TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#852/23-Oct-06

今週はまず Apple が 2006 会計年度第 4 四半期の好調な業績を発表したこと、それから一部の iPod が出荷時に Windows ウイルスを混入させていたと Apple が認めたことについて報告する。一方、ソフトウェアの世界では、Parallels Desktop が公式なアップデートを受け、アウトライナーの Acta が Opal として生まれ変わり、Skype 2.0 がリリースされ、また Matt Neuburg は情報断片キーバーの SlipBox をレビューする。Take Control のニュースとしては、“Real World Mac Maintenance and Backups”(二冊の電子ブックをもとにした本)と“Take Control of Thanksgiving Dinner”の印刷版のリリースをお伝えする。さらに、Glenn Fleishman は Spamhaus Project に対しての訴訟について検討し、Adam の発言を取り上げた New York Times の、その同じ記事の中に Madonna と Bill Clinton の名前も載っていた。これは本当の話だ!

記事:


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Apple 好調な Q4 2006 会計報告を発表

  文: Mark H. Anbinder <mha@tidbits.com>
  訳:亀岡孝仁 <takkameoka@bellsouth.net>

史上最高の 1.61 百万台の Mac の出荷が貢献して、Apple は 30-Sep-06 に終わる同社の 2006会計年度の第4四半期の決算を輝かしいものとした。Apple の発表によれば、同四半期の売上げは $4.84 billion で、純利益は $546 million であった。一年前の同じ四半期の売上げは $3.68 billion、純利益は $430 million であった。

この好調な数字の鍵となったのは同四半期中の 1,610,000 台の Macintosh コンピュータと 8,729,000 台の iPod の出荷であり、これらは前年同期比で Macintosh の販売は 30%、iPod の販売が 35% 伸びたと同社は言っている。プレスリリースの中で Apple CEO の Steve Jobs は次のように語っている、"この好調な四半期は Apple の異例の年の最後を飾るに相応しいものである。途方も無く複雑なアーキテクチャーの転換を進める中で 39 百万台以上の iPod と 5.3 百万台の Mac を販売出来たということは、我々全員が誇りに出来るものである。"

Apple はこの会計年度を $10 billion を超えるキャッシュをもって終了した。CFO の Peter Oppenheimer は、31-Dec-06 に終わる 2007会計年度の第1四半期の売上げ予想は $6 billion から $6.2 billion の間であろうと言っている。Apple の発表には、次のような警告も含まれている:現在 Apple のストックオプション慣行に関する調査が進行中であり (" Apple、オプションのバックデート操作について報告 " 09-Oct-06 を参照)、 "これまでの会計報告を修正申告しなければならない可能性があり" 従ってこれらの結果も大幅な修正の対象となる可能性もある。この修正額は、過去に遡っての数千万から数億ドルにも及ぶ利益の減額となる可能性が高いが、Apple の内部調査の結果として報告されている以上の不正が見つからない限りは、キャッシュ出費には殆ど影響が出ないと思われる。


Apple 社、Windowsウィルス混入iPodの出荷を認める

  文: Mark H. Anbinder <mha@tidbits.com>
  訳:田中大一郎 <dtanaka@cba.att.ne.jp>

Apple 社は、先月の新しい iPod 導入以降に出荷された“少数の”ビデオ機能付き iPodに RavMonE.exe というWindows ベースのウィルス感染があったとアナウンスした(18-Sep-06 付け” Apple、iPod シリーズをアップデート、映画を開始、iTVをプレビュー”(原文記事; "Apple Updates iPods, Introduces Movies, Previews iTV,")を参照ください)。このウィルスは iPod 自体や Mac OS で動いている計算機には影響を及ぼさないのだが、Boot Camp または Parallels Desktop を通して Windows が動いている Mac も可能性としては含めて、 iPod の接続された Windows で動いている計算機には影響を及ぼす。

Windows の計算機上で走る、適切にアップデートされたアンチウィルスソフトによりウィルスは検知され、取り除かれるが、Apple 社の感染 iPod に関する web ページ でもウィルスをスキャンし削除する無料ツールへのリンクを提供している。最近5週間の間に販売された第五世代のビデオ iPod の内、影響のあったものは1%未満であり、iPod nano や iPod shuffle ではこの問題による影響はない。

Apple 社では Windows のユーザーに最新のアンチウィルスソフトで iPod をスキャンし、もしウィルスが見つかり除去を行った場合には、iTunes 7 を使って オリジナルのソフトウェアに修復するよう、強く推奨している。Apple 社は 「皆さんご想像の通り、我々は Windows がこのようなウィルスに対して頑強でなかったことに動揺しているが、我々自身、この問題をとらえられなかった事にことさらの動揺をしている」として、自らの非を認める一方で、Microsoft 社に当てこすりを言わずにはいられなかった。


Skype、Mac OS X 用のバージョン 2.0 をリリース

  文: Glenn Fleishman <glenn@tidbits.com>
  訳:Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

今日、eBay のインターネット電話部門から Skype 2.0 for Mac OS X がリリースされた。この最新バージョンはこれまで数カ月にわたってテストされてきたが、Mac ユーザー同士、あるいはサポートされた他のプラットフォームのユーザーとの間で、ビデオ会議が可能になるというものだ。これが、バージョン 1.5 から 2.0 への今回のアップグレードに関して Skype が発表している唯一の新機能だ。Skype ソフトウェアは無料で、バージョン 2.0 は Universal Binary となり、23 MB のダウンロードだ。

Skype はコンピュータとコンピュータの間の無料の通話を提供する。つい最近利用できるようになった Skype ハンドセットは同種の通話、特に Skype コードレス電話で使え、これは Skype の走るコンピュータをリレーとして利用する。また Skype Wi-Fi 電話はあなたのアクセスできるオープンまたは単純なセキュリティを持つ Wi-Fi ネットワークならばどんなものとでも接続できる。Skype のコンピュータ側ソフトウェアとハンドセットは、これ以外にも通常の電話ネットワークとの間で双方向の有料通話も提供しており、2006 年の終わりまでは合衆国内およびカナダへの通話に限り無料通話を提供している。


TidBITS、(RED) の件で New York Times に引用される

  文: Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
  訳:Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

私は人道主義関係問題の専門家とは言えないだろうが、それでも 16-Oct-06 号の Mark Anbinder のニュース記事“新しい iPod nano が赤 (RED) に加わる ”の「スタッフ円卓会議」セクションの中で (RED) プロジェクトについて私の書いた論評が、どうやらジャーナリストの Michael Wines の目に留まったようだ。 New York Times 22-Oct-06 版の Week in Review セクションの中で、Michael は私の言葉を引用して次のように書いた:「週刊インターネットニュースレター TidBITS の中で、テクノロジー専門家の Adam Engst は『これを資本主義的行動主義と呼ぼうと、はたまた行動主義的資本主義と呼ぼうと、いずれにしてもこれはまったく新手の異種間大接近と言うべきだろう』と述べた」と。

Madonna の話で始まり前大統領の Bill Clinton の話に及ぶような記事の中で私の言葉が引用されるのは後にも先にもこれ限りなのだろうとは思うが、ともあれ私が何より嬉しいのは Week in Review セクションに載ったことだ。なぜならこれは、ニュース記事や意見記事の中で、最初にどっと人目に晒される時期を過ぎてからも後世に伝えるため書き残される、そういうものこそが最も重要なのだ、という私の哲学に合致しているからだ。だから、Michael、どうもありがとう!


Acta が Opal として再生

  文: Matt Neuburg <matt@tidbits.com>
  訳:Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Symmetry Software のアウトライナー Acta は、遡ること 1993 年の頃から私の大好きなアウトライナーだった。(14-Jun-93 号の記事“Inspiration 4.0: Outliners and Me”を参照。)ただし私はまだこれを公式にレビューしたことはない。今回、Acta のユーザーたちに嬉しい知らせがある。Acta のもともとの開発者である David Dunham が、これを一から Cocoa アプリケーションとして書き直し、その成果を Opalという名前でリリースしたのだ。Opal は、Acta 書類を開くことができ、そのインターフェイスも、見栄えの印象からその本質的なシンプルさと直観性まで、ちゃんと Acta を思い起こさせるものとなっている。(一方、Acta 自身も依然として Classic 環境で走るし、今後も無料で利用可能だ。)

Mac OS X で使えるいくつかの既存の他のアウトライナープログラムと違って、Opal は複数カラムとか、コメント(ノート)とか、クローン、スタイルシートなどは備えていない。Opal にできるのはアウトラインをすることだけだ! あなたはトピックを入力し、並べ替え、ナビゲートし、折り畳んだり展開したりし、いろいろの便利な方法で表示させて一覧する。表示方法の一つに「フィルター表示」があり、これは指定されたテキストを含むトピックのみを見えるようにする。個々のトピックはスタイル付きテキストであって、複数個の段落、グラフィックス、ディスク上のファイルへのクリック可能なリンクなども含むことができる。

だから、Opal は余分な飾りの機能を省いた、ストレートなアウトライナーが欲しい人に特に適している。以前に Acta ユーザーであった人や、これからアウトライナーを始めてみようかと思っているけれども OmniOutlinerTAO などは複雑すぎて圧倒されてしまうという人、あるいは熟練のアウトライナーユーザーだけれども最小の手間で仕事ができて準備の学習もほとんど不要なものが欲しい人に、ぴったりのプログラムだろう。

[利益相反に関する責任放棄声明: 私は、Opal の開発後期段階においてプログラミング以外の分野で有給のかかわりを持ったことがある。]

Opal は Mac OS X 10.4 Tiger を必要とし、価格は $32 だ。完全機能、30 日間有効のデモ版が 1.9 MB のダウンロードで入手可能だ。


Parallels、Desktop のアップデートを出荷

  文: Joe Kissell <joe@tidbits.com>
  訳:亀岡孝仁 <takkameoka@bellsouth.net>

Parallels は Parallels Desktop for Mac に対する大きなアップデートを出荷した。これは Intel ベースの Mac の所有者が Mac OS X の中で Windows や他のオペレーティングシステムを走らせることを可能にする仮想化プログラムである。Parallels は今や Mac Pro モデルや Core 2 Duo iMac でいかなる大きさの RAM でもサポートする;これまでは、これらのマシンで 2 GB 以上の RAM を持つユーザーは Parallels が使う RAM を人工的に制限しなければならなかった、しかもそれはコマンドラインへの旅を必要とするぎこちない方法であった。Parallels Desktop の新しいバージョンは、Windows Vista のベータとリリースキャンディデートの制限付きサポートを提供、Mac OS X 10.5 Leopard のデベロッパービルドでも動作、より広範囲な USB 機器をサポート、より良好な品質の音とビデオを提供、そして種々のバグ修正をしている。変更点リストにはこれらとその他の改良点が載せられている。

Parallels はこのリリースに関して触れる時、バージョン番号への参照を避けるという異例の立場を取っている;プレスリリースでも触れられていず、単に Official Update (非公式の、或いはベータ、アップデートというのとは対照的に) と呼んでいて、その Web サイトでもダウンロードページ上で現行のビルド番号を載せているだけである。興味ある方のために言及しておくと、このアプリケーションは現時点でバージョン 2.2、ビルド番号 1940 である。このアップデートは、以前のどのバージョンの所有者にも無料であり、Parallels Web サイトかこのプログラムの自動アップデート機能経由で入手できる。

訳注 Parallels Desktop for Mac 日本語版も近日発売されます。


国際スパムの家

  文: Glenn Fleishman <glenn@tidbits.com>
  訳:羽鳥公士郎 <hatori@ousaan.com>

Spamhausは評判高い悪者登録所だ。この英国の非営利団体は、協力団体とともに、世界中に送り出されているのほとんどを吐き出している IP アドレスを追跡している。また、ハニーポットなどの手法を使い、感染したコンピュータや感染を媒介している IP アドレスのリストを常に更新している。そんな Spamhaus が、ある訴訟に対して争うのを避けたため、米国地方裁判所裁判官が下した欠席判決によって、Illinois 州のある個人に 1200 万ドル近くを支払わなければならないこととなった。

Spamhaus は英国で活動している団体なのだから、Illinois 州の裁判所には、そもそも彼らを裁判に召喚する権力がないという彼らの主張は、正しいように思えるが、それにもかかわらず、この判決はしばらくのあいだ Spamhaus につきまとうことになるかもしれない。

この訴訟は、 e360 Insight を経営している David Linhardt によって起こされた。彼が言うには、Spamhaus は、彼のビジネス(彼が主張するところでは承諾済みメール配信)の性質を不正確に述べ立て、彼の収入に損害を与えた。Linhardt は、Spamhaus が Illinois 州裁判所の管轄地で活動していると主張し、そこに告訴した。Spamhaus は、同団体の Registry of Known Spam Operations (ROKSO) にある該当する項目に、Spamhaus が主張するところの、e360 のスパマーとの関連性とスパマーによって操作されている IP アドレスの使用について、 詳細な注釈を加えている。また、Linhardt から Spamhausが受け取ったカラフルな電子メールも添えられている。

Spamhaus は当初、この訴訟に対し、Illinois 州では活動していないため当該裁判所には管轄権がないことを証明しようとした。その後、Spamhaus の側から応答すれば管轄権を事実上認めたことになりかねないと考え、これを取り下げた。Spamhaus が出頭しなかったため、欠席判決により同団体に 1170 万ドルが科せられ、加えて Spamhaus は、e360 がスパマーではないと明確に公表し、同団体からの電子メールのブロックを停止するよう求められた。(Spamhaus はこの裁判についての文書を数々公開しているが、 明解かつ最新のウェブページ がある。)

この判決に引き続き、e360 は、同裁判官に 提案指令を提出した。これは、全世界のインターネットドメインを管轄している ICANN (Internet Corporation for Assigned Names and Numbers) に対し、英国の当該団体のドメイン名spamhaus.org の登録を取り消すよう命令することを求めるものだ。ICANN はすぐに応答して、仮に裁判所から命令されたとしても、ICANN は登録機関に対し登録を取り消すよう命令する権限はないと述べた。

この提案指令はインターネット全体に大騒ぎを引き起こした。米国の裁判所が、国際的に受け入れられている紛争解決プロセスから離れ、ICANN とドメイン名が享受している準治外法権をないがしろにし、ドメイン名を取り消すかもしれないというのだ。ICANN は米国連邦政府が運営する機関ではあるけれど、多くの国が暗黙のうちに、また明示的に、ICANN に権限を委譲している。そのほかの国は、権限に異議を唱えているか、今のところ不承不承権限を認めている。(インターネットオタクのバーがあるとして、そこでけんかを始めたければ、ICANN を誉めたたえるか罵るかすればよい。)

結局、 この裁判官は、先週になって、この命令はあまりに大雑把だとして、命令を発することを拒否、インターネット憲政の危機とでも言うべき事態を回避した。(ついでに言えば、当該の登録業者 Tucows は、カナダの会社だ!)

Spamhaus は現在、Chicago の法律事務所Jenner and Block が提供する無料奉仕の助けを借りて、この判決に控訴しようとしている。同法律事務所の顧客が Spamhaus の活動を支援しており、この顧客の説得によって自主的に無料サービスを申し出たということだが、その顧客の名前は伏せられている。Spamhaus 代表 Steve Linford の声明によると、この控訴は、管轄権の問題に焦点を絞るということだ。

Linford が語ったところでは、米国の法律ではスパマーが起訴されてはじめて民事罰が適用されるのに対し、英国の法律はより強く、積極的にスパムを禁止しており、また裁判費用は敗者が支払うシステムであるため、スパマーは、単に訴訟手続き上有利になるようにという理由で裁判地を選ぶことがあり、これは俗に「法廷あさり」と呼ばれる行為だという。

Spamhaus は、メールサーバを持つ人すべてに対し、同サービスが収集した情報を使って、受信したメッセージが迷惑メール(unsolicited commercial email: UCE、つまりスパムを遠回しに言ったもの)である確率を計算したり、単にメッセージをブロックしたりする手段を提供している。例えばSpamAssassinでは、簡単な方法で、Spamhaus や似たような監視データベースやブラックリストを、同ソフトウェアのランク付けシステムに組み込むことができる。

Spamhaus は、 Postiniなどのサービスと異なり、それ自体としては電子メールをブロックしない。TidBITS は digital.forest を通じて Postini を使っているが、これは、加入者のメールボックスにとってのスパムフィルタおよびウイルスフィルタとして機能する。つまり、詳しく言えば、America Onlineなどの ISP と同様、UCE とおぼしきものをふるいにかけて取り除く。

Spamhaus の働きについて、まだはっきりしないというなら、以下のように考えてみるとよい。私の電話には発信者番号通知サービスがついているとしよう。そして私は、いかがわしい人たちが使っていると思われる電話番号を印刷した大部の電話帳を、英国の団体から注文した。電話が鳴ると、私はその本を取りだし、すばやくその番号を探す。電話をとるかとらないかは私が決めることだが、もしその番号が電話帳に載っていたら、すぐにとるのをやめるだろう。電話をかけてくる業者の中には、電話を依頼した人にだけかけていると主張するところがあるかもしれない。その1つが、私に電話帳を販売した出版社を訴えようとすることもあるだろう。しかし、電話を受信した私は、私が誰かに電話を依頼したかどうか、いちばんよく知っているわけだ。

本件での控訴の行方は、どのような決定が下されようと、かなり広い範囲に影響を及ぼすかもしれない。高等裁判所が Spamhaus の訴えを認め、管轄権の問題に同意して下級裁判所に判決を無効にするよう求めるかもしれない。もしも誰かが、インターネットで情報を提供したとして、その活動を実際にしているなどの理由で一般的に管轄権が設定されるところだけでなく、世界中どこの管轄区からでも訴えられるかもしれないとしたら、非常に不便なことになる。(当事者間で契約を結ぶ場合、その契約では一般的に、どの法律とどこの管轄区で訴訟が起こされなければならないかが明記される。)

その反対に、高等裁判所が Spamhaus の弁護団に同意せず、控訴を却下し、判決が確定するかもしれない。そうなったとしても、e360 が賠償金を受け取るのは難しいということになるかもしれないし、裁判官としては、ドメイン名の取り消しを命じることで世界的な不協和を引き起こすことに関心がないことはすでに明らかになっている。ただし、それも変わるかもしれない。一方、そのような判決によって、Steve Linford が米国に入国したときに逮捕することをe360 が要求するかもしれず、彼は二度と米国を訪れることができなくなるかもしれない。

あるいはまた、高等裁判所が何らかの理由で本件を下級裁判所に差し戻すかもしれず、そのときには Spamhaus が、本件についてメタ事実ではなく事実をもって、自らを弁護することを選択するかもしれない。

私たちは、長いあいだスパムと闘っているものとして、管轄権についての控訴が好結果を生むよう応援している。スパマーと疑わしき人物は、法廷で自分の主張を述べる機会を否定されるべきではないが、適切な裁判所に訴えなければならないはずだ。


SlipBox: 臭跡と感受性と

  文: Matt Neuburg <matt@tidbits.com>
  訳:Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

その昔、私が博士論文を書いていた頃(そう、私たちは皆、地面に掘った穴の中に住んで、自分の舌で道路を舐めながら大学への道を通ったものだ)私は特大の箱に大判のインデックスカードを一杯に詰め込んで、その一枚一枚ごとに私が読んだ本一冊か記事一編かについての自分のメモを書き込んでいた。でもそれは単なるありふれたインデックスカードではなくて、超ハイテクのカードだった! カード同士の関連性の成す複合体の中をナビゲートするための助けとなるように、それぞれのカードにはぐるり一周の縁に沿って小さな穴がたくさんあいていた。それぞれのカードで、特別のパンチ用具を使って、私はその本あるいは記事に扱われているアイデア、つまり「キーワード」ごとに、それに対応する穴のところに切り込みを入れて、必要な(一つあるいは複数の)穴と縁との間を切り開くようにした。箱に入ったカードの中から特定のキーワードに対応するカードを「検索」したい時には、その穴に編み棒を突き刺してからそれでカード全部を持ち上げ、揺すってやればよい。編み棒から外れて机の上に(あるいは床の上に)落ちたカードが、そのキーワードに対応するものと分かるからだ。AND あるいは OR で検索したい場合には、落ちたカードだけを、あるいは編み棒に残ったカードだけを、それぞれ集めて操作を繰り返せばよい。これで、私は一躍 Cornell 大学 Olin 図書館.の人気者となった。いや、ひょっとしたら物笑いの種になっただけだったのかもしれないが。

おお、_もしも_ あの時 Markus Guhe の SlipBox さえあったなら、私はどんなに幸せだっただろうか。(それとパソコンも。あ、それに電源も。)

私が SlipBox のようなアプリケーションに魅せられるのは、きっと運命なのかもしれない。まず何よりも、これは情報断片キーパーだから、私はずっと以前からそういうものに興味を持っていて TidBITS でも何度となく記事を書いてきた(下記参照)。それに加えて、私自身の書くアプリケーションと同じように、これはもともと開発者が自分自身の必要のために自分の目的に合わせて作ったもので、それを後日他の人にも使ってもらおうと無料で配付するようにした、そんなシンプルなツールなのだ。

WebArranger は Web よりも使える復活: Helix の逆襲それはキーパー(Idea Keeper だ、それは)Boswell:テキスト保管庫断片情報キーパーをあと3つTinderbox でハートに火を点けてデジタル下駄箱: iData Pro X 1.0.5NoteTaker でテイク・ノオトHog Bay Notebook でグイッと行こうDEVONthink は考える、あなたのためによく使い込んだ NoteBookTAO は上げ相場散らかり放題を Curio で片付けるピカピカの NoteBookDEVONthink がプロになるYojimbo はあなたの情報を守る用心棒

SlipBox には目立った特徴が二つある。シンプルさと、いわゆる「臭跡」機能だ。まずシンプルさの方から説明しよう。SlipBox 書類というのは、ちょうどインデックスカードを詰め込んだ箱にあたる。(カードは「断片 (slip)」と呼ばれ、これが“SlipBox”という名の由来だ。)個々のカードに、あなたは何でも好きなものを入れておくことができる。スタイル付きテキスト用の大きなフィールドがあって、その中には画像を含めることも、さらにはファイルを(あるいはファイルへのリンクを)含めることもできる。また、それ以外にスタイル付きでないテキストを入れる三つのフィールドがあって、それぞれキーワード、ソース、タイプの情報が入れられる。カードを追加したり、カードを順々にナビゲートしたり、またはちょうどブラウザでするように最近見たカードを履歴順にナビゲートして「進む」「戻る」ということもできる。それから検索 (Search) タブもある。これを使ってキーワードフィールドを、ソースフィールドを、あるいはすべてのテキストを対象に検索することもできる。なかなか素敵なのは、検索で見つかったカードのテキストがその Search タブ内に直接表示されてプレビューできることだ。また、チェックボックスをクリックしてそのカードを「マーク」しておき、あとでそのカードを別途の読み出し専用ウィンドウで見ることもできる。そして、これでほぼすべてだ。ここまでのところでは、SlipBox はフラットファイル・フリーフォームのデータベース、デジタル下駄箱の iData 2 とよく似ているとも言える。(09-Aug-04 号の記事“iData Pro、Cocoaに対応”を参照。)

でも、そこで終わりではない。まだ「臭跡 (scent)」機能がある。この scent こそが SlipBox の最も特徴ある機能だ。その働きはこうだ。あなたがカードを作ってそこに何かを書き込んだ時、あなたはそれに何かキーワードを(一つか複数)指定することになる。このキーワードは、カードとカードの間である程度の一貫性を持つことが要求される。(例えば一つのカードで“Socrates”というキーワードを使ったならば、あなたは別のカードで“Sokrates”のような微妙に違ったスペリングのキーワードは使うべきでないだろう。)この点であなたの助けとなるように、既存のすべてのキーワードをアルファベット順に表示するドローワが用意されている。そこでキーワードの一つをダブルクリックすれば、それが現在のカードの持つキーワードのリストの中に加えられる。また、キーワードフィールドの中で単にタイプし始めると、それにマッチするキーワードの候補が自動補完で提示もされる。このようにしてキーワードを入れていく際、あなたはあくまでも自由な対応付けをすることが許されるのだが、しかし、SlipBox のオンラインヘルプが魅惑的にも言ってくれる通り「あなた自身がキーワードのオントロジー(本体構造)を作り上げようとしては」いけない。それをするのは SlipBox の仕事なのだから。

それで、_結局_、その「キーワードのオントロジー」とは、その臭跡 (scent) とは何なのか? それはとても簡単なことだ。臭跡 (scent) とは、同じカードにどんなキーワードが集まって対応しているのかを追跡して得られる道筋(枝分かれした道筋もあり得る)のことだ。そのような道筋たちの集まった総体が、ここで言う「オントロジー(本体構造)」だ。

例えば、一つのカードに“line”と“bug”というキーワードがあり、もう一つ別のカードに“formatting”と“bug”というキーワードがあったとしよう。すると、以下のような三つの scent が作られる:

bug
    formatting
    line

formatting
    bug
        line

line
    bug
        formatting

もちろんこれは馬鹿げたほど単純な例に過ぎないが、考え方は分かって頂けるだろう。この実例から推定を続けて頂きたい。(つまり、キーワード A からキーワード B に続く scent ができるのは、A と B が同じカードに登場するか、またはそれぞれが別々のカードでキーワード C と共存しているか、あるいは A と C があるカードに、B と D がまた別のカードにあって、そしてさらに別のカードで C と D がキーワード E と共存しているかといったような場合で、以下同様にいくらでも長く続く。)考え方としては、普通ならば気付かないほど互いにかけ離れたもの同士でも、scent を使えばそれらの間の対応関係を追跡して結び付けることができるということだ。これが「臭跡」だ。

これらの scent 自体が、アウトラインの形であなたの書類の Keyword Scent タブに表示される。つまり、このアウトラインのトップレベルというのはあなたのキーワードドローワに登場するものと全く同一で、すべてのキーワードのアルファベット順リストだ。けれどもこれはアウトラインだから、個々のキーワードの横にある三角をクリックすればそのキーワードに対応付けられたキーワードが(上記の例の図式のような形で)見えるようになる。一つのキーワードをダブルクリックすれば、Search タブが開いて自動的に検索が実行されるので、そのキーワードを含むカードすべてのリストがあなたの目前に表示されることになる。

このシステムが全体としてこれほどまでに私を惚れ惚れとした気持ちにさせてくれるのは、これが愚かなものだからこそだ。SlipBox は、決してデータマイニング(採掘)とか、言語学的分析とかを試みようとはしない。だから、例えば DEVONthink のように(08-Mar-04 号の記事“DEVONthink は考える、あなたのために”を参照)あなたの断片情報の内容を「賢明に」見抜こうとする、そんな複雑さに付き合わされることはない。実際、SlipBox は全然「賢明」ではない。これはただ単に、あなたが同じカードにいくつかのキーワードを書き込むことによってあなた自身が明示的に指定しておいた、カードとキーワードとの対応関係を、アウトラインの形で表示するという、ただそれだけのことしかしない。そしてこれこそが、私が博士論文を書いていた時に私が必要としたことのすべてだったろう。これは、私が編み棒とインデックスカードでしていたことのすべてをやってくれただろう。でも、これはそれに加えてもう一歩先までもやってくれたはずだ。つまり、検索ができることに加えて、私の博士論文に登場するいろいろのアイデアがどのように互いに結び付いているのかについて、きっとこれは何かを私に教えてくれたはずだと思う。

SlipBox にはあともういくつかのオマケの機能もある。まず BibDesk データベースの検索ができる。それから GraphViz を使ってあなたのキーワードの本体構造を図式化してくれる。また SlipBox 書類の Spotlight 検索もできる。(ただし、私の感じではこの Spotlight 検索機能は正しく実装されていないように思えるのだが。)サービスを使って、プレーンテキストまたは RTFD に書き出したり、インデックスカード同士の間にリンクを付けたり、他のアプリケーションの中で新しいインデックスカードを作ったりすることもできる。ただし、SlipBox には一つ奇妙な制限事項がある。カードを消去することができないのだ。たぶん、これはカードを作る際に順次昇順に番号が割り当てられているといったような理由からだと思う。それでもカードをゴミ箱 (Trash) に移すことはでき、そうするとそのカードは検索可能な対象から外されるのだが、さらに重要なのはゴミ箱にあるカードをいつでも普通のカードに戻して再利用できるということだ。そのフィールドをすべて空にしてから全く新しい内容に書き換えればよい。

SlipBox が今必要としているのは、もっと多くのユーザーと、ユーザーからの賢明なるフィードバックがもっと開発者のもとに寄せられることだ。だから、もしもあなたがシンプルな情報断片キーパーを探しているのなら、ぜひとも SlipBox を試してみて頂きたい。SlipBox は 1.3 MB のダウンロードで入手でき、Mac OS X 10.4 Tiger を必要とする。箱にインデックスカードを詰め込んで、特製のパンチ穴をあけて編み棒を駆使するよりも、ずっとよい結果が得られることは請け合いだ。そうそう、これが無料なことは、さっき言ったっけ?


Take Control ニュース/23-Oct-06

  文: Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
  訳:亀岡孝仁 <takkameoka@bellsouth.net>

合併版 "Real World Mac Maintenance and Backups" -- この夏我々が我々のフォント電子本を Peachpit Press からの "Real World Mac OS X Fonts" 印刷本として出すための仕事に多くの時間を充てている時、私がどう言ったか覚えていますか?我々の狙いはこれだけではなく、Joe Kissell の "Take Control of Maintaining Your Mac" と "Take Control of Mac OS X Backups" (これは今や Joe の初めての本である "Take Control of Upgrading to Panther" に続いて我々のベストセラーリストの第二位に位置している) も Peachpit の Real World シリーズの印刷本に変身させる事であった:"Real World Mac Maintenance and Backups" である。これは 240頁で、二つの電子本にあるテキスト全てを含んだまま統合して一冊の本になったものである。もしあなたが、Joe の賢者のアドバイスを印刷本として読んで見たいと思うなら、この本はあなたのお好みの本屋で入手できるが、もし Amazon からおよそ $20 で買って貰えれば、Joe は一冊につき更に数セントを手にする事ができる。

"Take Control of Fonts in Mac OS X" アップデート -- 我々は、Sharon Zardetto Aker の Mac OS X の新しい世界秩序の中でのフォントの扱いに対する究極のガイド本である "Take Control of Fonts in Mac OS X" のマイナーアップデートをリリースした。変更点の大部分は誤植の修正で、他には初版でたまたま変になってしまったスクリーンショット一枚を入れ替えている。この 1.0.1 アップデートはこの 255ページの電子本を買った人には無料である (この無料のアップデートにアクセスするには、あなたのコピーの最初のページにある Check for Updates ボタンをクリックする);新たに購入するには $20 かかる。しかしながら、もし Ergonis Software のフォントユーティリティ PopChar X を買えば 30% の割引 (しかもあなたのオーダー全体に対して) となる;詳細については PopChar X の注文のページを参照のこと。ところで、ひょっとして気になっているといけないので付け加えておくと、これらの問題は Sharon の二つのフォント本の内容を一冊の本にした "Real World Mac OS X Fonts" の校正をしている時に修正したのである。

"Take Control of Thanksgiving Dinner" 印刷本で! Joe Kissell の Thanksgiving ディナーをいかにストレスなしにお膳立てしそして調理するかに関する本は、我々にとっては全てが実験であり、我々としても色々な新しい事を試みている。料理中にキッチンには "Take Control of Thanksgiving Dinner" の印刷コピーが要るであろう ("Print Me" ファイルのプリントアウトに加えてである、これにはスケジュール、買い物リスト、そしてレシピが入っていて、やりながらメモを書き加えたりキッチンにテープで貼り出したり出来る) と思ったので、我々は通常の print-on-demand サービスでやってきたことを越えて、出来上がった印刷本としても出すことにした。値段は $19.99 (これは黒白版の値段でカラー版は $35.99) である。

勿論、既に電子本を購入してくれた先見のある人達全てに対して print-on-demand は今でも利用可能である。カバーにある Check for Updates ボタンをクリックするだけで print-on-demand の購入リンクへアクセスでき、そしてそこではあなたがこの電子本を所有している事を考慮して $10 引きの値段となっている。率直に言うと、まず電子本を買ってとりあえず欲望を満足させ、それから、もし紙で欲しければ print-on-demand 版を注文するという方が最も理にかなっていると我々は思う。そうすることで、本が到着してからでないと読み始められないという待ち時間もないし、もし翌年に我々が何らかの変更を加えたとしてもあなたは無料のアップデートが得られる。印刷版が到着するまでには最低でも 4 から 6日の業務日が必要であり、これは電子本を注文してダウンロードするのに必要な数分間とは大違いである。


TidBITS Talk/23-Oct-06 のホットな話題

  文: TidBITS Staff <editors@tidbits.com>
  訳:Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

FileMaker リスト -- FileMaker 情報で助けが欲しい時、どのメーリングリストを探せばよいだろうか? (2 メッセージ)

プロジェクト管理/時間管理/商品管理ソフトウェア -- あなたのために時間を管理してくれるソフトウェアを探しているのなら、まずはこれら 10 個のプログラムを試してみるのがよい。 (4 メッセージ)

Photomatix: バーチャル魔法の杖 -- Charles Maurer の最新の記事に、色飽和度や画像合成などについての質問が寄せられる。 (4メッセージ)

Eudora、Thunderbird ベースのオープンソースに -- Eudora の今後に関するニュースを聞いて、くるりと反対方向を向いて Apple Mail に乗り換えた読者がいる。(1 メッセージ)

Eudora の決め手の機能とは何か? -- Eudora は Thunderbird と結び付いてオープンソースのプロジェクトへと移行しようとしているが、Eudora が他の電子メールクライアントと一線を画す機能とははたして何だろうか?(9 メッセージ)

10.4.8 でサービスサブメニューがグレイに? -- Mac OS X 10.4.8 にアップグレードして以来、サービス メニューの項目がすべて使えなくなってしまったという読者がいる。 (2メッセージ)

Apple Mail と Exchange Server -- ある大学で、電子メールを Exchange Server に切り替えようとしている。ところが彼らは、これが Mail と互換でなくなると言う。そんなバカな! でも、彼らを説得して必要な IMAP 機能を使えるようにしてもらうにはどうすればいいのだろうか?(8 メッセージ)


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Valid XHTML 1.0! , Let iCab smile , Another HTML-lint gateway 日本語版最終更新:2006年 10月 27日 金曜日, S. HOSOKAWA