Windows を Mac で走らせる世界は高速で流動しつつあるが、今回 Parallels Desktop for Mac が正式出荷されるに至って堅固な足場を得た。Robert Movin が再登場して詳細なレビューをお届けする。また Steve Sande も、iWeb と RapidWeaver、Sandvox を比較した先週の記事に引き続き、追加情報と読者からの反応をお伝えする。Glenn Fleishman は、より良いプレゼンテーションのために OmniDazzle を活用しつつ歌心を膨らませる。ニュースの部では Fetch 5.1、Microsoft Office 11.2.4、それにフォントのトラブルシューティングに役立つ無料のチェックシートについてお知らせする。
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Fetch 5.1 が Tiger 対応を進めユニバーサルアプリになった -- Fetch Softworks は、同社の簡単操作 FTP クライアントの最新版、 Fetch 5.1 をリリースした。大きな新機能として、統合的な 11 からなる Automator のセットやアップロードや転送状態をチェックするための骨の形をした Dashboard ウィジェット、Intel ベース Mac のための Universal バイナリのサポートが盛り込まれた。他の変更点には、モードレスな New Connection ウィンドウ、Macintosh のメタデータも含むことができる新しい Zip アーカイブ、StuffIt Engine を取り込んだことで Fetch の StuffIt サポートが StuffIt のインストールやアップデートを必要としなくなったこと、Keychain へのパスワードの保存などが含まれる。Fetch 5.1 には、様々なバグフィックスや微調整も加えられている。これは 14.2 MB のダウンロードで、登録ユーザには無料で、新規購入は $25 だ。なお、教育や非営利団体は無料で使用可能だ。[ACE](笠原)
<http://www.fetchsoftworks.com/fetch5.release.notes.html#5.1>
Microsoft が Office 2004 アップデートをリリース -- Microsoft はさらなるアップデートを Office 2004 に対してリリースした。Version 11.2.4 は 57.5 MB のダウンロードで、PowerPoint にあった、あなたのコンピュータのメモリを上書きすることをアタッカーに許してしまうというセキュリティホールにフタをする。また、すべての Office アプリケーションで起きた、EPS データを埋め込んだグラフィックスによって引き起こされるクラッシュや Microsoft のドイツ語校正ツールを使ったドイツ語の書類によって引き起こされたクラッシュを解決する。パッケージの締めくくりは Entourage での二つの修正だ。Exchange サーバとのカレンダー同期を改善し、LDAP サーバへの SSL 接続の際に起こったクラッシュに対処した。
アップデートは、Microsoft のウェブサイトから単独のアップデータとして利用することができるが、どの Office アプリケーションでも、「ヘルプメニュー>更新のチェック」を実行することでもできる。このアップデートは以前の Office 2004 アップデートを全て含んでおり、3 月の 11.2.3 アップデートで追加された Entourage における新しい Spotlight や Sync Service のサポートも含んでいる。[JK](笠原)
<http://www.microsoft.com/mac/downloads.aspx>
文: Steve Sande <[email protected]>
訳: 田中大一郎 <dtanaka@cba.att.ne.jp>
先週の記事「iWeb 参戦」はどうも TidBITS 読者の神経に障ったようだ。使いやすいウェブ・ページ編集ソフトはこれだ、とするたくさんの読者から電子メールのメッセージを頂いただけでなく、TiBITS Talk でも活発な議論が交わされた。
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=08560>
<http://emperor.tidbits.com/webx/TidBITS/Talk/862/>
一部の読者は記事中に載っていなかった iWeb 1.1 のある重大な欠点を指摘していた−表を挿入したり編集したりができないのである。iWebがターゲットとしている層に対してはこれはあまり影響はないだろうが、その一方、小規模ビジネスのウェブサイトを iWeb にて開発、維持したいという人たちには、これは気になる機能の省略である。
もう一つ、多くの読者をいらつかせてしまう点は、iWeb では既存のウェブサイトを開けないことだ。多くの初心者デザイナーは好んで人気サイトのデザインをまねるが、編集ソフト中にそのサイトをダウンロードしそれをカスタマイズする以外によい方法はない。
TidBITS Talk の議論では、iWeb で生成されるHTMLコードの貧弱さを咎める声が圧倒的だった。iWeb のウェブ標準への追従の欠如は、このツールで作られたサイトは全てのブラウザで正しく表示されないかもしれない、と言うことを意味し、多くの読者は iWeb 2.0 リリースの前にアップル社はこの点に注目すべきだろうと感じている。
iWeb と比較して、読者は多くの他アプリケーションについて、次のように述べている。
Freeway 4 Express > Freeway Express はおそらく最も強力な使いやすいウェブ開発ツールであり、クリーンなHTMLを生成し、Mal's E-Commerce Suite とリンクして手軽にオンラインストアが作れるツールを含み、そして Freeway 4 Pro というプロフェッショナルバージョンへの明確なアップグレードの道筋を持つ。
<http://www.softpress.com/products/freewayexpressin.php>
<http://www.freewayactions.com/product.php?id=016>
Goldfish >シェアウェアの Goldfish は様々な点で RapidWeaver と似ており、シンプルなパッケージのパワフルなツールである。あなたが加えたいと思うかもしれないカスタマイズのための HTML 挿入を可能にする。
<http://www.fishbeam.com/en/goldfish/>
Macromedia Contribute >このツールは、対となるアプリケーション Dreamweaver を使ってプロがデザインしたサイトの内容を、企業ユーザーが編集できるように、という目的で作られたものだ。Contribute は既存サイトを編集のためダウンロードでき、またクイックなカスタマイズのために、アプリケーションより HTML をテキストエディタにエクスポートすることも可能である。
<http://www.adobe.com/products/contribute/>
Nvu >このオープンソースのアプリケーションは iWeb 等のシンプルなウェブデザインツールと同じカテゴリのものではないが、その一方で多くの読者は価格が無料である事を評価し、初心者には十分易しくプロに対しても十分多彩な特色を持っていると感じた。
PageSpinner >PageSpinner は WYSIWYG ウェブページデザインツールではない強力なHTMLエディタであり、そのページに対応する HTML や CSS に加えられた変更を反映する live preview モードを特徴とする。
<http://www.optima-system.com/pagespinner/>
ShutterBug >主としてオンラインギャラリー作成のツールであり(故にこの名前)、ShutterBug は多くのウェブページテーマとシンプルなインターフェースを提供する。訳注)shutterbug は「アマチュア写真ファン」の意味」
<http://xtralean.com/SBOverview.html>
WordPress >ウェブページエディタのカテゴリとは少し離れるが、この MySQL/PHP ベースのオンライン・ブログツールは数百のテーマと、フォトギャラリーやポッドキャストを含み、iWeb と同じような多くの性能を与える拡張性を提供する。
近々、これらiWebの競合製品の内容についてさらに深く掘り下げてゆく予定である。前の記事に対してフィードバックを頂いた皆様に心から感謝する。
文: Glenn Fleishman <[email protected]>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>
いろいろな講演やカンファレンスなどでプレゼンテーションをし続けてもう長い年月が経つが、プレゼンテーションの最中に何かの情報を強調表示させたくてもうまく行かないでイライラする、といった感覚を私は毎度のことのように経験してきた。何度かは、PowerPoint に含まれている安っぽいツールを使ってみたこともある。これを使えばちょっと手で絵を書き入れたり何かをハイライト表示できたりするというものだが、そういうものを使うと結局私としてはプレゼンテーションを中断して最初からやり直さなければならない羽目になったりすることも多かった。Keynote にはなかなか良いビルドシステムがあって、私もこれを使って隠れたオブジェクトを作っておき、スライド中の特定の部分を強調させたい時にそれらのオブジェクトが順々に見えるようになるという風なやり方をしたこともある。ただ、これも全体に何となく不安定な感じが付きまとっていた。
The Omni Group から出ている OmniDazzle は、そういうものの代わりに使えるものとしてはなかなか良い出来映えだ。これは、カーソル位置を表示してくれるプログラムとよく似たところが多いが、聴衆に情報を強調表示するために特に作られた機能もいろいろと盛り込まれている。プレゼンテーション用の装いを付けるためにも、あるいは特に強調したいテキストだけを表示するような使い方もできる。
<http://www.omnigroup.com/applications/omnidazzle/>
OmniDazzle は、マウスの「足跡」を残すプログラムだ。ごく粗い説明をするなら、このアプリケーションはマウスの位置やドラッグなどの動作に応じて、いくつかの方法でそれらの跡を残したり、あるいは何らかの特殊な挙動をさせたり、といったことを提供する。いくつかのものは、Edward Tufte の言う「チャートのゴミ屑」に分類されるようなもの、つまり、それを使うことでコミュニケーションが促進されるよりはむしろ損なわれるというものだ。(ひどいものの例としては、3D トランジション効果とか、3D の円グラフを紙に印刷したものなどを想像して頂きたい。)
けれども、OmniDazzle のトラッキングツールのうちのいくつかは、プレゼンテーションの最中にも、あるいは単に巨大ディスプレイの中でカーソルがどこにあるのかを見つけたいだけの時にも、とても便利に使える。そもそも、このアプリケーションが開発された当初の動機は(少なくとも表面的には)その後者、つまりカーソルの位置を探知するというだけのことだったのだ。一般的に言って、これらのツールの多くは特定の範囲だけをハイライト表示して、スクリーンのその他の部分を少し暗く表示する。Flashlight(懐中電灯)は、マウスポインタの位置のまわりの丸い領域にスポットライトを当てて、マウスの動きにつれてそれが動くようにする。Focal Point(焦点)は、現在前面にあるウィンドウだけをハイライト表示する。また、ウィンドウ内の一部の領域とそのウィンドウ全体とを行き来できるオプションもある。Scribble(落書き)は、四色のうちの好きな色を使ってスクリーンの上に自由に書き込みができる。Cutout(切り抜き)は、円や楕円、長方形などを画面の上に追加して描けることで、スクリーン上の一部分を強調して見せることができる。Zoom(ズーム)は、あなたが選択した領域が拡大表示される。
Sonar(ソナー)と Waves(さざ波)と Comic(コミック)については、まあ、あまりお勧めすることはできない。これらは単にアイデアを見せるためだけにある、面白さだけのプラグインだからだ。それでも Pixie Dust(妖精のきらめき)には、私も大笑いしてしまった。こいつをちょこっと工夫すると、エイプリルフールの冗談としては最高じゃないか! アプリケーションが隠れてしまって、マウスの跡に拡がるきらきらとした輝きが、画面を埋め尽くすのだ。
いろいろなツールをプレビューしたり、それぞれのオプションを設定したりするためのインターフェイスは、何ともはや気持ち悪いほどヘンテコでもの凄い。ウィンドウの上部に、遠近法を使った奥行きと反映まで付けた 3D 長方形がいくつか並んでいる。現在選択されているものがラベル付けされハイライト表示されて、前面に、スクリーンと平行な面として表示される。そのツールでの設定を何か変えると、その変更は即座にそのプレビューにあらわれる。
これらのツールを呼び出すトリガーには、Key、Button、それに Shake などがある。Key はあらかじめ割り当てたキー組み合わせを押して呼び出す。Button では特定のマウスボタンが選べる。そして、Shake はなかなか傑作の、プレゼンテーション中には便利なツールだ。マウスを「シェイク」する、つまり素早く前後にマウスを揺り動かすと、ツールが呼び出される。何回シェイクすればツールが呼び出されるかを設定でき、またツールを止める時間幅も設定できる。
二つのツールを同時に使うことはできない。また、キーボードを使って異なったツールに切り替えることもできない。ぜひとも将来のバージョンでは、異なったツールごとに別々のキー組み合わせを割り当てられたり、あるいは使用中に別のツールに切り替えるコマンドが使えたりするようになって欲しいと思う。
このソフトウェアは「タイマーウェア」だ。つまり、ライセンスを購入しなくても毎回一時間ずつの間は使用できる。一時間が経てば、プログラムを終了してから起動し直さなければならない。$15 のライセンス料を払えばこの制限がなくなる。
文: Robert Movin <[email protected]>
訳: 羽鳥公士郎 <hatori@ousaan.com>
訳: 亀岡孝仁 <takkameoka@bellsouth.net>
私が初めて TidBITS に連絡をとって、"iPod から MacBook Pro へ: 乗り換え体験記" という記事を書いたときを振り返ってみると、その記事が、Mac における仮想化の現状についての3部作に発展しようとは、想像だにしていなかった。しかし、3部作の最終章となるこの記事では、私は高らかに、完全なる Mac ユーザへのスイッチが、予期していたよりも早く完了したと宣言したい。最初の Intel Mac が登場してからたった6ヶ月しかたっていないというのに、私の想像をはるかに超える強力な仮想化が実現されている。しかもそれは、Microsoft(Virtual PC)や EMC(VMWare)といった巨人の力ではなく、オープンソース(QEMU)の力ですらなく、どちらかといえばちっぽけだが小回りのきく新興企業 Parallels の手によって成しとげられたのだ。(仮想化について、そしてそれが Apple の Boot Camp ベータ版とどう違うのかということについての詳しい説明は、私の前回の記事 "WinOnMac タイトルマッチ:デュアルブート vs 仮想化" を参照。)
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=08455>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=08495>
私は通常、新技術製品についてはかなり疑い深く批判的だ。しかし、Parallels Desktop は当初の期待をはるかに上回っており、深い感慨を禁じざるをえない。この製品は、まだ改善の余地は多く残されているものの、私が諸手を挙げて推薦することのできる数少ないソフトウェアの1つだし、Mac に対する世間の認識をひっくり返す可能性を秘めている。Parallels Desktop は、ゲームを除けばどんな場合でも、Mac で Windows(そのほかの OS も)を動かすための最良の選択肢だ。
<http://www.parallels.com/en/products/desktop/>
ベータ版からリリースまで -- Parallels が Parallels Desktop for Macの最初のベータ版をリリースしたのは(そのときは Parallels Workstationという名称だった)、TidBITS の 4 月第1週号に掲載された前回の記事をまとめている最中のことだった。Apple の Boot Camp を含め、私がそれまでにテストしたりレビューしたりしたツールとは異なり、これを使うと、すべてのバージョンの Windows をインストールすることができ、すべてのアップデートやすべての主要なアプリケーションパッケージもインストールすることができた。最初のベータ版は、性能は悪くなかったが、メモリ管理が貧弱で、機能も限定され(例えばホストシステムとファイル交換ができなかった)、スリープさせるといった日常的でない操作をすると Mac をクラッシュさせるというバグがあった。そうはいっても、Windows は動くし、私が必要とするソフトウェアはすべて(私の会社の VPN も含め)動くし、それがすべて、私が会社で使っている PC よりも速いのだった。それ以来、Parallels の開発チームは寝ていないに違いないと思う。というのも、2か月半のあいだ、性能面および機能面で大幅な改善を満載したリリースが、毎週のように続いたのだ。最終的にリリースされたのは、磨き上げられ安定した製品で、VMWare に慣れ親しんだ上級ユーザには機能が欠けていると思われるかもしれないが、最初のベータ版から想像されるよりも多くの機能が備わっている。私はすべてのリリースを、「ベータ」の印が付いているにもかかわらず自分の本番環境で動かし、かなり徹底した負荷テストをすませたと確信している。
<http://www.apple.com/macosx/bootcamp/>
Parallels Desktop for Mac のリリース版は、2006 年 6 月 15 日に 80 ドルで登場したが、2006 年 7 月 15 日までに注文するとたった 50 ドルになる。残念ながら、40 ドルの先行注文はもう締め切られた。[しかし、"Take Control of Running Windows on a Mac" を購入していただければ、この電子ブックの巻末に Parallels Desktop が 10 ドル割引きになるクーポンがある。-Adam] リリース版にはボーナスも含まれている。通常は 180 ドルのParallels Compressor だ。これは VMWare を含む複数の製品の仮想イメージを圧縮する。
<http://www.takecontrolbooks.com/windows-on-mac.html?14@@!pt=TB834>
<http://www.parallels.com/en/products/compressor/>
レビュー -- リリース版の良いところはどこだろう。Windows XP SP2 をすばやく起動することができる。Windows、Linux、OS/2、そのほか x86 オペレーティングシステムのほとんどを動かすことができる。ほとんどの USB 機器に対応している。様々なオペレーティングシステムを複数のモニタでフルスクリーンで動かすことができる。オペレーティングシステムをまたいでカットアンドペーストができる。Mac OS X とファイルを共有できる。そしておそらく、あなたの PC よりも速い。
では、悪いところは? 正直に言っても、それほど多くない。FireWire やゲームレベルのグラフィックに対応していない。USB 2.0 機器は 1.1 の速度で動作する。そして、CD/DVD 制御にいくつか問題がある。
Parallels をインストールするのは、ほとんどの Mac 用ソフトウェアと同様、簡単だ。ダウンロードし、ディスクイメージをマウントし、インストーラパッケージをダブルクリックするだけでいい。しかし、ソフトウェアをインストールしたからといって、すぐに Windows 世界への出入りが許されるわけではない。Windows のインストールディスクと有効なライセンスが必要で、最初にいくつか手順を踏んでゆく必要がある。このプロセスは Parallels のおかげで簡単になっているとはいえ、技術に明るくないユーザは、"Take Control of Running Windows on a Mac" の説明を読まなければ、しり込みしてしまうかもしれない。
私はまず、同梱のウィザードを使って、新しい仮想マシンを作成した。このウィザードは手順を一つ一つ分かりやすく示してくれる。オペレーティングシステム(Windows XP)を決定し、仮想マシンに名前をつけてから、コンソール画面に進み、様々な項目を設定した。大抵の場合はデフォルトで問題ないはずだが、私は仮想マシンのメモリを増やし(デフォルトは 256 MB)、Mac OS Xとのファイル共有を許可した(デフォルトでは、あの厄介な Windows ウイルスを Mac ファイルに近づけないように、不許可になっている)。そして、Windows インストールディスクを挿入し、Parallels Desktop の Play ボタンをクリックし、Windows のインストールを開始した。ここから先の過程はすべて、新しい PC に Windows をインストールするときと何も変わらない。30 分もしないうちに Windows を走らせることができたので、ネットワークや画面、マウスのサポートを改善する Parallels Tools をインストールしてから、必要な Windows ソフトウェアをすべてインストールするという面倒な作業をこなしていった。Parallels Desktop、Windows XP、Parallels Tools、そして基本的な Windows ソフトウェアパッケージのすべてをインストールするのにかかった時間は合わせておよそ 90 分だ。1つだけ注意をしておくと、有効な Windows ライセンスが絶対に必要で、アクティベーションの作業を済ませる必要がある。
Parallels Desktop のインターフェースは簡潔かつ直感的で、VMWare のようなほかの仮想化ツールを使ったことがある人にはなじみ深く感じられるだろう。右下の隅にある小さなアイコンが、ネットワーク、USB、ハードディスクなどの周辺機器の状況を表示し、可動のツールバーからは、仮想マシンの起動、停止、休止、リセット、フルスクリーンモードへの切り替えができる。Parallels Tools をインストールすれば、ゲスト OS がまるで Mac OS X の一部であるかのように、マウスカーソルが OS 間でスムーズに移動する。Parallels Tools がない場合、ゲスト OS にマウスを制御させるには、忘れずに Ctrl-Alt を押下しなければならない。キーボードの操作は、仮想マシンを出入りするときには少々厄介なことになる。仮想マシンは、Mac OS X の一部であるかのように見えていても、やはり別のオペレーティングシステムなのだから、キー入力の組み合わせは Mac OS X と食い違っている。Parallels Desktop には、ゲスト OS に特別なコマンド(なくてはならないCtrl-Alt-Del など)を送るメニューがあるが、私はしょっちゅう、Windowsウインドウにおける Ctrl-C は Mac OS X における Ctrl-C とまったく異なるということを忘れてしまう。
Parallels Desktop の真価は、その性能にある。この製品は、Intel の新しいチップに採用されている VT テクノロジを利用した最初の仮想化ソフトウェアだ。この技術は、特に仮想マシンの性能を向上するために、ハードウェアを拡張する。私の MacBook Pro では、Windows XP の起動はおよそ 10 秒で、応答もすばやい。別のところで、この製品は Boot Camp で Windows XP を走らせたときよりも約 2 パーセント遅いだけで、ほかのハードウェアメーカーのCore-Duo PC システムのいくつかよりも速いというレポートを見たことがある。起動後の性能も見事で、私の Pentium 4 と肩を並べ、Pentium M ラップトップよりは明らかに速い。Windows の起動があまりに速く、プログレスバーが最初の小さなドットしか表示しないのを見たときの驚きといったら、言葉で表すことはできない。どこへ行っても、私の後ろには IT 専門家が群がって、私が Windows を起動したり終了したりするのを眺めるのだった。もし Appleに紹介報酬制度があったなら、私はあと数か月もすれば隠居できるだろう。
この性能を見てもなおためらっている懐疑主義者でも、フルスクリーンのデモを少しでも見れば、大抵の場合気持ちが揺らぐ。Mac OS X でユーザを切り替えるときの、あの素晴らしいキューブエフェクトはご存知だと思うが、それを含めた数種のエフェクトから、フルスクリーンモードに移るときのトランジションを選択できる。立方体が回転し、停止したかと思うと画面が MacBook Pro のワイドスクリーンに合わせて調整され、それでもう、見た目は通常のWindows マシンと変わらなくなる(ただし、筐体にへばりついたあの見苦しいステッカーはない)。2つのモニタを使っているなら、片方で Mac OS X を使い続けながら、もう片方でゲスト OS をフルスクリーンで動かせ、両者のあいだでマウスをスムーズに動かすことができる。ただし、フルスクリーンから抜け出すためのコマンド(Alt-Enter)は忘れないように。さもないと、私が初めてフルスクリーンにしたときのように、そこに閉じこめられてしまう。フルスクリーンから戻るときに、理由は分からないが、少し動作が遅くなるようだし、コマンドを何度か送らなければならないこともある。
ネットワークのサポートは悪くないが、競合製品(もちろん、Intel Mac で動くものはほかにはまだないが)のいくつかと比べると、明らかに劣っている。デフォルトでは、Parallels Desktop はホストコンピュータが使用しているネットワークアダプタを使って、専用のブリッジされたネットワーク接続を確立するから、仮想マシンはネットワーク上にもう1台コンピュータが加わったように見える。Mac につながっているネットワークアダプタのうち特定のものを使うように設定することもできる。Parallels ではネットワークをホストのみにすることもできるから、仮想マシンを隔離することもできるし、Mac が使用しているネットワーク接続を共有することだってできる。私は、外出先ではBluetooth 上の無線 EVDO 接続を Mac と共有している(これは 共有 環境設定パネルで設定できる)。しかし、VMWare と異なり、Mac 上で完全な仮想ネットワークを構築することはできない。これは、IT 専門家にとって、仮想システムを安全な「偽の」ネットワークでテストするのに便利な機能なのだが。
私が特別気に入っている機能は、ライブディストリビューション(Knoppix など)を含めほとんどどんな Linux ディストリビューションでも、ローカルにインストールせずにディスクイメージから直接動かせるという機能だ。ただし、Tools は対応していないので、マウスやキーボードの制御は手動で切り替えなければならない。ハードウェアのサポートも限られているが、Slax ベースや Knoppix ベースのディストリビューションを試したところ、何の問題もなかった。ネットワークや画面についても、私の必要をほぼ満たすのに十分だった。Parallels Desktop では、ほかの仮想化ツールと同様、起動可能なディスクイメージならなんでも、解凍してパーティションにインストールすることなく、操作対象とすることができる。
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USB に対応したのは最終リリースの直前だったが、私がテストした USB 機器は、ベータ版で動かなかったもの(SCUBA ダイブウォッチ)も含め、動作する。Parallels サポートフォーラムの報告を見ると、まだすべての機器が動くわけではないようだが、開発チームは着実に対応を進めているようだ。1つ大きな制限は、USB 2.0 機器がより低速の USB 1.1 規格でしか接続できないということだ。また、機器の自動接続はお勧めできない。そうしてしまうと、接続した USB 機器がすべて、仮想マシンに乗っ取られてしまうからだ。iPod shuffle を接続すると、iTunes が立ち上がるのではなく、仮想マシンに大容量ストレージ機器として現れるとしたら、いらいらするというものだ。
Parallels Desktop は、ほかの仮想化製品と同様、複数のオペレーティングシステムを同時に動かすことができる。しかし、それには十分なメモリが必要だ。私は MacBook Pro のメモリを 2 GB に増やしたので、標準的な Mac OS Xアプリケーションに加えて、2つないし3つの仮想マシンを動かすことができる。
個々の仮想マシンは2つのファイルから構成されている。1つはハードディスクイメージで、もう1つは設定ファイルだ。仮想マシンのクローンを作るのは簡単で、ハードディスクファイルをコピーするだけで、インストールされたWindows 全体をバックアップできる。すべてのコンピュータが仮想だったら、どんなによいことか。Parallels には仮想ディスクのサイズを変更するツールもあるが、その操作はやや込み入っている。はじめから十分大きなイメージを作成した方がよい。
現実の話 -- どれぐらいうまくいくかのデモの他に、ベータ版が改善されるのに合わせて私自身も Parallels への完全移行を進めてきた。私の職場で使うアプリケーションのうち一つを除いて全てを仮想マシン上に移した。お陰で生産性の向上が見られた。私の Windows 環境は私の仕事上の "正式の" システムよりずっとクリーンである。これは、私の個人的なアプリケーションは全部 Mac OS X 上にあるし、そして Windows ツールも最小限のセットしかいらないからである。Windows は速くなったし、メンテも簡単になり、その上ロックダウンした状態を保存するのも簡単になった。私は今会社の IT 部門と、管理者権限がなければロックダウンされたままとなる完全で正式な仮想イメージを生成することについてネゴしているところである。また Parallels は Windows 上で走る Parallels Workstation も売っているので、もしこの実験がうまくいけば、ロックダウンされた正式のイメージを保持することが出来るようになり、これを使って移行、バックアップ、それに配布といった作業もやりやすくなる。ユーザーが自分個人の PC 上でスパイウェアだろうがウイルスだろうが何を走らせても (勿論我々 Mac ユーザーは除いての話)、会社の正式イメージは安全に隔離された状態を保てる。おまけだが、私は複数のバージョンの Windows と Linux を同時に走らせる事が多いので、私のシステムメモリを 2 GB に増設して貰ういい言い訳となっている。
それに "ワーォ!" 効果についてもとても十分には説明しきれない程である。人々が、とりわけ IT の専門化が、Windows が Mac 上で全機能を持ちながら快適に走っているのを目の当たりにした時、彼らの目から偏見が解け去っていくのが目に見えるのである。更に彼らが、私の Windows 仮想マシンが彼らの新品の専用の PC よりも速く走っている事を自覚した時、彼らの毛穴から羨望がにじみ出てくるのが感じられるのである。キューブが全画面へと移行していくのを見た時の反応は、古い Elvis 映画に出てくるあの気絶しそうな十代の女の子達のギーク版とでもしか表現のしようがない。これはどのプラットフォームにも当てはまるコンピューティングの未来像といえる。
将来を見通す -- Parallels Desktop/Workstation は今日 Mac 及び PC 用として出されているが、Mac ハードウェアの更なる標準部品採用が進めば仮想体験側での進化にも期待が持てそうである。現在の仮想マシンの一つの目に付く弱点はビデオサポートが相対的に貧弱なことである。グラフィックカードに直接アクセスできなければ、ゲームやその他の視角エレメント (Windows Vista に搭載されると見られている) に必要な先進機能はサポートできない。噂ではあるが、Parallels の開発陣はこの問題に懸命に取り組んでいるというので、次のバージョンでグラフィックのサポートが追加されても私は驚かないであろう。更に期待したいのは、より良いネットワークサポート、USB (そして出来れば FireWire も) サポートであり、そして異なった仮想マシン間の選択と切替のインターフェースの改善もあればなお嬉しい。Mac 上で Windows を一つしか立ち上げない平均的なユーザーにとっては現在の機能で十分であろうと思われるが、IT のプロ向けには Parallels が改善しなければならない機能が間違いなく残されている。それから、大企業での展開に必要となる複数イメージのための集中管理ツールも欠けている。
これらの追加機能のことは外に置いておけば、Parallels Desktop は、世界の Mac の認識と容認とを変えることの出来る数少ないアプリケーションの一つであるといえる。これは "これが全てを変える" のカテゴリに属する Mac OS X, iLife, そして Microsoft Office for Mac と肩を並べるものである。
これでもまだ信用できないというのであれば、次の事実を見てみて欲しい:Apple はその新しい "Get a Mac" キャンペーン宣伝広告の中に 1ページを Parallels Desktop に割いてそのリンクを"You can even run Windows software." のバナーの下に貼り付けている。見て頂ければわかるが、そこでは Apple の自分の製品である Boot Camp には一切言及していない (理由は単に Boot Camp は未だベータであるということかもしれないが)。Parallels が Apple ファミリーの一部になる日が来る?無い事ではないかもしれないが、Parallels は仮想化の世界では有望な新人であり、例え Apple の名前がつく事はなくとも明るい将来を持っている。いずれにしても Mac コミュニティは幸せというものである。私はそれが例え Mac OS X に組み込まれたとしても文句を言う気はない。
<http://www.apple.com/getamac/windows.html>
Parallels Desktop のお陰で、Mac の上で Windows を走らせること - しかも Mac (或いは Windows) の経験を損なうことなしに - は現実のもとなった。私は、Intel Mac を持っていて Windows を走らせる必要がある (多分そうしたいという願望ではないであろうから) 人には誰にでも Parallels を高く推奨できる。
文: Adam C. Engst <[email protected]>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>
無料のチェックシートで厄介なフォントのトラブルを解決 -- もしもあなたがフォントのことでお困りなら、Sharon Zardetto Aker の電子ブック“Take Control of Font Problems in Mac OS X”が究極の参考書になるだろう。でも、こんな電子ブックを丸ごと買うのはちょっと、とおっしゃる方は、1ページだけだが Sharon によるフォントのトラブルシューティングのためのフローチャートが無料でダウンロードできるのでどうぞご利用頂きたい。一目でよく分かるこのフローチャートは、示された通りに道を辿るだけで問題点に分け入ることができ、個別的ではないフォントの問題の多くに解決の道が示されるだろう。(ここで個別的ではない問題と言ったのは、この電子ブックの中で Sharon が具体的な解決法を提供してはいないような問題、という意味だ。)このチェックシートには Creative Commons ライセンスが適用されており、非営利の目的ならばオリジナルの通りの改変されないものを自由にコピー・配付・展示することが許されている。だから、皆さんもどうぞご自由にこのチェックシートを印刷して掲示したり、トラブルシューティングのアドバイスを欲しがっている人に分けてあげたりして頂きたい。どうぞご活用を!(以前既にこのチェックシートをダウンロードして下さっている方は、今回あらためてもう一度ダウンロードされることをお勧めしたい。見やすさを向上させるために少々修正を加えた新バージョンとなっているので。)
<http://www.takecontrolbooks.com/font-problems-macosx.html?14@@!pt=TRK-0037-TB834-TCNEWS>
<http://www.takecontrolbooks.com/resources/0037/TakeControlOfFontProblemsFlier.pdf>
文: TidBITS Staff <[email protected]>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>
各話題の下の1つ目のリンクは従来型の TidBITS Talk インターフェイスを開く。2つ目のリンクは私たちの Web Crossing サーバ上で同じ討論に繋がる。画面上の見栄えが異なるほか、こちらの方が高速のはずだ。
iWeb 参戦 -- iWeb やその他の使いやすいウェブ制作アプリケーションについて書いた Steve Sande の記事は多くの読者の気に障ったようだ。皆がそれぞれ独自の推薦を持ち寄ってくれた。(メッセージ数 27)
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=3029>
<http://emperor.tidbits.com/TidBITS/Talk/862/>
子供たちのためのゲーム開発ツール -- 若いコード開発者たちを育てるのに、早すぎるということは決してない。子供でも使えて自分のアプリケーションをビルドできるパッケージが、いくつか提案された。(メッセージ数 8)
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=3030>
<http://emperor.tidbits.com/TidBITS/Talk/863/>
さらば Michael Bartosh よ -- 転落事故によって亡くなった Mac ライター Michael Bartosh を悼んで、オンラインの追悼会へのリンクや、Macworld Expo での MacIT Conference Track のため奨学金 Bartosh Scholarship が新しく設けられたことなどが紹介される。(メッセージ数 3)
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=3031>
<http://emperor.tidbits.com/TidBITS/Talk/864/>
_ Take Control 電子ブック日本語版好評発売中
Tiger でのファイル共有、TidBITS 翻訳チーム訳
Panther でのユーザとアカウント、TidBITS 翻訳チーム訳
Panther のカスタマイズ、TidBITS 翻訳チーム訳
Panther へのアップグレード、TidBITS 翻訳チーム訳
非営利、非商用の出版物およびウェブサイトは、フルクレジットを明記すれば記事を転載またはウェブページにリンクすることが できます。それ以外の場合はお問い合わせ下さい。記事が正確であることの保証はありませ ん。書名、製品名および会社名は、それぞれ該当する権利者の登録商標または権利です。TidBITS ISSN 1090-7017
, , 日本語版最終更新:2006年 6月 27日 火曜日, S. HOSOKAWA