TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#869/05-Mar-07

あなたのマウスが期待通りに動いてくれないということはないだろうか? それはたぶんマウスに問題があるのではなく、Mac OS X の加速曲線のせいだ。Apple は Mac OS 9 と Mac OS X の間でこの設定を変えたのだ。Parrish Knight が、いったいどういうことになっているのか、マウスを調教し直してあなたの動きにより適切に追随させるにはどうすればよいのかを説明する。また今週号では Adam がインターネットを使ったアンケートに関していくつか驚くべきことを発見し、iPhoto の画像編集機能の大部分を提供するウェブサイト Picnik について検討する。Glen McAllister は iConcertCal を使って近場での音楽コンサートを探し、Glenn Fleishman はセキュリティ研究者の Randal Schwartz が有罪判決の抹消を受けたことを祝う。また、Parallels Desktop Build 3186(基本的にバージョン 2.0)と、QuickTime 用のセキュリティアップデートのリリースを報告するとともに、Macworld Expo のセッションのビデオとオーディオファイルが出たこと、Mac OS X ユーザー数の新たな見積もり(2200 万人!)が報告されたことをお伝えする。

記事:


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ExtraBITS を TidBITS 出版システムに移行

  文: Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

私たちの最新ニュース記事を ExtraBITS で読んでこられた方は、今週になって何か変更があったとお気付きになったかもしれない。私たちのバックエンド、私たちが TidBITS Publishing System と呼んでいるものの大幅なオーバーホールの一環として、私たちのデータベースの中にある記事を、それが TidBITS の号に掲載されるよりも前から私たちのホームページに載せる(そして検索にも含める)ようにしたのだ。ごく最近になってから、私たちは ExtraBITS の記事を検索可能な記事データベースとは接続されていない、独立のブログの中に掲載するように変更していた。けれども、その方法では記事が TidBITS の号に載るまでの間は検索の対象にならず、また号に載った後はホームページ上で二重に(号の中の記事として、また別途に ExtraBITS の中で)登場していた。確かに機能的ではあったが、これではエレガントとは言えなかった。

私たちは、引き続きウェブサイトの大幅な再デザインの作業を進めつつある。これが完了するまでの間は、まだ TidBITS の号の中に出されていない記事の見出しは、引き続きホームページの ExtraBITS 欄のところに登場することになる。また、ExtraBITS の RSS フィードも 私たちのメインの RSS フィードに振り向けるようにしたので、現在これは週の途中でも記事が登場した時点でお知らせが届くようになり、以前のように TidBITS の号が出た時にだけまとめて出ていたのとは変わっている。これまでメインの ExtraBITS ウェブページを定期的にチェックしてこられた方や、ExtraBITS 記事を電子メールで受け取ってこられた方には、この記事がその形での最後のものとなる。いずれ、そういう方々の設定は TidBITS ホームページへ振り向けるようにしたいと思う。


QuickTime 7.1.5、Panther、Tiger、XP、Vista の脆弱性を修正

  文: Glenn Fleishman <glenn@tidbits.com>
  訳: 松田 栄 <sacaboom@gmail.com>

Apple は、Mac OS X 10.3.9 とそれ以降、Windows XP および Vista を対象とした QuickTime のアップデートをリリースした。QuickTime 7.1.5 では、多数のバグを修正するとともに、悪意を持って作成されたファイルを使って、QuickTime を使用しているプログラムをクラッシュさせたり、任意のコードを実行させる可能性がある不具合(これが実行されると、攻撃者がコンピュータを制御してしまう、また被害が最小であっても、マルウェアをインストールしてしまう危険性がある)を解決した。

影響されるファイルは、3GP ビデオ、MIDI ファイル、QuickTime 形式の QuickTime ムービー、由緒ある PICT ファイル形式の画像、そして QTIF ファイル、とさまざまな種類に及ぶ。Apple は、ユーザーは悪意を持って作成されたファイルを開くだけで、攻撃が開始される可能性があると警告している。つまりWebサイトに、都合の良い形式の QuickTime 書類を埋め込むことによって、そのページを開くだけで、攻撃が開始される可能性があるのだ。

この不具合によって広く被害が及んでいるという報告は今のところない。前回は JavaScript の扱いに関する QuickTime の不具合が、特に MySpace で悪用されていた。Apple はMySpace への 一時的な修正を行ったとしているが、この修正が QuickTime 7.1.5 に行われているかどうかは不明だ。


Parallels Desktop 2.0 出荷

  文: Joe Kissell <joe@tidbits.com>
  訳: 松田 栄 <sacaboom@gmail.com>

Parallels は、2006 年 12 月のはじめにパブリックベータテストを開始した Parallels Desktop 仮想化ソフトウェアの公式なアップデートをリリースした。混乱させられることに、この会社は通常のバージョン番号を使わないのだ("2.0" という風に普通は称すると思うのだが)。しかし現在入手可能な Build 3186 は、同社が Build 3036 を 3ヶ月前にリリースして以来、完成された非ベータ版とみなす最初のバージョンとなる。(Parallels はダウンロードページに build番号を示している。)

Parallels は、私たちが最近お伝えしたベータバージョン以降、主な新機能は追加していない(2006-12-04 の"Parallels Desktop 先行版を公開"を参照)。しかし、同社は以前追加した機能を修正し、強化した。私が 12 月に問題があるとして触れた新機能のひとつは、Boot Camp パーティションにインストールした Windows のコピーを直接 Parallels 内で走らせることのサポートだった。以前は、走らせている Windows の 2つのモード間を行き来する切り替え時に、いちいち Windows を再有効化するよう要求されていた。現在は、有効化の要求が、ちょうど一回だけ、発生するはずだ。

数ある新機能の中で Coherence は、Windows アプリケーションのウィンドウと Mac アプリケーションのウィンドウを混在表示できるモードで、しかも Dock 内で個々のアイコン表示もできる。また Transporter は、Windows がインストールされた現行 PC から Parallels へ移行するためのツールだ。USB 2.0 のサポート、使いやすい Installation Assistant 機能に、Windows と Mac OS X 間を drag-and-drop でファイルやフォルダのコピーが行える機能もある。グラフィックスの性能は改善されたが、Parallels ではまだ 3D グラフィックスのサポートはしていない。つまり現状ではまだユーザーはグラフィックスを多用したゲームを行うには、再起動して、Boot Camp を用いてプレイするか、あるいは VMware からでている競合仮想化環境 Fusion のベータバージョン(現在テスト段階ながら 3D サポートがある)でプレイしなければならない。

Parallels Desktopの新しいバージョンは、登録済みのユーザーなら無料でアップデートできる。アップデートするには、アプリケーションの Help > Check for Updates コマンドで入手するか、または手動でダウンロードしてもよい。インストールの容量は 58 MB で、このプログラムをまだ購入していない人向けに 15 日間の無料トライアルが有効だ。Parallels Desktop は、$80 で販売されているが、"Take Control of Running Windows on a Mac" の読者には $10 値引のクーポンがついてくる。この書籍の現行版は、ベータテストが開始されたあとに発売したので、すでに Parallels の新しい機能について記載してある。


Adam と Joe の最新インタビュー

  文: Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
  訳: 羽鳥公士郎 <hatori@ousaan.com>

TidBITS 編集者たちとの最新のポッドキャストインタビューに耳を傾けよう! Macworld Expo では、Adam が Mac Edition Radio の司会者 Harris Fogel とショーで発表されたことについて話した。そしてこれは最近のことだが、Joeが Tech Night Owl Live の Gene Steinberg と話している(彼が登場するのは 2007 年 3 月 1 日付けの番組の最後の3分の1だ)。


Mac OS X ユーザは 2200 万人

  文: Glenn Fleishman <glenn@tidbits.com>
  訳: 羽鳥公士郎 <hatori@ousaan.com>

私たちはしばしば、私たちというのは何人ぐらいいるのだろうかと考える。Apple は、実際に Mac OS X を使っている人の数を時折公開するけれども、その数字が最後に更新されてからもうしばらくたつ。8か月前、2006 年 8 月に開かれた Apple の Worldwide Developers Conference では、Steve Jobs は実際の Mac OS X ユーザの人数は 1900 万人だと言っていた。そして今、Bank of America Securities のアナリスト Keith Bachman が AppleInsider の記事で引用した数字は、さらに大きくなって、すべてのバージョンの Mac OS Xのユーザは 2200 万人になるという。Bank of America Securities は、2005年 6 月に Mac OS X 10.4 Tiger がリリースされて以来の Mac ユーザの増加数を 600 万人と見積もっている。そしてほぼまちがいなく、まだ Mac OS 9以前を使っているユーザも数えきれないほどいるはずだ。


Macworld Expo セッションがダウンロード可能に

  文: Jeff Carlson <jeffc@tidbits.com>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

1 月の Macworld Expo で、私は Users Conference トラックの一環として“Graduate from iMovie to Final Cut Pro”(iMovie を卒業して Final Cut Pro に進もう)というセッションをした。これは結構うまく行ったと思う。ことに私は人前で話をするのがあまり得意ではないのだから。(でも、向上するように努めてはいる。)

セッションが終わって部屋を出ようという時、一人の男性が声をかけてきて、このプレゼンテーションはオンラインで見られるようにならないのかと聞いてくれた。(あなたのお名前を聞きそびれたのを申し訳なく思う。だからあなたがこれを読んで下さっていればと願っている。)私は自分の Keynote ファイルをもとに、それをムービーとして書き出して、GarageBand の中に放り込み、ボイスオーバーでセッションを再現してからそれをダウンロードできるようにしたいと思っていた。残念ながら、私はそれ以来そこまで手を伸ばす時間がなかったのだが、今やそれも不要となった。

IDG の人たちが、今回 Macworld Encore という新しいサービスを始めて、個々のセッションを iPod 互換な QuickTime ビデオあるいはオーディオファイルとしてダウンロードできるようにしてくれた。これらのセッションは無料ではないが、値段はかなり手ごろなものだ。Users Conference セッション(私のものも含む)は一セッションごと $5 で、丸一日の Power Tools Conferences は $30、Mac IT トラックは各 $7、Market Symposiums は $15、それに Hands-on Mac Labs は $10 となっている。(すべてを掲載した DVD-ROM も $300 で販売されている。)

私のセッションの分は、オーディオ(どうやら彼らは最初から、私たちが使っていたオーディオフィードバックを加減していたらしい)に加えて、会場でスクリーンに上映されたものすべてを含んでいる。

有料のカンファレンスのどれかに出席したけれども見たかったセッションのうち一つには出そびれた、という人には、これこそ手ごろな値段で欲しかったものが手に入るチャンスだろう。それに、Macworld Expo には行けなかったというあなたも、ちょっといくつかダウンロードしてみれば、わざわざサンフランシスコまで旅するよりもずっと安い値段で済むではないか。


DealBITS 抽選: Panergy の docXConverter Premium の当選者

  文: Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

先週の DealBITS 抽選で当選し、Panergy の docXConverter Premium($29.95 相当)を受け取ることになったのは、paulschreiber.com の Paul Schreiber と axionet.com の Derrick Yamaura の2名だ。おめでとう! 残念ながら当選しなかった皆さんにも、もれなく docXConverter の 20% 割引が贈られた。今回の DealBITS 抽選に応募して下さった 488 人の皆さん、どうもありがとう。また今後の DealBITS 抽選もお楽しみに!


セキュリティ・ハッカー、日々の生活に戻る

  文: Glenn Fleishman <glenn@tidbits.com>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Randal Schwartz は、その好奇心の強過ぎたことが自身のためには仇となった。1990 年代にオレゴン州で Intel 社の契約社員として働いていた時、彼はあちこちを探っては突ついてまわり、特に、彼の働くグループにおいていかに多くのアカウントのパスワードが下手なやり方で選ばれているか、つまりいかに弱いパスワードであるかを証明してやろう、という方面に首を突っ込み過ぎた。Schwartz はプログラミング言語 Perl の達人として有名な人物だ。この言語は後で登場した PHP とともにウェブアプリケーションで広く用いられている。(実際、TidBITS の多くの部分が現在 Perl で動いている。)

たいていのシステム管理者なら、パスワードの強力さのテストについては、ネットワークやそれに附随するコンピュータたちが侵入やその他の危険に対抗できることを保証するためにたくさんあるテストのうちの単なる一個に過ぎないものと見なすだろう。けれども Schwartz の場合は、彼がパスワードのクラッキングのテストを走らせたそのやり方、またそのために彼が手にしたアクセス権に対して、これを取り上げて問題視する議論が起こり、その結果彼は Intel 社から解雇されただけでなく、オレゴン州の法律に基づいてコンピュータ犯罪のかどで告発され、三件の重罪について有罪を宣告されてしまった。彼はまた Intel への損害賠償に加えて膨大な訴訟費用も支払うよう言い渡され、その金額は合わせて数十万ドルにも及んだ。

今回、これらの有罪判決が抹消されることとなり、そのことを皆さんにお伝えできるのを私はとても嬉しく思う。2007 年 2 月 1 日、裁判所は「有罪判決以後の被告人の状況ならびに態度に鑑み」また彼が言い渡された条項をすべて満たしたことにより、彼の逮捕歴と有罪判決とを記録から削除するようにという裁定を下した。その裁定によれば、「被告が(中略)過去に有罪判決を受けたり逮捕されたりしたことはなかったと見なされることとする」とのことだ。

あの有罪判決は裁判の名を借りた茶番劇だったし、オレゴン州の最高裁あるいは上級裁判所でならば支持する判決が出たとは私には思えない。あの時の判事は裁判の中で、法律に記してあるところによればコンピュータのオペレーティングシステムのディスプレイの背景色を変更するだけでも犯罪となるように思えると述べたことがあった。(2001 年の控訴審は、いろいろなことを混ぜこぜにしたような結果になった。)でも、私の見るところ、それ以来オレゴン州において少しでも似たような件で訴追された人は誰もいないと思う。

今回の抹消裁決の PDF は Friends of Randal Schwartz サイトで読めるが、このサイトにはこの件に関与した人々による公式声明を広範にわたって取り揃えたアーカイブもある。そこを見れば、この訴追が Intel によって推し進められていたことが一目瞭然だろう。Schwartz が有罪とされた根拠の一つは、彼の自宅が捜索されていた時に聞こえてきた会話を警察が記憶していたことによるものだったのだ。

Schwartz はこの件に関して賢く立ち回ろうとしたと言ったことはなかった。ほとんど不意の手入れの状態で家宅捜索を受けた時、彼はちゃんと権利についての説明を警察から受けたし、その上で彼は弁護士の立ち会いもなく話をしたのだった。彼は、クラッキングソフトウェアを走らせないように、またさまざまの目的で彼が遠隔アクセスするために使っていたソフトウェアをオフにするようにと何度も要求されていた。また、彼は自分の発見した欠陥をずっと長い期間にわたって報告せずにいたので、一見彼が何かを隠していたかのように見えたのも確かだった。

けれども、私はずっと以前からこの訴追そのものが茶番に過ぎないと感じていた。Schwartz には犯罪の意図は全くなかったし、彼が Intel に支払った「損害賠償」は、彼が証明してみせたよりも以前から存在していた問題点を Intel が修復できるようにするためのものだった。実際のところ、もしも犯罪的なクラッカーたちがシステムにアクセスできていたとしたら、Intel はきっと膨大な代償を支払わなければなかっただろう。そうなれば、彼らは Schwartz を豚箱に放り込もうと苦心する代わりに、きっと彼にボーナスを支払う立場になっていたことだろう。

Schwartz は一度も牢獄に縛られることがなかった。実際、裁判では驚くほど判事が同情的で、ただ既存の法律には従わなければならないのだから、という態度が見えていた。そうは言っても、数週間前まで、彼は重罪犯人だった。それは、9/11 以後の世界においては、重い十字架だった。国際的に認められたプログラミング言語の専門家であるにもかかわらず、特定の政府関係ならびに企業関係の契約に関して Schwartz が働くことは制限を受けていたし、アメリカ合衆国の国外へ旅行するのはかなり困難だった。

私は、Geek Cruises第一回の Mac Mania クルーズ旅行で Schwartz に会った。私が長年知っていた、あるいはずっと会いたいと思っていたたくさんの Mac ライターたちや、その他そうそうたる参加者の面々と共に過ごした、素晴らしい一週間だった。Schwartz は毎回 Geek Cruise に参加していて、これは言わば彼の職業上の道楽とでもいうものになっているが、そのことを私がたまたま知ったのは、Geek Cruises のカンファレンスシリーズを運営する CEO 兼「船長」の Neil Bauman と Macworld Expo の会場で話した時のことだった。

そのクルーズの最終日のこと、皆で上陸の合図を待つ間、Wi-Fi アクセスで速度の遅いインターネット接続のできるラウンジに座っていた Schwartz は、まわりにいる人たちに Wi-Fi 接続ではパスワードがあからさまに送られているのだということを説明していた。それを証明するために、彼は他の人のパスワードの断片を当ててみせていた。そこにいた人たちにとってはこれはハッと目を覚まさせられるような強烈な知らせだった。そして、皮肉にも、その強烈な反応こそが、そもそも彼を困難に直面せしめた原動力だったのだ。

数年前のこと、Schwartz は私に、他の大勢の人たちと一緒になって、当時のオレゴン州知事にあてて赦免を願う手紙を書いて貰えないかと頼んできた。その手紙の中で、私は Schwartz が一貫して善意の側に属する行動をとっていることを説明し、彼の時に即した寛大さと、判決で定められた条項に彼が忠実に従っていることを書いた。判事は恩赦を発動することは拒んだが、それでも私がその時に書いた通り、Schwartz が何らの害を及ぼそうという意志がなかったこと、ただセキュリティを増そうとしただけのこと、そして、ただ一つの過ちが会社の方針に反する行為をしただけであったことは、はっきりとしていた。Schwartz が予期される以上の情報を得ていたという証拠も存在していなかった。ただ残念なことに、オレゴン州の法律で証拠が必要とはされていなかったのだが。

今回 Schwartz が有罪判決から解放されたのは、とても嬉しいことだ。私がこの記事を書いているのは、この嬉しい知らせを皆さんに広めたいと思ったことも理由の一つだが、もう一つの理由は、その時には問題無いと思えていたような行動についても、それがコンピュータ犯罪として訴追され有罪判決を受けてしまうことがいかに簡単に起こりうるかということを皆さんに考えていただきたいと思ったからだ。それからもう一つ、この記事を Google に供給することによって、Schwartz の名前が有罪判決と結び付けてでなく、有罪判決の抹消と結び付いて、より多く取り上げられるようになることを願ってのことだ。


インターネット調査で学んだこと

  文: Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

私たちが実施中の読者アンケートの結果が集まってくるのを、私たちはずっと注意して見てきた。現時点で、およそ 2,800 件の応答が寄せられている。皆さんはまだこれからも投票できるが、あえて言わせていただければ、現状での応答動向に基づいて、どうやら私は今後皆さんがどのように投票されるか、その傾向については予言できるようだ。実際、いくつかの問の答については、アンケート開始後最初の数時間以来ずっと変わらず同じような分布の割合を保っている。

この事実、つまり正確な結論を引き出すためにそれほど大量のデータが必要ではないということは、多くの調査の専門家たちが信じるところの、高い応答率が必要だという要請に反したことのように見える。実際、政府に申請された調査が補助金を受けられるために最も重要な審査基準の一つは、その調査に高い応答率が予想されることであって、いろいろなメディアの世論調査担当のようなところが実施する手軽なアンケートなどについて応答率が発表されることがめったにないのも、そういう調査では応答率があまりにも低いのが理由なのだ。けれども Stanford 大学の Jon Krosnick 博士 によれば、それは信じられていたほど正しいことではなく、研究者たちは最近になってそれが正しくないということを知るようになってきたということだ。

Krosnick 博士は先週、 Cornell 大学の Survey Research Institute の企画した講演シリーズの一環として講演を行ない、Tonya と私は学術研究者で一杯の部屋の中でちょっと場違いな気分にさせられていたものの、Krosnick 博士の講演が調査理論や統計学をきちんと勉強したことのない私たちにも面白くて分かりやすいものであったことに快い驚きを感じていた。この話題に非常に興味があるという方には、その講演を録音したもの (26.6 MB MP3) を聴いてみられることをお勧めする。そうでない残りの大勢の方々のために、以下この記事では Krosnick 博士が述べられたちょっと直観に反する内容のいくつかと、その他いくつかの事実でこれまで何らかの調査やアンケートに直接質問で、あるいは電話で、またはインターネット上で、答えるように言われたことのある人ならきっと興味あることがらを、まとめて紹介してみたいと思う。

  1. 電話によるインタビューは、直接面と向かってのインタビューにそのまま取って代われるものにはならない。電話によるインタビューが増えてきたのはコストが安いのが理由だ。一人の回答者で一分あたり $1.50 から $6 くらいで済む。これに対して一時間かけた直接面と向かってのインタビューは最大で $1,000 もかかることがある。インタビュー担当者を雇い入れて訓練し、旅行に時間をかけ、といった具合で費用がかさんでしまう。しかしながら、たくさんの尺度で検討してみれば、電話によるインタビューは直接面と向かってのインタビューに比べて大幅に正確度が劣ることが分かる。
  2. 電話によるインタビューがあまり素晴らしいものとは言えないのと同様、用紙を郵送してのアンケートもそれに輪をかけて正確度が劣る。この場合目立つのは人々があまりにも素早く質問から質問へと斜め読みしてしまうことで、その結果正確度が減ることになる。(電話対質問状のある比較調査で、パイロットたちに危険だと思った経験を尋ねたものの結果を見ると、紙によるアンケートに答えたパイロットたちの方が電話でのアンケートを受けたパイロットたちに比べて自分たちの答がより不正確だったと評価し、危険な事態を覚えていた件数も少なかった。)用紙を郵送してのアンケートの利点はその方が安く済むことだが、いわゆる「Dillman 法」を採用して督促を送ったり同じものを複数回送ったりし始めた途端、電話のインタビューに比べて費用が安いという利点はどんどん小さいものになってしまう。
  3. 第三の内容については既に触れた。応答率が低いからといって、それはこれまで考えられてきたほど問題ではない。これは良いことだ。なぜなら、Krosnick 博士の指摘によれば、電話による調査の応答率が近年劇的に落ちているからだ。現在進行中のある調査は、伝統的に高い応答率を誇っていたにもかかわらず、今は毎月 0.5% ずつ落ち続けているとのことだ。
  4. コンピュータベースの調査は、実は電話による調査に比べてはるかに高い正確度を生むことが分かっている。これはおそらく、無意識のうちに人々は電話の向こうにいる見知らぬ人よりもコンピュータの方がより人間的だと感じるからではないかと思われる。その上、質問が一度に一つずつ与えられれば、電話でならば沈黙を避けたいという対人的な気まずさを感じるところ、コンピュータベースの調査ならば気まずさもなくじっくりと答を考えることができる。また、直接他の人と話しているのでない方が人は正直になるものだという考え方もある。ここで学ぶべきは、インターネットを使ったコンピュータベースの調査は既に大きなビジネスとなっているのであって、それが電話や郵便による調査に取って代わるようになればなるほどますます大きくなってゆくだろうということだ。
  5. インターネット調査の多くが直面している問題は、ランダムにサンプリングした回答者に基づくことがまずあり得ないという点だ。大多数のインターネット調査会社が使っている方法でユーザーを採用した場合、回答者のグループはランダムでないものになりがちで、真の意味でランダムに選んだサンプルによる調査に比べて正確度の劣る結果しか引き出せないおそれがある。どうやら、真のランダムサンプリングを採用しているインターネット調査会社は現在たった一つ、 Knowledge Networks というところしかないようで、多数のインターネット調査会社と一つの著名な電話調査会社を対象にしたあるテストでは、Knowledge Networks の結果が全体的に他社に比べて高い正確度を示したということだ。実際、Knowledge Networks はパネリストに MSN TV ウェブブラウザと、必要ならばインターネット接続まで提供するというところまで深入りしている。それとは対照的に、他の会社では参加する見返りにお金を得たい人々に依存して調査をしていることが多い。こうして、インターネットでは他の多くのことについてもそうであるように、より「オイシイ」調査を求めて流されてゆく、そういう人たちが実情とは違う形で自分たちを表現してしまう結果となることが起こりがちだ。残念ながら、本当に正しい形でインターネット調査をしようとすれば、結局そのコストは電話による調査とそう変わらないものになってしまうだろう。ただ、今後コストが下がるのはあり得ることだが。

初心者としての結論 -- 私たちは Krosnick 博士の講演をとても面白いと思った。講演後の質問セッションの時以外に彼と直接話をする機会はなかったのだが、彼の話した内容からは、私たちが日々目にしているインターネット調査やアンケートなどについていくらかの結論が引き出せると思う。

まず第一に、ランダムなサンプルが理想的だということには全く何の異論もないが、現実の正確度の差はそれほど巨大なものではなかった。比較的分散した結果を持つことが予想される質問(例えば TidBITS 読者の年齢を問う質問など)に当てはめた時、回答者の動向で選ばれたサンプルが特に一つの方向に極端に偏向しているかどうかを心配せずとも、使って意味のある結論がたやすく引き出せるだろう。ただし、1% や 2% 程度の精度まで詳しい結果を分別する目的に使うのは無理だろうが。

第二に、たとえ応答率がそれほど巨大なものでなくても、結局大きな違いはないと思われる。私たちのアンケートでも応答率そのものは 10% 以下だろうが、仮に質問に答えて下さいと何度も催促して皆さん全員を悩ませた挙句に応答率が上がったとしてもそれによる正確度の向上はそれに見合うだけのものとも思えないだろう。どの程度応答率が少なくてもよいかはあまりはっきりしないが、一桁の数字だからといってそれほど大きな問題になるとは思えない。

最後に第三の点は、国政選挙の方法を評価するための調査のようなものとは異なり、たいていのインターネット調査はその結果を将来予測に使うことを目指したものでもないし、調査の結果が他の人の将来の行動に影響を与えるようなものでもない。どうしてこれが違いの焦点なのかうまく説明はできないが、私は問題は調査の目的に関係したことだと思う。TidBITS 読者のうち何パーセントがコンピュータゲームでよく遊んでいるか(28% だった)が分かれば、次の記事をどんな内容にするか考える際にその情報を利用することができる。でも、その情報を公表したからといって人々がゲームをプレイするようになったりプレイするのを止めたりするわけではない。しかしながら、それとは対照的に、次の選挙で誰に投票したいと思っているかという調査の場合は、あなたの答え次第で他の投票者たちの意見を左右する力の一部になれるかもしれない。

そして、そのことこそが、応答率の低下に対する私の答の鍵となると思う。調査というものは煩わしかったりタイミングが悪かったりもしがちだが、もしもそれに答えることが意味あるものと思えるのならば、その調査は、あなたの意見を世界に広めるための手段と見るべきなのだ。これは、私がスーパーマーケットのお買い物カードを抵抗なく使っているのと同じ理由だ。カードを使うことで私が何を買ったのかが追跡されていることは承知しているが、それでも私は自分が加工食品よりも有機食材の方を多く買っているという事実がしっかりと記録に残されることを望んでいるのだ。だから、皆さんも次に何かの調査やアンケートを求められた時には、ただ数を数えられる対象になるのだとだけ思うのでなく、世の中をあなたの望む方向にほんの少しだけ動かす力になるかもしれないとも考えてみてはいかがだろうか。


iConcertCal:あなたの演奏会の友!

  文: Glen McAllister <glen.mcallister@gmail.com>
  訳: 亀岡孝仁 <takkameoka@bellsouth.net>

最近まで私は Apple の Mac OS X Downloads pageMac OS X Downloads ページを定期的に見に行ったりはしていなかったのだが、最新特集されたダウンロードに行き当たってみて、これからはもっと頻繁に見に行くようにしようと思った。その問題のプログラムというのは、ちょっと気の利いた iTunes プラグインで iConcertCal と呼ばれるものである。これは、あなたの iTunes 音楽ライブラリに入っているアーティストとあなたの場所を基にしてコンサートの日取りを示すあなた固有のカレンダーを作成するものである。

このプラグインをインストールし iTunes を(再)立ち上げれば、iConcertCal が通常の iTunes ビジュアライザの代替選択肢としてでて来る。まず View > Visualizer > iConcertCal を選択し、次に View > Turn on Visualizer を選択して (或いは Command-T を押す) Visualizer をオンにする。都市と州名 (米国以外であれば国名)、そしてその都市からの半径 (マイルで) を入力する (これらのフィールドは見た目にはタイプイン出来る様には見えないかも知れないが、出来るのである)。

一旦あなたの場所を知れば、iConcertCal は - iTunes のウィンドウの中に - その地域内の会場で開催されるコンサートのカレンダーを iCal スタイルで表示する。何と言っても素晴らしいのは、あなたの iTunes ライブラリに既に入っているアーティストのものだけしか表示しないことである。このカレンダーは JamBase の様なライブ音楽サイトからの提供情報を元に生成され、そして毎週更新される。横にあるこれからのショーのリストから、或いはカレンダー自体の中にあるコンサートをクリックすると、あなたを JamBase 上のそのショーの入り口へと誘ってくれる。iTunes を元の通常のビューに戻すには、Command-T を押せばいい。

iConcertCal

未だ自分ではその人の音楽を持っていないミュージシャンのコンサートに興味があるというのであれば、そのアーティストの名前を ~/Library/iTunes/iConcertCal にある "iConcertCalOtherBands.txt" という名前のテキストファイルに書き込む (1行当たり1アーティスト) 事で iConcertCal にその検索を拡大するよう指示する事が出来る。それとは逆に曲は持っているがライブを見に行く事など考えてもいないアーティストの場合も結構あるであろう (iTunes Music Store からの毎週の無料ダウンロードを考えてみて欲しい;これは取っておきたいと思う程度には気に入った曲があっても、そのアーティストのライブに行く程ではないというのはよくあるであろう)。iConcertCal の検索に制限をかけるには、自分の見に行きたいアーティストだけの入った "iConcertCal" と呼ばれるプレイリスト - それはスマートプレイリストであっても良い - を生成すればよい。

iConcertCal といえどもそのデータソース以上には良くなりえず、時たまがっかりさせられる事もある。私が絶対行こうと思っているコンサートを見逃しているのである - それも 22-May-07 の London の Astoria である The National をである、これはどう見たって目立たないショーの一つとは言えないであろう。けれども、JamBase に加入してアーティストとショーの両方を自ら加える事は出来る、そしてそれが受け入れられれば、次回にその場所に対するあなたのカレンダー (そして他の人のも) がアップデートされる時には出現するはずである。こうすることで、もう既にクールなものを誰に対しても更にクールなものにする楽しさが味わえる。

[Glen の記事を編集している際、JamBase にアーティストを加えるというのは煩わしいものなのかどうか自分でも試してみようと思った、嬉しいことにはその結果はそうではなかった。という事でもうすぐ JamBase は私が今好みにしているジャズグループで New York City をベースにしている Dave's True Story のショーも載せ始めるであろう。-Adam]

iConcertCal は universal binary で Mac OS X 10.3 かそれ以降、そして (推奨) 最新版の iTunes を必要とする。Windows バージョンもある。その 340K のインストーラーは Mac OS X Downloads かこの製品のページからダウンロード出来る。これはフリーウェアであるが、iConcertCal サイトから PayPal による寄付も出来る。私も既にやりました!

[Glen McAllister は London Underground での 認可を受けた街頭ミュージシャンの一人であり、そしてフリーランスの IT コンサルタントでもある。]


Picnik はウェブ上の iPhoto

  文: Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
  訳: 羽鳥公士郎 <hatori@ousaan.com>

今日のウェブアプリケーションで何ができるかということについて、印象的な例を探しているなら、 Picnik をチェックしよう。これはオンライン写真サイトで、Apple の iPhoto と同じような、ほとんど同一といってよい編集機能と、iPhoto にいくらか似た共有機能を備えている。 Picnik の Edit タブには、自動補正、回転、切り抜き、拡大・縮小、露出補正、色の調整、画像のシャープ化、赤目の除去が行えるツールがある。さらに、Creative Tools タブには、写真を白黒やセピアにしたり、色を強調したり、画像をソフトにしたり、マット効果やビネット効果を適用したりといった特殊効果が用意されている。操作部は分かりやすく使いやすいし、何回でも操作の取り消しができる。ブラウザのウインドウを制約と感じる必要すらない。ウインドウの左上のPicnik という名前をクリックすれば、Picnik ウインドウが全画面表示になる。

写真はさまざまなところから読み込むことができる。オンライン写真共有サイト Flickr の自分のアカウント、自分のコンピュータ、あらゆるウェブサイト、Yahoo や Flickr の検索結果、さらにはウェブカメラに対応している。編集が終わったら、写真を Flickr に保存したり、電子メールで誰かに送ったり、自分の Mac に保存したり、ウェブサイトに電子メールで送ったり(Ceivaピクチャーフレームで共有するのに便利だ。詳しくは 2005-02-14 の "Ceiva と Mac" 参照)、自分のプリンタで印刷したりできる。印刷サービスを注文するという選択肢は用意されていないようだが、今では QOOP が Flickr の印刷パートナーとなっているので、Flickr 経由で QOOP のサービスを利用すればよいということなのだろう。

(iSight カメラで Picnik を使うには、Picnik ウインドウを Control-クリックまたは右クリックして、Settings を選び、下に並んでいるアイコンの右の方にある小さなビデオカメラをクリックする。するとポップアップメニューが現れるので、内蔵 iSight カメラの場合は USB Video Class Videoを、外付け iSight の場合は IIDC FireWire Video を選ぶ。何度か選択を繰り返す必要があるかもしれない。)

Picnik のいちばん楽しいところと言えば、気の利いた短いメッセージ、たとえば「空を塗っています」とか「サンドイッチのバターを塗っています」といったものが、長い時間がかかる処理の最中に表示されることだ。これはよいアイディアだ。

Picnik のパフォーマンスは実にきびきびとしている。私は Picnik をOmniWeb で使ってみたが、何の問題も感じなかった。1度 OmniWeb をクラッシュさせたことがあったが、Picnik はまだベータ版だ。Picnik では、1 GHz以上のプロセッサを搭載し、Mac OS X で動いている Mac を推奨している。比較的最近のウェブブラウザと Adobe Flash 9 も必要だ。

Picnik は、ベータ版の段階では無料だ。基本的な編集機能は将来的に無料のままだと約束されているが、正式に立ち上げられるときには、高度な編集機能とより多くのツールや機能が加わった有料のプレミアム版が利用できるようになる。今のところ、ほとんどの Mac ユーザは Pincik よりも iPhoto の方がより簡単で強力だと思うだろう。なにしろ、iPhoto は Mac OS X に統合された本格的なアプリケーションだ。しかし、Picnik は Flickr と緊密に統合されているので、Flickr を使い込んでいる人には興味深いだろう。また、Picnik はウェブベースのアプリケーションなので、iPhoto よりもずっと速く進化するかもしれない。Apple が iPhoto をアップデートするのは、ほぼ1年に1回だ。


Mac OS X のマウス加速問題

  文: Parrish S. Knight <psknight@verizon.net>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Mac OS X が素晴らしいことは確かだが、そこには一つ大きな欠陥があって、これがコンピュータの有用性に直接の悪いインパクトを与えてしまう可能性がある。それは、マウスの動きをポインタの移動に翻訳する際のやり方に関することだ。多くのユーザーにとって、Mac OS X がこの翻訳を実行する際の奇妙な方法のためにマウスを動かすのが何か不自然に感じられてしまう。業界用語で言えば、この翻訳の操作は「マウス加速曲線」と呼ばれている。このマウス加速曲線とは何なのか、Mac OS X の下ではその実装方法がどのように問題なのか、そういったあたりから話を始めていこう。

スピーディー・ゴンザレス -- マウスの動きを、そのまま一対一の比率でポインタの動きに翻訳するわけにはいかない。もしそんなことをしたら、17 インチモニタの対角線に沿ってポインタを動かすために、机の上でマウスを 17 インチ (43 cm) も動かさなければならないことになる。それでは到底実用的とは言えない。マウスを動かすためにものすごく広いスペースが必要になるし、あなたの腕もすぐに疲れてしまうだろう。(さもなければ、ひっきりなしにマウスを持ち上げては下ろすという動作を繰り返すことになるだろうが、それもまた面倒で疲れる作業だ。ただし、見ている分には面白いかもしれない。)

それを防ぐためには、比率を上げて、例えばマウスを1インチ動かせばポインタが3インチ動くようにすればよいのだろうか? いや、それでは単に一つの問題を別の問題に置き換えるだけのことになる。例えば、たいていのディスプレイでは、たとえ低い解像度であっても、標準的なウィンドウの上のところにあるクローズボタンと最小化ボタンの中心点同士の距離はせいぜい .25 インチ (6.4 mm) 程度しか離れていない。(より高い解像度ならばさらに距離は狭くなる。)ポインタとマウスの動作比率が3対1だとしたら、クローズボタンの中心から最小化ボタンの中心まで移動するにはマウスを .125 インチ (3.2 mm) だけ、それ以上でもそれ以下でもない長さだけ動かさなければならない。つまり、ほぼクレジットカード3枚分の厚さくらいの距離だ。それほどに細かい精度でマウスを動かすというのは、ほとんどの人にとって相当に難しいことだろう。もしもそんな細かい作業が始終要求されるのだとしたら、コンピュータを使うのは煩わしい仕事になってしまう。だから、単純な「X対1」という加速比率ではうまくいかない。Xが低過ぎればマウスをやたらに広いスペースで動き回らせなければならないことになるし、Xが高過ぎれば精密なポインタの移動が不可能になるからだ。

これを解決するために、オペレーティングシステムは双方の概念を併用している。つまり、高速のマウス移動においては高いX対1比率を使うことで机の上の狭いスペースでも素早くスクリーン上でポインタを動かすことができるようにし、反対に低速のマウス移動の際には低いX対1比率を使うことで、マウスの動きに驚異的な精度を要求することなくポインタを精密に動かすことができるようにするわけだ。

この解決法のお陰で、ユーザーは双方の世界の利点をどちらも享受することができる。ユーザーがマウスをごくゆっくりと動かしている時、例えば写真のタッチアップの細かい仕事をしているような場合には、マウス対ポインタの比率は1対1に(あるいはさらにそれよりも低い比率に)なっていることだろう。それならば、精密な移動でも簡単にできる。反対に、ユーザーがそれよりもずっと素早くマウスを動かし始めたなら、例えばスクリーンの反対側の隅の方へとジャンプしたいと思ったならば、それに応じてダイナミックにX対1比率が変わり、ユーザーがマウスの速度を速めるに従って比率も増え続け、決められた最大のX対1比率、例えば 9 対1とか 10 対1とかに達するまで変化してゆくのだ。最後に、ポインタが目標の地点に近づくに従ってユーザーが本能的にマウスの速度を緩め始めると、オペレーティングシステムはさきほどと逆のプロセスを実行し始める。つまり、再び比率を少しずつ減らしてゆき、ユーザーがポインタを目標の地点に正確に位置させることができるようにするわけだ。(これらすべての背後にある数学はかなり込み入ったものだが、それを知ればきっとあなたのマウスを見る目も以前とは違ったものになるだろう。)これらのプロセスがあって初めて、スクリーンの左下のあたりで写真のタッチアップをしていたユーザーが、マウスをそのままスッとほんの短い距離を動かしただけで、スムーズにスクリーンの右上の方にあるアイコンへとポインタを移動させることができるようになる。

ちょっとグラフ用紙を一枚持ってきて、標準の X-Y 座標軸を書き(高校で習った数学を覚えているか?)X 軸がポインタの速度を表わし Y 軸がマウスの速度を表わすようにして、そこに今説明した比率の変化の様子をグラフで描けば、原点の近くではかなり傾斜した線で、初めのうちは上に向けて登っていくが、そのうち X の値が大きくなればなるほど傾斜が平らに変わっていく、という感じの曲線になる。この曲線が「マウス加速曲線」と呼ばれる。

急カーブ注意 -- では、Mac OS X のマウス加速曲線のどこが問題なのだろうか? 簡単に言えば、曲線の形が間違っているのだ。マウスの動きが自然に感じられるためには(少なくとも多くの人たちがそう感じるには)曲線の形が適度に穏やかな傾斜で登り始め、それから次第に X が増えるに従って少しずつ平らになっていく必要がある。けれども Mac OS X の曲線は、急過ぎる傾斜で始まって、それからかなり長い間ずっと急傾斜のままで経過した後で、いきなり急激に平らな傾斜に変わる。実用上このことが何を意味するかというと、ユーザーが点 A から点 B までポインタを動かそうとマウスを使っても、ポインタが思ったほど滑らかに動いてくれないということがしばしば起こる。するとユーザーはその動きの渋さに対応しようとして自然とマウスを速く動かしてしまうが、そうすると突然ポインタが点 B を飛び越してスクリーンの反対の端に向かって飛んで行ってしまうのだ。快適で使いやすい加速曲線ならば実際にグラフの曲線もカーブらしく見えるものだが、Mac OS X の曲線は、むしろ断崖絶壁の形のように見える。

以前からこうではなかった。Mac OS 9 でもそれ以前のシステムでも、曲線の形は今とは違っていて、もっと自然なマウスの挙動を提供してくれていた。それなのに、理由は分からないが、Apple はどうやら何か壊れてもいないものを修正しようとしたのだろうか、曲線の形を変えてしまったのだ。この変更について Apple からは何の発表もなかったし、私の知る限り同社の技術仕様書のどこを見てもそのことは記されていない。(それとは対照的に、Microsoft はマウス加速曲線が Windows XP ではどのように動作するか、公開されたウェブページできちんと説明している。)これが理由で、多くの人たちはこの変更に気付かないまま「どうしてこのマウスは変な感じがするのだろうか」と思案しているわけだ。マウス加速曲線についての細かな専門的知識など、持っている人は少ないのだから。(誰がそれを責められようか? これは決して単純な算術ではない!)

私自身も長い間、そういうタイプの中の一人だった。いろいろなマウスを次から次へと試してみたり、さまざまなマウスパッドやその他の材質の面を工夫したりして、いったいどうすればマウスが「前みたいにちゃんと動く」ようになるのだろうかと思案し続けていた。そういう状態が何ヵ月も過ぎて、たくさんの検索語を Google し続けた挙句の果てに、ある日やっと私は加速曲線というものに気付き、Apple がこっそりとこれを変更したことを知ったのだった。私が何年間か Classic Mac OS を使っていた経験があって、これはどこか直すべき問題点があるのだという確信があったことが私には幸運だった。ごく最近に初めて Mac を使い始めたという人ならば、その利点も持たず、問題の存在に気付きもしなかっただろう。

新しい曲線による不自然な動きは、多くのユーザーにとってトラブルの種となっている。例えばウェブサイト MacSlash の“Sludge”というユーザーは「マウスのフィーリングが OS X では XP や Linux/XFree86 に比べてどんなにひどいものか信じられないくらいだ」と不満を述べているし、PlasticBugs.com の Scott Moschella は、曲線の低速側の端が長い範囲にわたって急傾斜過ぎることを形容して「マウス加速のせいで、OS X におけるマウストラッキングは、まるで泥の中でマウスを動かしているかのようだ」と言っている。

もちろん、すべてのユーザーがこれに不満を持っているわけではない。新しいポインタ挙動の方が好きだという人たちもいるし、全然違いが分からないと言う人たちさえいる。けれども、新しい曲線のためにトラブルを抱えている人たちにとっては、問題は深刻だ。それは、単にポインタを望みの場所に動かすのに苦労するというだけの話ではない。

マウスの動きが不自然に感じられると、ユーザーは無意識のうちに手と手首の筋肉を使ってその不自然さを埋めようとしがちだ。どうひいき目に見ても、それは不快なことだ。でも最悪の場合、これは肉体的な痛みを発生する問題となる。私の場合、ほんのわずかの時間が経っただけで手首が痙攣し始める。そのまま 20 分ほど経つと、私の前腕の大部分が激しく痛み始め、その時点で私はマウスを使うのを止めなければならなくなる。

この種の困難を抱えたままマウスを使い続けて長期間が過ぎると、反復ストレス傷害 (repetitive stress injury, RSI) という名で知られている回復不能な肉体的損傷を受けてしまうことがある。私もその一人だ。MacSlash サイトのある匿名ユーザーは「RSI を招く予測できない狂気の挙動、それこそ Mac のマウス加速曲線だ」とまで罵り声を挙げている。また LifeHacker.com では“PhotoHobo”というユーザーが「OS X で私が一番困るのは、マウス加速がひど過ぎることだ。日々 RSI と戦い続けている身には、これはどうにも我慢できない」と苦言を呈している。ウェブを検索すれば、同様の意見を発言したり、似たような困難に苦しんでいるユーザーたちはいくらでも見つかるだろう。

自分のカーブを再調整 -- というわけで、問題は現実にあって、しかも切迫している。少なくとも私たちのうち何人かにとっては。では、それに対して何か対策はないのだろうか? Mac OS X 自体には、加速曲線を調整できるような設定項目はない。時々、システム環境設定の Keyboard & Mouse パネルで Tracking Speed の設定を変えればいいのではないかという助言が善意のユーザーから届くこともあるが、それでは完璧な解決にはならない。問題は速度そのものにあるのではなくて、加速曲線にあるのだから。トラッキングの速度を変更しても、曲線の形は変わらない。ただ、曲線全体が大きくなったり小さくなったりするだけで、例えて言えば同じ場所から断崖絶壁の写真を撮るのに望遠レンズを(あるいは広角レンズを)使うようなものだからだ。

つまり、Apple は Mac OS X の設定項目を一つ抜かしているということだ。けれども幸いなことに、たくさんのサードパーティの製品がその空白を埋めようと試みてきた。そして、その大部分はなかなかうまく結果を出している。例えば、いくつものマウスメーカー、例えば Kensington のようなところも、自社のマウスドライバやソフトウェアを使って Mac OS X のマウス加速曲線を別のもので置き換えられるようにしている。この方法のただ一つの欠点は、そのソフトウェアが通常その特定のハードウェアにしか使えないことだ。

既にマウスを持っているので新しく買い替えたりしたくないという人には、他にもいろいろ解決法があって、これらはそれぞれに長所と短所がある。 MouseFix (フリーウェア)は、ごくシンプルなプログラムで、Mac OS X のマウスドライバの使ういくつかの数値を変更することで曲線をより自然なものにしようとする。けれども、技術指向の強くない人にはインストールするのが難しいし、プリセットとして付属している設定をカスタマイズすることはできない。

USB Overdrive ($20) はシェアウェアだが試用期間は定められていない。マウスの挙動について多岐にわたるオプションを提供しているだけでなく、他の USB 機器の挙動まで調整できる。あなたが現在どのアプリケーションを使っているかに応じて違った挙動をするように設定することさえできる。これの主な欠点は、その名の示す通り、USB 機器だけしかサポートしていない点だ。もしもあなたが Bluetooth マウスを使っているなら、これは使えない。(作者の Alessandro Levi Montalcini によれば Bluetooth のサポートも追加する予定とのことだが、その時期については何も明言がない。)

SteerMouse ($20) もシェアウェアで、マウスの挙動に関して多様なカスタマイズのオプションを提供している上に、USB Overdrive とは違って SteerMouse は Bluetooth マウスもサポートしている。主な欠点は、これが Apple の Mighty Mouse を念頭に置いてデザインされていることで、他のマウスでも動作するものの、サポート範囲がより限定されたものになってしまうことがある。また、試用期間がたったの 15 日なので、ソフトウェアを十分に探究するには長さが足りない。自分にとって最も快適な設定がどれかを見い出すには時間がかかるからだ。私はこれが理由で結局 SteerMouse は使わずに USB Overdrive の方を選んだ。SteerMouse は、私がそれに十分馴染むより前に試用期限が切れてしまった。その点 USB Overdrive は、試用期限が定められていないので、どのマウス設定が自分に一番適しているのかを見つけ出すための機会を十分に私に与えてくれた。

願わくは、Apple がマウス加速曲線を変更したのが間違いだったと認識して、以前のものに戻してくれればと思う。さらに贅沢を言えば、Keyboard & Mouse システム環境設定パネルの中に設定項目を追加して、速度とは別に加速曲線もユーザーが設定できるようにしてもらえれば素晴らしいと思う。それが実現するかどうかの予測は人によってさまざまだろうが、いずれにしても、現時点での我々は、まず問題がどこにあるのかをきちんと理解し、その上でサードパーティの解決法を使って問題を回避することによって、我々自身の手と、手首と、心の健康とを、守ろうではないか。

Mac OS X がオペレーティングシステムにおけるフェラーリであることは、我々みんな知っていることだ。残念なことに、そのステアリングにはデザイン上の欠陥がある。でも、メカニックがほんの少し手を入れるだけでそれは修正できることなのだから、本家のエンジニアたちが問題の所在を認識して修正してくれるのを、我々はみんなこぞって心待ちにしているのだ。

[Parrish S. Knight はワシントン首都圏にある IT コンサルティング会社のシステム管理者だ。彼の興味は政治・映画・ファンタジー・SFなど多岐にわたる。Mac OS X のマウス問題について言葉を広めたいというだけでなく、彼の主張は自閉症への理解を深める運動や、公民の自由権運動などにも広がっている。]


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  文: TidBITS Staff <editors@tidbits.com>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

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