TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#887/09-Jul-07

ワイヤレスのネットワーキングは確かに便利だが、家の中でもっと速くビットの転送をしようと思えば、Ethernet ケーブルを張り巡らす以外に何か方法があるだろうか? Kevin van Haaren が、Powerline ネットワーキング(電力線搬送通信)について探究する。これは、既に壁の中に配線されている家庭の電力線を通じて、家の中でデータをビュビュンと送ろうというものだ。また今週号では、Glenn Fleishman が先週号の iPhone 関係の記事へのフォローアップとして AppleCare と各種サービスオプションについて詳細をお伝えし、Adam は ChangeShortName ユーティリティの便利さの理由について解説する。ニュースの部では、Nisus Writer Pro のリリース、Apple からは Intel ベースの Mac が Mac OS X 10.4.10 の下でプツプツいう音がするようになった問題への修正が出たこと、それから仮想化ソフトウェアの Fusion のリリース候補版についてもお知らせする。Fusion の話が出たついでに、このプログラムの開発元である VMware を、新しい TidBITS スポンサーとしてご紹介しよう!

記事:


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VMware が TidBITS スポンサーに

  文: Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

私たちの新しい長期スポンサー、VMware を歓迎したい。この会社は、単に Intel ベースの Mac 用の仮想化ソフトウェアへの最新参入者であるばかりでなく、仮想化の市場全体におけるリーダーでもある。

去年一年間で Macintosh の世界に起こった最大の出来事が Intel プロセッサへの移行であることに、疑いの余地はない。その大きな理由は、このプラットフォームにおいて仮想化が実現されたからだ。大部分の Mac ユーザーたちは、仮想化というものを単に Mac で Windows プログラムを走らせられる機能としか捉えていないかもしれないが、これはもっと一般的に、全オペレーティングシステムを一つの仮想マシンの内部にカプセル化するものであって、仮想化のアプリケーションがあたかも物理的なコンピュータであるかのように挙動する。仮想化があれば、複数のオペレーティングシステムを同時に走らせることもできるし、また設定済みのソフトウェアを組み込んだ仮想マシンを一つの組織の中の多数のユーザーに配付したり、クリーンな環境でソフトウェアをテストしてからまた何事もなく元のクリーンな状態に戻したり、複雑なサーバ設定を異なるコンピュータの間で移動させたり、といったさまざまの応用も可能になる。一言で言えば、仮想化というのは非常に重要なものであって、今後 Mac で見かけることもますます多くなることだろう。

VMware Fusion は 2007 年 8 月にリリースされることが決まっているが、現在 Release Candidate(リリース候補版)の形でダウンロードして入手でき、 50% 引きの予約購入の受け付けも始まっている。これは、VMware 社としては最初の Mac 用製品だ。これをレビューしたり他社製品と比較したりするにはまだ時期が早すぎるが、見た感じでは非常に有望のように思える。私は特にその Unity 機能、つまり完全に Windows デスクトップなしで済む機能が気に入っている。私は Windows を使うのが好きでないし、Windows アプリケーションを使いたい時はそのアプリケーションにだけ興味があるのであって、それ以外の Windows に関係したことに煩わされたくない。そして、まさにそれこそ Unity の働きだ。これは Windows アプリケーションを Windows の外へ取り出して、Mac アプリケーションたちに混じって働くようにしてくれる。(ビジュアルなイメージが必要な方は、こちらの YouTube ビデオをご覧あれ 。)そのアプリケーションはちゃんと Dock にも登場でき、Expose においても個別のウィンドウとして扱われる。さらに、他のアプリケーションからのドラッグ&ドロップさえも受け付ける。もちろん、依然として Windows アプリケーションらしく見えることに変わりはないが、Windows 自体を避けられることを考えれば小さな代償と言える。

TidBITS をサポートし、そして Mac コミュニティーをサポートしてくれた VMware に、感謝を捧げたい。


Apple が Mac OS X 10.4.10 のプツプツ音を静める

  文: Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
  訳: 笠原正純<panhead@draconia.jp>

あなたが 2007 年 7 月 2 日以前に Mac OS X 10.4.10 をインストールしていれば、あなたが入手したのはバージョン 1.0 のアップデートで、これだと、一部の Intel ベースの Mac で外部スピーカーを使っているときに "プツプツ音" の原因になる。このトラブルは PowerPC ベースの Mac には無関係だ。( Mac OS X 10.4.10 で行われた修正の詳細については 2007-06-25 "Mac OS X 10.4.10 リリース" 参照。)

Apple は現在、この不可解な問題を解決するために多くのアップデートをリリースしている。もし、Intel ベースの Mac に Mac OS X 10.4.10 Update をインストールしていない場合はソフトウェアアップデートにはこの問題が解決されたバージョン 1.1 が表示されるはずだ。これは同時に、独立した delta (72 MB) combo (297 MB) のダウンロードとしても提供されている。既に Mac OS X 10.4.10 をインストールしているなら、ソフトウェアアップデートから Audio Update 2007-001 が現れるはずだ。こちらも別に660 K の単独ダウンロードも利用可能になっている。


Nisus Writer Pro で Classic の機能が復活

  文: Joe Kissell <joe@tidbits.com>
  訳: 笠原正純<panhead@draconia.jp>

Nisus Software はNisus Writer Pro をリリースした。これは、以前からある彼らの製品 Nisus Writer Express を元にした新しいワードプロセッサだ(Nisus Writer Express は今後も販売継続される)。Nisus Writer Pro は、Nisus Writer Classic にはあったのに Mac OS X ネイティブ版には未だ姿を現すことのなかった、数多くの機能を付け加えている。Nisus Writer Pro は属性対応の検索・置換(手動、マクロ内の双方とも)を行うことができ、用語集の項目をその場で拡張(Word の自動文章校正機能に似ている)できる。他の新しい追加(或いは "復帰" と言うべきか)機能としては、目次、索引、相互参照、ブックマーク、テキストの画像回りこみ、孤立行のコントロール、複数ページに跨がる脚注、行番号付け、それに拡張されたマクロ言語などがある。

Nisus Writer Pro は $79 で、3 ライセンスのファミリーパックは $99。Nisus Writer Express からのシングルアップグレードは $45 だ。(Nisus Writer Express はシングルユーザが $45、ファミリーパックが $79 に値下げされた。)Nisus Writer Pro は 103 MB のダウンロードで 15 日間の無料使用版も用意されている。


VMware が Fusion のリリース候補版を公開、値段も公表する

  文: Joe Kissell <joe@tidbits.com>
  訳: 亀岡孝仁 <takkameoka@bellsouth.net>

VMware は先週 Intel ベースの Mac 上で Windows を走らせる同社のソフトウェアである Fusion の最初の リリース候補版を公開した。このバージョンには Unity に対する改善が含まれている。Unity は Windows アプリケーションを、別個の Windows ウィンドウの中ではなく、Mac アプリケーションとサイドバイサイドで並べて走らせることのできるモードである。Unity は今やドラッグ&ドロップをサポートし、Windows アプリケーションメニューを Fusion Dock アイコンの中に表示する選択肢を提供し、動作する Windows バージョンの数も増え、そしてその他の改良を加えている。この Release Candidate 1 では、キーボードサポートも改善され、Windows の右クリックを一つボタンマウスでも Control-クリックする事で実現するオプションも追加されている。その他の改良には、Boot Camp ベースの仮想マシンに対する性能向上、新たなメモリ最適化オプション、そして各種のバグ修正が含まれている。Fusion RC 1 は 160 MB のダウンロードとなっている。

VMware の発表によれば、Fusion の値段は、この 8月末までに予定されている出荷時には $79.99 の小売価格となる。最終リリース以前に 事前購入申込みをした顧客には 50 パーセントの値引きが適用される。


ChangeShortName がユーザ名の変更を手軽に

  文: Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Mac OS X におけるあなたの名前に不満足? 管理者パスワードの入力を呼び掛ける際に使われる名前が、本当は _あなた_ の名前でないことが気になる? あなたの完全な「名前」(フルネーム)の方は、いつでも自由にシステム環境設定の「アカウント」パネルを開いて「名前」フィールドの内容を書き換えることができる。けれどもその下にある「ユーザ名」(ショートネーム)フィールドの方はイライラさせるかのように変更不可能で、南京錠アイコンをクリックしてもダメ、きっとあなたは Mac OS X が必要以上に過剰保護的だと思ってしまうことだろう。

実は、逆なのだ。あなたのフルネームの方こそ、決してあなたは逃れられない。あなたの出生証明書に公式に記載されているものだからだ。けれどもショートネームの方は、意図的に選ばれたり、誰かに割り当てられたり、あるいは単に偶然で付けられた名前であって、ずっと融通の利くものだ。もう亡くなった私の祖父 Orville は、友人たちの間で Barb と呼ばれていた。加熱スイッチを切らずに電気フェンスの修理もできる、屈強な体つきの農夫には似つかわしくない、一見して奇妙なあだ名だった。[訳注: Barb は通常 Barbara の略称です。]後になって、私はそれが“barbarian”(野蛮人)の略称だと知った。1930 年代の Cornell 大学で、フットボールとボクシングの武勇伝に敬意を表してのことだったという。

もしもおじいちゃんがうっかりと Mac OS X でのショートネーム(ユーザ名)を“orville”と付けてしまったとして、やっぱり“barb”の方が良かったと思った時、きっとお役に立つのが James Bucanek と Dan Frakes の共同作品、ChangeShortName ユーティリティだ。Mac OS X でショートネーム(ユーザ名)を変更することは、コマンドラインでお決まりの呪文を唱えたり、Apple の NetInfo Manager で身振り手振りをしたりした上で、設定ファイルを編集すれば可能なのだが、これはとても面倒な作業で、あまりにも多数の手順が必要、Apple の公式の作業手順説明でさえもすべてを尽くして書いているわけではない。その上また、うっかりと間違いをしてしまいがちだ。もしもちょっとでも間違えたら、回復するまでに膨大な努力が必要になってしまうだろう。

ChangeShortName は、一つのアカウントのショートネーム(ユーザ名)を変更するために必要なすべての手順をカプセル化することによって、この作業をより易しく、より間違えにくいものにしてくれる。あなたがすべきなのは、既存の名前を選び、新しい名前を入力し、それからボタンを押すだけだ。その上、もしもあなたが以前自分でショートネームを変更しようとトライして失敗したことがあった場合、そこで発生したダメージの一部をこのユーティリティは修復できる可能性まである。Mac OS X 10.3 かそれ以降が必要で、無料だが、使用した後でドネーションをお願いします、ということになっている。もちろん、たとえ ChangeShortName があったとしても、ショートネームの変更はそう軽々しくすべきことではないので、使用の前にはあらかじめ必ず添付の説明書を読んでおくこと。ダウンロードサイズは 424K だ。


iPhone 用 AppleCare、電池交換、サービス

  文: Glenn Fleishman <glenn@tidbits.com>
  訳: 羽鳥公士郎 <hatori@ousaan.com>

iPhone の保証を延長したり、電池を交換したり、そのほか修理をしたりするときの価格が明らかになった。私は先週の "iPhone との日々、始まる"(2007-07-02)で、Apple は AppleCare プランについての詳細をまだ公表していないと誤って書いてしまったが、実際には少なくともその 1 日前から、Apple Store の iPhone 用注文ページで読めるようになっていたようだ(右下の Warranty ボタンをクリックする)。修理に関するほかの情報は 2007 年 7月 2 日ころに現れたらしい。

iPhone に付属する保証には、1 年間の故障に対する保証と 2 年間の技術サポートが含まれる。後者は、携帯電話会社が通常契約期間中の電話サポートを提供しているのに対応するものだ。AppleCare の価格は 1 台あたり 69 ドルで、故障に対する保証が 2 年間に延長される。これは電話を購入してから 1年間いつでも購入できるが、今はまだ販売されていない。Apple は 7 月中にAppleCare を販売すると約束しており、Apple Store の店員も iPhone の発売日に同じことを言っていた。

事故や紛失は保証の対象外で、それは Apple のほかの保証プログラムと同様だ。しかし、ほとんどの携帯電話会社は、一般的に高価ではあるがかなり包括的な、紛失や事故による損傷に対する保証も、故障に対する無料の保証に加えて提供している。このようなプランは、電話によって異なるが、年間 30 ドルから 60 ドルであり、月ごとに課金され、35 ドルから 50 ドル、ないしそれ以上が所得控除の対象となる。ある決まった回数だけ電話を交換したり修理したりでき、会社側の都合で同等の電話と交換になることもある。Apple にはこのようなものがまったくない。

携帯電話会社といえば、話はそれるが、保証の対象となる故障があった電話をそれなりの時間で修理するということについて、しばしばひどい仕事をする。それに対し、Apple のコンピュータ修理サービスは、消費者向け出版物のランキングでたいていの場合最上位を占める。AT&T と Apple は、Apple Store か郵送で、修理と返却を取り扱う。AT&T Store では販売した後のハードウェアは取り扱わない。

Apple の iPhone サービス FAQ によれば、保証の対象外または保証期間外のiPhone の修理サービスの価格は、4 GB モデルが 199 ドルで 8 GB モデルが249 ドルだ。電池を交換するだけでよければ、85.95 ドル(79 ドルに送料が6.95 ドル)の専用プログラムがある。電池交換やそのほかのサービスにはおおむね 3 営業日かかる。iPhone に使われているはんだの量を考えれば、Apple はすでに販売した iPhone を修理した再生品を大量に送り出すことになるのではないかと思う。 iFixIt の分解レポートを参照のこと。

ほとんどの人は、3 営業日(週末が長ければ 5 日ないし 6 日になる)も電話なしでいるなんてできない。そこで Apple が用意したものが、Apple Service Phone だ。これは、29 ドルのレンタルで、iPhone の修理がすんだ後数日間まで利用できる

このレンタル電話は、修理済みの電話を郵送で受け取った場合は受け取ってから 7 日、Apple Store で受け取った場合は受け取り可能になってから 5 日、故障した iPhone を送らなかった場合には発送日から 10 日以内に返却しなければならない。遅れて返却すると 50 ドルが追徴され、返却期限から 10 日たっても返却しない場合には、クレジットカードに記載された 600 ドルの支払い予約が実際の支払いに変わる。

個人のアカウントを特定する SIM(Subscriber Identity Module)カードは、iPhone の上部にある穴にクリップを差し込めば取り出すことができる。故障した電話を修理に出すときは、この SIM カードを取り出して、レンタル電話に入れ替えることができる。レンタル電話を返却するときに SIM カードを入れたままにしてしまったときは、AT&T に連絡して新しいカードを発行してもらう必要がある。

Apple はまた、電池を節約して寿命を延ばすためのヒントのページも公開している。


家庭内 Wi-Fi に代わって電力線搬送通信を使う

  文: Kevin van Haaren <kevin@vanhaaren.net>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

私の PowerBook G4 の CPU が壊れてしまった時、私は代わりにずっと安価な、けれども持ち運びのしにくい、Mac mini を買ってきて居間に置いた。この時の交換に伴って、わが家のワイヤレスネットワークは単純に私の仕事部屋のコンピュータと居間にあるコンピュータを結ぶブリッジとして働くようになった。

もちろんこの目的のためには 802.11g ワイヤレスネットワーキングでも十分うまく動いたが、私はもっと高速なものはないかと常に目を配っていた。私の iTunes ライブラリはコンピュータ部屋にあるマシンの一つに保存されていて、合計サイズが 100 GB 近くあった。それに、居間にある Mac mini から私のビデオ iPod に同期をとる作業も、もうちょっと高速になればいいのにと思った。

一段と高速のパフォーマンスを持つ 802.11n へとアップグレードするのは、現実的な選択肢ではなかった。Apple は、802.11n 用のハードウェアを持たない旧型 Mac のためのアップグレード方法を提供していない。他のメーカーの 802.11n 実装による USB アダプタならば入手できるかもしれなかったが、そのためにはネットワークに加わる機器の一つ一つにすべてアダプタを購入しなければならないことになる。

こうして、ここしばらくの間コンピュータストアを見て回りつつ(この習慣はもう止めなければならないと思ってはいるのだが)私は HomePlug アダプタが最近になってスループットを劇的に向上させていることに気付いた。もうかなり以前から、HomePlug Powerline Alliance によって電力線で Ethernet を通すための HomePlug 1.0 と呼ばれる規格が定められている。残念ながら、この規格によれば最大速度は 14 Mbps 程度で、これでは有線接続で(理論上)最大 100 Mbps、ワイヤレスで最大 54 Mbps という接続速度に慣れた一般家庭ユーザーたちには到底十分なものとは言い難い。

家庭内電力線を通じて Ethernet を使う次世代システムを提供するために、新たに二つ、互いに競合する規格が登場している。一つはHomePlug AV 規格で、これは HomePlug Powerline Alliance による。もう一つは Powerline HD と呼ばれ、Universal Powerline Association によるものだ。

これら二つの新規格は機能としてはほぼ同等のものを提供する。どちらも理論上は最大 200 Mbps のスループットを実現できると主張しているし、どちらも暗号化やサービス品質 (quality-of-service, QoS) を旧規格より改善させたと主張している。けれども二つの規格の詳細は実際かなり違っているため、Powerline HD アダプタを使って HomePlug AV に接続させることはできない。残念なことに、Betamax 対 VHS の対立や Blu-ray 対 HD-DVD の対立と同様に、互いに競合する規格が並立することは、消費者たちにとってはテクノロジーの選択における大きな足枷となってしまう。

店頭では、HomePlug AV アダプタは在庫がなかったが、Powerline HD アダプタは D-Link製のものと Netgear製のものが両方あった。私は価格面から D-Link Powerline HD の方を選んだ。(アダプタ2個のスターターキットで $180、一方 Netgear のスターターキットは $200 だった。)

インストール -- インストールの手順は極めてシンプルなもので、Powerline アダプタを両方とも壁のコンセントにただ差し込むだけでよかった。(重要なのは壁の電源コンセントに直接差し込むことで、サージ保護器や UPS などを通してはいけない。)HomePlug も Powerline も変圧器を越えて信号を送ることはできないが、これは住居用の建物ではまず問題にならない。

何か シンプルな回路テスターを使って、両方のプラグが正しく配線で結ばれていることを確認しておくのも良いだろう。私のテストでは、Powerline アダプタはどちら向きに差し込んでもうまく働いた。(このアダプタは偏極されていない。)つまり、正しい配線が為されていない回路でも動作するということだが、いずれにしても逆配線というのは安全上問題があるのでテストしておくに越したことはないだろう。ただ、私のテストでは奇妙な効果が発生した。私がファイル転送の最大速度を体験したのは、片方のアダプタを通常の向きに差し込み、もう片方のアダプタを逆向きに差し込んだ時だったのだ。

この D-Link Powerline アダプタには三個のライトが付いている。一つは電源が来ていることを示し、もう一つは相手の Powerline アダプタが探知できていることを示し、最後の一つはライブの Ethernet 接続が確立できている時に光る。このアダプタはデフォルトの設定でも動作するが、デフォルトのままでは D-Link ネットワーク上で暗号化なしに動く。もしもあなたが共同住宅の建物に住んでいるのなら、あるいはあなたの家が他の家と同じ変圧器を共有しているのなら、あなたの信号がそのまま他の家の電力線にも流れて行ってしまうだろう。(あなたがどうかは知らないが、私の考えを言うなら、隣の家のコーヒーメーカーが私の電子メールを盗み見ているというのはあまり気持ちの良いものではない。)

設定 -- あなた自身のネットワーク名を設定したり、暗号化をオンにしたりするには、アダプタの設定作業が必要だ。残念なことに、その作業は Windows コンピュータを必要とする。(私が見た限り、HomePlug AV や Powerline HD のアダプタにはすべてこの同じ要件があるようだ。)設定作業は Boot Camp 下で走らせた Windows でも確かに動くはずだし、Parallels Desktop や VMware Fusion で走らせた Windows でもたぶん動くだろうが、私はそうしたオプションのどれも試してみていない。

設定を始めるには、まず両方のアダプタを壁のコンセントに差し込む。(最終的に使う場所に差し込んでするのが望ましいが、それは必要条件ではない。)双方のアダプタが相手の Powerline アダプタを認識している必要がある。

次に、Ethernet ケーブルを使って、あなたの Windows コンピュータを直接アダプタの片方に繋ぎ、アダプタに付属の設定用ソフトウェアを走らせる。すると、自動的に双方のアダプタが認識されて、片方が ETH、もう片方が PLC と表示される。ETH(Ethernet の略語だろうか?)側のアダプタはコンピュータに直接繋がれている方で、PLC(“Powerline Connected”か?)の側が遠隔のアダプタだ。

まず、遠隔ノード (PLC) を設定する。もしも差し込み側 (ETH) のノードを先に設定してしまったら、双方のアダプタはもはや相手を認識できなくなり、設定ソフトウェアも遠隔アダプタと通信できなくなってしまう。

基本的な設定の手順は、Net-ID(ワイヤレスネットワークにおける SSID のようなもの)と暗号鍵(ワイヤレスネットワークの暗号鍵と同じ)の割り当てだ。それに加えて、個々のアダプタにもっと識別しやすい名前を付けることもできる。私の場合は、それぞれの物理的場所を名前にした。また、設定のためのパスワードを決めて、他のユーザーが勝手にあなたの設定を変えることがないようにすることもできる。こうして PLC アダプタの設定が済めば、今度は ETH アダプタについて同じ手順を繰り返す。

より高度な設定として、サービス品質 (QoS) のルールを二つ、決めておくことができる。これらはあなたのトラフィックに優先順位を付けるためのものだ。例えば、Skype のパケットを他のパケットよりも優先して扱うようにできる。こうすれば、Skype コミュニケーションの音声品質が高く保たれ、一方それと同時進行する FTP のファイル転送の速度が下がるようになる。ゲーマーたちならば、特定の種類のゲーム用トラフィックの優先度を上げて、自分のゲームが他のプレイヤーたちに比べて遅れをとることがないようにしたいかもしれない。ただし、私自身はこの QoS 調整の必要がなかったので、これについては基本設定のままにしておいた。

実用上のファイル転送テスト -- これらのアダプタが実用上どの程度高速で動作するのかの感じを掴むために、私はいくつかのテストを走らせてみた。まずワイヤレスネットワークで、次に Powerline 接続を経由して、最後に有線 Ethernet を使って、三者を比較したのだ。できる限り同等の設定を保つため、どちらのネットワークにも暗号化を(ワイヤレスには WPA を)使い、QoS のルールは使わなかった。これらのテストは二日間にわたって繰り返し、できるだけ数字の信頼性を高めるように努めた。

まず手始めに、私は 1.4 GB のファイルを FTP で、pure-ftpd を使う私の Linux サーバから Interarchy の走る Mac へと転送した。Interarchy の報告によれば、ワイヤレスの転送は 1,472,156.9 キロバイトを 1,797 秒(30 分弱)で、つまり平均して毎秒 6.4 メガビット (Mbps) で処理した。(思い出して頂きたいが、802.11g での理論上の最大バンド幅は 54 Mbps だった。)

Powerline アダプタの方は、かなり大幅に異なった転送レートを示した。最悪の転送では 1,210 秒(20 分をほんの少し越える)かかり、9.52 Mbps だった。最良のケースでは 948 秒(ほぼ 16 分)を記録し、12.16 Mbps だった。たいていの転送は 10 Mbps 前後で進み、Powerline アダプタは私の 802.11g ワイヤレスネットワークより 50% から 100% 程度速いという結果になった。もちろん理論上の最大値 200 Mbps には遥かに及ばなかったのだが。レートが一定しなかった原因は私にはよく分からないが、電力線上のノイズ、例えばエアコン、小型蛍光灯、食器洗い機などからのノイズが影響したのかもしれない。

次に、この結果を直接の Ethernet 接続と比較してみることにした。現在のままの状態でこれをテストできるほどに長いネットワークケーブルを私は持っていないので、Mac mini をコンピュータ部屋に運んでから、そこで 100 Mbps Ethernet に繋いでみた。この設定の下で同じ 1.4 GB ファイルを Interarchy で転送してみたところ、はっきりと高速だという結果が出た。速度は 87 Mbps 近くになり、Powerline に比べて 9 倍速かった。明らかに、パフォーマンスが非常に重要な状況で、かつ本物の Ethernet ケーブルを走らせることができるのならば、これこそが二つの場所を結ぶ最良の方法と言える。

ネットワークと理想状況のパフォーマンステスト -- Interarchy でテストしたのに加え、私はネットワークパフォーマンス測定ツールの Iperf を使って純粋なネットワーク・スループットを測定してみた。ファイル転送のテストではオペレーティングシステムやファイルシステム、ハードドライブなどの要素が介入してくるからだ。確かに実用上の期待動作でのベンチマークとしては良い評価となるが、ネットワーク部分だけを分離させて測定するわけではないからだ。その点、Iperf はネットワークだけを測定できる。

私は既に Ethernet テストのために Mac mini を私のコンピュータ部屋に移していたので、理想的状況下でワイヤレスおよび Powerline 接続のテストをもう少しこれと合わせてやってみることにした。私のワイヤレスルータはこのコンピュータ部屋にあるので、ルータからほんの数フィートしか離れていない Mac mini でワイヤレス接続をテストした。Iperf の記録したスループットは 12.8 Mbps だったが、Interarchy のテストでは 7.0 Mbps まで落ちてしまった。これは、Mac mini が居間にあった時の結果よりもほんの少し速かった。

理想状況下の Powerline をテストするために、私は二つのアダプタを同じ電源コンセントに並べて差し込んでみた。Powerline アダプタにとってはこれ以上理想的な状況はないだろう。両者の間に回路ブレーカーもなければヒューズを通る必要もなく、他の機器の電力線から来るノイズも少ないからだ。この理想状況下において、Iperf は 69 Mbps のスループットを報告し、Interarchy は 65 Mbps という速度を報告した。私の実用設定での速度の 7 倍近くだ。この結果から、共通の回路ブレーカーを持つ二つのコンセントを使う方がよいものと思われる。けれども残念なことに、私の家の建築主は回路パネルにラベルを記してくれていないので、回路追跡機が入手できて調べることができるまでは、どうやら私はあちこちアダプタを動かして回ってどの電源コンセントで使えば良い結果が出るのか試して回らなければならないようだ。

比較のために、100 Mbps の有線 Ethernet 接続でもテストしてみると、Iperf は 91.1 Mbps のスループットを報告した。これはワイヤレスと Powerline のどちらの接続方法に比べても大幅な増加だ。だから、本当に Ethernet は最大パフォーマンスを求めるならば絶対の選択肢だ。ただし、必要な場所までケーブルを張ることが実行可能ならばの話だが。

遅延時間テスト -- 私はこのアダプタでもう一つ別のテストをした。遅延時間 (latency) だ。ネットワークの遅延時間というのは、パケットがネットワークを通って運ばれるのにどのくらい時間がかかるかを測る尺度だ。さきほど述べたファイル転送の所要時間のようなものが「速度」として語られるのが普通だが、そちらは実はバンド幅の尺度に過ぎない。例えば、水道管の中を水が毎秒1リットルの割合で流れているとしよう。もっと高速で水を運ぼうとすれば、例えば毎秒2リットルが欲しいとすれば、方法は二つある。水道管の中を水の分子が倍の速度で通過するようにするか、それとも水道管を太くするかだ。水道管が太くなっても個々の水分子は以前と同じ速度で通過するのだが、同じ時間内に倍量の水分子が運ばれるので結果的に速く見えるだけなのだ。このことはネットワークでも同じことで、個々の情報ビットがより高速でシステムを通過するようにすることもできるし、あるいは同じ時間内により大量の情報ビットが通過できるようにすることもできる。

それぞれの接続方法で情報が行き来する往復遅延時間を測定するため、ping コマンドを使った。これは一つの機器に向かって「もしもし?」と呼び掛けるパケットを送る。もしも相手の機器がそこにあって活動していれば、「はい」という返事が返ってくる。送り主のコンピュータは返事のパケットが到着するまでにどれだけ時間がかかったかを測る。これが、ネットワークの往復遅延時間 (round-trip latency) だ。

私は Mac OS X に内蔵されている ping コマンドを Terminal で使って、私の Linux サーバを 100 回 ping してみた。802.11g ワイヤレスネットワークでは、ping コマンドの報告は最少経過時間が 1.5 ms (ミリ秒)、平均が 1.8 ms、最大が 4.8 ms というものだった。

転送所要時間と同様に、Powerline アダプタを使った時の遅延時間も日によって大きく変動した。最悪のものは、最少経過時間が 1.5 ms、平均が 9.1 ms、最大が 121.7 ms という結果だった。大部分のテストでは、最少が 1.5 ms、平均が 3.5 ms、最大が 27 ms という程度だった。大量のパケットを通してくれはするのだが、どうやらこの D-Link の Powerline アダプタは非常に大きな(しかも変動の多い)遅延時間を伴っているようだ。つまり、その意味するところは、Powerline アダプタではたとえ QoS 機能をオンにしたとしても、Skype や iChat のような音声通話 (VoIP) 用アプリケーションを使うためには他のネットワークタイプの方がより適しているということだろう。

まとめ -- 価格面から言えば、D-Link アダプタが向かうところ敵なしのようだ。他の Powerline HD や HomePlug AV アダプタはどれも D-Link アダプタより高価で、複数の Mac に新しいワイヤレスギアを備え付けるのはさらにそれよりも高くつき、また壁の中に Ethernet ケーブルを張り巡らすのもまた高価だろう。(少なくともケーブルを張るのは手間がかかる。)D-Link アダプタの欠点は、競合する Powerline HD や HomePlug AV 規格が存在するために、将来私がネットワークを拡張しようと思っても、D-Link アダプタ以外のものを買うことができないかもしれないということだ。

パフォーマンスの面から言えば、D-Link アダプタはかなり良く働くが、驚くほど素晴らしいというわけでもない。ネットワーク遅延時間も大きいようだが、私の場合ネットワークの必要はたった二カ所のブリッジとなることだけだし、また私の用途は主にファイルのダウンロードであって、ウェブブラウジングでファイルをダウンロードするだけでなく TiVo の映画ファイルや iPod の音楽ファイルを運んだりもしなければならないので、ワイヤレス 802.11g に比べて 50% から 100% 程度速いスループットというのはやはり魅力だ。

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TidBITS Talk/09-Jul-07 のホットな話題

  文: TidBITS Staff <editors@tidbits.com>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

電話部分なしの iPhone -- 電話機能以外で、iPhone のさまざまな機能が欲しいという人たちは大勢いる。基本的には、本当にクールな iPod か、小型のタブレット Mac が欲しいというわけだ。けれどもそういう機器ならば、ある意味既に存在している。Nokia N800 だ。 (3 メッセージ)

外付けハードドライブを Mac と PC で共有 -- 外部ハードドライブを買ってきて Mac と Windows PC の両方からアクセスできるようにするには、どうするのがベストのやり方だろうか? 読者たちが、ドライブがどのような形で利用されるのかを見極め、いくつかの方法を推薦する。(5 メッセージ)

Apple のデータをリロード -- .Mac の事故をきっかけに、Apple のオンラインサービスと手を切ろうとしている読者がいる。でも、実際 .Mac はどのようにして Apple の各アプリケーションとコミュニケーションしているのだろうか?(1 メッセージ)

iPhone: なぜ待つ必要がある? -- iPhone についてはもうちょっと待って様子を見ようという態度の人も多い。何と言っても、まだバージョン 1.0 の製品なのだからというわけだ。でも、やっぱり待つのなんかやめて飛び込んでみようよ、という気持ちになってきた読者もいる。(1_ メッセージ)

Apple が Mac OS X 10.4.10 のプツプツ音を静める -- Apple のオペレーティングシステムへの最新の修正は多くの人にとって救いの手だったが、Intel ベースの Mac のみに起こると言われていたこのオーディオのトラブルが、ある読者の PowerPC ベースの Mac でも起こるようになったという。そこで、いくつかの回避策が寄せられた。 (2 メッセージ)

ヨーロッパで iPhone? -- Apple はまだ iPhone をヨーロッパ市場に持ち込んでいないが、この機器をアメリカ合衆国で購入した人がヨーロッパへ旅行した場合、そのサービスはどうなっているのだろうか? (9 メッセージ)

iPhone 充電のコツ -- iPhone を持っている人から、この機器で最大限有効に電力を使いこなすためのアドバイスが届いた。(1- メッセージ)

月齢関係の繰り返しイベントを iCal に入力 -- iCal にイベントを入力する時に「上弦下弦ごとに」とか「太陰月の毎 10 日と 25 日」とかいう指定の仕方は可能か? (2_ メッセージ)

古い Mac で週末別宅の管理? -- 週末以外は誰も住んでいない家で、暖房その他のシステムをコントロールするために古い Mac を使いたい。そのための情報はどこで探せばよいか? (3_ メッセージ)


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