TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#860/18-Dec-06

2006 年最後の号となる今回には、2007 年最初の号までのお休みの間皆さんが退屈しないようにと、たくさんの情報を詰め込んでみた。Glenn Fleishman は、Adobe からとしてはちょっと珍しいタイプのリリースとなった公開ベータ版の Photoshop CS3 についてお伝えし、また多くの有名な Mac ソフトウェア開発者たちを巻き込んだ MacSanta プロモーションの内幕を覗き見る。Matt Neuburg は新バージョンの Color It!(このソフトウェアの存在そのものがその名前に感嘆符の付くことを必要とせしめているようだ)を検討する。一方 Angus Wong は、Parallels 社の Ben Rudolph をインタビューして同社の仮想化ソフトウェアについて詳しく聞く。また、Tomoharu Nishino が Sony PRS 電子ブックリーダーについて徹底したレビューを寄稿する。今週号ではまた、自称「カラーおたく」 Bruce Fraser の訃報をお伝えし、1 月の Macworld Expo で催される各種イベントを概観する。では、また来年お会いしましょう!

記事:


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TidBITS 2006 ホリデー休暇

  文: Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

今号が 2006 年の最終号となる。これから何週間かは、私たちも気分をゆったりさせて、家族や友人たちと共に再充電のホリデーシーズンを楽しみたいと思う。次号の TidBITS は 2007 年 1 月 8 日の発行となる。その週は、まさに私たちが San Francisco に集結して Macworld Expo の会場を歩き回り、この新しい年に Apple が何を企てているかと目を光らせる時となる。でも今は、Tonya と私を助けて TidBITS をこの一年間推し進め続けてくれたすべての人たちに、私の深い感謝の心を捧げる時としたい。Jeff, Glenn, Joe, Matt, Mark, それに Geoff、私たちのスポンサー各社、インターネットホストの digital.forest にいる Chuck Goolsbee と彼の同僚たち、記事を寄稿してくれた高潔なる著者の面々、すべての Take Control 著者たちと編集者たち、疲れを知らない各国語版の翻訳者たち、数限りない TidBITS Talk の参加者たち、そして何よりも毎週時間を割いて TidBITS を読んで下さるすべての読者の皆さん、皆さんの一人一人にホリデーの願いが実現しますように。また 2007 年にお会いしましょう!


追悼: Bruce Fraser, 1954-2006

  文: Jeff Carlson <jeffc@tidbits.com>
  訳: 羽鳥公士郎 <hatori@ousaan.com>

著述家にして Mac 専門家の Bruce Fraser が、肺癌との闘いの末、この土曜日に世を去ったという悲しい知らせが舞い込んだ。Bruce は、当該分野での世界最高の専門家だと正当に言うことのできる、数少ない人物の1人だった。彼の場合、その分野とは、カラーマネジメントだ。

出版や画像処理にそれほどかかわっていない人ならば、画面上の画像を紙に出力するのは簡単なことだと思うかもしれない。結局のところ、それこそコンピュータの仕事ではないか。しかし、色の正確な再現に必要な手順は、数も多く、複雑で、ほとんど神秘的と言ってよい。Bruce はそのすべてに通じていた。彼はこの話題について多くの本や記事を書き、中でも、"Real World Photoshop"、"Real World Camera Raw with Adobe Photoshop"、"Real World Color Management"、"Real World Image Sharpening" はそれぞれ版を重ねた。

私は 1996 年に、"Real World Photoshop 3" で短期間 Bruce と仕事をした。この本は、彼と David Blatner との共著だ。当時、私は、Mac 著述家にして出版の権威 Steve Roth が経営する小さな出版社 Open House Books に編集長として雇われたばかりだった。

私は出版の世界に手を染めたばかりだったから、Bruce と直接やりとりする機会は、結局それほど多くなかったが、当時のことで印象に残っている逸話が1つある。その本を作っているとき、張りつめた睡眠不足の期間だったが、午前4 時にコーヒーを作ろうとした Bruce は、Cyan とラベルのついた「注ぎ口」を前にして考え込んでいた。

Bruce は、このように、かすかで乾いたユーモアの持ち主だった。デジタル世界と現実世界の両方から、彼とともに、少しの色が失なわれた。


Macworld SF 2007 の催し物

  文: Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
  訳: 亀岡孝仁 <takkameoka@bellsouth.net>

くるみ割り人形の砂糖菓子妖精たちの夢と新年のお祝いから現実に戻った後すぐに、我々は San Francisco での毎年恒例の Macworld Expo と Steve Jobs の Keynote of Apple Goodies へと出かける。今回は最近では Macworld Expo としては久方ぶりの Moscone Center の South と North Hall の両方を使った開催となり、私が数えただけでも 360 を越える業者が出展申し込みをしている。 もっともこのうちの多くは iPod のケースやアクセサリを売る人たちであろう事は疑いの余地は無いが、いずれにしても Macworld Expo が両方のホールを使うまでに大きくなった事を見るのは大変うれしいことである。

Expo の出し物 -- Steve Jobs のキーノートの他にも 特別企画が予定されていて、Q&A with Kevin Smith (あの誉れの "Clerks" の)、Macworld Live! with David Pogue、Macworld Magazine's Best of Show 2007 アワード贈呈式、ますます面白さを増す MacBrainiac Challenge ゲームショー、それに写真家 Joel Meyerowitz による講演がある。

この他にも歓迎すべき番外企画が多くあり、Apple Consultants Network による無料相談、ブロッガーが足を休め一息つける新しい Microsoft Blogger Lounge (South Hall のブース #702)、 the Taste of the Conference セッション 、そして勿論のことではある User Group Booth での巨大なユーザーグループの存在、User Group Lounge、そしてユーザーグループボランティアによる案内ツアーがある。

Conference セッション も Macworld Expo の一部として更に充実してきていて 5つのトラックのトレーニングも含まれて、終日の Power Tools Conference セッション (加えて Lesa Snider King の中身の充実した 2日間の Graphic Secrets for Business コース)、MacIT Conference、Users Conference、Hands-on MacLabs、そして Market Symposiums 等がある。これらのセッションの参加費はかなり高いので選択には十分注意を払って欲しい。

1月11日の木曜日には、the Netter's Dinner がその 21周年を祝って Sansome と Broadway の角にある Hunan で伝統的なスタイルで行われる。内容は辛くてスパイシーな中華料理で (ベジタリアン用の料理もある) $18 である。事前の予約が必要で 1月9日の火曜日までに Kagi 経由で登録しなければならない;下記のリンクに必要な詳細は全部載っている。参加者は例年の様に、6:00 PM に Moscone の南側エスカレータの上に集合しましょう。San Francisco ダウンタウン中の交通を麻痺させてしまう行進となるが、天気はキュッと身の引き締まることになるか、或いはジトッとしたことになるかは分からないが、それに対する心構えは忘れないように。いずれにしても、遅くとも 6:30 PM にはレストランに向けて出発します。

それに勿論のことではあろうが、他にも色々なパーティがあることは間違いないと思うが、全てがスケジュールされるには未だ早いので、時期が近づいてきたら Ilene Hoffman の Hess Events List でアップデート情報を得て欲しい。

TidBITS イベント -- いつもの様に、我々も数多くの人がこのショーに行くことになっていて、歌ったり、踊ったり、そして... いや、とんでもない、歌ったり踊ったりではなく、役に立つことは何であれ伝えようと必死になっているであろう。我々の現時点でのスケジュールは以下のようである、どうか気軽に立ち寄って声をかけて欲しい!


Adobe が Photoshop CS3 のユニバーサルバイナリ版ベータをリリース

  文: Glenn Fleishman <glenn@tidbits.com>
  訳: 笠原正純<panhead@draconia.jp>

Adobe Systems は同社としては珍しいパブリックベータをリリースした。これは、 先週発表されたもので、驚くべきことに同社の旗艦イメージ編集プログラムである Photoshop CS3 を誰にでも使えるようにするというものだった。この ダウンロードは、Adobe が出しているコアグラフィックアプリケーションの中で最初に一般にお目見えする、Intel ベースの Mac をネイティブでサポートするユニバーサルバイナリだ。Windows 版ベータも同様に用意されている。フルの Creative Suite 3 (CS3) は 2007 年の第二四半期に Mac と Windows 版の両方が出荷され、すべてのアプリケーションに Mac OS X 下でのユニバーサルバイナリが用意されると期待されている。

ダウンロードは無料であるが Adobe ID が必要だ。多分皆さん一つはお持ちと思うが(私がいつもそうであるように、忘れてしまっているかもしれない)。ベータはダウンロード後 2 日間しか使えない。しかし、特定の URL にアクセスし、所持している Photoshop CS2、Creative Suite 2、Production Studio、 Adobe Web Bundle、または Adobe Video Bundle のシリアルナンバーを示してテスト用シリアルナンバーを取得することでテストを継続することができる。Adobe は、パブリックベータは英語版しか提供しないが、所持しているプログラムは他のいかなる言語のものでも構わないとしている。

Mac 版のダウンロードは 685 MB で Windows 版のダウンロードは 337 MB だ。システム要件は、Mac では PowerPC の G4 か G5 プロセッサ、または Intel プロセッサ上で走る Mac OS X 10.4.8 で、PC ユーザは Windows XP SP2 か Vista が必要になる。

Photoshop は計算に大きく依存するプログラムだ。このため、Photoshop CS2 が Intel Mac の Rosetta 変換モードを使ってそれなりのペースで動作してはいたもの、プロフェッショナルユーザたちはすべての Mac Pro で Power Mac G5 より大幅に高速化するネイティブ版が欲しいと熱烈に待ち望んでいた。もちろん、それには新しいプラットフォームに対する最適化が必要となる。そして、それは(パブリックかプライベートかを問わず)ベータというものの一面だ。多くの場合、ベータテストの間はまだコードの最適化作業の途中なので、いくつかの機能については大きな速度の向上が見られるかもしれないが、プログラムのいくつかの場所では、クラッシュや普通でない速度低下などでユーザを欲求不満に陥れたりすることもある。

このパブリックベータのリリースは、未来を占うのが好きな私たちのような人間にとって、いくつか異なった意味を持っている。

第一に、Photoshop チームが多分 Creative Suite 開発サイクルの中で他の製品チームより先んじているということだ。3 年前、Adobe は同社のコアプログラム群(InDesign、Illustrator、Acrobat、GoLive)を結びつけた。このため、メジャーアップデートの間隔は伸びたが、よりよいバンドル価格や予測可能な1つの予算項目が提供された。

しかし、Creative Suite は、全ての開発チームが同じ紐で結ばれたことも意味していた。このことは GoLive にとって特に悲惨なことだった。このプログラムについて私は本を書き、数年にわたって大変親密に感じていたのだ。だから、Macworld で私はそのクラッシュや欠陥や機能不足のため、CS2 に 2 匹のネズミをつけた。他のレビューワーたちは CS2 スイート中のそれ以外のメジャーなプログラムについて 4 から 4.5 匹のネズミをつけていたのだが。GoLive CS2 の問題点の多くを改修するメンテナンスアップデートが出るまでには 6 ヶ月がかかった。(GoLive は CS3 に引き継がれないことが決まった。このソフト特有の個性 - おそらくそれはエントリーレベルのウェブデザインプログラムというものだろう - を際立たせるために CS3 からはずれた。その後には Dreamweaver が収まるだろう。 2006-09-18 の " Adobe、GoLive を Creative Suite から追い出し、Acrobat 8 をりリース " を参照。)

今回、パブリックベータプログラムは Photoshop がスケジュールを守っているサインにはなるだろう。

第二に、このパブリックベータは、シリアスなユーザや企業購買担当者に CS3 が予定通りに進んでいるということだけでなく、購入する価値があると期待していいと思えるようにするための市場への合図でもある。これは、デザイナーやプロのアーティスト、或いは皆さんのような個人が控えていたかもしれない Intel ベース Mac の購入に対してゴーサインが送られたということを意味している。Abobe グラフィックツールを第一に考えているような人々に対してドアを開くことは 2007 年前半の Apple の売り上げを爆発させるだろう。

第三には、ベータのリリースがPhotoshop CS3 が "vaporware(発表されたものの実際にリリースされないソフトウェア)"であるという印象を払拭するということだ。Adobe はその初期のCSやそれに続くCS2リリースの時には良い仕事をし、出荷すると予想された日と遠からぬ日に出荷した。Photoshop CS3 のパブリックベータの開発によって、彼らは彼らの顧客と証券市場に対して、特定の日を指定することはできないが良い事が待っていると告げたのだ。

Photoshop 愛好家であり自分のために Intel ベースの Mac 購入していない人として、私はそこに組み込まれた新機能がどんなものか見るのは魅力的だ。初期のレポートによれば、このバージョンでは新しいインターフェースのアプローチが取り入れられるとともに、非破壊編集(Apple が最近力を入れている Apaerture での重要機能)における柔軟性が大幅に増したという。


MacSanta: しかめっ面はやめよう

  文: Glenn Fleishman <glenn@tidbits.com>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

サンタさんへのお願いリストをテキストエディタで書いている人、トナカイさんの足音をとらえようと精巧なサウンド録音システムを組み上げている人、保存用の肉の缶詰だろうとコンピュータに届くものだろうと「スパ*」なんてものは嫌だと思っている人、そういう皆さんが最後の最後にプレゼントリストに何かを加える際には、MacSanta プロモーション が一見の価値ありだ。

数多くの有名どころの Macintosh 開発者の人たちが一致団結して、彼らのソフトウェアをそれぞれのウェブサイトで直接購入する際にあなたがクーポンコード MACSANTA を使えばその製品が 20% 引きになるという割引を提供している。[訳者注: 当然ながら、この割引はクリスマスまでの期間限定です。終了日は会社によって異なりますが、12 月の 25 日か 26 日には終わるようです。]

参加している会社の主だったところを挙げれば、 Bare Bones, C-Command, Flying Meat, Potion Factory, Red Sweater それに Rogue Amoeba といったところだ。このプロモーションが今日発表された途端、参加会社数は三倍まで跳ね上がった。

明らかに、この MacSanta は MacHeist ゲームが過去数週間にわたって実施してきたプロモーションをきっかけに出てきたものだ。MacHeist を開発してきた人たちが、そのパズルで一杯のミステリーと、標準小売価格の合計が $350 ほどにもなるソフトウェアのバンドルを $49 で販売するという企画を結び付けた。ゲームの一部を解けば、さらに割引が得られる。バンドルに含まれるものの中で最も有名なのは Delicious Library や DEVONthink Personal といったところだろう。ただし、この $49 のバンドルを購入した人にはそれぞれの製品のアップグレード権は付いてこない。

MacHeist によればこの企画による総売り上げの 25% をチャリティーに寄付するということで、数週にわたったこのイベントの結果その金額が $190,000 に達したという。彼らがウェブサイトに書いた文章によれば、プロモーターたちが販売したバンドルの総数は 17,000 近くとなっていて、彼らはチャリティーへの寄付額を切り上げて $200,000 としたという。

この MacHeist バンドルには、製品の開発者たちが製品の売り上げパーセンテージでなく定額の報酬しか受け取れなかったということで一部から批判が浴びせられた。Flying Meat の Gus Mueller のブログには、彼が書いた反対意見 をきっかけとして MacHeist の運営者たちや他の開発者たちのものも含む興味深いコメントの応酬が綴られている。Daring Fireball の John Gruber も、彼がなぜ MacHeist が開発者たちにとってあまり良い取引ではなかったと感じたかを書いている。彼の意見では、開発者たちは(MacHeist が提供したと報道された金額を信じるならば)もっと高いお金を要求して粘るか、あるいは手を引くか、どちらかにすべきだったという。

けれども、この MacHeist プロモーションに参加した開発者たちは参加が自発的なものだったと言っているし、同様の意見を言う他の人たちもいる。例えば Delicious Monster 代表者の Wil Shipley は、 このプロモーションが彼らのソフトウェアに新しいユーザーを呼び込むために非常に役立ったと述べている。同社は、Macworld Expo で Delicious Library のバージョン 2 を展示する予定だ。そのリリースは 2007 年に入ってから Mac OS X 10.5 Leopard のリリースに合わせて行なわれるという。そういう事情で、今回のプロモーションは彼らにとってかなり好都合なタイミングだったわけだ。


Color It! ともかくもカーボン化

  文: Matt Neuburg <matt@tidbits.com>
  訳: 羽鳥公士郎 <hatori@ousaan.com>

ペイントおよび画像処理プログラム Color It! には、もう 10 年以上、カルト的信奉者とでも言うべき人たちがついている。(感嘆符は正式名称の一部だが、以下では省略する。)このプログラムは、常に財政上の困難を抱えていた。私たちが最初に TidBITS でこの製品について書いたとき(1993-10-25 の"Get Some Color")、価格は 150 ドルだったが、売れなかったので、開発元の MicroFrontier は一時的に無料で配布した。その後、価格はもう少し妥当なところまで下がったが、それでも、このプログラムは水面下に沈んだままついに浮上する気配を見せず、最新の正式版であったバージョン 4.0 は、2000年にはすでに古びていた。それにもかかわらず、Color It は、数こそ少ないが猛烈に熱狂的なユーザの熱い支持を得ており、私たちが画像エディタについての投票をしたときには(2000-02-07 の " アンケート結果: 十人十色 ")、この製品を選択肢に含めなかったことを叱責する声が寄せられた。

Mac OS X ネイティブ版の噂は何度も立っていたが、それは霞のごときベーパーウェアに過ぎないと多くの人が思っていた。しかしその霞が、ついに凝固し、新しいバージョンである 4.5 が、型破りな企業 Digimage Arts. からリリースされた。

ペイント西部劇 -- ペイントプログラムとして見ると、Color It には必要な機能がすべて備わっており、革新的なインターフェースと柔軟かつ強力な機能は特筆に価する。たとえば、ブラシのサイズを設定するときはポップアップ画面に楕円形が現れ、マウスを動かすだけで設定できる。選択範囲をベジエ曲線で描くこともできる。選択範囲をマスクに変換し、独立した書類として表示することもできる。"zap" ツールを使うと、選択範囲からそれぞれの部分を取り除くことができる。スポイトツールで一つの色から別の色にドラッグするとグラデーションが作成できる。エアブラシツールやクローンツール、ぼかしたりシャープにしたり暗くしたりするツールなどもあり、描画モードもたくさんある。感圧タブレットにも対応している。多くの組み合わせ機能(Unsharp Mask など)も付属し、自分で作ることもできる。

一方、Color It は Photoshop Elements のような画像処理ツールも目指しているのだが、その分野のただ中で競争してゆけるかというと、少々心もとない。確かに、ふだん行うようなほとんどの操作について、Color It のほうがPhotoshop よりも簡単にできるのだが、Color It に欠けている機能も多い。レイヤーもないし、RAW ファイルも開けず、私が試した Photoshop プラグインはどれも正しく動かなかった。Color It に機能があっても、程度が不十分だったり、あまりに大雑把だったりすることがしばしばだ。たとえば、選択範囲の境界をぼかせるのは 64 ピクセルまでだし(私はかすかなビネット効果を使うことがあるので、最低でも 200 ピクセルは必要だ)、JPEG 書き出しでは画質をスライダで設定できず4段階から選ばなければならない。さらに、Color It はそのスピードが宣伝されることが多いけれど、私が試したところでは、プロセッサに高度に最適化された Photoshop Elements に比べれば、Color It はまるでナメクジだ。グラデーションを作るというような単純な操作でも、あまりに長いあいだカーソルが回転し続けるので、強制終了せざるをえなかった。そういうわけで、私の懸命の努力にもかかわらず、最近撮影したデジタル写真を処理するということについては、私のワークフローの中にColor It の占めるべき位置を見出すことができなかった。

このプログラムはカーボン化されたが、かろうじて、と言ったほうがよい。保存されていない書類でも、タイトルバーのクローズボタンの中に点が表示されない。また、このアプリケーションは自己書き換え的だ。つまり、環境設定はユーザの Preferences フォルダではなくアプリケーションバンドルの中に保存され、プラグインをインストールしようと思ったら、Application Supportフォルダではなくアプリケーションバンドルの中に入れなければならない。マルチユーザとパーミッションの世界では、こんなことは決して容認できない。Digimage Arts の人たちはカーボン化の作業にあまりに深く没頭していて、Mac OS X とはそもそも _何であるか_ ということを学習する時間がなかったかのようだ。

マニュアルも既存の 4.0 版をぞんざいに書き直したもので、間違いだらけだ(誤字もあるし、重複するページもある)。このプログラムにバグを見つけるのは簡単だった。チュートリアルにしたがっていると、Color It のメインウインドウが点滅し始めて手に負えなくなったし、正常に終了した後でも、Color It は私のモニタのコントラスト設定を変更してしまっていた。

結論 -- 長いあいだ待ったが、それももう終わりだ。Color It はカーボン化された。従来からのユーザは安堵のため息をつくことができる。Color Itは生きていて、Intel ベース Mac に乗り換えた人(したがって Classic が使えなくなった人)も使い続けることができる。Mac OS X ネイティブのペイントプログラムのレパートリに Color It が加わったということは、歓迎すべきだ。競争力を高めるには、もっと Mac OS X の慣習にしたがわなければならないが、これだけ大変な仕事を成し遂げたのだから、それは些細なことだろう。Color It が、大物がひしめく今日の画像処理世界についてゆけるかどうかは、また別の問題だが、それは不可能ではないだろう。とりわけ、Mac OS Xにあらかじめ組み込まれている優れた画像処理能力を開発者が活用することもできるのだから。今後に注目だ。

Color It 4.5 には Mac OS X 10.1 以降が必要だ。価格は 60 ドルだ(以前のバージョンからアップグレードするなら少し安くなる)。Intel 版はない(Rosetta を使って問題なく動く)。現在のところ、デモ版は提供されていない。


InterviewBITS: Parallels でパラレルワールドへ

  文: Angus Wong <atkw@anguswong.net>
  訳: 羽鳥公士郎 <hatori@ousaan.com>

Macintosh の PowerPC から Intel プロセッサへの移行は、ここ 10 年のコンピュータ界におけるもっとも画期的な事件の1つだと言っていいだろう。Apple のこの移行によって、消費電力あたりの速度が向上したというのはさておき、歴史的に、単に異なるというのではなく、決定的に対立していた2つの世界が、本質的に結びつけられた。生半可な解決法は以前からあったにせよ、Apple が同社のオペレーティングシステムを Intel プロセッサで動かしたことによって、支配的な Windows ベースの PC 界と Mac 界とが、はじめて融合された。Escher 風の言い方をするなら、PC が Mac に包含されるにつれ、Macが PC になった。

しかし、ハードウェアだけでは、つぎはぎアーキテクチャが可能になったに過ぎない。最終的な融合にはソフトウェアが必要だ。当初はハッカー・コミュニティーが、ついで Apple が、Mac をもう1つのオペレーティングシステムで起動することに成功したが、Windows と Mac OS とを同時に走らせるという聖杯には手が届かなかった。Parallels Desktop が登場するまでは。

Parallels Desktop を使えば、ガソリンと電気の両方で動くハイブリッドエンジンのようなシームレスなユーザ体験が、最新の Mac で可能となる。そこでは、オペレーティングシステムは、言ってみれば無意味な、少なくとも不可視なものとなる。おそらくはそうあるべきなのだ。コンピュータが使われるようになってはじめて、ただ Macintosh を購入するだけで、実質的に世界中のほとんどすべてのプログラムを使うことができるようになった。

私は、Parallels のマーケティング責任者 Ben Rudolph にインタビューをし、同社の傑出した製品について詳しく話を聞いた。

[Angus Wong] Parallels Desktop を開発する上で、技術的な問題はありましたか。

[Ben Rudolph] ソフトウェア製品の開発に伴う通常の問題を除けば、何かに直面したということはありませんでした。私たちにはすでに完成された仮想化エンジンがありましたし、その技術が x86 チップセットで使えることは実証済みでしたから、コードを Mac に移植するのはほんの数か月で済みました。Apple が最初の Intel ベース Mac をリリースしたのは 2006 年 1 月でしたが、私たちは早くも 4 月にベータ版を動かしていました。

いつも言っていることですが、開発やベータ・テストの過程でサポートしてくださった Mac コミュニティーの皆さんには、大きな声で「ありがとう」と言わなければなりません。皆さんが支えてくださらなければ、ここまで来ることはできませんでした。

[AW] Microsoft が Virtual PC の開発を中止したことをうけて、あなたがたは Macintosh の仮想化市場に深くかかわるようになったわけですが、振り返ってみて、そもそもあの製品と競争しようと考えたきっかけは何だったのでしょうか。

[BR] Virtual PC は、当時としては驚くべきソフトウェアでしたが、非常に遅かったので、多くのユーザが不満を感じていました。私たちは、Mac に本当の仮想化を持ち込むことによって、また新しい Mac のすべてに搭載されているIntel Virtualization Technology を完全にサポートすることによって、Macユーザが Windows と Mac OS X とを両方同時に最大速度で動かすということがついに実現できるのではないかと考えました。これは多くの Mac ユーザにとって重要なことです。つまり、Windows 界と Mac 界とを隔てる壁を乗り越え、業界標準の Windows 専用アプリケーション、たとえば Internet Explorer や Microsoft Project、Microsoft Outlook を、Mac のデスクトップから1秒たりとも離れることなく使えるようになるのです。Parallels Desktop によって、「Windows 人間」とか「Mac 人間」といったレッテルは事実上不要になります。その両方になれるのですから。

[AW] Microsoft が仮想環境で Vista を動かす際のライセンスに新たな制限を設けたことについては、どうお考えですか。

[BR] Microsoft は、仮想マシンにインストールできるのは Vista Businessと Vista Ultimate だけだと表明しました。つまり、Parallels Desktop ユーザは、Mac で Vista を動かそうと思うなら、これらハイエンド版のどちらかを購入する必要があります。もちろん、Microsoft には、ライセンスを自社が思うとおりにする権利がありますが、仮想化には、Windows ユーザだけでなく Linux ユーザや Mac ユーザの、大きな市場があるということを、同社が認識するよう願っています。必要不可欠な少数の Windows アプリケーションを動かすために、すべてのユーザが最高級版の Vista を購入したいと思うわけではないですし、またその必要もないのですから。

[AW] Boot Camp は Parallels Desktop と競合すると思いますか、あるいは補完すると思いますか。

[BR] 現在のところは、補完していると思います。Boot Camp には、私たちの製品にないものがあります。3D グラフィックのハードウェア・アクセラレーションや USB 2.0 のサポートなどです。しかし、私たちもそれらの問題に取り組んでおり、まもなく実現できる見込みです。つまり、もうしばらくすると、そのような Windows の重要な機能を、再起動せずに使えるようになるでしょう。Parallels Desktop によって、それらの機能を、Mac OS X とWindows とで同時に使えるようになるでしょう。

[AW] Parallels Desktop の生産性を向上するには、どのような方法がありますか。

[BR] まずは Parallels Tools をインストールすることです。すると、オペレーティングシステムをまたいだカット・コピー・ペーストや、ファイルやフォルダの共有、Windows と Mac OS X 間での滑らかなマウス移動などが実現できます。そのほかには、Virtue Desktops をダウンロードすることをすすめます。これはサードパーティーのフリーウェアで、同時に複数のデスクトップを使えるようにします。そうすると、Windows と Mac OS X とをそれぞれフルスクリーンで動かして、両者を切り替えて使えます。Windows をよく使うユーザにとっては、持っていれば便利なツールです。

[AW] Windows のほかに、どんなオペレーティングシステムを走らせることが考えられますか。

[BR] もちろん、Windows XP を走らせる人がもっとも多いのでしょうが、多くの人が Vista も仮想環境でテストし始めています。そうすれば、Vista をあちこちたたいても、本物のマシンをだめにする危険がなくなります。また、Linux ユーザの注目も集まっています。彼らは、Mac OS X の優れたユーザビリティを体験したいと思う一方、お気に入りの Linux ディストリビューションの拡張性と力強さも失いたくないのです。

[AW] あなたがたは全面的に仮想化に集中するつもりですか、それとも別の分野も開拓するつもりですか。

[BR] 私たちのコア・コンピテンシーは仮想化にあります。今後何か月かは、サーバ仮想化空間を拡大し、仮想化管理ツールをさらにリリースする予定です。今年はじめにリリースした Parallels Compressor もその1つです。そのようなツールによって、一般ユーザも企業ユーザも、仮想IT環境を最大限に活用できるようになるでしょう。

[AW] Parallels Desktop の将来のバージョンには、どんな機能を期待してよいでしょうか。

[BR] 最新のベータ版には多くの新機能が盛り込まれているので、それでご想像いただくのがよいでしょう。たとえば、Boot Camp で使われているパーティションを Parallels Desktop で指定する機能、本物の PC のハードディスクを仮想マシンに変える Parallel Transporter ツール、Windows を表示せずにWindows アプリケーションを動かす "Coherence" という新しい表示モードなどです。このモードでは、ちょうど初期の Mac OS X で、Classic アプリケーションが Classic 環境で動いていながら独立したウインドウに表示されたように、Windows アプリケーションが Mac OS X のデスクトップの上に表示されるので、あたかもネイティブに動いているように見えます。

Parallels について詳しく知る機会を与えてくれて、ありがとう。

[編集者注: Parallels Desktop を試してみたいと思ったら、誰でも無料で 15日間試用できる。また、"Take Control of Running Windows on a Mac" をお読みいただいたかたには、10 ドル割引のクーポンもある。-Adam]


Sony の PRS 電子ブックリーダーと Connect Bookstore

  文: Tomoharu Nishino <tomoharu@nishino.us>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

何度も延期された後だったが、Sony(米国ソニー社)は先月“Portable Reader System”(PRS) 電子ブックリーダーと Connect Bookstore サービスを打ち上げた。この $350 の機器に非常な興味が寄せられているのは明らかなようだ。Sony は「圧倒的な需要」があったと述べているし、現在は注文しても発送は 12 月の末にずれ込むとしている。

遡って 2006 年の 2 月には TidBITS Talk でも、当時はまだ現物のなかった Sony のこの PRS が、はたして iPod と iTunes Store が音楽において成し遂げたと同じことを電子ブックの世界において成し遂げることができるものかどうかという長い議論があった。

そこで今回は、当時の疑問に部分的なりとも答を出してみようと、待ちに待ったこの機器について一通り概観してみたいと思う。(今回のレビューはこの PRS の電子ブック関係の機能のみに焦点をあてているので、写真や音楽関係の機能には触れていない。いずれにしてもそちらの機能はハードウェアならびに未発達のソフトウェアのせいで甚だしく制限されたものでしかない。)

PRS 機器 -- 全体的に見て、この PRS はすっきりと薄くて格好が良い。サイズはペーパーバックの本と同じくらいで、ちょうど良い手応えを感じる程度の重さだ。私は以前 PDA を使って本を読もうと試みたこともあるが、PDA ではあまりにも小さすぎて長い時間手に持っているには具合が悪いと思った。その点、この PRS はちょうど手ごろな感じがする。

ハードウェアは、デザインの面でもインターフェイスの面でも「最小限」を意識した造りになっている。最初のリリースとしてはなかなかよく考え込まれているようだ。PRS の表面は黒いパッド入りビニールカバーに、つや消しアルミ風の質感を出している。ただ $350 という値段ならばこんな安っぽい表面加工よりはもう少しましなものが欲しかったとは思うが。この PRS がもし順調にスタートしたら、まず間違いなく交換用のカバーがサードパーティーからすぐに出てくるだろう。それに実際、Sony も 革製の交換用カバーのように見えるものを赤・褐色・緑の三種類、$40 で販売している。

スクリーン のサイズはおよそ 3.5×5 インチ (8.9×12.7 cm) で、2-bit グレイスケール (4 色)、1 インチあたり 170 ピクセル (ppi) で 600×800 の解像度を提供している。 E Ink ディスプレイは宣伝にたがわぬ水準だ。表示は非常にシャープでコントラストも良く、幅広い種類の外光の下で(午後の明るい日ざしの公園のベンチでも、ベッドサイドの薄暗い灯りの下でも)快適に読め、どんな角度からでも読みやすい。液晶のバックライトで照らした画面では白黒のコントラストが主に白の背景の輝度を増やすことで得られているので、それに慣れた目には最初のうちこの外光反射スクリーンが奇妙に見える(ほとんど偽者のような感じがする)し、まるで店頭のダミー表示モデルでスクリーン上に印刷した紙を貼付けたものを見ているような気がするかもしれないが、それこそ言い換えればこのディスプレイが本当に紙媒体に近いものに見えるということを意味しているのだ。おそらく最も重要なことは、私がこのディスプレイを長時間使ってみて、とりわけ周囲の照明が暗い環境で長く使って、これまでバックライト付きディスプレイで感じていたものに比べてずっと疲労の程度が少なかったということだろう。

画面の背景色は明るい白ではなく、新聞紙のオフホワイトに近い感じだ。これを見てがっかりする人もいるに違いないが、これこそが長時間読んでいても疲れが少ないことの要因の一つかもしれない。テキストは明瞭で、文字サイズを小さくしても読みやすい。ただし、文字が小さくなればなるほど 170 ppi から来る限界があらわになってくる。 フォントの細かいところ、例えばセリフ部分のようなところが「まばらな」感じになる。言ってみれば、旧式のインクジェットプリンタの出力を見ているような感じだ。それでも、これは私が今までに見たことのある電子的テキスト表示媒体のどれに比べても遥かに優れた出来だと思う。

ページを繰るにはページボタンを使う。ページボタンには二通りあって、一組はスクリーンの左端沿い、もう一つはユニットの左下にある。このように余分のボタンが提供されていることで、「背表紙で」本を支えている時も、下の方を持って読んでいる時も(おそらくこの二つが本を持つ時の最も一般的な方法だろう)どちらも快適にナビゲートできる。その上、下の方のボタンは PRS を横長にして使っている時にも便利だ。(ただしこれはあなたが右利きで、本を左手で持っていることを前提としている。)

メニューのナビゲーションには、スクリーンの一番下に並んでいる十個の番号キーを使う。また、どちらかと言えば不出来な 5-way ナビゲータを使ってもできる。

読むインターフェイス -- iPod ユーザーならば、誰でもすぐにこの PRS の階層メニューインターフェイスに馴染めるだろう。それぞれのメニュースクリーンごとに 最大十個までのメニューの選択肢が、番号キーを使って、あるいは 5-way ナビゲータで、直接にアクセスできる。もしも一つのメニューに十個を超える選択肢があれば、ページキーを使って移動して行ける。元のメニュースクリーンに戻るにはメニューキーを押せばよい。このような構成はちょっとぎこちないような気もするが、PRS に含まれた本のタイトル数が少ない場合は十分使える。しかしながら、膨大な数の電子ブックをこの方法でナビゲーションする場合は結構面倒なことになるだろう。

この PRS には何冊ものフルタイトルと、さらにいくつかの抜粋版もあらかじめ内蔵されているので、Connect Bookstore から入手できる Sony の BBeB フォーマットで本を読めばどんな利点があるのかを自分で評価してみることができる。この機器が本当の意味で輝きを放つのは本を実際にプレゼンテーションする時だ。BBeB フォーマットのタイトルは、伝統的な本に見られるフォーマット上の良い点の多くをそのまま保っている。例えばアート入りの適切な「ブックカバー」(スクリーンによる制限はある)、目次 (対応するページへのハイパーリンク付き)、献辞など適切な奥付部分、 章ごとの適切な冒頭ページ、ヘッダ部分にあるタイトル名などの点だ。これらのことがどの程度うまく実装されるかは当然ながら出版者によって違うが、とにかくこの PRS は本物の本のページに十分近い複製をあなたに提供できるだろう。フォーマットされていないテキストファイルを PDA の上で読む(これまではそれが最も本物に近い代替物だった)のは何とも不細工で満足できない方法だ。テキストをプレゼンテーションすることのさまざまの側面のうちいくつかを保ちつつ、見た目にも魅力あるページの中にそれを表示して読めるというのは、読む側の感覚体験をずっと満足に溢れたものに変えてくれる。この PRS のお陰で、初めて電子ブックは伝統的な本と十分太刀打ちできる現実的な代替物となった。

ページボタンを押してからスクリーンが描き直されるまで、ほんの少し時間差がある。また、スクリーンが再描画される毎に、スクリーンが一瞬反転表示になるが、これにはかなり気がそがれる。どうしても頻繁にページをめくることが必要となるので、問題はますます大きくなる。スクリーンサイズが比較的小さいので、この PRS は最小ズームでもページあたり 200 語くらいしか表示できないようだし、最大ズームならば 75 語程度になる。それに比べて、普通のペーパーバックの本ならばページあたり 400 語程度を含むこともある。このことを考えれば、BBeB フォーマットにおいて広いページマージンとフッタ幅を確保するようにした決断には疑問が残る。この広い余白のお陰でより忠実に印刷本のページをビジュアルに模倣できたとも言えるが、この種の機器でマージンが本当の意味で必要だということはない。ことにそのせいでテキストに振り向けられるスクリーン領域が減ってしまうのだから。Sony と各出版者たちは、印刷レイアウトの各要素のうちどれをこの新しい媒体の上に残すべきか、もう少ししっかりと考えて欲しいものだ。

少し触れたように、この PRS はテキストサイズを三段階にズームできる。BBeB におけるズームというのは、単にフォントサイズを大きくしてテキストを流し直すだけのことだ。明瞭なスクリーンのお陰で、最も小さいテキストのサイズ(標準的なペーパーバック印刷の活字のサイズとほぼ同じ)でも完璧に読める。でもそれだけではない。ズームボタンを押したまま待つと画面が回転して横長モード,に変わり、このモードでは PRS に表示される内容が縦長の場合の半分になる代わりにテキストがさらに大きな文字に拡張される。つまり、この PRS は事実上全部で六通りのレベルにズームでき、さまざまの状況での要求に応えられるようになるということだ。(横長モードでは、ページ上半分の最後の数行でページ下半分の表示と重複する部分はグレイになって表示されるため、読んでいる最中にいつページを繰ればよいかのビジュアルな合図となってくれる。これはなかなか良い感じのインターフェイスだ。)

マニュアルや、まっすぐに読み進まない場合どうすればよいかということについてのこと、つまり履歴機能(最近に表示したページを追跡するもの)やブックマーク、それに目次などもすべて便利に使える。けれども残念なことに、そうした機能はどれも、本を読んでいる最中に手軽にアクセスできる方法がない。これらにアクセスするには、それぞれ個別にメニュー階層を辿ってナビゲートして戻らなければならないのだ。これでは手軽というにはほど遠い。

他のファイルフォーマット -- Sony の BBeB フォーマットでの電子ブックの他に、この PRS はあと三つのファイルフォーマットをサポートしている。プレインテキストと、リッチテキストフォーマット (RTF)、それに Adobe の PDF だ。

プレインテキストファイルはライブラリに加えればファイル名がタイトルとして現われるが、著者名は出ない。こうしたファイルはデフォルトのセリフフォントで表示され、マージンも行整形もない。三段階のズームは問題なく働き、テキストの流し直しも予想通りに機能する。(ただし、元のファイルをこの機器に読み込ませる前に、余分の改行を除去しておくことを忘れてはならない。)

一つだけ大きな問題点がある。そのテキストファイルを初めてこの PRS で開く時は、表示の前にフォーマットを整える必要があるのだ。ファイルのサイズにもよるが、この作業にはかなり時間がかかることもある。私は Tolstoy の“War and Peace”(戦争と平和)を試しに Project Gutenberg からダウンロードしてみた。私の考え付く限りこれが一番長い小説だったからだ。初めてこのファイルを開く時、この PRS はフォーマットし直すのに丸々 2 分間もかかった。もっと普通の長さの小説なら 1 分間ほどで済むだろうが、それでもかなりの待ち時間と言わざるを得ない。その上、テキストをズームする際にも、どれかのズームレベルを初めて使う時に同様の長々しいフォーマット時間が必要になる。このフォーマット情報はその後のズームや、他の本に切り替えた後、電源を切った後、メモリカードを取り出した後にもずっと保存されている。だから、フォーマット作業を待たなければならないのはファイルごとに最初の一回のみで、実際にはそれほど大きな問題とは言えないのかもしれない。その他の機能、例えばブックマークや履歴機能などは、プレインテキストファイルでも予想通り働く。

RTF ファイルはプレインテキストファイルとほぼ同様に扱われるが、基本的なフォーマッティングが加わるだけだ。フォントやフォントサイズはこの PRS の能力の範囲内で近似したものが使われる。どうやらこれは三種類のフォント(セリフ付き、セリフなし、それにセリフ付き等幅)を持っているようだ。その他の基本的なスタイル情報、例えばイタリック、ボールド、アンダーラインや、段落の幅整形や非常に基本的な表なども、やはりこの変換で保たれて表示される。

プレインテキストファイルと同様、RTF ファイルも初めて開く時、それと初めてズームする時に、フォーマッティング作業が必要となる。このフォーマッティング作業はテキストファイルの場合よりもずっと長い時間がかかる。Project Gutenberg 版の“War and Peace”(戦争と平和)では 5 分間を超えた。テキストファイルと同様、このフォーマット情報は大多数の操作後も保存されているので、一つのファイルにつき一回ずつ待ち時間が必要になるだけだ。

PDF ファイルの扱いは驚くほどスムーズだ。私は、Take Control 電子ブックの一つをこの PRS にロードすることで試してみた。タイトル名と著者名の情報は正しく捕らえられている。[これは、私たちがメタデータの詳細部分にまで心を配った成果だろう。どうもありがとう! -Adam]階層的ブックマーク (TOC) や、テキスト中に埋め込まれたリンクなども予想通りに動作したし、表やテキストボックスなどさまざまのフォーマッティングも適切に再現されていた。画像もちゃんと保たれていたが、ここでは 2-bit グレイスケールの限界があらわになっていた。複雑なページのうちいくつかはレンダリングに 8 秒もかかることがあったし、ズームするにも同程度の時間がかかった。それほど複雑でない書類ではレンダリングの速度がもっと早くてページあたり 2 秒か 3 秒というところだったが、それでもやはりテキパキとページをめくる感じはしなかった。PDF ファイルでのズームは二段階しかできない。つまり、ページ一杯に表示 (fit to page) するか、内容を一杯に表示 (fit to content) するかだ。

この PRS で PDF 書類を読む際の大きな問題点は、たいていの PDF ではフォーマットが 8.5×11 インチ (US Letter) サイズの紙に印刷することを念頭に置いて成されていることだ。このため、そういう書類ではテキストサイズが小さくなり過ぎてこの PRS の小さなスクリーンではほとんど読めなくなってしまう。コンピュータで読むようデザインされた PDF 書類(例えば Take Control 電子ブック)の場合は一般的に大きめのフォントを使っているのでこの PRS でもかろうじて読めるが、印刷するためにフォーマットされた普通の書類の場合はそうはいかない。PRS を横長モードにすればかなり読みやすくなるものの、この PRS ではそれ以上の対策、例えば PDF 書類でフォーマットをし直したりテキストを小さなスクリーンに合うように流し直したりといったことが出来ていない。

Mac ユーザーで、自分自身のコンテンツを作り出したり、あるいは Project Gutenberg のような場所から無料で利用できるテキストファイルを読んだりしたいという人のためには、Mac 内蔵の print-to-PDF(PDF へプリント)機能を使って 3.5×5 インチの画面に合った PDF 書類を生成させるのがベストの方法だろう。シンプルなテキストのみの PDF ならばレンダリングも速いし、文字のサイズもあなたのお好みに設定できる。その上、タイトル名や著者名の情報もきちんと設定できるので、整理のためにも好都合だろう。

Mac の上で動かす -- 技術的に言って、この PRS は Windows XP としか互換でない。けれどもこれは Secure Digital (SD) カードあるいは Sony Memory Stick からプレインテキスト、RTF、それに PDF のファイルを読むことができるので、Mac に接続したメディアカードリーダーを使ってそういうファイルを書き込むことは可能だ。とても残念なことだが、この PRS 自体を USB ストレージ機器として認識させることはできない。だから、Mac からこの PRS を使えるようになるためには、あなたはいくつかのマイナーな障害物をくぐり抜けることを要求される。まず最初に、あなたは DOS フォーマットのメモリカードに以下のようなフォルダ構造を作らなければならない。(最後の二つは、オーディオや写真のビューワ機能が不要ならば作らなくてもよい。)

Sony Reader  
Sony Readerbooks  
Sony Readerdatabase  
Sony Readeraudio  
Sony Readerimages  

いったんこのようなディレクトリ構造が出来れば、あとは単に PRS で使いたいプレインテキスト、RTF、あるいは PDF のファイルを \books フォルダの中に入れるだけだ。

ファイルをコピーする際に、Mac OS X が不可視のリソースフォークファイルをそのディレクトリ内に作ることを思い出して頂きたい。どうやらこの PRS は .DS_Store ファイルは無視するようだが、それ以外の ._filename.txt のような名前のファイルはライブラリのメニューに現われてしまう。あなたがリソースフォークを持ったテキストあるいは RTF ファイルを多数持っていると、きっとすぐにこれらの余分のファイル名が煩わしく見えてくることだろう。その場合は、何かのユーティリティまたは Terminal の rm コマンドを使ってそうした不可視ファイルを削除する手間をかける必要が出てくるだろう。

Connect Reader ソフトウェア -- もちろん、現在 Intel ベースの Mac を持っている人にはもう一つの解決法がある。この PRS 用の PC ベースの Connect Reader ソフトウェアは、Parallels Desktop で Windows XP を走らせた上でも問題なくインストールできた。ただし、Vista の RC1 ベータリリースの上ではインストールできなかった。つまり、何か本筋での互換性の問題があるのかもしれない。また、CrossOver Mac のベータリリースの上でもインストールできなかった。だから、もしもあなたがこの Connect Reader ソフトウェアをインストールしたいと思っているけれど PC にはアクセスできないという場合には、Parallels を手に入れて(あるいは Boot Camp を使って)その上に少なくとも Windows XP Home ライセンス ($200) を購入する必要がある。これは相当の追加出費だ。

Mac ユーザーがこのように排除されているのは理解し難いことだ。というのも、この Connect Reader Software を通じてアクセスするストアというのは単なるウェブサイトに過ぎないからだ。Connect Reader での追加機能、つまりライブラリと DRM、それにコンテンツビューワ、というだけならばとりたてて提供が難しいものとも思えない。ことに、このソフトウェアがこんなに粗い出来のものなのだから。Sony のウェブサイトには、DRM コンポーネントの部分がその理由となっていると示唆するような記述も見受けられ、「将来はこのコンテンツを複数のプラットフォームに提供できるようにしたいと願っている」と書いてある。

Connect Reader は表面的には iTunes に似ている。あなたのライブラリ、ストア、それに機器の一覧が左側のカラムに並び、その内容がメインウィンドウに表示される。USB ポートに PRS を接続すれば、自動的にその機器がリストに登場するし、その PRS あるいはカードリーダーに挿入されたメモリカードもまたリストに加わる。

けれども、表面的な類似はそこで終わりだ。まず第一に、PRS とデスクトップライブラリとの間で自動同期する機能が無い。あなたが手動でコンテンツを PRS に入れたり出したりしなければならない。確かに、ここで扱っているのは本なのだから、これはそれほど大きな問題ではないのかもしれない。たいていの人は、一度に機器の中に入れておく本の数は片手で数えられる程度だろうし、一つの本を読み終わって別のものと入れ替えるまでには数日かかるのが普通だろうから、同期機能が無くても初めの印象ほどには大きな欠点とはならないものだ。それでも、新たに購入した本が転送できたり、自動同期のためのカテゴリーを指定できたり、あるいはその他ルールベースの同期機能があれば便利だろうにと思う。

第二に、この Connect Reader ソフトウェアではユーザーが「カテゴリー」を指定できる。例えば、あなたの本をそのジャンルで分類したりできるということだ。どんな本でも、一つのカテゴリーに入れば PRS でカテゴリー順の並べ替えをした時にそのカテゴリーの下に来る。ここで一つだけ問題なのは、これが純粋にファイリングのための方式だということだ。このカテゴリーは、そのファイル自体の属性とはならない。どんな種類の同期機能も無いということを考え合わせると、このことはつまりそれぞれの「カテゴリー」フォルダはいちいち手で PRS に転送せねばならず、その上 PRS にある個々のファイルもいちいち手で適切なカテゴリーの中へ移動させなければ PRS 上でそう認識されないということを意味している。あとでカテゴリーを変更した時にも、PRS 上でやはり同じ変更作業を繰り返さねばならないのだ。奇妙なことに、内蔵メモリ中にある本についてはカテゴリーを作ることができるが、メモリカードに保存された本についてはそれができない。メモリカードには何百冊もの本が入れられる一方で内蔵メモリにはおよそ 80 冊程度の本しか入らないのだから、これはちょっと合点のゆかない機能欠落だ。外部メモリ用の整理方式が無いというのは、たちまち重大な問題となる可能性もあると思うべきだろう。

第三に、Connect Reader ではテキスト、RTF、それに PDF のファイルを読み込むことができ、読み込んだファイルは内蔵メモリにも、あるいは外部カード上にも保存することができる。テキストまたは RTF ファイルを初めて開いたりズームしたりする時にフォーマット処理の時間がかかるというさきほど述べた問題点は、ファイルを読み込み転送するためにこの Connect Reader ソフトウェアを使った場合には発生しない。これらのファイル自体は何も変更が加えられていないようなので、これは Connect Reader ソフトウェアが何らかの書類属性情報を PRS データベースの中に保存しているに違いないということだ。ただし、ここでの例外は PDF だった。理由はわからないが、PDF については、それが Connect ソフトウェアで読み込んだものであった場合にブックマーク(目次)を読むのにずっと長い時間がかかる。(ほとんど 1 分か 2 分もかかる。) PDF でのページレンダリング処理の速度はそう変わらないものだったので、どうやら、PDF に関する限りは、直接メモリカードに入れるのが賢明な方法のようだ。

Connect Bookstore -- Connect ブックストアは Connect Reader ソフトウェアの内部からアクセスできる。(ちょうど iTunes Store が iTunes からアクセスできるのと同じことだ。)本の購入はかなりシンプルな手順でできる。現在、Sony は 12 月末までの限定で新規登録ユーザーごとに $50 相当分の本を無料で贈呈、というキャンペーンを実施中だ。このブックストアでは、あなたの購入したコンテンツに対して最大 6 台までの機器(コンピュータでも PRS でも)で同時にアクセスすることを認めている。新たに機器を登録に加えたり登録から除外したりするのも簡単な手続きでできる。

このブックストアは、整理が行き届いていて展示の仕方もうまい。iTunes Store と比べると乱雑な感じがぐっと減った気がする。特定の本を探したい場合も、なかなか良い検索機能が使える。さきほど述べたように、フォーマットされたコンテンツを PRS で読むのはとても快適だ。

Sony によれば現在 10,000 冊以上のタイトルが利用可能だという。しかしながら、そのカバーする分野は少し偏っている。現在 New York Times のベストセラーリストに載っている 4 つのカテゴリー(ハードカバーとペーパーバックのフィクション、ハードカバーとペーパーバックのノンフィクション)それぞれのベスト 5 を合わせた 20 冊のうち、ここにあるのはたった 13 冊だけだった。ただ、19 人の著者たちのうち 16 人は登場していた。ほんの二・三年前のちょっと古いタイトルについて調べてみても当たり外れが見られたし、古典についてはなおさらだった。例えば、Shakespeare の作品はたった一冊(“Romeo and Juliet”)しかなかった。あなたのお好みのジャンルにどんな本があるか、 ご自身で確認してみられるとよい。

数字で比較すれば、iTunes Store が 2003 年に初めてスタートした当時、揃えていたトラック数はおよそ 200,000 だった。(アルバム数に換算すればおよそ 20,000 というところだろう。)Apple によれば、現在の数字は楽曲数が 350 万、ポッドキャストが 65,000、オーディオブックが 20,000 に達するという。今回の Connect ブックストアが成功するか否か、出版社たちに投資を促して「ロングテール」の一員になってもらえるか否かは、ブックストアで利用できるコンテンツをいかに素早く増やすことができるかどうかにかかっているのだろう。

もう一つの問題は価格だ。私がちょっと適当に選んで現在書店でハードカバーでしか入手できない本を 20 冊ほどチェックしてみたところ、Sony はこれらの本の電子ブック版を Amazon.com での値段よりもたった $2 ほどしか安くない値段で売っている。書店でペーパーバックで手に入る本については、平均して 80 セント程度安くなるだけだ。既に著作権の切れた古典の作品については電子ブック版をほんの $3 から $5 程度で購入できるものの、そのほとんどが Project Gutenberg から無料で入手できることを考えれば十分安いとも言い難い。機器本体の価格が $350 もするので、よほど読書欲の盛んな読者でもない限りこの PRS を経済的観点からの理由のみで正当化することは無理だろう。

RSS フィードを読む -- 最後にもう一つある Connect ブックストアの機能は、RSS だ。基本的には、このブックストアがさまざまのサイトからの RSS フィードを一日一回アップデートして、それらを一冊の本にまとめ、あなたがそれを一日一回ダウンロードするというものだ。便利なものとなるべき可能性は秘めていたのだが、Sony はこれをあらかじめ選択されたおよそ 20 のサイトに限定してしまい、あなたが自分で好きな RSS フィードを追加するということができなくなってしまった。だから、あなたの嗜好が Sony のものとぴったり一致でもしない限り、この機能はどう見ても使い物にならない。

これは二重の意味で残念なことだ。なぜなら、Sony は既に日本で Newspaper for Librie(ニュースペーパー フォー リブリエ)という名の本物の RSS ソリューションを実現しているからだ。これは Windows 用のアプリケーションで、あなたが登録した RSS フィードを自動的にチェックして、それらを BBeB フォーマットに変換し、それをあなたのライブラリに追加してくれるというものだ。試用版がダウンロードでき、言う通りに機能してくれるし (ただしバグも多いようで頻繁にハングするが)、この PRS でも問題なく読める。ただ一つの問題は、これを使うにはあなたが日本語を読める必要があるということだ。

その上、コンピュータと PRS の間にコンテンツの自動同期の機能が無いため、この RSS を実際に使うのはかなり面倒な作業になる。まず Connect ブックストアにログインし、Connect Reader の中で RSS リンクをクリックする。するとあなたが登録している RSS 購読をすべてリストしたページが開く。フィードをアップデートしてダウンロードするためには、個々の RSS フィードのリンクをいちいち一つ一つクリックしてやらなければならない。そうするとやっと Connect Reader があなたのコンピュータにフィードをダウンロードしてくれるのだが、その後であなたは自分で新しいファイルをあなたの PRS へと手で転送しなければならない。(同時に古くなったファイルも手で削除することになる。)iTunes と iTunes Store、それに iPod がポッドキャストをシームレスかつ自動的に処理できるのと比べて、何という違いだろうか。

さらにまだまだ制限が -- ここまで読んで頂ければ、この PRS がどう見ても完璧とは言えないことはもはや明らかだろうが、それに加えてまだまだこんな制限事項がある。スクリーンの表示は美しいのだから、vCard や vCal の情報を表示できるようになれば便利だろうにと思える。そうすればこの PRS が基本的な PDA としても使えるようになるのだから。もちろん Sony がこの製品をシンプルかつ焦点の絞れたものにしようと考えているのは理解できるが、彼らが実際に含めている余計な機能(ひどく粗雑な音楽プレイヤーと写真ビューワ)と比べれば、間違いなくこちらの機能の方がずっと便利だっただろう。

もう一つ明らかな制限事項がある。データ入力の手段が一切提供されていないのだ。Sony はタッチスクリーンの導入には乗り気でなかったようだ。読みやすさが犠牲になるだろうし、おそらく信頼性も損なわれるだろうからだ。それに、この機器は既に動作速度がのろのろしているので、さらに機能を加えるというのは現実的でないことだったのかもしれない。でも、日本で販売されている Sony オリジナルの電子ブック機器 (さきほどの Librie) には、小さなキーボードが付いている。本格的なテキスト入力には向かないが、このキーボードさえあればちょっとしたこと、例えば検索とか、より直接的なナビゲーションとかが可能になる。この点こそが今回の PRS で根本的に欠けているところ、この種の機器として自然な応用に使うには不資格となってしまう理由、つまり参照作業には向いていないということだ。それに第一、入力手段がないことで、現在も、また将来も、どんな種類の注釈機能も受け入れる余地が無くなってしまっている。

結論 -- 全体的に見て、この PRS はフラストレーションの修練そのものだ。フラストレーションが溜まる理由は、核心となる機能が非常に良く機能していて、ここにはプラットフォームとしての可能性がたくさん秘められていると思えるからだ。いったんこの PRS で電子ブックを読み始めれば、それは非常に快適な体験となる。初めて、電子ブックが本物の本にひけを取らないレベルに到達したという実感が持てる。

けれども、使い勝手の不満があちこちにあって、それらがどんどん鬱積してくる。全般的な機器の反応の遅さとのろのろした感じ、磨かれていないインターフェイス (特に目次やブックマークや履歴に本の中からアクセスできないところ)、使いにくい 5-way ナビゲータ、メモリカードにカテゴリーが使えない点、ぎこちない Connect Reader と貧弱な機器統合、といったことだ。これらすべてが、本を読むということに達するまでのプロセスを必要以上に煩わしいものにしている。

(注意して頂きたいのは、Mac ユーザーのみに関係する問題点はテキストおよび RTF のファイルを最初に開く時のレンダリングが遅いという点のみだということだ。それ以外の厄介ごとは、すべてあなたがこの PRS を Windows XP と共に使おうという場合にも同じように発生するだろう。)

その上に、機器本体も Connect ブックストアでの電子ブックも、ともに値段が高いことを考え合わせれば、経済的には問題外だろう。もしもあなたが飽くことを知らぬ貪欲な読書家であるか、あるいは普段から同時に何冊もの本を読み進める習慣がある(だからいつも重たい本を何冊も抱えている)人であるのなら、それだけの投資をする価値があるのかもしれない。また、もしもあなたが例えば Project Gutenberg のような膨大なパブリックドメインのテキストリソースから本を取り込んで読むのが好きで、持ち運びしやすい手軽なプラットフォームを探しているのならば、確かに PRS は検討する価値があるだろう。けれどもたいていの人にとっては、この $350 の値札だけでもう既にお手上げという感じではないだろうか。

一言で言えば、これは(悲しいことに)典型的な Sony 製品だ。素晴らしいハードウェアなのに、どうしようもないソフトウェアととんでもない値札によって手足を縛られている。どうか、今後のバージョンではハードウェアとソフトウェアインターフェイスに磨きをかけて、より現実的な価格で提供してくれれば、と願わずにはいられない。


Take Control ニュース/18-Dec-06

  文: Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
  訳: 倉石毅雄 <takeo.kuraishi@attglobal.net>

Mac 上で Windows を走らせるための最新情報 -- Intel-ベースの Mac でWindows を走らせようとしている?それとも Windows は走るものの、印刷、バックアップ、もしくはアップデートについて助けが必要だろうか?Joe Kissell の“Take Control Running of Windows on a Mac”の中身が大幅に増えて更新された第二版を手に入れれば簡単に出来るようになるだろう。この電子ブックを読めば Macintosh で Windows を走らせるための選ばれたテクニックに関する専門家のアドバイスが受けられる。

最新版では Parallels Desktop の(最新のベータを含む) 情報も更新されており、新しい機能の使用方法やアップデートの際に留意するべき点の説明なども含まれている。この電子ブックでは Apple の Boot Camp で Windows を走らせる際の最新の変更点を丁寧に取り上げ、Boot Camp か Parallels の下で Windowsファイルをバックアップする方法について論じ、そして Windows をインストールせずに Windows のソフトを走らせるための様々な選択肢について簡単に説明している。

電子ブックの新規購入には $10 かかるが、 31-Dec-06 まで有効であるカメラ、Mac、テレビなどの購入ガイドの歳末割引を活用すれば、_注文全額が_ 30% 引きになる。

01-Sep-06 以降に“Take Control of Running Windows on a Mac”を購入した人たちには無料のアップグレードを提供している。該当する人たちには必要なリンクを入れた電子メールを送ってあるが、もし届いていなかったら連絡を下さい。9月以前に購入した人たちは第二版を 50% 引きで入手できる。お持ちの電子ブックの表紙の Check for Updates ボタンをクリックしてこの期間限定の割引を活用してもらいたい。

実際の使用における iTunes 7 の Sync シナリオを説明 -- つい先日、Michael E. Cohen の“Take Control of Syncing in Tiger”の無料のアップデートをリリースした。これでは主に iTunes 7 で iPod と sync を行う際の問題点を取り上げている。他の Take Control 電子ブック同様、Michael は設定について軽く取り上げるのではなく、“iTunes はどうやってビデオファイルを分類するのか”とか“なぜ sync した時に、半分だけ再生したポッドキャストが iPod から削除されてしまったのか”といった質問に答える形で、実際に起こりうる状況について解説している。それ以外にも“Take Control of Syncing in Tiger”は複数の Mac の間でデータやファイルを sync する方法や PDA や携帯電話を Mac とsync する方法などを説明している。この電子ブックを既にお持ちなら表紙のCheck for Updates ボタンをクリックすれば無料のアップデートが手に入る。


TidBITS Talk/18-Dec-06 のホットな話題

  文: TidBITS Staff <editors@tidbits.com>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

デジタル TV チューナー -- ギフト特集号での提案の一つを読んで、Mac で使えるデジタルテレビ用チューナーについてある読者が質問を寄せる。 (1 メッセージ)

シンプルなファイルサーバのお薦めは? -- ジャーナリズム関係の研究室で古い Mac をファイルサーバとして使う方法として、読者たちがいくつかのやり方を推薦する。 (8 メッセージs)

Mac 用レシピソフトウェアを比較 -- コンピュータ会社たちが競って自社のマシンがレシピの管理に理想的な道具だと宣伝し合った時代があったことを覚えておられるだろうか? 実は、Mac 用にもいくつかのソフトウェアが出ている。(3 メッセージs)

RollerMouse Pro が高速・広範囲ローリングに -- RollerMouse Pro をレビューした Adam の記事に、モニタが複数台繋がっている場合にはどんな風に動くのかという質問が挙がる。 (2 メッセージs)

あなたのドメイン名を Take Control -- Glenn Fleishman の新しい Take Control 電子ブックをきっかけに、誰かの手によってあたかもあなたのドメインから発送されたかのように見えるスパムが送られている場合にダメージを最小限にとどめるにはどうすればよいか、という質問が出る。(26 メッセージs)

ブラウザ戦争 -- Intel ベースの Mac 上で、Mac OS X 自体の下で動かすよりも Windows の下で動かした方が、ウェブのブラウズが高速なように見える。何がこの違いを引き起こしているのだろうか? (13 メッセージs)

challenge-response システムへの現在の意見は -- スパムを遮るための challenge-response システムは、実際に効果的なのか、それとも単にうるさいだけのものか? (3メッセージs)

死んだ Zune の用途百八つ -- この“Zune”というやつは、失敗の代名詞となる運命なのか、あるいは中傷の象徴となるのか? 読者たちが、情け容赦もなく Zune の上に襲いかかる。 (3_メッセージ)

notMac の挑戦 -- Apple の .Mac に代わる無料のサービスを開発しようというプロジェクトが進行中だ。そこである読者が、.Mac の将来について思いを巡らす。 (1メッセージ)


tb_badge_trans-jp2 _ Take Control Take Control 電子ブック日本語版好評発売中

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