TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#836/03-Jul-06

このポータブルなコンピュータたちのことを、Apple がもはや「ラップトップ」と呼んでいないのにはわけがある。とても熱すぎて、ラップトップ(膝の上)に乗せて使うことなどできないのだ! Adam が、自らの中に潜む第二の自我、「プライベート・i(アイ)」を活躍させて、トーストが焼けるほどに熱い MacBook Pro の問題を調査する。また、Adam は Microsoft による iView Multimedia の買収についても検討し、Jeff Carlson はビデオ・タイムコードの計算機について概観する。ちょうど七月に入るにあたり、たくさんのアップデートも出ている。Apple は Mac OS X 10.4.7、iTunes 6.0.5、iPod Software Update 2006-06-28 と QuickTime 7.1.2 をリリースし、Ergonis Software からは PopChar X 3.0 がデビューを果たした。

記事:

Copyright 2005 TidBITS: Reuse governed by Creative Commons license
<http://www.tidbits.com/terms/> Contact: <editors@tidbits.com>


本号の TidBITS のスポンサーは:


MailBITS/03-Jul-06

Apple 社、Mac OS X 10.4.7 の Update をリリース -- Apple 社は先週、Mac OS X 10.4 Tiger への無料のアップデートであり、様々な改良とバグフィックスを行った Mac OS X 10.4.7 をリリースした。PowerPC や Intel ベースの Mac用、および今のところPowerPC ベースの Mac にのみ対応している Mac OS X サーバー用のそれぞれのインストーラーは、ソフトウェアアップデートか、Apple 社のソフトウェアダウンロードのサイトより入手可能である。広範にわたる小さな修正やセキュリティーホールへの対応に加えて、10.4.7アップデートでは例えば、信頼性の低いインターネット接続を介してファイルが添付された IMAP メッセージを回収する際の信頼性向上や、SOCKS proxy を通したメールサーバーへの接続など、いくつか Mail の機能を向上させている他、iChat でのビデオ会議やファイル転送の向上や、Bluetooth を使った Motorola 社製携帯電話や .Mac アカウントとの iSync サポートをより良好なものにしている。

<http://docs.info.apple.com/article.html?artnum=303771>(日本語)アップル - サポート - TIL (Mac OS X 10.4.7 Update (delta) について)

Apple 社は、今回のアップデートではPowerPC ベースの Mac にて、アプリケーションによってはメッセージを表示せずに開くのに失敗する、という問題を解決しており、そしてまたフォントを手作業で削除しても、もうFinder が予期 せず停止するということもない、としている。またこのアップデートは、 Apple 社のすばらしい二本指の右クリック(先月 MacBook と更新後の MacBook Pro モデル向けに発表されたもの)を MacBook Pro初期モデルのトラックパッドでも働かせるようにするものだという。単体ダウンロードのバージョンは、64 MB (PowerPC 10.4.6 から 10.4.7 への delta version)から 125 MB(Intel 10.4 から 10.4.7 への Combo version)のサイズにて入手できる。もし先週の金曜日以前に Intel ベース Mac 用の delta version をダウンロードしている場合、Apple 社は最初のリリースでは欠けていたいくつかの OpenGL ファイルを含めた形でインストーラを再リリースしているので、もう一度ダウンロードすべきだ。ソフトウェアアップデートの場合は、あなたの Mac に適切なバージョンを見つけてくれる。[MHA](田中)

<http://www.apple.com/support/downloads/>(日本語)アップル - サポート - ソフトウェアアップデート

PopChar X 3.0 が便利さを改良 -- Ergonis Software が PopChar X 3.0 をリリースした。現代の Unicode フォントに含まれる何千という文字も探し出したり文中に挿入したりできる、同社の長年にわたるユーティリティの大幅なアップグレードだ。PopChar X の基本的な機能は変更を必要としていないが、今回の改善点の大部分は使用感の改良とパフォーマンスの向上に向けられている。この目標に近づくため、PopChar X には文字の検索をスピードアップするための Search フィールドが設けられ、ここには入力された文字を含んだ文字(例えば“e”とタイプすれば“e”にアクセントを付けた変種をすべて表示)か、またはその Unicode 名と入力された文字列とが一致する文字(例えば Lucida Grande の Unicode 文字を見ている時に“greek”とタイプすればすべてのギリシャ文字を表示)のいずれかが表示される。また、PopChar の文字一覧表には、これを移動可能なウィンドウとして表示できるオプションが加わったので巨大なメニューを使わずに済むようになった。このウィンドウはその位置も記憶しているし、文字を挿入させたりウィンドウの外部でクリックしたりすれば即座にこのウィンドウが消えるようにする設定項目もある。多くの人がインストールしている何百ものフォントに秩序を与えるため、PopChar のフォントメニューは最近使ったフォントだけを表示するようになった。利用可能なすべてのフォントを表示する大きなスクロール可能リストを提供したドローワも新設された。そして最後に、同じ文字を何度も入力しているという人のため、PopChar は最近使った文字のみの表示も提供する。新機能や最近の機能のすべてを記したリストは Ergonis のウェブサイトで読むことができる。

<http://www.ergonis.com/products/popcharx/features.html>
<http://www.ergonis.com/products/popcharx/history.html>

PopChar X 3.0 は Universal Binary となり、Intel ベースの Mac でのパフォーマンスが向上した。Mac OS X 10.3.9 かそれ以降を必要とするようになり、Classic アプリケーションはもはやサポートしていない。1.6 MB のダウンロードだ。Ergonis では普通と違うアップグレードシステムを採用しているので注意が必要だ。基本的には、新規購入 ($30) または更新 ($15) の後二年間は、すべてのアップグレードが無料になる。ただし、その二年間という期間が過ぎた後は、もう一回更新した後でなければどんなアップグレードも使えない。意外なことになるのを避けるには、PopChar の登録ダイアログを見れば、新バージョンをダウンロードしてインストールするよりも前に、あなたが無料アップデートを受けられるかどうかがチェックできる。[ACE](永田)

iTunes、iPod ファームウェア、QuickTime アップデート -- 5月下旬の約束を果たすべく、Apple は iTunes と iPod ソフトウェアをアップデートして、Nike+iPod Sport Kit と共に働くようにした。これは iPod nano を Nike+ シューズとリンクさせて、ジョギング中のデータを追跡できる機器だ。(記事“iPod を掴んで走り出せ”を参照。)iTunes 6.0.5 では、運動中のデータが nikeplus.com ともシンクできるようになった。この 19.8 MB のアップデートはソフトウェア・アップデートでも入手できるが、悪意のある AAC ファイルに脆弱性を衝かれる可能性のあったセキュリティホールも塞いでいる。

<http://www.apple.com/ipod/nike/>(日本語)アップル - Nike+iPod
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=08543>(日本語)iPod を掴んで走り出せ
<http://www.apple.com/support/downloads/itunes605.html>(日本語)アップル - サポート - ダウンロード - iTunes 6.0.5
<http://www.nikeplus.com/>
<http://docs.info.apple.com/article.html?artnum=303952>(日本語)アップル - サポート - TIL (iTunes 6.0.5 のセキュリティコンテンツについて)

iPod Updater 2006-06-28 は、iPod 用、iPod nano 用、それに iPod shuffle 用のソフトウェアをアップデートし、バグを修正するとともに、iPod nano では Nike+iPod のサポートを追加し、iPod shuffle では最大音量の制限機能を追加している。Apple はすべての種類の iPod アップデートを一つのインストーラにまとめているので、このアップデータは 49 MB という大きさになり、独立版のダウンロードでも、またソフトウェア・アップデート経由でも入手できる。

<http://www.apple.com/support/downloads/ipodupdater20060628.html>(日本語)アップル - サポート - ダウンロード - iPod Updater 2006-06-28

最後にもう一つ、Apple は QuickTime 7.1.2 もリリースした。49.1 MB のダウンロードで、iDVD のプロジェクトをプレビューするときに発生する問題が修正されている。[JLC](永田)

<http://www.apple.com/support/downloads/quicktime712.html>(日本語)アップル - サポート - ダウンロード - QuickTime 7.1.2

PDFpen 2.4 コメントに対応 -- SmileOnMyMac は PDFpen (とその兄貴分にあたるフォーム作成用の PDFpen Pro) をバージョン 2.4 にアップデートした。これにより PDF コメントに対応するようになったので PDF ファイルに編集可能なコメントを付加できるようになる。そして更にコメント、ノート、それに印鑑の全てを網羅するドロワーもついたので、ファイルの中で何が追加され、修正されたかを見るのが容易になった。このコメントは真の PDF 注釈付け方式にのっとっているので Acrobat 上でも正しく見え、そして編集可能である;同様に、Acrobat で付けられたコメントも PDFpen 上で見え編集可能となる。しかしながら、Apple の Preview でも既存の PDF コメントを表示できるとは言っても、その "Text Annotation" ツールは真の PDF コメントではなく単に黄色の四角に入ったテキストオブジェクトを生成するだけである。更に悪いことには、Preview の中でコメントの付いた PDF ファイルを保存しようとするとこれらのコメントを破壊してしまう。PDF コメントはテキストだけのドキュメントの共同作業用にはかなり場違いな感じがするが、テキストと画像を含んでかなり凝ったドキュメントを生成しシェアしていく作業には極めて合っている。これまでだと、Mac 上でコメントを付けたり編集したりしようとするともっと高価な Adobe Acrobat Standard か Professional を持つ必要があった。バージョン 2.4 の PDFpen または PDFpen Pro は登録済みユーザーに対しては無料のアップデートであり 5.9 MB のダウンロードとなる。新たに購入する場合は PDFpen が $50;PDFpen Pro で $95 となる。[ACE](カメ)

<http://www.smileonmymac.com/PDFpen/>


Microsoft が iView Multimedia を買収

文: Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
訳: 亀岡孝仁 <takkameoka@bellsouth.net>

ちょっと予期しなかったニュースがある。Microsoft が iView MediaPro と iView Media デジタルアセット管理アプリケーションのメーカーである iView Multimedia を買収したというのである。とりわけ iView MediaPro は写真カタログツールとして高い評価を受けている、というのもファイルのカタログ化を 120 以上のフォーマットででき、オリジナルを元の場所に残しておいて更にオリジナルがオフライン (例えば DVD に収納されているとか) の場合でもそのカタログをブラウズする事ができる。加えて iView MediaPro には画像編集機能も多少備わっているが、私の経験から言うと、少なくとも Apple の iPhoto に較べれば、これはわかり難くかつ使いづらい。

<http://www.iview-multimedia.com/mediapro/>
<http://www.iview-multimedia.com/media/>

iView Multimedia からのこの買収にかかわる FAQ 及び創始者の Yan Calotychos からの書簡には例によってあいまいな表現しかなくて、この買収により iView Multimedia は "業界を先導する製品を更に強化でき、一方でカストマーサービスとサポートの改善を図れる" と言った調子である。FAQ によれば、"Microsoft は iView の技術と製品について大胆な計画を持っており、その製品計画と発売時期についての詳細は時期が来たら発表する" となっている。

<http://www.iview-multimedia.com/microsoft/faq_acquisition.php>
<http://www.iview-multimedia.com/microsoft/>

将来の方向性に関するヒントが何もない状態では、何がどうなっているかについては推察する以外に方法はない。Microsoft は Microsoft Office on the Mac のための画像アプリケーションを持たないまま長いこと来てしまった。勿論 Word には多少の画像操作機能があり、PowerPoint にはグラフィックツールが備わってはいる。Microsoft は iView MediaPro を色々な Office アプリケーションの間に存在する画像のための仲介者とみなしている可能性もなくはない。これは Entourage が異なった Office アプリケーションに対してプロジェクト管理と言う糊の役割を果たしていることと似たような役目である。

ついでに言っておくと、Office for the Mac の次期バージョンでは Microsoft はコラボレーションに最大限の努力を払って欲しいと私は願っている。私はこれまで一度ならず書いているが、Word にはそこそこの変更履歴管理とコメント付加機能がついている。方向は正しいとは言っても、これらはまだまだよちよち歩きを始めたに過ぎない。Office ドキュメントは色々な形でワークグループのメンバー間で日常的にシェアされている:Word ファイルはコメントが付けられそして編集される、Excel スプレッドシートは追加がなされる、そして PowerPoint のスライドは簡明さを出すために揉まれる。しかしながら、Office は色々なネットワークの形態を跨ってこれらのファイルをシェアすることには全く何の役にも立たない。例えば、誰が何に取りかかっているのかのステータスを示すこと、そして時系列的に変更が加えられたファイルのバージョンを管理することである。これらは何もあれば良いという特定分野の機能ではなく、もし正しく運用されるなら、Office を使う組織であれば誰にでも、大きかろうが小さかろうが、必須のワークフローとなるような大事なものである。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=07670>(日本語)WriteRight: ライターのためのワードプロセッサ


タイムコード計算機

文: Jeff Carlson <jeffc@tidbits.com>
訳: 羽鳥公士郎 <hatori@ousaan.com>

数年前のことになるが、私はプログラマを見つけて、ビデオ編集に必要不可欠な小さなユーティリティ、タイムコード計算機を書いてもらおうと考えたことがある。タイムコードというのは、ビデオの長さを測る単位となるもので、時:分:秒.フレームという形をとる。例えば、タイムコードの値が00:32:17.15 だとしたら、0 時間 32 分 17 秒 15 フレームということになる。

デジタルビデオの 1 秒は、NTSC フォーマットでは 30 フレーム、PAL フォーマットでは 25 フレームからなる。このため、タイムコードの計算は少々厄介なことになる。計算機があれば、例えば 00:02:00.17 の長さを持つクリップをフレームレート 30 フレーム毎秒(FPS)の NTSC ビデオに追加したときのムービー全体の長さを、すばやく知ることができる。

残念ながら、ほかの様々な物事に気をとられているうちに、このアイディアは立ち消えになってしまった。しかしどうやら、そのようなアイディアを持っていたのは私だけではなかったようだ。最新刊の "iMovie HD 6 & iDVD 6 for Mac OS X: Visual QuickStart Guide" を執筆していたとき(この本はつい最近発売された)、まさに私が求めていたことをしてくれるタイムコード計算機がいくつかあって、ダウンロードできるということが分かった。さらに、それ以上のことができるものもある。

<http://www.amazon.com/exec/obidos/ASIN/0321423275/tidbitselectro00/ref=nosim>

Hollywood Calculator -- Hollywood Calculator には2つのバージョンがある。独立型のアプリケーションと Dashboard ウィジェットとだ。どちらの場合でも、タイムコードの値を入力し、ポップアップメニューからフレームレートを選ぶ。フレームレートについては、NTSC と PAL に加え、29.97(実はこれが NTSC の本当のフレームレートで、iMovie などのアプリケーションが編集するときは値を切り上げている)と 24(これは長編映画のフレームレートだ)が選べる。次に、計算の対象となる2つ目の値を入力し、それを1つ目の値と加算するのか減算するのか選ぶ。

<http://www.happypixelstudios.com/>

独立型アプリケーションには、さらに2つの機能がある。Film タブをクリックすると、フィルムの種類(35mm とか 16mm とか)とフレームレートが選択できる。作業しているフィルムの長さをフィートで入力して Return を押すと、それが何フレームになるのか知ることができ、長さをタイムコードで表示することもできる。さらに、1,000 フィートのフィルムロールで何本分になるか、そしてその重さがどれぐらいになるかも教えてくれる。

最後に、Hollywood Calculator の Record Time タブでは、接続されているハードドライブにどれだけの長さのビデオを格納できるかを知ることができる。したがって、50 分のビデオを取り込む必要があるというときに、それが今使っているドライブに収まるかどうか、すぐに知ることができる。ビデオの種類は、コンシューマ向けの DV NTSC から、非圧縮 10 ビット 1920 × 1080 60i 高精細映像まで、幅広い種類から選ぶことができる。

Hollywood Calculator は Mac OS X 10.2 以降で使える無料のユーティリティーで、214K のダウンロードだ。Hollywood Calculator Widget は 27K のダウンロードで、Mac OS X 10.4 以降が必要だ。

Video Disk Space Calculator -- ビデオ映像でどれだけのディスクスペースが食われてしまうのかを知りたいだけならば、Rabid Jackalope の Video Disk Space Calculator に目を向けるとよいだろう。ポップアップメニューからビデオ形式を選択し、映像の長さを分単位で入力し、Calculate ボタンをクリックすればよい。結果はメガバイト単位またはギガバイト単位で表示することができる。このユーティリティーには、それぞれのフォーマットのデータレートをまとめた、印刷可能な便利な表も付属する。

<http://www.rabidjackalope.com/vdsc/>

Video Disk Space Calculator は無料で、Mac OS X 10.3 以降が必要だ。49Kのダウンロードだ。

Pomfort Frame Calculator -- もっと洗練された機能が必要で、数学的な表現を使って作業するのが苦にならないなら、Pomfort Frame Calculator がぴったりだ。これは、タイムコードの値について、加減乗除ができる。

<http://pomfort.com/>

さらに便利なことに、フレームレートを混合したり一致させたりする機能がある。例えば、2 分の NTSC 映像クリップと 4 分の PAL 映像クリップを組み合わせ、さらにその結果を5つのクリップに分割したいと思ったとしよう。そんなときは、以下のように書けばよい。

(00:02:00.00|30 + 00:04:00.00|25) / 5

計算の結果は常に2つ表示される。1つは合計時間を変えないもの(上記の例では、00:01:12.00、つまり 1 分 12 秒)で、もう1つは合計のフレーム数を変えないもの(最終結果が NTSC フォーマットなら 00:01:04.00、つまり 1分 4 秒、別のフォーマットもポップアップメニューから選択できる)だ。

計算結果を必要なおよそのディスクスペースに変換することもできるし、ファイルを別のコンピュータに転送するのに、ネットワーク接続によってどれだけの時間がかかるかを見積もることもできる。さらにもう1つの表示モードでは、結果がどれだけの長さのフィルムになるかも知ることができる。

Pomfort Frame Calculator は 20 ユーロで、Mac OS X 10.4 以降が必要だ。991K のダウンロードだ。それとは別に、Mac OS X 10.3.9 用のバージョンもある。


焼けた太腿のミステリー

文: Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

[再び場面は 1950 年代風のオフィスにフェード・インし、おどろおどろしいフィルム・ノワール風の音楽が高まると、二台の液晶画面の光が窓の外を眺めている男の背中を照らし出す。彼の声は低く、厳しい。]

人が私のところに来るのは、慰めを求めにではない。彼らの問題を解決して貰いに来るのだ。できるなら、ひっそりと。それが無理なら、大々的に。たいていは、私は彼らの依頼を引き受ける。でも時には、問題が私の手に余ることもある。ちょうど先週のことだったが、張り込みの仕事を終えてオフィスに戻ると、客が、それも一人ではなく二人も、待合室に座って私を待っていた。

熱い日だった。部屋のエアコンは 1987 年以来おシャカのままだ。二人の男はどちらも半ズボン姿で、足元に置いた鞄から判断するに、どちらも何か火器を隠し持っているようだ。一人は、足に包帯を巻いていた。どちらの男もイライラ感をみなぎらせており、二人が互いを見知っていないのは明らかだった。

私はドアに近い方の男を指差し、彼を私のオフィスへと招き入れた。たたき壊された跡も生々しい机の両側に彼と私が腰掛けた途端、息せき切って彼は自分の苦難の物語を始めた。彼の名前は Arlo Rose、プログラマーで、Konfabulator を書いている。私は彼の作品を知っていた。Konfabulator というのは Mac 上でウィジェットと呼ばれるちっぽけなプログラムをたくさん走らせるというもので、この種のプログラムを初めて開発したのが彼本人だった。私たち法律家と同様、なかなか良い商売だ。だが、その後 Apple がやって来て彼の縄張りを根こそぎ奪い取り、現ナマだけ受け取って立ち去れ、と告げた。彼は言われた通りにし、その後またもやもう一人の町の大ボスと出くわしてしまった。Yahoo だ。

<http://widgets.yahoo.com/>

でも、彼が来たのはそんなことのためではなくて、もっと個人的な問題のためだった。Konfabulator のコード開発の作業中、彼はふと眠り込んでしまったのだが、目が覚めた時、太腿に火傷をしているのに気が付いたという。ここで彼は屈み込んで彼の鞄の中から何かを取り出して私に見せようとした。だが私は運を天に任せるようなことはしない。彼が火器を手に持って顔を上げた時、彼は目前に私の火器が向けられているのを呆然として見つめることとなった。私がいつもこうした場合に備えて机の一番上の引き出しに入れている、Colt ピストルだ。しかし、彼が取り出そうとした「火器」は、武器ではなかった。確かに火のように熱いヤツだったが、それはただの MacBook Pro だったので、私は銃口を下げた。彼は、ピストルを向けられることは予期してはいなかったらしく、ちょっぴり震え上がっていた。

実は、問題はこの MacBook Pro が熱くなるということだった。それも物凄く熱く。あまりに熱いので、彼の両方の太腿は火傷を負い、彼の高価なコーヒーテーブルにも焼け跡が付いてしまった。彼はその理由を知りたがった。はたしてこれは Apple が意図的に仕掛けたことなのか、あの Konfabulator を巡るやり取りの際に交わされた感情的な言葉を根に持ってのことなのだろうか、というのだ。そういう可能性も考えられたし、私としてもすぐには答が分からなかったので、私は彼にその MacBook Pro をここに置いて、明日また来るようにと言った。

彼が出て行くと、私はもう一人の男を招き入れた。こちらの男の問題はいつも通りのやつだな、と私は思った。賭け屋か何かとの論争に決着を付けるのを手伝うとか、そういうことだろうと。彼は、Christian Heurich と名乗った。写真家だ。それも、私の人物チェックで見つけた何枚かの写真から判断するに、なかなかの腕前の写真家だ。

<http://www.heurich.com/>

けれども私のオフィスにやって来るたいていの写真家たちとは違って、彼の問題は女性関係とは何の縁もないものだった。彼も、MacBook Pro で作業中に居眠りしてしまったのだ。そう、彼が足元の鞄に手を伸ばして私に見せようとした時、今度は私は机の引き出しの中で引き金に指をかけておくだけに留めた。そして、Arlo の場合は軽度の火傷で済んだのとは違い、Christian の場合は 18 年前に患った脂肪肉腫の後遺症で左足に神経のダメージを受けていたため、熱に気付かないまま火傷が第二度にまで達してしまったということだ。

ここで私の好奇心に火がついた。同じ日に事件の依頼が二つあるなどそうそうあることではない。ましてや、全く同じ問題が二つ重なるなど、余程のことだ。私は Christian にも明日また来るようにと言い、座り直して考え込んだ。

ここ何年かの間、ラップトップ機はますます熱くなりつつある。これはメーカー各社が競って CPU により多くのパワーを詰め込もうとしてきた結果だ。友人の医者に電話して聞いてみたところ、ある 50 歳の科学者がほんの一時間ほど使っただけで、しかもきちんと服を着ていたのに(少なくとも彼はそう主張したそうだ)なぜか体の大事な部分に火傷を負ってしまったという悲惨な話を語ってくれた。私は考えただけで寒気がしたので、机の中から瓶を取り出してひと口ぐいと飲んだ。何事も用心に越したことはない。

<http://ergo.human.cornell.edu/hotlaptops.html>

Arlo の話の中に CPU 使用量がコントロール不能なまでに増えていたとかいうことが出てきたのを思い出した私は、ちょっと彼のマシンを調べてみることにした。実際、彼の MacBook Pro は、アイドル状態でさえもデュアル CPU の 50% から 60% ほども使用していた。これはなぜだろうか? 私は頭をひねった。暗くなりつつある夜空を窓から眺め、道路の向こう側の信号が点滅するのをぼうっと見ているうちに、ある考えが浮かんだ。Spotlight だ。こいつは理論的には良いテクノロジーなのかもしれないが、少なくとも私の経験では私が自分で見つけだすよりも速く Spotlight が何かを見つけだしてくれたことなど一度もない。たぶん、私がどこを探せばよいかを知っているからなのだろう。でも、Spotlight の動作のためにはこれがバックグランドでこっそり動いている必要がある。それが見つけたものをすべて読み込んでいるわけで、見たところ必要もないのに CPU を食い尽くしてしまいかねない。

残念ながら、Spotlight の動作足跡をアクティビティモニタでチェック(mds と mdimport のプロセスだ)してみたところ、これはほんの少しだとわかった。動作しているのは確かだが、今の問題の原因ではなかった。私は再び窓際に戻って、歩道を歩いている酔っぱらいたちを眺めた。私のオフィスは町で一番の場所に立地しているとは言えない。いや、どちらかと言えば町で悪い方に属する地域にある。でも、下層の連中の生活の場近く住んでいてこそ世の中の動きが分かるということもあるものだ。

私はちょっと外の空気を吸いに表に出た。別に新鮮な空気というわけでもなかったが。ことに、あの男のいた辺の空気はひどかった。World of Warcraft にハマってしまう前には、一時は天才少年とも呼ばれたこともある男だ。今では、人に金をせびって暮らしては、ちょっと金が貯まればそれで数時間あやしげなインターネット・カフェで過ごす、という奴だ。何か掘り出し物を見つけて、そいつを eBay のブラック・マーケットで売ればまた一旗挙げられるぞ、なんていつも言っている。私は彼に数ドル手渡し、町の知恵袋のご託宣は、と尋ねた。彼は私を見、また下を向き、ごく低い声で、Windows File Sharing と呟いた。

なるほど、気が付くべきだった。Windows File Sharing(Windows ファイル共有)とは、Mac をうまく Windows ベースのネットワークと共に動けるようにするために Apple が 作ったものだ。だから、その Apple の連中が Windows と共に働くコードを書かされるという仕事にいかに嫌々ながら取り組んでいたかということを考えてやらなければならない。ひょっとして悪意があったのかもしれないが、それよりも妥当な推測と思われるのは、彼らがとにかく最小限の努力しかしていなかったのだろうということだ。私はオフィスに戻り、Arlo の MacBook Pro で Windows File Sharing をオフにした。すると CPU 使用量がぐっと下がり、しばらく時間が経つと、はっきりと前よりは温度が下がったのが感じられた。それでも土曜の夜の Roxy に比べればまだまだホットだったろう。

その夜、私は情報を求めて歩き回った。いろいろなところで、MacBook Pro のオーナーたちが同様の問題を抱えている、という証言が確認できた。ただし、Arlo や Christian が経験したほどの火傷を負うまでに至った人は少なかったが。もっと詳しいことを聞かせてくれ、と頼むと、何人もの人が MacBook Pro を修理のために Apple に送り返した、と話してくれた。ほとんど変わらない状態で戻ってきたという人もいれば、少しだけ温度が下がったという人もいた。ただ、それでも不快なほど熱いということには変わりはなかったようだ。冷却用グリースが問題だったという場合もあれば、マザーボードが交換されてシリアル番号も変わってしまったということもあった。SMC ファームウェア・アップデートで状況が良くなったというユーザーもいた。

<http://discussions.apple.com/thread.jspa?threadID=491878>
<http://www.apple.com/support/downloads/macbookprosmcfirmwareupdate.html>(日本語)アップル - サポート - ダウンロード - MacBook Pro 17-inch SMC Firmware Update

このあたりで、私の嗅覚は何かうさんくさいことがあるのを感じ始めた。一般大衆は大騒ぎしているが、Apple は必死になって MacBook Pro やその他のノートブックコンピュータをラップトップ(膝の上)で使うという現実を消そうとしているようだ。Apple の Knowledgebase サイトの中で“laptop”という単語が使われているのはただ一ケ所、Windows のラップトップ機について触れている個所だけだ。Apple は、ラップトップ機は膝の上で安全に使えるものではないという「ふり」を見せようとしているのだろうか? 問題点の中には、まったく馬鹿馬鹿しい原因のものさえある。例えば、(Pro ではない)MacBook が、工場でプラスチック板が誤って排気孔を塞ぐ状態で置き忘れられたためにオーバーヒートした、という事例もあったそうだ。

<http://www.informationweek.com/news/showArticle.jhtml?articleID=187900365>
<http://docs.info.apple.com/article.html?artnum=30612>(日本語)アップル - サポート - TIL (Apple Notebooks: 動作温度)
<http://docs.info.apple.com/article.html?artnum=303848>

話はいろいろ飛び交っているが、ちゃんとやるべきことをしている人たちもいた。二つほど、CoreDuoTemp とか Temperature Monitor とかいうユーティリティで、MacBook Pro の内部温度を報告してくれるものがあることも教わった。また、Road Tools 社製の CoolPad を使って MacBook Pro を膝の上から離すのがよい、と勧めてくれた人たちもいた。

<http://macbricol.free.fr/coreduotemp/>
<http://www.bresink.com/osx/TemperatureMonitor.html>
<http://www.roadtools.com/>

次の日、私は少し温度が下がるようになった MacBook Pro を Arlo に返して、Arlo と Christian の二人ともに今後は MacBook Pro を膝の上には乗せずに使うようにと勧めた。彼ら二人に、私は調べたことをすべて話したが、彼らが本当に知りたがった問題には答を出すことができなかった。明らかに Apple は問題の所在については知っているし、問題解決のための努力を進めている最中だろうが、本当の真実は口を閉ざしたままだ。彼ら二人とも、Apple から情報をほじくり出すのに十分なまでの資金を払える余裕はなかった。第一、それを試みて消えて行った人たちもいたのだ。

最後に、私は彼ら二人に、私が知っているここの地方紙の新聞記者の名前を教えた。ひょっとしてこれが新聞記事になれば、Apple も何か反応するかもしれない。けれども一番考えられるのは、Apple が決して問題の所在を認めようとせず、その他の問題、例えばバッテリの爆発とか、ウィンドトンネルのような騒音を発する Power Mac とか、そういった派手なニュースの陰に隠れて、そのままいつの間にか忘れ去られてしまうのが落ちだろう。ビジネスの世界というのは時には醜いものだし、善良な人々が傷つくということも時には起こる。Arlo と Christian は傷ついたが、彼らの傷もいずれは癒されるのだ。

オレか?オレは大丈夫さ!世の中の汚いものを嫌と言うほど見てきているからさ!


Take Control ニュース/03-Jul-06

文: Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
訳: 亀岡孝仁 <takkameoka@bellsouth.net>

PopChar の購入で特別 30% 引きクーポン -- フォントのファンで Sharon Zardetto Aker の "Take Control of Fonts in Mac OS X" や "Take Control of Font Problems in Mac OS X" を買おうかなと思っている人達は、Ergonis Software の出たばかりの PopChar X 3.0 を新規購入 ($30) かアップグレード更新 ($15) すれば、次の Take Control 注文の時に 30% の値引きが受けられる。PopChar は長い歴史を持っているがそれでもまだ使ったことのない人に説明しておくと、これは特殊文字を手早く見つけ出し今開いているドキュメントに挿入するのを手助けしてくれる年齢を感じさせないユーティリティである。これだけでも昔から記号専用のフォントなどで仕事をしている時に大変有用であったが、今日の文字数の多い Unicode フォントの場合でも、例えばそれを Web ページの HTML エンティティとして使いたいと言うような場合には、とりわけ役に立つ。

<http://www.takecontrolbooks.com/fonts-macosx.html?14@@!pt=TRK-0036-TB836-TCNEWS>
<http://www.takecontrolbooks.com/font-problems-macosx.html?14@@!pt=TRK-0037-TB836-TCNEWS>
<http://www.ergonis.com/products/popcharx/>


TidBITS Talk/03-Jul-06 のホットな話題

文: TidBITS Staff <editors@tidbits.com>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

各話題の下の1つ目のリンクは従来型の TidBITS Talk インターフェイスを開く。2つ目のリンクは私たちの Web Crossing サーバ上で同じ討論に繋がる。画面上の見栄えが異なるほか、こちらの方が高速のはずだ。

データベース内のファイル -- データベースの内部にファイルを保管することの長所と短所は何だろうか。ことに、データベース駆動のファイルシステムについて言えばどうだろうか。(メッセージ数 5)

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=3034>
<http://emperor.tidbits.com/TidBITS/Talk/867/>

Amazon S3 を使う -- 最新バージョンの Interarchy に、Amazon のネットワークストレージサービス S3 のサポートが追加されたが、これと同種のユーティリティやサービスなどと比較して、どれが上手く働くかといった議論が盛り上がった。(メッセージ数 4)

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=3036>
<http://emperor.tidbits.com/TidBITS/Talk/869/>

Sparseimage を FileVault の代わりに -- 機密情報を保管するために暗号化されたディスクイメージを使うという Derek Miller の記事に対して、ある読者から自分の方法で経験した問題点の原因を突き止めるためにこの記事中の情報が役立ったという便りが届いた。(メッセージ数 1)

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=3037>
<http://emperor.tidbits.com/TidBITS/Talk/870/>


tb_badge_trans-jp2 _ Take Control Take Control 電子ブック日本語版好評発売中
Tiger でのファイル共有、TidBITS 翻訳チーム訳
Panther でのユーザとアカウント、TidBITS 翻訳チーム訳
Panther のカスタマイズ、TidBITS 翻訳チーム訳
Panther へのアップグレード、TidBITS 翻訳チーム訳

非営利、非商用の出版物およびウェブサイトは、フルクレジットを明記すれば記事を転載またはウェブページにリンクすることが できます。それ以外の場合はお問い合わせ下さい。記事が正確であることの保証はありませ ん。書名、製品名および会社名は、それぞれ該当する権利者の登録商標または権利です。TidBITS ISSN 1090-7017

Valid XHTML 1.0! , Let iCab smile , Another HTML-lint gateway 日本語版最終更新:2006年 7月 8日 土曜日, S. HOSOKAWA