと、遅かれ早かれ印刷をしたいと思い、フォトプリンタを熱望し、そしてどれを買ったらいいのかと考え始めると、頭痛薬を切望する。どのモデルも素晴らしいようで、様々なレビュー記事がそれぞれ別のモデルを最高だと評している。この記事では、このような混乱をいくらかでも整理したいと思う。フォトプリンタの仕組み、チェックするべきことと無視するべきこと、フォトプリンタを最大限有効に使う方法を説明しよう。最後に、私が購入したときの判定基準を述べ、いくつかのプリンタをレビューする。その道すがら、役に立つソフトウェアについてもいくつか触れるつもりだ。
技術の概観 -- では、基本となる技術からはじめよう。透明なイエローのリボンを、染料が飛び出すまで熱し、その染料を紙に移す。次にマゼンタのリボンを熱し、次にシアンのリボンを熱する。最後に、無色透明のリボンで仕上げをする。3種類の染料があらゆる色を生み出し、無色透明な染料は保護膜となる。染料は透明なので、色が特別濃くなることはないが、ドットが目に見えることもなく、仕上がりは従来の写真のようになる。これが、昇華型プリンタと呼ばれるものだ。
昇華型プリンタは、最も使いやすく、最も手間がかからない。様々な色のリボンを収めたカートリッジをはめ込んで、リボンがなくなればカートリッジを交換するだけだ。インクジェットプリンタの方が1枚あたりのコストが安いが、それは、インクカートリッジが乾いてしまう前に使い切るほど頻繁に印刷すればの話だ。昇華型プリンタは究極の画質を生み出すということはないが、印刷したものは、写真店で現像したものに似ているし、耐久性もある。スナップ写真や 8 インチ× 10 インチのプリントにして見せて回るには最適だ。
昇華型プリンタの画質も良いけれど、可能な限り最高の画質ということになると、インクを使うことになる。インクジェットプリンタは同じ3色を使うが、インクは昇華型の染料よりも不透明なので、色と色を重ねることはせず、色のドットを隣り合わせに置いてゆく。そうすると、3色のインクで濃いグレーを作ろうとすれば、その中にはイエローのドットが含まれることになる。このような黄色の点は、コントラストを弱め、エッジをソフトにしてしまうので、インクジェットプリンタでは、濃いグレーや黒に4番目のインク、ブラックを混ぜている。
安価なインクジェット・フォトプリンタは、この4種のインク、すなわちイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックだけを使っている。この4色はあらゆる色を生み出すのに十分で、スナップ写真には問題ないが、淡い色調を目を凝らしてみれば、ドットが見えてしまう。原色から淡い色調を作るためには、鮮やかなドットの周りに大きな余白が必要となるからだ。ドットが見えるのを避けるには、淡い色調のために薄い色のインクを使う必要があるので、高画質のフォトプリンタでは、4色に加えてライトマゼンタとライトシアンを使っている。
この6色は、ほとんど芸術的と言えるような美しい色を生み出すのに十分だが、それだけの画質に到達するには、インクの品質が安定しており、並外れた精妙さと一貫性を持って紙に乗せることができなければならない。しかしそれは可能だ。HP のプリンタ製品の場合、プリンタが自ら色を調整することで、高画質を実現している。しかし、様々な色の欠点を受け入れ、それを補うために追加のインクを使うようなプリンタを設計する方が、より利益が大きい。(たくさんの色が必要になるほど、クリーニングで消費されるインクも多くなり、インクが乾いて使えなくなってしまうことも多くなる。プリンタメーカーの利益は、主にインクからもたらされている。The Economist によれば、HPのインクの利益幅は 80 パーセントで、原価の5倍に値上げしていることになる。)追加の色として最もよく使われるのはライトグレーで、白や黒がかぶることを避けるため、あらゆる色の代わりに使われる。
<http://www.economist.com/displaystory.cfm?story_id=3817267>
インクには染料と顔料とがある。染料は紙に染み込むが、顔料は紙の上に乗る。明るさや耐久性は同等だが、耐久性を最大にするためには、どちらのインクでも、そのインクに合った特別な紙が必要となる。インクと紙との出会いは、私たちの理解の及ぶ水準ではなく、物理化学の水準である。この点については、顔料よりも染料の方が気難しい。顔料に基づく方式では比較的広い範囲の紙を使えるのだが、顔料は印字ヘッドに詰まりやすいから、染料の方が使用コストが安いことが多い。
シャープネス -- フォトプリンタはどれでも、人間の目に見える限界まで細い線を印刷することができるし、かなり満足できる黒を生成することができるから、同等の紙を使い、同等のカラープロファイル(これについては後述)を使うとすれば、細部やシャープネスに関して違いが出るような物理的理由は存在しない。しかし、印字ヘッドが線を印刷するのは、プリンタドライバが指示すればこそだ。大きく印刷しようとすると、プリンタドライバは、ファイルに存在するより多くの画素を印刷するよう、印字ヘッドに対して指示しなければならない。ドライバは、これらの追加画素を、何らかの形の移動平均を適用することによって、補間している。変化の鋭いところ、つまり線の縁では、平均化をすれば、どうしても変化の両端の2色が混ざってしまうので、移動平均によってエッジはぼやけてしまう。写真によって最適な平均化アルゴリズムは異なるので、テストのたびに、違ったプリンタがよりシャープに見えることになる。
プリンタから最大限のシャープネスを引き出そうとすれば、どのプリンタドライバに使われている補間アルゴリズムよりも洗練されたアルゴリズムを使わなければならない。Mac について言うと、私の知る限り最高の補間プログラムはPhotoZoom Pro だ。(PhotoZoom という機能限定版もあるが、こちらではシャープニング機能をオフにすることができないので、FocusMagic やFocusFixer、あるいは Photoshop CS2 の「スマートシャープ」機能と一緒に使うことができない。)
<http://www.benvista.com/main/content/content.php?page=ourproducts§ion=photozoompro_1>
最高のシャープネスを得るには、プリンタに対し、そのプリンタにとって最適な解像度にまで補間したファイルを送る必要がある。昇華型プリンタの場合、その解像度は広告にうたわれている通りで、典型的には 300 dpi(dots per inch: インチあたりのドット数)か 314 dpi だ。インクジェットプリンタの場合も似たような数字になるだろうが、プリンタの広告にある仕様から値を確定する方法はない。プリンタの効果的な解像度を調べるには、私が用意した(そして George Reis が整理した)テストファイルをいくつか(下記にリンクした)使う。画像に書いてある指示に従い、ファイルの大きさを紙の大きさに合わせずに、ファイルを印刷する。多くの場合、288 dpi か 300 dpi が最も良く見えるだろう。
<http://www.tidbits.com/resources/810/PrinterSharpnessTest.zip>
ところで、解像度を高くしたからといって最高の写真が印刷できるとは限らないことに注意してほしい。解像度が異なれば、多くの場合ページ上のインクの濃度が変わり、思わぬ結果が生じることがある。最も良い設定を知るためには、実際の写真で様々な設定を試してみる必要がある。
色 -- 一見したところでは、フォトプリンタを選ぶ際に最初に考慮しなければならないことは、色を再現する能力であるべきように思える。しかし、そのような能力を測定する現実的な方法は存在しない。私が TidBITS-749 の "色とコンピュータ" で書いたように、色を正確に測定する方法はないからだ。それに加えて、仮に色が測定できたとしても、染料や顔料が異なれば作り出す色も変わるから、正確な再現というのは、やはり実現することのない空想だ。
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=07840>(日本語)色とコンピュータ
その理由を考えるために、色を正確に測定することができると仮定し、何らかの単位を創案したとしよう。カメラのセンサーは、赤 95 単位、緑 100 単位、青 103 単位までの応答電圧を生み出すことができ、一方プリンタのインクは赤 90 単位、緑 101 単位、青 122 単位までの色を生成できるとしよう。さて、カメラの応答をプリンタに向けて正確に変換するには、どうすればよいだろうか。どうすれば 95、100、103 を 90、101、122 に変換できるだろうか。
プリンタで(あるいはモニタで)色を生成するには、誰かがコンピュータの前に座り、この種の方程式を満たすべく、表を作成することになる。どのような色の混合方法が全体として最もきれいに見えるのかを調べるのだ。プリンタの赤の限界に合わせて、すべての色の比率を保ちながら、ほかをそれぞれ下げるのが良いのか、それとも部分的に比率を保ちながら、青は自由に変化させた方が良いのか、というようなことだ。これは数学的過程というよりは、手の込んだ菓子を作るような、あるいはギリシャ語の詩をポルトガル語に訳すようなものだ。その結果は、必然的に、状況によって異なるものになる。題材によって、部屋の明かりによって、そして決定的なことには、周囲の状況によって変わる。というのも、色の知覚にとって、物体が置かれている状況が決定的に重要だからだ。状況から得られる手がかりがなければ、茶色のものが赤く見えるかもしれない。
色を補正する体系ができたなら、その表をアプリケーションかプリンタドライバかオペレーティングシステムに組み込み、メニューからアクセスできるようにする。このような色補正テーブルは、常にというわけではないが、通常はInternational Color Consortium 標準フォーマットに準拠しており、そのため ICC プロファイルと呼ばれる。ハードウェアを販売している企業のほとんどが、自社ハードウェアの ICC プロファイルを提供しており、サードパーティーがプロファイルを提供することもある。Macintosh にもいくつかのプロファイルが付属するし、Photoshop はたくさんのプロファイルをインストールする。プロファイルがあまりに多く、アクセスの手段は分かりにくく、全く混乱してしまうのだが、それでもすべてを整理しなければならない。整理しなければならないのは、適したものを見つけて使えるようにするためということもあるが、コンピュータに対して複数のプロファイルを重ねて適用するよう指示してしまうこともありうることで、そうなればめちゃくちゃになってしまうからでもある。ドライブに入っているプロファイルについて、それぞれの出自を調べ、特定の目的にはどれが最適であるか実験し、プロファイルを適用する最も簡便な方法も見出さなければならない。そういうことをしていれば、おそらく髪をかきむしることになるだろう。私の髪は確かに薄くなった。そのうち髪がなくなるとまではいかなくとも、床屋で過ごす時間が短くなるはずだ。
様々なプリンタで印刷したものを比較するときは、プリンタを比較しているというよりは、実際には色補正テーブルを比較している。さらに、どんなときでも最適な色補正テーブルというものはないから、風景がきれいなプリンタは人物が美しくないかもしれない。私が見たことのある限りでは、現在販売されているどのフォトプリンタでも、色補正テーブルさえ適切であれば良い結果が得られるが、いつでも適切な色補正テーブルはありえない。それに加えて、プリンタというのは機械製品だから、インクを紙に乗せる機構に、必然的に微妙な違いが生じる。この違いのため、同じモデルの2つのプリンタで、同じカラープロファイルを使ったとしも、おそらく異なる結果が得られるだろう(ただし、HP のいくつかのプリンタのように、一律の基準に合わせてプリンタが自ら調整するなら話は別だ)。これらの理由から、プリンタを購入する際、様々なプリンタの色合いを比較するべき理由はない。
どんなプリンタでも、最良の結果を得ようとすれば、自分で色を調整しなければならない。そうするためには、モニタの色をプリンタの色に十分近づけ、片方を調整することでもう片方も調整できるようにしなければならない。モニタと印刷とをできるだけ近づけるには、カラープロファイルを自分のモニタやプリンタ用にカスタマイズしなければならない。お金を受け取ってこのようなプロファイルを作ったり、プロファイル作成を補助する特別なハードウェアを販売したりする人も多い。従業員が何人かいて、マシンを何台か走らせているなら、彼らにお金を払って、一貫した結果が得られるようにしたいと思うかもしれないが、ほとんどの人にとっては、その必要はない。私は以下の方法を勧める。下記最初のリンクのファイルを、プリンタドライバ内蔵のデフォルト ICCプロファイルと、そのプリンタに付属している追加のプロファイルすべてを使って、ページ一杯に印刷する。複数のプロファイルを使ったなら、最もきれいに見えるものを選び、常にそのプロファイルを使うようにする。次に、19ドルの SuperCal を使って、モニタをキャリブレートする。その過程で、SuperCal が人物写真を使って色を合わせるように求めるので、そのときは、人物写真の代わりに先のテストファイルを使い、テストファイルが印刷されたものとできるだけ近づくようにする。できるだけ近づけたら、モニタは、あなたの目にとって、あなたが最も重要だと考える色に対して、できるだけキャリブレートされたということになる。
<http://www.drycreekphoto.com/tools/test_images/DCP-TestImage.zip>
<http://www.bergdesign.com/supercal/>
それでもなお、モニタ上の写真がどのように印刷されるのかを知るには、経験が必要だ。プリンタの品質やモニタの品質、そしてあなたの目によって異なるからだ。これは物理的な補正ではなく、知覚による近似だから、経験が必要だし、印刷の大きさによっても影響を受ける。また、印刷されたものとモニタとを適切に比較するには、適した照明を使わなければならない。古くからある、円形の蛍光灯と一般的な 60 ワット電球を組み合わせたデスクライトを使うか、グラフィックアート用の基準を満たす蛍光灯(例えば Ott-Lite のTrueColor 製品)を購入し、それを安価な取り付け具に取り付ける。モニタをキャリブレートするときには、この照明を使う。
これらすべてが、広告が言っていることと違うとお思いなら、実際に違うのだ。このようなことは非常にあいまいで、Photoshop とプレビューが、モニタを印刷に合わせる方法として2つの異なる方法を提供しているほどだ。一方は編集するときに使う通常の方法、もう一方はソフトプルーフだ。画面上の色は、それだけに注目しているときと、紙と直接比べているときとでは、見え方が異なる。モニタのプロファイルを作成する従来の技術では、暗黙のうちに前者を前提にしていた。ソフトプルーフでは、後者に適した別の色補正テーブルを適用する。私が勧める方法でモニタのプロファイルを作成すれば、いつでもソフトプルーフをしていることになる。
混乱を引き起こすパラメータが最後にもう1つある。色空間だ。色空間というのは、コンピュータが「理解」できる色の全領域のことだ。これは理論的な色域で、その中では色は数によって表される。ある特定の色を合わせたいと思ったら、それを正確に測定できれば、ある特定の数として表すことができるし、プリンタが色を正確に生成することができれば、その数を使って再現することができる。この技術は、カタログを印刷しようとするときには役に立つ(もっとも、カタログで洋服を注文したことのある人なら、どれほど役に立つものなのか分かるだろう)が、絵画的な写真には何の関係もない。先週号の "リアリティとデジタル写真" で説明したように、目は絶対値を見ているのではなく、コントラストを解釈している。カメラが、カメラで記録できる最大値の半分の赤を記録したとすると、それがどんな赤であっても、プリンタで出せる最大値のおよそ半分の赤として印刷するのが、理にかなっているというものだろう。
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=08365> (日本語)リアリティとデジタル写真
プリンタに、異なる色空間用のプロファイルが付属していて、適切な色空間の下で使ったときに異なる結果が得られるなら、それは色空間が違うからではなく、異なる色補正テーブルが色を異なる仕方で補正しているためだ。市場によって異なる色空間が使われているため、このようなことが起こりやすい。ほとんどの人は、写真を小さく印刷することが多く、コンピュータ内蔵の色空間である sRGB 以外は使わない。それに対し、プロの写真家は、写真を大きく印刷することが多く、彼らが働いているグラフィックアート業界では Adobe RGBが一般に使われている。小さな写真は、パンチが効いていた方が良いが、そのためには中間調の微妙なグラデーションが犠牲になる。一方、大きな写真では、明暗が全域にわたって滑らかに変化している方が良い。いずれにせよ、プリンタにとって重要なのは、カラープロファイルであって、色空間ではない。色空間とカラープロファイルのどんな組み合わせでも、あなたにとって好ましい結果が得られるものを使えば良い。どうしてもというなら、sRGB を選ぶと良い。これは業界の標準だから、これを使えば混乱することもあまりないだろう。
白黒 -- ほとんどの写真はカラーだけれど、白黒にした方がより効果的な写真も多い。ほとんどのプリンタは、白黒印刷を、カラー印刷と同じように行う。ただ1つ異なることは、コンピュータがプリンタに対して、それぞれの明暗度について3色すべてを同じ量だけ印刷するように指示することだ。残念ながら、色を測定する方法がないので、すべての明暗度について、3色の量を同じにする方法もない。したがって、グレーには必然的に色がかぶる。ブラックのインクだけで印刷した場合、明るいグレーを出そうとして薄く印刷すると、必ず斑点状になってしまって、うまくいかない。
最善の、そしてもっとも高価な回避方法は、様々な濃さのブラックとグレーで印刷することだ。最新の Epson と HP のプリンタには、この方法を使っているものがある。次善の方法は、通常のインクを使うのだけれど、様々に異なる割合でバランスさせることだ。バランスをうまくごまかしながら、おかしな色になるかもしれないが、より多くの状況で、より多くの人にとって、より確実にグレーと見えるような色を作る。これには、ほとんどのプリンタで実現できるよりもっと高い一貫性が求められるが、HP から出ている自動色補正機能のついたモデルでは、うまくゆくことがある。
用紙 -- すでに述べたように、インクジェット用紙が期待される寿命を全うするには、物理化学の水準で適切なインクと合わなければならない。下記のリンクから見ることのできる表では、用紙によって寿命が大幅に異なることが分かる。ほかに重要なことは、物理的な強さの違いだ。例えば、Epson の最上級の光沢紙は、HP のものに比べ、折れたり破れたりしやすい。その HP の用紙ですら、Olympus P-440 昇華型プリンタ用紙と比べれば弱い。さらに、これは通常あまり重要でないが、用紙によっては、ラッカーをスプレーしない限り、印刷が水に溶けやすいことがある。HP の用紙はこの点で劣っている。Epsonの方が良いが、昇華型用紙はさらにずっと良い。
<http://www.wilhelm-research.com/>
写真用紙の最も分かりやすい特性は、表面だ。画像に最大限注目したいと思えば、表面の質感が目にとってじゃまとなるようでは困る。また、色の濃度と彩度を最大にしようと思えば、反射光が拡散して色を消してしまうようでは困る。反射光は、位置を変えればほかの部分が見える程度に集中しているのが良い。つまり、写真を最も良く見せるには、用紙は滑らかで光沢があり、光を拡散するのは鏡のように見えない程度に限られるべきだ。
美術ではつや消し仕上げが必要とされるのに、これでは話が違うではないかとお思いならば、美術館の中を歩き回って、壁に掛かっている絵を見てほしい。紙に描かれた絵はどれでも、光沢のある表面をしているはずだ。紙はつや消しかもしれないが、通常の立ち位置からでは、目に付く表面はガラスの表面、つまり額のガラス面だ。学芸員は、いわゆるノングレアガラス、つまりつや消し処理をしたガラスを使ってもよいのだが、そんなことはしない。拡散された反射光は、鏡のような反射光よりも、絵の見た目を損ねるからだ。同じ理由で、油絵は、光沢のある、または半光沢のワニスでコーティングする。つや消しにはしない。
ほとんどの人は、1枚ごとに裁断された紙に写真を印刷するが、もし大量に印刷するなら、ロール紙を使うことを検討すると良いかもしれない。ロール紙はシートに比べると価格が半分だ。でき上がった写真はカールしてしまうが、カールを直すのは簡単だ。印刷したものを、10 ミルのポリカーボネート2枚でサンドイッチにし、カールと反対向きに筒に巻きつけ、一晩置いておけば良い。
大量の写真を印刷するときは、50 ドルのアプリケーション Portraits &Prints Pro がとても役に立つ。ほかの似たようなアプリケーションと同じように、これには写真を印刷するためのテンプレートが付いているが、Portraits & Prints Pro がほかと違うのは、ユーザがどんな大きさのテンプレートでも作成できるということだ。1枚の紙に1枚の写真を印刷するテンプレートを使うなら、それぞれの写真ごとに Page Layout を設定する必要はない。また、大きなテンプレートを使えば、ロール紙に写真を一気に印刷することができる。残念ながら、Portraits & Prints には安定性に問題があり、私は変更を加えるたびに保存するようになった。
<http://www.econtechnologies.com/site/Pages/Portraits_Prints/pnp_overview.html>
大きさ -- 印刷したものは、様々な大きさに拡大すると、驚くほど見え方が変わる。その例として、下記2つのファイルをハードディスクにダウンロードし、プレビューを起動し、両方のファイルを選択し、それを Dock のプレビューアイコンの上にドラッグしてみてほしい。そうすると2つのファイルが2つのページとして開かれるから、両者を瞬時に切り替えて比較することができる。「表示」メニューで「実際の大きさ」が選択されていることを確認して、大きい方の画像に切り替え、緑色のズームボタンをクリックして、ウインドウの大きさを画像と同じにする。大きい方の写真を、写真の大きさと同じぐらい画面から離れたところから(これが私が意図した遠近感だ)見て、そこから動かず、目をそらさずに、クリックして小さい写真に切り替える。蜘蛛が突然、色の面でも、コントラストの面でも、深さの面でも、平坦になる。それに加えて、蜘蛛の巣の糸もたくさんは見えなくなり、背景もつまらなくなる。
<http://www.tidbits.com/resources/810/00_03557_1200x800.jpg>
<http://www.tidbits.com/resources/810/00_03557_600x400.jpg>
目にとっては、写真の大きさはセンチメートルやインチで表されるものではなく、視野の中で写真が占める割合、つまり視角で表される。角度の大きさが問題となるため、私は自分の写真を十分大きくして、見る人が通常はだいたい同じような角度で見るようにしたい。今では私は写真を楽しみのために撮っており、広告のレイアウトの隙間を埋めるために撮っているのではないから、私が目標とする大きさは、知覚的に最適な大きさである、およそ 45 度だ。つまり、写真の大きさと同じぐらい離れたところから見てもらえるようにしたい。これは、ページサイズの印刷では現実的ではない。机に座っている人1人に写真を見せるのでない限り、はるかに遠く離れたところから見ることになってしまうからだ。私が通常使っているサイズは、11 インチ× 17 インチ(幅広い縁付き)だ。これは、北アメリカで標準的な大きさで、ほかの地域の A3、またはタブロイド新聞の大きさにほぼ等しい。この大きさでは、対角線がほぼ20 インチ(50 cm)となり、二三人の人が自然に立って、適度に離れたところから見るのに十分な大きさの印刷となる。どうやらこの点が、ちょうど収穫逓減の境界点のようだ。次に大きな大きさは、通常は 13 インチ×19 インチ、あるいは A3+ だが、それと比較して、11 インチ×17 インチは経済的で、扱いやすく、それでいて効果はほとんど変わらない。
それより大きな写真は、壁に掛けなければならず、そうなるともう1つの要素が加わる。写真に近づいて細部をじっくり見る人が出てくるのだ。そういう人は必ず、細部がばらばらになるほど近づき、自然な結果として、失望する。油絵の場合、見る人は、細部が絵筆のストロークに分解されるところまで緩やかに導かれ、細部に加わるものはないが、細部が示唆されたり補完されたりし、それ自体で興味深い体験となる。それに対し、写真の場合、通常は粒子状になってぼやけてしまう。非常に大きな写真で、近づいても失望させないためには、写真にも絵筆のストロークと同等な何かが必要となる。最も細かい細部を、自然に見えるような部分に集中させなければならない。デジタルならば、それが可能だ。
これを実現するための7つの異なった方法を、例として下記にリンクした。それぞれの写真は、モニタ上で、20 インチ× 30 インチ(50 cm × 75 cm)で印刷したときとほぼ同じ細部が見えるように拡大されている。33 パーセント縮小すれば、通常の距離から見るときに見える細部とほぼ同じになる。比較のために、これら7つの前に、フィルムから、つまり 2-1/4 インチ× 3-1/4 インチ(6 cm × 9 cm)のスライドからスキャンした画像を置いた。これは、広告用ポスターのために、私が小さなビューカメラで撮影した(そして日の出の光にはストロボを使った)ものだ。
- フィルム
- <http://www.tidbits.com/resources/810/0_feedingchickens.jpg>
- 自然主義風の人物写真、きめの粗い肌
- <http://www.tidbits.com/resources/810/1_02684.jpg>
- 自然主義風の人物写真、滑らかな肌
- <http://www.tidbits.com/resources/810/2_02742.jpg>
- 印象派風の人物写真
- <http://www.tidbits.com/resources/810/3_04247.jpg>
- 自然主義風の風景写真
- <http://www.tidbits.com/resources/810/4_03816.jpg>
- 印象派風の風景写真
- <http://www.tidbits.com/resources/810/5_03122.jpg>
- 動き
- <http://www.tidbits.com/resources/810/6_02626.jpg>
- 詳細な細部
- <http://www.tidbits.com/resources/810/7_03557.jpg>
拡大写真のために、極端な高解像度は必要ない。これら8つの写真の中で、フィルムからスキャンしたものが、拡大したときの見た目が最も悪いが、それでもこれが最も細かい線まで見えている。7つのデジタル画像は、オリジナルサイズの2倍に拡大されており、したがって、これらの写真に現れることができる最も細い線の太さは2ピクセルになるが、下記 URL から分かるように、スキャン画像では1ピクセルの太さの線が見えている。
<http://www.tidbits.com/resources/810/8_feedingchickensmagnified.jpg>
これらすべてのデジタル画像は Foveon センサーによって得られたもので、その白黒の解像度は、6メガピクセルとうたわれている従来の Bayer センサーと同等だ。(メーカーが主張するメガピクセル数というのは、ひどい誤解の元だ。センサーについての背景と解像度についての現実的な議論については、TidBITS-751の "デジタル写真の道理とセンサー" と、下記2番目にリンクした、その訂正とを参照のこと。)画像をうまく拡大できているのは、解像度が高いからではなく、ノイズがないからであり、ごく小さな部分にもはっきりとしたコントラストがあるからであり、コントラストが低い部分でも線がはっきりとしているからである。ノイズを最小にし、部分的なコントラストを強めるためには、Noise Ninja を使った。エッジの調整には、Photoshop CS2 の「スマートシャープ」か、PhotoZoom Pro のアンシャープマスクを使った。PhotoZoom Pro のアンチエイリアスを一緒に使ったところもある。Foveon センサーからの画像は、微小領域がきわだってシャープなので、このような操作に特に向いている。
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=07860>(日本語)デジタル写真の道理とセンサー
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=07906>(日本語)デジタル写真:訂正とフォローアップ
<http://www.picturecode.com/>
私のプリンタたち -- 私が初めて買ったデジタルカメラは、ポケットサイズのコンパクトカメラだった。そこからは、葉書大よりも大きなサイズへのプリントはできなかった。私はこのカメラをたまにしか使わないつもりだったので、カートリッジや印字ヘッドが乾いて詰まりやすいインクジェットプリンタは要らないと思った。その代わりに、私は昇華型プリンタを買った。価格という点を除けば、私はいろいろな機種をきちんと比較する方法を知らなかったので、近所の店で一番安いのを買うことにした。購入価格も、維持費もともに一番安いものだ。私が見つけたのは Canon CP-200 だった。使い方もシンプルで、葉書大にプリントする時もそのサイズに適した彩色が行なわれた。私としてはこのプリンタに不満はなく、実際今でもまだ手許に置いている。するべき仕事はきちんとしてくれるし、第一、たまに小さいサイズのプリントをする時には大型のプリンタでいちいち用紙を取り替えるよりもこちらのプリンタを使う方が便利だからだ。
デジタル一眼レフのカメラを買った時、私はもっと大きいプリンタも買うことにした。これもやはりまだ時々しか使わない予定だったのでインクジェットは避けたのだが、この時は購入できる最も大型の昇華型プリンタが欲しいと思った。8 インチ× 10 インチのプリントが可能な機種が二つあった。ここでもまた、私はきちんと比較する方法を知らなかった。どちらの機種もプロフェッショナルだけが使うようなタイプのようだったので、たぶんどちらも大丈夫だろうと思い、私は安い方を買うことにした。Olympus P-440 だ。このプリンタについては、去年 TidBITS-749 の記事“色とコンピュータ”で説明した。ここでその説明を繰り返すことはしないが、ただこれもちゃんと動いてくれたとだけ言っておこう。これには ColorSync プロファイルが付属しているが、多くの状況でこれはどうもかんばしくないように思えた。でも、プリンタドライバに ColorSync 外のプリセットで良いものが2つ提供されており、通常用の方は人物を写した暖かい写真に、もう片方は緑を強調するので風景に、それぞれ向いたものとなっている。
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=07840> (日本語)色とコンピュータ
私はこの Olympus プリンタを別のものに買い替えるつもりはなかったが、予想外の出来事の結果としてやむを得ずそこに踏み出すことになってしまった。私は、自分の一眼レフカメラの Foveon センサーについて知れば知るほど、その能力にますます魅入られていった。フィルムのカメラでは考えられないような写真を私は撮るようになった。私の前には写真に関する新しい地平線が次々と開けていったので、30 年目にして初めて私は休暇旅行にもカメラバッグを持ち歩き始めた。たまたま私は珍しい土地を訪ねて歩くのが好きだったので、その結果あなたの叔父さんのスナップ写真には決して登場しないようなタイプの写真を、私は数多く撮り溜めるようになった。そこで、他の人たちと気持ち良く写真を分け合えるよう、私は大きなサイズにプリントできるようにしたいと思った。また、友だちに気軽にプレゼントできるよう、大きなサイズのプリントも安価にできるようにしたかった。要するに、Foveon センサーがあまりにも良かったので、その結果として私は大型のプリンタを探し始めた。
私はまた、白黒の画像のためにもっと良いプリンタが欲しいと思った。Olympus の弱点の一つは白黒写真の扱いだ。これはカラー用にデザインされたデジタルプリンタの大多数でも同じことだが。私は、自分がこれまでに拡大機で作ってきたのと同程度の白黒拡大写真をプリントできるものが欲しかった。この理由から、私はまずライトグレーのインクを提供しているプリンタを検討したが、どれも出来上がりが好きになれなかった。HP のグレーインク付きコンシューマモデルはとても魅力的で、特に 13 インチ× 19 インチの Photosmart 8750 は気に入った。これには Ethernet ポートが付いていて、誰かが思い付くような機能はすべて盛り込まれていたし、価格も驚くほど手頃 ($500) だった。けれども動作は遅く、私としてはやはりもう少し大型のものが欲しかった。
Epson は、グレーインク付きでもっと大型・高速の機種を出していた。でもそういう機種は維持費が目の玉が飛び出るほど高くついた。Epson の印字ヘッドは乾きやすいので有名で、クリーニングにかなりの量のインクが必要となり、一つのカートリッジを交換するごとに毎度毎度大量のインクを無駄にすることになる。それに、Epson の公式発表によれば一旦開いたカートリッジはたった六ヵ月しか寿命がないという。もしも日常的にプリントするのならば、Epson のランニングコストも納得できるのだろうが、そう頻繁でなく時折プリントするだけならば、ちょっと... 何しろ、8個のインクカートリッジを必ず毎年2回ずつ交換するとなると、1個が $70 だから、インクの費用だけで最低限でも年間 $1,120 かかることになる。(こういう数字はプロの使う大型プリンタについてのものだが、もっと小型の機種でもスケールを小さくして起こりがちなことだ。コンシューマモデルについては以下でもう少し詳しく述べる。)
こうしたプリンタを別にすると、白黒に適したものはプロフェッショナル用の三つの HP モデルしかなく、これらのプリンタはカラー用に自ら色を調整するようになっている。Designjet 30、90、それに 130 だ。(それぞれ $700、$1,000、 $1,300 で、この価格には Ethernet やロールペーパー給紙は含まれていない。)これら三機種は扱える用紙の最大幅が違うだけで、それぞれ最大 13 インチ、18 インチと 24 インチ (34 cm、46 cm、60 cm) となっている。Epson の同等機種と比べると、使用枚数あたりのインクのコストはわずかに少なく、カートリッジの交換でインクが無駄になることもなく、カートリッジに入っているインクの量も少ないので時たま使うだけでもカートリッジが乾いて詰まる危険性が少ないし、クリーニングの必要性もあまりなくて使うインクの量も無視できる程度で、印字ヘッドが必ず年2回乾いてしまうということもない。その上、購入価格も安い。Epson の 17 インチ (43 cm) Stylus Pro 4800 の価格が $2,000 なのに、それと同程度の装備の付いた 18 インチ Designjet 90 の値段が $1,500 だ。
私は 13 インチの Designjet 30 にしようかと気を惹かれた。これは Photosmart 8750 と比べてもずっと高速だったし、購入価格もほんの $200 ほど高いだけで、さらに(下で述べるように)その差額も数カ月ほど使えば取り戻せると称していたからだ。私が大サイズの写真をたまにしかプリントしないこと、もっと大型のプリンタを買うぐらいなら外注した方が安いだろうと思われることから、この Designjet 30 が最も適した選択肢のように思われた。実際、私の場合は外注する必要もなかった。ある 44 インチ (1.1 m) の Epson 機を営業時間外に使わせてもらうことができたからだ。けれども、その Epson は、使う度に色のバランスを取り直さないと充分に使いこなせなくて具合が悪いことがわかった。結局いろいろ迷ったあげく私は一番大きい Designjet にロールペーパー給紙と Ethernet カードの付いたもの (model 130nr、$1,900) を購入した。
自宅で時々使うものとしては、HP Designjet と同等サイズの Epson の間の違いは購入価格についても維持費についてもあまりにかけ離れていて、その他の点での比較は問題にならないように見えた。しかしながら、もしも私が商売で毎日プリントしていたとしたら、維持費のコストはそれほど違いがなくなっただろうし、私も他のいろいろな点を考慮に入れて比較をしただろう。Epson 機の方がよりしっかりした造りで、扱える用紙の種類も多い(ただ、私は Epson のどの用紙よりも HP の用紙の一つの方が好みだったが)し、HP の用紙の方が水にダメージを受けやすいようだった。その一方で、HP 最上級の“glossy”と“semi-gloss”ペーパーは、Epson のどの用紙よりも堅くてしっかりしているように思えた。
この Designjet にはいずれも、カラーマッチング・テーブルのセットが二組付属している。一組目は /Library/Printers/hp/ の中のどこかにインストールされる ICC プロファイルで、もう一組は「印刷」ダイアログの中からのみアクセスできる専用プロファイルで、ダイアログの中では ColorSmart/sRGB という名前で登場する。これら二組を使い比べると、少しずつ違った結果が得られる。ColorSmart/sRGB の方がスナップ写真に適しているような感じだが、私は大サイズのプリントには ICC プロファイルを使う方が好きだ。どちらも、sRGB と Adobe RGB 双方でうまく動作する。このプリンタは、白黒の画像を扱う時にはまた別のプロファイルを使ってうまく働く。このプロファイルはカラーの代わりにグレーをこしらえてくれる。HP のウェブサイトには白黒用のプロファイルが幅広く揃っていていずれも無料でダウンロードできるので、あなたの好みの濃淡を選ぶことができる。また別の方法として、8750 でプリントした白黒写真と光学測定法的に同等なプリントを Designjets 30/90/130 で作るためのプロファイルを Neil Snape が売っている。私はこちらの方が好きだ。
この Designjet 130nr の弱点は、背面にある二つのペーパーフィードだ。片方はロールによる給紙、そのすぐ上にあるもう片方は、ロールから切り取った用紙、あるいは紙が堅すぎて前面の通常用シートフィーダには入らないような用紙のために使う。プリンタは自動的に紙を掴んでフィードするようになっているが、このメカニズムは二歳児よりも手がかかる。何らかの方法で手動で給紙することができるべきだと思うのだが、そういうものはない。特に、紙詰まりした場合に詰まった紙を切り取らなければならない時が厄介だ。このプリンタは、紙の端がきちんと真直ぐに切られていることを要求するのだ。実際、このプリンタは自ら切った紙ですら真直ぐではないと判断して取り込まないことがあった。
たいていの人にとっては、Designjet 30 でさえも高価過ぎるだろう。でも、HP は同様のテクノロジーを使ったコンシューマ向けのフォトプリンタのいろいろなタイプを作っており、それらでも同じような結果が得られるはずだ。少なくとも六色以上でカートリッジを使うタイプのものをこのリストから挙げると、84、85、94、95、96、97、99 と 100 だ。先程述べたように、Photosmart 8750 Professional も特記に値する。双方のタイプを持っている人から聞いた話では、両者で作ったプリントを比較するとやはり同じとは言えないけれども、非常に近いか、あるいは違いが判別できないこともあるそうだ。けれどもこれら両者は動作速度とかコストの面では非常に大きな違いがある。
HP はこの Photosmart 8750 を“Professional”モデルと呼んでいるけれども、業界で働く人ならば誰でもあと $200 余分に払って Designjet 30 の方を買うだろう。なぜなら、購入価格の違いはすぐにランニングコストの安さで埋め合わされてしまうからだ。上質のフォトペーパーに 90% のカバー率でカラー写真をプリントする(この程度の数字が現実的と思われる)には、HP によれば Designjet 機でのインク使用と印字ヘッド磨耗のコストは平均して平方フィートあたり $1.01 になるという。この数字には無駄になる分が計算に入っていないが、Designjet の場合は事実上ほとんど無駄は出ない。HP のこの数字は他の出所の数字や、私自身の経験値に比較してもほぼ妥当なもののように思われるので、私はこれが正しい数字だと信じてよいと思う。インク量による同率換算をすると、Photosmart 8750 機での同じコスト率の結果は $2.03 という数字になる。でも、実際のコストはもっと高くつくだろう。なぜなら、Designjet が一つのカートリッジに一色しか使わないのに、8750 では一つのカートリッジに三色入っているからだ。その三色が同時に使い切られることはまずないので、この Photosmart 8750 ではある程度の無駄が出ることが避けられない。
<http://h20000.www2.hp.com/bizsupport/TechSupport/Document.jsp?lang=en&cc=us&objectID=c00238851>
Epson のプリンタに関しては、私は同様の情報を見つけることができなかった。Epson もある程度の仕様は公表しているが、そこでの数字は 40% のカバー率に基づいていてクリーニングサイクルも計算に入っていないので、とても実情に合う数字とは言えない。現実的な平均カバー率はその倍であり、クリーニングサイクルではプリントの際よりも多くのインクが浪費される。コンシューマ向けの Epson プリンタの場合、どの程度頻繁にクリーニングをするか(つまりどの程度頻繁にスイッチを入れるか)にもよるが、HP の同等機に比べてインクの消費量は少ないかもしれないし、はるかに多いかもしれない。
締めくくり -- まとめると、たいていの人について、たいていの使用目的では、プリントの品質を比較できる有効な方法はない。品質の明らかな違いは、主に写真家の腕から来る違いであってプリンタによるものではない。だから、私はフォトプリンタを選ぶ場合、実際に試してプリント品質を比べてもあまり意味はないと思う。少なくとも六色を持つ現代的なインクジェットプリンタならば、どれをとっても素晴らしい結果を出せる実力を備えているだろうし、昇華型プリンタについても同じことが言えるだろう。また、どんなプリンタがより信頼性が高くて耐久性もあるかを判断できる基準があるかどうかも、私には全く見当がつかない。そもそもどうやってちゃんとした比較ができるのかもわからない。だから、そんなことは心配しても仕方がないと思う。私が思うに、フォトプリンタ同士で違いが判別できる基準があるとすれば、(1) サイズと速度、(2) プリントした写真の耐久性(これは Wilhelm Imaging がテストしている)と (3) ランニングコストくらいしかないだろう。
これら三つの中で、ランニングコストがおそらく最も重要な判断基準だろう。良いプリントが作れる方法を学ぶには、たくさんの悪いプリントを作ることが必要だ。だから、悪いプリントができても気軽にそれを放り捨ててもう一度トライできるように、プリントのコストは充分に安くなければならない。それに、インクが乾いて詰まったから写真のプリントができないとか、カートリッジが使い切れないから新しいカートリッジを買う気がしないとか言うのなら、残念ながら写真に何百年耐久性があろうとなかろうと関係ない。あなたは一枚だってプリントしていないのだから。そうなれば、プリンタのサイズだの速度だのも全く無関係、ということになってしまう。良いインクジェットのフォトプリンタで素晴らしいプリントができることもあるが、それがいつも実際的とは限らない。もしもあなたがそれほど大量のプリントはしないつもりなら、インクジェットよりも昇華型プリンタの方がお薦めできる。
PayBITS: 印刷について説明した Charles の記事がプリンタの選択・使用法のヒントになったなら、どうぞ「国境なき医師団」に寄付をお願いします:
<http://www.msf.org/msfinternational/donations/>国境なき医師団日本
PayBITS の説明:<http://www.tidbits.com/paybits/>
文: Adam C. Engst <[email protected]>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>
"Take Control of .Mac" で .Mac を使いこなそう -- .Mac の会費として毎年 Apple に $100 も払っていながら、あなたはそのお金に見合うだけのことを使っているだろうか? .Mac の提供しているいろいろなことを、フルに使いこなしていない人があまりにも多すぎる。でも、私たちの最新刊の電子ブック、Joe Kissell の“Take Control of .Mac”を読めば、もうそんなことは過去の話になるだろう。この“Take Control of .Mac”で、Joe は .Mac の諸機能について広範な解説を展開し、それと同時に Take Control でもはや標準となった、実地の体験に基づくアドバイスと、実際的なステップ・バイ・ステップの説明もたくさん盛り込んでいる。.Mac のウェブ・インターフェイス経由やあなたの電子メールプログラムで電子メールを読むためのベストな方法、あなたの iDisk を使って他の人たちとファイルを共有するにはどうすればよいか、また、複数の Mac 間でデータの同期をとるには何をしてから何をすればよいのかも、こと細かに学ぶことができる。Joe はまた Backup を使ってあなたの重要なデータを守るためのテクニックや、iPhoto や iMovie で共有された写真やムービーを入れた完全装備のウェブサイトを作るための方法、それに .Mac Group を使ってプライベートなオンライン領域を作り、そこでメッセージや写真、カレンダー、ファイルなどを家族や友人、同僚たちなどと共有するやり方などについても、実際的なアドバイスを展開してくれる。
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"Take Control of Sharing Files in Tiger" 日本語版登場 -- エネルギーに満ち溢れた私たちの日本語翻訳チームの人たちが、今回は Glenn Fleishman 著の電子ブック“Take Control of Sharing Files in Tiger”の完全日本語翻訳版を引っ提げて戻って来てくれた。122 ページのこの電子ブックを読めば、ファイル共有が易しく出来るようになる。Tiger を装備した二台の Mac(Ethernet 経由、AirPort (AirMac) 経由、あるいは FireWire 経由のいずれも)の間で、いろいろなプラットフォームの入り混じったオフィスのワークグループのようなところで、あるいはインターネット上で遠く離れたコンピュータどうしの間でも、ファイル共有ができる。どのように Mac OS X 10.4 Tiger を設定すれば Mac、Windows、あるいは Unix のマシンとの間で AppleShare、Samba、FTP、ウェブ、あるいは WebDAV を使ってファイルを共有できるかがわかる。Glenn はまたインターネット経由でファイルを共有する場合にリスクを避けるための方法を示し、いろいろなオペレーティングシステムから共有ファイルにアクセスするやり方を説明し、また Tiger のファイル共有機能を SharePoints で拡張する方法も説明する。この日本語版の価格は翻訳者の取り分も確保するため $15 となっているが、その値段で日本語版と英語版が両方お手許に届くので、アップデート版が出た場合にもそれが日本語に訳される前に英語の最新版を入手することもできるようになる。
文: TidBITS Staff <[email protected]>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>
各話題の下の1つ目のリンクは従来型の TidBITS Talk インターフェイスを開く。2つ目のリンクは私たちの Web Crossing サーバ上で同じ討論に繋がる。画面上の見栄えが異なるほか、こちらの方が高速のはずだ。
Belkin 802.11g アダプタ対 AirPort -- これら二種のワイヤレス・ネットワーキング用コンポーネントを設定して使い比べた体験を、ある読者が提供する。(メッセージ数 1)
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=2813>
<http://emperor.tidbits.com/TidBITS/Talk/658/>
地理的フォト・ギャラリー -- デジタル写真に、それらを撮影した場所の地図を添えて展示したいという読者がいる。さあ、Google Map をハックしてみよう! (メッセージ数 2)
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=2818>
<http://emperor.tidbits.com/TidBITS/Talk/661/>
デジタル写真の画像フォーマット -- 先週号の Charles Maurer の記事へのフォローアップとして、ある読者が疑問を寄せた。Camera RAW など、後処理された画像フォーマットを使わなければならないのはどうしてか、カメラのセンサーに記録された画像を直接ダンプすることはできないのか、と。(メッセージ数 4)
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=2819>
<http://emperor.tidbits.com/TidBITS/Talk/662/>
Mac と PC 双方で使える PDA は? -- 一つの PDA が複数の環境でうまく動作するということはあるのか? 携帯電話/PDA のハイブリッド機ならばどうだろうか? 読者たちが、それぞれの体験談を寄せる。(メッセージ数 10)
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=2820>
<http://emperor.tidbits.com/TidBITS/Talk/663/>
言語とアイデア -- Prograph を扱った Matt Neuburg の記事から、プログラミング言語とはアイデアの表現なのか(だから著作権の対象になるのか)それとも種々の方法で使われるのも自由なのか、という議論が起こった。(メッセージ数 2)
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=2822>
<http://emperor.tidbits.com/TidBITS/Talk/665/>
_ Take Control 電子ブック日本語版好評発売中
Tiger でのファイル共有、TidBITS 翻訳チーム訳
Panther でのユーザとアカウント、TidBITS 翻訳チーム訳
Panther のカスタマイズ、TidBITS 翻訳チーム訳
Panther へのアップグレード、TidBITS 翻訳チーム訳
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, , 日本語版最終更新:2005年 12月 26日 月曜日, S. HOSOKAWA