TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#883/11-Jun-07

今週はさまざまなニュースが山盛りだ。まず、私たちの電子ブック“Take Control of Troubleshooting Your Mac”がリリースされ、TidBITS のスタッフたちが MacTech 25 で栄誉に輝き、iPhone が Qualcomm との特許に関する裁定を得て飛び交う弾丸をかわし、それから機能を拡張した MacBook Pro シリーズのリリース、意外だった Adobe GoLive 9 リリース、自動修正機能を盛り込んだ Typinator 2.0、Apple のアプリケーションとの統合を向上させた NetNewsWire 3.0、Mac 用の新たな遠隔操作オプション、それに Mac で Windows を走らせることに関する3つの発表のニュースもある。けれどもそんなことをすべて差し置いて、最大のニュースはサンフランシスコからやって来た。Steve Jobs が WWDC のキーノートで、Mac OS X 10.5 Leopard と、(何と!) Windows 用の Safari をお披露目し、また開発者たちがどうやって iPhone 用アプリケーションを書けるのかを発表した。

記事:


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TidBITS スタッフ、2007 MacTech 25 の栄誉を受ける

  文: Jeff Carlson <jeffc@tidbits.com>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

わが同僚の TidBITS スタッフたち、Adam Engst、Tonya Engst、Glenn Fleishman、Joe Kissell、それに Matt Neuburg に、おめでとうの言葉を! 彼らは今回、毎年恒例となった MacTech 25 リストに名を連ね、Macintosh のテクニカル・コミュニティーにおける最も影響力ある人物と認められた。(2006-07-17 の記事“Adam と Tonya Engst が MacTech 25 で栄誉に輝く”も参照。)Adam はこれまでもこのリストや MDJ Power 25 に毎年のように載っているし、また MacDirectory では「Macintosh コミュニティーの精神を体現する予言者たちトップ・テン」にも挙げられているが、今回はこんなにも大勢の他の TidBITS メンバーたちが、彼と同様に TidBITS や Take Control を通じての Mac コミュニティーへの寄与を認められたことが特に喜ばしい。また、私たちが協力して働いている他のグループ、例えば Macworld、Peachpit Press、それに MacNotables などの人たちも大勢リストに載せられている。

当然ながら、今年の MacTech 25 に載った他の人たちも、皆同じく記憶に留めておくべきだ。その人たちの多くはソフトウェア開発者や、影響ある Macintosh ソフトウェア会社の代表者だ。完全なリストは、 この記事のウェブ版でご覧頂きたい。


Adam と Tonya、O'Reilly の Tools of Change for Publishing で講演

  文: Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

わが家の夕食のテーブルでの毎日の話題は、いろいろなツール、経済、標準、あるいは出版の未来、といったものだ。こうした話題にあなたも興味があるなら、ぜひ O'Reilly Tools of Change for Publishing カンファレンスに出席してみてはいかがだろうか。これは 2007 年 6 月 18 日から 6 月 20 日まで、カリフォルニア州 San Jose で開催される。初日にはいくつかの半日チュートリアルがあり、残りの二日間は 45 分セッションで埋め尽くされる。私たち夫婦は二人揃って参加できるのを楽しみにしている。会場では二人が分かれるのでいつもの二倍のことを見聞きできるからだ。セッションが重なって出席できないのは悔しいことだから。私は協同著作ツールについて、特に私たちが長年協同出版を続けてきて学んだことに注目しながら話をすることになっている。また、速いペースで進み続ける出版の世界に付いて行くためにはそのツールがどんな風に進化すべきなのかということについても考えを述べてみたい。一方 Tonya は、製作中の本を販売するためのプラス面とマイナス面について語るパネル討論に参加する。参加したい方は、クーポンコード“toc07scd”を使えば入場料が 25% 割引になる。


DealBITS 抽選: Tom Bihn のラップトップ用鞄、ケース、ストラップ

  文: Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

2003 年にスタートした時の最初の DealBITS 抽選で、私たちは Tom Bihn の Brain Bag とラップトップケースを賞品にした。その時の応募者数の記録は、今でもまだ破られていない。1,300 人近くにのぼる応募者があったのだ。それはさておき、またまた Tom Bihn が賞品を提供してくれた。今回は前回よりもさらに素敵な賞品だ。Tom Bihn Empire Builder ブリーフケース 、Brain Cell ハードサイドラップトップケース、それに Absolute ショルダーストラップ、合わせて $225 相当となる。私は個人的にどれも持っていないが、見たところとても良く出来ているようだ。

Tom Bihn は当選に漏れた応募者にも特別価格で提供してくれるので、ぜひ奮って DealBITS ページで応募して頂きたい。寄せられた情報のすべては TidBITS の包括的プライバシー規約の下で扱われる。どうかご自分のスパムフィルターや challenge-response システムに注意されたい。当選したかどうかをお知らせする私のアドレスからのメールを、あなたに受け取って頂くのだから。また、もしもあなたがこの抽選を紹介して下さった方が当選すれば、紹介に対するお礼としてあなたの手にも同じ賞品が届くことになるのもお忘れなく。

[訳注: 応募期間は 11:59 PM PDT, 17-Jun-2007 まで、つまり日本時間で 6 月 18 日(月曜日)の午後 4 時頃までとなっています。]


DealBITS 抽選: BeLight Software の Live Interior 3D の当選者

  文: Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

先週の DealBITS 抽選で当選し、BeLight Software の Live Interior 3D($79.95 相当)を受け取ることになったのは、msn.com の William Causey、dontgotmail.com の Susan Alles、not-pc.com の Jeremy Meadows の3名だ。おめでとう! また、Jeremy は Randall Meadows に DealBITS を紹介されての応募だったので、お礼の印として Randall にも同じ賞品が贈られた。残念ながら当選しなかった皆さんもがっかりすることはない。BeLight はこの DealBITS 抽選に応募して下さった方全員に、2007 年 6 月 21 日までの期間 Live Interior 3D を 15% 割引の $67.95 で提供している。今回 DealBITS 抽選に応募して下さった 1,195 名の皆さんに感謝するとともに、これからも多くの方々に参加して頂ければと願っている。


Apple iPhone、裁定による禁止は受けず

  文: Glenn Fleishman <glenn@tidbits.com>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Apple は今ごろ安堵の溜め息をついているに違いない。iPhone の中に、第3世代 (3G) セルラーデータのネットワーキング・テクノロジーは含まれていないのだから。これは極めて異例のことだが、先週、米国国際貿易委員会 (U.S. International Trade Commission, ITC) から裁定 が下り、Qualcomm 製のシリコンチップを使用したすべての新しい 3G 電話の輸入が禁止されることとなった。Bloomberg News の報道 によれば、iPhone には Qualcomm 製チップが全く使われていないことが確認されたという。

ITC は 2006 年 10 月にも、Qualcomm がそのセルラーチップのライバルメーカーでもありメジャーな Wi-Fi チップメーカーでもある Broadcom の所有する特許を侵害したとの裁定を出したことがある。しかしながら、先週の裁定が出るまでは、実際にどのような処置が下されるのかは明らかでなかった。今回の輸入禁止裁定は Qualcomm の販売するすべての 3G チップに適用されるが、ほとんどの電話機は現実に海外で生産されてから輸入されている。ただし裁定によれば、2007 年 6 月 7 日以前に輸入されていた機種の電話機は引き続き今後も輸入が許可されるという。

さて、iPhone は、ローカルネットワークには Wi-Fi を使い、セルラーネットワークには EDGE を使っている。EDGE は、いわゆる 2.5G のセルラーテクノロジーに分類される。この 2.5G(第2と半分世代)というのは変な名前だが、主に米国国内でリリースされた、2G(低速モデム速度)と 3G(ローエンドのブロードバンド速度)との中間に位置するような基準で、3G が実際の市場に展開できる準備の整わなかった長い待機期間の中で生まれてきたものだった。EDGE はダイヤルアップモデムのほぼ3倍のバンド幅を提供する。つまり、理想的な状況では 150 Kbps 程度の速度だ。

いわゆる評論家やジャーナリストたちの多くは、Apple が iPhone に(容量に応じて)$500 から $600 という高額な値札を付けながら、一方では 3G よりも低速のデータ接続しか提供しないことで、業界の波に乗り遅れていると批判したものだった。もちろんこれは、スマートフォン各社がまだ少しずつ 3G ネットワーキングを追加し始めているに過ぎない段階であること、一つの機種に 3G と Wi-Fi を同時に提供しているものはまだほんの少数である(しかもシームレスなネットワークの受け渡しはまだ誰も実現していない)こと、そして、他のスマートフォンが何百ドルもすることもすべて忘れ去っての批判だった。でも、今回新しい Qualcomm ベースの 3G フォンが禁止の裁定を受けたことで、結局最後に笑うのは Apple だった、ということになるのかもしれない。

この裁定は即時有効となった。そして、Qualcomm、Verizon その他の各社は既にこの裁定を覆そうと動き始めている。合衆国大統領によって覆されない限り、これは 60 日以内に最終的なものとなる。ホワイトハウスからの発表によれば、最終的な判断を U.S. Trade Representative(通商交渉担当大統領特別代表)に任せるという 2005 年以来の方針は変わらないということだ。つまり、U.S. Trade Representative の Susan Schwab から新たな決定がなければ、Qualcomm としては連邦裁判所に控訴するしかないということだ。


Apple、MacBook Pro を改良

  文: Jeff Carlson <jeffc@tidbits.com>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Apple は先週、ポータブル機の MacBook Pro シリーズを改訂し、より高速のプロセッサ、向上したグラフィックス能力、802.11n のワイヤレス・ネットワーキング(イネーブラを走らせる必要がなくなった)や、LED テクノロジーを使ったバックライト付きのスクリーンなどを盛り込んだ。去年の 11 月に MacBook Pro を購入した私としては、私のマシンもまだまだ私の目的には完璧に適した良いマシンであって、私の中で疼いているテクノ願望の力に呑み込まれないように耐えなければならない(2006-11-20 の記事“我が MacBook Pro、財布痛めず力持ち”参照)ということは十分に承知しているが、でもそれは決して易しいことではない。

新しい 15 インチと 17 インチの機種は、2.2 GHz または 2.4 GHz で走る Intel Core 2 Duo プロセッサを装備している。この新しいチップは最近発表されたばかりの Intel "Santa Rosa" ファミリーに属するもので、電力消費とバス速度(800 MHz、従来モデルの MacBook Pro に使われていた Core 2 Duo プロセッサでは 667 MHz だった)に改良が施されている。また、このチップは最大 4 GB の RAM を使うことができ、従来の最大 3 GB から向上している。ベース構成では 2 GB のメモリが内蔵される。グラフィックス関係では、今回の MacBook Pro は 128 MB または 256 MB のメモリを持つ Nvidia GeForce 8600M GT プロセッサを使っている。

これだけのメモリを持つことは、例えば Final Cut Studio のように集約的なグラフィックス処理を必要とするアプリケーションにおいて便利なだけでなく、17 インチモデルの方に($100 追加の)オプションで付く 1920 * 1200 ピクセルのディスプレイを動かすパワーとしても重要だ。それだけの解像度があれば、1080i の高精細ビデオをネイティブな解像度で観たり編集したりするにも十分だ。ただし、デフォルトの構成は以前と変わらず 1680 * 1050 ピクセルをネイティブな解像度としている。

今回の MacBook Pro はまた、電力消費の少ない発光ダイオード (LED, light-emitting diode) を Mac としては初めてディスプレイのバックライトとして使っている。ただし、今のところこれは 15 インチモデルの方だけだ。Steve Jobs は 5 月に Apple のウェブサイトに載せた公開書簡“A Greener Apple”で(2007-05-07 Steve Jobs、緑を語る 参照) 、LED バックライトのディスプレイについても触れていた。これは、蛍光灯によるバックライトを LED で置き換えることによってコンピュータに使われる有毒な水銀の量が減らせるからだ。また、Apple から出されたコメント によれば、LED のバックライトのお陰でバッテリ充電が必要となるまでに使える時間が 30 分から 60 分程度伸ばせるかもしれないという。

ストレージも増えた。15 インチモデルでは、5400 rpm で動く 120 GB または 160 GB のハードドライブを搭載し、オプションで 7200 rpm の 160 GB ドライブまたは 4200 rpm の 200 GB ドライブもある。17 インチモデルの方は標準で 160 GB ドライブだが、その代わりに 7200-rpm の 160 GB ドライブまたは 4200-rpm の 250 GB ドライブが付けられる。ただし、回転数の高いドライブだからといって必ずしも実用上で動作が高速になるとは限らない。

以上に述べた以外のほとんどの点では、これまでの世代のものとそれほど変わらない構成となっている。FireWire 400 ポート 1 基、FireWire 800 ポート 1 基、USB 2.0 ポート 2 基 (17 インチモデルでは 3 基)、8 倍速のスロットローディング SuperDrive、内蔵の iSight カメラ、バックライト付きキーボード、ExpressCard/34 スロット、Bluetooth 2.0+EDR 短距離ワイヤレスネットワーキング、それに gigabit Ethernet を装備している。

これらの新型 MacBook Pro モデルは、いずれも従来の世代のものと同じ価格で現在既に入手可能だ。15 インチモデルに 2.2 GHz プロセッサ、120 GB ハードドライブ、128 MB メモリの Nvidia カードという構成で価格は $2,000 だ。15 インチモデルに 2.4 GHz プロセッサと 160 GB ハードドライブ、さらに 256 MB メモリの Nvidia カードという構成ならば $2,500 となる。そして、17 インチモデルでは 2.4 GHz プロセッサ、160 GB ハードドライブ、256 MB メモリの Nvidia カードが付いて $2,800 だ。


そして本日のサプライズゲストは... GoLive 9

  文: Jeff Carlson <jeffc@tidbits.com>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

時には、間違えるのも良いことだ。いや、この場合もっとふさわしい言い方をすれば、さしあたり間違っておくのも良いことだ。

先週、Adobe が GoLive 9 をリリースしたニュースは私を驚かせた。GoLive は、同社が Dreamweaver を買収した時以前の、同社の _前代の_ 旗艦ウェブデザイン用アプリケーションだった。今回の GoLive 9 は Universal Binary として Intel ベースの Mac をサポートするようになり、InDesign と似た実装で段落スタイルや文字スタイルを追加し、Creative Suite 3 における新しいユーザーインターフェイスを引き継ぎ、Place コマンド(これも InDesign のものと似ている)を追加、またサイト管理の手順を単純化し、他の Adobe アプリケーションとの相互作用も可能になった。GoLive 9 はまた自分自身をパワフルな CSS (Cascading Style Sheets) ツールとして再発見しているようにも見える。その CSS 機能は最近のバージョンで既になかなか良いものとなりつつあったのだが。

私は、GoLive にはもはや開発の努力は傾けられないものと思っていた。少なくとも、GoLive 9 に結実したほどの大きな開発作業が実現するとは全く期待していなかった。2005 年に Adobe が Macromedia を買収して以来(2005-04-25 の記事“Adobe、Macromedia を飲み込む”参照)Glenn Fleishman と私は、きっと GoLive はどこかに売り払われるか、その不幸な兄弟 FreeHand と同じく野原に放置されるかする(2007-05-21 の記事“さらば FreeHand”参照)のだろうと思っていた。Dreamweaver が基本的に GoLive を市場で打ち負かしたのであって、、その事実は私たちが共著した本“Real World Adobe GoLive”の売り上げが振るわなかったことに如実に表われていた。

それから、去年の末になって、Adobe は公式に GoLive を Creative Suite から外して代わりに Dreamweaver を組み込み、そのため GoLive を多くの人が依然として使い続けている唯一の動機までも消えてしまったと思われた。つまり、バンドルの一部だったから使っていたというわけだ。(2006-09-18 の記事“Adobe、GoLive を Creative Suite から追い出し、Acrobat 8 をりリース”を参照。)そして、今年の 4 月になってやっと Creative Suite 3 が出荷された時、GoLive の影はもはやどこにも見えなくなっていた。(2007-04-16 の記事“Adobe、Creative Suite 3 出荷、ビデオ関係ベータ版提供”を参照。)

言うまでもなく、今回のリリースがあっても私としてはまだ Adobe における GoLive の未来に楽観的になるわけには行かない。私の推測を言えば、この仕事を締めくくるために必要な開発作業は既に十分投資され尽くしたと思われ、その一方でウェブデザイナーたちのコアグループは今でも GoLive のアプローチの方を好んでいると思われる。けれども Adobe の製品ページを見ると、やはりはっきりとしたリンクで GoLive から Dreamweaver に切り替えるための情報のページが示されている。そのページの最初の行にはこう書かれている:「Adobe GoLive 9 ソフトウェアを購入する前に、ぜひ Adobe Dreamweaver CS3 をご検討いただきたい。Dreamweaver CS3 こそ、ウェブサイトやウェブアプリケーションをデザイン・開発・維持するためのツールとして市場の先頭に立つものなのだから」と。

別の言葉で言えば、GoLive 9 をあなたが購入するのは完璧に結構なことだけれど、しかもわが社はそれに多大なる労力を注ぎ込んできたのだけれど、それでもわが社はそれをお勧めはしません、と言っているのだ。

GoLive 9 の価格は $400 で、GoLive 6、Creative Suite または Creative Suite 2(ただし、注意すべきは、Creative Suite 3 が _含まれていない_)からのアップグレード価格は $170 となっている。30 日間有効の無料試用版が 323 MB のダウンロード.で入手可能だ。


Typinator が 2.0 に

  文: Matt Neuburg <matt@tidbits.com>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

私はかなり優れたタイピストだが、それでも私の頭の中の考えの方が、いつも私の指よりも先に走って行ってしまう。だから、よく使う単語や文章が、その略語をタイプするだけで入力できるようなユーティリティがあればありがたい。そのようなユーティリティは、同時にタイプミスをライブで修正してくれるメカニズムとしても動作できる。それにはあなたの指がよく犯す間違い、例えば“the”の中で“h”と“e”を入れ替えてしまうような間違いの綴りを「略語」として設定しておけばよいだけだ。このことができるユーティリティの中では、私がこれまでに使ってみたどんなものと比べても、やはり Ergonis Software の Typinator こそが最もシンプルかつ最も信頼できるものだ。インターフェイスは明瞭だし、わかりやすさと使いやすさを犠牲にすることなく Typinator をパワフルかつ柔軟なものにするのにちょうど十分な分量の、適切なオプションが組み込まれている。TidBITS が最初に Typinator をレビューしたのは、2005-06-27 の“あなたがタイプし、Typinator が応える”だった。今週ご紹介したいニュースは、Ergonis がそのバージョン 2.0 をリリースしたというものだ。

Typinator は普通のアプリケーションだ。(あの恐るべき Input Manager ではない。)あなたがタイプするのを観察して、そのタイプが行なわれているアプリケーションをコントロールする。そこで利用されるのが Mac OS X のアクセシビリティ機能だ。(技術的用語が分からないとおっしゃる方は私の記事、2006-02-20 の“Input Manager は悪魔の業か?”や 2003-03-10 の“Mac OS X でスクリプト化不能だったことを可能にする”をご覧いただきたい。)そのインターフェイスはたった一つ、一枚の環境設定ウィンドウだ。このウィンドウは上部にあなたの設定した略語のセットの一覧(このセットというのが今回のバージョンの Typinator での大きな新機能の一つだ)がリストされ、その下の方に現在選択された略語セットに属する略語の一覧がリストされる。

略語セットが便利なのは、それぞれのセットに使用可能・使用不可の設定ができるからだ。副次的なダイアログを使って、略語セットに関する特別の設定をしたいアプリケーションのリストを決めておく。個々の略語セットは、それらのアプリケーションの一つずつについてと、そこに載っていない他のアプリケーションすべてについて、それぞれそのセットを使用可能にするか使用不可にするか選んで設定できる。だから、例えばある略語セットは BBEdit においてのみ動作し「その他すべてのアプリケーション」では使用不可とする、ということができる。また、Typinator 2.0 にはよく間違ってタイプされる単語を集めた3つのセット(英語、ドイツ語、フランス語に1つずつ)が付属している。

個々の略語セットにいくつかのオプションを設定することもできる。単語の冒頭が一致した時に自動的に展開するか、それともそれが一つの単語としてタイプされるのを待って展開するかを選べるし、あなたがタイプした略語の大文字・小文字の違いを区別して展開するか、それとも無視して展開するか、あるいは大文字・小文字に応じて展開するかの3つのうち1つを選べる。この「応じて展開」というのは、例えば“FYI”とタイプすると“For Your Information”と展開されるが“Fyi”とタイプすると“For your information”と展開されるという意味だ。

基本的に以上が機能のすべてだ。でも、この新バージョンを紹介するという私の立場から言えば、もう一つ、あるとてもクールな新しい追加機能を紹介しない訳には行かない。展開に際して、展開後に挿入ポイントをどこに持ってくるかをあらかじめ指定しておくことができ、さらに、その時点でクリップボードに入っていた内容をその展開内容の中の特定の場所に自動的にペーストすることもできるのだ。だから、例えば“wow”という言葉をコピーしてから略語の“em”をタイプすると、“wow”という言葉が EM HTML タグに挟まれて、その“wow”の直後に挿入ポイントが来る、という所まで一瞬で出来上がるようになるわけだ。こうした種類の賢くて柔軟性のあるクリップボード挿入機能は、例えば BBEdit のようにアプリケーションに装備されていることもあるが、この Typinator があれば、それがどこでも使えるようになるということだ。

Typinator の価格は2年間のライセンスで $20 だ。つまり、そのライセンスを購入してから2年間経ってその後も引き続きアップグレードを受けたいならばその時に追加料金を払わなければならない。ダウンロードサイズは 2.4 MB、Universal Binary で、Mac OS X 10.3.9 かそれ以降を要するが、10.4 が推奨されている。Typinator は無料で試用することができるが、ライセンスを購入するまでの間はいくつか特別の挙動が組み込まれている。たしか、TextEdit で使う時を除いて展開が実行される度に Typinator から督促が出る、というものだったと思う。

スタッフ円卓会議 -- Typinator やその他の自動補完ユーティリティを使っているのは私だけではない。Adam はずっと以前から他のアプリケーションで自動修正機能を使っているし、彼はまた Typinator も使い始めている。

[Adam Engst] 略語を展開するユーティリティが私の心を揺り動かしたことはない。なぜなら、私は結構速くタイプできるので、比較的長い単語や文章でも略語や展開キーを覚えるよりタイプしてしまう方が楽だからだ。でも、この Typinator の新しい自動修正機能は本当に気に入った。800 個以上にも及ぶタイプミスと修正展開のデータセットが付属(英語・フランス語・ドイツ語の3つのセットがある - もちろん私がフランス語やドイツ語でタイプミスをするという話ではないが)していて、Typinator は私がどんなアプリケーションを使っている時も修正を施してくれる。私は Eudora や Microsoft Word の自動修正機能に慣れてしまったので、他のアプリケーションにないのが不満なのだ。

私の希望を言えば、Ergonis はぜひともコンテクストメニューを追加して、よくあるタイプミスを手軽にリストに追加できるようにして欲しいと思う。そういうものの追加は文章を書いている最中にできるようになる方が楽だから、いちいち Typinator に切り替えなくてもよいようになれば嬉しい。

[Matt Neuburg] 私が BBEdit を使って TidBITS の記事を書いている時は、Typinator よりもさらに便利なもう一つ別のユーティリティを使っている。それは Michael Tsai の書いた BBAutoComplete だ。(Michael の作品には他にも SpamSieve など非常に重要なものがいくつもある。)BBAutoComplete は、たった一つのことだけをするが、それこそ素晴らしく見事なトリックだ。通常何かキーボードショートカットを使ってそれを呼び出すと、現在の挿入ポイントの直前にある文字列を読み取って、その書類にある他のすべての単語を検索し同じ文字列で始まる単語を探す。そういうものがあれば、あなたがたった今タイプした文字列を補完してその単語に変えてくれる。もしもそれが欲しい単語でなかった場合は、もう一度キーボードショートカットを押せば別の単語に補完し直してくれる。オプションとして、BBAutoComplete は同じアプリケーション内で現在開いている他の書類も検索できるし、Mac OS X 内蔵のスペルチェッカーにある単語リストにまで頼ることもできる。ただ、私は現在前面にある書類の中でしか使わないし、一般的に言って特定の技術的用語にのみこれを使っている。(例えば“TidBITS”“SpamSieve”あるいは“BBAutoComplete”といった単語だ。そう、今私はこの3つの単語をすべて BBAutoComplete で入力したのだ。)BBAutoComplete はほんの数個のアプリケーションでのみ動作する。これは、その魔術を実現するために本格的なスクリプト機能を前提として要求するからだ。動作するアプリケーションとしては例えば BBEdit や Microsoft Word がある。何より素晴らしいのは、無料だということだ!

「無料」と言えば、ここでもう一度 Typinator に戻って、その価格モデルの実際について考えてみよう。確かに、$20 というのは実際非常に手ごろな価格だ。けれど、アップデートを受け続けるためには2年ごとにお金を払い続けなければならないというのは、私から見れば、つまるところ最終的にいくら払わされるのか分かったものじゃないという気がする。2年分のお金を払ったのに、その2年が過ぎて間もないある日、Ergonis からバグ修正版が出てあなたがずっと直して欲しいと願い続けていた問題が直っていたとしたら、何か騙された気がしないだろうか。実際、これこそ Typinator 2.0 で起こったことなのだ。Typinator 2.0 が出たのは Typinator 1.0 が出てからちょうど2年と1ヵ月後だった。ただし、実際には、Ergonis はこの事実をきちんと認識して旧版のライセンス期間をこっそりと延長してくれていた。でも、まさにそこが私の言いたいところなのだ。彼らは、この延長を秘密裏に実行したのだ。(その延長の事実が Typinator から通知されることはなかった。実際、私の使っていた Typinator は先月はっきりと無料アップデート期間が過ぎたと言ってきた。)それも、彼らはあくまでこれを自由裁量で実施したに過ぎない。私の見方を言えば、あなたがお金を払った2年の間に、この状況では基本的に何が起こるか全く分からない(ひょっとしたら何も起こらないかもしれない)ということになる。つまり、そのプログラムがバグもなく完璧に満足できるものか(そんなことが実際にあったのはいつのことだったろうか?)それとも、適切な期間のうちに適切な程度の改善を施したものが受け取れるか(もちろん何も保証はない)あなたはそういうことを賭けてギャンブルするというわけだ。さらに、この価格スキームは、プログラムに素早く飛びついた人にペナルティを課す結果となる。私に言わせれば、そういう人たちこそが真っ先にバグや不足点に苦しめられたわけで、そのお陰で将来の改善が可能になったことに返礼する意味からも報いられるべきだと思うのだ。

しかしながら、私のこの意見は TidBITS 内でもあまり賛同を得られていないようで、Ergonis の Christoph Reichenberger も、私が事実を大幅に間違って捉えていると返事してくれた。(でも私は言っておくが、私は Ergonis のウェブサイトに書いてある情報を元にして論理的と思える結論を出しただけなのだが。)でもそうだからこそ、こうしたスタッフ円卓会議は素晴らしいのだ。誰もがそれぞれの意見を発言できる! だから、ここで仮想のマイクロフォンを Adam に手渡して、彼の反対意見を聞いてみることにしよう。

[Adam Engst] Matt と Christoph と私は過去数年にわたってこの議論を続けてきた。私自身は、全般的なポリシーとして特に抵抗はない。ソフトウェアについては、価格に関するすべての決定はある意味作者の裁量に任されてよいと思う。なぜなら、ソフトウェアというのは原材料をもとに作るものではなくて純粋に作者の思索の中から生まれるものであり、生産にかかわるオーバーヘッドが比較的低いからだ。それに、2年間は無料アップデートが受けられた後でそれ以降の新バージョンに対してユーザーにお金の支払いを求めるというのは、開発者が次期リリースにアップグレード料金を課すことに比べて裁量の範囲を逸脱するとも思えない。ここには決まったルールはないのだ。

何年も前からあらかじめ有料アップグレードのリリース予定を定めることなど、どんな開発者にも決してできないのだから、この Ergonis のやり方が通常の「メジャーなアップグレードのみ有料」という方法に比べてよりコストが掛かるかどうかを計算できる方法はない。ただ、Ergonis の方法ではっきりしているのは、2年が経った後に新機能とバグ修正の恩恵を享受したいと思うならば少なくとも追加の $10(これはアップグレード料金であって $20 ではない)が掛かるということだけだ。(あなたの現バージョンが動かなくなる訳ではない。)ここで驚きとなる可能性があるのは嬉しい驚きのみだ。つまり、もしも Ergonis が素早く飛びついてくれたユーザーに(一方でその人たちは最も長くソフトウェアの恩恵を享受した人たちでもあるのだが)報いるために、または特定の深刻なバグを修正するために、その2年間という期間枠を延長すると決めたとしたら、それは嬉しい驚きではないか。従来の方法では、いつの時点でアップグレード料金を払わされるのか分かったものではないし、そのアップグレードもどれほど重大なものか、またいくら払わされるのかも、あらかじめ知ることはできないのだ。だから、何はさておいても、Ergonis の方法がずっと予期のしやすい方法であることだけは確かだろう。

けれども、私が Ergonis の方法で一番気に入っているのは、これが他と違っているという点だ。他のものとは一味違う製品が私たちに恩恵を与えてくれるのと同様に、開発者たちが普通と違ったビジネスモデルを試してくれれば、そのこと自体が私たちへの恩恵となると私は思う。もしもそれが良いものなら、それはきっと生き残って他の人たちも試してみるようになるだろう。もしも悪いものなら、消費者たちはそっぽを向いてその会社も何か別の方法に向かざるを得ないだろう。そこにこそ本当の試金石があるのであって、Ergonis がこれまで5年間積み上げてきた歴史そのものが、多くの人たちがこのアップグレード方法に特に抵抗を感じていないという事実を示しているのだろう。Christoph は私に、彼はネガティブなフィードバックも少しは受け取っているが、それらは誤解に基づくものだと言っている。

私としては、Ergonis は技術的な手段でこうした誤解の多くを和らげることができると思う。例えば、Typinator が2年経過後にスプラッシュスクリーンを表示して、次期アップグレードがもはや無料ではなくなることをユーザーに告げてもよい。あるいは、Ergonis が自動アップデートのメカニズムを実装して、そのアップグレード作業の段階で、十分な期間の経過後はアップグレード料金が必要となることをはっきりとユーザーに告げるようにしてもよいだろう。


NetNewsWire 3.0 が高速化、統合を追加

  文: Glenn Fleishman <glenn@tidbits.com>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

人気のニュースリーダー NetNewsWire の最新版が出た。格好良くなったインターフェイスと、パフォーマンスの向上、それに Apple およびサードパーティのいくつかのアプリケーションへの直接接続が特徴だ。この NetNewsWire 3.0 では、いろいろなメディアサイトやブログ、検索エンジン、その他が提供する RSS および Atom 配信のフィードが購読でき、定期的にアップデートをチェックしてその結果をコンパクトなウィンドウの中に集めてくれる。

今回の新リリースはバージョン番号を見ればメジャーな変更があるように見えるが、表面的な機能についてはバージョン 2.1 と大差ない。ただしインターフェイスの改訂は歓迎できるもので、従来はどちらかと言えばパッとしない見栄えだったものが、かなり多数の点で微妙に変化して深みを加えている。

開発元の NewsGator によれば、表面下ではこのプログラムがニュース断片を保存する方法の根本的な部分のいくつかで書き換えがなされ、非常に大規模な購読や大量のニュース項目などの処理も以前より頑健かつ高速にできるようになったという。

NetNewsWire は Spotlight、Address Book、iCal、それに iPhoto と結び付くことで、自身をより深く Mac OS X の中へと入り込ませた。Spotlight では、取り込まれたニュース項目の中にある単語で検索すると、Document 検索結果のリストの中に NetNewsWire アイコンの付いたスタブが表示される。それをダブルクリックするとそのニュース項目が NetNewsWire で開く。また、フィードの中から iPhoto へと写真をコピーすることもできる。

このプログラムはマイクロフォーマットをサポートしている。マイクロフォーマットというのはウェブページの中に埋め込まれたいろいろの構造的な要素であって、賢いソフトウェアがこれを解釈できるというものだ。カレンダーやコンタクト情報をこのフォーマットで含んでいるページがあれば、NetNewsWire はそれを iCal や Address Book に追加する手段をあなたに提供してくれる。

NetNewsWire 3.0 では Growl通知、Twitterific のサポート、それにニュース項目の内容あるいはニュース項目へのリンクをメニューコマンド一つで電子メール送信できる機能も追加された。また、NetNewsWire が“cover art”と呼んでいる新機能もあって、これはあなたが現在見ているニュースフィードのウェブサイトのホームページをごく小さなスクリーンキャプチャにして見せるというものだ。最後にもう一つ、ニュース項目をクリッピングとして保存できるようになり、保存したクリッピングは NewsGator のウェブサイトであなたが設定したアカウントと同期される。


LogMeIn が Mac に遠隔操作を追加

  文: Glenn Fleishman <glenn@tidbits.com>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

遠隔側のコンピュータがルータブルな IP アドレスを持っていようといまいと他の Mac に遠隔アクセスできる、Mac ユーザーのための新しいツールが出た。LogMeIn 社が先週ベータ版をリリースした Mac OS X 用の無料ソフトウェア、LogMeIn. だ。LogMeIn は既に Windows や Linux のオペレーティングシステムと、さらにはハンドヘルド用のいくつかのプラットフォームもサポートしていた。今回のバージョンからは Mac OS X 10.4.9 の走る Mac でも使えるようになり、サポートされたプラットフォームのどんな LogMeIn クライアントについても、そこへの接続とそこからの接続の双方が Mac で出来るようになった。

リモートコントロールのソフトウェアは、ローカルあるいはリモートのネットワークのどこか別の場所にあるコンピュータ上のオペレーティングシステム・インターフェイスを見てコントロールしたり、あるいは同じ人が所有する複数のコンピュータ間でファイルを移動したり転送したりするために使われることが多い。例えば、私は Quicken を自宅のコンピュータにしかインストールしていないが、仕事場にいる時もそれをリモートコントロールで使うことができるわけだ。また、リモートコントロールのソフトウェアは技術サポートのためにも広く使われている。サポートの技術者が、ユーザーが何をしているのかを正確に観察したり、リモートコントロールでソフトウェアをインストールしたりできるからだ。

無料版の LogMeIn では、台数無制限のコンピュータで自由に接続できるが、ファイル転送はできず、遠隔スクリーンコントロールしかできない。同社は有料版の製品も何種類か提供していて、例えば premium personal 版ではファイル転送も、遠隔印刷も、複数のマシンを管理できるダッシュボードもサポートしている。ただし、現在のところ Mac 版は無料版しか出ていない。

LogMeIn ではリモートコントロールされる側のコンピュータにソフトウェアをインストールしなければならない。(ただし再起動の必要はない。)同社のウェブサイトが、あなたの遠隔コンピュータへの接続を管理している。リモートコントロールの操作はウェブブラウザを通じて扱われる。Safari 用のウェブプラグインと、Firefox で働く Java アプレットがそのインターフェイスを提供する。iChat や Skype、その他のコミュニケーションソフトウェアと同様に、LogMeIn はルータブルな IP アドレスでも、あるいはルータブルでないプライベートな IP アドレス(家庭用ネットワークやホットスポット、またいくつかのビジネス用ネットワークでも使われているもの)も、どちらでも動作できる。(その秘密は、接続の両端のコンピュータで中央サーバへのリンクが開かれ、その中央サーバが個々の接続を結び付けているからだ。)

リモートにある他のボタンたち -- Timbuktu Pro はずっと以前からリモートコントロール、ファイル転送、その他のコミュニケーション機能を提供し続けてきたが、この製品は主に技術サポート用あるいは特定の必要を持った上級ユーザー向けに設計されており、価格もそれに見合ったものとなっている。つまり個人向けの使用は想定されていないのだ。また、Timbuktu Pro はネットワークを突き抜けてプライベートアドレスに到達することができない。これは、Netopia 社が中央サーバを運営しておらず、従ってそれが提供できないからだ。Timbuktu Pro は Skype を使えば NAT ゲートウェイを通過することもできるが、私の経験上これは速度が遅くて実用上の信頼性が欠けることもある。

同じように、Apple の Remote Desktop ソフトウェアもリモートコントロール、ファイル転送、クライアント管理などを提供しているが、これは比較的高価で、ルータブルでないプライベートアドレスには使えず、主として大規模な環境でのインストールを前提としている。(2006-04-17 の記事“Apple Remote Desktop 3 リリース”参照。)

Fog Creek の Copilot ソフトウェアはルータブルもルータブルでないアドレスも両方扱えるが、こちらは使用時間ベースの料金で販売されていて、技術サポートでの使用を念頭に置いている。(2007-01-29 の記事“Copilot こそ我が副操縦士”参照。)使用料は1分あたり 25 セントあるいは1日あたり $5、また月払いの購読プランもある。これと同様に、Mac HelpMate Remote もどんなコンピュータにでも接続できるが、やはり遠隔技術サポートのために作られていて、年額 $600 から、というパッケージの一部として含まれている。


Windows-on-Mac に関する発表三つ

  文: Joe Kissell <joe@tidbits.com>
  訳: 亀岡孝仁 <takkameoka@bellsouth.net>

ここ一年ほどの間、我々は Intel ベースの Mac 上で再起動することなく Windows を走らせられる業界をリードする二つの方法 Parallels Desktop と VMware Fusion の間の競争を取り上げてきた。先週、両製品とも大きな新リリースがあり、この競争も更に一段と拡大することとなった。その上、事態をより興味深くしてくれたのは、Apple が Windows を走らせるための自前の公式の二本立て起動ソリューションである Boot Camp に対して新たなベータをリリースしたことである。

VMware Fusion ベータ 4 -- VMware は、同社の Fusion 仮想化ソフトウェアに対して 4 番目となるパブリックベータをリリースした。このリリースでの一番大きなニュースは、Unity と呼ばれる機能で、Parallels Desktop の Coherence の機能を超えた (少なくとも現時点では) ことである。Coherence と Unity の両方とも Windows を別の箱で走らせなければならない制限を取り除き、Mac OS X と Windows の両方のウィンドウを同一条件下におく事が出来る - そして Windows アプリケーションには独自の Dock アイコンを与える。しかしながら、Coherence は Windows からのウィンドウ全てを同じ "層" に置く、別の言い方をすれば Mac OS X のウィンドウを二つの Windows ウィンドウの間に置くことは出来ない;Windows のウィンドウのどれか一つを前面に持ってこようと思っても全部のウィンドウを前面に持ってきてしまう - そして Expose は全ての Windows ウィンドウを一つのグループにしてしまう。Fusion の Unity にはこの様な制限はない;Expose に対するフルサポートを提供するだけでなく、個々のウィンドウにドロップシャドーを付け加え、より Mac に似た Windows 体験を提供する。更に、Unity は Windows Start メニューのコンテンツのほとんどをあなたの Mac のメニューバー上に再現するが、一方で Coherence は Mac OS X 内で Windows タスクバー全体を表示するだけである。その一方で、Unity は現在のところ Windows XP としか動作しないが、Coherence の方は既に Windows Vista もサポートしている。

ベータ 4 になって、Fusion は Windows Vista がインストールされた Boot Camp パーティションを使う事ができる。(これまでは、Windows XP が走っている Boot Camp パーティションがサポートされていた。) しかしながら、このサポートはまだ実験段階と見なされていて、ユーザーは Boot Camp と Fusion の間で切り替える時はその度に Windows Vista のライセンス認証をやり直さなければいけない。Fusion ベータ 4 では、Fusion の Boot Camp サポートで幾つかのバグ修正と改良がなされている、一つの例として、仮想マシン上で Boot Camp パーティションから Windows を走らせている時の Fusion のドライバの自動アップデートがある。ベータ 4 でのその他の改良には、性能の向上、カスタム化可能なツールバー、そして Apple の 30 インチ Cinema Display のサポートがある。Fusion ベータ 4 は 167.4 MB のダウンロードである。

Parallels Desktop 3.0 -- 一方で、Parallels も他の方面で多忙であった、そして彼等の新たにリリースされた バージョン 3 の Parallels Desktop では数多くの改良と新機能が加えられている。そのリストの一番最初に来るのは、長いこと待たされた 3D グラフィックのサポートであろう、これでようやくゲームを楽しむ人は Boot Camp 以外に Parallels も検討対象に入れられる事になる。

新しい機能である Snapshots は、ユーザーが自分の Windows 仮想マシンの状態を何時でも保存できるようにする、従って、新しいソフトウェアをインストールしたり他の変更を加えたりした後で、もしクラッシュしたり重大な障害が起こったりしても、システムの以前の状態に容易に戻る事が出来るようになる。もう一つの新機能である SmartSelect は、一つのファイルタイプに対して Windows か Mac OS X かどちらかの特定のアプリケーションを関連付ける事が出来る - つまり、例えば、Windows の中で .txt ファイルをダブルクリックしそれを Mac OS X 下で TextEdit で開く、或いは、Mac OS X の中で .doc ファイルをダブルクリックして Word の Windows バージョンで開くといったことが出来るようになる。そして、Parallels Explorer は、あなたの Windows システム内に保存されたファイルを見たりアクセスしたりする方法を、たとえ Windows が走っていない時でも出来るようにする方法を提供する。

バージョン 3.0 でのその他の変更の中には、Coherence, Boot Camp サポート, Shared Folders, そして USB サポートに対する改良と、数百にも及ぶバグ修正が含まれている。

これは Parallels Desktop がリリースされて以来初めての有料アップグレードである。アップグレードの値段は $50;新品の値段は変らず $80 である。Parallels Desktop 3.0 は 78.3 MB のダウンロードである。

Boot Camp ベータ 1.3 -- 最後に、Apple は Boot Camp のベータ 1.3 をリリースした、これは 274 MB のダウンロードである。この最新版は、最新の Mac (05-Jun-07 にリリースされたばかりの 新しい MacBook Pro モデルも含まれるはずである) もサポートしている。更に、MacBook Pro のキーボードバックライティング、そして Apple Remote をペアとして (二台以上を持っている人のため) 使うことのサポート、更に、グラフィックドライバや国際キーボードサポートといった他の分野でも改良が図られている。Apple は現在の全ての Boot Camp ユーザーに対してこのアップデートを行うよう勧めている。以前のバージョンと同様に、アップデートするためには、新たに Mac Windows ドライバ CD 或いは DVD を焼くこと、Boot Camp 下で再起動すること、そしてアップデートされたドライバをインストールする事が必要である。


WWDC 2007 の基調講演で Leopard が吠える

  文: TidBITS Staff <editors@tidbits.com>
  訳: 羽鳥公士郎 <hatori@ousaan.com>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

本日、Worldwide Developer Conference の基調講演で、Apple の CEO Steve Jobs は、Mac OS X 10.5 Leopard の最初の完全機能版開発者向けベータのデモを行い、多数の新機能を披露した。その中には、どうやらここ何年かのうちでもっとも大幅な、Finder の徹底改良も含まれていた。なお、昨年の WWDCでは、Time Machine や Spaces、Mail、Dashboard といった看板機能にデモの焦点が当てられていた(2006-08-07 の "WWDC 2006 にて Mac OS X 10.5 Leopard プレビュー" 参照)。今日の Jobs はさらに Mac 界を驚かせた。Windows XP と Vista 用の Safari 3 テスト版のリリースを発表し、締めくくりに、開発者が iPhone 用のアプリケーションを作成する方法を説明したのだ。iPhone は 2007 年 6 月 29 日の午後 6 時に発売予定だ。

Jobs が言うには、Leopard には 300 の新機能があるそうだが、基調講演では少数の機能だけに焦点が絞られ、すでに公表されている Mail や iCal の新機能、Mac OS X のアクセシビリティ機能は触れられなかった。Leopard の出荷日は 2007 年 10 月だと Jobs は念を押していた。

基本的な Finder の改良 -- 最近の Apple にとっては派手な見た目が重要で、Leopard にもそれがふんだんに盛りこまれている。新しいメニューバーは半透明になり、Dock のアイコンはピカピカの「床」に置かれている。これらの機能はおそらく Core Animation で実現されているのだろう。これは新しいAPI で、洗練されたアニメーションを簡単に作成できるようにする。

コンピュータメーカー、プロセッサメーカー、オペレーティングシステム開発者といった人たちはこぞって共謀し、オペレーティングシステムのインターフェースをアップデートするたびに、さらなる馬力を必要とする何かを忘れずに含める。それが古いコンピュータの足かせになるというわけではないが、既存のユーザを熱狂させて新しいハードウェアを買わせるには十分だ。マルチコアプロセッサがあればこそ、最新の 3D 効果でプロセッササイクルを焼き尽くすというのも容易に正当化される。

Dock に新しく加わった Stacks は、机の上を整頓しておきたいのに Mac OS Xが書類の山を扱うことができないことにいらだっていた人たちには魅力的だろう。私たちが見る限り、この書類の束は、ドックに入れられたフォルダの中身を見るための新しい方法だ。中身を一列に広げて見る(そして選択する)こともできるし、数が多すぎて一列に並べきれないなら縦横に並べて見ることもできる。最新の書類はいつでもスタックの一番上に置かれる。

Stacks は本質的には Mac OS 9 のタブフォルダ機能を復活させたものだ。ただし、ルック・アンド・フィールはモダンになっている。ダウンロードされた書類の山がデスクトップのあちこちに散らばるのを解決すべく、Downloads という名前のデフォルトのスタックがダウンロードされたファイルを自動的に捕らえ、新しいファイルが届いたときには通知すると Jobs は語った。

もう1つの Finder の改善点としては、Quick Look がある。これは、どんな書類でも Finder ですばやくプレビューするというものだ。ファイルを選択してスペースバーを押すと、そのファイルの内容がプレビューされる。このプレビュー機能には、QuickTime ムービーの再生や複数ページ書類の対応も含まれる。Apple は Quick Look で一般的な書類タイプをサポートしている。たとえば Microsoft の Word や Excel、PDF、テキスト、ムービー、画像ファイルなどだ。さらにプラグインアーキテクチャを採用しているので、開発者が独自のQuick Look プレビューインターフェースを作成することができる。Steve が持っている書類は明らかに私たちのものより見映えが良いが、それにしてもQuick Look を使えば、関連するアプリケーションを立ち上げることなく書類をすばやく調べることができるので、役立つだろう。

iTunes の人気は Finder に多大な影響を与えている。Finder の サイドバーはiTunes 風になり、最上位の項目は Devices(ディスク)、Shared(ネットワークコンピュータ)、Places(フォルダ)、Search For(本質的にはスマートフォルダ)と名付けられている。iTunes でアルバムのジャケットをブラウズできる Cover Flow 機能を気に入っている人たちのために、同じ選択肢がFinder のウインドウにも備わったと Jobs は語った。項目をブラウズしたり、インターフェースの中で QuickTime ムービーを再生することすらできる。

Spotlight は、Leopard でその検索範囲を広げ、ネットワークで接続されたMac や PC の検索ができるようになる。この技術の根本的な拡張だ。さらに、Leopard の Spotlight では、Boolean 検索、フレーズの完全一致、日付、範囲、絶対日付での検索もできるようになる。奇妙なことに、簡単な計算もできるようになると伝えられている(想像するに、LaunchBar で計算ができるのと同じようなものだろう)。これらの改良によって、Spotlight が比較的役立たずだと感じている私たちのような人の考えが変わるかどうかは、時が経たなければ分からない。この新しい Spotlight 機能は PC も検索すると Jobs が言った以上、Apple は Windows 用の Spotlight もリリースする必要があるかもしれない。そうなれば、Google Desktop のようなさまざまなデスクトップ検索プログラムに挑戦することとなる。

最後に、Finder のサイドバーにリストされた共有コンピュータには、ファイル共有の目的でアクセスできるだけでなく、リモート操作の目的で、あたかもそのコンピュータの前に座っているかのようにアクセスすることもできる。Apple はそこにとどまらない。"Back to My Mac" というカッコ悪い名前のついた機能を使えば、権限を持っているほかの Mac に、インターネット経由でリモートアクセスできる。接続は Apple の .Mac サービスで管理される。家庭や企業のゲートウェイの向こう側にあってプライベート・ネットワーク・アドレスが割り当てられたコンピュータにリモート操作のための接続を可能にする製品はいくつかあり、なかでも LogMeIn は先週 Mac OS X 用のベータ版がリリースされた(2007-06-11 の "LogMeIn が Mac に遠隔操作を追加" 参照)。プライベート・ネットワーク・アドレスは通常、ルーティングできず、外部のインターネットから接続できない。

ビットは多いほど良い -- Jobs が言うには、Leopard は 64 ビット・オペレーティング・システムとなり、32 ビットアプリケーションもサポートされる。これは Microsoft に対するちょっとしたジャブだ。同社は 32 ビット版と 64 ビット版の Windows を別々に販売しているのに対し、Leopard は1つのバージョンでどちらの種類のアプリケーションも扱えると Jobs は言っているのだから。

オペレーティングシステムが 64 ビットプロセッサに対応することの利点の1つとして、大量のデータに対し1度に数学的な操作をおこなうことができるということがある。これは、計算上の負荷が高い作業において大幅な改善をもたらす。そのような作業に決まって含まれるのは、Quick Look や Cover Flowなどの新しく見た目のよいインターフェース要素の表示や、ムービーを iDVDで作成したりゲームをしたりといった本格的なアプリケーション作業だ。Apple は 64 ビットプロセッサを搭載したコンピュータを主に販売しているという点で特異だ。これまでは、そこに眠っている本当の力が十全に活用されていなかった。

Boot Camp はわずかに変わった -- Leopard には、約束通り、 Boot Camp が組み込まれるが、これは Parallels Desktop や VMware Fusion を補完するものでしかないだろう。「組み込まれる」ということで Apple が意味しているのはどうやら、Apple メニューから Restart in Windows を選べば Windowsに切り替えられるということのようだ。しかし、Leopard では、Mac 側でセッションを終了する必要はない。Mac のセッションは「セーフスリープ」モードになり、離れたときとまさに同じ場所に戻ることができる。

とはいえ、Boot Camp がこの方式をとっているということは、Apple は仮想化機能を提供するサードパーティーソフトウェアと競合しないことにしたのだろう。これは珍しいことだ。Windows アプリケーションをときおり走らせる必要があるという問題に対し、再起動しなければ Windows に切り替えられないというのだから、Boot Camp はあまり Mac らしくない解決法だ。

Parallels Desktop の Coherence と VMware Fusion の Unity は、どちらもはるかによく統合された方法を提供する。ただ、Boot Camp は Leopard に無料でついてくる。Jobs が明言したところでは Apple は両社を支援しており、両社とも Boot Camp で作成された Windows パーティションとのシームレスな互換性を実現するよう努力しているので、1度 Windows をインストールすれば、Boot Camp も仮想化プログラムも使うことができるはずだ。

一方で、Boot Camp を使えば、ハードウェアドライバと Windows の周辺機器のすべてを完全に利用でき、潜在的なプロセッサパワーも 100 パーセント引き出せる。仮想マシンではそれだけの効率は決して達成できない。ただし、作業によってはそれに近い性能に迫ることがある。また、ドライバ抽象化レイヤを迂回するようなソフトウェアを使っている特定のハードウェアは、仮想マシンでは決してサポートできない。

Spaces -- Leopard の Spaces を使うと、複数のデスクトップを作成し切り替えることができ、それぞれのデスクトップにアクティブなアプリケーションをいくつも置くことができる。このような機能は決して新しいものではないが、Spaces が Mac OS X の下層レベルに統合されたことで、複数デスクトップが普通のユーザのあいだで大きな人気を獲得するだろうと考えられる。どうやら Apple は Spaces を非常にうまく作ったようで、スペース間で切り替えたり、ウインドウをスペースからスペースへドラッグしたりということが簡単にできる。

Spaces が魅力的なのは、1つには、今日の Mac ではとりわけ常に集中することが要求されるためだ。iChat で邪魔されたり、電子メールが絶え間なく舞い込んだり、ウェブページが自動的に更新されたり、そのほかさまざまなアプリケーションが気を散らそうと待ちかまえているときに、たとえば執筆に集中するというのは、難しいことがある。

Dashboard と Web Clips -- Jobs が主張するには、これまでに 3,000 を超える Dashboard ウィジェットが書かれ、このテクノロジは成功といえる。しかし、現状では、ウィジェットを作成するにはプログラミングが少々必要だ。一方、Dashboard の新しい機能であるWeb Clip では、誰もがウェブページのうち定期的にアップデートされる部分を切り取ることができるようになる。それは今日の4コママンガでもよいし、Google Analytics の利用グラフでもよいし、人気があってタイムリーな記事をツリーマップにした CNET の "What's Hot" でもよい。切り取った部分が Dashboard のウィジェットになる。

iChat -- Leopard の iChat は、私たちの多くにとって不可欠な改良だと言っていいかもしれない。まずもって第一に、AAC-LD(AAC Low Delay)エンコーディングのサポートによって、音質が改善された。Leopard の iChat ではまた、タブチャットが可能になる。これは現在 Chax で利用できる機能だ。また、ちょっと馬鹿げているが楽しいこととして、Photo Booth のエフェクトがライブビデオに適用でき、ビデオチャットの人物の背景に(あるいは前面に重ねて)ブルースクリーン効果を適用できる。これは Script Software の ChatFX と似たような機能だ。

しかし本当に興味深いのは、iPhoto のスライドショーや Keynote のプレゼンテーション、そしてビデオを iChat で共有できるようになるということだ。加えて、Quick Look で表示できるものなら何でも iChat で表示できるから、相手に書類をリアルタイムで見せることができる。私たちは iChat を使ってMac ユーザグループとリモートプレゼンテーションをするのを楽しみにしている。すでに何度かやったことがあるが、ビデオと画面上の何かの表示とのあいだをいったり来たりするのはほとんど不可能だった。さらによいことに、iChat で表示したものは何でも保存できる。オーディオチャットなら AACファイルで、ビデオチャットなら MPEG-4 ファイルだ。オーディオやビデオをライブで記録するのがますます簡単になるので、ポッドキャストの世界が爆発的に広がるかもしれない。

Time Machine -- 今年の Time Machine のデモはそれほど詳細なものではなかったが、これまで発表されていなかった注目すべき機能を Jobs は明らかにした。Time Machine は、複数のコンピュータを、802.11n ベースの AirPort Extreme Base Station(2007 リリース)に接続されたハードドライブにバックアップできる。ネットワークバックアップは、複数の Mac のあいだでハードディスクを引きずって歩くより、(遅いとしても)はるかに簡単で効率的だ。最初のバックアップはドライブがローカルで接続されているときにおこない、その後 AirPort ベースステーションにつないでリモートバックアップができればすばらしい。Time Machine では、バックアップ先のディスクを変更したり、バックアップしたくない項目を除外したり、バックアップデータを暗号化したり、バックアップ先のドライブがいっぱいになるのを避けるためにファイルのどれだけ古いバージョンまでを保存するか制限したりできる。火事や空き巣から守るにはバックアップドライブをオフサイトに置くのが理想だが、Time Machine でこれがどれだけ簡単にできるかはまだ分からない。

人の心(とブラウザのシェア)をつかむには -- もはや恒例となった「あと1つだけ (one more thing)」の発表は、今回はショッキングなものだった。Jobs は、Apple が iTunes を Windows に移植した経験を生かして、Leopard 用と Tiger 用ばかりでなく Windows XP と Vista 用の Safari 3 をリリースすると発表したのだ。Windows 版の Safari を作っても Apple には一銭も入らないことを考えればこれは奇妙な行動のようにも思えるが、これは Windows で作業しているウェブ開発者たちがそのサイトを iPhone でも正しく表示できるようなものにするための強い動機を与えるという目的で作られるのかもしれない。iPhone 自身も、Safari の一つのバージョンを使っているからだ。公開ベータ版の Safari 3 は既に今日リリースされた。

セキュリティと標準仕様をサポートするというのも、Apple が Safari を Windows にポートするもう一つの根本的理由かもしれない。セキュリティ専門家の間に長らく鬱積した不満は、Internet Explorer に多数存在しているセキュリティホールのせいで、ウェブサイトを訪れただけでユーザのコンピュータが攻撃に晒されてしまうということだった。Internet Explorer 7 で、ブラウジングをある種の壁に囲まれた庭園の中に入れるという細工によってその問題のいくつかが解決されたが、これはやはりあくまでも Microsoft の側の細工でしかなかった。一方、ウェブデザイナーたちは、Internet Explorer の各バージョンのどれもこれもがブラウザの CSS サポートでの根本的な問題を解決できずにきたことにも、いら立ちを隠せずにいた。あらゆるプラットフォームの Safari、Firefox、Opera で、皆正しく解釈できるたった1行の単純な CSS は、Internet Explorer のさまざまなバージョンすべてで正しく動作するようにというだけの理由で何行もの追加コードを必要とする有様だった。

Apple が Windows 用のブラウザをリリースしようとしているということ自体、皮肉な事実だ。Microsoft は 1996 年に Mac 用の Internet Explorer をリリースしているのだから。それ以後 2003 年初め頃まで、Internet Explorer がずっと Mac のデフォルトのブラウザだった。それが Safari がその姿をあらわにした時であって、それ以後 Internet Explorer は 2006 年に廃止が決定するまで何も開発の努力を振り向けられずにいた。Mac 用の Internet Explorer の歴史について詳しくは、“Microsoft Unveils Internet Explorer for Mac”(1996-01-22)、“IInternet Explorer for Mac がメンテナンスモードに”(2003-06-16)、“Internet Explorer、公式に消え行く”(2006-01-09) などの記事を参照されたい。

Jobs は先週 Wall Street Journal のD: All Things Digital カンファレンスでMicrosoft CEO の Bill Gates と対談 した時、Microsoft が多数のバージョンの Windows Vista を出していることを冗談の種にしたい誘惑を抑えようともしなかった。Jobs は(どうやら聴衆に一瞬ショックを与えたようだったが)Leopard が Basic、Premium、Business、Enterprise、それに Ultimate の5つのバージョンで販売され、価格はすべて同じ $130 となると言ったのだ。(もちろんこれは単なる冗談で、Leopard には1つしかバージョンはない。)ちなみにこれは従来のすべてのバージョンの Mac OS X と同じ価格だ。

Windows 用の Safari 3 のベータ版リリースや、Windows 用 Spotlight の登場(Jobs のコメントによれば)の可能性、今後も続く iTunes、Bonjour ネットワーク探索、QuickTime、AirPort ユーティリティ、その他のプログラムの開発努力の結果として、Windows プラットフォームに対する Apple の役割はますます変貌を遂げつつある。Apple は、今では本格的な、トップレベルの Windows ソフトウェア開発者であって、少なく見積もっても何千万人という顧客たちが既に Apple のソフトウェアを Windows で使っているのだ。

もしも、私たちの高名なる主任編集者の Tonya Engst が指摘したごとく、iPhone こそが新時代のネットワークコンピュータなのだとしたら、Windows も Mac OS X も、iPhone との相互作用のためのものとしては等しく存在価値のあるものであって、それは iPod について言えるのと同じことなのだろう。

iPhone 用の開発 -- iPhone といえば、Jobs が最後に発表したのは、ソフトウェア開発者たちが iPhone で動作するアプリケーションを作るための新しい方法を Apple が提供することになった、ということだった。これは iPhone が初めて発表された時から大いに議論されてきた問題だ。Apple が採用した方法は、Safari のエンジンを利用して AJAX ベースのアプリケーションが動くようにし、インターネットと接続できるとともに他の iPhone サービスとも統合されるようにして、通話を開始したり、電子メールを送信したり、Google Map にアクセスしたり、その他のことができるようにするものだ。そして、これらすべてを Apple がソフトウェア開発キットのようなものを出版・維持する必要なしに可能となるようにするという。

(ウェブ開発者やデザイナーでない人たちに意味不明の文章とならないために注釈を加えると、AJAX すなわち asynchronous JavaScript and XML は、ウェブページが JavaScript を利用して情報を読み込み、ページを再読み込みすることなくページのアップデートができるようにする。そのため、Google の Gmail のような形で一つのページがミニ・アプリケーションのように挙動できるようになる。)

振り返ってみれば、このアプローチはまさにうなずける方法だ。これならば、誰もが(正確には、AJAX 装備のウェブサイトを作れる人ならば誰もが)iPhone 用アプリケーションを作れる方法を、開発用にプラットフォームを公開する必要なしに Apple が提供できることになる。Apple の iPhone 部門副社長の Scott Forstall は、企業用のアドレスブックを作成してテストするのに 600 行以下のコードと1人月で済み、それでいて LDAP (Lightweight Directory Access Protocol) による遠隔ルックアップ、直接の電話、直接の電子メール送信などまでが可能なことをデモしてみせた。

Jobs はどの程度の iPhone 専用機能が JavaScript で制御可能であるのかまでは説明しなかった。彼はただ、AJAX アプリケーションが電話をかけたり電子メールを送信したりできると述べたが、それだけではあまり語ったことにはならない。特に注目すべきは、サードパーティ用に AJAX に依存することによって、Apple が iPhone ハードウェアへの直接アクセスを許さない可能性が強く、従って voice over IP (VoIP) 通話に関係したところには手が届かないのではないかと思われる。このあたりは、Apple のパートナーである AT&T が携帯電話の通話料金に食い込まれることを望まないからなのかもしれない。

6 月から 10 月まで -- さて、こういった発表がすべて出たのだから、あとはゆったりと腰掛けて、10 月に Leopard が使えるようになったらどんな具合になるだろうかと思案して楽しむだけだ。あるいは少なくとも、iPhone は値段が高過ぎると感じてしまう私たちのような人だけは、Leopard のことを思って楽しむのがよい。他の人たちはみんな、地下鉄の車内で、渋滞につかまった車中で、あるいはビーチで日光浴を楽しみながら、必死で iPhone をいじるのに夢中になるあまり、大切な月日が過ぎるのも忘れてしまっているだろうから。


Take Control ニュース/11-Jun-07

  文: Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

最新刊の電子ブックで Mac の問題を解決 -- 自分の Mac が起動しなかったり、カーネルパニックが繰り返し起こったり、理由もないのに奇妙な挙動をし始めたりするとフラストレーションが溜まるものだ。でも“Take Control of Troubleshooting Your Mac”があれば、Mac 関係のほとんどどんな問題でも診断して修正する方法が学べる。Mac 導師の Joe Kissell の手になる 86 ページのこの電子ブックは、あなたがトラブルシュート用ツールキットを組み上げるお手伝いをし、それからトラブルシュートの鍵となる手順をあなたに教える。その次には最もよく起こりがちないくつかの問題を解決するための具体的な手順を説明し、さらにはこれらのトラブルシュートのテクニックを応用して全く新しい問題を解決するにはどうすればよいか助言を述べる。これはぜひともお手許に置いて、トラブルに見舞われる前の備えとして頂きたい! より深刻な Mac のトラブルの際に使えるように印刷したものを横に置いておきたいという方のために、オンデマンド印刷版も近日中に用意できる予定だ。


TidBITS Talk/11-Jun-07 のホットな話題

  文: TidBITS Staff <editors@tidbits.com>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

空間的引用法を時間にも適用 -- 時間があたかも空間的に存在しているかのようにして扱うのは日常的な会話で普通のことだが、はたしてあなたは自分の言っていることの意味をよく考えたことがあるか? (27 メッセージ)

ポータブルスキャナのお薦めは? -- 図書館で雑誌の記事を簡単にスキャンしたい場合、どんな製品が使えるか?(お薦めの製品は?) (6 メッセージ)

新しい iPhone コマーシャル -- 先週初登場したテレビコマーシャルは、私たちのテクノロジーへの渇望を刺激する。 (2 メッセージ)

キーボードによるショートカット -- 普通の Mac OS X キーボードショートカットが、ある読者の Mac で突然働かなくなった。なぜだろうか? (3 メッセージ)

我々がビデオを取得する方法 -- テレビのケーブルあるいは衛星サービスに代わるものについて書いた Adam の最近の記事にフィードバックが寄せられる。 (6_メッセージ)

Vonage と AirPort Extreme -- Apple の AirPort Base Station が原因なのだろうか? Vonage の voice-over-IP サービスを使う時に問題が起こる。 (4 メッセージ)

現在の遠隔アクセス方法いろいろ -- Mac をリモートコントロールする方法として、現状ではどんなものがあるか? 読者たちが体験を語り合う。(7 メッセージ)

高らかに TidBITS の角笛を鳴らせ -- MacTech 25 のリストに載るという栄冠を受けた TidBITS やその他の団体のスタッフメンバーたちに、乾杯!(2_メッセージ)


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